(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】造形物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20230919BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20230919BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20230919BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230919BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230919BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/321
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2022083956
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2018152245の分割
【原出願日】2018-08-13
【審査請求日】2022-05-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215577(JP,A)
【文献】特開2018-103532(JP,A)
【文献】特開2018-065290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が着色された立体的な造形物であって、
有色の色で着色された領域である着色領域を備え、
前記着色領域の少なくとも一部は、着色の単位として予め設定されたカラーセルを複数個並べることで形成されており、
それぞれの前記カラーセルは、前記造形物の材料により形成されるドットを複数個含み、予め設定された所定の数の前記ドットにより構成され、
前記カラーセルの内部において光反射性の材料で形成される反射核と、
前記反射核の周囲を囲む部分であり、着色用の材料で形成される外周部と
を有し、
前記外周部における前記着色用の材料の少なくとも一部は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの色の材料であり、
前記着色領域の各部において一定の密度で前記カラーセルが並ぶことで、前記着色領域内で前記反射核が均一に分布していることを特徴とする造形物。
【請求項2】
前記カラーセルの内部において用いられている前記光反射性の材料は、白色のインクであることを特徴とする請求項1に記載の造形物。
【請求項3】
少なくとも一部が着色された立体的な造形物であって、
有色の色で着色された領域である着色領域を備え、
前記着色領域の少なくとも一部は、着色の単位として予め設定されたカラーセルを複数個並べることで形成されており、
それぞれの前記カラーセルは、前記造形物の材料により形成されるドットを複数個含み、予め設定された所定の数の前記ドットにより構成され、
前記カラーセルの内部において光反射性の材料で形成される反射核と、
前記反射核の周囲を囲む部分であり、着色用の材料で形成される外周部と
を有し、
前記着色領域の各部において一定の密度で前記カラーセルが並ぶことで、前記着色領域内で前記反射核が均一に分布しており、
前記カラーセルの外周部は、複数色の着色用の材料を混色させた色で形成されていることを特徴
とする造形物。
【請求項4】
前記反射核及び外周部の両方が光反射性の材料で形成されたカラーセルである光反射性のカラーセルにより構成される光反射領域を更に備え、
前記光反射領域における前記光反射性のカラーセルの大きさは、前記着色領域における前記カラーセルと同じ大きさであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の造形物。
【請求項5】
少なくとも一部が着色された立体的な造形物であって、
有色の色で着色された領域である着色領域を備え、
前記着色領域の少なくとも一部は、着色の単位として予め設定されたカラーセルを複数個並べることで形成されており、
それぞれの前記カラーセルは、前記造形物の材料により形成されるドットを複数個含み、予め設定された所定の数の前記ドットにより構成され、
前記カラーセルの内部において光反射性の材料で形成される反射核と、
前記反射核の周囲を囲む部分であり、着色用の材料で形成される外周部と
を有し、
前記着色領域の各部において一定の密度で前記カラーセルが並ぶことで、前記着色領域内で前記反射核が均一に分布しており、
前記着色領域は、前記カラーセルとして、
前記外周部が有色の前記着色用の材料で形成される有色の前記カラーセルである有色セルと、
前記外周部が無色で透明な色であるクリア色の前記着色用の材料で形成される前記カラーセルであるクリアセルと
を含むことを特徴
とする造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置、造形方法、及び造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【0003】
また、このような造形装置で造形物を造形する場合、例えば複数色のインクを用いて形成された着色領域を有する造形物を造形することで、着色がされた造形物を造形すること等も可能である。この場合、着色領域は、例えば、造形物の外部から色彩が視認できる部分(造形物の表面)に、減法混色で様々な色を表現することが可能な複数色のインクを用いて形成される。また、この場合、光反射性のインク(例えば、白色のインク)を用いて着色領域の内側に光反射領域を形成することで、造形物の外部から入射する光を反射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
造形物において、上記のような光反射領域及び着色領域を形成する場合、例えば白い紙等の上にカラーインクで印刷を行う場合等と同様に、様々な色を表現することができる。しかし、着色された造形物を造形する場合、造形物が立体的な形状を有する影響で、造形物の位置によって色の見え方に差が生じる場合がある。より具体的に、例えば、表面の少なくとも一部が平面状の造形物等を造形する場合において、平面状の部分の縁部付近の色がその他の部分よりも濃く視認されて、余計な輪郭が見えるような印象になる場合がある。そのため、従来、着色された造形物を造形する場合において、より適切に造形物を造形することが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形装置、造形方法、及び造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、着色された造形物を造形する場合に関し、位置によって色の見え方に差が出る原因等の検討を行った。そして、光反射領域の周囲に着色領域を形成する構成において、着色領域内を光が通過する距離に大きな差が生じることで、色の見え方に差が生じることを見出した。また、本願の発明者は、このような知見に基づいて鋭意研究を行い、所定の構成のカラーセルを単位にして着色領域の着色を行うことで上記の問題を解決し得ることを見出した。この場合、カラーセルとは、例えば、所定の数の複数のインクのドットにより構成される着色の単位のことである。
