(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー媒体及びそれらの生成方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20230919BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20230919BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230919BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230919BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230919BHJP
B01D 15/22 20060101ALI20230919BHJP
B01D 15/38 20060101ALI20230919BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B01J20/26 L
B01J20/281 G
B01J20/281 R
B01J20/281 X
B01J20/285 T
G01N30/02 B
G01N30/88 J
B01J20/28 Z
B01D15/22
B01D15/38
B01J20/26 H
(21)【出願番号】P 2020538677
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2019050227
(87)【国際公開番号】W WO2019137869
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516106689
【氏名又は名称】ピュリディファイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ハマーソン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ウォリス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ルルー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ハワード・アルバート・ロウ
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534373(JP,A)
【文献】特表2019-527617(JP,A)
【文献】特表2013-535683(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107051398(CN,A)
【文献】RAJESH, Sahadevan et al.,Synthesis of Cellulose-graft-Polypropionic Acid Nanofiber Cation-Exchange Membrane Adsorbers for High-Efficiency Separations,ACS Appl.Mater.Interfaces,2017年,Vol.9,pp.41055-41065
【文献】MA, Zuwei et al.,Electrospun polyethersufone affinity membrane: Membrane preparation and performance evaluation,Journal of Chromatography B,2009年,Vol.877,pp.3686-3694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
G01N 30/00-30/96
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)複数のナノファイバー-ナノファイバー融合点(30)を含むポリマーナノファイバー(20)の少なくとも1枚の不織層(10)と、
ii)前記ポリマーナノファイバー及び前記ナノファイバー-ナノファイバー融合点を覆うグラフト化ポリマーコーティングと、
iii)前記グラフト化ポリマーコーティングに共有結合している、標的生体分子と相互作用することができる複数のリガンド基と、
を含む
官能化クロマトグラフィー媒体であって、
前記官能化クロマトグラフィー媒体が、0.9~1.2μmの泡立ち点孔径を有し、前記泡立ち点孔径はペルフルオロポリエーテル湿潤液を用いるキャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)によって得られる、
官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項2】
前記グラフト化ポリマーコーティングがコンフォーマルコーティングである、請求項1に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項3】
i)複数のナノファイバー-ナノファイバー融合点(30)を含むポリマーナノファイバー(20)の少なくとも1枚の不織層(10)と、
ii)前記ポリマーナノファイバーに共有結
合している複数のグラフト化ポリマー分子と、
iii)前記グラフト化ポリマー分子に共有結合している、標的生体分子と相互作用することができる複数のリガンド基と、
を含む
官能化クロマトグラフィー媒体であって、
前記官能化クロマトグラフィー媒体が、0.9~1.2μmの泡立ち点孔径を有し、前記泡立ち点孔径はペルフルオロポリエーテル湿潤液を用いるキャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)によって得られる、
官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項4】
a)前記ポリマーナノファイバー間の間隔により形成された開放孔構造を介して互いに流動的に接続されている第1の側面(130)及び第2の側面(160)、
b)200~800nmの平均孔径、
c)0.9~1.2μ
mの泡立ち点孔径、
d)0.2~0.4μmの最小孔径、
e)0.3~0.5μmの平均流孔(MFP)径、
f)50~90%の孔体積分率、
g)乾燥官能化クロマトグラフィー媒体1g当たり100~2000μmolのリガンドのリガンド密度、及び/又は
h)官能化クロマトグラフィー媒体1ml当たり少なくとも30mgの標的生体分
子の、標的生体分
子の動的結合容量を有
し、
並びに、
前記泡立ち点孔径はペルフルオロポリエーテル湿潤液を用いるキャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)によって得られる、
請求項1又は2に記載の官能化クロマトグラフィー媒体(120)。
【請求項5】
前記標的生体分子が免疫グロブリンである、請求項4に記載の官能化クロマトグラフィー媒体(120)。
【請求項6】
a)前記ポリマーナノファイバーがモノフィラメントである、
b)前記ポリマーナノファイバーが、100~800n
mの直径を有する、
c)前記グラフト化ポリマー分子又はグラフト化ポリマーコーティングを有する前記ポリマーナノファイバーが、100~1000n
mの直径を有する、
d)前記ポリマーナノファイバーが再生セルロー
スを含む、
e)前記グラフト化ポリマー分子又はグラフト化ポリマーコーティングが、前記ポリマーナノファイバーに単一点で共有結
合しているポリマー分子を含む、
f)前記グラフト化ポリマー分子又はグラフト化ポリマーコーティングが、分岐鎖状ポリマー分子を含む、
g)前記グラフト化ポリマー分子又はグラフト化ポリマーコーティングが、グリシドールモノマー残基を含む、及び/又は
h)前記グラフト化ポリマー分子又はグラフト化ポリマーコーティングが、ジビニルスルホンモノマー残基を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項7】
前記再生セルロースが、鹸化酢酸セルロースである、請求項6に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項8】
a)官能化クロマトグラフィー媒体
における圧
力が、1.2mPas未満の粘度の水性液相が0.05~10mmの厚さの前記媒体を1分当たり1~640媒体体積の流量で通過するとき、
媒体の厚さ1mm当たり1MPa未満
低下する、
b)前記官能化クロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下が、1.2mPas未満の粘度の水性液相が0.05~10mmの厚さの前記媒体を1分当たり1~640媒体体積の流量で通過するとき、2MPa未満である、及び/又は
c)pH5~8の水性緩衝液が前記官能化クロマトグラフィー媒体を0.4秒の滞留時間で通過する場合、前記官能化クロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下が、前記緩衝液の伝導性が3~90mS/cmの間隔で変化すると、
媒体の厚さ1mm当たり0.07MPs未満変化する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項9】
前記リガンド基が、
a)弱い又は強い陰イオン交換リガンド基、
b)弱い又は強い陽イオン交換リガンド基、
c)疎水性相互作用クロマトグラフィーリガンド基、
d)混合モードクロマトグラフィーリガンド基、又は
e)親和性リガンド
基である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項10】
親和性リガンド基が、プロテインAの未変性又は突然変異免疫グロブリン結合ドメインを含むリガンド基である、請求項9に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項11】
ポリマーナノファイバーの複数の前記不織層の積層を
含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体(20)を含む、クロマトグラフィーカートリッジ(110)。
【請求項13】
前記官能化クロマトグラフィー媒体(120)の第1の側面(130)が、第1の分配器構造(150)を介して入口(140)に流動的に接続しており、前記官能化クロマトグラフィー媒体の第2の側面(160)が、第2の分配器構造(180)を介して出口(170)に流動的に接続している、請求項
12に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(110)。
【請求項14】
1つ以上の標的生体分子を分離する方法であって、
i)請求項1から
11のいずれか一項に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は請求項
12又は13に記載のクロマトグラフィーカートリッジを準備する工程と、
ii)前記標的生体分子を含む移動相を、前記官能化クロマトグラフィー媒体又は前記クロマトグラフィーカートリッジに通過させる工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
a)工程ii)において、滞留時間が1分未
満である、及び/又は
b)前記標的生体分子が、工程ii)で得られた通過画分から回収される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
工程ii)の後に、
iii)洗浄液を前記官能化クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジに通過させる工程と、
iv)溶出緩衝液を前記官能化クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジに通過させる工程と、
v)工程iv)で得た溶出液から前記標的生体分子を回収する工程と、
を更に含
む、請求項
14又は
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動相から生物学的分子を単離するのに適している官能化クロマトグラフィー媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー市場は、世界中の製薬市場において最も速く成長している分野であり、2012年の全ての市場販売の20%(1,530億ドル)を占めている。2002年の市場占有率の10%からの成長は、2012年から2018年に1,530億ドルから2,150億ドルへと41%成長させた。現在、ほぼ200個のモノクローナル抗体(MAb)生成物が市場に存在し、1000回を超える臨床試験が行われており、この領域における技術的進展の必要性は明らかである。過去数十年にわたって、工業設定における生体分子の典型的な発酵力価は、0.5g/Lから約3g/Lに増大し、10g/Lまでのレベルは、分子生物学における活発な進展によって近い将来に達成可能であると考えられる。現在のところ、下流精製方法は、いくらかの研究開発も受けてきたが、この分野における改善は上流におけるものと見合っていない。
【0003】
治療用タンパク質の製造には、投与されるタンパク質が有害な汚染物質を実質的に欠いているように、プロセシングの際に高い純度が達成される必要がある。現在、工業規模において、クロマトグラフィーは、高純度なタンパク質を達成するために使用される最も有力な方法である。クロマトグラフィーユニット操作への大きな依存は、経済的な観点から、MAb等の生体分子の下流プロセシングにおける進展の鍵である。クロマトグラフィーは、生物療法プロセシングの60%までを占めている(Re-use of Protein A Resin: Fouling and Economics、2015年3月1日、BioPharm International、28巻、3版、Anurag S. Rathore、Mili Pathak、Guijun Ma、Daniel G. Bracewell)。
【0004】
そのようなクロマトグラフ分離は、i)標的分子及び/又はii)1つ以上の不純物を、標的分子及び不純物を含有する液相が固相と接触するときに、固相に結合させることを伴う。標的分子/不純物と固相との相互作用は、電荷、疎水性、親和性又はこれらの組み合わせに基づいたものでありうる。
【0005】
歴史的に、多孔質ビーズを使用する従来の充填床クロマトグラフィーは極めて強力な分離ツールである。これらのビーズの多孔性は、標的又は不純物にいずれの結合にとっても高い表面積を生じる。このことは、高容量物質をもたらし、少量の吸着性物質を使用できることを意味する。装填懸濁液の相対濃度と比較して、吸着剤の単位体積当たり、より多くの標的が結合されうるので、高い容量は分離の際に達成される濃縮効果も増大させる。これらの態様は、数キログラムの物質が20,000Lまでに達しうる液体体積からバッチ毎に精製される必要がありうる工業規模のプロセシングにとって重要である。多孔質ビーズの典型的な結合容量は、固相及び結合した種の機能性に応じて35~120mg/mLの範囲である。
【0006】
多孔質ビーズベースシステムにおいて、標的分子/不純物と固相との間の結合事象は、多孔質ビーズへの分散に依存している。したがって、多孔質ビーズベースシステムにおける滞留時間と流量との間に強い相関関係がある。このように、結合容量は滞留時間が減少すると下降する。2分未満の時間が多孔質ビーズベースシステムに使用されるので、これには容量の急速な低減が伴う。短い滞留時間に必要な高い流量も、特に、大量のビーズ懸濁液がカラムに充填される製造規模では多孔質ビーズに不適合でありうる。ここでは、多孔質ビーズの機械的不安定性が圧密又は崩壊事象を引き起こすことがあり、このことは非均質カラム床をもたらす。
【0007】
流量が滞留時間に影響を与えるので、固相に結合できる標的の単位時間当たりの量を最大化することが重要である。このことは、使用される吸着剤の体積を小さくすること及び/又は実施される分離を短時間にすることを可能にする。この計量は、単位時間当たり単位体積毎に結合されたグラム(mg/mL/分)と定義することができる。上記に考察された多孔質ビーズにとって典型的な結合容量及び滞留時間は、単一カラム多孔質ビーズシステムおける全体的な生産性のほぼ10~120mg/mL/分をもたらす。
【0008】
多孔質ビーズベースシステムの代替案として、モノリス又は膜を使用してもよい。そのような物質を通した流れは、分散的ではなく、むしろ対流的であり、したがって、これらの結合容量は、多孔質ビーズベースシステムより流れに対して感受性がかなり低い。これらの物質は多孔質ビーズベース物質よりかなり高い流量で用いられ、典型的な滞留時間は、0.2~0.5分のオーダーである。しかし、動的な流れの下でのモノリス(10~20mg/mL)及び膜(7.5~29mg/mL)の標的の10%ブレイクスルーの典型的な結合容量は、多孔質ビーズよりも低い(Gottschalk, U. (2008). Biotechnol Prog、24(3)、496~503頁)。モノリス及び膜物質の(多孔質ビーズベース物質と比較して)劣った結合容量は、より高い流量を利用することによってある程度埋め合わせることができる。
【0009】
上記に考察されたモノリス及び膜にとって典型的な結合容量及び滞留時間は、モノリス及び膜システムにおける結合事象の全体的な生産性のほぼ10~145mg/mL/分をもたらす。
【0010】
多孔質ビーズベース物質に関連する高い結合容量及びモノリス/膜物質によって達成可能なより高い流量を共有するクロマトグラフィー物質の必要性が存在する。そのような物質は、高い流量で高い容量を提供して、最大の生産性(mg/mL/分)を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願第20160288089号
【文献】国際公開第2015/052465号
【文献】国際公開第2015/052460号
【文献】ヨーロッパ特許第0873353号
【文献】米国特許第6399750号
【文献】米国特許第8198404号
【文献】米国特許出願第20170334954号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Re-use of Protein A Resin: Fouling and Economics、2015年3月1日、BioPharm International、28巻、3版、Anurag S. Rathore、Mili Pathak、Guijun Ma、Daniel G. Bracewell
【文献】Gottschalk, U. (2008). Biotechnol Prog、24(3)、496~503頁
【文献】Menkhaus, T. J.、Varadaraju, H.、Zhang, L.、Schneiderman, S.、Bjustrom, S.、Liu, L.及びFong, H. (2010). Chemical Communications、46(21)、3720~3722頁
【文献】O. Hardickら、J.Mater. Sci. 46 (2011) 3890頁
【文献】「Acidity and basicity of solids: Theory, assessment and utility」Editors J. Fraisard及びL. Petrakis、NATO ASI Series C、444巻、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht, Boston and London、1994年、特に513頁
【文献】「Membrane Processes in Biotechnologies and Pharmaceutics」Catherine Charcosset編、Elsevier、2012年
【文献】http://www.ib-ft.com/measurement_principle.html
【文献】https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
【文献】http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciencesuk/products/AlternativeProductStructure_17372/17543801
【文献】http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciencesuk/products/AlternativeProductStructure_17372/17547401
【文献】https://www.sartorius.co.uk/fileadmin/fm-dam/sartorius_media/Bioprocess-Solutions/Purification_Technologies/Membrane_Chromatography/Data_Sheets/Data_Sartobind-75-plus-150ml_SL-2086-e.pdf
【文献】https://www.sartorius.co.uk/en/product/product-detail/93prap06hb-12-a/
【文献】http://www.biaseparations.com/interactions/category/30-ionexchange/product/download/file_id-2008
【文献】http://www.biaseparations.com/interactions/category/30-ionexchange/product/download/file_id-2024
【文献】http://www.biaseparations.com/interactions/category/29-affinity/product/download/file_id-1970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者たちは、驚くべきことに、官能化工程がグラフティング工程から独立して実施される2工程方法によって生成されるナノファイバー物質が、有利な特性を示すことを見出した。この方法によって生成される物質は、非グラフト化物質と比較して有意に増加した結合容量を有し、典型的には、免疫グロブリン等の標的タンパク質の少なくとも30mg/ml、更には少なくとも100mg/mlの動的結合容量をもたらす。本発明の生成物により示される容量は、通常は多孔質ビーズを使用することによってのみ達成可能なものに匹敵する又はそれらを超えるものであり、現在商業化されている膜及びモノリス技術を用いて達成可能なものより数倍高い。更に、これらの容量は1秒以内の滞留時間で達成可能であり、従来の市販の物質の10~100倍、更には数千倍大きい値の生産性をもたらすことができる。
【0014】
本発明によって生成される物質は、多数の驚くべき革新に依存している。第一には、リガンド基、即ち、標的生体分子に選択的に結合する、クロマトグラフィー媒体に結合した基のある設定密度において、グラフティングの量を増加するとクロマトグラフィー物質の結合容量を増加しうることが、本発明者たちによって見出された。荷電基により官能化されたクロマトグラフィー媒体の文脈では、荷電基の量を増加すると物質の電荷密度及び物質の結合容量を増加することが、以前に理解されていた。したがって、物質の結合容量を最大化する以前の手法は、電荷密度を最大化することに焦点を合わせていた。しかし、本発明者たちは、グラフティングを増加することによって、物質の電荷密度から独立して結合容量を増加しうることを初めて示した。
【0015】
他の場合では、官能化工程の変更は電荷密度にほとんど影響を与えることがないが、グラフティング工程と組み合わせると、同じ官能化程度で結合容量に有意な増加が達成されうることが見出された。このように、クロマトグラフィー物質の電荷密度及び結合容量を、官能化の程度とグラフティングの程度の両方を変えることによって制御して、高度に最適化された物質を得ることができることが見出された。このグラフティング工程と後に続く官能化工程との関係性は、高い流量で非常に高い結合容量を有する物質を生成するために、本発明者たちによって研究開発されてきた。電荷密度と動的結合容量の関係性は、以前に理解されていたより遙かに微妙であることが見出された。このように、同じ電荷密度の物質では、動的結合容量は、グラフティングの程度を制御することによって変わりうることが見出された。このことは、予想外であり、極めて有益な結果であった。
【0016】
クロマトグラフィー物質の容量を増加する以前の試みは、物質のリガンド基の密度を単に増加することだけに焦点を合わせていたので、このことは極めて有意である。したがって、グラフティングと官能化の条件を分離した工程として独立して変えることによって物質の容量をどのように制御及び増加できるかについて、以前の試みは対処していない。既知の修飾方法の多くは、クロマトグラフィー物質が荷電ポリマーによって修飾されたので、即ち、グラフティングと官能化の工程が同時に実施されたので、この程度の制御は単に可能ではなかった。
【0017】
重要なことに、物質の結合容量の増加と同様に、グラフティング及び官能化も、物質の流れに対する抵抗性を調節する効果を有し、このことはクロマトグラフィー物質の生産性に対して有害な影響を有する。このことは、Menkhausら(Menkhaus, T. J.、Varadaraju, H.、Zhang, L.、Schneiderman, S.、Bjustrom, S.、Liu, L.及びFong, H. (2010). Chemical Communications、46(21)、3720~3722頁)によって考察されており、グラフティングの増加は、流れに対する抵抗性の増加及び対流媒体における物質輸送の拡散面の増加に関連しうることが報告されている。これは、クロマトグラフィー物質の既知の修飾方法が典型的には物質の表面から荷電ポリマー鎖をグラフトすることが原因でありうる。このように、グラフティングの程度を増加すると物質の電荷密度も増加し、これらを独立して制御して、物質の結合容量及び流れ特性を最適化する方法はない。
【0018】
これらの欠点は、物質のグラフティング工程を官能化の工程と分離することによって本発明により克服された。グラフティングの程度を増加することは、それ自体、物質の中を通過する流れに対する抵抗性を増加しないことも見出された。流れに対する抵抗性が影響を受け始めたときにのみ、グラフト化物質が官能化される。
【0019】
