IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エクシールコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-微物採取用具 図1
  • 特許-微物採取用具 図2
  • 特許-微物採取用具 図3
  • 特許-微物採取用具 図4
  • 特許-微物採取用具 図5
  • 特許-微物採取用具 図6
  • 特許-微物採取用具 図7
  • 特許-微物採取用具 図8
  • 特許-微物採取用具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】微物採取用具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
G01N1/04 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020190408
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079297
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594206244
【氏名又は名称】株式会社エクシール
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】江端 秀人
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074336(JP,A)
【文献】実開昭52-021974(JP,U)
【文献】特表2010-516298(JP,A)
【文献】特開2020-173416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微物を粘着して採取する採取部を有する微物採取用具であって、
本体側基材の先端に前記採取部が位置する微物採取用具本体を備え、
前記本体側基材は、同本体側基材の幅方向中央に長さ方向に前記本体側基材の先端まで延びる脆弱部と、基端から先端に向かって前記本体側基材の幅方向両外側に延びる一対の斜行脆弱部とを有し、
前記脆弱部は、前記本体側基材の長さ方向において、前記一対の斜行脆弱部が位置する部分に位置する少なくとも一部が前記一対の斜行脆弱部よりも折り曲げにくい難折曲部であることを特徴とする微物採取用具。
【請求項2】
前記採取部が位置する部分の脆弱部はミシン目にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微物採取用具。
【請求項3】
前記本体側基材には、同本体側基材を長さ方向に分離することができる易破断部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微物採取用具。
【請求項4】
前記採取部の端面と対向する端面を有するキャップ側粘着材を備えた保護キャップを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の微物採取用具。
【請求項5】
前記微物採取用具本体と前記保護キャップとはその一部が接続部により接続していることを特徴とする請求項4に記載の微物採取用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微物を粘着させて採取する微物採取用具に関する。
【背景技術】
【0002】
犯罪捜査では犯罪現場等に残された遺留物を採取し、その鑑識作業を行う。特に、遺留物のうち、繊維片、プラスチック片や塗料片等の樹脂片、皮膚片や頭髪体毛等の人体組織等は状況把握、被疑者特定の有力な資料となるが、これらは人の肉眼で把握し採取することができない大きさも含まれる微物であり、その採取には微物採取用具が使用されている。
【0003】
微物採取用具としては、手で把持することができる長尺状の基材の先端に採取部となる粘着材を配置し、同部分にて微物を粘着採取するものを出願人が提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-74336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す微物採取用具は使い勝手のよいものであるが、より使い勝手の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、微物を粘着して採取する採取部を有する微物採取用具であって、本体側基材の先端に前記採取部が位置する微物採取用具本体を備え、前記本体側基材は、同本体側基材の幅方向中央に長さ方向に延びる脆弱部と、基端から先端に向かって前記本体側基材の幅方向両外側に延びる一対の斜行脆弱部とを有し、前記脆弱部は、前記本体側基材の長さ方向において、前記一対の斜行脆弱部が位置する部分に位置する少なくとも一部が前記一対の斜行脆弱部よりも折り曲げにくい難折曲部であることを特徴とする。
