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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】粒子分離方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/023 20060101AFI20230919BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230919BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20230919BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20230919BHJP
   G01N 27/74 20060101ALI20230919BHJP
   G01N 27/76 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B03C1/023
B01J19/00 321
B01J19/08 D
B03C1/00 B
G01N27/74
G01N27/76
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020157446
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2018555075の分割
【原出願日】2017-12-08
(65)【公開番号】P2021006344
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2016238438
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515295968
【氏名又は名称】株式会社カワノラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-1163(JP,A)
【文献】特開2002-86015(JP,A)
【文献】特表平6-504581(JP,A)
【文献】特表平4-503373(JP,A)
【文献】特開2005-214885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/00-1/32
B01J19/00
B01J19/08
G01N27/74
G01N27/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに結晶形が異なる第1粒子及び第2粒子を分離する粒子分離方法であって、
前記第1粒子及び前記第2粒子と同じ種類の基準粒子の体積磁化率を前記結晶形ごとに示す基準データを参照して、前記第1粒子及び前記第2粒子よりも体積磁化率が大きい溶媒を用意する工程と、
磁束密度の勾配により、前記第1粒子及び前記第2粒子を含む前記溶媒が流れる第1方向とは反対の第2方向の磁気力を前記第1粒子及び前記第2粒子に作用させて、前記磁気力により、前記第2粒子をトラップする工程と
を包含し、
前記第1粒子に作用する前記磁気力である第1磁気力は、前記第1粒子の体積磁化率と前記溶媒の体積磁化率との差に応じた大きさとなり、
前記第2粒子に作用する前記磁気力である第2磁気力は、前記第2粒子の体積磁化率と前記溶媒の体積磁化率との差に応じた大きさとなり、
前記第1粒子及び前記第2粒子は、前記溶媒が前記第1方向に流れることにより前記溶媒から駆動力を受けて前記第1方向に移動し、
前記溶媒を用意する工程において、前記溶媒として、前記第1磁気力が前記駆動力よりも小さくなり、前記第2磁気力が前記駆動力以上となる体積磁化率を有する溶媒を用意する、粒子分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分離装置、及び粒子分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は過去に、粒子の体積磁化率(単位体積当たりの磁化率)を用いて、粒子の空隙率を測定する装置及び方法を提案した(特許文献1)。また、本発明者等は過去に、粒子の体積磁化率を用いて、粒子の表面積、粒子に形成されている各細孔の直径の平均値、各細孔の深さの平均値、各細孔の体積の平均値、及び細孔の個数を測定する装置及び方法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/021910号
【文献】国際公開第2015/030184号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、粒子の体積磁化率について更に研究を進めた結果、粒子が複数の結晶形を有する場合、結晶形の相違が体積磁化率に反映されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は、粒子を結晶形に応じて分離することができる粒子分離装置及び粒子分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る粒子分離装置は、粒子が有し得る結晶形ごとに前記粒子を分離する。粒子分離装置は、粒子トラップ部を備える。前記粒子トラップ部は、磁束密度の勾配を生成し、前記粒子を含む溶媒が流れる方向とは反対方向の磁気力を前記粒子に作用させる。前記粒子トラップ部は、前記磁気力により、特定の結晶形を有する前記粒子をトラップする。
【0007】
ある実施形態において、粒子分離装置は、複数の前記粒子トラップ部を備える。
【0008】
ある実施形態において、前記複数の粒子トラップ部は、前記溶媒が流れる方向に沿って並ぶ。
【0009】
ある実施形態において、前記複数の粒子トラップ部はそれぞれ、磁束密度と磁束密度の勾配との積の値B(dB/dx)が互いに異なる磁場を生成する。
【0010】
本発明に係る粒子分離方法は、粒子が有し得る結晶形ごとに前記粒子を分離する方法である。粒子分離方法は、磁束密度の勾配により、前記粒子を含む溶媒が流れる方向とは反対方向の磁気力を前記粒子に作用させる工程を包含する。前記磁気力を前記粒子に作用させる工程において、前記磁気力により、特定の結晶形を有する前記粒子をトラップする。