更に、本発明者たちは、グリシドール及びその誘導体がグラフティング工程に使用するのに特に好ましいモノマー単位であることを発見した。驚くべきことに、グラフティング工程がグリシドール重合を用いる場合、得られるクロマトグラフィー媒体は、原子移動ラジカル重合(ATRP)等の他のグラフティング方法によって生成されたクロマトグラフィー媒体より改善された特性を示す(例えば、より高い容量及びより高い生産性によって利益を受ける)。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本発明は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法を提供する。記載される方法は、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、
工程(ii)は、下記式:
【化1】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマー:
【化2】
を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一であり又は異なって、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つは、水素ではないことが条件である。
【0021】
本発明は、更に、
i)複数のナノファイバー-ナノファイバー融合点を含む少なくとも1枚のポリマーナノファイバー不織層と、
ii)ポリマーナノファイバーに共有結合的にテザリングしている複数のグラフト化ポリマー分子と代替的に表される、ポリマーナノファイバー及びナノファイバー-ナノファイバー融合点を覆っているグラフト化ポリマーコーティングと、
iii)グラフト化ポリマーコーティング又はグラフト化ポリマー分子に共有結合している、標的生体分子と相互作用することができる複数のリガンド基と
を含む、官能化クロマトグラフィー媒体を更に提供する。標的生体分子と相互作用することができるリガンド基は、イオン交換基、疎水性基、混合モード基、親和性基及びこれらの組み合わせによって例示されうる。
【0022】
加えて、本発明は、上記に考察された官能化クロマトグラフィー媒体を含むクロマトグラフィーカートリッジを提供する。
【0023】
更に、本発明は、1つ以上の標的生体分子を分離する方法であって、
i)上記に考察された官能化クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジを準備する工程と、
ii)標的生体分子を含む移動相を、官能化クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジに通過させる工程と
を含む方法を提供する。
【0024】
本発明は、また、
- 本発明の調製方法により得られる官能化クロマトグラフィー媒体を提供する。
- クロマトグラフィーカートリッジを調製する方法であって、本発明の調製方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む方法を提供する。
- (a)前記方法により得られる又は(b)1つ以上の本発明の官能化クロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジを提供する。
- 本発明の官能化クロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジの、クロマトグラフィーにおける使用を提供する。
- 移動相から1つ以上の生物学的分子を単離する方法であって、移動相における1つ以上の生物学的分子を、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】多数の市販の多孔質ビーズベースシステムの滞留時間の関数としての、動的結合容量(DBC)を示す。
【
図2】グラフティング工程の不在下での、トリメチルアンモニウム官能化物質の電荷密度に対する増加する官能化剤の量の効果を示す。
【
図3】グラフティング工程の不在下での、トリメチルアンモニウム官能化物質の動的結合容量(DBC)に対する増加する電荷密度の効果を示す。
【
図4】本発明に従って調製した多数の物質における電荷密度に対する増加するポリマーグラフティングの程度及び増加するトリメチルアンモニウム官能化剤の量の効果を示す。
【
図6】本発明に従って調製した多数のトリメチルアンモニウム官能物質における設定電荷密度での動的結合容量(DBC)に対する増加するポリマーグラフティングの効果を示す。
【
図7】非グラフト化物質と比較した、本発明に従って調製した多数の物質における設定したポリマーグラフトでの動的結合容量(DBC)に対する増加する電荷密度の効果を示す。
【
図8】グリシドール/スルホン酸官能化物質における電荷密度に対する増加するポリマーグラフティングの程度及び官能化反応時間の効果を示す。
【
図9】本発明によるグリシドール/スルホン酸官能化物質の動的結合容量に対する独立したグラフティング工程の影響を示す。
【
図10】本発明によるグリシドール/カルボキシメチル官能化物質の動的結合容量(DBC)に対するグラフティングの影響を示す。
【
図11】本発明に従って調製した多数の物質における流れに対する抵抗性に対する、増加する電荷密度及びポリマーグラフティングの程度の効果を示す。
【
図12】多数の非荷電物質における流れに対する抵抗性に対する、増加するポリマーグラフティングの程度の効果を示す。
【
図13】グラフト化生成物の-OH基の密度に対する増加するグリシドール試薬の量の効果を示す。
【
図14】本発明のクロマトグラフィー媒体の概略図を示す。
【
図15】本発明のクロマトグラフィーカートリッジの概略図を示す。
【
図16】固定した0.4秒滞留時間又は0.2mLの膜に基づいて30mL/分の流量で、DVS-プロテインA官能化ナノファイバー物質の膜差圧に対する緩衝液のpH及び伝導性の影響を示す。結果はPEEKハウジングにおいて3つの異なる0.2mL膜床により3回行ったものであり、エラーバーがプロットされている。20mMのTris、pH8.0、15.5mS/cmの緩衝液系を異なる日に試験しており、このことが僅かに上昇した膜差圧の原因でありうる。
【
図17】a)第四級アンモニウム基(Q)で官能化された非グラフト化再生セルロース(RC)ナノファイバー媒体のSEM画像及びb)その画像から測定したファイバーの直径のヒストグラムを示す。
【
図18】a)第四級アンモニウム基(Q)で官能化されたグリシドールグラフト化再生セルロース(RC)ナノファイバー媒体のSEM画像及びb)その画像から測定したファイバーの直径のヒストグラムを示す。
【
図19】a)ジビニルスルホン(DVS)活性化を介してプロテインAで官能化されたグリシドールグラフト化再生セルロース(RC)ナノファイバー媒体のSEM画像及びb)その画像から測定したファイバーの直径のヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、典型的には、ポリマーナノファイバー基材から官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する2工程方法を伴う。2工程は、ポリマーグラフティング工程及び官能化工程である。
【0027】
ポリマーナノファイバー
本発明の官能化ポリマークロマトグラフィー媒体は、ポリマーナノファイバー基材から形成される。それぞれの基材は1本以上のポリマーナノファイバーから形成される。
【0028】
ポリマーナノファイバーは、典型的には、電界紡糸ポリマーナノファイバーである。そのような電界紡糸ポリマーナノファイバーは、当業者に良く知られており、生成の最適化条件は、例えば、O. Hardickら、J.Mater. Sci. 46 (2011) 3890頁に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の方法は、典型的には、ポリマーを電界紡糸して1本以上のポリマーナノファイバーを生成する初期工程を含む。これは、ポリマーを電界紡糸して、それぞれ1本以上のポリマーナノファイバーを含む1枚以上の不織シート又は層を生成することを伴ってもよい。適切には、シート又は層(10)は、
図14に例示されているように、それぞれ複数のナノファイバー-ナノファイバー融合点(20)を含む。接合部での個別のナノファイバー(30)間の層内融合点は、シート/層に機械的安定性を提供し、使用時にナノファイバーが液体の中に脱落する危険性を減少する。融合点は、付着ナノファイバーが固化する前に互いに接触するように、電界紡糸法の際に温度を制御することによって適切に達成することができる。ポリマー溶液を電界紡糸することは特に有益であり、この場合、形成されたファイバーが溶媒の蒸発によって固化するので、固化する前に層内融合点が形成するのに十分な時間を提供する。
【0029】
本発明に使用されるポリマーナノファイバーは、典型的には、10nm~1000nmの平均直径を有する。いくつかの用途では、200nm~800nmの平均直径を有するポリマーナノファイバーが適している。200nm~400nmの平均直径を有するポリマーナノファイバーが、ある特定の用途に適していることがある。本発明に使用されるポリマーナノファイバーの長さは、特に制限されない。このように、従来の電界紡糸法は、数百メートル、更には数百キロメールの長さのポリマーナノファイバーを生成することができる。しかし典型的には、1本以上のポリマーナノファイバーは、10kmまで、好ましくは10m~10kmの長さを有する。ポリマーナノファイバーは、適切にはモノフィラメントナノファイバーであってもよく、例えば、円形、楕円又は実質的に円形/楕円の断面を有してもよい。
【0030】
典型的には、1本以上のポリマーナノファイバーは、それぞれ1本以上のポリマーナノファイバーを含む1枚以上の不織シートの形態で提供される。このように、基材は、典型的には、それぞれ1本以上のポリマーナノファイバーを含む1枚以上の不織シートに形成される。1本以上のポリマーナノファイバーを含む不織シートは、それぞれのナノファイバーが本質的に無作為に配向されている、即ち、ナノファイバー又は複数のナノファイバーが特定のパターンを適用するように作製されていない、前記1本以上のポリマーナノファイバーのマットである。ポリマーナノファイバーを含む不織シートは、典型的には、O. Hardickら、J.Mater. Sci. 46 (2011) 3890頁に開示されているもの等、既知の方法によって提供される。不織シートは、ある特定の状況において、単一のポリマーナノファイバーから構成される。或いは、不織シートは、2本以上のポリマーナノファイバー、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10本のポリマーナノファイバーを含んでもよい。
【0031】
不織シートは、典型的には1~40g/cm2、好ましくは5~25g/m2、いくつかの状況では1~20又は5~15g/m2の面密度を有する。
【0032】
不織シートは、典型的には5~120μm、好ましくは10~100μm、いくつかの状況では50~90μm、他の状況下では5~40、10~30又は15~25μmの厚さを有する。
【0033】
本発明の方法に使用されるナノファイバーを生成するのに使用されるポリマーは、特に限定されないが、但し、ポリマーがクロマトグラフィー用途における使用に適していることが条件である。このように、典型的には、ポリマーは、クロマトグラフィー法においてクロマトグラフィー媒体として、即ち、吸着剤としての使用に適しているポリマーである。適切なポリマーには、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン類、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカプロラクトン、コラーゲン、キトサン、ポリエチレンオキシド、アガロース、アガロースアセテート、セルロース、セルロースアセテート及びこれらの組み合わせ等のポリアミドが含まれる。ポリエーテルスルホン(PES)、セルロース、セルロースアセテート及びこれらの組み合わせが好ましい。いくつかの場合において、セルロース、セルロースアセテート及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0034】
いくつかの実施形態において、基材は、異なるポリマーから形成された1本以上のポリマーナノファイバーから形成された1本以上のナノファイバーを含む。このように、この実施形態では、基材は1種以上の異なるポリマーを含む。典型的なポリマーは、上記に定義されたとおりである。
【0035】
典型的には、本発明の方法は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製するためのものであり、本方法は、1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することを含む。好ましくは、本方法は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シート又は層から形成された基材を準備することを含む。セルロースアセテートは、典型的には1種以上の有機溶媒中のセルロースアセテートの溶液から容易に電界紡糸され、電界紡糸された後、容易にセルロースに変換されうる。このように、好ましくは、本方法は、それぞれ1本以上の電界紡糸セルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シート/層から形成された基材を準備することを含む。
【0036】
1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材は、1本以上のポリマーナノファイバーを典型的には1枚以上の上記に考察された不織シート/層の形態で含む。ある特定の実施形態において、1本以上のポリマーナノファイバー又は1枚以上の不織シートは、グラフティング工程の前にどのような物理的な加工工程も受けない。
【0037】
ナノファイバーの物理的修飾
しかし、本発明のある特定の好ましい実施形態において、基剤を準備することは、グラフティング工程の前に、ポリマーナノファイバーを任意選択で不織シート/層に物理的に修飾することを伴う。具体的には、物理的修飾は、ポリマーナノファイバー/不織シート/層を加熱及び/又は圧縮すること、好ましくは、ポリマーナノファイバー/不織シート/層を加熱及び圧縮することを伴ってもよい。これらの工程は、物質の構造安定性を改善する。圧縮及び加熱条件を変えて、得られた物質の厚さ及び/又は多孔性を変更することもできる。
【0038】
ポリマーナノファイバーの多重不織シートの使用は、より厚い物質が調製されることを可能にし、これは(一旦、グラフト化及び官能化されると)より大きな吸着容量を有する。したがって、基材を準備することは、典型的には、互いに積層された2枚以上の不織シート/層を準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のポリマーナノファイバーを含む)、並びにシート/層の積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シート/層のナノファイバー間の接触点を融合させ、層間融合点を作り出すことを含む。セルロースクロマトグラフィー媒体の場合では、基材を準備することは、典型的には、互いに積層された又は折り畳まれた2枚以上の不織シート/層を準備すること(前記のシート/層は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシート/層の積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。このように、官能化クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2枚の層を互いに結合する複数の層間ナノファイバー-ナノファイバー融合点を有する、複数の不織ポリマーナノファイバー層の積層でありうる。
【0039】
ポリマーナノファイバー/不織シートを圧縮及び加熱するのに好ましい加工条件は、米国特許出願第20160288089号及び国際公開第2015/052465号において見出すことができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
ナノファイバー基材のグラフティング
本発明の方法は、グラフティング工程(工程(ii))を伴い、これは、工程(i)で準備された基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることを典型的に伴う。
【0041】
基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることは、典型的には、任意選択で1種以上の触媒の存在下、基材に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む。このように、典型的には、基材は1つ以上の官能基、好ましくは、ポリマー鎖を成長させることができる1つ以上の官能基を含む。1つ以上の官能基からポリマー鎖を成長させるとは、個別のモノマー構築単位の1つ以上の官能基からポリマーを構築することを意味する。したがって、グラフティング工程は、典型的には、予め形成されたポリマー鎖を基材に結合するのではなく、むしろ基材から直接ポリマー鎖を成長させることを伴う。このように、重合が進行すると、個別のモノマーは、基材の遠位に繋留される成長ポリマー鎖の末端に付加される。そうするとポリマーコーティングは、基材に単一点で共有結合的にテザリングしているポリマー分子を含むことになる。ポリマー分子は、直鎖状又は分岐鎖状、更には高分岐鎖状(hyperbranched)であってもよく、この場合、>50%のモノマー残基は分岐点又は末端モノマーのいずれかである。基材から直接ポリマー鎖を成長させることは、特に重合戦略を使用してポリマーコーティングの構造全体を制御することを可能にし、それによって、ポリマーは全て均一の速度で同時に成長する。このことは、高密度で良好に画定されたポリマーコーティング層の形成を可能にする。このように、基材が、接合部で一緒に融合しているポリマーナノファイバーの1枚以上の層である場合、良好に画定された薄いコーティングが形成され、コアナノファイバ-及び個別のナノファイバー間の融合点を覆っている。コーティングは、コンフォーマルコーティング(conformal coating)、即ち、ナノファイバー及び融合点の輪郭に沿っているものであってもよい。コーティングの厚さは、例えば、被覆ナノファイバーが100~1000nmの平均直径、例えば100~700nm又は200~700nmを有するようなものであってもよい。そうすると非被覆ナノファイバーの平均直径は、100~800nm、例えば100~600nmであってもよい。層の平均孔径は、例えば200~800nmであってもよく、孔体積分率は、例えば50~90%、例えば60~80%であってもよい。平均孔径及び平均ファイバー直径は、層の
SEM画像から計算することができ、孔体積分率は、層又は基材の総体積(厚さに断面積を掛けたもの)及びナノファイバーの比重から計算することができる。代表的な多層セルロースアセテートナノファイバーディスクの孔容量を計算する特定例は、ディスク直径32mm及びディスク厚0.44mmから総体積の0.354cm3を得るものである。ディスクの乾燥質量は0.165gであり、これによって、セルロースアセテートの比重1.31g/cm3からセルロースアセテートの体積0.126cm3を得る。したがって孔体積分率は、(0.354-0.126)/0.354=64%である。
【0042】
層の孔構造は、高い動的結合容量(大きな利用可能表面及び短い拡散経路)と低い背圧(大きな孔及び高い孔体積分率)との微妙なバランスが満たされる必要があるので、性能にとって重要である。グラフト化ナノファイバー層は、これらの小さなファイバー直径及び高い孔体積分率によって、このバランスを満たすために唯一適している。特に良好な組み合わせは、層が、ペルフルオロポリエーテル湿潤液を用いるキャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)によって得た以下の孔径を有するときに達成される:泡立ち点孔径 - 0.9~1.2μm、例えば1.0~1.2μm;最小孔径 - 0.2~0.4μm及び/又は平均流孔(MFP)孔径0.3~0.5μm。測定は、下記の実施例17に詳述されているように実施されるべきである。
【0043】
良好な流れ特性のために、基材の開放孔構造がグラフティング過程の後に保持されることが有益である。この方法によって、クロマトグラフィー媒体は、グラフト化ポリマーナノファイバー間の間隔(間隔容量)により形成された開放及び三次元接続された孔構造を介して互いに流動的に接続されている、
図15に描写されているような第1の側面(130)及び第2の側面(160)を有する。この孔構造は、好ましくは、グラフティング過程において偶発的に形成されたグラフトポリマー又は任意のホモポリマーを含まない又は実質的に含まない。これは、グラフティングの際に添加されるモノマーの量を制限することによって達成することができ、孔構造を妨げるあらゆるポリマーが不在であることは、流量を測定することによって及び/又は電子顕微鏡法により孔構造を観察することによって、容易に検査することができる。グラフト重合法は、孔構造を妨げることなく、結合容量を増加する官能化ポリマーを導入する特有の可能性を提供する。
【0044】
本発明のグラフト化層の利点は、特にヒドロゲル被覆膜と比較して、背圧が緩衝液の伝導性及びpHから本質的に独立していることである。これは、劇的な膨張/収縮現象が不在であることに起因し、pH5~8の水性緩衝液が官能化クロマトグラフィー媒体を0.4秒の滞留時間で通過する場合、官能化媒体の全体に及ぶ圧力低下は、緩衝液の伝導性が3~90mS/cm(22℃で測定)の間隔で変化すると、床高さ(媒体の厚さ)1mm当たり0.07MPs未満変化することである、と表すことができる。3mS/cmは20mMのアセテート又はTris緩衝液に相当し、一方、90mS/cmは、およそ1MのNaClを添加した同じ緩衝液に相当する。
【0045】
本発明において、グラフティング工程は、下記式:
【化3】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I):
【化4】
の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマーを、
ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一であっても、異なっていてもよく、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つは、水素ではないことが条件である。したがって、典型的には、1種類のポリマーのみが基材にグラフト化される。しかし、他の実施形態では、1種類を超えるポリマーが基材にグラフト化されうる。
【0046】
典型的には、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても、異なっていてもよく、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルから選択される。このように、式(I)の化合物において、
R1は、H、ハロ、C1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R2は、H、ハロ、C1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R3は、H、ハロ、C1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R4は、H、ハロ、C1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R5は、H、ハロ、C1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである。
【0047】
典型的には、グラフティング工程(ii)は、ポリマーを成長させることができる1つ以上の官能基を有する基材を、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも1つが水素である式(I)の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体と反応させることを伴う。この場合、好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも2つが水素である。より好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも3つが水素である。更により好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも4つが水素である。好ましくは、R1が水素であり、R2及びR3のうちの少なくとも1つが水素である。或いは、R2及びR3が水素である。なおより好ましくは、R1、R2及びR3が水素である。
【0048】
最も好ましくは、グラフティング工程(ii)は、ポリマーを成長させることができる1つ以上の官能基を有する基材を、下記式:
【化5】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体と反応させることを伴う。
【0049】
基材が、異なるポリマーから形成されるナノファイバーから形成される実施形態において、それぞれの異なる種類のポリマーナノファイバーは、グラフティング工程において異なるポリマーとグラフト化されうる。このことは、例えば、異なる官能基が異なるポリマーナノファイバーに存在することによってもたらされる可能性がある。或いは、同じポリマーが、基材における異なる種類のポリマーナノファイバーのそれぞれにグラフト化されることもある。
【0050】
典型的な官能基には、ヒドロキシル、アミノ及びカルボキシル基が含まれる。基材が1本以上のセルロース又はセルロースアセテートナノファイバーから形成される場合、官能基は、典型的にはヒドロキシル基である。
【0051】
典型的には、基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の官能基の数/密度を増加させる。好ましくは、基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する。より好ましくは、基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護又は活性化する。更により好ましくは、基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護する。
