(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】アレルギー性の鼻炎症状抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20230919BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230919BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20230919BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230919BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230919BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230919BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230919BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K36/185
A61K36/82
A61P11/02
A61P29/00
A61P37/08
A23L33/105
(21)【出願番号】P 2019190827
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 裕行
(72)【発明者】
【氏名】水口 博之
(72)【発明者】
【氏名】永峰 賢一
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-48161(JP,A)
【文献】特開2001-278792(JP,A)
【文献】特開2010-168300(JP,A)
【文献】特開2011-246355(JP,A)
【文献】特開平3-157330(JP,A)
【文献】鶴田裕美,外3名,「佐賀県産レンコンの成分および機能性に関する部位別解析」,日本調理科学会大会研究発表要旨集,2015年,2P-19,https://doi.org/10.11402/ajscs.27.0_168
【文献】Meng Fu et al.,"Anti-inflammatory effect of epigallocatechin gallate in a mouse model of ovalbumin-induced allergic rhinitis",International Immunopharmacology,2017年,Vol.49,p.102-108,http://dx.doi.org/10.1016/j.intimp.2017.05.030
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
36/00-36/9068
A61P 1/00-43/00
A23L 33/105
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表される、レンコン節部由来のプロアントシアニジンと、エピガロカテキンガレート又はエピガロカテキンガレート含有物質を有効成分として含有する、アレルギー性の鼻炎症状抑制
用組成物。
【化1】
(式中、R
2及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基、R
1及びR
3は水酸基を示し、nは0以上の整数を示す。)
【請求項2】
前記鼻炎症状が、くしゃみ、水性鼻漏、又は鼻の腫れ若しくは発赤である、請求項1に記載のアレルギー性の鼻炎症状
抑制用組成物。
【請求項3】
前記プロアントシアニジンの一日の投与量が、患者の体重1kgあたり0.2~10mgである、請求項1又は2に記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制
用組成物。
【請求項4】
前記エピガロカテキンガレート含有物質が茶葉抽出物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制
用組成物。
【請求項5】
医薬品の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制用組成物。
【請求項6】
飲食品の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性の鼻炎症状抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境や食生活の変化、ストレスの増加等により、アレルギー患者の数は、年々増加している。アレルギーの発症機構は通常I型からIV型の4つに分類されており、これらの混合型も存在する。花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、蕁麻疹などのI型アレルギーは抗原が作用してから短時間で症状が出てくるため即時型アレルギーと呼ばれている。
【0003】