【0011】
ある実施形態において、粒子分離方法は、前記特定の結晶形を有する粒子をトラップさせる体積磁化率を有する前記溶媒を用意する工程を更に包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粒子分離装置及び粒子分離方法によれば、粒子を結晶形に応じて分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る粒子分析装置の模式図である。
図2】銅フタロシニアンの体積磁化率の測定結果を示す図である。
図3】テオフィリンの体積磁化率の測定結果を示す図である。
図4】(a)及び(b)は本発明の実施形態1に係る粒子の動きを示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る粒子分析装置の構成を示す図である。
図6】本発明の実施形態1に係る基準データの一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態1に係る粒子分析方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態2に係る粒子分離装置の構成を示す図である。
図9】(a)は本発明の実施形態2に係る第1粒子の動きを示す図であり、(b)は本発明の実施形態2に係る第2粒子の動きを示す図である。
図10】本発明の実施形態2に係る粒子分離方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態3に係る粒子分離装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本実施形態の粒子分析装置10の模式図である。粒子分析装置10は、粒子pの結晶形を判定する。具体的には、粒子分析装置10は、磁場生成部20と、検出部30と、演算部40とを備える。磁場生成部20の近傍にセル21が配置される。
【0016】
磁場生成部20は、セル21内の粒子pを磁気泳動させる。粒子pは結晶性を示す粒子である。以下、結晶性を示す粒子を、「結晶粒子」と記載する場合がある。検出部30は、セル21内の粒子pを検出する。演算部40は、検出部30による検出の結果から、粒子pの粒径及び磁気泳動速度を取得する。また、演算部40は、粒子pの粒径及び磁気泳動速度に基づいて、粒子pの体積磁化率を測定する。そして、演算部40は、粒子pの粒径及び体積磁化率に基づいて、粒子pの結晶形を判定する。以下、粒子分析装置10について更に詳細に説明する。
【0017】
磁場生成部20は、磁場勾配(磁束密度の勾配)を生成して、セル21内の粒子pに磁気力を作用させる。この結果、粒子pが磁気泳動する。本実施形態において、磁場生成部20は、磁場勾配を生成する一対の永久磁石を備える。一対の永久磁石を構成する2つの永久磁石は、例えば100μm以上500μm以下の一定距離の空隙を空けて配置される。セル21は、2つの永久磁石の間の空隙に配置される。
【0018】
本実施形態において、セル21はキャピラリー管である。キャピラリー管は管状部材の一例である。セル21の材質は、可視光あるいはレーザー光を透過し得る材質であれば特に限定されない。例えば、セル21は、ガラス製あるいはプラスチック製であり得る。
【0019】
粒子pは、媒体m中に存在する。媒体m中に1つの粒子pが存在してもよいし、媒体m中に複数の粒子pが存在してもよい。媒体m中に複数の粒子pが存在する場合、複数の粒子pは、媒体m中で分散していてもよいし、媒体m中で偏在していてもよい。媒体mは液体であってもよく、気体であってもよい。媒体mは、例えば、水や、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトニトリル、アセトンのうちから選択され得る。又は、媒体mは、例えば、水や、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトニトリル、アセトンのうちの2つ以上を混合した混合物であり得る。あるいは、媒体mは、例えば空気であり得る。
【0020】
粒子pは、例えばマイクロシリンジ又はマイクロポンプにより、媒体mと共にセル21に導入される。あるいは、粒子pは、サイフォンの原理に基づいて、媒体mと共にセル21に導入され得る。あるいは、粒子pを含む液滴(溶液)を毛細管現象によってセル21(キャピラリー管)に導入してもよい。粒子pを含む液滴がキャピラリー管の一方端に滴下されると、毛細管現象によって液滴がキャピラリー管を流れる。
【0021】
分析対象の粒子pは、異なる結晶形(複数の結晶形)を有する。例えば、粒子pは、異なる結晶形として、異なる結晶構造を示し得る。また、粒子pは、異なる結晶形として、無水物結晶と水和物結晶とを示し得る。また、粒子pは、異なる結晶形として、異なる有機溶媒分子が結合した有機溶媒和物結晶を示し得る。
【0022】
例えば、粒子pとして、銅フタロシニアン、及びテオフィリンを挙げることができる。銅フタロシニアンは、青色顔料の成分として知られている。テオフィリンは、気管支喘息や慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器系疾患の治療に用いられる医薬品の成分として知られている。銅フタロシニアンは、異なる結晶形として、異なる結晶構造を示す。具体的には、銅フタロシニアンの結晶形は、α結晶及びβ結晶を含む。テオフィリンは、異なる結晶形として、無水物結晶及び水和物結晶を含む。
【0023】
粒子pの粒径と体積磁化率との関係(体積磁化率の分布)は、結晶形によって異なる。例えば、銅フタロシニアンの粒径と体積磁化率との関係(体積磁化率の分布)は、α結晶とβ結晶とで異なる(図2を参照)。粒子分析装置10は、分析対象の粒子pが銅フタロシニアンである場合、粒子p(銅フタロシニアン)の結晶形がα結晶及びβ結晶のうちのいずれであるかを判定する。同様に、テオフィリンの粒径と体積磁化率との関係(体積磁化率の分布)は、水和物結晶と無水物結晶とで異なる(図3を参照)。粒子分析装置10は、分析対象の粒子pがテオフィリンである場合、粒子p(テオフィリン)の結晶形が水和物結晶及び無水物結晶のうちのいずれであるかを判定する。
【0024】