【0052】
しかし、代替的な実施形態において、工程(i)と(ii)の間に追加の処理工程はない。これらの実施形態において、典型的には、グラフティング工程(ii)は、同じ工程において、追加的に、1つ以上の官能基を導入する、又は基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材の官能基の数/密度を増加させる条件下で実施される。好ましくは、グラフティング工程(ii)は、同じ工程において、追加的に、1つ以上の官能基を導入する、又は基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する条件下で実施される。より好ましくは、グラフティング工程(ii)は、同じ工程において、追加的に、基材の任意の官能基を脱保護又は活性化する条件下で実施される。更により好ましくは、グラフティング工程(ii)は、同じ工程において、追加的に、基材の任意の官能基を脱保護する条件下で実施される。
【0053】
特に好ましい実施形態において、官能基はヒドロキシル基である。この特に好ましい実施形態において、グラフティング工程(ii)は、典型的には、同じ工程において、追加的に、基材のヒドロキシルの基を脱保護する条件下で実施される。
【0054】
官能基の脱保護は、典型的には、官能基が、それらから成長される1つ以上のポリマー鎖を有することができるように実施される。例えば、クロマトグラフィー媒体は、セルロースクロマトグラフィー媒体であり、典型的には、セルロースアセテート基材が準備され、グラフティング工程の前に、セルロースアセテートが処理されて、セルロースに変換される。これは、アセチル化ヒドロキシル基を脱保護して、ヒドロキシル基を得ることを伴う。セルロースアセテートからセルロースへの変換は典型的には、アルカリ水溶液を、好ましくは水:エタノール中の、より好ましくは、水:エタノール2:1中のNaOHを、12時間を超える時間、例えば、12~36時間にわたって使用することにより実施される。
【0055】
或いは、クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、セルロースアセテート基材が準備され、グラフティング工程(ii)において、セルロースアセテートをセルロースに変換する、続いてセルロースを下記式:
【化6】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマーと反応させて、グラフト化ポリマー鎖を生成する両方の条件下で処理される。そのような実施形態において、グラフティング工程(ii)は、典型的には、アルカリ水溶液の存在下、好ましくは、水中又は水:エタノール中の、好ましくは水中のNaOH又はKOHの存在下、より好ましくはKOHの存在下で4~6時間にわたって実施される。
【0056】
クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、本発明は、典型的には、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)得られたセルロース基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。
【0057】
クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、本発明は、代替的には、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換される、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材にグラフトされる両方の条件下に付すことと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。
【0058】
官能基の活性化は、特許請求される方法の工程(iii)の文脈で下記に考察される。この考察は、特許請求される方法の工程(ii)における官能基の活性化にも同様に当てはまる。
【0059】
基材の官能基の数及び/又は密度を増加する方法は、当業者に知られている。
【0060】
1つ以上の官能基が基材に導入される場合、基材は、工程(i)と(ii)の間に、基材に存在する官能基を修飾して、1つ以上のポリマー鎖を成長させることができる官能基を導入する更なる工程(i-a)において処理され、続いて、このように修飾された基材からポリマー鎖を成長させる工程(ii)において処理される。工程(i-a)は、基材に存在する官能基を一緒に修飾して、1つ以上のポリマー鎖を成長させることができる官能基にする単一工程又は多重工程を伴ってもよい。
【0061】
グリシドール重合を伴う実施形態では、基材を、典型的には、工程(i)と(ii)の間で処理して、基材の任意の官能基を脱保護する。グラフティング工程においてATRP及びRAFT重合を伴う比較方法も、本明細書に記載されている。これらの方法では、基材を、典型的には工程(i)と(ii)の間で処理して、基材に存在する官能基を修飾して、1つ以上のポリマー鎖を成長させることができる官能基にする。この工程の前に、基材を処理して、基材における任意の官能基を脱保護することもできる。
【0062】
ATRP重合を伴う方法では、典型的には、基材におけるヒドロキシル基を修飾して、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリール基を導入する。典型的には、ハロゲン化アルキルは、フッ化アルキル、塩化アルキル、臭化アルキル又はヨウ化アルキルである。臭化アルキルが好ましい。第三級ハロゲン化アルキルが、より好ましい。第三級臭化アルキルが、更により好ましい。
【0063】
基材にグラフト化された1つ以上のポリマー鎖は、適切には中性である。ポリマー鎖は、当業者により荷電基と考慮されるあらゆる基、例えば、下記に考察される種類の荷電基を含有しない。典型的には、工程(ii)において基材にグラフト化されるポリマー鎖は、本明細書に定義されている任意の荷電基を含有しない。
【0064】
ポリマーの中立性については、ポリマーが、本質的に中性のpH、例えば、pH6~8、典型的にはpH6.5~7.5、通常はpH6.75~7.25又は約pH7でイオン化する、即ち、プロトン化又は脱プロトン化する任意の基を含有するかを評価することができる。典型的には、中性ポリマーは、酸性又は塩基性センターを実質的に含有しない、即ち、pH6~8、典型的にはpH6.5~7.5、通常は6.75~7.25又は約pH7でプロトン化又は脱プロトン化する官能基を実質的に含有しない。これは、当該技術分野に典型的なアッセイによって当業者により決定することができる。酸性及び塩基性の典型的な評価手順は、これらの理論的側面と共に、「Acidity and basicity of solids: Theory, assessment and utility」Editors J. Fraisard及びL. Petrakis、NATO ASI Series C、444巻、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht, Boston and London、1994年、特に513頁において考察されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用されるとき、実質的とは、1mol%より少ない、好ましくは0.1mol%より少ない、更により好ましくは0.01mol%より少ない、更には0.001mol%より少ないことを意味する。
【0065】
上記に記述されたように、グラフティング工程(ii)は、ポリマーを成長させることができる1つ以上の官能基を有する基材を、下記式:
【化7】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマー:
【化8】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一であっても、異なっていてもよく、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つは、水素ではないことが条件である]と、グリシドール重合として既知の重合方法を使用して反応させることを伴ってもよい。このように、ポリマー鎖の成長はグリシドール重合を使用して実施される。典型的には、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一であっても、異なっていてもよく、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルから選択される。このように、式(I)の化合物において、
R
1は、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R
2は、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R
3は、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R
4は、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルであり、
R
5は、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシ、好ましくは、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである。
【0066】
典型的には、グラフティング工程(ii)は、ポリマーを成長させることができる1つ以上の官能基を有する基材を、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも1つが水素である式(I)の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体と反応させることを伴う。この場合、好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも2つが水素である。より好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも3つが水素である。更により好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの4つが水素である。好ましくは、R1が水素であり、R2及びR3のうちの少なくとも1つが水素である。或いは、R2及びR3が水素である。なおより好ましくは、R1、R2及びR3が水素である。
【0067】
最も好ましくは、グラフティング工程(ii)は、ポリマーを成長させることができる1つ以上の官能基を有する基材を、下記式:
【化9】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体と反応させることを伴う。
【0068】
グリシドール重合は当業者に既知の技術である。グリシドール重合は、典型的には、触媒の存在を必要としない。しかし、この重合は、任意選択で1種以上の適切な触媒の存在下で実施してもよい。そのような実施形態において、典型的には、化学的又は生物学的触媒が使用される。グリシドール重合は、典型的には水性環境下で実施される。典型的には、グリシドール重合は室温で実施される。典型的には、グリシドール重合は軽度なアルカリ条件下で実施される。典型的には、グリシドール重合は、ほぼ5時間を超えて、好ましくは、ほぼ10時間を超えて、より好ましくは、ほぼ15時間を超えて、例えば、ほぼ16時間実施される。グリシドール重合の後、典型的には、グラフト化生成物を水、続いて緩酸で洗浄する。
【0069】
グリシドール重合は、基材に存在する本明細書に定義されている1つ以上の官能基から式(I)のグリシドール及び/又はグリシドール誘導体を重合することを伴う。典型的には、これらの官能基はヒドロキシル基である。このように、典型的には、特許請求される方法の工程(ii)は、下記式:
【化10】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマーを、ナノファイバー基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む。好ましくは、請求される方法の工程(ii)は、下記式:
【化11】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む。
【0070】
グリシドール重合は、典型的には、1つ以上のポリグリセロール鎖をもたらす。ある実施形態において、したがって、本発明は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、
ポリマー鎖を成長させることが、基材に存在する1つ以上の官能基から式(I)のグリシドール及び/又はグリシドール誘導体、好ましくはグリシドールを重合することを含む、
方法を提供する。
【0071】
ある実施形態において、したがって、本発明は、また、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、
1つ以上のポリマー鎖が1つ以上のポリグリセロール鎖である、
方法を提供する。
【0072】
グリシドール重合は、必然的にポリマー鎖の分岐をもたらし、「ブッシュ(bush)」構造を生じる。このように、典型的には、1つ以上のポリマー鎖が分岐鎖状であり、恐らく上記に考察されたような高分岐鎖状でありうる。グリシドールポリマーにおける異なる種類のモノマー残基は、グリセロールトリエーテル(分岐点)、1,2-グリセロールジエーテル(直鎖状)及び1-又は2-グリセロールモノエーテル(末端)である。多くの場合では、トリエーテル及びモノエーテル残基が優勢であり、超分岐鎖状ポリマーを生じる。
【0073】
当業者に周知の別の重合方法は、制御ラジカル重合(CRP)である。制御ラジカル重合は当業者に周知の用語であり、典型的には、モノマーのフリーラジカル付加重合と呼ばれ、成長ポリマーの分子量の経時的な制御の程度を指す。CRPの例には、原子移動ラジカル重合(ATRP)、電子移動により生成された原子(AGET)ATRP及び可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)が含まれる。重合方法は、CRPであると限定的に定義されず、フリーラジカル重合(FRP)及び開環複分解重合(ROMP)が含まれてもよい。
【0074】
ATRPは、水性環境下において又は任意選択で水と、例えば、メタノール、DMSO、THF、DMF若しくはNMPであってもよい別の溶媒との混合物において実施されうる。ATRP重合は、好ましくは、実質的に無酸素条件下で実施される。典型的には、ATRPは室温で実施される。典型的には、ATRPを実施した後、得られた物質を水で洗浄する。
【0075】
ATRP重合に使用される触媒は、典型的には、遷移金属又は1種以上のリガンドと錯体化した遷移金属塩である。本明細書で使用されるとき、リガンドは、金属イオン(通常は、遷移金属イオン)と配位結合する化合物である。適切な遷移金属には、銅、コバルト、モリブデン、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、ニッケル及びレニウムが含まれる。銅が好ましい。銅配位触媒に適したリガンドの例には、2,2'-ビピリジン(bpy)、4,4'-ジ(5-ノニル)-2,2-ビピリジン(dNbpy)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン(NPrPMI)、2,2':6',2''-テルピリジン(tpy)、4,4',4''-トリス(5-ノニル)-2,2':6',2''-テルピリジン(tNtpy)N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)オクチルアミン(BPMOA)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(HMTETA)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン(TPMA)及び1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン(Me4CYCLAM)が含まれる。
【0076】
適切なモノマー、適用可能な場合は連鎖移動剤の使用は、CRP法においてポリマーの分岐をポリマー鎖の成長末端に誘導することを可能にし、ブッシュ型構造の可能性をもたらすことがある。他の場合では、分岐は、あまり好ましくなく、本質的に非分岐鎖「ブッシュ」ポリマー構造が形成されうる。
【0077】
ATRP重合は、本質的に直鎖状ポリマー鎖を得るように又はある程度の分岐を得るように制御されうる。実質的に非分岐鎖ポリマーは、ポリマー「ブッシュ」構造を生じる。ATRP重合は、1種以上の異なる種類のモノマーを用いることができ、モノマーはポリマーを形成するために使用される任意の個別の単位である。モノマーは、それぞれ1つ以上の重合性基を含み、典型的には、単官能性モノマー及び二官能性モノマーから選択される。重合性基は、典型的にはC=C二重結合を含む。
【0078】
適切な単官能性モノマーの例は、メタクリレート及びメタクリルアミド、例えば、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドである。他の典型的なメタクリレート及びメタクリルアミドには、2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)及びヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が含まれる。
【0079】
二官能性モノマー、例えば、ジメタクリレート又はジビニルスルホンを使用して、ATRP重合に分岐及び/又は架橋を導入することができる。ジビニルスルホンを使用して、反応性グラフト化ポリマーを作り出すことができ、ジビニルスルホンモノマー残基における残留ビニルスルホン基を、リガンド、例えばプロテインA等のタンパク質のカップリングに使用することができる。
【0080】
グラフト化生成物の官能化
本発明の方法は、グラフト化生成物の官能化工程(工程(iii))を伴い、これは、例えば1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することによって、生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化する。この工程は、典型的には、グラフト化生成物を試薬と接触させ、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することによって、グラフト化生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することを伴う。誤解を避けるため、工程(iii)は、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として一緒に官能化する単一工程又は多重工程を伴ってもよい。
【0081】
試薬は、典型的には、1つ以上のリガンド基を導入することによって、クロマトグラフィー媒体を官能化し、このことによって、1つ以上のリガンド基を含む官能化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする。導入される1つ以上のリガンド基は、媒体が使用される特定のクロマトグラフィー技術に応じて左右される。リガンド基はグラフト化生成物に導入され、グラフト化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする基である。適切なリガンド基及び試薬は下記に更に考察される。いくつかの実施形態において、グラフト化生成物は、1種類のリガンド基のみによって官能化される。他の実施形態において、グラフト化生成物は、2種類以上のリガンド基によって官能化される。このように、本方法の工程(iii)は、典型的には、グラフト化生成物を試薬と接触させ、同一であっても、異なっていてもよい1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することによって、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することを伴う。
【0082】
基材が、異なるポリマーから形成された1本以上のポリマーナノファイバーを含む実施形態において、それぞれ異なる種類のポリマーナノファイバーは、(グラフティングの後に)同一であっても、異なっていてもよい1つ以上のリガンド基によって官能化されうる。
【0083】
1種類を超えるポリマーが基材にグラフト化されうる実施形態において、それぞれのポリマーグラフトは、同一であっても、異なっていてもよい1つ以上のリガンド基によって官能化されうる。
【0084】
本発明は、試薬を用いる単一処理のみを伴う方法を考慮しているが、多重官能化工程を伴う方法を使用することもできる。そのような実施形態は、グラフト化生成物をバッチ様式で試薬と2回以上接触させることによって官能化することを伴う。バッチ式官能化は、グラフト化生成物を試薬と反応させて官能化すること、次いでその反応を停止させること及び得られた(部分的)官能化物質を別々の試薬バッチと反応させることを意味する。バッチ様式における反応は、例えば、単に反応容器に試薬の更なる部分を添加することを指すのではない。バッチ式官能化は、典型的には、2~10回、即ち、2、3、4、5、6、7、8、9又は10回実施される。バッチ式官能化に好ましい加工条件は、国際公開第2015/052460号及び国際公開第2015/052465号において見出すことができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
ある特定の状況において、試薬と接触させることは、グラフト化生成物をホルダーに設置し、試薬をホルダーの中に流して、試薬流をグラフト化生成物と接触させ、グラフト化生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することを含んでもよい。この方法によって物質を官能化することは、ある特定の状況において、例えばフラスコ又はビーカーの中で単にグラフト化生成物を試薬と接触させることより効率的でありうる。
【0086】
流れ官能化に好ましい加工条件は、国際公開第2015/052460号及び国際公開第2015/052465号において見出すことができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
試薬は、グラフト化生成物を官能化して、クロマトグラフィー媒体、とりわけ、官能化クロマトグラフィー媒体を生じる。典型的には、試薬は、イオン交換、親和性捕捉又は疎水性クロマトグラフィー法における使用に適するように、グラフト化生成物を官能化する。このように、試薬との接触によってクロマトグラフィー媒体を生じ、クロマトグラフィー媒体は1つ以上のリガンド基により、即ち、陰性荷電されている1つ以上の部分、陽性荷電されている1つ以上の部分、1つ以上のタンパク質、タンパク質リガンドの作用を模倣する模倣若しくは合成リガンド、ペプチド、抗体若しくはこれらのフラグメント、色素、ヒスチジン、金属陽イオン含有基又は疎水性基により官能化される。2-クロロ-N,N-ジエチルアミン塩酸塩(DEACH)及び塩化グリシジルトリメチルアンモニウムは、特に官能化クロマトグラフィー媒体が陰イオン交換クロマトグラフィー法に使用される場合、試薬として好ましい。他の好ましい試薬は、特に官能化クロマトグラフィー媒体が陽イオン交換クロマトグラフィー法に使用される場合、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、TEMPOその後に過塩素酸ナトリウム、又はアリルグリシジルエーテルその後に二亜硫酸ナトリウムである。別の好ましい試薬は、特に官能化クロマトグラフィー媒体がアフィニティクロマトグラフィー法に使用される場合、NaIO4、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)、続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである。別の好ましい試薬は、特に官能化クロマトグラフィー媒体が疎水性ロマトグラフィー法に使用される場合、スチレンオキシドである。
【0088】
典型的には、試薬は、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである。好ましくは、試薬は、ジビニルスルホンその後にプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)、続いてプロテインAである。
【0089】
このように、好ましい実施形態において、本発明は官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法を提供し、官能化工程(iii)は、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として一緒に官能化する多重工程を伴う。特に好ましい実施態様において、本発明は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法を提供し、官能化工程(iii)において、
(a)グラフト化生成物を、最初に、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びこれらの組み合わせから選択される群から選択される試薬と接触させ、
(b)工程(a)の生成物を任意選択でハロヒドリン形成試薬又はエポキシ形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理し、
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる。