I型アレルギーの作用機序は、IgE抗体の誘導と肥満細胞や好塩基球からのヒスタミンやロイコトリエン等のケミカルメディエーターの放出(脱顆粒)を特徴とする。まず、外界から侵入したアレルゲン(花粉、室内塵、ダニ、カビ等)は、樹状細胞やマクロファージ等の抗原提示細胞によってその一部をMHC class II分子に結合した状態でT細胞に対して提示され、Th2細胞が活性化・分化する。Th2細胞が放出したTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9、IL-13等)はB細胞のクラススイッチを誘導し、IgE抗体が産生され、IgE抗体は組織内の肥満細胞や血中の好塩基球表面のFcεRIに結合する。アレルゲンは次回の侵入時に肥満細胞や好塩基球表面に結合しているIgE抗体に認識され、IgE抗体間に架橋が形成され、この刺激を引き金として肥満細胞や好塩基球がケミカルメディエーターを放出(脱顆粒)することによって、アレルギーの諸症状が発現する。例えば、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)では、鼻粘膜の肥満細胞、好塩基球から放出されるヒスタミンにより、血管拡張、血管透過性亢進が起こった結果、くしゃみ、水性鼻漏、鼻閉(鼻づまり)等の不快な鼻炎症状が現れる。これまでこのようなIgE抗体やケミカルメディエーターを介するアレルギー症状を抑制及び改善する薬剤としては、例えば、肥満細胞の活性を弱めてケミカルメディエーターの遊離を抑制するケミカルメディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1受容体にヒスタミンと拮抗的に結合することによってその機能を阻害するヒスタミンH1拮抗薬、ロイコトリエン受容体にロイコトリエンと拮抗的に結合することによってその機能を阻害するロイコトリエン拮抗薬、トロンボキサンの産生及び作用を抑制するトロンボキサン阻害・拮抗薬、IL-4及びIL-5の産生を抑制するTh2サイトカイン阻害薬といった抗アレルギー剤のほか、免疫応答性を弱めることによって炎症を軽減するステロイド剤などがある。また、抗ヒスタミン薬のなかでも、ヒスタミン拮抗作用と肥満細胞からのケミカルメディエーターの遊離の抑制作用を併せ持つ第2若しくは第3世代の抗ヒスタミン薬が日本では抗アレルギー薬として呼ばれることもある。しかしながら、これまで上記のような薬剤はアレルギー症状の治療に十分な効果が得られているとはいえず、また、眠気や倦怠感といった副作用を起こしたり、他の疾患を有する患者には使用禁忌であるなどの問題がある。さらに、上記のような薬剤の長期にわたる使用は、医療経済上大きな負担ともなる。よって、治療効果が高く、安全かつ安価な次世代の抗アレルギー剤の開発が要求されている。
【0004】
一方、上記の副作用等の問題に対処するために、I型アレルギー反応による症状や疾患の抑制及び改善を目的とした抗アレルギー剤やステロイド剤などの医薬品に代えて、食品由来の抗アレルギー素材の探索と利用が研究されている。例えば、植物のハスはその地下茎の肥大した部分がレンコンとして食用とされ、古くから滋養強壮に優れていることが知られているほか、近年では抗アレルギー作用を有することも見出されており、ハスの粉砕物若しくは抽出物、またはこれらの組み合わせを含む抗アレルギー剤(特許文献1)、ハスの粉砕物及び/又は抽出物と乳酸菌を含む抗アレルギー剤(特許文献2)などが報告されている。また、抗ヒスタミン薬のエピナスチンにレンコンの節部抽出物を併用すると、抗ヒスタミン薬の単独使用に比べてアレルギー性鼻炎などのアレルギー症状が顕著に抑制されることも報告されている(特許文献3)。また、各種の植物由来ポリフェノールは、主にin vitro試験によりアレルギー症状を抑制する作用があることが確認されており、例えばリンゴポリフェノール、カカオポリフェノール、茶ポリフェノールなどがある。とりわけ緑茶に含まれるカテキン類は、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール低下作用、抗酸化作用、抗菌・抗ウイルス作用、抗がん作用など様々な作用が知られており、抗アレルギー作用もその一つである。例えば、特許文献4には、非重合体の非エピ体カテキン類と非重合体のエピ体カテキン類を特定の比率で配合した組成物が、くしゃみ発作や鼻漏症状の改善に有効であることが開示されている。しかしながら、当該組成物には、非エピ体カテキン類4種とエピ体カテキン類4種の計8種類のカテキン類が含まれており、どの成分が有効であったか明確ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-151811号公報
【文献】特許第3947778号公報
【文献】特開2017-048161号公報
【文献】特開2007-145830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、抗ヒスタミン薬はアレルギー性の鼻炎症状や花粉症などのアレルギー症状に対する代表的な抗アレルギー剤であるが、単独では完全にアレルギー症状を抑制することができず、効果を上げるために投薬量を増やすと副作用が発生したり、費用がかかるなどの問題がある。
【0007】