【0007】
また、より具体的に、本願の発明者は、例えば、カラーセルを構成するインクのドットの中に光反射性のインクのドットを含めることで、着色領域自体に光を反射させる機能を持たせることを考えた。また、この場合において、カラーセルの中心核となる部分を白色のインク等の光反射性のインクで形成し、その周囲の外周部を様々な色のインクで囲むことを考えた。このように構成すれば、例えば、外周部の形成に用いるインクの色を選択することで、カラーセルの色を所望の色に合わせることができる。また、この場合、カラーセルが反射核を含んでいるため、着色領域に入射した光の多くは、着色領域内を通過する距離がある程度以下である間に反射されることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色領域内を光が通過する距離に大きな差が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、造形物の位置によって色の見え方に差が出ることを適切に防ぐことができる。
【0008】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも一部が着色された立体的な造形物を造形する造形装置であって、前記造形物の材料として着色用の材料を吐出する着色用ヘッドと、前記造形物の材料として光反射性の材料を吐出する光反射材料用ヘッドと、前記着色用ヘッド及び前記光反射材料用ヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記造形物として、着色された領域である着色領域を備える前記造形物を造形し、前記着色領域の少なくとも一部は、着色の単位として予め設定されたカラーセルを複数個並べることで形成されており、それぞれの前記カラーセルは、前記カラーセルの内部において前記光反射性の材料で形成される部分である反射核と、前記反射核の周囲を囲む部分である外周部とを有し、前記着色領域を形成する動作において、前記制御部は、前記光反射材料用ヘッドに前記光反射性の材料を吐出させることでそれぞれの前記カラーセルにおける前記反射核を形成させ、前記着色用ヘッドに前記着色用の材料を吐出させることでそれぞれの前記カラーセルにおける前記外周部を形成させる。
【0009】
このように構成した場合、例えば、着色領域に、光を反射させる機能を持たせることができる。また、その結果、この場合、着色領域に入射した光の多くは、着色領域内を通過する距離がある程度以下である間に反射されることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色領域内を光が通過する距離に大きな差が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、造形物の位置によって色の見え方に差が出ることを適切に防ぐことができる。また、この場合、カラーセル内に反射核を持たせることで、着色領域内に反射核を適切かつ均一に分布させること等も可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色された造形物を造形する場合において、より適切に造形物を造形することができる。
【0010】
ここで、この構成において、カラーセルについては、例えば、造形物の材料により形成されるドットを複数個含むように予め設定された単位等と考えることができる。また、この場合、カラーセルは、例えば、予め設定された所定の数のドットにより構成される。また、造形物の材料としては、例えば、インクを用いることが考えられる。インクとは、例えば、液体を吐出する吐出ヘッド(例えば、インクジェットヘッド等)から吐出する機能性の液体のことである。また、この場合、光反射性の材料としては、例えば白色等の光反射性の色のインクを好適に用いることができる。
【0011】
また、着色用の材料とは、例えば、着色領域を所望の色に着色するために用いる材料のことである。着色用の材料としては、例えば、有色のインク等を用いることが考えられる。また、有色のインクとしては、例えば、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、及びブラック色(K色)の各色のインク等を好適に用いることができる。また、カラーセルの形成に用いる着色用の材料として、例えば、無色のインク等を用いることも考えられる。この場合、例えば、無色で透明なクリア色のインク等を着色用の材料として用いることが考えられる。また、造形物においては、例えば、着色領域の一部を白色等に着色すること等も考えられる。そして、このような場合、カラーセルの形成に用いる着色用の材料として、例えば、白色等の光反射性のインクを用いること等も考えられる。また、この場合、光反射材料用ヘッドについて、着色用ヘッドを兼ねていると考えることもできる。
【0012】
また、この構成において、着色用の材料の少なくとも一部として、例えば、減法混色法により色を表現する材料を用いることが考えられる。また、造形装置は、例えば、互いに異なる色の着色用の材料をそれぞれが吐出する複数の着色用ヘッドを備える。また、この場合、着色領域の各位置に形成されるカラーセルにおける外周部の形成時において、制御部は、例えば、各位置に対して着色すべき色に応じて、複数の着色用ヘッドの少なくとも一部に着色用の材料を吐出させる。このように構成すれば、例えば、複数色の着色用の材料により、様々な色を適切に表現することができる。また、この構成において、一つのカラーセルにおける外周部は、例えば、一つの色の着色用の材料のみで形成される。このように構成すれば、例えば、着色用の材料の色を示すカラーセルを適切に形成することができる。また、この場合、例えば、着色用の材料をそのまま用いて色を表現する場合と同一又は同様にして、カラーセルを用いて、様々な色を適切に表現することができる。
【0013】
また、着色領域における少なくとも一部のカラーセルについては、例えば、一つのカラーセルにおける外周部を、複数色の着色用の材料で形成してもよい。このように構成した場合、例えば、カラーセルの色について、複数色の着色用の材料を混色させた色にすることができる。そのため、このように構成すれば、カラーセルの色について、より多様な色を設定することが可能になる。また、これにより、例えば、着色領域に対しても、より多様な色での着色を適切に行うことができる。また、造形装置は、複数の着色用ヘッドの少なくとも一つとして、着色用の材料としてクリア色の材料を吐出する着色用ヘッドを備えることが好ましい。また、この場合、一つのカラーセルにおける外周部について、クリア色の材料を含む複数色の着色用の材料で形成すること等も考えられる。このように構成すれば、カラーセルの色について、より多様な色を設定することが可能になる。また、クリア色の材料用の着色用ヘッドを用いる場合、着色領域における少なくとも一部のカラーセルとして、外周部がクリア色の材料のみで形成されたカラーセルを形成してもよい。このように構成すれば、例えば、必要に応じて透明なカラーセルを配置することで、着色領域の着色をより適切に行うことができる。
【0014】