この特に好ましい実施形態において、グラフト化生成物を最初に工程(a)においてジビニルスルホンと接触させる場合、工程(a)の生成物は、典型的にはハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬で処理されない。このように、いくつかの実施形態において、官能化工程(iii)では、グラフト化生成物を最初にジビニルスルホンと接触させ、この工程の生成物を続いてプロテインAと接触させる。この特に好ましい実施形態において、グラフト化生成物を最初に工程(a)においてアリルグリシジルエーテルと接触させる場合、工程(a)の生成物を、続いて工程(b)においてハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理する。このように、いくつかの実施形態において、官能化工程(iii)では、グラフト化生成物を最初にアリルグリシジルエーテルと接触させ、この工程の生成物をハロヒドリン形成試薬で処理し、次いでこの工程の生成物を続いてプロテインAと接触させる。
【0090】
別の特に好ましい実施形態において、本発明は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法を提供し、官能化工程(iii)において、
(a)グラフト化生成物を、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びこれらの組み合わせから選択される群から選択される試薬と接触させ、
(b)工程(a)の生成物を任意選択でハロヒドリン形成試薬又はエポキシ形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理し、
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる。
【0091】
この特に好ましい実施形態において、グラフト化生成物を最初に工程(a)においてジビニルスルホンと接触させる場合、工程(a)の生成物は、典型的にはハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬で処理されない。このように、いくつかの実施形態において、官能化工程(iii)では、グラフト化生成物を最初にジビニルスルホンと接触させ、この工程の生成物を続いてプロテインAと接触させる。この特に好ましい実施形態において、グラフト化生成物を最初に工程(a)においてアリルグリシジルエーテルと接触させる場合、工程(a)の生成物を、続いて工程(b)においてハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理する。このように、いくつかの実施形態において、官能化工程(iii)では、グラフト化生成物をアリルグリシジルエーテルと接触させ、この工程の生成物をハロヒドリン形成試薬で処理し、次いでこの工程の生成物を続いてプロテインAと接触させる。
【0092】
クロマトグラフィー媒体及び方法
本発明の方法の生成物は、官能化クロマトグラフィー媒体であり、即ち、ポリマーがグラフト化されており、次いで官能化され、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することによって、1つ以上のクロマトグラフィー法における使用に適したものになるクロマトグラフィー媒体である。
【0093】
特定の化学官能化が、下記により詳細に考察される。一般論として、そのような化学官能化は、1つ以上の荷電基を導入することによって官能化クロマトグラフィー媒体の化学的及び/又は物理的特性を変化させる。次に、このことは、官能化クロマトグラフィー媒体がクロマトグラフィー法に使用されたとき、どのように挙動するかに影響を与える。修飾は、例えば、非官能化形態と比較して、官能化クロマトグラフィー媒体の極性、疎水性又は生物学的結合特性を変化させうる。修飾は、ある特定の状況において、非官能化形態と比較して、官能化クロマトグラフィー媒体の極性、疎水性又は生物学的結合特性のうちの2つ以上を変化させる。1つの実施形態において、修飾は、非官能化形態と比較して、官能化クロマトグラフィー媒体の極性及び疎水性を変化させる。
【0094】
官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には膜の形態である。そのような膜は膜クロマトグラフィー法における使用に適している。膜クロマトグラフィー法は、当業者に良く知られており、「Membrane Processes in Biotechnologies and Pharmaceutics」Catherine Charcosset編、Elsevier、2012年において考察されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
典型的には、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法における使用に適している。ある特定の状況において、クロマトグラフィー法は、「混合モード」で稼働し、即ち、相互作用のうちの、即ち、イオン交換、親和性捕捉及び疎水性相互作用のうちの2つ以上の形態を利用する。典型的には、そのような「混合モード」クロマトグラフィーは、イオン交換(イオン性)及び疎水性相互作用を伴う。好ましくは、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィー、好ましくはイオン交換クロマトグラフィー及び親和性捕捉クロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法における使用に適している。稼働において、そのようなクロマトグラフィー法は、所望の分子を含有する移動相を、吸着相の全体にわたって、ここでは官能化クロマトグラフィー媒体の全体にわたって通過させることを伴う。吸着相は、典型的には、所望の分子が、移動相に同様に存在する他の成分に優先して保持されるように選択される。
【0096】
典型的には、ポリマークロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEP基、例えば、DEAE、Q、SP、CM又はプロテインA基により官能化される。一般的には、ポリマーはセルロースであり、クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEP基、例えば、DEAE、Q、SP、CM又はプロテインA基により官能化される。このように、官能化クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEP基、例えば、DEAE、Q、SP、CM又はプロテインA基により誘導体化されるセルロースであってもよい。好ましい実施形態において、ポリマークロマトグラフィー媒体は、プロテインAにより官能化される。
【0097】
イオン交換クロマトグラフィーは、分子を、典型的にはイオン又は極性分子をこれらのイオン電荷に基づいて分離する技術である。したがって、そのような方法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、陽性又は陰性荷電されている1つ以上の部分を含有する。官能化クロマトグラフィー媒体における陽性及び/又は陰性電荷は、通常、1つ以上の対イオンと平衡している。イオン交換クロマトグラフィーは、1つ以上の陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを伴う。
【0098】
陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、陰性荷電されている1つ以上の部分を含有する。典型的な陰性荷電部分は、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート若しくはホスホネート基、又はこれらの混合物を含み、すなわち、部分は、典型的には1つ以上の-COO-、-SO3-若しくは-P(OH)2O-基又はこれらの混合物を含有する。スルホネート基は、強い陽イオン交換リガンドであると考慮され、一方、カルボキシレート及びホスホネートは、pH依存性の解離程度を有する弱い陽イオン交換リガンドと分離される。陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される典型的な官能化クロマトグラフィー媒体は、1つ以上の-O-CH2COO-、-CH2COO-、-SO3-、-CH2CH2CH2SO3-、-CH2CH2SO3-又は-P(OH)2O-部分を含有する。
【0099】
陰イオン交換クロマトグラフィーに使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、陽性荷電されている1つ以上の部分を含有する。典型的な陽性荷電部分は、1つ以上の第四級アミン基(強い陰イオン交換リガンド)又は第三級アミン基(弱い陰イオン交換リガンド)を含む。陰イオン交換クロマトグラフィーに使用される典型的な官能化クロマトグラフィー媒体は、1つ以上の-N+(CH3)3、-N+(C2H5)H、CH2CH2N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)2(CH2CH(OH)CH3)、-O-CH2CH2-N+(CH3)3、-CH2CH2N+(CH3)3又は-CH2CH2N+(CH3)2H部分を含有する。
【0100】
誤解を避けるため、「荷電基」とは、陽性又は陰性電荷を有するようにイオン化されている部分を含む基を意味し、即ち、「荷電基」は陰イオン性又は陽イオン性部分を含む。荷電基は、リガンド基の特定の例である。
【0101】
典型的には、1つ以上の荷電基は、1つ以上のカルボキシレート(-COO-)、スルホネート(-SO3-)若しくはホスホネート(-P(OH)2O-)基、又は第四級アミン基、或いはこれらの混合物を含む。典型的には、1つ以上の荷電基は、全ての陰イオン性基又は全ての陽イオン性基を含むが、ある特定の状況では、陰イオン性基と陽イオン性基の混合物が考慮される。典型的には1種類の陰イオン性基のみが使用されるが、混合物を使用することもできる。典型的には1種類の陽イオン性基のみが使用されるが、混合物を使用することもできる。代表的な荷電基には、-O-CH2COO-、-CH2COO-、-SO3-、-CH2CH2CH2SO3-、-CH2CH2SO3-、-P(OH)2O-、-N+(CH3)3、-N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)2(CH2CH(OH)CH3)、-O-CH2CH2-N+(CH3)3、-CH2CH2N+(CH3)3及び-CH2CH2N+(CH3)2H部分が含まれる。
【0102】
典型的な荷電基には、DEAE、Q、SP及びCM基が含まれる。典型的には、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP又はCM基により官能化される。このように、官能化クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP又はCM基により誘導体化されるセルロースであってもよい。
【0103】
親和性捕捉クロマトグラフィーは、通常は生物学的リガンドであるが、これに限らない特定のリガンドに対する親和性に基づいて分子を分離する技術である。この方法は、例えば、抗体と抗原の間又は酵素と基質の間の引力に依存していることがある。親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはこれらのフラグメント、色素、ヒスチジン又は金属陽イオン含有基から選択される1つ以上の部分を含有する。このように、1つ以上のリガンド基は、1つ以上のそのような部分を含むことができる。或いは、親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、タンパク質リガンドの作用を模倣する模倣又は合成リガンドを含有することができる。
【0104】
親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される典型的なタンパク質は、当業者に良く知られており、プロテインA、プロテインG及びプロテインLが含まれる。プロテインAが好ましい。プロテインAは、当業者に周知のタンパク質である。本明細書で使用されるとき、「プロテインA」への参照は、組み換えプロテインA(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に見出されるプロテインAと比較して変更された配列を有しうる)及びタグ付けプロテインA(全体が参照により本明細書に組み込まれるヨーロッパ特許第0873353号及び米国特許第6399750号に記載されている)を包含する。プロテインAは、プロテインAの修飾変異体であってもよく、例えば、プロテインAのシステイン修飾変異体又は突然変異プロテインA免疫グロブリン結合ドメインのアルカリ安定多量体であってもよく、例えば、米国特許第8198404号又は米国特許出願第20170334954号に記載されており、これらは、全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される典型的な抗体及びそれらのフラグメントは、当業者に良く知られており、IgGが含まれる。
【0106】
親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される典型的な色素は、当業者に良く知られており、イエロー(Yellow)HE-4R、レッド(Red)HE-3B及びシバクロンブルー(Cibacron Blue)F3Gが含まれる。
【0107】
親和性捕捉クロマトグラフィーに使用される典型的な金属陽イオン含有基は、当業者に良く知られている。そのような基は、典型的には金属陽イオンを固定化するキレート剤を含有する。金属陽イオンは、典型的には、銅、ニッケル、亜鉛及びコバルトの陽イオン、好ましくは、Cu2+、Ni2+、Zn2+及びCo2+から選択される。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、疎水性に基づいて分子を分離する技術である。したがって、そのような方法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、1つ以上の疎水性基を含有する1つ以上の部分を含有する。典型的な疎水性基には、プロピル、ブチル、フェニル及びオクチル基が含まれる。
【0108】
混合モード(マルチモードとしても知られている)クロマトグラフィーは、2つ以上の特徴、典型的には疎水性及びイオン電荷に基づいて分子を分離する技術である。これは、疎水性と陰イオン性の組み合わせ、又は疎水性と陽イオン性の組み合わせを伴うことがある。したがって、典型的には、そのような方法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には上記に定義されているような陽性又は陰性荷電されている1つ以上の部分を含有し、典型的には上記に定義されているような1つ以上の疎水性基を含有する。
【0109】
官能化クロマトグラフィー媒体における陽性及び/又は陰性電荷は、通常、1つ以上の対イオンと平衡している。そのような方法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、所謂、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)に使用されるイオン化する1つ以上の疎水性基を含有することもできる。このように、1つの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーは疎水性電荷誘導クロマトグラフィーである。そのような方法に使用される適切な基は、4-メルカプト-エチル-ピリジン(MEP)基及びオクチルアミン基である。
【0110】
疎水性と陰イオン性の相互作用の組み合わせを伴う混合モードクロマトグラフィー法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には上記に定義されているような陽性荷電されている1つ以上の部分及び典型的には上記に定義されているような1つ以上の疎水性基を含有する。そのような方法に使用される適切な基は、N-ベンジルメチルエタノールアミン基及びN-ベンゾイル-ホモシステイン基である。疎水性と陽イオン性の相互作用の組み合わせを伴う混合モードクロマトグラフィー法に使用される官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には上記に定義されているような陰性荷電されている1つ以上の部分及び典型的には上記に定義されているような1つ以上の疎水性基を含有する。そのような方法に使用される適切な基は、N-ベンゾイル-ホモシステイン基である。
【0111】
官能化クロマトグラフィー媒体を調製する本発明により特許請求される方法は、典型的には、工程(iii)において、1つ以上のリガンド基を含む得られた官能化生成物がクロマトグラフィー法においてクロマトグラフィー媒体としての使用に適するように、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することを伴う。典型的な部分、媒体、試薬及び方法は、上記に定義されたとおりである。1つ以上のリガンド基は、適切な試薬を、グラフト化生成物に含有された1つ以上の官能基と反応させることによって導入される。典型的な官能基には、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン及びカルボキシル基が含まれる。本方法の工程(ii)がグリシドール重合を伴うことがあるので、官能基は典型的にはヒドロキシル基である。1つ以上のリガンド基を導入するのに適した試薬は、他の部分で考察されている。
【0112】
1つ以上の官能基を試薬との反応の前に活性化してもよい。当該技術に既知の従来の活性化方法を用いてもよい。このように、官能基がヒドロキシル基である場合、そのような基は、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ビスオキシラン、シアヌル酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、2-フルオロ-1-メチルピリジウムトルエン-4スルホネート(FMP)、NaIO4、ジビニルスルホン又はアリルグリシジルエーテルで処理することによって活性化されうる。官能基がアミノ基である場合、そのような基は、エピクロロヒドリン、グルタルアルデヒド又はエポキシドで処理することによって活性化されうる。官能基がカルボキシル基である場合、そのような基は、CDI又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で処理することによって活性化されうる。官能基がハロゲン原子である場合、そのような基は、ジビニルスルホンで処理することによって活性化されうる。
【0113】
当業者は、特定の基及び部分を特定のポリマーに導入するのに適した試薬を、例えば、所望のリガンド基及び部分、並びにこれらのポリマーに含有された官能基に基づいて選択することができる。典型的な試薬には、2-クロロ-N,N-ジエチルアミン塩酸塩(DEACH)、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬、続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAが含まれる。
【0114】
典型的なハロヒドリン形成試薬には、ハロゲンの求電子源及びヒドロキシルの求核源が含まれる。このように、典型的なハロヒドリン形成試薬には、水中の二原子ハロゲン(典型的には、Cl2、Br2若しくはI2)、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド又はN-ヨードスクシンイミドが含まれる。典型的には、ハロヒドリン形成試薬は、アルケンからハロヒドリン種を生じる。ハロヒドリン形成反応は、ハロゲン原子がポリマー鎖の末端炭素原子に結合しているハロヒドリン生成物を主に生じるように位置選択的であってもよく、又はヒドロキシル基がポリマー鎖の末端炭素原子に結合しているハロヒドリン生成物を主に生じるように位置選択的であってもよく、又は低い位置選択性を有してもよい。好ましくは、ハロヒドリン形成反応は、ハロゲン原子がポリマー鎖の末端炭素原子に結合しているハロヒドリン生成物を主に生じるように位置選択的でありうる。
【0115】
典型的なエポキシド形成試薬には、ペルオキシ酸(例えば、メタクロロペルオキシ安息鉱酸(mcpba))、NaOH又はH2Oの存在下での過酸化水素、バナジルアセチルアセトネートの存在下でのtert-ブチルヒドロペルオキシド、Ti(OiPr)4及び酒石酸ジエチルの存在下でのtert-ブチルヒドロペルオキシド、Ti(OiPr)4及び酒石酸ジイソプロピルの存在下でのtert-ブチルヒドロペルオキシド、又はフルクトース誘導触媒及び塩基の存在下でのオゾンが含まれる。
典型的には、
- クロマトグラフィー法は陽イオン交換法であり、試薬は、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート又はホスホネート部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法は陰イオン交換法であり、試薬は、1つ以上の第四級アミノ又はジエチルアミン部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法は親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはこれらのフラグメント、色素、ヒスチジン基又は金属陽イオン含有基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法は疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のプロピル、ブチル、フェニル又はオクチル基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法は混合モードクロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のMEP、オクチルアミン、N-ベンジルメチルエタノールアミン又はN-ベンゾイル-ホモシステイン基でクロマトグラフィー媒体を官能化する。
【0116】
適切には、官能化クロマトグラフィー媒体は、アルカリ安定性であり、即ち、少なくとも0.1MのNaOH、例えば、少なくとも1MのNaOHを含むアルカリ清浄溶液で清浄されうる。これを達成するため、グラフト化ポリマーコーティングは、アルカリ安定性であり、典型的にはアルカリ不安定エステル又はアミド基を欠いている。更に、リガンドはアルカリ安定性であるべきであり、上記に列挙されたイオン交換、混合モード及び疎水性リガンドに当てはまる。タンパク性親和性リガンドはアルカリ不安定でありうるが、アルカリ安定プロテインAリガンドについて上記に記載されたように、選択的突然変異によってアルカリ安定性になりうる。
【0117】
本発明の特定の実施形態
上記に考察されたように、本発明は、ポリマーナノファイバー基材から官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する2工程方法を提供し、2工程方法は、(i)ポリマーグラフティング工程及び(ii)官能化工程である。
【0118】
ポリマーグラフティング工程は、典型的には、500~60,000μmol/gのポリマーを基材に導入し、好ましくは1000~60,000μmol/gである。いくつかの実施形態において、グラフティング工程は、1000~2000μmol/gを導入する。他の実施形態において、グラフティング工程は、5000~10,000μmol/gを導入する。なお他の実施形態において、グラフティング工程は、30,000~60,000μmol/gを導入する。この量は、典型的には、グラフティング方法によって基材に加えられた特定の官能基、例えばヒドロキシル基の量を測定するアッセイ方法により決定することができる。当業者は、グラフト化物質の所定の試料に存在する特定の官能基の量を決定するために使用される適切な方法を認識する。
【0119】
増加したポリマー密度は、増加量若しくは高濃度の重合試薬を使用して、又はより高い温度若しくはより長い時間で反応を実施することによって、得ることができる。
【0120】
グリシドール重合の文脈において、グラフティング工程は、典型的には、グラフト化生成物の-OH密度により決定して、500~60,000μmol/gのグリシドールをグラフト化生成物に導入する。グラフト化生成物の-OH密度は、滴定法により、典型的には水酸化テトラブチルアンモニウムを用いる滴定により決定してもよい。
【0121】
増加した-OH密度は、式(I)を有する増加量のグリシドール又はグリシドール誘導体を使用して得ることができる。
【0122】
好ましくは、特定のポリマーの試料における-OH含有量は、以下のアッセイによって決定される。
1)グラフト化物質の試料を湿潤濾紙に置き、Buchnerフィルター漏斗に設置し、超純水で洗浄し、その間、真空を適用して、水が試料を十分に洗浄することを確実にする。
2)試料をオーブンにより60℃で恒量に乾燥し、試料の質量を決定する。
3)試料を細断して、10mlのp-トルエンスルホニルイソシアネート溶液(500mlのアセトニトリル中20mLのp-トルエンスルホニルイソシアネート)を含有する50mLの遠心分離管に懸濁する。
4)管を封止し、混合物を水浴中で加熱(60℃)しながら1時間撹拌する。
5)管と内容物を室温に冷まし、混合物を滴定カップに移してイソプロピルアルコールで80mLにする前に、10mLの超高純度H2Oで注意深くクエンチする。
6)混合物を室温で30分間撹拌し、次いで水酸化テトラブチルアンモニウム(メタノール中0.481M溶液)で滴定して、存在するヒドロキシル基の絶対濃度を決定する。
【0123】
特定のポリマーの試料の-OH濃度(mol/g)は、上記のアッセイにより試料中のヒドロキシル基の絶対濃度を決定し、アッセイの工程(2)で得た乾燥試料の総質量で割ることによって決定することができる。
【0124】
工程(ii)及び(iii)の後、本発明の方法の工程(iii)に導入されたリガンド基の密度は、典型的には、官能化クロマトグラフィー媒体の100~2,000μmol/gである。密度は、好ましくは300~1,500μmol/g、より好ましくは500~1200μmol/gである。いくつかの実施形態において、密度は100~500μmol/gである。他の実施形態において、密度は1200~2000μmol/gである。官能化クロマトグラフィー媒体の2,000μmol/gを大きく超える密度は、クロマトグラフィー媒体として使用することが困難な物質をもたらすことがある。
【0125】
密度は、典型的には、官能化物質における部分の数を決定する滴定法によって決定される。当業者は、官能化物質の所定の試料に存在する特定部分の量を決定するために使用される適切な方法を認識する。
