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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
A61B5/055 366
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018233626
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020092904
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 基充
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-084229(JP,A)
【文献】特開2007-319348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0075673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置され、変形可能な天板と、
位相エンコード方向の折返しアーチファクトに寄与する撮像条件に基づいて、前記天板を変形させる変形制御部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記変形制御部は、前記撮像条件として、FOV(Field Of View)に基づいて、前記折返しアーチファクトが抑制されるように前記天板を変形させる、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記変形制御部は、前記折返しアーチファクトを抑制するためにMR信号のデータ収集が行われる領域を設定するための情報を含む設定情報、前記設定情報及び前記FOV、又は、前記領域及び撮像対象部位に基づいて、前記折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定し、前記折返しアーチファクトが発生する可能性があると判定した場合に、前記折返しアーチファクトが抑制されるように前記天板を変形させる、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記変形制御部は、前記FOV内に含まれる前記被検体の第1の部位に対して位相エンコード方向において並んで存在するとともに前記FOV外に存在する第2の部位が、前記FOVに対して前記位相エンコード方向において並んで存在しなくなるように、前記天板を変形させる、請求項2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮像条件として、前記FOVを用いて、前記被検体の撮像を行う撮像部を更に備える、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記天板は、前記被検体により前記天板に加えられる圧力を検知する複数の検知部を有し、
前記変形制御部は、更に、前記天板の形状を複数の形状に変形させつつ、前記複数の検知部により前記被検体に対応する圧力が検知された場合の形状を維持するように前記天板を制御する、請求項1~5のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記変形制御部は、更に、前記被検体に関する被検体情報に基づいて、所定の形状に前記天板を変形させる、請求項1~6のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記変形制御部は、前記天板が前記被検体を載置する前に、前記所定の形状に前記天板を変形させる、請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記天板は、
第1の方向及び当該第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ複数の支持部と、
前記第1の方向において隣接する2つの支持部の間に配置され、当該2つの支持部を回動可能に支持し、前記第1の方向及び前記第2の方向と交差する第3の方向に伸縮する伸縮機構と、
を備え、
前記変形制御部は、前記伸縮機構の伸縮を制御することにより、前記天板を変形させる、請求項1~8のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記支持部は、前記伸縮機構の伸縮に伴って、前記第1の方向における一端から他端に向かう方向に伸縮する、請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置では、平らな寝台に寝ることが困難な患者の撮像や、折返し現象が生じる撮像の際には、パッドを用いて撮像の際の被検体の姿勢を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5154223号
【文献】特許第5926001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、検査のスループットを向上させることができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、天板と、変形制御部とを備える。天板には、被検体が載置される。また、天板は、変形可能である。変形制御部は、位相エンコード方向の折返しアーチファクトに寄与する撮像条件に基づいて、前記天板を変形させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る天板の上面図(XZ平面図)の一例を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係る天板の側面図(YZ平面図)の一例を示す図である。
図2C図2Cは、第1の実施形態に係る天板の支持部材及び伸縮機構の構成の一例を示す図である。