検出部30は、セル21内の粒子pを検出して、セル21内の粒子pの位置及び粒径を示す信号を生成する。演算部40は、検出部30が生成する信号に基づいて、粒子pの粒径及び磁気泳動速度を測定する。演算部40は、記憶装置41と、処理装置42とを備える。
【0025】
記憶装置41は、プログラム及び設定情報などを記憶する。記憶装置41は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)によって構成され得る。処理装置42は、記憶装置41に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、数値計算や情報処理、機器制御のような様々な処理を行う。処理装置42は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のようなプロセッサーを含み得る。演算部40として、例えばパーソナルコンピューターのような汎用コンピューターが用いられる。
【0026】
処理装置42は、検出部30が生成する信号から、粒子pの位置の時間的な変化を取得する。例えば、検出部30が所定の時間間隔ごとにセル21内の粒子pを検出する。この結果、異なる時刻の粒子pの位置を測定することができる。処理装置42は、粒子pの位置の時間的な変化から、粒子pの磁気泳動速度を測定する。
【0027】
また、処理装置42は、検出部30が生成する信号から、粒子pの粒径を測定する。処理装置42は、粒子pの粒径及び磁気泳動速度に基づいて、粒子pの体積磁化率を測定する。
【0028】
例えば、処理装置42は、以下の式(1)に基づいて、粒子pの体積磁化率を算出する。
v={2(χs-χm)r2/9ημo}B(dB/dx)・・・(1)
【0029】
式(1)において、vは粒子pの磁気泳動速度であり、χsは粒子pの体積磁化率であり、χmは媒体mの体積磁化率であり、rは粒子pの半径であり、ηは媒体mの粘性率であり、μoは真空の透磁率であり、Bは磁束密度であり、dB/dxは磁場勾配(磁束密度の勾配)である。なお、式(1)は、粒子p及び媒体mが受けるセル21(キャピラリー管)の軸方向の磁気力の差と、粘性抵抗力とがほぼ等しいことから導かれる。
【0030】
記憶装置41は、基準データ43を記憶している。基準データ43は、分析対象の粒子pと同じ種類の基準粒子の粒径と体積磁化率との関係を、分析対象の粒子p(基準粒子)が有し得る結晶形ごとに示す。処理装置42は、分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率と、基準データ43とに基づいて、分析対象の粒子pの結晶形を判定する。例えば、分析対象の粒子pが銅フタロシニアンである場合、基準データ43は、α結晶の粒径と体積磁化率との関係、及びβ結晶の粒径と体積磁化率との関係を示す。同様に、分析対象の粒子pがテオフィリンである場合、基準データ43は、水和物結晶の粒径と体積磁化率との関係、及び無水物結晶の粒径と体積磁化率との関係を示す。
【0031】
続いて図4(a)及び図4(b)を参照して、粒子pの動きを説明する。図4(a)及び図4(b)は、粒子pの動きを示す図である。詳しくは、図4(a)及び図4(b)は、粒子p及び媒体mの体積磁化率と粒子pの移動方向との関係を示す。図4(a)及び図4(b)に示すように、磁場生成部20は、磁極がN極の永久磁石20aと、磁極がS極の永久磁石20bとを備える。2つの永久磁石20a、20bは、セル21を挟んで対向する。
【0032】
図4(a)に示すように、粒子pの体積磁化率が媒体mの体積磁化率よりも小さい場合、粒子pは磁場(磁場生成部20)から遠ざかる方向に移動する。一方、図4(b)に示すように、粒子pの体積磁化率が媒体mの体積磁化率よりも大きい場合、粒子pは磁場(磁場生成部20)に近づく方向に移動する。
【0033】
図4(a)及び図4(b)に示すように、粒子pの動きは、粒子p及び媒体mの体積磁化率に応じて決定される。なお、粒子pは永久磁石20a、20bの端部の近傍において力を受ける。例えば、粒子pは永久磁石20a、20bの端部の近傍から±200μm程度の範囲で力を受ける。
【0034】
続いて図5を参照して、粒子分析装置10について更に説明する。図5は、粒子分析装置10の構成を示す図である。図5に示すように、粒子分析装置10は、光源50を更に備える。また、検出部30は、拡大部32及び撮像部34を備える。
【0035】
光源50は、可視光成分を含む比較的高い強度の光を出射する。光源50は、セル21に光を照射する。この結果、粒子pに光が照射される。光源50から出射される光の波長スペクトルは比較的ブロードであってもよい。光源50として、例えば、ハロゲンランプが好適に用いられる。
【0036】
セル21に導入された粒子pは、拡大部32によって適当な倍率で拡大されて、撮像部34で撮像される。撮像部34の撮像結果(撮像部34が撮像した画像)から、粒子pの位置を特定できる。例えば、拡大部32は対物レンズを含み、撮像部34は電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)を含む。あるいは、撮像部34の各画素は、フォトダイオード又は光電子倍増管で構成されてもよい。撮像部34は、例えば、所定の時間間隔ごとに粒子pを撮像する。なお、撮像部34は、光源50から出射されてセル21を透過した光を撮像してもよいし、光源50から出射されて粒子pによって散乱された光を撮像してもよい。
【0037】
演算部40(処理装置42)は、撮像部34の撮像結果から、粒子pの位置の時間的な変化を取得し、粒子pの位置の時間的な変化から粒子pの磁気泳動速度を測定する。
【0038】
また、演算部40(処理装置42)は、粒子pの撮像結果から粒子pの粒径を測定する。例えば、演算部40(処理装置42)は、以下の処理を実行する。即ち、まず、撮像部34によって撮像された画像をモノクロ化し、その輝度を数値化する。次に、輝度値の微分値をしきい値と比較して粒子pの境界を設定する。次に、設定した境界から粒子pの面積を検出し、その面積に対応する円の半径から粒径を求める。あるいは、粒子pの中心を規定し、粒子pの中心を通過する複数の直線を引き、各直線において粒子pの境界と交わる2つの点の間の距離の平均を求める。
【0039】
