(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
A43B 3/12 20060101AFI20230919BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A43B3/12 B
A43B13/14 B
(21)【出願番号】P 2021016849
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514008516
【氏名又は名称】株式会社BMZ
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023691(JP,A)
【文献】特開2010-017514(JP,A)
【文献】特開2017-023706(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021622(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/210045(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 3/00 - 3/30
A43B 13/00 - 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を載せるソール本体と、前記ソール本体が足から離れないようにするために設けた紐またはベルトと、を備え、
前記ソール本体が、足の内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを維持するために、前記ソール本体の表面に突出し、足の踵骨結節を支持して踵骨を安定させる踵骨前部支持凸部と、前記ソール本体の表面に突出し、足の母趾球と小趾球とを支持する表面側趾球支持部と、前記表面側趾球支持部の前方に薄肉に形成された前部と、前記ソール本体の裏面に突出して、足の母趾球と小趾球とを支持し、前記前部と前記ソール本体の接地面との間に隙間を形成する裏面側趾球支持部と、を備えている履物。
【請求項2】
前記表面側趾球支持部の外形が、前記裏面側趾球支持部の外形よりも大きく形成されている請求項1に記載の履物。
【請求項3】
足の踵骨には、踵骨前側上端が力点となり、踵骨後部が支点となって、前記支点を中心としたモーメントが作用し、前記踵骨前部支持凸部は、前記力点の略直下の前記踵骨結節を支持する請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
前記表面側趾球支持部の前縁部は、足の第1基節骨から第5基節骨を結ぶ線上を延びる請求項1ないし3の何れか一項に記載の履物。
【請求項5】
前記裏面側趾球支持部は、幅方向に帯状に延びている請求項1ないし4の何れか一項に記載の履物。
【請求項6】
前記踵骨前部支持凸部に重なり合って立方骨支持凸部が配置され、
前記立方骨支持凸部は、足の立方骨から舟状骨に相当する部位を含んで左右の両側縁に向って下傾して厚みを漸減し、前記立方骨に相当する部位から前後に向って下傾して厚みを漸減し、前後左右の放射方向に厚みを漸減させている請求項1ないし5の何れか一項に記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンダルなどの履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、足を載せるソール本体と、ソール本体が足から離れないようにするために設けた紐またはベルトとを備えるサンダルや、スリッパなどの履物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の履物は、つま先やかかとなどが覆われていないために、履きやすい開放した構造であり、上履きや下履きのいずれにも多く使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のソール本体は、ゴム製、樹脂製、革製などであり、フラットな形状となっている。したがって、足底のアーチを自然な形状に維持して足をバランス良く支持することができず、長時間歩行すると、疲れやすい、という課題があった。