【0007】
前記採取部が位置する部分の脆弱部はミシン目にて形成されていることを特徴とする。
前記本体側基材には、同本体側基材を長さ方向に分離することができる易破断部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記採取部の端面と対向する端面を有するキャップ側粘着材を備えた保護キャップを有することを特徴とする。
前記微物採取用具本体と前記保護キャップとはその一部が接続部により接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微物採取用具の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】微物採取用具の分解斜視図。
図2】微物採取用具の分解斜視図。
図3】基材の平面図。
図4図4(a)は粘着材ユニットの平面図、図4(b)は図4(a)の矢印断面図。
図5図5(a)は剥離用シートの平面図、図5(b)は同側面図。
図6】微物採取用具の製造方法を示す説明図、図6(a)は塩ビシートの平面図、図6(b)は塩ビシート上に粘着材ユニットシートを配置した平面図、図6(c)はミシン目及びV溝加工の説明図、図6(d)は打ち抜き加工の説明図、図6(e)は剥離用シートを貼り完成品となった微物採取用具の平面図。
図7図7(a)は微物採取用具本体と保護キャップとの分離方法を示す説明図、図7(b)は分離した微物採取用具の斜視図。
図8】使用状態の微物採取用具本体の斜視図。
図9図9(a)は微物採取用具全体を二つ折にした状態の斜視図、図9(b)は易破断部を破断させた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1ないし図9に基づいて微物採取用具1の実施形態を説明する。なお、以下の説明はあくまで一例に過ぎず、また、長さや幅等の数値も一例であり、これらに限定されるものではない。
【0012】
図1に分解斜視図を示すように、本実施形態の微物採取用具1を構成材料としての観点から分けると、ベースとなる基材10と、基材10の上面に固定された粘着材ユニット20と、粘着材ユニット20の上に固定された剥離用シート30とからなる。
【0013】
また、図2に分解斜視図を示すように、本実施形態の微物採取用具1を機能の観点から分けると、微物採取用具本体40と、微物採取用具本体40の先端に位置する保護キャップ50と、微物採取用具本体40と保護キャップ50との上面に積層固定された剥離用シート30からなる。なお、以下の説明において図1図2に図示されている側の面を上面といい、その反対側の面(図示されていない側の面)を下面という。また、図1図2において図示される微物採取用具1ないし基材10の図中左右方向を長さ方向といい、長さ方向における距離を長さという。また、長さ方向のうち、右(側)を先端(側)、左(側)を基端(側)という。また長さ方向(図中左右方向)に直交する方向を幅方向といい、幅方向における距離を幅という。なお、図示しないが長さ方向及び幅方向に直交する方向を厚み方向といい、厚み方向の距離を厚みという。
【0014】
図1図2は微物採取用具1の各材料などを個々に説明するために分解したものである。微物採取用具1は、図1に示す基材10と粘着材ユニット20と剥離用シート30とが一体に組み合わせられた構成をなす。また、図2に示す微物採取用具本体40と保護キャップ50と剥離用シート30が一体に組み合わせられた構成をなす。具体的には微物採取用具1は図6(e)に示す状態をなす。微物採取用具1は滅菌された状態で図示しない袋内に密封されている。
【0015】
まず、微物採取用具1を構成材料の観点から分けた各構成について説明する。
基材10について
図3に基材10の平面図を示す。基材は0.3mm厚の透明塩化ビニル樹脂板を所定形状に打ち抜いて形成したものである。基材10は本体側基材11とキャップ側基材12とから構成される。本体側基材11とキャップ側基材12とは、その対向部分においてほぼ全域にわたってカットラインが入り分離されているが、本体側基材11の両側縁部とこれに対向するキャップ側基材12との間の2箇所にそれぞれ長さ約1mmにわたってカットラインのない基材接続部13があり、両者はこの基材接続部13により一体となっている。
【0016】