図2D図2Dは、天板の変形動作の一例を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図5C図5Cは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態の変形例1に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態の変形例2に係る磁気共鳴イメージング装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置100の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12及び処理回路13~16を備える。
【0008】
静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内側の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却液(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有している。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。また、例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成されたものではなく、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように1対の磁石が配置された、いわゆるオープン型の構成を有するものであってもよい。
【0009】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを備える。ここで、X軸、Y軸及びZ軸は、磁気共鳴イメージング装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、X軸の方向は、水平方向に設定され、Y軸の方向は、鉛直方向に設定される。また、Z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0010】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が備える3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、X軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を内側の空間に発生させる。X軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
【0011】
ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。以下、位相エンコード方向とX軸方向とが一致する場合を例に挙げて説明するが、位相エンコード方向とX軸方向とが一致しなくてもよい。
【0012】
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0013】
送信コイル4は、送信コイル4の内側の空間に高周波(Radio Frequency:RF)磁場を印加する。具体的には、送信コイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。そして、送信コイル4は、送信回路5から出力される高周波(RF)パルスに基づいて、内側の空間に高周波磁場を印加する。
【0014】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、高周波増幅回路を備える。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波パルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力される高周波パルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力される高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力される高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅回路は、振幅変調回路から出力される高周波パルスを増幅して送信コイル4に出力する。
【0015】
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル6は、送信コイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加される高周波磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、頭部用の受信用高周波コイル、頚部用の受信用高周波コイル、肩用の受信用高周波コイル、胸部用の受信用高周波コイル、腹部用の受信用高周波コイル、下肢用の受信用高周波コイル及び脊椎用の受信用高周波コイル等である。
【0016】
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を備える。選択回路は、受信コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
【0017】
なお、ここでは、送信コイル4が高周波磁場を印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各高周波コイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル6が、高周波磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有している場合は、送信回路5は、受信コイル6にも高周波パルスを出力する。
【0018】
架台8は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3及び送信コイル4を収容する。具体的には、架台8は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び送信コイル4それぞれをボアBの周囲に配置した状態で支持する。ここで、架台8におけるボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0019】