【0126】
塩化トリメチルアンモニウムによる官能化の文脈において、密度は、塩化トリメチルアンモニウムの密度として決定することができ、これは以下のアッセイによって決定してもよい。
1)50mgの物質をBuchnerフィルター漏斗において100mLの0.1M HCl溶液で洗浄し、次いで更なる100mLの0.01M HCl溶液で洗浄する。
2)小片に裂き、小型磁気撹拌バーを備えた50mLの遠心分離管に入れる前に、物質を乾燥オーブンにより75℃で恒量に乾燥する。
3)15mLの脱イオン水を、およそ1mLのクロム酸カリウム溶液(ティートピペット(teat pipett)で添加)と共に加え、混合物を黄色にする。
4)0.1Mの硝酸銀で滴定する前に混合物を20分間激しく撹拌し、滴定のエンドポイントは、色が透明な黄色から曇った褐色に変化することによって確認される。
5)塩化トリメチルアンモニウムの含有量(μmol/g)を、エンドポイントに達するまで添加された硝酸銀のマイクロモル数/滴定に使用されたナノファイバー物質のグラム数、によって計算する。
【0127】
スルホン酸(S)基による官能化の文脈において、密度は、スルホン酸の密度として決定することができ、これは以下のアッセイによって決定してもよい。
1)官能化物質の乾燥試料を0.1MのHCl及び0.01MのHClで洗浄する。
2)物質をオーブンで乾燥し、計量する。
3)物質のモル濃度を、pH7に達するまで添加しなければならないNaOHの量により決定する。
4)スルホン酸(S)含有量(μmol/g)を、pH7に達するまで添加されたNaOHのマイクロモル数/滴定に使用されたナノファイバー物質のグラム数、によって計算する。
【0128】
本発明の2工程方法は、物質の試料の全体に及ぶ圧力低下に対する高度な制御を可能にする。クロマトグラフィー物質の全体に及ぶ絶対圧力低下が工業規模における制約要因であるので、このことは有益である。具体的には、大部分の市販のポンプの通常の稼働パラメーターは、2MPaの圧力低下が最大許容圧力低下である。本発明者たちは、驚くべきことに、本発明により生成された物質を通して、2MPaの圧力低下で物質の高流量が可能であることを見出した。このように、典型的には、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下は、液相が0.05~10mmの厚さの媒体を1分当たり1~640膜体積の流量で通過するとき、床高さ1mm当たり2MPa未満又は1MPa未満である。これは、標準的な方法、例えば、典型的には1.2mPas未満の粘度を有する水性緩衝液を用いる、AKTAタンパク質精製システムを使用して決定することができる。これは、物質の流れに対する抵抗性の測度である。
【0129】
典型的には、圧力低下は、1MPa未満、好ましくは0.5MPa未満である。典型的には、膜を通る流量は、1分当たり1~60膜体積、好ましくは5~40である。
【0130】
媒体を通過する液相は、特に重要ではない。典型的な液相には、標準的な緩衝液、例えば、Tris緩衝液、好ましくは10mMのTrisである。典型的には、液相は0.1~5mmの厚さの物質を通過する。
【0131】
好ましくは、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下は、Tris緩衝液が0.1~5mmの厚さの媒体を1分当たり1~60膜体積の流量で通過するとき、1MPa未満である。より好ましくは、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下は、10mMのTrisが0.1~5mmの厚さの媒体を1分当たり5~40膜体積の流量で通過するとき、0.5MPa未満である。グラフティング工程と官能化工程の組み合わせは、高い動的結合容量(DBC)を有する物質を達成することを可能にする。このように、典型的には、官能化クロマトグラフィー物質は、10~210mg/mL(10%ブレイクスルー)、好ましくは、20~195mg/mL(10%ブレイクスルー)、30~180mg/mL(10%ブレイクスルー)、40~165mg/mL(10%ブレイクスルー)又は50~150mg/mL(10%ブレイクスルー)のDBCを有する。工程(ii)がグリシドール重合を伴う物質では、典型的には、官能化クロマトグラフィー物質は50~150mg/mLのDBCを有する(10%ブレイクスルー)。10%ブレイクスルーのDBCは、標準的な方法によって、例えばAKTA Pureシステムを使用して決定することができる。
【0132】
10%ブレイクスルーのDBCは、典型的には以下のアッセイ方法に従って決定される。
1)装填物質(陰イオン交換物質では、装填物質は10mMのTris、pH8中の1mg/mLのBSAである。陽イオン交換物質では、装填物質は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.7中の1mg/mLのリゾチームである。)を、AKTA Pureシステム(GE Healthcare)のホルダー内に含有された官能化物質の中を通過させる。
2)ホルダー流出後の濃度が、UVフローセルにより決定して装填物質の10%を超えるまで、1分当たりの確定膜体積(mV/分)の流量下で物質を装填する。
3)システム及びホルダー装置には死容積があるので、10%ブレイクスルーでディスクに装填されたタンパク質の総量は、Unicornソフトウエア(GE Healthcare)によるクロマトグラムの分析によって決定した。本発明の官能化物質の高い動的結合容量及び可能な限り高い流量は、有利に高い生産性を達成することを可能にする。このように典型的には、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性は、50mg/mL/分~75,000mg/mL/分である。好ましくは、生産性は600mg/ml/分以上である。より好ましくは、生産性は1200mg/ml/分以上である。更により好ましくは、生産性は2400mg/ml/分以上である。生産性は、10,000mg/ml/分以上、又は更には15,000mg/ml/分以上、又は20,000mg/ml/分以上である。10,000mg/ml/分、15,000mg/ml/分又は20,000mg/ml/分以上の生産性は、典型的にはグリシドール重合を使用して達成可能である。本明細書で使用されるとき、物質の生産性は、単位時間当たり物質の単位体積毎にどれぐらい多くの物質を吸着物質に装填できるかによって決定される。実際には、これは、DBC(10%ブレイクスルー)を、ホルダーにおける装填物質の滞留時間で割ることによって決定される。次に滞留時間は、ホルダーを通過する物質の流量から決定することができる。
【0133】
上記に考察されたように、本発明者たちは、グラフティング工程(ii)と官能化工程(iii)の関係性を十分に調査し、これらの工程を互いに切り離すことによって、高度に最適化された物質を生成できることを見出した。
【0134】
このように、ある特定の実施形態において、グラフティング工程(ii)は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有することが見出された。このように、所定の密度のリガンド基を有する2つの物質では、高い程度のグラフティングを有する物質のほうが高いDBCを有することが、典型的に見出された。このことは、陽性荷電基で官能化された物質、即ち、官能化クロマトグラフィー物質が陰イオン交換クロマトグラフィー法における使用に適している場合に当てはまる。
【0135】
このように、1つの実施形態において、本発明は、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)本明細書に定義されているように、1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)本明細書に定義されているように、基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)本明細書に定義されているように、グラフト化生成物を試薬と接触させ、本明細書に定義されているように、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み(ここで、グラフティング工程(ii)は、下記式:
【化12】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマー:
【化13】
を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一であっても、異なっていてもよく、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つは、水素ではないことが条件である)、且つ官能化ポリマークロマトグラフィー物質のDBCを増加させる効果を有する、
方法を提供する。
【0136】
他の実施形態において、通常、陰性荷電基で官能化された物質、すなわち官能化クロマトグラフィー物質が陽イオン交換クロマトグラフィー法における使用に適する場合には、特許請求される方法の工程(iii)に使用される官能化試薬の量を変えることは、電荷密度に小さな影響のみを有するが、グラフティング工程と組み合わせると、同じ官能化程度で結合容量に有意な増加を達成できることが見出された。したがって、DBCに肯定的な影響を与えるのはグラフティング工程と官能化工程の組み合わせであることが、ここでも明らかである。
【0137】
典型的には、官能化クロマトグラフィー媒体は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体であり、基材は、1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成され、工程(i)と(ii)の間でセルロースアセテートは処理されて、セルロースに変換され、基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングする工程は、グリシドール重合を伴い、グラフト化生成物は、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAから選択される試薬と接触する。
【0138】
或いは、官能化クロマトグラフィー媒体は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体であり、基材は、1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成され、グラフティングの工程は、セルロースアセテートからセルロースへの変換(鹸化)及び得られたセルロース基材へのグリシドール重合を介した1つ以上の中性ポリマー鎖のグラフティングの両方を含み、グラフト化生成物は、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAから選択される試薬と接触する。
【0139】
好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)本明細書に定義されているように、得られたセルロース基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)本明細書に定義されているように、グラフト化生成物を試薬と接触させ、本明細書に定義されているように、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、グラフティング工程(ii)が、下記式:
【化14】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む、
方法を提供する。
【0140】
典型的には、この好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0141】
好ましくは、この好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0142】
代替的に好ましい実施態様において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換される、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材にグラフトされる両方の条件下に付すことと、
(iii)本明細書に定義されているように、グラフト化生成物を試薬と接触させ、本明細書に定義されているように、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、グラフティング工程(ii)が、下記式:
【化15】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む、
方法を提供する。
【0143】
典型的には、この代替的に好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0144】
好ましくは、この代替的に好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。より好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)得られたセルロース基材から、1つ以上のポリマー鎖を、下記式:
【化16】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を、基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフティングすることと、
(iii)本明細書に定義されているように、グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。
【0145】
典型的には、このより好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。好ましくは、このより好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。代替的により好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換され、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材に、下記式:
【化17】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフト化される両方の水性アルカリ条件下に付すことと、
(iii)本明細書に定義されているように、グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。典型的には、この代替的により好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0146】
好ましくは、この代替的により好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0147】
更により好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)得られたセルロース基材から、1つ以上のポリマー鎖を、下記式:
【化18】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフト化することと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をイオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。
【0148】
典型的には、この更により好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0149】
好ましくは、この更により好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0150】
代替的に更により好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換され、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材に、下記式:
【化19】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフト化される両方の水性アルカリ条件下に付すことと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をイオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法を提供する。
【0151】
典型的には、この代替的に更により好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。好ましくは、この代替的な更により好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0152】
なおより好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)得られたセルロース基材から、1つ以上のポリマー鎖を、下記式:
【化20】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化することと、を含み、試薬が、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO
4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである、
方法を提供する。
【0153】
典型的には、このなおより好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0154】
好ましくは、このなおより好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0155】
代替的になおより好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換され、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材に、下記式:
【化21】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフト化される両方の水性アルカリ条件下に付すことと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化することと、を含み、試薬が、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO
4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド若しくは臭素水)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである、
方法を提供する。
【0156】
典型的には、この代替的な、なおより好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0157】
好ましくは、この代替的な、なおより好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0158】
更にもっとより好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備し、セルロースアセテートを処理してセルロースに変換することと、
(ii)得られたセルロース基材から、1つ以上のポリマー鎖を、下記式:
【化22】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化することと、を含み、試薬が、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド若しくは臭素水)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである、
方法を提供する。
典型的には、この更にもっとより好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0159】
好ましくは、この更にもっとより好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0160】
代替的に更にもっとより好ましい実施形態において、本発明は、官能化セルロースクロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のセルロースアセテートナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材を、セルロースアセテートがセルロースに変換され、続いて1つ以上の中性ポリマー鎖が、得られたセルロース基材に、下記式:
【化23】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによってグラフト化される両方の水性アルカリ条件下に付すことと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化することと、を含み、試薬が、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬(例えば、N-ブロモスクシンイミド)続いてプロテインA、又はアリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインAである、
方法を提供する。典型的には、この代替的な更にもっとより好ましい実施形態において、工程(i)は、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む、1枚以上の不織シートから形成された基材を準備することを含む。
【0161】
好ましくは、この代替的に更にもっとより好ましい実施形態において、工程(i)は、互いに積層された2枚以上の不織シートを準備すること(前記のシートは、それぞれ1本以上のセルロースアセテートナノファイバーを含む)、並びにシートの積層を同時に加熱及び圧縮して、隣接シートのナノファイバー間の接触点を融合させることを含む。
【0162】
本発明のクロマトグラフィーカートリッジ
本発明は、
図15に例示されているクロマトグラフィーカートリッジも提供する。本発明のクロマトグラフィーカートリッジ(110)は、本発明の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体(120)を含む。或いは、本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、本発明の方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことによって得ることができる。クロマトグラフィーカートリッジを調製する方法であって、本発明の方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む方法も提供される。
【0163】
クロマトグラフィーカートリッジは、典型的には、クロマトグラフィー、好ましくは本明細書に定義されているクロマトグラフィー法における使用に適している。
【0164】
本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、典型的には、ホルダー(190)、例えば、上記に定義されたホルダー内に本発明の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む。
図15は軸状のクロマトグラフィーカートリッジを示しているが、半径流カートリッジを有することも等しく可能であり、幾つかの異なる構造が当業者に知られている。ホルダーは、典型的には、円筒形であるが、長方形も可能である。典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、円筒形又は長方形のホルダー内に積層された本発明の2つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む。典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、本発明の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む。典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体を20個まで含む。官能化クロマトグラフィー媒体(120)の第1の側面(130)は、入口流分配器(150)を介して入口(140)に流動的に接続しており、一方、官能化クロマトグラフィー媒体の第2の側面は、出口流回収器(180)を介して出口(170)に流動的に接続している。流れ分配器及び流れ回収器の構造は、当業者に良く知られている。
【0165】
典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、典型的な円筒形又は長方形ホルダー内に1つ以上のフリットも含む。フリットは、当業者に良く知られており、剛性の多孔質構造物、典型的には剛性の金属、ポリマー又はセラミック、好ましくは剛性の金属又はセラミック多孔質構造物を指す。フリットは、典型的には、カートリッジの中を通る流れ分配を改善するため及び/又は本発明の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を支持するため、クロマトグラフィーカートリッジに含まれる。典型的なフリットの孔は、1~1000μm、好ましくは5~500μm、より好ましくは10~150μmの直径を有する。他の適切なフリットの孔直径には、1~20μm、好ましくは5~10μm、より好ましくは3~7μmが含まれる。典型的には、カートリッジは、本発明の2つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体及び1つ以上のフリットを含み、フリットは、官能化クロマトグラフィー媒体の間に配置されている。
【0166】
いくつかの実施形態において、カートリッジはフリットを含まない。カートリッジは、フリットの代わりに又は追加として代替スペーサー物質を含んでもよい。典型的な代替スペーサー物質には、不織及び織物物質が含まれる。
【0167】