本体側基材11は長さ約100mm、幅約20mmの略長方形状であり、本体側基材11の基端側の幅方向両角はアール状に形成されている。本体側基材11の幅方向両側に位置して長さ方向に沿う両側縁は直線を基本とするが、先端寄りには円弧状凹部111がそれぞれ形成されており、円弧状凹部111における本体側基材の幅は最小部分で約16mmである。本体側基材11の先端は両側縁が長さ方向に対して約45度の角度で幅方向内側に傾斜する一対の傾斜縁112aと、一対の傾斜縁112aの先端に位置し幅方向に延びる先端縁112bとからなる台形状をなしている。なお、この台形部分の長さは約5mmであり、本体側基材11のうち台形部分を含めて後述するキャップ側基材12の基材凹部121内に位置する先端側の長さ約10mmの部分を基材凸部113という。本体側基材11のうち円弧状凹部111よりも基端側が微物採取用具1を用いて微物を採取する際に手で把持する把持部となる。
【0017】
本体側基材11は、幅方向の中央を通り長さ方向に延びる線(中心線)に対して線対称に形成されている。本体側基材11の長さ方向の中央部分には、本体側基材11を幅方向に横断し、本体側基材11の上面から下面まで貫通したミシン目からなる易破断部114が形成されている。この易破断部114のミシン目は人の手で容易に破断できる程度のものとされており、本体側基材11は同易破断部114を破断させて分離可能である。
【0018】
本体側基材11の中心線上には、本体側基材11の基端から先端に至るまで、基端側から順に、基端側脆弱部115、中央脆弱部116、先端側脆弱部117及び採取部脆弱部118が形成されており、これらが脆弱部を構成する。
【0019】
まず、本体側基材11のうち基端縁から易破断部114に至る中心線上には、本体側基材11の上面を断面V字状に凹ませた基端側脆弱部115が形成されている。本体側基材11のうち易破断部114から本体側基材11の幅が両円弧状凹部111により最も狭くなる位置までの中心線上には、本体側基材11の上面から下面まで貫通したミシン目が形成された中央脆弱部116が形成されている。なお、中央脆弱部116のミシン目は易破断部114よりも目の間隔を詰めて破断しにくくなっている。
【0020】
本体側基材のうち中央脆弱部116の先端から本体側基材11の側縁に形成された両円弧状凹部111が終了する位置までの中心線上には、上面を断面V字状に凹ませた先端側脆弱部117が形成されている。この先端側脆弱部117は基端側脆弱部115よりも凹みの程度を浅くして、相対的に折り曲げにくくした難折曲部となっている。
【0021】
そして、本体側基材11における先端側脆弱部117の先端から本体側基材11の先端縁112bに至るまでの中心線上には、本体側基材11の上面から下面まで貫通したミシン目が形成された採取部脆弱部118が形成されている。このミシン目は中央脆弱部116のミシン目と同じものである。
【0022】
本体側基材11には、中心線上にある先端側脆弱部117の基端を起点として基端から先端に向かって中心線に対して約30度の傾斜角度で幅方向両外側に広がる形で延び側縁に至る一対の斜行脆弱部119が形成されている。一対の斜行脆弱部119は上面を断面V字状に凹ませたものであり、基端側脆弱部115と凹みを同じ程度としている。このため、一対の斜行脆弱部119は長さ方向において同じ箇所に位置する先端側脆弱部117に対して凹みの程度が深く相対的に折り曲げやすい易折曲部となっている。
【0023】
キャップ側基材12は、六角形状の基材凹部121を基端側に有する平面視で略コ字状に形成されている。キャップ側基材12は幅約25mm、長さ20mm、基材凹部121の長さ(凹部の深さ)は約10mmであり、微物採取用具1では基材凹部121内に本体側基材11の基材凸部113が対向して位置する。
【0024】
粘着材ユニット20について
図4(a)に示すように、粘着材ユニット20は全体として幅約25mm、長さ20mmの平面視で矩形状をなす。
【0025】
粘着材ユニット20は、本体側基材11上に位置する本体側粘着材ユニット21と、キャップ側基材12上に位置するキャップ側粘着材ユニット22とから構成される。本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22とは殆どでカットラインが入り分離しているが2箇所にカットラインのない粘着材接続部23が形成されて一体となっている。この粘着材接続部23は本体側基材11とキャップ側基材12との基材接続部13と同じ箇所に形成されている。
【0026】
本体側粘着材ユニット21は平面視において本体側基材11の基材凸部113と同形状の六角形をなす。また、キャップ側粘着材ユニット22は平面視においてキャップ側基材12の基材凹部121と同じ六角形状の凹部24を有するコ字状をなす。なお、図4(a)に示すように、本体側粘着材ユニット21はキャップ側粘着材ユニット22の凹部24内に位置する。キャップ側粘着材ユニット22の凹部24内において本体側粘着材ユニット21の端面(側面)とキャップ側粘着材ユニット22との端面は隙間なく対向している。