そこで、本発明の目的は、長時間歩行しても、疲れにくく、歩行時の安定性と運動性を確保し、運動効果を得易くした、履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の履物は、足を載せるソール本体と、前記ソール本体が足から離れないようにするために設けた紐またはベルトと、を備え、前記ソール本体が、足の内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを維持するために、前記ソール本体の表面に突出し、足の踵骨結節を支持して踵骨を安定させる踵骨前部支持凸部と、前記ソール本体の表面に突出し、足の母趾球と小趾球とを支持する表面側趾球支持部と、前記表面側趾球支持部の前方に薄肉に形成された前部と、前記ソール本体の裏面に突出して、足の母趾球と小趾球とを支持し、前記前部と前記ソール本体の接地面との間に隙間を形成する裏面側趾球支持部と、を備えている。
【0006】
本発明によれば、踵骨前部支持凸部が、足の内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを維持した状態で、ソール本体の表面および裏面の双方に突出する表面側趾球支持部および裏面側趾球支持部が、足の母趾球と小趾球とを支持するため、足のアーチの状態を維持したまま、足の第1から第5基節骨の前の、足の指の拘束が解かれた状態となる。また、裏面側趾球支持部が、ソール本体の裏面に突出して、足の母趾球と小趾球とを支持し、前部とソール本体の接地面との間に隙間を形成するため、歩行時には、足の指が一層フリーの状態となり、足の指で地面を掴む歩行動作が可能になる。
したがって、足底のアーチを維持して身体の安定性を確保しながら、足の指で地面を掴む動作を行わせ易くし、運動効果をより高めることができる。また、長時間歩行しても、疲れにくいものになる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、足底のアーチの形状を維持して身体の安定性、運動性を確保しながら、足の指で地面を掴む動作を行わせ易くし、運動効果を高めることができ、長時間歩行しても、疲れにくいものになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る履物を示す平面図である。
【
図4】(A)は、
図2のA-A断面図、(B)は、
図2のB-B断面図、(C)は、
図2のC-C断面図である。
【
図6】サンダルと足との関係を示す縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る鼻緒付きサンダル(履物)1を示す平面図である。
サンダル1は、足を載せるソール本体3と、ソール本体3が足から離れないようにするために設けた紐5と、鼻緒7とを備えている。
ソール本体3と紐5とは一体に形成され、所定の硬度を持った樹脂製であり、ソール本体3と紐5とが鼻緒7で一体に連結されている。本発明は、図示は省略したが、鼻緒7の付いていない、ソール本体とバンドからなる、いわゆる突っかけ式のサンダルや、スリッパなどの履物にも適用が可能である。
【0010】
図2は、足の骨格を重ね合わせたソール本体3を示す底面図である。この図面は下方から見た図面であり、骨同士が重なり合っているために骨の一部が隠れていることに留意されたい。足の表から見た平面図は、
図2の底面図とは骨の重なり方が異なる。
【0011】
図2に示すように、足の骨格構造10は、踵骨12、距骨14、舟状骨16、立方骨18、第1~第3楔状骨20,22,24、第1~第5中足骨26,28,30,32,34、第1~第5基節骨36,38,40,42,44、第2~第5中節骨46,48,50,52、第1~第5末節骨54,56,58,60,62より構成される。第1~第5中足骨26,28,30,32,34の前端部は、第1~第5中足骨頭部26A(母趾球26Aとも言う。),28A,30A,32A,34A(小趾球34Aとも言う。)である。踵骨12の前部に位置する段状の部分は、踵骨前部(踵骨結節とも言う。)12Aである。なお、
図2では、舟状骨16のみ、骨同士の重なりによる隠れた部分を破線で示す。
【0012】
本構成では、
図1及び