従って、本発明の課題は、アレルギー性の鼻炎症状に対し、抗ヒスタミン薬と同様な優れた抑制効果を示し、副作用がなく、安全かつ安価な食品由来の成分を含む薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、レンコン節部の抗アレルギー作用物質が特定の構造を有するプロアントシアニジン重合体であることを確認するとともに、このレンコン節部由来のプロアントシアニジンと、緑茶成分であるエピガロカテキンガレートを併用すると、単独使用よりもアレルギー性の鼻炎症状が顕著に抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)下記の一般式(I)で表される、レンコン節部由来のプロアントシアニジンと、エピガロカテキンガレート又はエピガロカテキンガレート含有物質を有効成分として含有する、アレルギー性の鼻炎症状抑制剤。
【化1】
(式中、R
2及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基、R
1及びR
3は水酸基を示し、nは0以上の整数を示す。)
(2)前記鼻炎症状が、くしゃみ、水性鼻漏、又は鼻の腫れ若しくは発赤である、(1)に記載のアレルギー性の鼻炎症状の抑制剤。
(3)前記プロアントシアニジンの一日の投与量が、患者の体重1kgあたり0.2~10mgである、(1)又は(2)に記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤。
(4)前記エピガロカテキンガレート含有物質が緑茶抽出物である、(1)~(3)のいずれかに記載のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンコン節部由来のプロアントシアニジンと、緑茶成分であるエピガロカテキンガレートとを含むアレルギー性鼻炎抑制剤が提供される。本発明のアレルギー性鼻炎抑制剤は、天然物である食用のレンコンや緑茶に含まれる成分を有効成分とするため、日常的に使用しても副作用がなく、安全性が高い。よって、医薬品や健康食品などに安心して使用できる。また、レンコンは安価にかつ容易に入手可能である材料であるから、アレルギー治療の費用負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、レンコンエキス粉末に含まれるプロアントシアニジン画分のチオール分解物のC18カラムクロマトグラフィー解析結果を示す(P1:ガロカテキン、P2:エピガロカテキン、P3:カテキン、P4:エピカテキン、P5:(+)-ガロカテキンチオール誘導体(ガロカテキンチオール1)、P6:(-)-ガロカテキンチオール誘導体(ガロカテキンチオール2)、P7:エピガロカテキンチオール誘導体、P8:カテキンチオール誘導体、P9:エピカテキンチオール誘導体)。
【
図2】
図2は、レンコンエキス粉末より精製したプロアントシアニジン重合体の構造の模式図を示す。
【
図3】
図3は、TDI感作鼻過敏症モデルラットの作成スケジュールを示す。
【
図4】
図4は、TDI感作鼻過敏症モデルラットに対するレンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)単独投与、エピガロカテキンガレート(EGCG)単独投与、レンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)とエピガロカテキンガレート(EGCG)の併用投与後のくしゃみ回数を示す(対照:TDIによる感作と発作誘発と同スケジュールで、TDIに代えて酢酸エチル溶液を塗布した試験区、TDI: TDI感作鼻過敏症モデルラットに薬剤を投与しない試験区(陽性対照)、LR14: LR14mg/kg/day投与群、LR28: LR28mg/kg/day投与群、EGCG: EGCG45mg/kg/day投与群、Mix14: LR14mg/kg/day+EGCG45mg/kg/day投与群、Mix28: LR28mg/kg/day+EGCG45mg/kg/day投与群。Dunnettのt検定によりTDI(陽性対照)に対して統計学的有意差あり:**p<0.01) 。
【
図5】
図5は、TDI感作鼻過敏症モデルラットに対するレンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)単独投与、エピガロカテキンガレート(EGCG)単独投与、レンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)とエピガロカテキンガレート(EGCG)の併用投与後の鼻症状スコアを示す(対照:TDIによる感作と発作誘発と同スケジュールで、TDIに代えて酢酸エチル溶液を塗布した試験区、TDI: TDI感作鼻過敏症モデルラットに薬剤を投与しない試験区(陽性対照)、LR14: LR14mg/kg/day投与群、LR28: LR28mg/kg/day投与群、EGCG: EGCG45mg/kg/day投与群、Mix14: LR14mg/kg/day+EGCG45mg/kg/day投与群、Mix28: LR28mg/kg/day+EGCG45mg/kg/day投与群。Dunnettのt検定によりTDI(陽性対照)に対して統計学的有意差あり:*p<0.05、** p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアレルギー性鼻炎症状抑制剤は、レンコン節部由来のプロアントシアニジンと、エピガロカテキンガレート又はエピガロカテキンガレート含有物質を有効成分として含有する。