【0027】
図4(b)に断面図を示すように、本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22はそれぞれ下側から接着剤25、粘着材26、保護材27を備えた層構成をなしている。なお、図4(b)は厚みを強調して図示している。
【0028】
接着剤25は、粘着材ユニット20を基材10に固定支持するものであり、アクリル系接着剤を使用することができる。接着剤25は、粘着材ユニット20が本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22に分かれることに伴い、前者を構成する本体側接着剤25aと後者を構成するキャップ側接着剤25bとから構成される。
【0029】
粘着材26は微物を粘着して採取するものであり、株式会社エクシールのポリウレタンゲルシート(登録商標ゲルタックシート)を用いることができる。このポリウレタンゲルシートは、アルコール成分と有機ポリイソシアネートとを混合させたポリウレタン組成物である。そして、前記アルコール成分の合計量を100重量部とした時、官能基数2.4~3.0、分子量3,000~6,000のポリオールを99.5~90重量部と、二級若しくは三級の高級モノアルコールを0.5~10重量部含有するポリウレタン組成物のゴム硬度30以下の粘着性を有する。
【0030】
ポリウレタンゲルシートは、自己粘着性を有し、微物を採取する際の粘着性、採取後の微物の剥離性に優れ、柔軟であるので微物の採取箇所の凹凸面への追随性にも優れている。また、可塑剤が添加されていないので、特に採取物からのDNA型鑑定において可塑剤が鑑定に及ぼす影響を回避することができる。
【0031】
なお、粘着材26はポリウレタンゲルに限らず粘着により微物を粘着採取することが可能な材料であればよく、また、採取した微物を視認し易いように無色透明であることが好ましい。粘着材26の厚みは特に限定されないが1mm未満が好ましい。
【0032】
粘着材26も、粘着材ユニット20が本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22に分かれることに伴い、前者を構成する本体側粘着材26aと後者を構成するキャップ側粘着材26bとに分けられ、このうち本体側粘着材26aが微物採取用具1における採取部となる。
【0033】
保護材27は、粘着材26の採取面(上面)への異物付着を防止し、微物採取用具1の使用の前に粘着材26の表面から除去されるものである。保護材27は、厚み約50μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シートを使用することができ、粘着材26の自己粘着性により粘着材26上に粘着保持されている。保護材27も、粘着材ユニット20が本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22に分かれることに伴い、前者を構成する本体側保護材27aと後者を構成するキャップ側保護材27bとに分けられる。
【0034】
図5(a)及び図5(b)に示すように、剥離用シート30は、幅約22mm、長さ約40mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートであり、剥離用シート30のシート本体31下面のうち長さ方向の先端半分(長さ20mm)に接着剤32が付されている。接着剤32は単位面積あたりの接着力が粘着材26の粘着力(接着力)よりも大きいものが使用される。剥離用シート30は接着剤32にて粘着材ユニット20の保護材27上に貼着される。また、剥離用シート30のシート本体31の上面全体は有色透明(例えば赤色)に着色されており、接着剤32が付与されている箇所の上面には注意書き、例えば「保護キャップを外すときにはこのシートを掴んでください」が白抜きで印刷されている。剥離用シート30はその幅がキャップ側基材12及び粘着材ユニット20よりも少し狭く形成されており、剥離用シート30を粘着材ユニット20の上面に貼付した状態では、平面視において剥離用シート30の幅方向両側から粘着材ユニット20の両端が露出する(図6(e))。
【0035】
以上、微物採取用具1を構成材料の観点から分けた各構成について説明したが、この説明を踏まえて、次に、微物採取用具1を機能としての観点から分けた各構成について重複する説明は省略して説明する。
【0036】
微物採取用具本体40について
