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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】建築物の外面に用いる温度調節物品
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20230919BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230919BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
E04B1/76 100D
B32B7/027
B32B15/08 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022519184
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021016197
(87)【国際公開番号】W WO2021158537
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】62/969,596
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521503868
【氏名又は名称】イーイノテック グループ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイ、イー
(72)【発明者】
【氏名】ラウ、シンディ イー シン
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-154155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0239586(US,A1)
【文献】特開2007-003975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/99
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Ti、Cu、Ag、およびAuの1つまたは複数を含み、200nm未満の厚さを有する金属膜と、
前記金属膜上に配置されているポリマー膜であって、ポリエチレンまたはポリプロピレンの1つまたは複数を含み、200μm~1000μmの厚さを有するポリマー膜と、
前記金属膜上に配置されている着色剤膜であって、前記着色剤膜の最大10wt%の色素分子および/または着色剤粒子を含む着色剤膜と
を備える建築物のための温度調節物品であって、
前記着色剤膜は、前記金属膜と前記ポリマー膜との間に挿入され、そして、
前記温度調節物品の少なくとも1つの面が、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率と、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率とを有する、建築物のための温度調節物品。
【請求項2】
前記着色剤膜が、色素分子を含む着色剤および/または4μmより小さい直径を有する着色剤粒子を含む、請求項1に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項3】
前記着色剤が赤外線透過性を有する、請求項2に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項4】
前記着色剤粒子が、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはケイ素のうちの1つまたは複数を含む、請求項2または3に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項5】
前記ポリマー膜が、埋め込まれている着色剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項6】
前記ポリマー膜が、埋め込まれている誘電体粒子を含む、請求項5に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項7】
前記埋め込まれている誘電体粒子が、TiO、ZnO、またはCaCOのうちの1つまたは複数を含む、請求項6に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項8】
前記埋め込まれている誘電体粒子が4μmより小さい直径を有する、請求項7に記載の建築物のための温度調節物品。
【請求項9】
ポリエチレンまたはポリプロピレンの1つまたは複数を含み、200μm~1000μmの厚さを有するポリマー膜と、
前記ポリマー膜に埋め込まれている誘電体粒子であって、TiO、ZnO、またはCaCOのうちの1つまたは複数を含む埋め込まれている誘電体粒子と、
前記ポリマー膜上に配置されている着色剤膜であって、前記着色剤膜の最大10wt%の色素分子および/または着色剤粒子を含む着色剤膜と
を備える建築物のための温度調節物品であって、
前記温度調節物品の少なくとも1つの面が、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率と、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率とを有する、建築物のための温度調節物品。
【請求項10】
前記着色剤膜が着色剤を含む、請求項に記載の建築物のための温度調節物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2020年2月3日出願の米国仮特許出願第62/969,596号の利益を主張し、上記仮特許出願の内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して温度調節物品に関連しており、より具体的には、建築物の外面に用いる温度調節物品に関連している。
【背景技術】
【0003】
