(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】インサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20230919BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020009664
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2021-12-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 佳範
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154331(JP,A)
【文献】特開2017-140767(JP,A)
【文献】特開平04-010916(JP,A)
【文献】特開平11-309720(JP,A)
【文献】特開2003-041193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内にインサートされた金属部材を前記成形型の成形面から離れた位置にて支持するとともに、キャビティ内に樹脂を充填することにより、前記金属部材の表面に樹脂部材を一体成形してインサート成形品を製造する方法において、
前記樹脂部材の成形に先立ち、前記金属部材に樹脂製の受け部材を取り付け、
前記成形型の成形面によって前記受け部材を支持
するとともに前記成形型から前記金属部材全体を離した状態で前記樹脂部材を成形し、
前記受け部材は、前記金属部材に設けられた孔に嵌入される軸部と、前記軸部の両端に設けられ、前記金属部材の表面の外側に位置するとともに前記軸部よりも拡径された一対の端部と、を有する、
インサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の表面に樹脂部材を一体成形してインサート成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ワイパを構成するワイパブレードが開示されている。このワイパブレードは、樹脂材によって一体成形されたブレード本体と、金属板によって形成され、ブレード本体の内部に埋設された平板部材とを備えている。平板部材には、ホルダ部材がリベットを介して固定されている。ホルダ部は、ブレード本体の開口部から外部に突出している。
【0003】
こうしたワイパブレードは、成形型内に、ホルダ部が固定された平板部材をインサートした状態でキャビティ内に樹脂を充填することにより、平板部材の表面にブレード本体が一体成形される。このとき、ホルダ部は成形型に当接支持されているため、樹脂によって覆われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホルダ部は、金属部品であり、外部に露出しているため、空気や雨水に含まれる酸素や塩素と反応することで腐食しやすい。その結果、金属部品の外観が損なわれるといった問題や、金属部品が腐食する際に発生するアルカリ物質によって樹脂部材が劣化するといった問題が生じる。
【0006】
こうした問題に対して、樹脂部品の成形に先立ち、金属部品に対して防錆のための表面処理を施すことが考えられる。しかしながら、この場合には、樹脂部品の成形時に発生する熱によって表面処理層が劣化するといった別の問題が生じる。
【0007】
さらに、金属部材として防錆性の高い材料を採用することが考えられる。しかしながら、この場合には、金属部材の強度を確保することが難しいといった別の問題が生じる。
なお、こうした問題は、ワイパブレードに限定されるものではなく、金属部材の表面に樹脂部材が一体成形されてなるインサート成形品においては同様にして生じる。
【0008】
本発明の目的は、金属部材の腐食を抑制できるインサート成形品を容易に製造することのできるインサート成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するためのインサート成形品の製造方法は、成形型内にインサートされた金属部材を前記成形型の成形面から離れた位置にて支持部材により支持するとともに、キャビティ内に樹脂を充填することにより、前記金属部材の表面に樹脂部材を一体成形してインサート成形品を製造する。同方法は、前記支持部材により前記金属部材を直接支持した状態で前記キャビティ内に前記樹脂を充填する第1工程と、前記第1工程において前記キャビティ内に前記樹脂を充填している途中で、前記支持部材を前記金属部材から離すとともに前記支持部材と前記金属部材との間に形成される隙間に樹脂を充填する第2工程と、を備える。
【0010】
同方法によれば、支持部材により金属部材が直接支持された状態でキャビティ内に樹脂が充填される。これにより、金属部材の表面のうち支持部材に当接している部分を除く他の部分が樹脂によって覆われる。また、キャビティ内に樹脂が充填されている途中で、支持部材が金属部材から離される。これにより、支持部材と金属部材との間に形成される隙間に樹脂が充填されるようになる。