【0013】
(レンコン節部由来のプロアントシアニジン)
本発明のアレルギー性鼻炎症状抑制剤の有効成分であるプロアントシアニジンは、下記の一般式(I)で示される、フラバン-3-オールを構成単位とする重合体である。
【0014】
【化2】
(式中、R
2及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基、R
1及びR
3は水酸基を示し、nは0以上の整数を示す。)
【0015】
構造上の特徴としては、R2及びR4が水酸基であるガロカテキン型が、R2及びR4が水素原子であるカテキン型よりも多いことで、R2はOH:H=65~85:15~35、R4はOH:H=75~85:15~25である。また、プロアントシアニジンは立体異性体も含まれ、R1及びR3の水酸基はそれぞれ異なる比率でα型とβ型をとりうる。
【0016】
上記プロアントシアニジンは、レンコン節部からプロアントシアニジン画分を抽出し、更にガロカテキンとカテキンを除いた2量体以上のプロアントシアニジン(ガロカテキン)重合体を抽出・精製することにより得られる。また、化学的合成法などにより得ることもできる。上記プロアントシアニジンの重合度は、限定はされないが、推定重合度が3~5であることが好ましい。
【0017】
レンコン節部を材料として上記プロアントシアニジンを調製する方法の具体例を以下に示す。
【0018】
本発明においてレンコン(Lotus root)とは、ハス(Nelumbo nucifera)の地下茎が肥大したものをいい、本発明において「レンコン節部」とは、節又は節の端から1cm以内の節近傍部をいう。レンコンの品種(カッコ内は産地)としては、例えば、備中(徳島県鳴門産、石井産)、オオジロ(徳島県川内産)、ロータス(徳島県川内産)等が挙げられるが、品種や産地はこれらに特に限定されるものではない。
【0019】
レンコン節部からプロアントシアニジン画分を抽出する方法は、特に限定されないが、水若しくは熱水、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用い、撹拌又はカラム抽出する方法により行うことができる。有機溶媒としては、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール又は含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール又は含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル、あるいはこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒のなかでも、本発明で使用する溶媒は、水、熱水、エタノールが好ましく、熱水がより好ましい。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記レンコン節部(乾燥重量)に対し、3倍以上、好ましくは6倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、水を溶媒として用いる場合、10~120℃、好ましくは20~100℃で、10分~24時間、好ましくは30分~5時間を例示することができる。
【0020】
抽出物は、遠心分離により不溶物を除去した後、濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理により粉末化してレンコンエキス粉末を得る。得られたレンコンエキス粉末をプロアントシアニジン画分(当該画分には重合度の異なるプロアントシアニジンが含まれ、それらの混合物の含有量は約6%(w/w)と推定される)とし、このプロアントシアニジン画分を、孔径0.1~2.0μmのフィルター濾過処理に供し、低分子画分が含まれる透過液を採取し、これをさらに、吸着剤処理法、膜分離法、溶剤分別法などの精製処理に供することにより、低重合度、例えば重合度が3~5のプロアントシアニジンを主体とするプロアントシアニジンオリゴマーを得ることができる。また、レンコンエキス粉末にはプロアントシアニジン以外のポリフェノール配糖体やエステル体などの夾雑成分が含まれているため、プロアントシアニジンの純度向上のために、上記の精製処理に供する前に、加水分解酵素で処理して予めアグリコンにすることにより、該夾雑成分を除去することが好ましい。
【0021】