エネルギー危機および気候変動に関連する問題がより深刻になっており、この問題に取り組むことが求められている。最近の研究によれば、全世界で消費される全電力の15%は、住宅およびオフィスの冷房に用いられており、それが次に、世界中で温室効果ガス排出の増大を引き起こしている。したがって、建築物のエネルギー需要を減らす新たな技術の開発が必要になっている。
【0004】
建築物における特に夏季のエネルギー消費を減らすために、複数の方策が提案されている。例えば、エネルギー効率が高い電化製品、例えば、エアコンまたは冷却塔が提案されている。いくつかの方策では、日光または熱気を遮断できる材料を建築物の内側に配置して使用する。
【発明の概要】
【0005】
建築物を過度の日光および熱気から保護するための温度調節物品を本明細書で説明する。温度調節物品は、建築物の外面に適用されてよい。
【0006】
1つの態様では、温度調節物品が、金属膜と、金属膜上に配置されているポリマー膜と、金属膜上に配置されている着色剤膜とを含む。温度調節物品の少なくとも1つの面は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく、且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい。
【0007】
いくつかの実施形態において、着色剤膜はポリマー膜上に配置されてよい。いくつかの実施形態において、着色剤膜は、金属膜とポリマー膜との間に挿入されてよい。着色剤膜は、色素分子を含む着色剤および/または4μmより小さい直径を有する着色剤粒子を含む。さらに着色剤は、赤外線透過性を有してよい。例えば、着色剤粒子は、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはケイ素のうちの1つまたは複数を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、ポリマー膜は、ポリエチレンまたはポリプロピレンまたは他の赤外線(IR)透過性材料のうちの1つまたは複数を含む。ポリマー膜は、埋め込まれている着色剤粒子を含んでよい。いくつかの実施形態において、ポリマー膜は、埋め込まれている誘電体粒子を含む。埋め込まれている誘電体粒子は、TiO、ZnO、またはCaCOのうちの1つまたは複数を含む。埋め込まれている誘電体粒子は、4μmより小さい直径を有する。
【0009】
別の態様では、温度調節物品が、ポリマー膜と、ポリマー膜に埋め込まれている誘電体粒子とを含む。温度調節物品の少なくとも1つの面は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく、且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい。
【0010】
さらに別の態様では、温度調節物品が、ポリマー膜と、ポリマー膜に埋め込まれている誘電体粒子と、ポリマー膜上に配置されている着色剤膜とを含む。温度調節物品の少なくとも1つの面は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく、且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい。着色剤膜は、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはケイ素のうちの1つまたは複数を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本技術の様々な実施形態の特定の特徴が、添付した特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示の原理を利用する例示的な実施形態を記載している以下の詳細な説明と、添付図面とを参照することにより、本技術の特徴および利点の十分な理解が得られるであろう。
【0012】
図1】1つの例示的な実施形態による温度調節物品の断面図である。
【0013】
図2】1つの例示的な実施形態による別の温度調節物品の断面図である。
【0014】
図3】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0015】
図4】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0016】
図5】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0017】
図6】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0018】
図7】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0019】
図8】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【0020】
図9】1つの例示的な実施形態によるさらに別の温度調節物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明では、本開示の様々な実施形態の十分な理解を提供するために、一定の具体的な詳細を記載する。しかしながら、当業者であれば、これらの詳細がなくても、本開示が実施され得ることを理解するであろう。さらに、本開示の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の共通した一般知識に従って、本開示の範囲内で複数の改作および変更が行われてよい。そのような変更には、実質的に同じ手段で同じ結果を実現するために、本開示の任意の態様を既知の均等物で置き換えることが含まれる。
【0022】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、単語「comprise(含む)」およびその派生形、例えば「comprises」および「comprising」は、オープン且つ包括的な意味で、「~を含むが、これに限定されない」として解釈されることになる。本明細書全体を通じて、値の数値範囲の記述は、当該範囲を画定する値も含めた範囲に含まれるそれぞれの個々の値を個々に参照する簡略表記としての役割を果たすことが意図されており、それぞれの個々の値は、それが本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。さらに、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでない旨を表さない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