寝台9は、被検体Sが載置される天板9aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台8におけるボアBの内側へ天板9aを挿入する。例えば、寝台9は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。また、本実施形態では、天板9aは、変形可能である。天板9aは、寝台制御機能13aによる制御を受けて、変形する。天板9aの具体的な構成及び天板9aの変形動作については、後述する。
【0020】
入力回路10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路16へ出力する。例えば、入力回路10は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0021】
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0022】
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0023】
本実施形態では、記憶回路12は、検査対象の被検体Sに関する情報である被検体情報を記憶する。被検体情報は、例えば、被検体Sの身長及び体重並びに腰の曲がり具合等の体型に関する体型情報、被検体Sが移動する手段等の各種の情報を含む。被検体Sが移動する手段の一例としては、徒歩、車椅子及びストレッチャーが挙げられる。また、腰の曲がり具合は、例えば、数値により示される。例えば、腰の曲がり具合が大きくなるほど、数値が大きくなる。
【0024】
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能13aは、寝台9に接続され、制御用の電気信号を寝台9へ出力することで、寝台9の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力回路10を介して、天板9aを、天板9aの長手方向、短手方向又は上下方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板9aを移動するように、寝台9が有する天板9aの天板移動機構を動作させる。なお、本実施形態では、天板9aの長手方向とZ軸方向とが一致し、短手方向がX軸方向と一致し、上下方向がY軸方向と一致する。なお、上下方向は、天板9aの厚み方向でもある。また、例えば、寝台制御機能13aは、処理回路16の変形制御機能16bから送信された天板9aを変形させる指示である変形指示を受信し、受信した変形指示に従って天板9aが変形するように、天板9aが有する伸縮機構9eを動作させる。より具体的には、寝台制御機能13aは、伸縮機構9eの伸縮を制御することにより、天板9aを変形させる。
【0025】
処理回路14は、実行機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。実行機能14aは、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、各種パルスシーケンスを実行する。具体的には、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。
【0026】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0027】
また、実行機能14aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に格納する。なお、実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に格納される。
【0028】
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。画像生成機能15aは、記憶回路12に格納されたMR信号データに基づいて画像データを生成する。具体的には、画像生成機能15aは、実行機能14aによって記憶回路12に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像データを生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像データを記憶回路12に格納する。
【0029】
処理回路16は、制御機能16a及び変形制御機能16bを有する。例えば、処理回路16は、プロセッサによって実現される。制御機能16aは、磁気共鳴イメージング装置100が有する各構成要素を制御することで、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行う。例えば、制御機能16aは、入力回路10を介して操作者からパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、制御機能16aは、生成したシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、制御機能16aは、操作者から要求された画像データを記憶回路12から読み出し、読み出した画像データが示す画像をディスプレイ11に表示させる。変形制御機能16bについては、後述する。なお、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、変形制御部の一例である。また、制御機能16a及び実行機能14aは、撮像部の一例である。
【0030】
ここで、例えば、上述した各処理回路13~16が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路13~16は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0031】