続いて図6を参照して、基準データ43について説明する。図6は、基準データ43の一例を示す図である。詳しくは、図6は、基準粒子の粒径と体積磁化率との関係を示す。
【0040】
図6において、横軸は粒径を示し、縦軸は体積磁化率を示す。また、図6において、グラフ430は、基準粒子の粒径と体積磁化率との関係を、基準粒子が有し得る結晶形ごとに示す。図1を参照して説明した記憶装置41は、グラフ430に対応する基準データ43を記憶する。具体的には、記憶装置41は、基準データ43として、グラフ430の式を示すデータを記憶する。又は、記憶装置41は、基準データ43として、グラフ430に対応するテーブルを示すデータを記憶する。
【0041】
例えば、分析対象の粒子p(基準粒子)が2種類の結晶形を有する場合、図6に示すように、グラフ430は、第1グラフ431と第2グラフ432とを含む。第1グラフ431は、2種類の結晶形のうちの一方の結晶形を示す第1結晶形に対応し、第2グラフ432は、2種類の結晶形のうちの他方の結晶形を示す第2結晶形に対応する。この場合、基準データ43は、第1グラフ431に対応する第1基準データと、第2グラフ432に対応する第2基準データとを含む。
【0042】
図1を参照して説明した処理装置42は、分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率を取得すると、第1基準データ及び第2基準データを参照して、分析対象の粒子pの結晶形が第1結晶形であるのか第2結晶形であるのかを判定する。
【0043】
具体的には、処理装置42は、第1基準データ及び第2基準データの各々から、分析対象の粒子pの粒径と同じ粒径を有する基準粒子の体積磁化率を取得する。以下、分析対象の粒子pの粒径と同じ粒径を有する基準粒子の体積磁化率を「基準体積磁化率」と記載する場合がある。処理装置42は、取得した基準体積磁化率のうちから、分析対象の粒子pの体積磁化率に最も近い基準体積磁化率を判定する。処理装置42は、この判定の結果に基づき、分析対象の粒子pの結晶形を判定する。
【0044】
なお、基準データ43は、粒径ごとに体積磁化率の範囲を示してもよい。この場合、処理装置42は、基準データ43から、結晶形ごとに、分析対象の粒子pの粒径と同じ粒径を有する基準粒子の体積磁化率の範囲を取得する。以下、分析対象の粒子pの粒径と同じ粒径を有する基準粒子の体積磁化率の範囲を「基準体積磁化率の範囲」と記載する場合がある。処理装置42は、取得した基準体積磁化率の範囲のうちから、分析対象の粒子pの体積磁化率の値を包含する基準体積磁化率の範囲を判定する。
【0045】
あるいは、基準データ43は、粒径ごとに体積磁化率の範囲と体積磁化率の中央値とを示してもよい。この場合、処理装置42は、基準データ43から、結晶形ごとに、分析対象の粒子pの粒径と同じ粒径を有する基準粒子の体積磁化率の範囲(基準体積磁化率の範囲)及び中央値を取得する。処理装置42は、取得した基準体積磁化率の範囲のうちから、分析対象の粒子pの体積磁化率の値を包含する基準体積磁化率の範囲を判定する。複数の基準体積磁化率の範囲が、分析対象の粒子pの体積磁化率の値を包含する場合、処理装置42は、取得した中央値のうちから、分析対象の粒子pの体積磁化率に最も近い中央値を判定する。なお、基準データ43は、中央値に替えて平均値を示してもよい。
【0046】
続いて図7を参照して、本実施形態の粒子分析方法について説明する。図7は、本実施形態の粒子分析方法を示すフローチャートである。本実施形態の粒子分析方法は、図1図6を参照して説明した粒子分析装置10を使用して実行し得る。
【0047】
図7に示すように、まず、分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率を取得する(ステップS1)。次に、分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率と、基準データ43とに基づいて、分析対象の粒子pの結晶形を判定する(ステップS2)。
【0048】
分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率を取得する際には、磁場生成部20がセル21内の粒子pを磁気泳動させ、検出部30が、磁気泳動中の粒子pを検出する。そして、処理装置42が、検出部30による検出の結果から、粒子pの粒径と体積磁化率とを測定する。
【0049】
分析対象の粒子pの結晶形を判定する際には、処理装置42が、分析対象の粒子pの粒径及び体積磁化率と、記憶装置41が記憶する基準データ43とに基づいて、粒子pの結晶形を判定する。
【0050】
以上、実施形態1について説明した。実施形態1によれば、分析対象の粒子pの結晶形を判定することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、磁場生成部20が一対の永久磁石20a、20bを備えたが、磁場生成部20は、磁場勾配を生成するために一対の磁極片(ポールピース)を備えてもよい。あるいは、磁場生成部20は、磁場勾配を生成するために、電磁石、磁気回路、又は超電導磁石を備えてもよい。磁場生成部20が一対の磁極片を備える場合、一対の磁極片を構成する2つの磁極片は、例えば100μm以上500μm以下の一定距離の空隙を空けて配置される。セル21は、2つの磁極片の間の空隙に配置される。磁極片は、例えば、磁化された鉄片であり得る。鉄片は、例えば永久磁石、電磁石、磁気回路、又は超電導磁石によって磁化し得る。
【0052】
また、本実施形態では、セル21がキャピラリー管であったが、セル21は、ガラスセル又はプラスチックセルであってもよい。ガラスセル及びプラスチックセルは、粒子p、又は粒子pを含む媒体mを保持する凹部を有する。あるいは、ガラスセル及びプラスチックセルは、粒子pを含む媒体mが流れる流路を有する。セル21が、マイクロ流路を有するガラスセル又はプラスチックセルである場合、粒子pを含む液滴(溶液)がマイクロ流路の一方端に滴下されると、毛細管現象によって液滴がマイクロ流路を流れる。
【0053】
