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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】サイレンサ付き真空排気装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/06 20060101AFI20230919BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20230919BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
F04C29/06 C
F04C23/00 D
F04B37/16 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022527296
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020620
(87)【国際公開番号】W WO2021240620
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591255689
【氏名又は名称】樫山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 一
(72)【発明者】
【氏名】小平 遼
(72)【発明者】
【氏名】宮原 誠也
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-118296(JP,U)
【文献】特開2008-163905(JP,A)
【文献】特開2004-100594(JP,A)
【文献】特開昭54-054309(JP,A)
【文献】実開昭60-047892(JP,U)
【文献】実開平02-124295(JP,U)
【文献】特開平11-270326(JP,A)
【文献】特表2019-510166(JP,A)
【文献】実開昭62-010286(JP,U)
【文献】特表2005-520988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルブースタポンプと、
容積移送型のドライ真空ポンプと、
前記メカニカルブースタポンプのポンプ排気口である前段側ポンプ排気口と前記ドライ真空ポンプのポンプ吸気口である後段側ポンプ吸気口とを接続している継手管と、
前記ドライ真空ポンプのポンプ排気口である後段側ポンプ排気口から排気が排出される際の騒音を低減するサイレンサと、
を備えており、
前記メカニカルブースタポンプと前記ドライ真空ポンプとは、前記メカニカルブースタポンプの前記前段側ポンプ排気口と前記ドライ真空ポンプの後段側ポンプ吸気口とが所定の間隔で対峙する状態に配置されており、
前記サイレンサは、前記メカニカルブースタポンプの前記前段側ポンプ排気口と前記ドライ真空ポンプの前記後段側ポンプ吸気口との間において、前記継手管の外周を取り囲む状態に配置されていることを特徴とする真空排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサは、
前記継手管が一体形成されているサイレンサケースと、
前記サイレンサケースの内部において前記継手管を取り囲む状態に配置した複数の消音用区画室と、
前記後段側ポンプ排気口に連通していると共に、前記消音用区画室のそれぞれを順次に経由して前記排気を流す排気通路と、
を備えている真空排気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の真空排気装置において、
前記ドライ真空ポンプは横置き状態に配置されており、
前記メカニカルブースタポンプは、前記ドライ真空ポンプの上方の位置において横置き状態に配置されており、
前記ドライ真空ポンプにおける前記メカニカルブースタポンプに対峙する上側の部位に、当該ドライ真空ポンプの前記後段側ポンプ吸気口および前記後段側ポンプ排気口が開口しており、
前記メカニカルブースタポンプにおける前記ドライ真空ポンプの前記後段側ポンプ吸気口に対峙する下側の部位に、当該メカニカルブースタポンプの前記前段側ポンプ排気口が開口しており、
前記サイレンサケースの前記継手管の上端開口部が前記メカニカルブースタポンプの前記前段側ポンプ排気口に接続され、前記継手管の下端開口部が前記ドライ真空ポンプの前記後段側ポンプ吸気口に接続され、前記排気通路の排気通路入口が前記ドライ真空ポンプの前記後段側ポンプ排気口に接続されている真空排気装置。
【請求項4】
請求項3に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサケースは、振動吸収材を介して、前記ドライ真空ポンプあるいは前記メカニカルブースタポンプのポンプケーシングに取り付けられている真空排気装置。