図2に示すように、ソール本体3の表面(上面)3Aに、立方骨支持凸部80及び踵骨前部支持凸部90が形成されている。立方骨支持凸部80及び踵骨前部支持凸部90は凸状部2を構成する。
立方骨支持凸部80は立方骨18に相当する部分に設けられ、踵骨前部支持凸部90は踵骨結節12Aに相当する部位に設けられる。立方骨支持凸部80及び踵骨前部支持凸部90は中実に形成されている。
【0013】
踵骨前部支持凸部90は、立方骨支持凸部80上に設けられており、踵骨前部支持凸部90の表面が立方骨支持凸部80の表面に重なり合って、一つの凸状部2を形成している。立方骨支持凸部80及び踵骨前部支持凸部90は、相互に一体であってもよいし、別体であってもよい。
図2では、踵骨前部支持凸部90は、当該踵骨前部支持凸部90の高さを示す等高線とともに模式的に図示されている。
【0014】
ソール本体3の表面3Aには、さらに足の第1中足骨頭部(母趾球)26Aと、第2~第5中足骨頭部(小趾球)28A~34Aと、を支持する表面側趾球支持部(以下、表面側突出部という。)100が形成されている。表面側突出部100は、
図3に示すように、ソール本体3の表面3Aから上方へ膨出している。表面側突出部100は、底面視で前縁部が第1基節骨36から第5基節骨44を結ぶ線上を延びている。
表面側突出部100の前方には、前部110が形成され、前部110の厚さは、ソール本体3の厚さのうちで最も肉薄に形成されている。
【0015】
ソール本体3の裏面(下面)3Bには、足の第1中足骨頭部(母趾球)26Aと、第2~第5中足骨頭部(小趾球)28A~34Aと、を支持する裏面側趾球支持部(以下、裏面側突出部という。)200が形成される。裏面側突出部200は、
図3に示すように、ソール本体3の裏面3Bから下方へ膨出し、ソール本体3の前部110とソール本体3の接地面112との間に、隙間111を形成している。裏面側突出部200は、底面視で前縁部が第1基節骨36から第5基節骨44を結ぶ線上を延びている。
裏面側突出部200の前方には、前部110が位置しており、前部110の厚さは、ソール本体3の厚さのうちで最も肉薄に形成されている。
【0016】
本実施形態では、
図3に示すように、ソール本体3の長さ方向において、表面側突出部100の外形X1が、裏面側突出部200の外形X2よりも大きく形成されている。本実施形態では、表面側突出部100が、ソール本体3の長さ方向において、裏面側突出部200よりもそれぞれ2~5mm出張るように形成され、外形X1が、外形X2よりも4~10mm大きく形成されている。ソール本体3の幅方向においては、
図4(A)に示すように、表面側突出部100の外形X3と、裏面側突出部200の外形X4とがほぼ等しく形成され、あるいは、裏面側突出部200の外形X4が、表面側突出部100の外形X3よりも、やや小さくなるように形成されている。
【0017】
表面側突出部100の表面3Aからの突出高さと、裏面側突出部200の裏面3Bからの突出高さはほぼ等しく、表面側突出部100と、裏面側突出部200とは共に、平坦な凸部形状となっている。表面側突出部100には、
図2に示すように、足の母趾球26Aを支持する母趾球部103と、第2~第4中足骨頭部28A~32Aや小趾球34Aを支持する他趾球部104とが形成され、母趾球部103と他趾球部104との間には、V字凹部105が形成されている。表面側突出部100の後縁部には凹部106が形成されている。表面側突出部100の外周部102は、表面側突出部100の外側ほど厚みが漸減して傾斜している。裏面側突出部200は、表面側突出部100の形態とほぼ相似形であり、小さく形成されている。
【0018】
図4(B)は、
図2のB-B断面図である。ソール本体3の表面3Aには、立方骨支持凸部80及び踵骨前部支持凸部90が形成されている。
図4(C)は、
図2のC-C断面図である。ソール本体3の表面3Aには、踵骨12が収まる凹部129が形成されている。
【0019】
図5は、足の裏のアーチを示す。
人間の足の裏には、歩行時又は走行時に、自然な状態であれば、アーチ(破線で模式的に示す。)119が形成される。
アーチ119は、足の長手方向に形成された、内側縦アーチ121及び外側縦アーチ122と、足の短手方向に形成された、横アーチ120とを含む。横アーチ120は、