【0011】
このようにして成形されたインサート成形品においては、金属部材が外部に露出しないため、金属部材の腐食を抑制できる。このため、樹脂部材の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材の表面処理を行う必要がなくなる。また、金属部材の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。
【0012】
また、上記目的を達成するためのインサート成形品の製造方法は、成形型内にインサートされた金属部材を前記成形型の成形面から離れた位置にて支持するとともに、キャビティ内に樹脂を充填することにより、前記金属部材の表面に樹脂部材を一体成形してインサート成形品を製造する。同方法は、前記金属部材のうち前記樹脂部材から外部に突出する位置に受け部を設け、前記受け部を支持した状態で前記樹脂部材を成形し、前記樹脂部材の成形後に前記受け部を除去し、前記金属部材の端面に防錆剤を設ける。
【0013】
同方法によれば、金属部材の受け部が支持された状態でキャビティ内に樹脂が充填されることにより、樹脂部材が成形される。その後、金属部材の受け部が除去される。そして、金属部材の端面に防錆剤が設けられる。
【0014】
このようにして成形されたインサート成形品においては、金属部材の端面の腐食を抑制できる。このため、樹脂部材の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材の表面処理を行う必要がなくなる。また、金属部材の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。
【0015】
また、上記目的を達成するためのインサート成形品の製造方法は、成形型内にインサートされた金属部材を前記成形型の成形面から離れた位置にて支持するとともに、キャビティ内に樹脂を充填することにより、前記金属部材の表面に樹脂部材を一体成形してインサート成形品を製造する。同方法は、前記樹脂部材の成形に先立ち、前記金属部材に樹脂製の受け部材を取り付け、前記受け部材を支持した状態で前記樹脂部材を成形する。
【0016】
同方法によれば、樹脂部材の成形に先立ち、金属部材に樹脂製の受け部材が取り付けられる。その後、受け部材が支持された状態でキャビティ内に樹脂が充填される。これにより、金属部材の表面のうち受け部材に当接している部分を除く部分が樹脂によって覆われるとともに、受け部材のうち成形型に当接している部分を除く他の部分が樹脂によって覆われる。なお、受け部材の表面のうち支持されている部分は外部に露出することとなる。
【0017】
このようにして成形されたインサート成形品においては、金属部材が外部に露出しないため、金属部材の腐食を抑制できる。このため、樹脂部材の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材の表面処理を行う必要がなくなる。また、金属部材の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属部材の腐食を抑制できるインサート成形品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の製造方法により製造されるインサート成形品を示す斜視図。
【
図3】第1工程においてキャビティ内に樹脂が充填されている状態を示す断面図。
【
図4】第2工程において支持部材と金属部材との間に形成される隙間に樹脂が充填されている状態を示す断面図。
【
図5】第2実施形態の製造方法により製造されるインサート成形品を示す斜視図。
【
図8】第3実施形態の製造方法により製造されるインサート成形品を示す斜視図。
【
図10】同実施形態のキャビティ内に樹脂が充填されている状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図4を参照して、インサート成形品の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、インサート成形品30は、長尺板状であり、且つ断面L字状である。
図2に示すように、インサート成形品30は、金属部材31と、金属部材31の表面に一体成形された樹脂部材32とを有している。
【0022】
本実施形態の金属部材31は、長尺板状であり、且つ断面L字状である。金属部材31は、鋼材からなり、インサート成形品30の長手方向の略全体にわたって埋設されている。
【0023】
金属部材31には、厚さ方向に貫通する孔31aが設けられている。なお、図示は省略するが、本実施形態では、2つの孔31aが、金属部材31の長手方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0024】
樹脂部材32は、熱可塑性樹脂からなり、金属部材31の表面全体を覆っている。
図1及び