【請求項5】
請求項2に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサケースは、前記ドライ真空ポンプおよび前記メカニカルブースタポンプのポンプケーシングよりも熱伝導率の高い素材から形成されている真空排気装置。
【請求項6】
請求項2に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサは、前記消音用区画室として、前記排気の流れ方向の上流側に配置した膨張室構造の区画室と、下流側に配置した吸音構造の区画室とを備えている真空排気装置。
【請求項7】
請求項に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサは、前記消音用区画室に生成される凝結水を外部に排出するドレイン機構を備えている真空排気装置。
【請求項8】
請求項1に記載の真空排気装置において、
前記サイレンサは、外部からバラストガスを前記ドライ真空ポンプのバラストガス入口に導くバラストガス通路および逆流防止弁を含むガスバラスト機構を備えている真空排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積移送型のドライ真空ポンプを備えたサイレンサ付き真空排気装置に関する。また、本発明は、メカニカルブースタポンプと容積移送型のドライ真空ポンプとを備えたサイレンサ付き真空排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備の反応室等のように、清浄な真空環境が必要とされる場合等に、メカニカルブースタポンプと容積移送型のドライ真空ポンプとが直列に接続された構成の真空排気装置が用いられる。例えば、装置筐体内において上下にメカニカルブースタポンプおよびドライ真空ポンプが横置き状態で配置されたユニット型の真空排気装置が用いられる。このような真空排気装置においては、排気方向の最も下流側に接続されるドライ真空ポンプの中間段出口、最終段出口から気体が排出される際に発生する騒音を低減するために、サイレンサが取り付けられる。
【0003】
ここで、多段ドライ真空ポンプを備えたサイレンサ付き真空排気装置(ドライ真空ポンプ装置)は、例えば、特許文献1、2において提案されている。これらの文献においては、横置き状態の多段ドライ真空ポンプの底側に、最終段出口、中間段出口から排出される気体の騒音を低減するためのサイレンサが取り付けられている。
【0004】
また、メカニカルブースタポンプおよび多段ドライ真空ポンプが装置筐体の内部に組み込まれた構成のユニット型のサイレンサ付き真空排気装置においては、その装置筐体の内部に確保した設置スペースにサイレンサが配置される。内部に設置スペースを確保できない場合等には、装置筐体の外面にサイレンサが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-226368号公報
【文献】特開2011-226370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サイレンサ付き真空排気装置においては、サイレンサを設置する必要があるので、その分、設置スペースを多く必要とする。また、ユニット型の真空排気装置の場合においても、その装置筐体の内部あるいは外部に、サイレンサを設置する必要があるので、その分、設置スペースを多く必要とする。設置スペースを多く必要とすることなく、ドライ真空ポンプにサイレンサを組み付けることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、設置スペースの増加を抑制した形態でサイレンサが組付けられた構成のサイレンサ付き真空排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の真空排気装置は、
容積移送型のドライ真空ポンプと、
前記ドライ真空ポンプから排気が排出される際の騒音を低減するサイレンサと、
を有しており、
前記ドライ真空ポンプは、
前記ドライ真空ポンプのポンプケーシングにおける前記サイレンサが設置されているサイレンサ設置面と、
前記サイレンサ設置面に開口しているポンプ吸気口およびポンプ排気口と、
を備えており、
前記サイレンサは、
前記ポンプ吸気口に連通する吸気通路と、
複数の消音用区画室と、
前記ポンプ排気口に連通していると共に、前記消音用区画室のそれぞれを順次に経由して前記排気を流す排気通路と、
前記吸気通路、前記消音用区画室および前記排気通路が内部に形成されているサイレンサケースと、
前記サイレンサ設置面に面する前記サイレンサケースの第1ケース外面部分と、