図2に示すように、第1~第5中足骨26~34の間に跨って形成される。また、内側縦アーチ121は、踵骨12、距骨14、舟状骨16、三個の楔状骨20~24、及び第1~第3中足骨26~30の間に跨って形成される。外側縦アーチ122は、踵骨12、立方骨18、第4~第5中足骨32,34の間に跨って形成される。
【0020】
図6は、サンダル1を装着した際、使用者の体重Fが、脛骨68から距骨14を介して踵骨12に作用する原理を示す図である。
この踵骨12は、使用者の体重Fを支える要となる。踵骨12では、踵骨前側上端12Bが力点P1となり、踵骨下端(踵骨後部)12Cが支点P2となるので、踵骨12には、支点P2を中心としたモーメントが作用する。
本構成では、踵骨前部支持凸部90が、力点P1の略直下の踵骨結節12Aを支持することで、踵骨12を安定させることができる。また、踵骨結節12Aは、支点P2となる踵骨下端12Cから距離があるため、踵骨結節12Aに相当する部位に踵骨前部支持凸部90を設けることで、小さな力で効率良く踵骨12を支持できる。
【0021】
立方骨18にも、踵骨12を介して使用者の体重Fが作用する。立方骨18については、第1~第5中足骨頭部26A~34Aが支点P3となるので、立方骨18には、支点P3を中心としたモーメントが作用する。
本構成では、立方骨支持凸部80が、力点P1の略直下の立方骨18を支持することで、立方骨18を安定させることができる。
また、立方骨18は、支点P3となる第1~第5中足骨頭部26A~34Aから距離があるため、立方骨18に相当する部位に立方骨支持凸部80を設けることで、小さな力なで効率良く立方骨18を支持できる。
【0022】
立方骨18を支持しただけでは、踵骨12が安定し難く、立方骨18と踵骨12と関節(踵立方関節)に歪みが生じる場合がある。
踵骨12は、内側縦アーチ121及び外側縦アーチ122の両方を同時に構成するため、踵骨12が安定しないと、縦アーチを正常な位置に維持できなくなる。特に、踵骨12の前部の踵骨結節12Aは、
図6に示すように、踵骨12の中間部と第2~第5中足骨28~34を繋ぐ長足底靭帯64が重なるように位置している。この長足底靭帯64は縦アーチを維持する働きもしている。
【0023】
本構成では、踵骨前部支持凸部90が、長足底靭帯64を介して踵骨結節12Aを支持するため、踵骨12が安定し、踵立方関節の歪みを減少できるとともに、縦アーチを正常な位置にすることができる。これにより、縦アーチがばねとしてより効果的に機能する。特に、夜間では、昼間に比べ、長足底靭帯64の縦アーチを維持する機能が低下するため、長足底靭帯64を支持することが有効である。踵骨前部支持凸部90は、長足底靭帯64が重なる位置の踵骨結節12Aに相当する部位4を含む。
【0024】
踵骨前部支持凸部90は、長足底靭帯64を支持して足アーチの受動的安定を促すだけでなく、長足底靭帯64を介して外側縦アーチの能動的安定化にとって重要な長腓骨筋の停止腱66を支える。ここで、受動的安定は靭帯により、能動的安定は筋(腱)によりなされる。長腓骨筋の停止腱66は、
図2に示すように、立方骨18の周りを巻いた後、足の外側縁から足底を横切り、第1楔状骨20と第1中足骨26の底に停止する。さらに、踵骨前部支持凸部90の一部は立方骨18の下部に位置し、立方骨18を介して、舟状骨16を支持する。このことによって、内側縦アーチの能動的安定化構造の主である、後脛骨筋の停止腱67が間接的に支持される。
後脛骨筋の停止腱67は、筋膜を第1~第3楔状骨20~24、第2~第3中足骨28,30及び舟状骨16に出している。長腓骨筋、後脛骨筋、これら二つの筋の斜めの走行により、横アーチに加えて縦アーチが保持される。
【0025】
また、踵骨12は関節を構成するため、固定的に支持するだけでは運動機能を阻害するので、運動を許容することが必要である。
ソール本体3は、立方骨支持凸部80を中心にして放射方向には表面が下傾して応力を緩和する構成となっているので、踵骨12が構成する関節の運動を許容できる。踵骨前部支持凸部90は、使用者の体重で厚みが最大となる部分が沈み、踵骨結節12Aを支持する。踵骨前部支持凸部90が沈むことで、ソール本体3は、立方骨支持凸部80を中心にして前後左右の放射方向に下傾して、立方骨18を支点に足を支持するとともに、該立方骨支持凸部80を中心に足の運動を許容する。