図2に示すように、樹脂部材32の表面における孔31aに対応する位置には、窪み部32aが形成されている。窪み部32aは、樹脂部材32の両面にそれぞれ形成されている(
図2参照)。
【0025】
次に、インサート成形品30を製造する成形型10について説明する。
図3及び
図4に示すように、成形型10は、第1型11と、第1型11に対して進退可能に設けられた第2型12とを備えている。
【0026】
第1型11における第2型12に対向する面(
図3及び
図4の上面)には、成形面13が形成されている。
第2型12における第1型11に対向する面(
図3及び
図4の下面)には、成形面14が形成されている。
【0027】
第1型11には、成形面13から第2型12に向かって突出する先端を有するとともに、第2型12に向かって進退可能な第1支持部材21が設けられている。第1支持部材21は、第1型11に対してスライド可能に設けられている。
【0028】
第2型12には、成形面14から第1型11に向かって突出する先端を有するとともに、第1型11に向かって進退可能な第2支持部材22が設けられている。第2支持部材22は、第2型12に対してスライド可能に設けられている。
【0029】
第1支持部材21の先端及び第2支持部材22の先端は、共に先細状である。
なお、図示は省略するが、第1支持部材21及び第2支持部材22は、金属部材31の2つの孔31aに対応してそれぞれ2つ設けられている。
【0030】
第1型11と第2型12とが型締めされることで、成形面13,14及び支持部材21,22によって、溶融樹脂(以下、樹脂R)が充填される空間であるキャビティ15が形成される。
【0031】
次に、本実施形態の成形型10を用いたインサート成形品30の製造方法について説明する。
まず、金属部材31の2つの孔31aを第1型11の2つの第1支持部材21の先端に係合させた状態で第1型11と第2型12とを型締めする(
図3参照)。これにより、第2型12の2つの第2支持部材22の先端が金属部材31の2つの孔31aに係合する。このようにして成形型10内にインサートされた金属部材31を成形型10の成形面13,14から離れた位置にて支持部材21,22により直接支持することにより、キャビティ15に対する金属部材31の位置決めが行われる。
【0032】
続いて、
図3に示すように、支持部材21,22により金属部材31を直接支持した状態でキャビティ15内に樹脂Rを射出して充填する(第1工程)。
続いて、
図4に示すように、第1工程においてキャビティ15内に樹脂Rを射出して充填している途中で、支持部材21,22を金属部材31から離すとともに支持部材21,22と金属部材31との間に形成される隙間に樹脂Rを充填する(第2工程)。
【0033】
ここで、支持部材21,22を金属部材31から離すタイミングは、支持部材21,22を金属部材31から離しても金属部材31が樹脂Rの流動圧によって変位しない程度にキャビティ15内に樹脂Rが充填された後であって、上記隙間に対して樹脂Rを充填することができる程度に樹脂Rの流動性が確保されている期間内に設定されている。
【0034】
このようにしてキャビティ15内に樹脂Rを充填することにより、金属部材31の表面に樹脂部材32を一体成形してインサート成形品30が製造される。
なお、樹脂部材32の表面の窪み部32aは、支持部材21,22の先端によって形成される。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
支持部材21,22により金属部材31が直接支持された状態でキャビティ15内に樹脂Rが充填されることにより、金属部材31の表面のうち支持部材21,22に当接している部分を除く他の部分が樹脂Rによって覆われる。
【0036】
また、キャビティ15内に樹脂Rが充填されている途中で、支持部材21,22が金属部材31から離されることにより、支持部材21,22と金属部材31との間に形成される隙間に樹脂Rが充填されるようになる。
【0037】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の製造方法によって成形されたインサート成形品30においては、金属部材31が外部に露出しないため、金属部材31の腐食を抑制できる。このため、樹脂部材32の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材31の表面処理を行う必要がなくなる。金属部材31の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材32としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。したがって、金属部材31の腐食を抑制できるインサート成形品30を容易に製造することができる。
【0038】
<第2実施形態>
以下、
図5~
図7を参照して、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