前記第1ケース外面部分における前記ポンプ吸気口に対峙する部位に開口している前記吸気通路の吸気通路出口と、
前記第1ケース外面部分における前記ポンプ排気口に対峙する部位に開口している前記排気通路の排気通路入口と、
前記サイレンサケースにおける前記第1ケース外面部分とは異なるケース外面部分に開口している前記吸気通路の吸気通路入口および前記排気通路の排気通路出口と、
を備えていることを特徴としている。
【0009】
ドライ真空ポンプは、例えば、ポンプロータの中心軸線が水平となるように、横置き状態に配置される。この場合には、サイレンサ設置面は、ポンプケーシングの上面部分に形成される。また、サイレンサケースは、第1ケース外面部分であるケース下面部分と、ケース上面部分と、ケース外周側面部分とを備えており、ケース下面部分は上記の第1ケース外面部分であり、ケース上面部分に、吸気通路の吸気通路出口が開口しており、ケース上面部分あるいはケース外周側面部分に、排気通路の排気通路出口が開口する。
【0010】
本発明の真空排気装置においては、ドライ真空ポンプの吸気側にサイレンサが設置され、サイレンサには、ドライ真空ポンプから排出される排気を取り込む排気通路が備わっていると共に、ドライ真空ポンプのポンプ吸気口に連通する吸気通路も備わっている。ドライ真空ポンプに取り付けたサイレンサのサイレンサケースには、吸気通路の吸気通路入口が開口しているので、外部からサイレンサの吸気通路を介してドライ真空ポンプに吸引用の気体が供給される。吸気通路をサイレンサに一体化してあるので、吸気用配管等を別途、引き回す必要がなく、吸気用配管の設置スペースも少なくて済むので、サイレンサを取り付けたドライ真空ポンプを備えた真空排気装置の小型化、コンパクト化に有利である。
【0011】
横置き状態のドライ真空ポンプの上面にサイレンサを設置し、サイレンサのケース上面部分に吸気通路入口および排気通路出口が位置している場合等においては、真空排気装置を設置する際における配管接続作業を装置上側から行うことができる。よって、配管作業を含む設置作業が容易になるという利点がある。
【0012】
ここで、ドライ真空ポンプの前段側にメカニカルブースタポンプが接続された構成の真空排気装置を構築する場合には、これらのポンプの間にサイレンサを配置すればよい。サイレンサには、後段側のドライ真空ポンプの吸気側に連通している吸気通路が一体形成されているので、この吸気通路を介して、メカニカルブースタポンプからの排気を、後段側のドライ真空ポンプに送り込むことができる。
【0013】
この場合には、メカニカルブースタポンプのポンプ排気口とドライ真空ポンプのポンプ吸気口との間を接続するために取り付けられる継手管を、サイレンサに一体化した構成を採用することができる。すなわち、サイレンサケースに、上記の吸気通路として、継手管を一体形成すればよい。
【0014】
このようにすれば、メカニカルブースタポンプのポンプ排気口とドライ真空ポンプのポンプ吸気口との間を接続するために取り付けられる継手管の設置スペースを利用して、サイレンサを配置できる。サイレンサの設置スペースを別途確保する必要がないので、真空排気装置の小型化、コンパクト化、および製造コストの低減に有利である。
【0015】
この場合、サイレンサケースに、継手管を双方のポンプのポンプケーシングに接続するための取付用フランジとしての機能を持たせることができる。これにより、配管接続用の部品点数を削減できるので、真空排気装置を更に小型、コンパクト化でき、製造コストを低減できる。
【0016】
次に、サイレンサは、ドライ真空ポンプに取り付けられ、あるいは、メカニカルブースタポンプとドライ真空ポンプの間に配置されるので、これらのポンプからの放熱、伝熱によって、サイレンサが加熱される。凝縮性ガス(溶剤・気体等)を排気する場合には、飽和水蒸気圧を超えてしまうと、サイレンサ内を通過する間に凝縮性ガスが凝縮してしまう。本発明によれば、ポンプからの発熱によってサイレンサが加熱されるので、ヒータなどの加熱手段を付設することなく、サイレンサの内部におけるガスの凝縮を抑制できる。特に、ドライ真空ポンプとメカニカルブースタポンプの間にサイレンサが配置されている場合は、サイレンサは両側から加熱されるので、サイレンサの内部におけるガスの凝縮をより確実に抑制できる。
【0017】
本発明において、サイレンサケースの素材として、ポンプケーシングの素材よりも熱伝導率の高い素材、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の金属素材を用いることができる。この場合には、サイレンサケースが、ポンプの熱を効率よく吸収して外部に放出する放熱部として機能するので、ポンプが過熱状態に陥ることを抑制できる。
【0018】