不織ポリマー物質は、当業者に知られている。そのような不織物質は、多孔質であり、即ち、液体の通過を、典型的には有意な圧力低下を有することなく可能にする。典型的には、不織ポリマー物質はポリプロピレンである。典型的には、不織ポリマー物質は45~150gsmの面密度を有する。
【0168】
いくつかの実施形態において、カートリッジは、本発明の2つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体及び上記に定義されている1つ以上の不織ポリマー物質を含み、1つ以上の不織ポリマー物質層は、官能化クロマトグラフィー媒体の間に配置されている。
【0169】
織物物質は、当業者に知られている。そのような織物物質は、多孔質であり、即ち、液体の通過を、典型的には有意な圧力低下を有することなく可能にする。典型的には、織物物質は、織物ポリマー物質、好ましくは織物ポリプロピレンである。典型的には、織物物質は1mm未満の厚さを有する。
【0170】
クロマトグラフィーカートリッジは、典型的には単回使用用途に適合され、即ち、プラスチック等の安価で廃棄処分が容易な物質から構築されうる。適切には、クロマトグラフィーカートリッジは、例えば、ガンマ照射によって、或いは蒸気処理/オートクレーブ処理によって予め滅菌され、即時使用のために無菌包装される。クロマトグラフィーカートリッジは、当該技術に既知の無菌コネクター、例えば、ReadyMate(GE Healthcare)又はKleenPak(Pall)を備えていてもよい。
【0171】
本発明のクロマトグラフィー法
本発明は、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジの、クロマトグラフィーにおける、特に本明細書に定義されているクロマトグラフィー法における使用も提供する。
【0172】
本発明は、移動相から1つ以上の生物学的分子(標的生体分子とも呼ばれる)を単離する方法であって、移動相における1つ以上の生物学的分子を、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む方法も提供する。クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジは、移動相において1つ以上の生物学的分子に優先的に、典型的には、移動相に同様に存在する他の成分(例えば、他の生物学的分子)より優先的に結合する。これは、そのようなクロマトグラフィー法の結合段階に既知の従来の方法に従って実施することができる。このように、典型的には、このクロマトグラフィー法は、イオン(陰イオン又は陽イオン)交換、親和性捕捉、疎水性相互作用又は混合モードクロマトグラフィー法である。好ましくは、クロマトグラフィー法は陰イオン交換クロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体はDEAE又はQで官能化されている、クロマトグラフィー法は陽イオン交換クロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体はSP又はCMで官能化されている、クロマトグラフィー法は親和性捕捉クロマトグラフィーであり、クロマトグラフィー媒体はプロテインAで官能化されている、或いはクロマトグラフィー法は疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体はフェニル基で官能化されている。このように、本発明は、上記の工程を含むクロマトグラフィー法を提供する。典型的には、クロマトグラフィー法は、上記に定義されたクロマトグラフィー法に従って実施される。
【0173】
本発明の有益な知見の1つは、本発明の方法により生成された官能化クロマトグラフィー物質が、高い結合容量を有すること及び高い流量で稼働しうることである。このように、典型的には、本発明のクロマトグラフィー法において、移動相中の1つ以上の生物学的分子は、官能化クロマトグラフィー媒体と、1分以下、好まくは50秒以下、より好ましくは40秒以下、なおより好ましくは30秒以下、なおより好ましくは20秒以下、更には、15秒以下、12秒以下、10秒以下、8秒以下、6秒以下、4秒以下、2秒以下、1.5秒以下、更に1秒以下の時間にわたって接触する。適切には、この工程の滞留時間は0.1~30秒であり、工業用途では、好ましくは2~10秒でありうる。しかし研究開発/実験室用途では、顕著に速く実施することができ、例えば、0.1~10秒の滞留時間でありうる。
【0174】
本方法は、通過画分(flowthrough)方法であってもよく、標的生体分子は、官能化クロマトグラフィー媒体と結合せず又は弱く相互作用するだけであり、通過画分から回収され、一方、他の生体分子(汚染物質及び/又は不純物)は、官能化クロマトグラフィー媒体に保持される。或いは、本方法は、下記に考察される結合溶出方法でありうる。
【0175】
クロマトグラフィー法は、典型的には、1つ以上の生物学的分子を官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジから回収する更なる工程を含む。この工程は、典型的には、1つ以上の生物学的分子が吸着されている官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジを、溶出緩衝液と接触させることによって実施することができる。これは、そのようなクロマトグラフィー法の溶出段階に既知の従来の方法に従って実施することができる。このように、本方法は、典型的には結合溶出クロマトグラフィー法である。結合と溶出の工程の間に、本方法は、1つ以上の生物学的分子が吸着されている官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジを洗浄する工程を更に含むことができる。この洗浄工程は、洗浄液により実施して、官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジに結合していない任意の成分を除去する。これは、そのようなクロマトグラフィー法の洗浄段階に既知の従来の方法に従って実施することができる。溶出工程の後、本方法は、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジを再生する工程を更に含むことができる。典型的には、これは、1つ以上の生物学的分子が溶出された官能化クロマトグラフィー媒体又は官能化クロマトグラフィーカートリッジを1つ以上の再生液と接触させることによって実施される。これは、そのようなクロマトグラフィー法の再生段階に既知の従来の方法に従って実施することができる。この再生液には、ストリップ緩衝液、清浄液及び/又は平衡緩衝液が含まれうる。清浄液は、例えば、少なくとも0.1MのNaOH又はKOH、例えば0.1~1MのNaOH又はKOHを含むアルカリ液でありうる。再生した後、カートリッジは、1回以上の分離サイクル、例えば、5回以上の分離サイクルに再使用されてもよい。典型的には、1つ以上の生物学的分子は、細胞、タンパク質、ポリペプチド、抗体、アミノ酸、ウイルス及び核酸から選択され、例えば、組み換えタンパク質、モノクローナル抗体、ウイルスワクチン、ウイルスベクター、RNA、エキソーム、細胞及びプラスミドDNAが含まれる。
【0176】
モノクローナル抗体は、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)又はドメイン欠失抗体であってもよい。好ましくは、モノクローナル抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントを使用することができる。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2及びFvのフラグメント、二特異性抗体(diabodies)及び一本鎖抗体が含まれる。
【0177】
典型的には、1つ以上の生物学的分子は、プロテインAの結合に親和性を有する部位を提示するように改変された1つ以上のモノクローナル抗体又はタンパク質であり、カートリッジに任意選択で含有された官能化クロマトグラフィー媒体は、少なくとも1つのプロテインAリガンド基を担持する。
【0178】
典型的には、クロマトグラフィー法は、疑似又は実際の移動床システムを用いる。このように、典型的には、本方法は、移動相中の1つ以上の生物学的分子を、複数の連結クロマトグラフィーカラムを有する1つ以上の疑似又は実際の移動床クロマトグラフィー装置に導入することを含み、クロマトグラフィーカラムは、吸着剤として本発明の官能化クロマトグラフィー媒体を含有する。任意の既知の疑似又は実際の移動床装置を使用して、クロマトグラフィー法を実施することができ、但し、吸着剤として本発明の官能化クロマトグラフィー媒体を含むことが条件である。模擬及び実際の移動床クロマトグラフィーは、当業者に良く知られている既知の技術である。稼働原理は、液体溶出相と固体吸着相の向流移動を伴う。この稼働は、最小限の溶媒の使用を可能にし、この方法を経済的に実現可能なものにする。そのような分離技術は膜吸着剤を使用する生物学的分子の精製を含む多様な分野における用途が見出される。
模倣移動床システム(周期向流クロマトグラフィーシステムとも呼ばれる)は、吸着剤を含有した、一緒に直列に接続されている多数の個別のカラム/カートリッジを含む。溶出剤を第1方向でカラム/カートリッジに通過させる。システムにおける供給原料及び溶出剤の注入点、並びに分離された成分の回収点は、一連のバルブよって周期的にシフトされる。全体的な効果は、固体吸着剤の移動床を含有する単一カラムの稼働を模倣することである。このように、模倣移動床システムは、従来の静止床システムのように、溶出剤が通過する固体吸着剤の静止床を含有するカラムを含むが、模倣移動床システムでは、稼働は連続向流移動床を模倣するものである。本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、滞留時間が非常に短く、方法の急速な循環を可能にし、したがって全体的に高い生産性を可能にする点において、模倣移動床又は周期向流クロマトグラフィー稼働に特に適している。
【0179】
実際の移動床径は、模倣移動床システムと稼働が類似している。しかし、バルブシステムによって供給混合物及び溶出剤の注入点、並びに分離された成分の回収点をシフトするのではなく、代わりに一連の吸着単位(即ち、カラム)が供給及び引き抜き点に対して物理的に移動する。ここでも、稼働は連続向流移動床を模倣するものである。
【0180】
本発明の物質は、固定化酵素生体触媒作用、金属捕捉及び水処理の方法における使用にも適している。このように、本発明は、酵素生体触媒作用の方法を提供し、これは本発明の官能化クロマトグラフィー物質を伴う。本発明は、金属捕捉の方法も提供し、これは本発明の官能化クロマトグラフィー物質を伴う。本発明は、水処理の方法も提供し、これは本発明の官能化クロマトグラフィー物質を伴う。これらの方法における使用に本生成物を適するようにするため、本発明の方法及び生成物は、ある特定の僅かな変更を必要としうることが理解される。
【実施例】
【0181】
以下の実施例は本発明を例示する。
【0182】
物質及び機器
特に指示のない限り、全ての化学薬品は、Fisher Scientific社、Sigma-Aldrich社、FluoroChem社、Repligen社及びVWR社から得た又は入手可能である。
【0183】
洗浄プロトコール
洗浄プロトコールA
反応媒体を等量の脱イオン水に代えて、1時間循環させた。すすぎの手順を1回繰り返した。最後に、物質を、反応容器から取り出す前に、等量のエタノール水溶液(2:1 - H2O:EtOH)で処理した。
【0184】
洗浄プロトコールB
反応媒体を等量の脱イオン水に代えて、1時間循環させた。この時間の後、洗浄媒体を0.01MのHClに代え、1時間循環させ、その時点で0.001MのHClに代え、1時間循環させた。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物に代え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0185】
洗浄プロトコールC
反応媒体を等量の温(60℃)脱イオン水:アセトンの1:1混合物に代え、30分循環させた。洗浄の手順を2回繰り返した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物に代え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0186】
洗浄プロトコールD
2リットルの超純水をナノファイバー物質の中にポンプで通した。
【0187】
洗浄プロトコールE
反応媒体を等量の1:1の脱イオン水:EtOHに代えて、1時間循環させた。洗浄の手順を2回繰り返した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物に代え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物に代え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0188】
洗浄プロトコールF
反応媒体を超高純度脱イオン水に代えた。ナノファイバー物質を清浄水中で30分間穏やかに撹拌した。この時間の後、洗浄媒体を取り替え、洗浄サイクルを繰り返した。
【0189】
洗浄プロトコールG
反応媒体を流出させ、流出液のpHが中性又は僅かに酸性になるまで、ビーカーに水を補給した。
【0190】
洗浄プロトコールH(ハロヒドリンナノファイバー)
反応媒体を等量の脱イオン水:アセトンの1:1混合物に代え、1時間循環させた。この時間の後、洗浄溶液を新たなものに代え、激しく撹拌しながら、ファイバーを更に1時間洗浄した。脱イオン水で更に1時間最終洗浄する前に、この方法を更に3回繰り返した。次いで、誘導体化されたハロヒドリンナノファイバーを反応容器から取り出し、次の工程に使用するために用意した。
【0191】
I 物質の調製
調製例1
29,000g/molの相対分子量を有する酢酸セルロースの溶液を、電界紡糸して300~600nmの範囲の直径を有するファイバーを生成する前に、一般的な溶媒に溶解した。ナノファイバー生成の最適化条件は、例えば、O Hardickら、J.Mater. Sci. 46 (2011) 3890頁に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ほぼ20g/m2の物質のシートを層にして、加熱及び圧力組み合せ処理に付した。
【0192】
(実施例1)
グリシドール/塩化トリメチルアンモニウム官能化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化24】
【0193】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化25】
【0194】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0195】
【0196】
(i)の物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。様々な量のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0197】
工程(iii): 塩化グリシジルトリメチルアンモニウム誘導体化
【化27】
【0198】
工程(ii)で得た物質を、典型的には1Lの0.5M NaOHに懸濁した。塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(25mL、50mL、60mL、100mL及び200mL)を一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で更に16時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールCに従って洗浄した。塩化トリメチルアンモニウム含有量を、以下の方法によって決定した。50mgの物質をBuchnerフィルター漏斗において100mLの0.1M HCl溶液で洗浄し、次いで更なる100mLの0.01M HCl溶液で洗浄した。次いで、小片に裂き、50mLの遠心分離管に入れる前に、物質を75℃の乾燥オーブンに入れて、恒量に乾燥した。次いで、小型磁気撹拌バー及び15mLの脱イオン水を、およそ1mLのクロム酸カリウム溶液(ティートピペットで添加)と共に加え、混合物を黄色にした。0.1Mの硝酸銀で滴定する前に、混合物を20分間激しく撹拌した。滴定のエンドポイントは、色が透明な黄色から曇った褐色に変化することによって確認される。塩化トリメチルアンモニウムの含有量(μmol/g)を、エンドポイントに達するまで添加された硝酸銀のマイクロモル数/滴定に使用されたナノファイバー物質のグラム数、によって計算した。
【0199】
(実施例2)
グリシドール/S官能化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化28】
【0200】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化29】
【0201】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lに懸濁した。反応混合物を室温で48時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0202】
【0203】
(i)の物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。様々な量のグリシドール(15mL、30mL、120mL、180mL)を注意深く一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0204】
工程(iii): 1,4-ブタンスルホン誘導体化
【化31】
【0205】
150mlの1M NaOH(水溶液)から構成される反応媒体を53℃まで加熱した。これに、工程(ii)で得たグリシドール官能化物質を、1,4-ブタンスルホン(6ml、53℃、58.6mmol)と共に懸濁した。反応媒体を60℃で15分間、30分間及び60分間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。物質のスルホン酸(S)含有量(μmol/g)を滴定によって計算した。(iii)の乾燥物質を0.1MのHCl及び0.01MのHClで洗浄した。次いで物質をオーブンで乾燥し、計量した。洗浄した後、物質のモル濃度を、pH7に達するように添加されたNaOHの量から決定する。
【0206】
(実施例3)
グリシドール/カルボキシメチル(CM)官能化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化32】
【0207】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化33】
【0208】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0209】
【0210】
(i)の物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。様々な量のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0211】
工程(iii): カルボキシメチル(CM)誘導体化
【化35】
【0212】
(ii)の物質を水(66mL)に62℃で懸濁した。水(27.5mL)中のクロロ酢酸ナトリウム(12.8g)の溶液を新たに調製した。水(27.5mL)中のKOH(6.2g)の溶液も新たに調製した。両方の溶液を、温度を62℃に保持しながら13.75mL/時間の速度で反応に加えた。反応を62℃で合計4時間激しく撹拌した。62℃で4時間後、反応媒体を取り出し、ナノファイバー物質を、流出液のpHが中性になるまで、連続水流下で洗浄した。次いで、ビーカーを、一定したpHの2~3が達成されるまで、0.01Mの塩酸水溶液中で撹拌した。
【0213】
参照例1 - ATRP官能化によりジメチルアミノ誘導体化ナノファイバー物質をもたらす
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化36】
【0214】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化37】
【0215】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0216】
工程(ii): ジビニルスルホン誘導体化
【化38】
【0217】
工程(i)で得た物質を、K2CO3(24.4g、275mLのH2O中176.54mmolのK2CO3)及びアセトニトリル(75mL)の溶液に懸濁した。ジビニルスルホン(50mL、498.1mmol)を2.5時間かけて滴加する前に、混合物を15分間撹拌した。ジビニルスルホンの添加が完了すると、反応を更に1.5時間撹拌した。この時間の後、ナノファイバー物質を洗浄プロトコールCに従って洗浄した。
【0218】
【0219】
工程(ii)で得た物質を、エチレンジアミン(125mL、1870mmol)又は2-メルカプトメチルアミン塩酸塩(37.5g、167mmol)のいずれかを含有した375mLのH2Oに懸濁した。混合物を室温で一晩撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0220】
工程(iv): α-ブロモイソブチリルブロミド誘導体化
【化40】
【0221】
工程(iii)で得た乾燥物質を遠心分離管に入れ、2mLのアセトニトリル及び0.4mL(3.24mmol)のα-ブロモイソブチリルブロミドを加えた。管を水平振とう器により室温で5分間穏やかに撹拌し、その時点でトリエチルアミン(0.4ml、2.86mmol)を滴加した。反応混合物を1時間撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0222】
【0223】
典型的には、工程(iv)で得た誘導体化されたナノファイバー物質を反応容器に入れ、それに、2.5mLの飽和アスコルビン酸、0.33mlの触媒溶液A及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(1.66mL、9.2mmol)を加えた。反応混合物を水平振とう器により室温で4時間穏やかに撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0224】
触媒溶液A
10mLのH2O及び0.45mL(1.650mmol)の1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミンに溶解したCuBr2(0.3g、1.343mm)
【0225】
(実施例4)
グリシドールグラフト化、アルデヒド官能化、プロテインA結合物質
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化42】
【0226】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化43】
【0227】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0228】
【0229】
(i)の物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。180mLのグリシドールを注意深く一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0230】
工程(iii): 酸化してアルデヒドにする
【化45】
【0231】
(ii)の物質を、pH5.5に修飾された17.5Lの0.05M NaOAc緩衝液に懸濁した。NaIO4(200g、0.94モル、2Lの反応媒体に溶解)を添加する前に、反応媒体を30分間循環させた。反応媒体を更に30分間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールCに従って洗浄して、アルデヒド官能化物質をもたらした。
【0232】
工程(iv): プロテインAのカップリング
工程(iii)の物質を6ウエルプレートに加えた。各ウエルに、2mLのプロテインA溶液(rSPA、脱イオン水中50mg/mlのプロテインA)を加えた。プレートを水平振とう器により1時間穏やかに撹拌した。この時間の後、上澄み液を取り除き、還元緩衝溶液A(ウエル毎に2.5mL、0.0603gのNa2CO3(0.569mmol)及び0.337gのNaHCO3(4.012mmol)を100mLの脱イオン水に添加して調製された10mLの炭酸塩緩衝液に、0.0762gのNaCNBH3を添加して調製した)に代え、更に15分間撹拌した。この時間の後、プロテインA結合物質をプロトコールDに従って洗浄した。
【0233】
(実施例5)
グリシドールグラフト化、DVS官能化、プロテインA結合物質
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化46】
【0234】
工程(i):酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化47】
【0235】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0236】
【0237】
(i)の物質を1Lの1M NaOHに懸濁した。180mLのグリシドールを一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0238】
工程(iii): ジビニルスルホン誘導体化
【化49】
【0239】
(ii)の物質を、K2CO3(48.8g、0.35モル)が溶解されている550mLのH2O、及び150mLのアセトニトリルから構成された溶液に懸濁した。ジビニルスルホン(100ml、0.86モル)を滴加する前に、反応媒体を更に15分循環させ、添加後に反応媒体を更に1.5時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールCに従って洗浄した。
【0240】
工程(iv): プロテインAのカップリング
【化50】
【0241】