また、この構成において、造形物としては、着色領域以外に光反射領域を更に備える造形物を造形することが考えられる。この場合、光反射領域は、例えば、着色領域の内側において、光反射性の材料を用いて形成される。このように構成すれば、例えば、造形物の表面のみに着色領域を形成することができる。また、この場合、着色領域について、造形物の表面に、一定の厚みで形成することが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形物の位置によって色の見え方に差が出ることをより適切に防ぐことができる。
【0015】
また、この場合、光反射領域としては、例えば、光反射性のカラーセルにより構成される領域を形成することが考えられる。光反射性のカラーセルとは、例えば、反射核及び外周部の両方が光反射性の材料で形成されたカラーセルのことである。また、この場合、光反射性のカラーセルについて、着色領域におけるカラーセルと同じ大きさにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、着色領域及び光反射領域に対し、カラーセルに関連する処理を同一又は同様の処理で行うことが可能になる。また、造形物の変形例においては、光反射領域を形成しないこと等も考えられる。この場合、例えば、造形物の内側の領域について、光反射領域として機能しない構成により形成することが考えられる。この場合も、反射核を有するカラーセルを用いて着色領域を形成することで、造形物の外部から着色領域へ入射する光を適切に反射することができる。また、これにより、例えば、着色領域により様々な色を適切に表現できる。また、造形物の更なる変形例においては、造形物の内部の領域を兼ねた着色領域を形成してもよい。また、この場合、造形物について、内部まで着色がされていると考えることもできる。
【0016】
また、この構成において、造形装置は、例えば、造形物の材料を予め設定された積層方向へ積層することで造形物を造形する。また、この場合、造形装置は、例えば、造形中の造形物に対して相対的に移動する走査動作を着色用ヘッド及び光反射材料用ヘッドに行わせる走査駆動部を更に備える。そして、走査駆動部により、着色用ヘッド及び光反射材料用ヘッドに、走査動作として、少なくとも、主走査動作及び積層方向走査を行わせる。この場合、主走査動作とは、例えば、造形中の造形物に対して相対的に積層方向と直交する主走査方向へ移動しつつ造形物の材料を吐出する走査動作のことである。また、積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物に対して相対的に積層方向へ移動する走査動作のことである。
【0017】
また、この場合、カラーセルとして、主走査方向、副走査方向、及び積層方向のそれぞれに造形物の材料のドットが予め設定された数だけ並ぶ構成を用いることが考えられる。この場合、副走査方向とは、例えば、主走査方向及び積層方向と直交する方向のことである。また、より具体的に、一つのカラーセルにおいて各方向へドットが並ぶ数については、3個にすることが考えられる。この場合、それぞれのカラーセルにおいて、造形物の材料のドットは、主走査方向、副走査方向、及び積層方向のそれぞれに3個並ぶ。また、それぞれのカラーセルにおいて、反射核は、カラーセルの中心となる位置において、1個の造形物の材料のドットにより構成される。このように構成すれば、例えば、中心に反射核を有するカラーセルの大きさを最小化することができる。
【0018】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法や造形物等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合、造形方法について、例えば、造形物の製造方法等と考えることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、着色された造形物を造形する場合において、より適切に造形物を造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す図である。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形システム10における造形装置12の要部の構成の一例を示す。
図1(c)は、造形装置12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。
【
図2】造形物50の構成について説明をする図である。
図2(a)は、造形物50の断面の構成の一例をサポート層52と共に示す。
図2(b)は、カラーセル300の構成の一例を示す。
図2(c)は、光反射領域152及び着色領域154のより詳細な構成の一例を示す。
【
図3】造形物50の構成について説明をする図である。
図3(a)~(c)は、様々な観点からカラーセル300を模式的に示す。
【
図4】カラーセル300を用いずに造形される造形物について説明をする図である。
図4(a)は、造形物を示すスライスデータを生成する動作の一例を示す。
図4(b)は、造形物を造形する動作及び造形された造形物の構成の一例を示す。
【
図5】輪郭状の領域が視認される原因等について説明をする図である。
図5(a)、(b)は、カラーセル300を用いずに造形される造形物における色の見え方について説明をする図である。
図5(c)は、本例の着色領域154に対する色の見え方について説明をする図である。
【
図6】造形物50を造形する動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12及び制御PC14を備える。
【0022】
造形装置12は、立体的な造形物を造形する装置(3Dプリンタ)であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。この場合、造形物とは、例えば、造形装置12により造形される立体的な三次元構造物のことである。また、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、造形しようとする造形物を示すデータである造形物データを制御PC14から受け取り、造形物データに基づき、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法のことである。また、本例において、造形装置12は、造形物データに基づき、造形物の断面を示すスライスデータを生成し、スライスデータに従ってインクを吐出することにより、造形物を構成するそれぞれのインクの層を形成する。
【0023】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)であり、造形物データを造形装置12へ供給することにより、造形装置12による造形の動作を制御する。この場合、制御PC14は、例えば、少なくとも一部が着色された造形物を示す造形物データを造形装置12へ供給する。また、より具体的に、本例において、制御PC14は、外部から色彩を視認できる表面に着色がされた造形物を示す造形物データを造形装置12へ供給する。
【0024】
尚、上記のように、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。しかし、造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。