本発明において、前記サイレンサは、前記消音用区画室として、前記排気の流れ方向の上流側に配置した膨張室構造の区画室と、下流側に配置した吸音構造の区画室とを備えたサイレンサを用いることができる。消音用区画室として共鳴構造の区画室を備えたサイレンサを用いることも可能である。
【0019】
また、真空排気装置の小型化、コンパクト化等を図るためには、サイレンサに、前記消音用区画室に生成される凝結水を外部に排出するドレイン機構を一体に組み込むことが望ましい。同様に、サイレンサに、外部からバラストガスを前記ドライ真空ポンプのバラストガス入口に導くバラストガス通路および逆流防止弁を含むガスバラスト機構を一体に組み込むことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本発明を適用した実施の形態1に係るユニット型の真空排気装置を示す概略構成図であり、(b)はサイレンサを示す平面図であり、(c)はその正面図である。
図2】(a)はサイレンサの内部構図を示す平面図であり、(b)はb-b´線で切断した部分の概略断面図であり、(c)はサイレンサのケース本体を示す斜視図である。
図3】(a)は実施の形態2に係る真空排気装置を示す説明図であり、(b)はサイレンサを示す平面図であり、(c)はその正面図である。
図4】(a)はサイレンサの内部構造を示す平面図であり、(b)はB-B´線で切断した部分の概略断面図であり、(c)はガスバラスト機構が組み込まれている部分を示す部分断面図であり、(d)はサイレンサのケース本体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態を説明する。以下に述べる各実施の形態は本発明の一例であり、本発明をこれらの実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1に係るユニット型の真空排気装置を示す概略構成図であり、図1(b)および図1(c)はサイレンサを示す平面図および正面図である。真空排気装置1は、装置筐体2と、装置筐体2に内蔵されているメカニカルブースタポンプ3と、容積移送型のドライ真空ポンプ4と、メカニカルブースタポンプ3の排気口31(前段側ポンプ排気口)とドライ真空ポンプ4の吸気口41(後段側ポンプ吸気口)とを接続する継手管5(フランジ)と、この継手管5が組み込まれて一体化された構成のサイレンサ6とを備えている。サイレンサ6は、ドライ真空ポンプ4の排気口42(後段側ポンプ排気口)に接続されている。
【0023】
装置筐体2は直方体形状をしており、その内部において、底側には、ポンプローター(図示せず)の中心軸線が水平となる横置き状態で、容積移動型のドライ真空ポンプ4が配置されている。ドライ真空ポンプ4の上側には、同じく横置き状態でメカニカルブースタポンプ3が配置されている。メカニカルブースタポンプ3の排気口31は下方に向けて開口している。ドライ真空ポンプ4の吸気口41は上方に向けて開口しており、前段側の排気口31に対して所定の間隔で同軸に対峙している。これらの前段側の排気口31と後段側の吸気口41との間が、サイレンサ6に組み込まれて一体化されている継手管5によって接続されている。サイレンサ6の構成部分は、メカニカルブースタポンプ3の排気口31とドライ真空ポンプ4の吸気口41との間において、継手管5の外周を取り囲む状態に配置されている。
【0024】
例えば、真空排気装置1は、不図示の半導体製造設備の真空室等の真空引きのために用いられる。真空室等からの排気が、不図示の配管を介して、装置筐体2の天面に取り付けたL型配管継手8から、メカニカルブースタポンプ3およびドライ真空ポンプ4を順次に介して吸引される。ドライ真空ポンプ4からの排気が、サイレンサ6を介して、装置筐体2の側面に開口する排気出口管9から排出される。
【0025】
サイレンサ6のサイレンサケース50は、上方に開口するケース本体60と、このケース本体60が取り付けられているケース蓋である連結用フランジ70とから構成されており、ケース下面部分50a、ケース上面部分50bおよびケース外周側面部分50cとが形成されている。
【0026】
連結用フランジ70は、矩形輪郭の板部材であり、ケース本体60の上端開口部を封鎖している。また、連結用フランジ70におけるケース本体60の上端開口部から外方に張り出している外周縁部分における四隅の部位が、締結用ボルト11によって、下側のドライ真空ポンプ4の側の支持ブラケット43に締結固定されている。メカニカルブースタポンプ3は、連結用フランジ70の上に、横置き状態で搭載され、当該連結用フランジ70に締結固定されている。
【0027】