工程(iii)の物質を70mlのプロテインA溶液(50mg/mLのプロテインA懸濁液に、668mg(Na2CO3)、並びに58mgのNaHCO3及びNaOHを添加して、pH11.1にしたもの)に懸濁した。溶液を16時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールDに従って洗浄した。
【0242】
参照例2 - ATRPグラフト化、プロテインA結合物質
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化51】
【0243】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化52】
【0244】
酢酸セルロースシート(5*65cm*100mm)を、H2O:EtOHの2:1中17.5Lの0.075M NaOHに懸濁した。反応媒体を室温で48時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0245】
【0246】
(i)の乾燥物質を、α-ブロモイソブチリルブロミド(6.24mL、50.4mmol)が溶解された240mLのテトラヒドロフラン(THF)に懸濁した。反応混合物を0℃に冷却し、次いでトリエチルアミン(7.2mL、51.6mmol)を滴加した。混合物を、室温に温める前に、0℃で2時間撹拌した。混合物を室温で更に16時間撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0247】
【0248】
容器に、5mLのアセトン、5mLの飽和アスコルビン酸、CuBr2(30mg、0.134mmol)及び1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(45μL、0.165mmol)を投入した。(ii)の物質を、ジビニルスルホン(2.5mL、24.9mmol)と共に反応混合物に懸濁した。反応混合物を水平振とう器の使用により室温で1時間穏やかに撹拌した。この時間の後、ナノファイバー物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0249】
【0250】
工程(iii)の物質の26mmディスクを6ウエルプレートに入れた。各ディスクに、1mLのプロテインA溶液(50mg/mLの上記に定義された溶液)を、1mLの炭酸塩緩衝溶液(上記に定義されたもの)と共に加えた。ディスクを16時間穏やかに撹拌した。この時間の後、ディスクを洗浄プロトコールDに従って洗浄した。
【0251】
参照例3 - 塩化トリメチルアンモウム官能化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【0252】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化56】
【0253】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0254】
工程(ii): 塩化グリシジルトリメチルアンモニウム誘導体化
【化57】
【0255】
工程(i)で得た物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(25mL、50mL、100mL)を一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で更に16時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0256】
塩化トリメチルアンモニウム含有量を、以下の方法によって決定した。50mgの物質をBuchnerフィルター漏斗において100mLの0.1M HCl溶液で洗浄し、次いで更なる100mLの0.01M HCl溶液で洗浄した。次いで、小片に裂き、50mLの遠心分離管に入れる前に、物質を75℃の乾燥オーブンに入れて、恒量に乾燥した。次いで、小型磁気撹拌バー及び15mLの脱イオン水を、およそ1mLのクロム酸カリウム溶液(ティートピペットで添加)と共に加え、混合物を黄色にした。0.1Mの硝酸銀で滴定する前に、混合物を20分間激しく撹拌した。滴定のエンドポイントは、色が透明な黄色から曇った褐色に変化することによって確認される。塩化トリメチルアンモニウムの含有量(μmol/g)を、エンドポイントに達するまで添加された硝酸銀のマイクロモル数/滴定に使用されたナノファイバー物質のグラム数、によって計算した。
【0257】
参照例4 - グリシドールグラフティング
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化58】
【0258】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.44*32mm*150mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0259】
【0260】
(i)の物質を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。様々な量のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く一度に添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールGに従って洗浄した。
【0261】
(実施例6)
グリシドールグラフト化、DVS官能化、プロテインA結合物質の代替的プロトコール
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化60】
【0262】
工程(i): グリシドール重合及び鹸化
CAナノファイバー物質のグリシドール重合及び鹸化は、CAナノファイバー物質(0.11×80×50mm)を1Lの脱イオン水に入れ、懸濁させることによって実施した。更なる1Lの脱イオン水に新たに代える前に、溶媒を3時間循環させた。この方法を4回繰り返した後、ナノファイバー物質を350mlの1M KOHに懸濁した。25%のグリシドールを一度に添加し、残りを90分間かけて滴加する変動量のグリシドール(100ml)の注意深い添加の前に、反応媒体を60分間循環させた。反応媒体を室温で4時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0263】
工程(ii): ジビニルスルホン誘導体化
【化61】
【0264】
(i)の物質を、K2CO3(48.8g、0.35モル)が溶解されている550mLのH2O、及び150mLのアセトニトリルから構成された溶液に懸濁した。ジビニルスルホン(100ml、0.86モル)を滴加する前に、反応媒体を更に15分循環させ、添加後に反応媒体を更に1.5時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールCに従って洗浄した。
【0265】
工程(iii): プロテインAのカップリング:
【化62】
【0266】
工程(ii)の物質を70mlのプロテインA溶液(50mg/mLのプロテインA懸濁液に、668mg(Na2CO3)、並びに58mgのNaHCO3及びNaOHを添加して、pH11.1にしたもの)に懸濁した。溶液を16時間循環させた。次いで物質を洗浄プロトコールDに従って洗浄した。
【0267】
(実施例7)
ハロヒドリン形成及び誘導体化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化63】
【0268】
工程(i): 酢酸セルロース(CA)を鹸化して、再生セルロース(RC)にする
【化64】
【0269】
調製例1の方法によって得た酢酸セルロースシート(0.11×80×50mm)を、水:エタノール2:1中0.075M水酸化ナトリウム溶液の5Lを含有する大型ビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次いで物質を洗浄プロトコールAに従って洗浄した。
【0270】
【0271】
(i)の物質を350mLの1M KOHに懸濁した。25%のグリシドールを一度に添加し、残りを90分間かけて滴加する変動量のグリシドール(60mL)の注意深い添加の前に、反応媒体を60分間循環させた。反応媒体を室温で4時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0272】
工程(iii):アリルグリシジルエーテル誘導体化
【化66】
【0273】
(ii)の物質を1Lの1M KOHに懸濁した。最初に25%のアリルグリシジルエーテルを一度に添加し、続いて残りを90分間かけて滴加することにより、様々な量のアリルグリシジルエーテル(20、30、40、50、60、70、80、90、100ml)を加えた。反応を室温で4時間撹拌したまま維持した。この時間の後に、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0274】
【0275】
(iii)の物質を、25gのN-ブロモスクシンイミドが溶解した1LのH2O:MeCN 3:1に懸濁した。反応媒体を、物質の中を通して4時間循環させた。この時間の後、反応媒体を取り出し、残りの物質を洗浄プロトコールHに従って洗浄した。
【0276】
【0277】
工程(iv)の物質の単一ストリップをポリエチレンパウチに入れた。次いで、このパウチに、25mlのプロテインA溶液(50mg/mLのプロテインA懸濁液に、668mgのNa2CO3、並びに58mgのNaHCO3及びNaOHを添加して、pH11.1にしたもの)を入れた。パウチを封止し、得られた混合物を水平振とう器により16時間ゆっくり撹拌した。この時間の後、誘導体化された物質をパウチから取り出し、洗浄プロトコールHに従って洗浄した。
【0278】
(実施例8)
代替的ハロヒドリン形成及び誘導体化
ナノファイバー物質を、下記に概説されているスキームに従って誘導体化した。
【化69】
【0279】
工程(i): グリシドール重合及び鹸化
CAナノファイバー物質のグリシドール重合及び鹸化は、CAナノファイバー物質(6×120mm×90mm)を1Lの脱イオン水に入れ、懸濁させることによって実施した。更なる1Lの脱イオン水に新たに代える前に、溶媒を3時間循環させた。この方法を4回繰り返した後、ナノファイバー物質を350mLの1M KOHに懸濁した。25%のグリシドールを一度に添加し、残りを90分間かけて滴加する100mLのグリシドールの注意深い添加の前に、反応媒体を5分間循環させた。反応媒体を室温で4時間循環させ、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0280】
工程(ii): アリルグリシジルエーテル誘導体化
【化70】
【0281】
(i)の物質を350Lの1M KOHに懸濁した。最初に25%のアリルグリシジルエーテルを一度に添加し、続いて残りを90分間かけて滴加することにより、様々な量のアリルグリシジルエーテル(20、30、40、50、60、70、80、90、100ml)を加えた。反応を室温で6時間撹拌したまま維持した。この時間の後に、続いて物質を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。より低い量のアリルグリシジルエーテルの使用は、特に有益な流れ特徴を有する物質を生成した。より高い量のアリルグリシジルエーテルの使用は、より高い結合容量を有する物質を生成した。
【0282】
【0283】
(ii)の物質を、25gのN-ブロモスクシンイミドが溶解した1LのH2O:MeCN 3:1に懸濁した。反応媒体、物質の中を通して4時間循環させた。この時間の後、反応媒体を取り出し、残りの物質を洗浄プロトコールHに従って洗浄した。
【0284】
【0285】
工程(iii)の物質の単一ストリップをポリエチレンパウチに入れた。次いで、このパウチに、25mLのプロテインA溶液(50mg/mLのプロテインA懸濁液に、668mgのNa2CO3、並びに58mgのNaHCO3及び1MNaOHを添加して、pH11.1にしたもの)を入れた。パウチを封止し、得られた混合物を水平振とう器により16時間ゆっくり撹拌した。この時間の後、誘導体化された物質をパウチから取り出し、洗浄プロトコールHに従って洗浄した。
【0286】
II 分析方法
(実施例9)
動的結合容量の決定
装填物質を、AKTA Pureシステム(GE Healthcare)のホルダー内に含有された、選択された官能化ナノファイバーディスクに通過させた。ホルダー流出後の濃度が、UVフローセルにより決定して装填物質の10%を超えるまで、1分当たりの確定膜体積(mV/分)の流量下で物質を装填した。システム及びホルダー装置には死容積があるので、10%ブレイクスルーでディスクに装填されたタンパク質の総量は、Unicornソフトウエア(GE Healthcare)によるクロマトグラムの分析によって決定した。陰イオン交換物質では、装填物質は、10mMのTris、pH8中の1mg/mLのBSAであった。陽イオン交換物質では、装填物質は、mMの酢酸ナトリウム、pH4.7中の1mg/mLのリゾチームであった。
【0287】
(実施例10)
流れに対する抵抗性の決定
選択された官能化ナノファイバー物質全体に及ぶ圧力低下(ΔP)は、AKTA Pureシステム(GH Healthcare)を使用して決定した。10mMのTris(pH8)の緩衝液を、ホルダー内に含有された官能化ナノファイバーディスクに通過させた。0.5MPaに等しいデルタカラム圧力(ΔP)の流量を記録した。
【0288】
III 特定の物質の分析及び比較
(実施例11)
本発明の別個のグラフティング工程を加えることによる電荷密度とトリメチルアンモニウム官能化との関係性
物質を参照例3に従って作製及び試験し、トリメチルアンモニウム官能性を生じて、物質が陰イオン交換体として稼働できるようにした。これらを、実施例1に従って生成及びアッセイした本発明のグラフト化物質と比較した。トリメチルアンモニウム官能化物質から得た電荷密度を
図4に示す。
図4の各データポイントの平均値が
図5にプロットされている。一定量の官能化試薬GMACが使用されるとき、グラフト量の増加は、電荷密度に有意に影響を与えないことが
図4及び
図5から明らかである。
【0289】
参照例5 - 電荷密度とトリメチルアンモニウム官能化の関係性
物質を参照例3に従って作製及び試験し、トリメチルアンモニウム官能性を生じて、物質が陰イオン交換体として稼働できるようにした。結果を
図2に示す。官能化剤(塩化グリシジルトリメチルアンモニウム)の量を増加すると、グラフティング工程がない場合では電荷密度を増加することが
図2から分かる。
【0290】
(実施例12)
本発明の別個のグラフティング工程を加えることによる動的結合容量(DBC)とトリメチルアンモニウム官能化との関係性
実施例11でアッセイした同じ物質の動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。実施例1に従って作製された本発明の物質のDBCプロットを
図6に示す。これらの物質のDBCを、本発明の2工程グラフティング方法を受けなかったもの(即ち、参照例3の物質)と
図7において比較する。本発明により生成されたグラフト化物質の結合容量は、グラフティングを使用しなかったものより4倍を超えて大きいことが分かる。非グラフト化物質の参照例6(下記)に見られるものと逆に、電荷密度が一定であるグラフト化物質では、グラフト量の増加は物質の結合容量の増加を生じることが明らかである。
【0291】
参照例6 - 塩化トリメチルアンモニウム物質における電荷密度と動的結合容量(DBC)との関係性
物質を参照例3に従って作製及び試験し、トリメチルアンモニウム官能性を生じて、物質が陰イオン交換体として稼働できるようにした。これらの物質の動的結合容量は、実施例9に従って決定した。結果を
図3に示す。当業者には予測されるように、官能化剤の塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの量を増加すると、グラフティング工程がない場合では結合容量を増加することが
図3から分かる。
【0292】
(実施例13)
本発明の別個のグラフティング工程を加えることによる電荷密度とスルホン酸(S)官能化との関係性
本発明の物質にS官能性を与えて、物質が陽イオン交換物質として作用することを可能にし、実施例2に従ってアッセイした。この物質のスルホン酸含有量は、実施例2に記載されたとおりに決定した。結果を
図8に示す。物質の電荷密度により大きな影響を与えたのは、官能化工程ではなくグラフティング工程であることを観察することができる。
【0293】
(実施例14)
本発明の別個のグラフティング工程を加えることによる動的結合容量(DBC)とスルホン酸(S)官能化との関係性
実施例2に従って作製された物質の動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。結果を
図9に示す。実施例13に見られるように、グラフティング工程と官能化工程との間に相互依存性があることも
図9から分かる。本発明により作り出されたこれらの物質は、160膜体積(mV)/分の流量で47~207mg/mLの結合容量を生じる。
【0294】
(実施例15)
本発明の別個のグラフティング工程を加えることによる動的結合容量(DBC)とカルボキシメチル(CM)官能化との関係性
本発明の物質にカルボキシメチル(CM)官能性を与えて、物質が陽イオン交換物質として作用することを可能にし、実施例3に従ってアッセイした。本発明に関連するこれらの物質の動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。結果を
図10に示す。本発明により作製された物質は、160mV/分の流量で20~149mg/mLの結合容量を達成できることが
図10から分かる。
【0295】
参照例7 - ATRPグラフティングを使用したジメチルアミノ誘導体化物質の結合容量
本発明による物質にジメチルアミノ官能性を与えて、物質が参照例1の陰イオン交換膜として作用することを可能にした。本発明のこれらの物質の動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。
【0296】
(実施例16)
一定の電荷密度でのポリマーグラフティングの程度と流れに対する抵抗性との関係性
実施例11でアッセイした同じ物質の流れに対する抵抗性を、実施例10の方法を使用して決定した。このアッセイの結果を
図11に示す。これは、電荷官能化物質でのポリマーグラフティングの程度と流れに対する抵抗性との明らかな関係性を示している。電荷密度と流れに対する抵抗性との間の明らかな関係性も分かる。
【0297】
参照例8 - グラフティング後のOH密度の決定
参照例4により生成された物質の試料を取り出し、多量の水により(Buchner漏斗を使用して)洗浄し、次いで恒量に乾燥した。次いで試料を計量し、細断して、50mLの遠心分離管に入れた。管に、正確に10mLのp-トルエンスルホニルイソシアネート(500mLのアセトニトリル中20mLのp-トルエンスルホニルイソシアネート)を加えた。小型撹拌バーを遠心分離管に加え、次いで封止し、60℃の水浴に入れ、60分間撹拌した。この時間の後、試料を20mlのH2Oで希釈し、更に10分間撹拌した。次いで、40mLのイソプロパノールを加え、自動滴定装置(CA OH滴定法を使用する)により0.481MのBu4NOHを使用して滴定する前に、試料を更に10分間撹拌した。2つの屈曲点が滴定曲線に観察される。第1点は、およそpH5.5で生じ(VEP1)、第2点はおよそpH9.5で生じている(VEP2)。試料に存在する遊離OHの量を、このように計算した。
OHV=((VEP2-VEP1*f*c(TBAH)*MA))/ms
OHV:試料のヒドロキシ値(KOH/g試料)
VEP1:第1当量点までの滴定剤の消費量(mL)
VEP2:第2当量点までの滴定剤の消費量(mL)
C(TBOAH):塩化テトラブチルアンモニウムの濃度(mol/L)
F:無単位の補正率(滴定量)
Ma:KOHの分子量、ここでは56.11g/mol
Ms:試料のサイズ(g)
【0298】
参照例5により生成された物質の分析は、この特定の基材及びグラフティング方法では、グリシドール試薬の量を変えることによって、6000μmol/g以上の-OH基密度を有する材料をもたらすことを示している。これを
図13に示す。
【0299】
参照例9 - 非荷電物質における流れに対する抵抗性へのポリマーグラフティング増加の効果
物質を、参照例4に従って異なる量のグリシドールにより処理し、各物質(及び非グラフト化RC物質)の流れに対する抵抗性を、実施例10に記載されたアッセイを使用して測定した。結果を
図12に示す。異なる程度のグラフティングを有する非荷電物質では、流れに対する圧力低下に識別可能な増加がないことが
図12から分かる。したがって、グラフティングの程度が増加した物質では、識別可能な孔の目詰まりがないと結論づけることができる。物質が荷電基で官能化されると、グラフティング量と流れに対する抵抗性との関係性が見られることが明確に観察され、実施例16(上記)及び
図11に報告されている。
【0300】
(実施例17)
本発明の物質の生産性
本発明の多数の物質の容量(DBC)及び生産性の値を決定した。得られた結果をTable 1(表1)に記載する。
【0301】
【0302】
(実施例18)
キャピラリーフロー分析による孔径測定
使用した機器は、POROLUX(商標)100ポロメーター(IB-FT GmbH社、Berlin、Germany)であり、方法をTable 2(表2)に提示した。測定原理についての更なる詳細は、製造会社のウエブサイトhttp://www.ib-ft.com/measurement_principle.htmlにおいて見出すことができる。測定によって得た3つの孔径は、最小孔径、平均流孔(MFP)及び泡立ち点孔径(最大孔径)である。
【0303】
【0304】
キャピラリーフローポロメトリーによる結果、並びにSEM画像による平均ナノファイバー直径の想定値をTable 3(表3)に示す。SEM画像及び画像分析ソフトウエアによるファイバー直径ヒストグラムを
図17~19に示す。グリシドールQ及びグリシドールDVSプロテインA試料におけるグラフト化ポリマーの存在は、繊維網目構造の全体構造に影響を与えないこと、即ち、グラフトコーティングはコンフォーマル性を有し、非常に薄いことが分かる。過剰に大量のグラフトポリマーが導入されると、ポリマー物質がナノファイバー間に形成されて、物質の流量性能に悪影響を与えることがある。
【0305】
【0306】
(実施例19)
流れに対する抵抗性への緩衝液伝導性の効果
DVS-プロテインA官能化ナノファイバー物質の膜差圧に対する緩衝液のpH及び伝導性の影響を、固定した0.4秒滞留時間で測定した又は0.2mLの膜に基づいて30mL/分の流量で測定した。20mMの酢酸塩緩衝液、pH5.0及び20mMのTris緩衝液、pH8.0に、0~1MのNaClを加えて、緩衝液伝導性の1.7~83mS/cm(22℃)を得て、異なる緩衝液を背圧の決定に使用して、結果を
図16に示す。結果はPEEKハウジングにおいて3つの異なる0.2mL膜床により3回行ったものであり、エラーバーがプロットされている。 20mMのTris、pH8.0、15.5mS/cmの緩衝液系を異なる日に試験しており、このことが僅かに上昇した膜差圧の原因でありうる。この僅かな偏差を除いて、背圧における有意な差は、異なる緩衝液で見られなかった。
【0307】
比較例1
様々な市販の多孔質ビーズ物質の結合容量、滞留時間及び伝導性の値を製造会社から得た。得られた結果をTable 4(表4)に記載する。
【0308】
【0309】
比較例2
滞留時間の関数としての動的結合容量を、A)Capto Q及びウシ血清アルブミン(BSA)、並びにB)Q Sepharose Fast Flow
9について決定した。得られた結果を
図1に表す。これは、2分未満の滞留時間がこれらの大規模多孔質ビーズカラムにおいて可能ではないことを示している。
12016年3月30日にアクセス:
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
210cmの床高さのTricon 5/100カラムにおける50mMのTris-HCl緩衝液、pH8.0中の滞留時間1分間、600cm/時間で測定した10%ブレイクスルーでの動的結合容量
32016年3月30日にアクセス:
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
410cmの床高さのTricon(商標)5/100カラムにおける30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.8中の滞留時間1分間、600cm/時間で測定した10%ブレイクスルーでの動的結合容量
52016年3月30日にアクセス:
http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciencesuk/products/AlternativeProductStructure_17372/17543801
620cmの床高さのカラムにおいて500cm/時間の移動相速度で前端分析により10%ブレイクスルーで決定した。
72016年3月30日にアクセス:
http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciencesuk/products/AlternativeProductStructure_17372/17547401
810cmの床高さのカラムにおいて100cm/時間の移動相速度で前端分析により10%ブレイクスルーで決定した。
92016年3月30日にアクセス:
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
【0310】
比較例3
様々な市販の膜及びモノリス物質の結合容量、滞留時間及び伝導性の値を製造会社のデータから決定した。得られた結果をTable 5(表5)に記載する。
【0311】
【0312】
本発明の更なる一般的態様
1.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させ、1つ以上の荷電基をグラフト化生成物に導入することによって、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法。
2.工程(ii)で導入されたポリマーの量がグラフト化生成物の500~60,000μmol/gである、態様1に記載の方法。
3.工程(iii)の生成物の電荷密度がクロマトグラフィー媒体の100~2,000μmol/gである、態様1又は2に記載の方法。