なお、本実施形態において、第1実施形態と同一または対応する構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
図5に示すように、インサート成形品30は、金属部材31と、金属部材31の表面に一体成形された樹脂部材32とを有している。
【0040】
金属部材31には、孔31aが設けられていない。
樹脂部材32は、金属部材31の表面のうち金属部材31の長手方向の両方の端面31cを除く他の部分全体を覆っている。樹脂部材32の表面には、窪み部32aが形成されていない。
【0041】
金属部材31の両方の端面31cには、防錆剤33が設けられている。
本実施形態の成形型10は、第1実施形態の成形型10と同様な構成を備えている。ただし、本実施形態の成形型10には、支持部材21,22が設けられていない。
【0042】
次に、インサート成形品30の製造方法について説明する。
本実施形態では、
図6に示す金属部材31を用いる。金属部材31は、本体部分(インサート成形品30を構成する部分)の長手方向の両端からそれぞれ外側に向かって長手方向に沿って延在する一対の受け部31bを有する。各受け部31bは、平板状である。
【0043】
まず、成形型10を構成する第1型11及び第2型12にそれぞれ設けられた支持部(図示略)によって一対の受け部31bを支持した状態で、キャビティ15内に樹脂Rを射出して充填する。これにより、樹脂部材32が成形され、
図7に示す中間製造品が形成される。一対の受け部31bは、金属部材31のうち樹脂部材32から外部に突出する位置に設けられている。
【0044】
続いて、樹脂部材32の成形後に各受け部31bを切除することにより、各端面31cが形成される。そして、各端面31cに防錆剤33を設けることにより、インサート成形品30が製造される。
【0045】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(2)支持部材21,22により金属部材31の受け部31bが支持された状態でキャビティ15内に樹脂Rが充填されることにより、樹脂部材32が成形される。その後、金属部材31の受け部31bが除去される。そして、金属部材31の端面31cに防錆剤33が設けられる。
【0046】
本実施形態の製造方法によって成形されたインサート成形品30においては、金属部材31の端面31cの腐食を抑制できる。このため、樹脂部材32の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材31の表面処理を行う必要がなくなる。また、金属部材31の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材32としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。したがって、金属部材31の腐食を抑制できるインサート成形品30を容易に製造することができる。
【0047】
<第3実施形態>
以下、
図8~
図10を参照して、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
なお、本実施形態において、第1実施形態と同一または対応する構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
図8~
図10に示すように、インサート成形品30は、金属部材31と、金属部材31に取り付けられた樹脂製の受け部材34と、金属部材31の表面に一体成形された樹脂部材32とを有している。
【0049】
本実施形態では、2つの受け部材34が、金属部材31の2つの孔31aにそれぞれ取り付けられている。
受け部材34は、孔31aに嵌入される軸部34aと、軸部34aの両端に設けられ、軸部34aよりも拡径された一対の端部34bとを有している。端部34bの端面には、後述する成形型10の支持部16,17が係合可能な凹部34cが設けられている。なお、孔31aへの受け部材34の取り付け態様は、熱カシメによるものであってもよいし、スナップフィットによるものであってもよいし、あるいは成形によるものであってもよい。
【0050】
図8及び
図10に示すように、樹脂部材32は、金属部材31の表面のうち受け部材34の端部34bによって覆われた部分を除く部分の全体を覆っている。
図10に示すように、本実施形態の成形型10は、第1実施形態の成形型10と同様な構成を備えている。ただし、本実施形態の成形型10には、支持部材21,22が設けられていない。
【0051】
第1型11には、成形面13から第2型12に向かって突出する第1支持部16が設けられている。
第2型12には、成形面14から第1型11に向かって突出する第2支持部17が設けられている。
【0052】
第1支持部16の先端及び第2支持部17の先端は、共に先細状である。
なお、図示は省略するが、第1支持部16及び第2支持部17は、金属部材31に取り付けられた2つの受け部材34の両端に設けられた凹部34cに対応してそれぞれ2つ設けられている。