図2に示すように、微物採取用具本体40は、本体側基材11とその基材凸部113の上面に固定された本体側粘着材ユニット21とから構成される。本体側基材11と本体側粘着材ユニット21の各構成は先に説明したとおりである。微物採取用具本体40のうち本体側粘着材ユニット21が位置する先端部分を先端凸部41という。
【0037】
保護キャップ50について
図2に示すように、保護キャップ50は、キャップ側基材12とその上面に固定されたキャップ側粘着材ユニット22とから構成された平面視コ字状をなす。キャップ側基材12とキャップ側粘着材ユニット22の構成は先に説明したとおりである。保護キャップ50において六角形状の凹部を保護凹部51という。
【0038】
剥離用シート30について
剥離用シート30は先に説明したとおりであり、説明を省略する。
微物採取用具1の構成について
微物採取用具1は、微物採取用具本体40の先端凸部41が保護キャップ50の保護凹部51内に位置する。そして、微物採取用具本体40と保護キャップ50とは先端凸部41と保護凹部51との対向する一部が基材接続部13、粘着材接続部23により接続された状態で一体となっている。また、微物採取用具本体40の本体側粘着材ユニット21と保護キャップ50のキャップ側粘着材ユニット22とに跨ってその上面に剥離用シート30が貼着されている。このため、微物採取用具1は、微物採取用具本体40、保護キャップ50及び剥離用シート30が組み合わせられて一体となった構成をなす(図6(e))。
【0039】
微物採取用具1の製造方法について
以下、微物採取用具1の製造方法について説明する。
図6(a)に示すように、まず、基材10の材料となる塩化ビニルシート(塩ビシート)Pを準備する。塩ビシートPは長さ約130mm、幅約480mm、厚さ約0.3mmの透明樹脂板である。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、塩ビシートPの上面に、長さ約25mm、幅約500mmに形成した粘着材ユニットシートAをその幅方向が塩ビシートPの幅方向に沿うように塩ビシートPに対して平行に貼り付ける。なお、粘着材ユニットシートAとは、粘着材ユニット20を形成する前の大判のシートを意味し、粘着材ユニット20とは大きさが相違するだけである。このため、粘着材ユニットシートAの下面には接着剤25が位置しており、この接着剤25にて粘着材ユニットシートAを塩ビシートPの上面に貼り付ける。また、粘着材ユニットシートAは、塩ビシートPの長さ方向の一端(図では上端)に寄せて貼るが塩ビシートPの端が長さ方向に少し(約5mm)露出する状態で貼る。
【0041】
続けて、図6(c)に示すように、粘着材ユニットシートAを塩ビシートP上面に貼り付けた後にミシン目加工及びV溝加工を同時に行う。具体的には、先に本体側基材11について説明した易破断部114、中央脆弱部116、及び採取部脆弱部118に対応する箇所にはそれぞれミシン目を形成する。また、本体側基材11のうち基端側脆弱部115、先端側脆弱部117、一対の斜行脆弱部119に対応する箇所にはV字状の溝を押圧形成する。なお、先端側脆弱部117に形成するV溝は他のV溝よりも浅く形成する。これらミシン目加工及びV溝加工は公知の方法を使用すればよい。
【0042】
図6(c)では塩ビシートPのうち最も端部に位置する1つのみを図示しているが、1枚の塩ビシートPからは最大18個の本体側基材11を形成することができるため、これらに対するミシン目加工及びV溝加工を一度に行えるような加工型を形成すると効率的である。
【0043】
そして、図6(d)に示すように塩ビシートP及び粘着材ユニットシートAの打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工は、本体側基材11及びキャップ側基材12の外形に沿った打ち抜き加工、例えばトムソン加工により行うことができる。この際、基材接続部13及び粘着材接続部23に対応する部分は打ち抜きをしない。このため加工型には同部分に対応する箇所には刃を形成しない。
【0044】
これにより、微物採取用具本体40と保護キャップ50とが一体になった構成が得られる。その後に粘着材ユニット20の上面全体、すなわち本体側保護材27aとキャップ側保護材27bとに跨って剥離用シート30の接着剤32を貼着すると図6(e)に示す微物採取用具1が完成する。
【0045】
微物採取用具1の使用方法について
次に、微物採取用具1の使用方法について説明する。
図7(a)に示すように、まず、微物採取用具1の微物採取用具本体40を一方の手(左手)で把持する。もう片方の手(右手)で保護キャップ50を剥離用シート30の上から把持する。そして、把持した両者を離間する方向に移動させる。
【0046】