4.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下が、液相が0.05~10mmの厚さの媒体を1分当たり1~640膜体積の流量で通過するとき、2MPa未満である、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
5.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75,000mg/mL/分である、態様1から4のいずれか一項に記載の方法。
6.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/mL/分を超える、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
7.グラフティング工程(ii)が、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
8.基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることが、任意選択で1種以上の触媒の存在下、基材に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
9.基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の官能基の数/密度を増加させる、態様8に記載の方法。
10.官能基が、ヒドロキシル、アミノ又はカルボン酸基である、態様8又は9に記載の方法。
11.1つ以上のポリマー鎖を成長させることが、任意選択で1種以上の触媒の存在下、基材に存在する1つ以上の官能基から複数のモノマーを重合させることを含む、態様8から10のいずれか一項に記載の方法。
12.1つ以上のポリマー鎖が分岐鎖状である、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
13.ポリマー鎖を成長させることが、基材に存在する1つ以上の官能基からグリシドールを重合させることを含む、態様8から12のいずれか一項に記載の方法。
14.1つ以上のポリマー鎖が1つ以上のポリグリセロール鎖である、態様8から13のいずれか一項に記載の方法。
15.工程(ii)が、下記式:
【化73】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む、態様8から14のいずれか一項に記載の方法。
16.工程(iii)において、得られた官能化クロマトグラフィー媒体が陰イオン交換クロマトグラフィー法における使用に適するように、試薬がグラフト化生成物を官能化する、態様8から15のいずれか一項に記載の方法。
17. - クロマトグラフィー法が陽イオン交換法であり、試薬が、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート又はホスホネート部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、試薬が、1つ以上の第四級アミノ又はジエチルアミン部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
態様16に記載の方法。
18.基材が膜の形態である、態様1から17のいずれか一項に記載の方法。
19.ポリマーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様1から18のいずれか一項に記載の方法。
20.ナノファイバーが10nm~1000nmの平均直径を有する、態様1から19のいずれか一項に記載の方法。
21.方法が、
(i)1本以上のセルロースナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から、1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖を、下記式:
【化74】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をイオン交換クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む、態様1から20のいずれか一項に記載の方法。
22.態様1から21のいずれか1項記載の方法により得られる、官能化クロマトグラフィー媒体。
23.クロマトグラフィーカートリッジを調製する方法であって、態様1から21のいずれか一項に記載の方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む、方法。
24.(a)態様23の方法により得られる又は(b)態様22に記載の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
25.態様22に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様24に記載のクロマトグラフィーカートリッジの、クロマトグラフィーにおける使用。
26.移動相から1つ以上の生物学的分子を単離する方法であって、移動相における1つ以上の生物学的分子を、態様22に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様24に記載のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、方法。
27.移動相中の1つ以上の生物学的分子を官能化クロマトグラフィー媒体と1分以下の時間にわたって接触させる、態様26に記載の方法。
28.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む方法。
29.工程(ii)で導入されたポリマーの量がグラフト化生成物の500~60,000μmol/gである、態様28に記載の方法。
30.グラフト化生成物を試薬と接触させると、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入し、このことによって、1つ以上のリガンド基を含む官能化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、態様28又は29に記載の方法。
31.工程(iii)の生成物における前記リガンドの密度が、クロマトグラフィー媒体の100~2,500μmol/gである、態様30に記載の方法。
32.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下が、液相が0.05~10mmの厚さの媒体を1分当たり1~640膜体積の流量で通過するとき、2MPa未満である、態様28から31のいずれか一項に記載の方法。
33.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75,000mg/mL/分である、態様28から32のいずれか一項に記載の方法。
34.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/mL/分を超える、態様28から33のいずれか一項に記載の方法。
35.グラフティング工程(ii)が、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、態様28から34のいずれか一項に記載の方法。
36.基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることが、任意選択で1種以上の触媒の存在下、基材に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む、態様28から35のいずれか一項に記載の方法。
37.基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の官能基の数/密度を増加させる、態様36に記載の方法。
38.官能基が、ヒドロキシル、アミノ又はカルボン酸基である、態様36又は37に記載の方法。
39.1つ以上のポリマー鎖を成長させることが、任意選択で1種以上の触媒の存在下、基材に存在する1つ以上の官能基から複数のモノマーを重合させることを含む、態様36から38のいずれか一項に記載の方法。
40.1つ以上のポリマー鎖が分岐鎖状である、態様36から39のいずれか一項に記載の方法。
41.ポリマー鎖を成長させることが、基材に存在する1つ以上の官能基からグリシドールを重合させることを含む、態様36から40のいずれか一項に記載の方法。
42.1つ以上のポリマー鎖が1つ以上のポリグリセロール鎖である、態様28から41のいずれか一項に記載の方法。
43.工程(ii)が、下記式:
【化75】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む、態様28から42のいずれか一項に記載の方法。
44.工程(iii)において、得られた官能化クロマトグラフィー媒体が、イオン交換、親和性捕捉、疎水性相互作用及び混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適するするように、試薬がグラフト化生成物を官能化する、態様28から43のいずれか一項に記載の方法
45. - クロマトグラフィー法が陽イオン交換法であり、試薬が、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート又はホスホネート部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
- クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、試薬が、1つ以上の第四級アミノ又はジエチルアミン部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法が親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはこれらのフラグメント、色素、ヒスチジン基又は金属陽イオン含有基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
- クロマトグラフィー法が疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、試薬が、1つ以上のプロピル、ブチル、フェニル又はオクチル基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法が混合モードクロマトグラフィー法であり、試薬が、1つ以上のMEP、オクチルアミン、N-ベンジルメチルエタノールアミン又はN-ベンゾイル-ホモシステイン基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
態様44に記載の方法。
46.工程(iii)において、試薬が、1つ以上のプロテインA分子でグラフト化生成物を官能化する、態様28から45のいずれか一項に記載の方法。
47.基材が膜の形態である、態様28から46のいずれか一項に記載の方法。
48.ポリマーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様28から47のいずれか一項に記載の方法。
49.ナノファイバーが10nm~1000nmの平均直径を有する、態様28から48のいずれか一項に記載の方法。
50.方法が、
(i)1本以上のセルロースナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から、1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖を、下記式:
【化76】
の複数の化合物及びそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物を、イオン交換、親和性捕捉、疎水性相互作用及び混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含む、態様28から49のいずれか一項に記載の方法。
51.態様28から50のいずれか一項に記載の方法により得られる、官能化クロマトグラフィー媒体。
52.クロマトグラフィーカートリッジを調製する方法であって、態様28から50のいずれか一項に記載の方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む、方法。
53.(a)態様52の方法により得られる又は(b)態様51に記載の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
54.態様51に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様53に記載のクロマトグラフィーカートリッジの、クロマトグラフィーにおける使用。
55.移動相から1つ以上の生物学的分子を単離する方法であって、移動相における1つ以上の生物学的分子を、態様51に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様53に記載のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、方法。
56.移動相中の1つ以上の生物学的分子を官能化クロマトグラフィー媒体と1分以下の時間にわたって接触させる、態様55に記載の方法。
57.1つ以上の生物学的分子が、プロテインAの結合に親和性を有する部位を提示するように改変された1つ以上のモノクローナル抗体又はタンパク質であり、官能化クロマトグラフィー媒体が、少なくとも1つのプロテインAリガンド基を担持する、態様55又は態様56に記載の方法。
58.方法の工程(iii)が、グラフト化生成物をアリルグリシジルエーテル及びハロヒドリン形成試薬と接触させることを含む、態様28から50のいずれか一項に記載の方法。
59.工程(iii)において、
(a)グラフト化生成物をアリルグリシジルエーテルと接触させ、
(b)工程(a)の生成物をハロヒドリン形成試薬で処理し、
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる、
態様28から50のいずれか一項に記載の方法。
60.工程(iii)が、グラフト化生成物を、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として一緒に官能化する複数の試薬と接触させることを含み、複数の試薬がハロヒドリン形成試薬を含む、態様28~50のいずれか一項に記載の方法。
61.グラフト化生成物を複数の試薬と順次させる、態様60に記載の方法。
62.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体を調製する方法であって、
(i)1本以上のポリマーナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化することと、
を含み、
工程(ii)が、下記式:
【化77】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマー:
【化78】
を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5が、同一であっても、異なっていてもよく、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つが水素ではないことが条件である、
方法。
63.工程(ii)が、下記式:
【化79】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を、ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む、
態様62に記載の方法。
64.ポリマーナノファイバーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー、好ましくは、セルロース、酢酸セルロース及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、態様62又は63に記載の方法。
65.工程(ii)で導入されたポリマーの量がグラフト化生成物の500~60,000μmol/gである、態様62から64のいずれか一項に記載の方法。
66.グラフト化生成物を試薬と接触させ工程が、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入し、このことによって、1つ以上のリガンド基を含む官能化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、態様62から65に記載の方法。
67.工程(iii)の生成物における前記リガンドの密度が、クロマトグラフィー媒体の100~2,500μmol/gである、態様66に記載の方法。
68.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の全体に及ぶ圧力低下が、液相が0.05~10mmの厚さの媒体を1分当たり1~640膜体積の流量で通過するとき、2MPa未満である、態様62から67のいずれか一項に記載の方法。
69.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75,000mg/mL/分である、態様62から68のいずれか一項に記載の方法。
70.官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/mL/分を超える、態様62から69のいずれか一項に記載の方法。
71.グラフティング工程(ii)が、官能化ポリマークロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、態様62から70のいずれか一項に記載の方法。
72.基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材を工程(i)と(ii)の間に処理して、基材の官能基の数/密度を増加させる、態様62から71のいずれか一項に記載の方法。
73.グラフティング工程(ii)が、同じ工程において、追加的に、1つ以上の官能基を導入する、又は基材の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基材の官能基の数/密度を増加させる条件下で実施される、態様62から71のいずれか一項に記載の方法。
74.グラフティング工程(ii)が、アルカリ水溶液の存在下、好ましくは、水中又は水:エタノール中の、好ましくは水中のNaOH又はKOHの存在下で実施される、態様73に記載の方法。
75.ナノファイバー基材に存在する1つ以上の官能基が、ヒドロキシル基を含む、態様62から74のいずれか一項に記載の方法。
76.官能化工程(iii)において、官能化試薬が、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIO
4その後にプロテインA、ジビニルスルホンその後にプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずハロヒドリン形成試薬、好ましくはN-ブロモスクシンイミド、続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルその後に先ずエポキシド形成試薬、続いてプロテインA、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、態様62から75のいずれか一項に記載の方法。
77.1つ以上のポリマー鎖が分岐鎖状である、態様71から76のいずれか一項に記載の方法。
78.工程(iii)において、得られた官能化クロマトグラフィー媒体が、イオン交換、親和性捕捉、疎水性相互作用及び混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適するように、試薬がグラフト化生成物を官能化する、態様62から77のいずれか一項に記載の方法
79. - クロマトグラフィー法が陽イオン交換法であり、試薬が、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート又はホスホネート部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
- クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、試薬が、1つ以上の第四級アミノ又はジエチルアミン部分を含む1つ以上の荷電基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
- クロマトグラフィー法が親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、試薬が、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはこれらのフラグメント、色素、ヒスチジン基又は金属陽イオン含有基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
- クロマトグラフィー法が疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、試薬が、1つ以上のプロピル、ブチル、フェニル又はオクチル基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、或いは
- クロマトグラフィー法が混合モードクロマトグラフィー法であり、試薬が、1つ以上のMEP、オクチルアミン、N-ベンジルメチルエタノールアミン又はN-ベンゾイル-ホモシステイン基でクロマトグラフィー媒体を官能化する、
態様78に記載の方法。
80.工程(iii)において、試薬が、1つ以上のプロテインA分子でグラフト化生成物を官能化する、態様62から79のいずれか一項に記載の方法。
81.工程(iii)が、工程(ii)の生成物をクロマトグラフィー媒体として一緒に官能化する多重工程を伴う、態様62から80のいずれか一項に記載の方法。
82.工程(iii)において、
(a)グラフト化生成物を、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びこれらの組み合わせから選択される群から選択される試薬と接触させ、
(b)工程(a)の生成物を任意選択でハロヒドリン形成試薬により処理し、
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる、
態様81に記載の方法。
83.基材が膜の形態である、態様62から82のいずれか一項に記載の方法。
84.ナノファイバーが10nm~1000nmの平均直径を有する、態様62から83のいずれか一項に記載の方法。
85.方法が、
(i)1本以上のセルロースナノファイバーから形成された基材を準備することと、
(ii)基材から、1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖を、下記式:
【化80】
の複数の化合物及び/若しくはそれらの鏡像異性体、並びに/又は式(I)の誘導体及び/若しくはそれらの鏡像異性体及び/若しくはジアステレオマー:
【化81】
を、基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることと、
(iii)グラフト化生成物を試薬と接触させて、工程(ii)の生成物を、イオン交換、親和性捕捉、疎水性相互作用及び混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として官能化することと、を含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5が、同一であっても、異なっていてもよく、H、ハロ、C
1~C
4アルキル又はC
1~C
4アルコキシから選択され、但し、R
1、R
2、R
3、R
4又はR
5のうちの少なくとも1つが、水素ではないことが条件である、
態様62から84のいずれか一項に記載の方法。
86.工程(ii)が、基材から1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖を、下記式:
【化82】
の複数の化合物及び/又はそれらの鏡像異性体を基材に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、グラフティングすることを含む、態様85に記載の方法。
87.態様62から86のいずれか一項に記載の方法により得られる、官能化クロマトグラフィー媒体。
88.クロマトグラフィーカートリッジを調製する方法であって、態様62から86のいずれか一項に記載の方法を実施し、このようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む、方法。
89.(a)態様88の方法により得られる又は(b)態様87に記載の1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
90.態様87に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様89に記載のクロマトグラフィーカートリッジの、クロマトグラフィーにおける使用。
91.移動相から1つ以上の生物学的分子を単離する方法であって、移動相における1つ以上の生物学的分子を、態様87に記載の官能化クロマトグラフィー媒体又は態様89に記載のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、方法。
92.移動相中の1つ以上の生物学的分子を官能化クロマトグラフィー媒体と1分以下の時間にわたって接触させる、態様91に記載の方法。
93.1つ以上の生物学的分子が、プロテインAの結合に親和性を有する部位を提示するように改変された1つ以上のモノクローナル抗体又はタンパク質であり、官能化クロマトグラフィー媒体が、少なくとも1つのプロテインAリガンド基を担持する、態様91又は92に記載の方法。
【符号の説明】
【0313】
10 不織層
20 ポリマーナノファイバー
30 ナノファイバー-ナノファイバー融合点
110 クロマトグラフィーカートリッジ
120 官能化クロマトグラフィー媒体
130 第1の側面
140 入口
150 第1の分配器構造
160 第2の側面
170 出口
180 第2の分配器構造
190 ホルダー