【0026】
本構成では、踵骨前部支持凸部90が、踵骨結節(足の踵骨前部)12Aに当接し、足の内側縦アーチ121、外側縦アーチ122及び横アーチ120を維持する。
踵骨前部支持凸部90により、踵骨12を安定的に支持することができて、足底の横アーチ120、内側縦アーチ121、外側縦アーチ122が自然な形状に維持され、足の安定性、運動性を向上させることができる。そして、踵骨前部支持凸部90が、内側縦アーチ121、外側縦アーチ122及び横アーチ120を維持した状態で、表面側突出部100と、裏面側突出部200とが、足の第1中足骨頭部(母趾球)26Aと、第2~第5中足骨頭部(小趾球)28A~34Aと、を支持する。
【0027】
本構成のサンダル1は、履いて歩くだけで足の指のトレーニングをすることができる。特に、本構成では、サンダル1が立方骨支持凸部80も備えているため、足の骨格バランスが整えられ、安定性、運動性がさらに向上する。
【0028】
本構成では、
図6に示すように、裏面側突出部200が床または接地面112に接触し、表面側突出部100の表面部100Aにより、母趾球26Aや小趾球34Aなどの、第1~第5中足骨頭部26A~34A(足の指の付け根側)が上方に保持される。
したがって、踵骨前部支持凸部90が、足のアーチの状態を維持したまま、足の指の拘束が解かれた状態となる。
【0029】
本構成では、表面側突出部100の前方の前部110の厚さが、ソール本体3の厚さのうちで最も肉薄に形成されている。
したがって、前部110が、表面側突出部100よりも一段低くなり、足の第1~第5末節骨54~62の前の、指の自由度がさらに高まる。
足の指が地面を掴む動作は、
図2における基節骨36~44、中節骨46~52及び末節骨54~62を含む、いわゆる、足の指が乗る前部110が、母趾球26Aと小趾球34Aが乗る表面側突出部100より柔らかい場合に容易に行える。
本構成では、前部110は、表面側突出部100に比べて薄肉であるため、足の指を容易に動かすことができる。
したがって、足の指で地面を掴むような歩行動作を容易に行うことができ、運動効果を高めることができる。また、足底のアーチの形状を維持して身体の安定性、運動性を確保しながら、運動効果を高めることができる。
【0030】
本構成では、裏面側突出部200が裏面3Bに形成されるため、
図6に示すように、前部110の下には、接地面112との間に隙間111が生じる。そのため、歩行時にはソール本体3の前部110を隙間111に向けて上方から押し込み易い。また、表面側突出部100にはV字凹部105も形成されており、母趾球部103と他趾球部104との間が薄肉となり、母趾で前部110を隙間111に向けて押し易い。
このように、本実施形態では、足の指を曲げ易くなると共に足の指に力を入れ易くなり、足の指で地面を掴む動作を容易に行える。
【0031】
また、表面側突出部100は、平坦な表面部100Aが足底に接触するため、凹凸形状が足底に接触する場合に比べて足の動きを妨げ難い。
一方で、足の動きを妨げ難いために、歩行時や運動時に母趾球26Aや小趾球34Aの位置がズレる可能性はあるが、表面側突出部100は前後方向に幅広に形成されており、表面側突出部100が母趾球26Aや小趾球34Aを支持可能である。
【0032】
サンダル1は室内履き、室外履きの何れでもよい。
裏面側突出部200の外形X2は比較的大きくし、平坦な形状とし、樹脂の硬度を高くすることが望ましい。
足の指の屈曲性を考慮した場合、ソール本体3の前後方向において、表面側突出部100がそれぞれ2~3mm出張るように形成し、外形X1が、外形X2よりも4~6mm大きくなるように形成することが望ましい。
足の指の屈曲性を考慮した場合、裏面側突出部200はソール本体3の幅方向に帯状に延びる形態が望ましい。
【0033】
一般に、サンダル1は踵側を高くし爪先側を低くして歩き易くしているが、爪先側が低いために、体重がかかる際に爪先側に力がかかり易い。そのため、足の指が動き難く、足の指の自然な動作が阻害される場合がある。