そうすると、図7(b)に示すように、微物採取用具本体40と保護キャップ50とを接続していた基材接続部13、粘着材接続部23が破断し、微物採取用具本体40と保護キャップ50とが分離される。
【0047】
同時に粘着材ユニット20も本体側粘着材ユニット21とキャップ側粘着材ユニット22とに分離するが、粘着材ユニット20の上面には本体側保護材27aとキャップ側保護材27bとに跨って剥離用シート30が貼着されている。このため、本体側粘着材ユニット21のうち本体側保護材27aが本体側粘着材26aの上面から剥離して剥離用シート30に貼着したまま保護キャップ50と一緒に分離される。
【0048】
これにより、左手側には、本体側保護材27aが除去され採取部となる本体側粘着材26aが露出した微物採取用具本体40が得られる。なお、実施形態では本体側保護材27aも含めて微物採取用具本体40と表現しているが、微物採取用具本体40は少なくとも本体側基材11と本体側粘着材26aを有すれば足りる。
【0049】
続けて、図8に示すように、微物採取用具本体40の基端側脆弱部115及び中央脆弱部116を谷折りし、さらに一対の斜行脆弱部119を谷折りする。一方、先端側脆弱部117及び採取部脆弱部118は折り曲げない。このとき、先端側脆弱部117は難折曲部となっているため折り曲げにくく、一対の斜行脆弱部119のみを折り曲げることが容易である。
【0050】
そうすると、微物採取用具本体40は一対の斜行脆弱部119よりも外側かつ基端側が折り曲げられた状態となるのに対して、一対の斜行脆弱部119よりも内側かつ先端側は折り曲げられず平坦部42となり、この平坦部42に本体側粘着材26aを含む先端凸部41が位置する。
【0051】
この結果、微物採取用具本体40のうち2つ折りとなった部分に対して平坦部42は略直交した状態となり、いわゆるスプーン状となる。そして、採取者は2つ折りとなった部分を把持し、先端の本体側粘着材26aの上面や端面(側面)にて床面あるいは壁面その他の箇所に存在する微物を採取する。
【0052】
図9(a)に示すように、微物採取が終了した後は、それまで折り曲げていなかった先端側脆弱部117及び採取部脆弱部118を谷折りする。そうすると、一対の斜行脆弱部119の谷折り状態が元に戻り、微物採取用具本体40は本体側粘着材26aを含む全体が中心線から2つ折りとなる。この状態では本体側粘着材26aも中心線から谷折りされてその上面同士が自身の粘着力によりくっついた状態となり、本体側粘着材26aの上面に採取した微物が保持される。なお、先端凸部41は本体側粘着材26aの厚み分だけ他の部分よりも厚みがあり2つ折りし難いが、先端凸部41のある採取部脆弱部118はミシン目のため、ミシン目が広がることによって2つ折りが容易となる。
【0053】
図9(b)に示すように、2つ折りした微物採取用具本体40を易破断部114から分離して基端側を除去する。その後に本体側粘着材26aの周囲を必要に応じて図示しない保護カバー等にて保護し、同じく図示しない袋に入れて袋の口を止めれば微物採取後に異物混入がない状態で鑑識作業に送ることができる。
【0054】
本実施形態の微物採取用具1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1).微物採取用具は、図6(e)に示すように微物採取用具本体40と保護キャップ50と剥離用シート30とが一体になっている。このため、微物採取用具1の取り扱いが容易である。
【0055】
(2).微物採取用具本体40の採取部である本体側粘着材26aを含む先端凸部41は、保護キャップ50の保護凹部51内に位置している。このため、本体側粘着材26aの端面が保護キャップ50のキャップ側粘着材26bと対向することにより保護され、使用前における異物の付着を防止することができる。
【0056】
(3).微物採取用具本体40の本体側粘着材26aの上面は本体側保護材27aにてカバーされている。このため、本体側粘着材26aの上面への異物の付着を防止することができる。
【0057】
(4).剥離用シート30が粘着材ユニット20の上面に位置する本体側保護材27aとキャップ側保護材27bとに跨って固定されている。保護キャップ50を微物採取用具本体40から分離する際に、本体側保護材27aが剥離用シート30とともに微物採取用具本体40から剥離され、本体側粘着材26aの上面が露出する。このため、保護キャップ50を分離させるだけで微物採取用具本体40を使用することができる。
【0058】
(5).一対の斜行脆弱部119に対して先端側脆弱部117は凹みが浅く形成されている。このため、図8に示すように、一対の斜行脆弱部119を谷折りする場合でも先端側脆弱部117は折り曲げにくく、一対の斜行脆弱部119よりも先端かつ内側に平坦部42を形成することができ、本体側粘着材26aが平坦となって採取作業が容易となる。