精製処理を具体的に説明すると、吸着剤処理法としては、例えば、修飾デキストランゲル(セファデックスLH-20等)、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド、逆相系シリカゲル、親水性ビニルポリマー等の吸着剤を用いてプロアントシアニジン画分を吸着させた後、水洗し、溶離液(極性溶媒)で溶出して分取する方法、膜分離法としては、例えば、逆浸透膜、限外濾過膜を用い分画分子量1,000~100,000の画分を分取する方法、溶剤分別法としては、例えば、酢酸エチルで分配抽出したのち、酢酸エチル層を脱水処理後、クロロホルムなどの非極性溶媒で分別沈殿させて分取する方法が挙げられる。上記の吸着剤を用いる方法において、吸着画分の溶出に使用する溶離液としては、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン等が挙げられる。吸着画分の主成分は、抽出工程でレンコン節部より抽出された重合度が3~5のプロアントシアニジンを主体とするプロアントシアニジンオリゴマーである。プロアントシアニジンオリゴマーを含む吸着画分は、さらに濃縮、乾燥、粉末化等の処理を行ってもよい。
【0022】
本発明において、プロアントシアニジンの推定重合度は、プロアントシアニジンを含む画分を求核試薬(フロログルシノール等)と反応させて酸加水分解した後、HPLC分析により、各反応生成物の濃度を各反応生成物の標品の検量線から算出し、次に、反応生成物の総モル数をプロアントシアニジンの末端部を構成するフラバン-3-オール(ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピカテキン)の総モル数で除することによって算出することができる。
【0023】
(エピガロカテキンガレート)
エピガロカテキンガレート(EGCG)は、緑茶ポリフェノールの主要成分である。本発明に用いるエピガロカテキンガレートは、化学的に合成されたもの、茶葉を含む各種の植物体から抽出・精製されたもの等、特に制限はなく、商業的に入手可能である。茶葉としては、ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名:Camellia sinensis(L)O.Kuntze)から得られる茶葉から製茶された煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、てん茶、釜入り茶などの不発酵茶である緑茶、前記茶葉から半発酵又は発酵工程を経て製茶された半発酵茶である烏龍茶(鉄観音、黄金桂、武夷岩茶等)又は発酵茶である紅茶(ダージリン、アッサム、ジャワティー等)などが挙げられる。これらの茶葉を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、エピガロカテキンガレートを多く含有する緑茶が好ましい。
【0024】
茶葉からエピガロカテキンガレートを含むカテキン類の抽出は、水若しくは熱水、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用いて撹拌抽出(バッチ抽出)、カラム抽出、向流抽出(ドリップ抽出)等の公知の方法により行うことができる。有機溶媒としては、アルコール類、エーテル類、エステル類などを用いることができるが、エタノール、メタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒が好ましい。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば茶葉(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10~100℃、好ましくは30~90℃で、30分~24時間、好ましくは1~10時間を例示することができる。また、茶葉抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、その効果に影響のない範囲で更に、濃縮(有機溶媒、減圧濃縮、膜濃縮などによる濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理をして用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0025】
上記のようにして得られるレンコン節部由来のプロアントシアニジンは、後記実施例で示すように、エピガロカテキンガレートと併用投与することにより、TDI感作鼻過敏症モデルラットの鼻炎症状をそれぞれ単独よりも有意に抑制することができる。よって、レンコン節部由来のプロアントシアニジンは、エピガロカテキンガレートとともに、そのままで、あるいは適当な担体を加え、所望の形態に製剤化して「アレルギー性の鼻炎症状抑制剤」として使用できる。
【0026】
本発明のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤は、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートの別個の製剤から構成されていてもよく、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートを混合して含む単一の製剤から構成されていてもよい。
【0027】