また、図1に示す例では、寝台制御機能13a、実行機能14a、画像生成機能15a及び制御機能16aの各処理機能が、それぞれ単一の処理回路によって実現されることとしたが、実施形態はこれに限られない。これらの処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、若しくは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路12にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0033】
以上、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の構成について説明した。ここで、例えば、パッドを用いて撮像の際の被検体の姿勢を調整する場合について説明する。この場合には、例えば、パッドの形状は、被検体の体形や症状等に関わらず一定であり、被検体に最適な形状のパッドを用意することは困難である。また、パッドの設置に時間を要することにより、検査のスループットが低下する。そこで、以下に説明するように、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、検査のスループットを向上させることができるように構成されている。
【0034】
図2Aは、第1の実施形態に係る天板9aの上面図(XZ平面図)の一例を示す図である。図2Bは、第1の実施形態に係る天板9aの側面図(YZ平面図)の一例を示す図である。図2A及び図2Bに示すように、天板9aは、複数の支持部材9bと、複数の支持部材9cと、複数の伸縮機構9eとを有する。複数の支持部材9b及び複数の支持部材9cは、天板9aの長手方向及び短手方向に並んで配置されている。複数の支持部材9b及び複数の支持部材9cは、1枚の天板を、天板の長手方向及び短手方向に分割することにより得られる。このため、支持部材9b,9cは、分割天板とも称される。支持部材9b及び支持部材9cにより、被検体Sが支持される。支持部材9b、支持部材9c及び伸縮機構9eは、例えば、非磁性の材料により構成される。支持部材9b,9cは、支持部の一例である。
【0035】
なお、天板9aの長手方向(Z軸方向)は、第1の方向の一例である。天板9aの短手方向(X軸方向及び位相エンコード方向)は、第1の方向と交差する第2の方向の一例である。また、天板9aの厚み方向(Y軸方向)は、第1の方向及び第2の方向と交差する第3の方向の一例である。
【0036】
ここで、寝台9は、天板9aの上面側に配置されるマットを有するが、図2A及び図2Bでは、マットの図示が省略されている。このような被検体Sと天板9aとの間に配置されるマットは、クッションの機能を有する。
【0037】
図2A及び図2Bに示すように、天板9aの長手方向に6個の支持部材9bが並ぶ支持部材9bの列9fが、天板9aの短手方向の両端に配置されている。また、天板9aの長手方向に6個の支持部材9cが並ぶ支持部材9cの列9gが、天板9aの短手方向の中央部に配置されている。このように、図2A及び図2Bには、天板9aが、12個の支持部材9b及び6個の支持部材9cを有する場合が示されているが、天板9aが有する支持部材9b及び支持部材9cの個数は、これに限られない。
【0038】
支持部材9cは、圧力センサ9dを有する。圧力センサ9dは、処理回路16に電気的に接続されている。圧力センサ9dは、被検体Sにより加えられた圧力を検知し、検知した圧力を示す信号を処理回路16に出力する。これにより、処理回路16には、圧力センサ9dにより検知された圧力が通知される。すなわち、天板9aは、被検体Sにより天板9aに加えられる圧力を検知する複数の圧力センサ9dを有する。圧力センサ9dは、検知部の一例である。
【0039】
また、天板9aの長手方向において隣接する2つの支持部材9bの間には、伸縮機構9eが配置されている。伸縮機構9eは、例えば、油圧シリンダ又は空気圧シリンダを含み、寝台制御機能13aによる制御を受けて、天板9aの厚み方向に伸縮する。また、伸縮機構9eは、天板9aの長手方向において隣接する2つの支持部材9bを回動可能に支持する。具体的には、伸縮機構9eは、支持部材9bを、天板9aの短手方向周りの回動が可能なように支持する。同様に、伸縮機構9eは、天板9aの長手方向において隣接する2つの支持部材9cを、天板9aの短手方向周りの回動が可能なように支持する。
【0040】
図2Cは、第1の実施形態に係る天板9aの支持部材9b及び伸縮機構9eの構成の一例を示す図である。図2Cに示すように、支持部材9bは、一端側に凹部が形成された第1の棒状部材9b_1と、一端側に凸部を有する第2の棒状部材9b_2と、複数のベアリング9b_3とを有する。第1の棒状部材9b_1の凹部の内周面と、第2の棒状部材9b_2の凸部の外周面との間に、複数のベアリング9b_3が配置されている。このような複数のベアリング9b_3の存在により、第2の棒状部材9b_2が第1の棒状部材9b_1に対して離れる方向及び近づく方向の両方向に移動可能となる。また、このような移動が可能となるように、第1の棒状部材9b_1及び第2の棒状部材9b_2は、図示しない部品により支持されている。第2の棒状部材9b_2が第1の棒状部材9b_1に対して相対的に移動する結果、支持部材9bはZ軸方向に伸縮する。すなわち、本実施形態に係る支持部材9bは、天板9aの長手方向における一端から他端に向かう方向において伸縮可能である。
【0041】
また、図2Cに示すように、伸縮機構9eには、円柱状の第3の棒状部材9e_1が固定されている。第3の棒状部材9e_1は、第1の棒状部材9b_1に形成された図示しない貫通孔に挿通され、第1の棒状部材9b_1を回動可能に支持する。また、第3の棒状部材9e_1は、第2の棒状部材9b_2に形成された図示しない貫通孔に挿通され、第2の棒状部材9b_1も回動可能に支持する。また、支持部材9cも、支持部材9bと同様の構成を有する。このため、伸縮機構9eの伸縮に伴って、支持部材9b及び支持部材9cも伸縮することで、天板9aが変形する。
【0042】
図2Dは、天板9aの変形動作の一例を説明するための図である。図2Dには、図2Cに示す伸縮機構9eの状態から伸縮機構9eが伸びることによる変形動作の一例が示されている。図2Dに示すように、同図中右側の伸縮機構9eが伸びることにより、支持部材9bも伸び、天板9aが変形する。