【0025】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形装置12は、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を有する。また、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0026】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、機能性の液体のことである。また、本例において、インクについては、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。また、より具体的に、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物50を造形する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲等に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の少なくとも一部を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0027】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形物の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、造形装置12において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0028】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0029】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部106は、主走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102の側を移動させることにより、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、例えば、主走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、例えば造形台104を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、副走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせてもよい。
【0030】
積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。また、走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例の積層方向走査において、走査駆動部106は、積層方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させる。走査駆動部106は、積層方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させてもよい。
【0031】
制御部110は、例えば造形装置12のCPUであり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部110は、制御PC14から受け取る造形物データに基づき、スライスデータを生成する。スライスデータについては、例えば、積層方向におけるいずれかの位置において造形物50の断面を示すデータ等と考えることができる。また、本例において、制御部110は、造形物50を構成する複数のインクの層に対応する複数のスライスデータを生成する。そして、造形物50を構成するそれぞれのインクの層を形成する動作において、制御部110は、例えば、ヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御することにより、造形物50の造形に用いるインクを各インクジェットヘッドに吐出させる。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。また、本例において造形する造形物50の構成については、後に詳しく説明をする。
【0032】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。
図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図中に示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0033】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。この場合、インクジェットヘッド202wは、光反射材料用ヘッドの一例である。また、白色のインクは、光反射性の色のインク及び光反射性の材料の一例である。本例における白色のインクの使用の仕方については、後に詳しく説明をする。
【0034】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y~kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、本例において、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、これらの各色のインクは、着色用の有色の材料の一例である。また、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれは、互いに異なる色の着色用の材料をそれぞれ吐出する着色用ヘッドの一例である。また、着色用の材料については、例えば、造形物50において着色がされる領域(着色領域)を所望の色に着色するために用いる材料等と考えることもできる。
【0035】
インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色で透明(T)なクリア色のインクのことである。また、クリアインクは、着色されていない透光性の材料であるクリア色の材料の一例である。また、本例においては、インクジェットヘッド202tも、着色用ヘッドの一例である。また、クリアインクも、着色用の材料の一例である。
【0036】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0037】
以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。尚、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0038】
続いて、本例において造形する造形物50の構成について、説明をする。
図2及び
図3は、造形物50の構成について説明をする図である。