また、本実施形態では、粒子分析装置10が光源50を備えたが、粒子分析装置10は、光源50に替えてレーザーを備えてもよいし、光源50に加えてレーザーを更に備えてもよい。粒子分析装置10が光源50とレーザーとを備える場合、光源50から光を出射する際には、レーザーからのレーザー光の出射を停止させ、レーザーからレーザー光を出射する際には、光源50からの光の出射を停止させる。レーザーを使用する場合、セル21に導入された粒子pにレーザー光を照射する。撮像部34は、粒子pによって散乱されたレーザー光(散乱光)を、拡大部32を介して撮像する。
【0054】
レーザー光を粒子pに照射する場合、キャピラリー管は、その軸方向に直交する断面形状が正方形の正方形型キャピラリーであることが好ましい。正方形型キャピラリーを使用することにより、セル21の側面のうちレーザー光が照射される面を鏡面仕上げにすることが容易になる。
【0055】
また、本実施形態では、画像解析によって粒子pの粒径を取得したが、粒子pのブラウン運動を解析して、粒子pの粒径を測定してもよい。具体的には、キャピラリー管の軸方向に直交する方向における粒子pの位置の変化(変位)の分散から拡散係数を求め、この拡散係数から粒子pの粒径を求めることができる。あるいは、レーザーを使用して、例えば動的光散乱法又は静的光散乱法に基づいて粒子pの粒径を取得してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、演算部40(処理装置42)が粒子pの粒径を測定したが、撮像部34が撮像した画像をディスプレイに表示させ、ディスプレイに表示された画像から、分析者が粒子pの粒径を測定してもよい。あるいは、撮像部34が撮像した画像を印刷して、印刷した画像から、分析者が粒子pの粒径を測定してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、撮像部34が所定の時間間隔ごとに粒子pを撮像することにより、粒子pの磁気泳動速度を取得したが、レーザーを使用して、例えばレーザードップラー法に基づいて粒子pの磁気泳動速度を測定してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、磁気泳動速度の測定値に基づいて粒子pの体積磁化率を取得したが、SQUID素子、又は磁気天秤などを用いて粒子pの体積磁化率を取得してもよい。この場合、粒子pを磁気泳動させる必要はない。よって、磁場生成部20を省略し得る。
【0059】
また、本実施形態では、基準データ43が、基準粒子の粒径と体積磁化率との関係を結晶形ごとに示したが、基準データ43は、基準粒子の体積磁化率を結晶形ごとに示してもよい。あるいは、基準データ43は、基準粒子の体積磁化率の範囲を結晶形ごとに示してもよいし、基準粒子の体積磁化率の範囲と体積磁化率の中央値又は平均値とを結晶形ごとに示してもよい。この場合、演算部40は、分析対象の粒子pの体積磁化率に基づいて、分析対象の粒子pの結晶形を判定する。即ち、演算部40は、分析対象の粒子pの粒径を参照することなく、分析対象の粒子pの結晶形を判定する。
【0060】
分析対象の粒子pの粒径を参照することなく結晶形を判定する場合、粒子pの粒径に文献値を利用して、分析対象の粒子pの体積磁化率を取得してもよい。粒子pの粒径に文献値を利用することにより、粒径の測定を省略することができる。あるいは、SQUID素子、又は磁気天秤などを用いて粒子pの体積磁化率を取得してもよい。この場合、磁気泳動速度の取得を省略することができる。
【0061】
[実施形態2]
以下、図8図10を参照して本発明の実施形態2について説明する。図8は、本実施形態の粒子分離装置100の構成を示す図である。粒子分離装置100は、粒子pが有し得る結晶形ごとに、粒子p(結晶粒子)を分離する。
【0062】
図8に示すように、粒子分離装置100は、粒子トラップ部120を備える。粒子トラップ部120の近傍にセル200が配置される。セル200はキャピラリー管のような管状部材である。セル200の材質は特に限定されない。例えば、セル200は、例えばガラス製又はプラスチック製であり得る。
【0063】
粒子トラップ部120は、磁場勾配(磁束密度の勾配)を生成して、セル200内の粒子pに磁気力を作用させる。本実施形態において、粒子トラップ部120は、磁場勾配を生成する一対の永久磁石120a、120bを備える。2つの永久磁石120a、120bは、例えば100μm以上500μm以下の一定距離の空隙を空けて配置される。セル200は、2つの永久磁石120a、120bの間の空隙に配置される。
【0064】
本実施形態において、セル200を流れる媒体mは液体である。換言すると、媒体mは溶媒である。以下、媒体mを「溶媒m」と記載する。溶媒m中に1つの粒子pが存在してもよいし、溶媒m中に複数の粒子pが存在してもよい。溶媒m中に複数の粒子pが存在する場合、複数の粒子pは、溶媒m中で分散していてもよいし、溶媒m中で偏在していてもよい。
【0065】
本実施形態において、粒子pは2つの結晶形を有する。したがって、実施形態1で説明したように、粒子pは結晶形ごとに異なる体積磁化率を有する。以下、2つの結晶形のうちの一方を「第1結晶形」と記載するとともに、2つの結晶形のうちの他方を「第2結晶形」と記載する場合がある。また、第1結晶形を有する粒子pを「第1粒子p1」と記載するとともに、第2結晶形を有する粒子pを「第2粒子p2」と記載する場合がある。また、第1粒子p1の体積磁化率を「第1体積磁化率χp1」と記載するとともに、第2粒子p2の体積磁化率を「第2体積磁化率χp2」と記載する場合がある。
【0066】
粒子pは、マイクロポンプにより、溶媒mと共にセル200に導入される。この結果、溶媒mがセル200(管状部材)の軸方向(x方向)に沿って流れる。粒子pは溶媒mから流体駆動力Ffを受けて、粒子トラップ部120(永久磁石120a、120b)の近傍まで移動する。
【0067】
粒子トラップ部120は、溶媒mが流れる方向とは反対方向の磁気力を粒子pに作用させる。粒子トラップ部120は、磁気力により、特定の結晶形を有する粒子pをトラップする。本実施形態において、粒子トラップ部120は、第2結晶形を有する粒子p(第2粒子p2)をトラップする。
【0068】