本例では、連結用フランジ70が、防振ゴム12(振動吸収材)を挟み、支持ブラケット43に締結固定される。連結用フランジ70のケース上面部分50bには、継手管5の上端に連通する上端開口部71が開口している。この上端開口部71の外周側の部位が、締結ボルト(図示せず)によって、上側のメカニカルブースタポンプ3のポンプハウジングにおける排気口31の外周側の部位に締結固定される。
【0028】
ケース本体60が取り付けられた連結用フランジ70は、上下のメカニカルブースタポンプ3およびドライ真空ポンプ4に締結固定される。これにより、継手管5の上端開口部71がメカニカルブースタポンプ3の排気口31に同軸に接続され、継手管5の下端開口部52がドライ真空ポンプ4の吸気口41に同軸に接続された状態が形成される。
【0029】
円筒状の継手管5が一体形成されているサイレンサケースのケース本体60は、底壁部分61および継手管5を取り囲む外周壁部分62を備えている。外周壁部分62の上端縁部分はフランジとして機能し、この部分が締結ボルト13によって連結用フランジ70に取り付けられている。ケース本体60の底壁部分61の底面であるケース下面部分50aには、ドライ真空ポンプ4からの排気を取り込む排気通路入口63が開口している。下側のドライ真空ポンプ4のポンプハウジングの上側の部分はサイレンサ設置面であり、ここには、排気口42が開口している。サイレンサ6を取り付けた状態において、その排気通路入口63が排気口42に接続された状態が形成される。
【0030】
単一部品として形成されている継手管5およびケース本体60は、本例では、上下のメカニカルブースタポンプ3およびドライ真空ポンプ4のポンプハウジングの素材よりも熱伝導率の高い素材から形成されている。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等から形成されている。
【0031】
図2(a)はサイレンサ6の内部構成を示す平面図であり、連結用フランジ70を省略して示してある。図2(b)はそのb-b´線で切断した部分の概略断面図であり、連結用フランジ70も示してある。図2(c)はサイレンサケースのケース本体60を示す斜視図である。
【0032】
図2も参照して説明すると、サイレンサ6は、内部に複数の消音用区画室を備えている。本例では、ケース本体60と連結用フランジ70との間に、4つの消音用区画室64~67が継手管5を取り囲む状態に配置されている。また、図2(a)、(b)において矢印で示すように、排気通路入口63から導入されるドライ真空ポンプ4の排気を、順次に4つの消音用区画室64~67を経由させて流す排気通路68が配置されている。本例では、排気の流れ方向の上流側から下流側に向けて、膨張室構造の第1区画室64、膨張室構造の第2区画室65、吸音構造の第3区画室66および膨張室構造の第4区画室67がこの順序で形成されている。消音用の第1~第4区画室64~67の底面の高さは、図2(b)に示すように、排気の流れ方向の下流側に向かって、段階的に低くなるように設定されている。
【0033】
ケース本体60のケース外周側面部分50cには、排気通路68の排気通路出口68aが開口している。排気通路68の排気通路出口68aを介して、最終段の第4区画室67から外部に排気が排出される。吸音構造の第3区画室66の内部には、例えば、パンチングメタル等の多孔質素材からなる排気流通管66aが配置され、この外周を取り囲む状態に吸音材66bが充填されている。消音用区画室として、共鳴型の消音室を設けることも可能である。
【0034】
なお、サイレンサ6のケース本体60には、内部で発生した凝結水等を外部に排出するためのドレイン機構(図示せず)が一体に形成されており、その排水口にドレインプラグ14が取り付けられている。また、ケース本体60にはガスバラスト機構(図示せず)も組み込まれている。ケース本体60には、バラストガス通路15が開口しており、ここから、不図示の配管を経由して、ドライ真空ポンプ4にバラストガスが供給される。
【0035】
このように構成した本例のユニット型の真空排気装置1においては、上下に配置されているメカニカルブースタポンプ3およびドライ真空ポンプ4の間を接続する継手管5の外周を取り囲むスペースに着目し、このスペースを、サイレンサ6の設置スペースとして利用している。また、サイレンサ6に継手管5が組み込まれて一体化されている。これにより、装置筐体2の内部において、サイレンサ6の設置スペースを別途、確保する必要がないので、真空排気装置1の小型、コンパクト化に有利である。また、サイレンサ6に継手管5が組み込まれて一体化されているので、これらの取り付け作業を、効率よく、少ない部品点数で行うことができる。
【0036】