図2(a)は、本例において造形する造形物50の断面の構成の一例をサポート層52と共に示す。また、図中に示すように、図示した断面は、Z方向と垂直なX-Y断面である。また、この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ-X断面やX-Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0039】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202y~k(
図1参照)等を用いて造形物50を造形する。また、これにより、例えば、表面が着色された造形物50を造形する。この場合、造形物50の表面が着色されるとは、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されることである。また、図中に示すように、本例において、表面が着色された造形物50を造形する場合、造形装置12は、光反射領域152及び着色領域154を有する造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52を形成する。
【0040】
光反射領域152は、白色のインクを用いて着色領域154の内側に形成される領域であり、例えば造形物50表面に対してフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現とは、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色法の可能な組み合わせで行う色の表現のことである。また、本例においては、光反射領域152として、造形物50の内部領域を兼ねた領域を形成する。この場合、内部領域とは、造形物50の形状を構成する造形物50の内部の領域のことである。造形物50の変形例においては、内部領域について、光反射領域152とは別の領域として形成してもよい。この場合、例えば、内部領域については、サポート層52の材料以外の任意のインクを用いて形成することができる。
【0041】
着色領域154は、インクジェットヘッド202y~kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。また、図中に示すように、本例において、着色領域154は、光反射領域152の周囲に形成されることで、造形物50の表面形状に沿った層状に、造形物50の表面にのみ形成されている。また、着色領域154については、造形物50の表面に、一定の厚みで形成することが好ましい。
【0042】
また、より具体的に、本例において、光反射領域152及び着色領域154は、例えば、予め設定された着色の単位であるカラーセル300が並ぶ構成で形成される。
図2(b)は、カラーセル300の構成の一例を示す。
図2(c)は、光反射領域152及び着色領域154のより詳細な構成の一例を示す図であり、光反射領域152及び着色領域154において複数のカラーセル300が並ぶ状態を簡略化して示す。
図3(a)~(c)は、様々な観点からカラーセル300を模式的に示す図である。
【0043】
ここで、カラーセル300とは、例えば、所定の数の複数のインクのドットにより構成される着色の単位のことである。また、カラーセル300については、例えば、造形物50の材料により形成されるドットを複数個含むように予め設定された単位等と考えることもできる。また、カラーセル300について、複数のインクのドットにより構成されるとは、例えば、設計上、複数のインクのドットの集合を一つのカラーセル300として扱うことである。また、より具体的に、カラーセル300としては、例えば、主走査方向、副走査方向、及び積層方向のそれぞれにインクのドットが予め設定された数だけ並ぶ構成を用いる。また、更に具体的に、本例の場合、一つのカラーセル300において各方向へドットが並ぶ数は、3個である。そのため、一つのカラーセル300は、合計27個(3×3×3個)のインクのドットにより構成される。
【0044】
また、この場合、一つのインクのドットについては、例えば、造形の解像度に応じて設定される一つの吐出位置に対していずれかの一つのインクジェットヘッドのいずれかの一つのノズルにより吐出されるインクにより形成されるドットと考えることができる。また、造形の解像度については、例えば、造形の動作時にインクの吐出位置を指定する解像度等と考えることができる。また、主走査方向及び副走査方向において、造形の解像度については、例えば、一つのインクの層を形成する動作においてインクを吐出する位置の解像度等と考えることができる。また、積層方向において、造形の解像度については、例えば、積層するインクの層の間隔に対応する解像度等と考えることができる。
【0045】
また、この場合、一つのインクのドットについて、造形の解像度に対応して設定されるボクセルに対応する構成等と考えることもできる。この場合、ボクセルとは、造形の解像度に応じて造形物50の各位置を構成する立体画素のことである。そして、この場合、一つのカラーセル300について、例えば
図3(a)に示すように、27個のボクセル402により構成されていると考えることができる。
【0046】
また、上記のように、カラーセル300は、複数のインクのドットにより構成される。そのため、本例においては、インクのドットの並びに対する解像度(ドットの解像度)の他に、カラーセル300の並びに対する解像度(カラーセルの解像度)を考えることもできる。そして、この場合、カラーセルの解像度については、一つのカラーセル300において各方法へインクのドットが並ぶ数に応じて、ドットの解像度よりも低い解像度になっている。より具体的に、上記のように、本例のカラーセル300においては、主走査方向、副走査方向、及び積層方向のそれぞれに、3個のインクのドットが並ぶ。そのため、主走査方向、副走査方向、及び積層方向の各方向において、カラーセル300の解像度は、ドットの解像度の1/3になっている。
【0047】
また、本例において、カラーセル300は、例えば
図2(b)に示すように、反射核302及び外周部304を有する。この場合、反射核302とは、カラーセル300の内部において白色のインクで形成される部分である。また、外周部304は、反射核302の周囲を囲む部分である。また、より具体的に、本例においては、一つのカラーセル300を構成する27個のインクのドットのうち、中心の位置にある一つのインクのドットが反射核302になる。また、その他の26個のインクのドットは、外周部304を構成する。このように構成すれば、例えば、中心に反射核302を有するカラーセル300として、最小の大きさの構成を適切に実現できる。
【0048】
また、この場合、内部の反射核302が見えるように透過的にカラーセル300を示すと、例えば
図3(b)のように、反射核302は、カラーセル300の中心となる位置において、1個のインクのドットにより構成される。また、カラーセル300について、積層されるそれぞれのインクの層に対応する断面を示した場合、例えば
図3(c)に示すように、中央のインクの層に対応する断面は、は、反射核302を構成するボクセル402と、外周部304を構成するボクセル402とを含むことになる。また、その他のインクの層に対応する断面においては、外周部304を構成するボクセル402のみを含むことになる。
【0049】
また、本例において、一つのカラーセル300における外周部304は、いずれかの1色のインクのドットで構成される。このように構成すれば、例えば、造形に使用するインクの色に合わせて、カラーセル300の色を適切に設定することができる。より具体的に、この場合、例えば、