詳しくは、粒子pは、永久磁石120a、120bの近傍に達すると、永久磁石120a、120bによる磁気力を受ける。本実施形態では、溶媒mの体積磁化率が、粒子pの体積磁化率(第1体積磁化率χp1及び第2体積磁化率χp2)よりも大きい。したがって、図4(a)を参照して説明したように、粒子pに対して、磁場(粒子トラップ部120)から遠ざける方向の磁気力が作用する。換言すると、磁気力は、溶媒mの流れに対して粒子pを押し戻す方向に作用する。以下、溶媒mの体積磁化率が粒子pの体積磁化率よりも大きいという条件を「第1トラップ条件」と記載する場合がある。
【0069】
粒子pに作用する磁気力のx方向の成分Fmは、以下の式(2)により表すことができる。
Fm=-{4(χp-χm)πr3/3μo}B(dB/dx)・・・(2)
【0070】
式(2)において、χpは粒子pの体積磁化率であり、χmは溶媒mの体積磁化率であり、rは粒子pの半径であり、μoは真空の透磁率であり、Bは磁束密度であり、dB/dxは磁場勾配(磁束密度の勾配)である。
【0071】
式(2)に示すように、磁気力のx方向の成分Fmは、粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)に応じた大きさとなる。また、磁気力のx方向の成分Fmは、磁束密度Bと磁場勾配dB/dxとの積の値B(dB/dx)に応じた大きさとなる。以下、磁気力のx方向の成分Fmを「磁気力Fm」と記載する場合がある。また、第1粒子p1に作用する磁気力Fmを「第1磁気力Fm1」と記載するとともに、第2粒子p2に作用する磁気力Fmを「第2磁気力Fm2」と記載する場合がある。
【0072】
本実施形態において、溶媒mは、以下の式(3)に示す関係を成立させる体積磁化率を有する。
Fm1 < Ff ≦ Fm2・・・(3)
【0073】
式(3)に示すように、溶媒mは、第1磁気力Fm1を流体駆動力Ffよりも小さくし、第2磁気力Fm2を流体駆動力Ff以上にする体積磁化率を有する。式(3)に示す関係が成立することにより、粒子トラップ部120は、第2粒子p2をトラップすることができる。以下、式(3)に示す関係を成立させる条件を「第2トラップ条件」と記載する場合がある。
【0074】
第2トラップ条件は、粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)を調整することにより成立させることができる。したがって、粒子pの体積磁化率(第1体積磁化率χp1及び第2体積磁化率χp2)に応じて、使用する溶媒m(溶媒mの体積磁化率)を選択することにより、第1トラップ条件及び第2トラップ条件を成立させることができる。あるいは、粒子pの体積磁化率(第1体積磁化率χp1及び第2体積磁化率χp2)に応じて、溶媒mの成分(溶媒mの体積磁化率)を調整することにより、第1トラップ条件及び第2トラップ条件を成立させることができる。粒子pの結晶形ごとの体積磁化率は、実施形態1において説明した基準データ43を参照して取得し得る。
【0075】
溶媒mの成分を調整する場合、溶媒mとして、例えば塩化マンガン水溶液を使用し得る。塩化マンガン水溶液を使用する場合、添加するマンガンの量(質量%)を調整することにより、溶媒m(塩化マンガン水溶液)の体積磁化率を調整することができる。
【0076】
続いて図9(a)及び図9(b)を参照して、第1粒子p1及び第2粒子p2の動きを説明する。図9(a)は第1粒子p1の動きを示す図であり、図9(b)は第2粒子p2の動きを示す図である。
【0077】
図9(a)に示すように、第1粒子p1は粒子トラップ部120(永久磁石120a、120b)によって形成された磁場の近傍に到達すると、第1磁気力Fm1を受ける。第1磁気力Fm1は、溶媒mの流れに対して第1粒子p1を押し戻す方向に作用する。しかし、式(3)に示すように、第1磁気力Fm1は、第1粒子p1が溶媒mから受ける流体駆動力Ffよりも小さい。したがって、第1粒子p1(第1結晶形を有する粒子p)は、磁場を通過する。
【0078】
図9(b)に示すように、第2粒子p2は、粒子トラップ部120(永久磁石120a、120b)によって形成された磁場の近傍に到達すると、第2磁気力Fm2を受ける。第2磁気力Fm2は、溶媒mの流れに対して第2粒子p2を押し戻す方向に作用する。式(3)に示すように、第2磁気力Fm2は、第2粒子p2が溶媒mから受ける流体駆動力Ff以上となる。したがって、第2粒子p2の移動が第2磁気力Fm2によって阻止される。この結果、第2粒子p2(第2結晶形を有する粒子p)が磁場でトラップされる。
【0079】
続いて図10を参照して、本実施形態の粒子分離方法について説明する。図10は、本実施形態の粒子分離方法を示すフローチャートである。本実施形態の粒子分離方法は、図8図9(a)及び図9(b)を参照して説明した粒子分離装置100を使用して実行し得る。
【0080】
図10に示すように、まず、溶液を用意する(ステップS11)。溶液は、粒子pと溶媒mとを含む。本実施形態では、第1トラップ条件及び第2トラップ条件を成立させる溶液(溶媒m)を用意する。具体的には、第2結晶形を有する粒子pを粒子トラップ部120によってトラップさせる体積磁化率を有する溶媒mを用意し、用意した溶媒mに粒子pを混合する。
【0081】
次に、溶液をセル200に導入する(ステップS12)。具体的には、マイクロポンプによって、セル200(管状部材)の一方端から溶液を流し込む。この結果、溶媒mがセル200の軸方向に沿って流れ、粒子pが溶媒mから流体駆動力Ffを受けて、粒子トラップ部120(永久磁石120a、120b)の近傍まで移動する。
【0082】
粒子pが粒子トラップ部120の近傍まで移動すると、磁場勾配により、溶媒mが流れる方向とは反対方向の磁気力Fmが粒子pに作用する(ステップS13)。図9(a)を参照して説明したように、粒子pの結晶形が第1結晶形である場合、粒子pは、磁気力Fm(第1磁気力Fm1)よりも大きい流体駆動力Ffを受けて、粒子トラップ部120が形成する磁場を通過する。一方、図9(b)を参照して説明したように、粒子pの結晶形が第2結晶形である場合、粒子pは、流体駆動力Ffよりも大きい磁気力Fm(第2磁気力Fm2)を受けて、粒子トラップ部120が形成する磁場でトラップされる。
【0083】
以上、実施形態2について説明した。本実施形態によれば、結晶形に応じて粒子pを分離することができる。
【0084】
なお、本実施形態ではセル200が管状部材であったが、セル200は管状部材に限定されない。例えば、セル200は、粒子pを含む溶媒(溶液)が流れる流路が形成されたガラスセル又はプラスチックセルであり得る。