これに対し、本構成では、表面側突出部100および裏面側突出部200が、母趾球26Aと小趾球34Aとを高い位置に保持するため、サンダル1に支持された足は水平に近づき易く、支点P3(
図6参照)よりも前側の爪先側に体重がかかり難くなって、足の指先が動かし易くなる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のサンダル1は、足を載せるソール本体3と、ソール本体3が足から離れないようにするために設けた紐またはベルト5と、を備え、足の内側縦アーチ121、外側縦アーチ122及び横アーチ120を維持するために、足の踵骨前部12Aに当接する踵骨前部支持凸部90と、ソール本体3の表面に突出し、足の母趾球26Aと小趾球34Aとを支持する表面側突出部100と、表面側突出部100の前方に薄肉に形成された前部110と、ソール本体3の裏面3Bに突出して、足の母趾球26Aと小趾球34Aとを支持し、前部110とソール本体3の接地面112との間に隙間111を形成する裏面側突出部200と、を備えている。
したがって、足底のアーチ120~122の形状を自然な状態に維持して身体の安定性、運動性を確保しながら、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、足の指にトレーニングを行わせることができる。
【0035】
本実施形態のサンダル1は、表面側突出部100の外形が、裏面側突出部200の外形よりも大きく形成されている。
したがって、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、トレーニング効果が得られる。また、裏面側突出部200の摩耗を抑制できる。
【0036】
本実施形態のサンダル1は、足の踵骨には、踵骨前側上端が力点となり、踵骨後部が支点となって、支点を中心としたモーメントが作用し、踵骨前部支持凸部は、力点の略直下の踵骨結節を支持するため、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、トレーニング効果が得られる。
【0037】
本実施形態のサンダル1は、表面側突出部100の前縁部は、足の第1基節骨36から第5基節骨44を結ぶ線上を延びる。
したがって、母趾、すなわち、第1基節骨36と第1末節骨54に相当する部位のソール本体3を下方に押し込み易くなり、母趾に地面を掴む動作を行わせ易くでき、トレーニング効果が得られる。
【0038】
本実施形態では、表面側突出部100は、外周部の肉厚が漸減する。したがって、表面側突出部100の外周部102が体重に応じて徐々に変形可能であるため、足への違和感を減らすことができる。
【0039】
本実施形態のサンダル1は、踵骨前部支持凸部90に重なり合って立方骨支持凸部80が配置され、立方骨支持凸部80は、足の立方骨18から舟状骨16に相当する部位を含
【0040】
本構成では、裏面側突出部200の外形X4が、表面側突出部100の外形X3よりも、やや小さく形成されているために、足の指を曲げ易くなると共に足の指に力を入れ易くなり、足の指で地面を掴む動作を容易に行える。
サンダル1は室内履き、室外履きの何れでもよい。
室外履きの場合、室内履きに比べて、裏面側突出部200の摩耗が課題になる。この場合には、裏面側突出部200を平坦な形状とし、かつ、ソール本体3の幅方向に帯状に延びる形態とすることが望ましい。
【0041】
一般に、サンダルは踵側を高くし爪先側を低くして歩き易くしているが、爪先側が低いために、足指が背屈した状態になり易い。そのため、足の指が動き難く、足の指の自然な動作が阻害される場合がある。
これに対し、本構成では、表面側突出部100および裏面側突出部200が、母趾球26Aと小趾球34Aとを高い位置に保持するため、サンダル1に支持された足は水平に近づき易く、支点P3(
図6参照)よりも前側の爪先側に体重がかかり難くなって、足の指先が動かし易くなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のサンダル1は、足を載せるソール本体3と、ソール本体3が足から離れないようにするために設けた紐またはベルト5と、を備え、足の内側縦アーチ121、外側縦アーチ122及び横アーチ120を維持するために、足の踵骨前部12Aに当接する踵骨前部支持凸部90と、ソール本体3の表面に突出し、足の母趾球26Aと小趾球34Aとを支持する表面側突出部100と、表面側突出部100の前方に薄肉に形成された前部110と、ソール本体3の裏面3Bに突出して、足の母趾球26Aと小趾球34Aとを支持し、前部110とソール本体3の接地面112との間に隙間111を形成する裏面側突出部200と、を備えている。