図2(b)に示すように、外周部304をM色のインクで形成することで、M色のカラーセル300であるMセルを構成することができる。また、外周部304をC色のインクで形成することで、C色のカラーセル300であるCセルを構成することができる。また、図示は省略したが、外周部304をY色やK色で形成することで、Y色やK色のカラーセル300(Yセル、Kセル)を構成することができる。また、本例においては、クリア色及び白色のカラーセル300であるCLセル及びWセルを更に用いる。この場合、外周部304をクリアインクで形成することで、CLセルを構成することができる。また、外周部304を白色のインクで形成することで、Wセルを構成することができる。また、このような構成のカラーセル300については、例えば、反射核302を中心にして、その周囲にいずれかの色のインク(例えば、YMCKの各色、白色、又はクリア色のインク)でコーティングしたドット等と考えることもできる。
【0050】
また、この場合、Wセルについては、例えば、反射核302及び外周部304の両方が白色のインクで形成された光反射性のカラーセルと考えることができる。また、この場合、光反射領域152については、例えば
図2(c)に示すように、Wセルを並べることで形成することができる。このように構成すれば、例えば、白色のインクを用いて光反射領域152を適切に形成することができる。
【0051】
また、着色領域154については、例えば、着色領域154の各部へ着色する色に合わせて各色のカラーセル300を並べることで、所望の色での着色を行うことができる。より具体的に、
図2(c)においては、Cセル及びMセルを用いて着色領域154を着色する場合について、着色領域154におけるカラーセル300の並び方の一例を示している。また、この場合、必要に応じて着色領域154の一部をCLセルで形成することで、有色のカラーセル300を形成しない位置に対する補填を行うことができる。また、これにより、例えば、着色領域154に対して様々な色を着色する場合において、着色領域154の各部に対し、一定の密度でカラーセル300を並べることができる。そのため、本例によれば、着色領域154に対し、様々な色での着色を適切に行うことができる。
【0052】
また、上記のように、本例において、それぞれのカラーセル300は、白色のインクで形成された反射核302を有する。そのため、着色領域154は、一定の密度で、白色のインクのドットを含むことになる。このような着色領域154を形成する理由については、後に更に詳しく説明をする。
【0053】
尚、上記のように、本例においては、反射核302及び外周部304の両方が白色のインクで形成されたWセルを用いて、光反射領域152を形成する。そして、この場合、光反射領域152について、カラーセル300を用いずに単に白色のインクのドットを並べた場合と差がないようにも思われる。しかし、光反射領域152について、カラーセル300を単位にしないで造形の動作の制御を行うとすると、光反射領域152を形成する動作の制御について、カラーセル300により構成される着色領域154を形成する動作の制御と異なる方法で行うことが必要になる。そして、この場合、造形の動作の制御が複雑になること等が考えられる。これに対し、本例においては、光反射領域152についてもカラーセル300を単位にして形成をする。また、光反射領域152を構成するWセルについて、着色領域154を構成するカラーセル300と同じ大きさにしている。このように構成すれば、例えば、光反射領域152及び着色領域154を形成する動作について、同一又は同様にしてカラーセル300に関連する処理を行うことで、造形の動作の制御が複雑になることを適切に防ぐことができる。
【0054】
また、造形物50を造形する動作の変形例においては、光反射領域152及び着色領域154以外の領域を更に備える造形物50を造形すること等も考えられる。この場合、全ての領域について、各領域に対応するカラーセル300を定義することが好ましい。また、この場合、各領域のカラーセル300については、同じサイズにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形の動作の制御が複雑になることを適切に防ぎつつ、造形物50の各領域を適切に形成することができる。また、この場合、各領域のカラーセル300については、必ずしも反射核302を有する構成ではなく、各領域の求められる特性に応じた構成を用いてもよい。より具体的に、例えば、造形物50の表面に透明な保護領域等を形成する場合、保護領域用のカラーセル300として、例えば、クリアインクのドットのみで形成されるカラーセル300を用いること等が考えられる。また、造形物50の造形時にサポート層52を形成する場合には、サポート層52についても、対応するカラーセル300を定義することが好ましい。この場合、サポート層52用のカラーセル300としては、例えば、サポート層52の材料となるインクのドットのみで形成されるカラーセル300を用いること等が考えられる。
【0055】
続いて、上記のようなカラーセル300を用いて着色領域154を形成する理由等について、詳しく説明をする。先ず、説明の便宜上、上記のようなカラーセル300を用いずに着色された造形物を造形する場合の動作等について、説明をする。
【0056】
図4は、カラーセル300を用いずに造形される造形物について説明をする図である。
図4(a)は、造形物を示すスライスデータを生成する動作の一例を示す。積層造形法で造形物を造形する場合、通常、造形物の全体を示す造形物データ(3Dモデル)を入力して、造形物データに基づき、造形物の断面を示すスライスデータを生成する。また、この場合、図中にカラー層・反射層生成の動作として示すように、光反射領域及び着色領域となる範囲を設定する。この場合、例えば、表面に着色がされている造形物を示す造形物データに基づき、所定の厚みを有する着色領域が形成されるように、着色領域となる範囲を設定する。また、着色領域となる範囲の内側に、光反射領域となる範囲を設定する。また、より具体的に、この場合、例えば、造形物の表面の法線方向における厚みが所定の厚みになるように、着色領域となる範囲を設定する。着色領域154の厚みについては、例えば150μm程度(例えば、100~200μm程度)にすることが考えられる。また、より濃い色を表現しようとする場合には、着色領域の厚みをより大きくすることが好ましい。また、この場合、着色領域は、YMCKの各色のインク(カラーインク)及びクリアインクを用い、単位体積あたりの合計のインクの量が予め決められた量になるようにして、形成する。また、光反射領域となる範囲については、着色領域となる範囲の内側に設定する。
【0057】
また、この場合、図中にスライス化の動作として示すように、所定の間隔でデータを輪切り状にすることで、積層方向における各位置で造形物の断面(モデル断面)をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成する。また、この場合、造形に使用するインクの色に合わせた分版処理やRIP処理等を更に行うことで、造形に使用する各色のインクを吐出する位置を示すスライスデータを生成する。そして、例えば