本発明のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤の投与の方法は、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートを実質上同時に投与する方法であればよく、例えば、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートを、投与対象に対して完全に同時に投与してもよいし、短時間(好ましくは数分以内)に連続的に投与してもよい。さらに効果を最大限に高めるためには、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートをあらかじめよく混和した製剤を投与することが好ましい。従って、本発明のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤の投与形態には、例えば、(a)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(b)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(c)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与(例えば、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートの順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(d)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(e)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与態様が含まれる。
【0028】
上記製剤中のレンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートの含有量は、目的や剤型によって異なり、特に限定されないが、製剤全重量に対して、レンコン節部由来のプロアントシアニジンは固形分換算で、1.0~30重量%が好ましく、1.5~20重量%がより好ましく、エピガロカテキンガレートは、1.6~50重量%が好ましく、2.4~35重量%がより好ましい。製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【0029】
本発明のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤は、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに医薬品や飲食品等の組成物に配合することができる。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
【0030】
本発明の医薬品は、アレルギー性の鼻炎症状の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、当該症状を改善又は緩和する治療薬として機能する。
【0031】
アレルギー性の鼻炎症状としては、例えば、アレルギー性鼻炎、花粉症、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、鼻腔又は咽頭のかゆみ等を挙げることができる。なかでも、鼻過敏症、特に、カルシニューリン/NFATシグナル伝達系を介したIL-9の発現増加によって生じるアレルギー性鼻過敏症が好ましい。ここで、「アレルギー鼻過敏症」とは、反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉(鼻づまり)のうちのいくつかの症状を呈することを特徴とするアレルギー性の疾患を意味する。
【0032】
本発明の医薬品の有効成分は、天然物由来であるため、安全性が高く副作用がないため、前述のアレルギー性の鼻炎症状の予防又は改善用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的に又は非経口的に投与することができる。
【0033】
本発明の医薬品は、上記アレルギー性の鼻炎症状抑制剤を、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
【0034】
経口投与用製剤には、例えば、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、又はデキストリン等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、又はヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
【0035】
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、点鼻剤、点眼剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。
【0036】
本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状、投与経路、投与スケジュール、製剤形態などに応じて適宜決定することができる。例えば、患者(成人)に経口投与する場合には、一日の投与量として、レンコン節部由来のプロアントシアニジンは固形分換算で、患者の体重1kgあたり0.2~10mg、好ましくは0.3~9mg、より好ましくは0.4~8mg、エピガロカテキンガレートは0.3~16mg、好ましくは0.5~14.5mg、より好ましくは0.6~13mgである。