本明細書全体を通じた「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つの実施形態において」または「一実施形態において」という表現が本明細書全体を通じて様々な箇所に出現しても、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではないが、場合によっては同じ実施形態に言及していることがある。さらに、1つまたは複数の実施形態では、特定の特徴、構造、または特性が任意の好適な方式で組み合わされてよい。
【0024】
本明細書に説明される様々な実施形態は、建築物の外面に用いられる温度調節物品に関する。温度調節物品は、日光を反射して、建築物の内側への日光の透過、および建築物内の物品による日光の吸収を減らすことができる。建築物が熱気に包まれている場合、温度調節物品は建築物の中への熱放射も減らす。温度調節物品は、様々な気候環境および悪天候に耐久性があるように構成されている。使いやすいように、温度調節物品は、建築物の外面に取り付けるための接着層または他の仕組みを含んでよい。
【0025】
ここから、添付図を用いて実施形態を説明する。まず、図1に言及する。図1は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品100の断面図である。温度調節物品100は、金属膜102と、金属膜102上に配置されているポリマー膜104と、ポリマー膜104上に配置されている着色剤膜106とを含む。温度調節物品100は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品100は、さらなる日光反射能力をもたらすために、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きい、0.7より大きい、または0.75より大きい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品100は、熱吸収をさらに減らすために、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満である少なくとも1つの面を有する。これらの特性は、材料および膜構成の選択によって得ることができる。
【0026】
金属膜102は、日光に対して高い反射率を有する任意の金属を含んでよい。この目的の金属には例として、限定されないが、Al、Ti、Cu、Ag、Auなどが含まれてよい。金属膜102は、単層の金属もしくは合金、または多層の金属もしくは合金を含んでよい。金属膜102の厚さは、25μm未満の膜であっても、200nm未満または100nm未満の金属被膜であってもよい。
【0027】
ポリマー膜104は、可視波長で透明、または実質的に透明である1層または複数層のポリマーを含んでよい。場合によっては、ポリマー膜104の透過率は、0.3~20μmの波長で少なくとも0.3である。例えば、ポリマー膜104は、ポリエチレンまたはポリプロピレンのうちの一方または両方を含んでよい。ポリマー膜104の厚さは、1000μm未満でよい。温度調節物品100の反射率を向上させるために、場合によっては、ポリマー膜104の厚さをさらに減らしてもよい。例えば、ポリマー膜104の厚さは、750μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満、150μm未満、140μm未満、130μm未満、125μm未満、120μm未満、110μm未満、100μm未満、75μm未満、または50μm未満であってもよい。ポリマー膜104の厚さはさらに、温度調節物品100の寿命を長くすることを考慮して選択されてよい。いくつかの実施形態において、ポリマー膜104の厚さは、上記2つの厚さのいずれか、例えば150μm~50μm、150μm~75μm、150μm~100μm、150μm~110μm、140μm~50μm、140μm~75μm、140μm~100μm、140μm~110μm、130μm~50μm、130μm~75μm、130μm~100μm、130μm~110μm、125μm~50μm、125μm~75μm、125μm~100μm、または125μm~110μmであってもよい。
【0028】
ポリマー膜104は、多層構造であってよい。例えば、ポリマー膜104は、複数の同じポリマー層を含んでも、異なる材料のポリマー層を含んでもよい。1つの例では、ポリマー膜104は、複数の層のナノ多孔質ポリエチレンまたはナノ多孔質ポリプロピレンを含む。ナノ多孔質ポリマー層のそれぞれは、互いにからまったナノファイバを含んでその間に細孔を形成しても、ナノポアを含んで多孔質構造を作り出してもよい。場合によっては、細孔によって、ポリマー膜104の多孔度は40%になることがある。細孔のサイズに応じて、これらは可視範囲でも不透明をもたらす場合がある。
【0029】
着色剤膜106は、ユーザの個人的好みを満たすために、様々な色の温度調節物品100を提供する。例えば、着色剤膜106は、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色、紫色、黒色、および白色から選択された1つまたは複数の可視色の外観を呈した温度調節物品100を提供する。他の色も考えられる。着色剤膜106は、色素分子および/または着色剤粒子を含む着色剤を含んでよい。場合によっては、着色剤は赤外線透過性を有するように設計されている。着色剤粒子は、4μmより小さいまたは3μmより小さい直径を有し得る。着色剤粒子の例示的な材料には、限定されないが、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、もしくはケイ素、または他の既知の着色材料もしくは今後開発される着色材料が含まれる。着色剤膜106は、最大10wt%の代表的な着色剤を含んでも、赤外線透過性を維持するために15~23wt%の赤外線透過性着色剤を含んでもよい。