さらに、サイレンサ6は、上下からメカニカルブースタポンプ3およびドライ真空ポンプ4によって挟まれている。これらのポンプ3、4の発熱によってサイレンサ6が加熱されるので、ヒータを用いて加熱することなく、凝縮性ガスを流す場合等において凝縮水等が内部に溜まることを抑制できる。特に、本例では、サイレンサ6のケース本体60および継手管5が、上下のポンプ3、4のポンプハウジングの素材よりも熱伝導率の高いアルミニウム等の金属素材から形成されている。よって、サイレンサ6は、上下のポンプ3、4からの熱を効率よく吸収でき、上下のポンプ3、4から外部に熱を放出するための放熱部として機能する。
【0037】
これに加えて、サイレンサ6には、ドレイン機構およびガスバラスト機構が組み込まれている。ドレイン配管、バラストガス連通管等の部品を別途、配置する場合に比べて、真空排気装置1の小型・コンパクト化、および、製造コストの低減化に有利である。
【0038】
なお、ドライ真空ポンプ4は一般に多段ドライ真空ポンプであり、最終段排気口だけでなく中間段排気口からも排気が排出される。この場合には、これら最終段排気口および中間段排気口から排出される排気が、サイレンサ6の排気通路入口63から内部の排気通路68に取り込まれる。
【0039】
(実施の形態2)
図3(a)は実施の形態2に係る真空排気装置(ドライ真空ポンプ装置)を示す説明図であり、図3(b)はサイレンサを示す平面図であり、図3(c)はその正面図である。真空排気装置100(ドライ真空ポンプ装置)は、容積移送型の多段ドライ真空ポンプ110と、多段ドライ真空ポンプ110の排気口に接続されるサイレンサ130とを備えている。多段ドライ真空ポンプ110は、装置架台150に横置き状態で搭載されており、多段ドライ真空ポンプ110には駆動用のモータ160が同軸に取り付けられている。
【0040】
サイレンサ130は、全体として扁平な直方体形状をしたサイレンサケース131を備えており、サイレンサケース131には、ケース下面部分131aと、ケース上面部分131bと、ケース外周側面部分131cが形成されている。本例では、サイレンサケース131は、ケース本体132と、このケース本体132の上端に取り付けたケース蓋133とから構成されている。ケース上面部分131bにおける一方の端部分には、吸気管134が取り付けられており、他方の端部分には排気管135が取り付けられている。サイレンサ130は、多段ドライ真空ポンプ110の上に水平に取り付けられている。多段ドライ真空ポンプ110には、サイレンサ130の上面に取り付けた吸気管134を介して気体が吸引される。多段ドライ真空ポンプ110からの排気は、サイレンサ130の内部を経由して、その上面に取り付けた排気管135を介して排出される。
【0041】
図4(a)はサイレンサ130の内部構造を示す平面図であり、ケース蓋133を省略して示してある。図4(b)は図4(a)のB-B´線で切断した部分の概略断面図であり、ケース蓋133も示してある。図4(c)はガスバラスト機構が組み込まれている部分の部分断面図であり、図4(d)はサイレンサケース131のケース本体132を示す斜視図である。
【0042】
これらの図も参照して説明すると、多段ドライ真空ポンプ110は、筒状のポンプケーシング111を備えており、このポンプケーシング111の外周面における上端部分には、サイレンサ設置面112が形成されている。このサイレンサ設置面112には、吸気口および排気口が開口している。本例では、吸気口113は、多段ドライ真空ポンプ110の1段目の圧縮室に連通している。また、排出口として、最終段の圧縮室に連通する最終段排気口116および1段と最終段との間の複数の中間段の圧縮室にそれぞれ連通する中間段排気口114、115が開口している。図4においては、2つの中間段排気口114、115を示してあるが、1つの場合、3つ以上の場合もある。
【0043】
サイレンサ130は、先に述べたように、ケース本体132とケース蓋133とから構成されるサイレンサケース131を備えている。サイレンサケース131の内部には、吸気通路136、排気通路137および複数の消音用区画室が形成されている。
【0044】
吸気通路136について説明する。サイレンサケース131のケース下面部分131aは、サイレンサ設置面112に上側から対峙する部分である。このケース下面部分131aには、吸気口113に対応する部位に、吸気通路136の下端開口である吸気通路出口136bが開口している。吸気通路136の上端開口である吸気通路入口136aは、サイレンサケース131のケース上面部分131bに取り付けた吸気管134に連通している。多段ドライ真空ポンプ110の吸気口113には、サイレンサ130のケース上面部分131bに取り付けた吸気管134から、吸気通路136を介して、気体が吸引される。
【0045】