【0037】
また、本発明のアレルギー性の鼻炎症状抑制剤は、飲食品にも配合できる。本発明の飲食品は、前記のアレルギー性の鼻炎症状を有する患者に、予防又は治療等の目的で使用される機能性食品として利用できる。本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は食品増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0038】
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0039】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。食品には上記した必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常食品に用いられる材料、添加物(例えば賦形剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、滑沢剤、緩衝剤、香料等)を必要に応じて適宜配合することができる。
【0040】
本発明の飲食品におけるアレルギー性の鼻炎症状抑制剤の含有量は、前記アレルギー性の鼻炎症状の抑制作用を発揮できる量であればよく、飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜決定すればよいが、例えば飲食品全体に対して0.1~99.0重量%となるように配合できる。
【0041】
本発明の飲食品の摂取量は、前記アレルギー性の鼻炎症状の予防や改善を目的として摂取する場合、摂取させる対象の状態、摂取形態、摂食量等により異なるが、患者(成人)1日につき、レンコン節部由来のプロアントシアニジンは固形分換算で、患者の体重1kgあたり0.2~10mg、好ましくは0.3~9mg、より好ましくは0.4~8mg、エピガロカテキンガレートは0.3~16mg、好ましくは0.5~14.5mg、より好ましくは0.6~13mgである。前記の量は1回で摂取してもよいが、数回(2~4回)に分けて摂取してもよい。本発明の飲食品は、摂取量の目安とするため1回に摂取するべき量の飲食品が、1個の袋やビン等の容器に包装又は充填されていることが好ましい。
【実施例】
【0042】
(実施例1)レンコン節部由来のプロアントシアニジンの製造
(1)レンコンエキス粉末の調製
徳島県産(主に備中種)のレンコン節部793kgをフードカッターで粉砕し、これに水2382kgを加え、95℃以上で1時間撹拌抽出した。抽出液に常温の水1588kgを加え温度を50℃まで低下させた後、0.476kgのプロテアーゼM「アマノ」を添加し、酵素処理を1時間行った。酵素活性失活のために95℃以上に加温し、100メッシュのフィルターでろ過した後、遠心分離処理により固形分を分離除去し、抽出液を珪藻土濾過処理により清澄化した。得られた濾過液を、減圧濃縮器により710kgまで濃縮した。濃縮液に、濃縮液中の固形分が80%(W/W)、添加するデキストリン固形分が20%(W/W)になるように、デキストリンを添加溶解し、スプレードライ法によって粉末化し、レンコンエキスの粉末75.6kgを回収した。
【0043】
(2)レンコンエキス粉末からのプロアントシアニジンの精製
(1)で調製したレンコンエキス粉末60.89gを0.5M塩化ナトリウム水溶液6000gに溶解した。この溶液を0.2μmフィルターにより濾過した。濾過液を2等分し、精製水で膨潤させたSephadex LH-20(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を充填した50x200mmのカラムに2等分した濾過液を連続して負荷し、プロアントシアニジンを吸着させた。続いてカラムを0.5M塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに精製水6000gを通液し、塩化ナトリウムを除去した。その後、カラム吸着成分を50%(V/V)アセトン水溶液で溶出した。この溶出液を減圧濃縮器によりアセトンを除去することで濃縮し、凍結乾燥処理により粉末化した。2回のカラム処理により、凍結乾燥粉末2.0085gを回収した。
【0044】
上記の凍結乾燥粉末から1.809gを秤取り、精製水に溶解し、さらにエタノールを添加して粉末濃度が0.25%(W/V)で90%(V/V)エタノール水溶液になるように調製した。このエタノール水溶液を0.45μmのフィルターにて濾過した。濾過液を2等分し、エタノールで膨潤させたSephadex LH-20樹脂を充填した50mm×150 mmのカラムに2等分した濾過液を連続して負荷した。続いてカラムをエタノールで十分に洗浄し、未吸着画分を得た。その後、50%(V/V)アセトン水溶液でカラム吸着成分を溶出し、吸着画分を得た。回収した未吸着画分と吸着画分は、減圧濃縮処理により有機溶媒を除去し、凍結乾燥処理により粉末化し、未吸着画分82.07mg、吸着画分1.7996gを回収した。