【0085】
また、本実施形態では溶液(粒子pを含む溶媒)がマイクロポンプによりセル200に導入されたが、溶液は、サイフォンの原理又は毛細管現象によってセル200に導入され得る。
【0086】
また、本実施形態では、粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)の調整、換言すると溶媒mの体積磁化率の調整により、式(3)に示す関係(第2トラップ条件)を成立させたが、B(dB/dx)の値を調整して、式(3)に示す関係を成立させてもよい。例えば、使用する永久磁石120a、120bの選定により、B(dB/dx)の値を調整することができる。又は、2つの永久磁石120a、120b間の距離を調整することにより、B(dB/dx)の値を調整することができる。
【0087】
また、本実施形態では、粒子トラップ部120が一対の永久磁石120a、120bを備えたが、粒子トラップ部120は、磁場勾配(磁束密度の勾配)を生成するために一対の磁極片(ポールピース)を備えてもよい。あるいは、粒子トラップ部120は、磁場勾配を生成するために、電磁石、磁気回路、又は超電導磁石を備えてもよい。粒子トラップ部120が一対の磁極片を備える場合、一対の磁極片を構成する2つの磁極片は、例えば100μm以上500μm以下の一定距離の空隙を空けて配置される。セル200は、2つの磁極片の間の空隙に配置される。磁極片は、例えば、磁化された鉄片であり得る。鉄片は、例えば永久磁石、電磁石、磁気回路、又は超電導磁石によって磁化し得る。
【0088】
粒子トラップ部120が一対の磁極片を備える場合、式(3)に示す関係を成立させるために、磁極片の材料の選定を介して、B(dB/dx)の値を調整してもよい。あるいは、磁極片の磁力の調整、又は2つの磁極片間の距離の調整を介して、B(dB/dx)の値を調整してもよい。電磁石、磁気回路、又は超電導磁石によって磁極片を磁化させる場合、供給する電流の電流値を調整することにより、磁極片の磁力を調整することができる。また、永久磁石によって磁極片を磁化させる場合、使用する永久磁石の選定により、磁極片の磁力を調整することができる。
【0089】
また、粒子トラップ部120が電磁石、磁気回路、又は超電導磁石を備える場合、式(3)に示す関係を成立させるために、供給する電流の電流値を調整して、B(dB/dx)の値を調整してもよい。
【0090】
また、本実施形態では、第2結晶形を有する粒子pを磁場によってトラップしたが、粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)あるいはB(dB/dx)の値を調整して、第1結晶形を有する粒子pを磁場によってトラップしてもよい。このように、本実施形態によれば、粒子トラップ部120(磁場)によってトラップする粒子p(結晶形)を選択することができる。
【0091】
[実施形態3]
以下、図11を参照して本発明の実施形態3について説明する。ただし、実施形態2で説明した事項と重複する事項の説明は割愛する。実施形態3は、粒子分離装置100が複数の粒子トラップ部120を備える点で、実施形態2と異なる。
【0092】
図11は、本実施形態の粒子分離装置100の構成を示す図である。図11に示すように、粒子分離装置100は、3つの粒子トラップ部120を備える。3つの粒子トラップ部120は、溶媒mが流れる方向(x方向)に沿って並ぶ。以下、溶媒mが流れる方向に沿った順序で、「第1粒子トラップ部121」、「第2粒子トラップ部122」、「第3粒子トラップ部123」と記載する場合がある。
【0093】
3つの粒子トラップ部120はそれぞれ、磁束密度Bと磁束密度の勾配(磁場勾配)dB/dxとの積の値B(dB/dx)が互いに異なる磁場を生成する。詳しくは、溶媒mが流れる方向に沿った順序でB(dB/dx)の値が大きくなる。この結果、粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)が一定である場合、粒子pに作用する磁気力Fmは、溶媒mが流れる方向に沿った順序で大きくなる。なお、実施形態2において説明したように、磁気力Fmは、溶媒mの流れに対して粒子pを押し戻す方向に作用する。
【0094】
以下、第1粒子トラップ部121が生成する磁場におけるB(dB/dx)を、「B(dB/dx)1」と記載する場合がある。同様に、第2粒子トラップ部122が生成する磁場におけるB(dB/dx)を、「B(dB/dx)2」と記載するとともに、第3粒子トラップ部123が生成する磁場におけるB(dB/dx)を、「B(dB/dx)3」と記載する場合がある。また、第1粒子トラップ部121が生成する磁場による磁気力Fmを「磁気力Fm11」と記載する場合がある。同様に、第2粒子トラップ部122が生成する磁場による磁気力Fmを「磁気力Fm12」と記載するとともに、第3粒子トラップ部123が生成する磁場による磁気力Fmを「磁気力Fm13」と記載する場合がある。
【0095】
本実施形態において、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の間には、以下の式(4)によって示される関係が成立する。
B(dB/dx)3 > B(dB/dx)2 > B(dB/dx)1・・・(4)
【0096】
本実施形態では、上記の式(4)の関係が成立するように、3つの粒子トラップ部120の各々における2つの永久磁石120a、120b間の距離が調整されている。したがって、3つの粒子トラップ部120における2つの永久磁石120a、120b間の距離は互いに異なる。具体的には、2つの永久磁石120a、120b間の距離は、溶媒mが流れる方向に沿った順序で小さくなる。
【0097】
続いて図11を参照して、粒子p(結晶粒子)の動きを説明する。粒子pは複数の結晶形を有する。したがって、実施形態1で説明したように、粒子pは結晶形ごとに異なる体積磁化率を有する。
【0098】
セル200に溶媒mと共に導入された粒子pは、まず、第1粒子トラップ部121によって形成された磁場の近傍に到達して、磁気力Fm11を受ける。磁気力Fm11は、以下の式(5)により表すことができる。