【0043】
図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、図3に示す処理は、被検体Sの検査時に実行される。
【0044】
図3に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、記憶回路12に記憶された被検体情報を参照し、被検体Sが寝台9に移動しやすくなるように、天板9aを事前に変形させる(ステップS101)。例えば、被検体Sが移動する手段が車椅子である場合には、変形制御機能16bは、天板9aを椅子型の形状に変形させる変形指示を寝台制御機能13aに出力する。また、例えば、被検体Sが移動する手段がストレッチャーである場合には、変形制御機能16bは、天板9aを平面の形状に変形させる変形指示を寝台制御機能13aに出力する。このように、ステップS101では、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、被検体Sに関する被検体情報に基づいて、所定の形状に天板9aを変形させる。また、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、天板9aが被検体Sを載置する前に、所定の形状に天板9aを変形させる。
【0045】
形状が変形された天板9aに被検体Sが移動し、寝台9に対してベルト等により被検体Sが固定された場合には、操作者は、入力回路10を介して、被検体Sが寝台9に対して固定されたことを示す通知である固定完了通知を変形制御機能16bに送信する。
【0046】
そして、変形制御機能16bは、固定完了通知を受信したか否かを判定する(ステップS102)。固定完了通知を受信していない場合(ステップS102:No)には、変形制御機能16bは、再び、ステップS102の判定を行う。
【0047】
一方、変形制御機能16bが固定完了通知を受信した場合(ステップS102:Yes)には、磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Sの上述した体型情報に応じて、被検体Sにとって快適な姿勢となるように、天板9aを変形させる(ステップS103)。なお、被検体Sにとって快適な姿勢とは、例えば、被検体Sにとって負荷の少ない姿勢である。
【0048】
例えば、記憶回路12には、天板9aに載置された被検体の姿勢が比較的長い時間維持できるような快適な姿勢となる場合における、被検体により各圧力センサ9dに加えられる圧力の範囲が、予め記憶されている。例えば、このような各圧力センサ9dに加えられる圧力の範囲が、被検体の身長、体重及び腰の曲がり具合の組合せ毎に記憶回路12に記憶されている。このような圧力の範囲は、実験又はシミュレーションにより得ることができる。
【0049】
ステップS103では、変形制御機能16bは、被検体情報を参照し、被検体Sの体型情報として被検体Sの身長、体重及び腰の曲がり具合を取得する。そして、変形制御機能16bは、取得した被検体Sの身長、体重及び腰の曲がり具合に対応する各圧力センサ9dに加えられる圧力の範囲を記憶回路12から取得する。
【0050】
そして、変形制御機能16bは、各圧力センサ9dにより検知された現在の各圧力が、取得した各圧力センサ9dに加えられる圧力の範囲内であるか否かを判定する。図4Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。図4Aは、同図中右側から1番目の支持部材9c及び2番目の支持部材9cが水平方向に対して角度θ度傾くように、天板9aが変形している場合を示す。また、図4Aでは、同図中右側から1番目の圧力センサ9d及び2番目の圧力センサ9dが圧力N(kgf/cm2)を検知している場合を示す。図4Aに示す場合において、変形制御機能16bは、6個の圧力センサ9dそれぞれにより検知された圧力が、6個の圧力センサ9dそれぞれに対応する圧力の範囲内であるか否かを判定する。
【0051】
検知された全ての圧力のそれぞれが、対応する圧力の範囲内である場合には、現在の天板9aの形状が被検体Sにとって快適な姿勢をとることができるような形状であると考えられる。したがって、このような天板9aの形状を維持させるために、磁気共鳴イメージング装置100は、ステップS103では、これ以上の処理を行わずに、ステップS104に進む。
【0052】
一方、少なくとも一つの圧力センサ9dにより検知された圧力が、対応する圧力の範囲外である場合には、現在の天板9aの形状が被検体Sにとって快適な姿勢をとることができないような形状であると考えられる。そのため、変形制御機能16bは、所定の規則に基づいて、現在の天板9aの形状を変形させる変形指示を寝台制御機能13aに送信する。これにより、変形指示に基づいて天板9aが変形される。
【0053】
図4Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、被検体Sが、腰の曲がり具合が所定の閾値よりも大きい被検体である場合には、変形制御機能16bは、図4B中右側から1番目の伸縮機構9e及び2番目の伸縮機構9eを縮めさせる変形指示を寝台制御機能13aに送信する。変形制御機能16bは、被検体Sが脚を真っ直ぐに伸ばすことが困難な被検体である場合も、同様の変形指示を送信する。これにより、図4Bに示すように、右側から1番目の伸縮機構9e及び2番目の伸縮機構9eが縮められる。この結果、右側から1番目の支持部材9c及び2番目の支持部材9cの水平方向に対する角度が、図4Aに示す状態から(Δθ)度だけ小さくなり、図4Bに示すように(θ-Δθ)度となる。また、右側から1番目の圧力センサ9d及び2番目の圧力センサ9dにより検知される圧力が、図4Aに示す状態から(ΔN)kgf/cm2だけ小さくなり、図4Bに示すように(N-ΔN)kgf/cm2となる。
【0054】