【0045】
(3)レンコンエキス節部由来のプロアントシアニジンの構造解析
(2)で得られた吸着画分を、メタノールに溶解し、酸性条件下でベンジルメルカプタン(シグマ・アルドリッチ)を作用させチオール分解処理を行った。この分解液をC18カラム(ODS-3 ジーエルサイエンス社製)により分析した結果、9種類の成分(P1~P9)から構成される成分であることが判明した(
図1)。この9種類の成分は、NMR等による分析により、P1はガロカテキン、P2はエピガロカテキン、P3はカテキン、P4はエピカテキン、P5は(+)-ガロカテキンチオール誘導体(ガロカテキンチオール1)、P6は(-)-ガロカテキンチオール誘導体(ガロカテキンチオール2)、P7はエピガロカテキンチオール誘導体、P8はカテキンチオール誘導体、P9はエピカテキン誘導体であることを確認した。各構成成分の濃度を測定し、組成比率及び推定重合度(構成成分の総モル数)/(末端部の総モル数)を分析した。結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
吸着画分に含まれるプロアントシアニジンは2量体以上の重合体であり、推定重合度は3.8であった。また、吸着画分に含まれるプロアントシアニジン重合体の構造の模式図を
図2に示す。
【0048】
(実施例2)レンコン節部由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートの組み合わせによるアレルギー性の鼻炎症状抑制試験
レンコン節部由来のプロアントシアニジンと精製エピガロカテキンガレート(長良サイエンス株式会社)の組み合わせによるアレルギー性の鼻炎症状抑制効果について鼻過敏症モデルラットを用いて評価した。本試験には、レンコン節部由来のプロアントシアニジンとして、実施例1でレンコンエキス粉末より精製したプロアントシアニジン重合体を含むセファデックス吸着画分を使用した。
【0049】
1.試験方法
(1)鼻過敏症モデルラットの作成
6週齢Brown-Norway系雄性ラット(200 g、SLC, Hamamatsu, Japan)を使用した。動物は22±1℃の室温で12時間毎の昼夜サイクルで飼育した。TDI(トルエン2,4-ジイソシアン酸)によるラットの感作は、Kitamuraらの方法(Acta Otolaryngol. 2004, 124, 1053-1058)の変法を用いた。すなわち、Brown- Norway系雄性ラットの両側鼻前庭に、極細耳鼻用綿棒を用いて10μLの10% TDI-酢酸エチル溶液を連日5日間×2回塗布した(TDI感作)。その後1週間無処置期間をおいた上で10% TDI-酢酸エチル溶液の鼻前庭塗布にて発作を誘発した。
図3にTDI感作鼻過敏症モデルラットの作成スケジュールを示す。また、上記のTDIによる感作と発作誘発と同スケジュールで、TDIに代えて酢酸エチル溶液を塗布した対照モデルラット(陽性対照)を作成した。
【0050】
TDI感作鼻過敏症モデルラットに対し、その作成過程の間に一日一回、薬剤として、レンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)(14 mg/kg/dayと28 mg/kg/day)、エピガロカテキンガレート(EGCG)(長良サイエンス株式会社)(45 mg/kg/day)、及びこれらの組み合わせMix14(LR 14mg/kg/day+EGCG 45mg/kg/day、1:3.2)とMix28(LR 28mg/kg/day+EGCG 45mg/kg/day、1:1.6)を、3週間連続で経口投与した。
【0051】
(2)アレルギー性のくしゃみの回数の評価
経口投与の終了日に、「くしゃみ」の回数を10分間測定し、その回数を記録した。
【0052】
(3)鼻過敏症症状(水溶性鼻漏、鼻の腫れ及び発赤)の評価
経口投与の終了日に、鼻過敏症症状として、「水溶性鼻漏」、「鼻の腫れ及び発赤」を下記表2に示す指標により評価しスコア化した。
【0053】
【0054】
2.試験結果
くしゃみの回数の結果を
図4に、鼻過敏症症状(鼻症状スコア)の結果を
図5に示す。
アレルギー性のくしゃみ回数は、レンコンエキス粉末由来のプロアントシアニジンとエピガロカテキンガレートとを組み合わせて投与したTDI感作鼻過敏症モデルラット(陽性対照)に対し、28mg/kg投与群(Mix28)においてそれぞれの単独投与群(LR14、LR28、EGCG)に比べて有意に低下した。また低用量投与群の14mg/kg投与群(Mix14)では有意なくしゃみ回数の低下は確認されなかった。また、鼻症状スコアは、TDI(陽性対照)に対して、28mg/kg投与群(Mix28)において有意な低下が認められた。
【0055】
これらの結果から、レンコンエキス粉末由来プロアントシアニジン(LR)とエピガロカテキンガレート(EGCG)を特定の割合で組み合わせることにより、アレルギー性のくしゃみ症状を抑制することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、アレルギー性の鼻炎症状、特にくしゃみ症状を予防又は改善するための医薬品、健康食品や機能性食品などの飲食品の製造分野において利用できる。