【0030】
材料選択および層構造によって、温度調節物品100は、少なくとも1つの面において、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率を有することが可能になり、これにより、温度調節物品100は建築物に照射される日光を効果的に反射することができる。さらに、温度調節物品100は、少なくとも1つの面において、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率を有し、これにより、温度調節物品100は、室外空気温度が室内温度より高いときの熱吸収を減らすことができる。これらの効果を組み合わせることで、温度調節物品100は、温度調節物品100が建築物の外面に取り付けられているときに建築物を涼しく保つことができるので、建築物の冷房用のエネルギー消費を減らすことが可能になる。
【0031】
いくつかの実施形態において、温度調節物品100はさらに、温度調節物品100を建築物の外面に接続するための接続層108を含んでよい。接続層108は、温度調節物品100を、例えば、建築物の壁または屋根に固定するための接着剤または他の取り付け機構を含んでよい。
【0032】
温度調節物品100を形成するための例示的な方法では、金属膜102を気相成長法でポリマー膜104上に堆積してよい。
【0033】
図2は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品200の断面図である。温度調節物品200は、金属膜102と、金属膜102上に配置されている着色剤膜106と、着色剤膜106上に配置されているポリマー膜104とを含む。温度調節物品200は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。温度調節物品200の金属膜102、ポリマー膜104、および着色剤膜106は、温度調節物品100のものと同様である。これらの膜についての詳細な説明は、図1に関連して説明したものを参照することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、温度調節物品200は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品200は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。
【0035】
温度調節物品200の性能は、温度調節物品100と同様であるか、またはそれに対して互換性がある。しかしながら、温度調節物品200の着色剤膜106がポリマー膜104と金属膜102との間に挿入されているため、温度調節物品200の色が長く持続して、建築物に優れた美的効果および装飾効果をもたらすことができる。
【0036】
図3は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品300の断面図である。温度調節物品300は、金属膜102と、金属膜102上に配置されているポリマー膜104と、ポリマー膜104上に配置されている着色剤膜106と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110とを含む。温度調節物品300は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。温度調節物品300の金属膜102、ポリマー膜104、および着色剤膜106は、温度調節物品100のものと同様である。これらの膜についての詳細な説明は、図1に関連して説明したものを参照することができる。
【0037】
誘電体粒子110は、日光を散乱させる能力によって、温度調節物品300の反射率をさらに上げることができる。誘電体粒子110は、TiO、ZnO、またはCaCOのうちの1つまたは複数を含み、4μm未満の直径を有し得る。TiO、ZnO、またはCaCOの誘電体粒子は、高い日射反射率を示すので、建築物から日光を散乱させるのに効果的である。さらに、TiOの誘電体粒子は約15~20μmの波長で高い吸収率を示し、ZnOおよびCaCOの誘電体粒子はそれぞれ、約7~8μmの波長および約11~12μmの波長で高い吸収率を示す。これらの粒子の混合物は、温度調節物品300の少なくとも1つの面において、4~20μmの波長で0.4未満の平均放射率をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、ポリマー膜104がナノファイバで構成されている場合、誘電体粒子110は、からまったナノファイバ間にある細孔に埋め込まれてよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、温度調節物品300は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品300は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。
【0039】
図4は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品400の断面図である。温度調節物品400は、金属膜102と、金属膜102上に配置されているポリマー膜104と、ポリマー膜104上に配置されている着色剤膜106と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の着色剤112とを含む。着色剤112は、色素分子および/または着色剤粒子を含んでよい。温度調節物品400は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。温度調節物品400の金属膜102、ポリマー膜104、着色剤膜106、および誘電体粒子110は、温度調節物品300のものと同様である。これらの構造についての詳細な説明は、図3に関連して説明したものを参照することができる。
【0040】