Fm11=-{4(χp-χm)πr3/3μo}B(dB/dx)1・・・(5)
【0099】
式(5)に示すように、磁気力Fm11は、粒子pの体積磁化率χpに応じた大きさとなる。換言すると、磁気力Fm11は、粒子pの結晶形に応じた大きさとなる。したがって、粒子pの結晶形に応じて、第1粒子トラップ部121が粒子pをトラップするか否かが決定される。具体的には、磁気力Fm11が流体駆動力Ff以上となる場合、粒子pの移動が磁気力Fm11によって阻止されて、粒子pが磁場でトラップされる。一方、磁気力Fm11が流体駆動力Ffよりも小さい場合、粒子pは、第1粒子トラップ部121によって形成された磁場を通過する。
【0100】
第1粒子トラップ部121によって形成された磁場を通過した粒子pは、次に、第2粒子トラップ部122によって形成された磁場の近傍に到達して、磁気力Fm12を受ける。磁気力Fm12は、以下の式(6)により表すことができる。なお、磁気力Fm11と磁気力Fm12との関係は、以下の式(7)に示す関係となる。
Fm12=-{4(χp-χm)πr3/3μo}B(dB/dx)2・・・(6)
Fm12 > Fm11・・・(7)
【0101】
磁気力Fm11と同様に、磁気力Fm12は、粒子pの結晶形に応じた大きさとなる。したがって、粒子pの結晶形に応じて、第2粒子トラップ部122が粒子pをトラップするか否かが決定される。具体的には、磁気力Fm12が流体駆動力Ff以上となる場合、粒子pが磁場でトラップされる。一方、磁気力Fm12が流体駆動力Ffよりも小さい場合、粒子pは、第2粒子トラップ部122によって形成された磁場を通過する。
【0102】
第2粒子トラップ部122によって形成された磁場を通過した粒子pは、次に、第3粒子トラップ部123によって形成された磁場の近傍に到達して、磁気力Fm13を受ける。磁気力Fm13は、以下の式(8)により表すことができる。なお、磁気力Fm12と磁気力Fm13との関係は、以下の式(9)に示す関係となる。
Fm13=-{4(χp-χm)πr3/3μo}B(dB/dx)3・・・(8)
Fm13 > Fm12・・・(9)
【0103】
磁気力Fm11及び磁気力Fm12と同様に、磁気力Fm13は、粒子pの結晶形に応じた大きさとなる。したがって、粒子pの結晶形に応じて、第3粒子トラップ部123が粒子pをトラップするか否かが決定される。具体的には、磁気力Fm13が流体駆動力Ff以上となる場合、粒子pが磁場でトラップされる。一方、磁気力Fm13が流体駆動力Ffよりも小さい場合、粒子pは、第3粒子トラップ部123によって形成された磁場を通過する。
【0104】
以上、実施形態3について説明した。本実施形態によれば、結晶形に応じて粒子pを分離することができる。また、本実施形態によれば、粒子pが3つ又は4つの結晶形を有する場合であっても、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整することにより、粒子pを結晶形に応じて分離することができる。B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値は、粒子pの結晶形ごとの体積磁化率を参照して調整する。粒子pの結晶形ごとの体積磁化率は、実施形態1において説明した基準データ43を参照して取得し得る。
【0105】
なお、本実施形態では、3つの粒子トラップ部120の各々の2つの永久磁石120a、120b間の距離を調整して、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整したが、使用する永久磁石120a、120bの選定により、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整してもよい。
【0106】
また、本実施形態では、各粒子トラップ部120が一対の永久磁石120a、120bを備えたが、各粒子トラップ部120は、磁場勾配(磁束密度の勾配)を生成するために一対の磁極片(ポールピース)を備えてもよい。あるいは、各粒子トラップ部120は、磁場勾配を生成するために、電磁石、磁気回路、又は超電導磁石を備えてもよい。各粒子トラップ部120が一対の磁極片を備える場合、セル200は、各粒子トラップ部120の2つの磁極片によって挟まれるように配置される。
【0107】
各粒子トラップ部120が一対の磁極片を備える場合、磁極片の材料の選定を介して、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整してもよい。あるいは、磁極片の磁力の調整、又は2つの磁極片間の距離の調整を介して、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整してもよい。
【0108】
また、各粒子トラップ部120が電磁石、磁気回路、又は超電導磁石を備える場合、供給する電流の電流値を調整して、B(dB/dx)1、B(dB/dx)2、及びB(dB/dx)3の値を調整してもよい。
【0109】
また、本実施形態では、粒子分離装置100が3つの粒子トラップ部120を備えたが、粒子分離装置100は、2つ又は4つ以上の粒子トラップ部120を備えてもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0111】
例えば、実施形態3では溶媒mの体積磁化率が一定であったが、本発明はこれに限定されない。各粒子トラップ部120のB(dB/dx)の値の調整に加えて、実施形態2において説明した粒子pと溶媒mとの体積磁化率差(χp-χm)の調整が行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る粒子分離装置及び粒子分離方法によれば、粒子を結晶形に応じて分離することができる。本発明は、複数の結晶形を有する粒子を扱う分野、例えば医薬品分野に有用である。
【符号の説明】
【0113】
10 粒子分析装置
20 磁場生成部
30 検出部
32 拡大部
34 撮像部
40 演算部
41 記憶装置
42 処理装置
43 基準データ
50 光源
100 粒子分離装置
120 粒子トラップ部
f 流体駆動力
Fm 磁気力
p 粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11