【0059】
(6).図8のように、微物採取用具本体40の2つ折りとなった部分に対して平坦部42は略直交した形態となる。採取者は2つ折りとなった部分を把持し、先端の本体側粘着材26aの上面や端面(側面)にて床面あるいは壁面その他の箇所に存在する微物を採取することができる。
【0060】
(7).微物採取後は、先端側脆弱部117及び採取部脆弱部118も谷折りして微物採取用具本体40の全体を2つ折りすることができる。このため、採取後には本体側粘着材26aの上面同士を接着して閉塞することができ、上面の保護が可能となる。
【0061】
(8).また、採取部脆弱部118はミシン目のため、本体側粘着材26aの厚みにより谷折りし難い場合でもミシン目が広がることによって折りやすい。
(9).さらに、微物採取用具本体40は易破断部114から破断して基端側を除去することができる。このため、採取後には不要な部分を除去して微物採取用具本体40をコンパクトにすることができる。
【0062】
上記実施形態は以下のように変更してもよく、また、これらの変更例を適宜組み合わせて適用してもよい。
・本実施形態では、保護材27が本体側保護材27aとキャップ側保護材27bとに分離されているが、一枚の保護材27を使用してもよい。粘着材ユニット20のうち保護材27のみを切断しないようなハーフカットを行うことにより本体側保護材27aとキャップ側保護材27bとに分離されていない一枚の保護材27とすることができる。そうすれば、微物採取用具本体40と保護キャップ50とを分離する際に本体側粘着材26aも覆っている保護材27が保護キャップ50と一緒に分離するため、剥離用シート30を省略することができる。
【0063】
・採取部脆弱部118を保護キャップ50まで延長して形成してもよい。そうすれば、塩ビシートP及び粘着材ユニットシートAに対する採取部脆弱部118の形成時の位置決め精度を高める必要がなくなり、製造が容易になる。
【0064】
・基端側脆弱部115、一対の斜行脆弱部119をミシン目としてもよい。
・先端側脆弱部117を折り曲げず一対の斜行脆弱部119を折り曲げやすくするため先端側脆弱部117の基端は一対の斜行脆弱部119の基端と同じ或いは近傍の位置にあるほうが好ましいが、これに限られず難折曲部となる先端側脆弱部117の基端及び先端の位置や長さを変更してもよい。
【0065】
・一対の斜行脆弱部119は起点を中心線上としたが、中心線上から離れた位置を起点として斜行するものとしてもよい。また、その先端は本体側基材11の側縁に至る前に終了してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、図8に示すように脆弱部115、116、117,118、一対の斜行脆弱部119を谷折りして使用していたが、それぞれを山折りして使用してもよい。この場合、微物採取用具本体40は図8を反転したような形状となるが、これを使用して微物を採取することが可能である。
【0067】
・脆弱部に形成したV溝は、U字状、矩形状、円状等の形状に変更してもよい。折り曲げの際に同部分に応力集中が生じて折り曲げやすくなっていればよい。
・易破断部114の長さ方向における形成位置を変更してもよい。
【0068】
図6(c)のように、粘着材ユニットシートAを塩ビシートPに配置した後に脆弱部を形成しているが、塩ビシートPに脆弱部を形成してから粘着材ユニットシートAを脆弱部に位置決め配置し、その後に図6(d)のように本体側基材11とキャップ側基材12とを打ち抜き形成してもよい。このようにすれば粘着材ユニット20に脆弱部が形成されず、本体側粘着材26aの上面が平坦になる。
【0069】
・脆弱部115~119を折り曲げずに本体側基材11を平坦のまま(図7(b)のまま)にして微物採取用具本体40による微物の採取に使用することもできる。この場合、採取後には図9に示すように微物採取用具本体40の全体を二つ折りすればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…微物採取用具
10…基材
11…本体側基材
12…キャップ側基材
13…基材接続部(接続部)
20…粘着材ユニット
26a…本体側粘着材(採取部)
23…粘着材接続部(接続部)
30…剥離用シート
40…微物採取用具本体
50…保護キャップ
114…易破断部
115…基端側脆弱部(脆弱部)
116…中央脆弱部(脆弱部)
117…先端側脆弱部(脆弱部)
118…採取部脆弱部(脆弱部)
119…斜行脆弱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9