ポリマー膜104に埋め込まれている着色剤112は、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色、紫色、黒色、および白色から選択された1つまたは複数の可視色の外観を呈した温度調節物品400を提供する。他の色も考えられる。場合によっては、着色剤は赤外線透過性を有するように構成されている。着色剤粒子は、4μmより小さいまたは3μmより小さい直径を有する。着色剤粒子の例示的な材料には、限定されないが、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、もしくはケイ素、または他の既知の着色材料もしくは今後開発される着色材料が含まれる。ポリマー膜104に着色剤112を含めることで、着色の調整というさらなる柔軟性が温度調節物品400にもたらされる。
【0041】
いくつかの実施形態において、温度調節物品400は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品400は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。
【0042】
図5は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品500の断面図である。温度調節物品500は、金属膜102と、金属膜102上に配置されているポリマー膜104と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の着色剤112とを含む。着色剤112は、色素分子および/または着色剤粒子を含んでよい。温度調節物品500は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品500は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品500は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。温度調節物品500は、温度調節物品500が着色剤膜106を含まないことを除いて、図4の温度調節物品400と同様である。場合によっては、温度調節物品500のポリマー膜104に埋め込まれている着色剤112の密度が、温度調節物品400のものより大きい。この図5に示すような簡略化した構造では、同様の温度調節性能をもたらすと共に着色剤膜が省かれているので、温度調節物品を製造する際のコストを削減することができる。
【0043】
図6は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品600の断面図である。温度調節物品600は、金属膜102と、金属膜102上に配置されているポリマー膜104と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の着色剤112とを含む。着色剤112は、色素分子および/または着色剤粒子を含んでよい。温度調節物品600は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品600は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品600は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。温度調節物品600は、ポリマー膜104に埋め込まれている誘電体粒子を温度調節物品600が含まないことを除いて、図5の温度調節物品500と同様である。
【0044】
図7は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品700の断面図である。温度調節物品700は、ポリマー膜104と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110とを含む。温度調節物品700は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品700は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品700は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。温度調節物品700のポリマー膜104および誘電体粒子110は、図3の温度調節物品300のものと同様である。これらの構造についての詳細な説明は、図3に関連して説明したものを参照することができる。
【0045】
図8は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品800の断面図である。温度調節物品800は、ポリマー膜104と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の着色剤112とを含む。着色剤112は、色素分子および/または着色剤粒子を含んでよい。温度調節物品800は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品800は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品800は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。温度調節物品800のポリマー膜104、誘電体粒子110、および着色剤112は、図4の温度調節物品400のものと同様である。これらの構造についての詳細な説明は、図4に関連して説明したものを参照することができる。
【0046】