図4(b)に示すように、生成したスライスデータに基づき、ヘッド部の各インクジェットヘッドから各色のインクを吐出することで、造形物を造形する。
図4(b)は、造形物を造形する動作及び造形された造形物の構成の一例を示す。
【0058】
このように構成すれば、例えば、表面が着色された造形物を適切に造形することができる。しかし、この場合、着色領域の内側に光反射領域が形成されている構成に起因して、造形物の位置によって色の見え方に差が出る場合がある。より具体的に、
図4(b)に示した場合、造形物の表面において、造形物の一部を拡大して示す図中に符号A、Bを付して示したように、色の見え方に差が出る部分が生じている。符号A、Bを付した部分は、同じ色での着色を行った部分である。また、この場合、符号Aを付した部分は、周囲を含む面状の領域で同じ色に見えている。これに対し、符号Aを付した部分を囲む領域である符号Bを付した部分は、符号Aを付した部分と違う色に見えている。また、その結果、造形物の表面を観察した場合に、意図しない輪郭状の領域が視認されることになる。
【0059】
しかし、このような意図しない輪郭状の領域が視認されると、造形物に対する所望の着色が行えず、造形物の品質が低下する場合がある。そこで、本願の発明者は、このような輪郭状の領域が視認される原因を究明し、そのような現象が起きにくい構成として、上記のようなカラーセル300を用いて着色領域154を形成することを考えた。
【0060】
図5は、輪郭状の領域が視認される原因等について説明をする図である。
図5(a)、(b)は、カラーセル300を用いずに造形される造形物における色の見え方について説明をする図であり、
図4(b)において符号A、Bを付した部分に対応する色の見え方を模式的に示す。
【0061】
より具体的に、
図4(b)において符号Aを付した部分のように、光反射領域152及び着色領域154が重なっている部分に対し、光反射領域152で反射された光が目に届くような向きで造形物を観察した場合、観察者の目に到達する光は、例えば
図5(a)に示すように、造形物の外側から着色領域154に入射して、光反射領域152で反射された光になる。そして、この場合、着色領域154内を光が通過する距離は、着色領域154の厚みの2倍程度になる。
【0062】
これに対し、
図4(b)において符号Bを付した部分を観察した場合、観察者の目に到達する光は、例えば
図5(b)に示すように、光反射領域152で反射した光ではなく、造形物の表面に沿って着色領域154内を通ってきた光を多く含むことになる。そして、この場合、着色領域154内を通過する距離が長くなることで、その分だけ、暗い色(濃い色)として視認されることになる。また、その結果、上記においても説明をしたうように、造形物の表面を観察した場合に、意図しない輪郭状の領域が視認されることになる。
【0063】
これに対し、本例においては、反射核302を有するカラーセル300(
図2参照)を用いて着色領域154を形成することで、着色領域154にも、光を反射させる機能を持たせている。そして、この場合、着色領域154に入射した光の多くは、例えば
図5(c)に示すように、着色領域154内を通過する距離がある程度以下である間に、反射されることになる。
図5(c)は、本例の着色領域154に対する色の見え方について説明をする図である。
【0064】
より具体的に、本例においては、着色領域154を構成するそれぞれのカラーセル300の中に反射核302が存在することで、着色領域154内に、白色のインクのドットが均一に存在することになる。そして、この場合、着色領域154内に入射した光の多くは、図中に示すように、造形物の表面からある程度の範囲内の位置で反射されることになる。そのため、本例によれば、例えば、着色領域154内を光が通過する距離に大きな差が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、造形物の位置によって色の見え方に差が出ることを適切に防ぐことができる。
【0065】
ここで、光を反射させる機能を着色領域154に持たせることのみを考えた場合、必ずしもカラーセル300を用いて着色領域154を形成するのではなく、白色のインクのドットを着色領域154内に適宜配置すればよいようにも思われる。しかし、この場合、どの位置に白色のインクを配置するかについて、過度な試行錯誤や複雑な処理等が必要になるおそれもある。これに対し、本例においては、反射核302を有するカラーセル300を用いることで、着色領域154内に均一かつ適切に反射核302を分布させることができる。
【0066】
また、着色領域154について、YMCKの各色のインクのような有色のカラーインクを用いて様々な色を表現するためには、色の違いにより生じるカラーインクの使用量の差を補填するために、例えば、クリアインク等を更に用いることが必要になる。これに対し、本例においては、上記のように、クリアインクで外周部を形成した透明なカラーセル300であるCLセルを用いることで、有色のカラーセル300を形成しない位置に対する補填を適切に行うことができる。また、これにより、着色領域154の着色をより適切に行うことができる。また、この場合において、CLセルとしても反射核302を有するカラーセル300を用いることで、着色領域154内により均一かつ適切に反射核302を分布させることができる。
【0067】
また、本例のように、カラーセル300を単位にして造形物の各領域を構成する場合、スライスデータを生成する処理等について、従来の処理を大きく変更することなく処理を実行することが可能になる。より具体的に、従来の処理においては、例えば、インクのドットの並びに対する解像度(ドットの解像度)であるボクセル解像度を基準にして、スライスデータの生成を行う。これに対し、本例においては、スライスデータを生成する処理の少なくとも一部について、カラーセルの解像度を基準にして行うことが考えられる。そして、この場合、基準として用いる解像度を変更するのみで、従来と同一又は同様にして処理を行うことが可能である。そこで、以下、この点について、更に詳しく説明をする。
【0068】
図6は、本例において造形物50(
図1参照)を造形する動作の一例を示すフローチャートである。上記においても説明をしたように、本例の造形装置12(
図1参照)において、制御部110(
図1参照)は、造形物データに基づき、スライスデータを生成する。また、より具体的に、この場合、造形装置12は、例えば、制御PC14(
図1参照)から造形物データを受け取ることにより、造形物データを入力する(S102)。そして、入力された造形物データに基づき、カラーセルの解像度であるセル解像度でのスライス処理を行う(S104)。この場合、セル解像度でのスライス処理とは、セル解像度を基準として造形物50の断面を示すデータを生成する処理のことである。また、この処理については、例えば、基準として用いる解像度を変更するのみで、スライスデータを生成する公知の処理と同一又は同様に行うことができる。この場合、スライスデータを生成する公知の処理とは、例えば、ボクセル解像度を基準としてスライスデータを生成する処理のことである。また、この場合、セル解像度でのスライス処理により生成するデータについて、例えば、セル解像度でのスライスデータ等と考えることができる。また、セル解像度でのスライスデータとしては、例えば、カラーセルの色数に合わせた分版処理やRIP処理等を行ったデータを生成することが考えられる。