【0053】
次に、本実施形態の成形型10を用いたインサート成形品30の製造方法について説明する。
まず、樹脂部材32の成形に先立ち、金属部材31の2つの孔31aに樹脂製の2つの受け部材34を取り付ける。
【0054】
続いて、2つの受け部材34の凹部34cを第1型11の2つの第1支持部16の先端に係合させた状態で第1型11と第2型12とを型締めする。これにより、第2型12の2つの第2支持部17の先端が2つ受け部材34の凹部34cに係合する。このとき、各受け部材34の両方の端部34bの端面は、支持部16,17及び成形面13,14に当接する。このようにして成形型10内にインサートされた金属部材31を成形型10の成形面13,14から離れた位置にて支持部16,17により直接支持することにより、キャビティ15に対する金属部材31の位置決めが行われる。
【0055】
続いて、
図10に示すように、キャビティ15内に樹脂Rを射出して充填することにより、金属部材31の表面に樹脂部材32を一体成形してインサート成形品30が製造される。
【0056】
なお、樹脂部材32の成形に際して、支持部16,17及び成形面13,14により当接されていた受け部材34の端部34bの端面は、外部に露出することとなる(
図8参照)。
【0057】
次に、本実施形態の作用について説明する。
樹脂部材32の成形に先立ち、金属部材31に樹脂製の受け部材34が取り付けられる。その後、受け部材34が支持された状態でキャビティ15内に樹脂Rが充填される。これにより、金属部材31の表面のうち受け部材34に当接している部分を除く部分が樹脂Rによって覆われるとともに、受け部材34のうち支持部16,17及び成形面13,14に当接している部分を除く他の部分が樹脂Rによって覆われる。
【0058】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(3)本実施形態の製造方法によって成形されたインサート成形品30においては、金属部材31が外部に露出しないため、金属部材31の腐食を抑制できる。このため、樹脂部材32の成形に先立ち、腐食抑制のために金属部材31の表面処理を行う必要がなくなる。また、金属部材31の材料として腐食に弱い材料を選択することや、樹脂部材32としてアルカリ物質に対する耐性の低い材料を選択することが可能となる。したがって、金属部材31の腐食を抑制できるインサート成形品30を容易に製造することができる。
【0059】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
・第1実施形態及び第3実施形態において、金属部材31の孔31aの数を3つ以上にすることもできる。また、キャビティ15に対する金属部材31の位置決めを行うことができるのであれば、孔31aの数を1つにすることもできる。この場合、孔31aの形状を多角形状にすることが好ましい。
【0061】
・第1実施形態及びその変形例において、金属部材31を厚さ方向に貫通する孔31aに代えて、金属部材31の厚さ方向の両面にそれぞれ凹部を形成するようにしてもよい。また、金属部材31に支持部材21,22と係合可能な凸部を設けるようにしてもよい。要するに、支持部材21,22によって支持されるために係合可能な形状であればよい。
【0062】
・第1実施形態及びその変形例において、樹脂部材32の表面に窪み部32aが形成されないようにすることもできる。この場合、支持部材21,22の先端面を支持部材21,22と隣り合う成形面13,14に沿った平面にするとともに、第2工程において当該先端面が当該成形面13,14と面一となる位置まで支持部材21,22を退避させればよい。
【0063】
・第2実施形態において、受け部31bの数は1つにすることもできるし、3つ以上にすることもできる。
・第3実施形態及びその変形例において、金属部材31を厚さ方向に貫通する孔31aに代えて、金属部材31の厚さ方向の両面にそれぞれ凹部を形成するようにしてもよい。また、金属部材31に受け部材を取り付けるための凸部を設けるようにしてもよい。要するに、受け部材が取り付け可能な形状であればよい。
【0064】
・上記各実施形態において、インサート成形品30の形状、すなわち金属部材31の形状及び樹脂部材32の形状を平板状や筒状など任意の形状に変更することができる。
・金属部材31として、アルミニウム材や銅材など鋼材以外の金属材を採用することもできる。
【0065】
・樹脂部材32として熱硬化性樹脂を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
10…成形型
11…第1型
12…第2型
13…成形面
14…成形面
15…キャビティ
16…第1支持部
17…第2支持部
21…第1支持部材
22…第2支持部材
30…インサート成形品
31…金属部材
31a…孔、
31b…受け部
31c…端面
32…樹脂部材
32a…窪み部
33…防錆剤
34…受け部材
34a…軸部
34b…端部
34c…凹部