図9は、1つの例示的な実施形態による温度調節物品900の断面図である。温度調節物品800は、ポリマー膜104と、ポリマー膜104に埋め込まれている複数の誘電体粒子110と、ポリマー膜104上に配置されている着色剤膜106とを含む。温度調節物品900は、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.5より大きく且つ平均放射率が4~20μmの波長で0.4より小さい少なくとも1つの面を有する。いくつかの実施形態において、温度調節物品900は、さらなる日光反射能力をもたらすために、少なくとも1つの面において、平均反射率が0.3~4μmの波長で0.6より大きく、0.7より大きく、または0.75より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、温度調節物品900は、熱吸収をさらに減らすために、少なくとも1つの面において、平均放射率が4~20μmの波長で0.35未満、0.3未満、0.25未満、または0.2未満であってもよい。温度調節物品900のポリマー膜104、誘電体粒子110、および着色剤膜106は、図3の温度調節物品300のものと同様である。これらの構造についての詳細な説明は、図3に関連して説明したものを参照することができる。
【0047】
図1に示すような接続層108は、図2図9の温度調節物品にも適用され得ることを理解されたい。本開示全体を通じた反射率は、分光計で測定されてよい。
【0048】
まとめると、本開示と矛盾しない温度調節物品は、0.3~4μmの波長での高い日光反射と、4~20μmの波長での低い放射率と、建築物の外面に用いるのに適している優れた耐久性とをもたらす。温度調節物品は、高温環境で冷房が必要とされる他の分野、例えば、車両にも使用することができる。
【0049】
本開示の前述の説明は、例示および説明のために提供されている。この説明は、網羅的であることも、本開示を開示したそのままの形に限定することも意図していない。本開示の幅広さおよび範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。当業者には、複数の変更および変形が明らかであろう。これらの変更および変形には、開示した特徴のあらゆる適切な組み合わせが含まれる。本開示の原理およびその実際の応用を最も良く説明するために、複数の実施形態を選択して説明したので、当業者は、様々な実施形態についての開示を、考えられる特定の用途に適している様々な変更と共に理解することが可能である。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によって定められることが意図されている。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
金属膜と、
前記金属膜上に配置されているポリマー膜と、
前記金属膜上に配置されている着色剤膜と
を備える温度調節物品であって、
前記温度調節物品の少なくとも1つの面が、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率と、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率とを有する、温度調節物品。
(項目2)
前記着色剤膜が前記ポリマー膜上に配置されている、項目1に記載の温度調節物品。
(項目3)
前記着色剤膜が前記金属膜と前記ポリマー膜との間に挿入されている、項目1に記載の温度調節物品。
(項目4)
前記着色剤膜が、色素分子を含む着色剤および/または4μmより小さい直径を有する着色剤粒子を含む、項目1から3のいずれか一項に記載の温度調節物品。
(項目5)
前記着色剤が赤外線透過性を有する、項目4に記載の温度調節物品。
(項目6)
前記着色剤粒子が、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはケイ素のうちの1つまたは複数を含む、項目4または5に記載の温度調節物品。
(項目7)
前記ポリマー膜が、ポリエチレンまたはポリプロピレンのうちの一方または両方を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の温度調節物品。
(項目8)
前記ポリマー膜が、埋め込まれている着色剤を含む、項目7に記載の温度調節物品。
(項目9)
前記ポリマー膜が、埋め込まれている誘電体粒子を含む、項目7または8に記載の温度調節物品。
(項目10)
前記埋め込まれている誘電体粒子が、TiO2、ZnO、またはCaCO3のうちの1つまたは複数を含む、項目9に記載の温度調節物品。
(項目11)
前記埋め込まれている誘電体粒子が4μmより小さい直径を有する、項目10に記載の温度調節物品。
(項目12)
ポリマー膜と、
前記ポリマー膜に埋め込まれている誘電体粒子と
を備える温度調節物品であって、
前記温度調節物品の少なくとも1つの面が、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率と、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率とを有する、温度調節物品。
(項目13)
前記ポリマー膜が、ポリエチレンまたはポリプロピレンのうちの一方または両方を含む、項目12に記載の温度調節物品。
(項目14)
前記埋め込まれている誘電体粒子が、TiO2、ZnO、またはCaCO3のうちの1つまたは複数を含む、項目12または13に記載の温度調節物品。
(項目15)
前記埋め込まれている誘電体粒子が4μmより小さい直径を有する、項目12から14のいずれか一項に記載の温度調節物品。
(項目16)
前記ポリマー膜に埋め込まれている着色剤をさらに備える、項目12から15のいずれか一項に記載の温度調節物品。
(項目17)
前記埋め込まれている着色剤が、色素分子および/または4μmより小さい直径を有する着色剤粒子を含む、項目16に記載の温度調節物品。
(項目18)
前記着色剤粒子が、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはケイ素のうちの1つまたは複数を含む、項目17に記載の温度調節物品。
(項目19)
ポリマー膜と、
前記ポリマー膜に埋め込まれている誘電体粒子と、
前記ポリマー膜上に配置されている着色剤膜と
を備える温度調節物品であって、
前記温度調節物品の少なくとも1つの面が、0.3~4μmの波長で0.5より大きい平均反射率と、4~20μmの波長で0.4より小さい平均放射率とを有する、温度調節物品。
(項目20)
前記着色剤膜が着色剤を含む、項目19に記載の温度調節物品。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9