【0069】
また、本例においては、更に、セル解像度でのスライスデータに基づき、ボクセル解像度でのスライスデータを生成する(S106)。この場合、セル解像度とボクセル解像度との違いや、カラーセルの構成等に合わせてセル解像度でのスライスデータを展開することで、セル解像度での一つの断面の位置に対応する一つのスライスデータから、ボクセル解像度での複数のスライスデータを生成する。より具体的に、
図2及び
図3を用いて説明をしたような、各方向へドットが並ぶ数が3個のカラーセルを用いる場合、セル解像度での一つのスライスデータを、ボクセル解像度での3個のスライスデータに展開する。そして、ボクセル解像度での3個のスライスデータのそれぞれについて、主走査方向及び副走査方向における解像度を、セル解像度のスライスデータにおける解像度の3倍に変換する。また、この場合、解像度の変換等に加え、それぞれのカラーセルにおける反射核に対応するボクセルを指定する処理等を行う。より具体的に、この場合、ボクセル解像度での3個のスライスデータのうち、積層方向で中央になるスライスデータに対し、反射核となるべきボクセルの位置の指定を行う。反射核となるべきボクセルとは、例えば、それぞれのカラーセルに対応する範囲の中央のボクセルのことである。また、この場合、反射核となるべきボクセルの色を白色に指定するように、色の変換等を行う。また、この場合、ボクセル解像度でのスライスデータとしては、例えば、各色のインクを吐出する吐出位置を指定するデータを生成する。このように構成すれば、例えば、カラーセルを用いて色が表現される造形物50を示すスライスデータを適切に生成することができる。
【0070】
また、この場合、ボクセル解像度でのスライスデータに基づいてヘッド部102(
図1参照)における各インクジェットヘッドからインクを吐出することにより、造形物50の造形を行う(S108)。より具体的に、この場合、スライスデータに基づいて造形装置12の各部の動作を制御することで、造形物50における着色領域を形成する動作において、制御部110は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202w(
図1参照)に白色のインクを吐出させて、それぞれのカラーセルにおける反射核を形成させる。また、各色の着色用のインクジェットヘッド(例えば、インクジェットヘッド202y~k又はインクジェットヘッド202t)に着色用のインクを吐出させることで、それぞれのカラーセルにおける外周部を形成させる。本例によれば、例えば、カラーセルを用いて色が表現される造形物50の造形を適切に行うことができる。
【0071】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明等を行う。上記においては、主に、YMCKの各色のインク及びクリアインクを着色用の材料と考え、白色のインクを光反射性の材料と考える場合について、説明をした。しかし、造形物50においては、例えば、着色領域154の一部を白色等に着色すること等も考えられる。そして、このような場合、白色のインクについても、着色用の材料の一例と考えることができる。また、この場合、白色のインクについて、着色用の材料及び光反射性の材料の一例と考えることができる。また、白色のインクを吐出するインクジェットヘッド202wについて、着色用ヘッドを兼ねていると考えることができる。
【0072】
また、上記においては、主に、一つのカラーセルにおける外周部を1色のインクのみで形成する場合について、説明をした。このように構成すれば、例えば、着色用のインクの色を示すカラーセルを適切に形成することができる。また、この場合、例えば、着色用のインクをそのまま用いて色を表現する場合と同一又は同様にして、カラーセルを用いて、様々な色を適切に表現することができる。
【0073】
また、カラーセルの外周部については、例えば、複数色のインクを用いて形成してもよい。この場合、例えば、着色領域154における少なくとも一部のカラーセルについて、一つのカラーセルにおける外周部を、複数色のインクで形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、カラーセルの色について、複数色のインクを混色させた色にすることができる。また、この場合、着色領域154の各位置に形成されるカラーセルにおける外周部の形成時において、制御部110は、例えば、各位置に対して着色すべき色に応じて、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの少なくとも一部にインクを吐出させる。このように構成すれば、例えば、複数色のインクを用いて、様々な色のカラーセルを適切に形成することができる。
【0074】
また、より具体的に、この場合、減法混色法での一次色であるYMCの各色のうちの2色のインクを用いて一つのカラーセルにおける外周部を形成することで、2次色であるレッド色(R色)、グリーン色(G色)、及びブルー色(B色)のカラーセルを作成すること等が考えられる。また、有色のインクであるYMCKの各色のインクとクリアインクとを用いて一つのカラーセルにおける外周部を形成することで、カラーセルの色の濃さを調整すること等も考えられる。そのため、このように構成すれば、カラーセル自体の色について、より多様な色を設定することが可能になる。また、これにより、例えば、着色領域154に対しても、より多様な色での着色を適切に行うことができる。
【0075】
また、上記においては、造形物50の構成について、主に、造形物50が光反射領域152及び着色領域154(
図2参照)のみを備える場合の構成の例を説明した。しかし、造形物50の変形例において、造形物50は、その他の領域を更に備えてもよい。また、上記においても説明をしたように、反射核を有するカラーセルを用いて着色領域154を形成する場合、光を反射させる機能を有する着色領域154が形成されることになる。そのため、造形物50の変形例においては、光反射領域152を形成しないこと等も考えられる。この場合、例えば、造形物50の内側の領域について、光反射領域152として機能しない構成により形成することが考えられる。このように構成した場合も、造形物50の外部から着色領域154へ入射する光を適切に反射することができる。また、これにより、例えば、着色領域154により様々な色を適切に表現できる。また、光反射領域152を形成しない場合、例えば、造形物50の内部の領域を兼ねた着色領域154を形成すること等も考えられる。この場合、造形物50について、内部まで着色がされていると考えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えば造形装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10・・・造形システム、12・・・造形装置、14・・・制御PC、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、110・・・制御部、152・・・光反射領域、154・・・着色領域、202・・・インクジェットヘッド、204・・・紫外線光源、206・・・平坦化ローラ、300・・・カラーセル、302・・・反射核、304・・・外周部、402・・・ボクセル