したがって、足底のアーチ120~122の形状を自然な状態に維持して身体の安定性、運動性を確保しながら、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、足の指にトレーニングを行わせることができる。
【0043】
本実施形態のサンダル1は、表面側突出部100の外形が、裏面側突出部200の外形よりも大きく形成されている。
したがって、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、トレーニング効果が得られる。また、裏面側突出部200の摩耗を抑制できる。
【0044】
本実施形態のサンダル1は、足の踵骨には、踵骨前側上端が力点となり、踵骨後部が支点となって、支点を中心としたモーメントが作用し、踵骨前部支持凸部は、力点の略直下の踵骨結節を支持するため、足の指に地面を掴む動作を行わせ易くし、トレーニング効果が得られる。
【0045】
本実施形態のサンダル1は、表面側突出部100の前縁部は、足の第1基節骨36から第5基節骨44を結ぶ線上を延びる。
したがって、母趾、すなわち、第1基節骨36と第1末節骨54に相当する部位のソール本体3を下方に押し込み易くなり、母趾に地面を掴む動作を行わせ易くでき、トレーニング効果が得られる。
【0046】
本実施形態では、表面側突出部100は、外周部の肉厚が漸減する。したがって、表面側突出部100の外周部102が体重に応じて徐々に変形可能であるため、足への違和感を減らすことができる。
【0047】
本実施形態のサンダル1は、踵骨前部支持凸部90に重なり合って立方骨支持凸部80が配置され、立方骨支持凸部80は、足の立方骨18から舟状骨16に相当する部位を含んで左右の両側縁に向って下傾して厚みを漸減させ、立方骨18に相当する部位から前後に向って下傾して厚みを漸減させて、前後左右の放射方向に厚みを漸減させる。
立方骨支持凸部80を備えるため、立方骨18と踵骨12との踵立方関節を含むアーチ形状を保持した状態、かつ、足の運動を許容した状態で、立方骨18及び踵骨12が安定するので、踵立方関節の歪みが減り、立方骨18及び踵骨12を含む足根骨全体が自然な状態で安定する。足の関節が自由に動くので、足の機能を高めることができる。
【0048】
上述の実施形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上述の実施形態では、ソール本体3を一体に成型したが、平坦なソール本体素材に、別体の凸状部2や、表面側突出部100や裏面側突出部200を着脱自在に装着しても良い。また、ソール本体3を複数層とし、中間層に凸状部2と表面側突出部100や裏面側突出部200を装着することにより、表面素材に凹凸を形成することは可能である。立方骨支持凸部80、踵骨前部支持凸部90及び表面側突出部100を中実に形成していたが、立方骨支持凸部80、踵骨前部支持凸部90及び表面側突出部100、裏面側突出部200の内部を中空としてもよい。
【0049】
本発明の履物は、立位姿勢の改善や運動機能の向上を目的としており、日常的に使用する履物だけでなく、治療やリハビリテーションを目的とした医療用の履物、健康増進を目的としたトレーニング用の履物等、種々の履物に幅広く好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 サンダル(履物)
3 ソール本体
3A 表面(上面)
3B 裏面(下面)
12A 踵骨結節(踵骨前部)
18 立方骨
26A 母趾球
34A 小趾球
36 第1基節骨
38 第2基節骨
44 第5基節骨
80 立方骨支持凸部
90 踵骨前部支持凸部
100 表面側突出部(表面側趾球支持部)
110 前部
111 隙間
120 横アーチ
121 内側縦アーチ
122 外側縦アーチ
200 裏面側突出部(裏面側趾球支持部)