消音用区画室について説明する。サイレンサケース131の内部には、ケース本体132とケース蓋133との間に、複数の消音用区画室が形成されている。本例では、消音用の第1区画室141、消音用の第2区画室142および消音用の第3区画室143が形成されている。第1、第2区画室141、142は、膨張室構造の消音室である。第3区画室143は吸音構造の区画室であり、内部にパンチングメタル等の多孔質素材からなる排気流通管143aが配置され、排気流通管143aの周囲を取り囲む状態に吸音材143bが充填されている。
【0046】
排気通路137について説明する。本例の排気通路137は、図4(a)において矢印で示すように、消音用の第1~第3区画室141~143を順次に経由させて排気を流通させる。サイレンサケース131のケース下面部分131aには、中間段排気口114、115および最終段排気口116にそれぞれ対応する部位に、排気通路入口137a、137bおよび137cがそれぞれ開口している。これらの排気通路入口137a~137cに、排気通路137の上流端が連通している。サイレンサケース131のケース上面部分131bには、排気通路出口137dが開口している。この排気通路出口137dに、排気通路137の下流端が連通している。多段ドライ真空ポンプ110からの排気は、サイレンサ130の内部において、排気通路137を介して、消音用の第1~第3区画室141~143を順次に経由して流れた後に、排気管135から外部に排出される。
【0047】
ここで、本例のサイレンサケース131は、多段ドライ真空ポンプ110のポンプケーシング111よりも熱伝導率の高いアルミニウム、アルミニウム合金、その他の金属素材から形成されている。
【0048】
また、最終の第3区画室143を規定しているケース本体132の底壁部分には、サイレンサ内部で発生した凝結水等を外部に排出するためのドレイン機構が組み込まれている。ケース本体132のケース外周面に開口しているドレイン排出口にはドレインプラグ144が取り付けられている。
【0049】
さらに、ケース本体132には、バラストガスを多段ドライ真空ポンプ110の側に導入するガスバラスト機構170が組み込まれている。ケース本体132におけるケース蓋133で覆われていない上面部分132bに、バラストガスを外部から導入するバラストガス入口171が開口している。バラストガス入口171は、ケース本体132の内部に形成したバラストガス連通路172に連通している。バラストガス連通路172には、フィルタ172a、ボール式チャッキ弁172b等が配置されている。バラストガス連通路172の他端は、ケース本体132のケース外周面132aに開口しており、ここには、連通管173(図3(a)参照)が接続されている。連通管173はオンオフバルブ174(図3(a)参照)を経由して、多段ドライ真空ポンプ110のバラストガス入口119に連通している。
【0050】
このように構成した真空排気装置100(ドライ真空ポンプ装置)においては、横置き状態の多段ドライ真空ポンプ110の上側の部位に、吸気管134および排気管135を備えたサイレンサ130を取り付けて一体化してある。多段ドライ真空ポンプ110における吸気管、排気管が取り付けられる部分のスペースを利用して、吸気管134および排気管135を備えたサイレンサ130を配置してあるので、サイレンサ130の取り付けに必要な設置スペースの増加を抑制でき、真空排気装置100の小型・コンパクト化に有利である。また、サイレンサ130には、ドレイン機構およびガスバラスト機構170が組み込まれているので、この点においても、真空排気装置100の小型・コンパクト化に有利である。
【0051】
さらに、多段ドライ真空ポンプ110のポンプケーシング111に取り付けたサイレンサケース131は、熱伝導率の高い素材から形成されている。多段ドライ真空ポンプ110で発生した熱が、効率よく、サイレンサケース131に伝達される。多段ドライ真空ポンプ110の発熱によってサイレンサ130が効率よく加熱されるので、ヒータを用いて加熱することなく、凝縮性ガスを流す場合等において凝縮水等が内部に溜まることを抑制できる。
【0052】
なお、本例の真空排気装置100は、多段ドライ真空ポンプ110が備わっている。この構成の真空排気装置100は、一般に、多段ドライ真空ポンプ110の前段側にメカニカルブースタポンプを接続して使用される。
【0053】
この場合、多段ドライ真空ポンプ110の上側に配置されているサイレンサ130は、メカニカルブースタポンプと多段ドライ真空ポンプ110との間に配置される。したがって、先に述べた実施の形態1の真空排気装置1の場合と同様に、サイレンサ130に、吸気通路136として、継手管を一体形成することができる。また、サイレンサケース131のケース蓋133に実施の形態1における連結用フランジ70の機能を持たせることができる。このようにすれば、実施の形態1の場合と同様な作用効果が得られる。
図1
図2
図3
図4