そして、変形制御機能16bは、再び、各圧力センサ9dにより検知された現在の各圧力が、取得済みの各圧力センサ9dに加えられる圧力の範囲内であるか否かを判定する。検知された全ての圧力のそれぞれが、対応する圧力の範囲内である場合には、現在の天板9aの形状を維持させるために、磁気共鳴イメージング装置100は、ステップS103では、これ以上の処理を行わずに、ステップS104に進む。一方、少なくとも一つの圧力センサ9dにより検知された圧力が、対応する圧力の範囲外である場合には、変形制御機能16bは、再び、所定の規則に基づいて、現在の天板9aの形状を変形させる変形指示を寝台制御機能13aに送信する。
【0055】
ステップS103では、変形制御機能16bは、検知された全ての圧力のそれぞれが、対応する圧力の範囲内となるまで、上述したような処理を繰り返し行う。すなわち、ステップS103では、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、天板9aの形状を複数の形状に変形させつつ、複数の圧力センサ9dにより被検体Sに対応する圧力が検知された場合の形状を維持するように天板9aを制御する。ステップS103での処理により、天板9aは、被検体Sの体型に適合するような形状となる。これにより、被検体Sの姿勢が、検査の継続が困難となるような姿勢ではなく、被検体Sにとって快適な姿勢となる。このため、姿勢が快適でないことにより被検体Sが検査を途中で中止することが抑制される。したがって、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、被検体Sの姿勢を快適な姿勢にさせるという点から、検査のスループットを向上させることができる。
【0056】
そして、制御機能16aは、被検体Sの撮像対象部位の中心の位置を磁場中心の位置まで移動させる場合の天板9aの移動量をX軸、Y軸及びZ軸それぞれについて算出する(ステップS104)。
【0057】
そして、磁気共鳴イメージング装置100は、各軸の移動量に基づいて、天板9aを移動させる(ステップS105)。例えば、制御機能16aは、ステップS104で算出された各軸の移動量に基づいて、天板9aを移動させる指示を寝台制御機能13aに送信する。これにより、天板9aが寝台制御機能13aにより移動されて、被検体Sの撮像対象部位の中心の位置が磁場中心の位置と一致するようになる。
【0058】
そして、磁気共鳴イメージング装置100は、プレスキャンを実行し、プレスキャンにより得られたMR信号データに基づいて画像データを生成する(ステップS106)。例えば、制御機能16aは、プレスキャン用のシーケンス実行データを生成し、生成したプレスキャン用のシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、プレスキャンが実行される。また、画像生成機能15aは、プレスキャンにより得られたMR信号データに基づいて画像データを生成する。なお、プレスキャンは、例えば、診断用の画像データを生成するための本スキャンの前に、本スキャンに必要なデータを収集するためのスキャンである。
【0059】
そして、変形制御機能16bは、仮に、本スキャンを実行した場合に、本スキャンにより得られる診断用の画像データに、折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する(ステップS107)。折返しアーチファクトが発生する可能性があると判定した場合には(ステップS107:Yes)、変形制御機能16bは、ステップS108に進む。
【0060】
一方、折返しアーチファクトが発生する可能性がないと判定した場合には(ステップS107:No)、変形制御機能16bは、ステップS109に進む。
【0061】
ステップS107の処理の具体例について説明する。例えば、ステップS107では、変形制御機能16bは、設定情報に基づいて、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する。設定情報は、例えば、折返しアーチファクトを抑制するためにサンプリング領域を拡大するための情報を含む。サンプリング領域は、MR信号のデータ収集が行われる領域である。例えば、設定情報は、「1.1」や「1.3」というように、位相エンコード方向に関する、FOV(Field Of View)の大きさに対するサンプリング領域の割合を示す値を含む。以下ではこの値を、単に「オーバーサンプリングの倍率」として説明する。なお、設定情報として、サンプリング領域とFOVの大きさが実質同じとなるように「1.0」の倍率を設定することもできる。このように、設定情報は、サンプリング領域を設定するための情報(「1.1」、「1.3」及び「1.0」等)を含む。記憶回路12は、このようなFOV及び設定情報を記憶する。また、FOV及び設定情報は、例えば、操作者により設定される。例えば、プレスキャンにより得られた画像データが示す画像がディスプレイ11に表示され、この画像を確認した操作者によりFOV及び設定情報が設定される。例えば、FOVは、被検体Sの撮像対象部位が含まれるように設定される。FOV及び設定情報は、位相エンコード方向の折返しアーチファクトに寄与する撮像条件である。
【0062】
図5Aは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。プレスキャンにより得られた画像データには、被検体Sの腹部S1及び腕S2,S3が含まれる。図5Aには、被検体Sの腹部S1が支持部材9cに載置され、被検体Sの腕S2,S3が支持部材9bに載置されている場合が示されている。また、矢印22が示す方向は、位相エンコード方向を示す。すなわち、図5Aに示す場合には、位相エンコード方向に被検体Sの複数の部位(腹部S1、腕S2,S3)が並んで存在する。
【0063】
そして、図5Aの例では、FOV20内には、複数の部位のうち、腹部S1が含まれている。また、サンプリング領域21内には、複数の部位のうち、腹部S1、腕S2の一部、及び、腕S3の一部が含まれている。また、腕S2及び腕S3は、FOV20外に存在するとともに、腹部S1に対して位相エンコード方向に並んで存在する。腹部S1は、第1の部位の一例である。腕S2及び腕S3は、第2の部位の一例である。
【0064】
ここで、図5Aに示す場合において、オーバーサンプリングの倍率は1.0よりも大きく設定されている。サンプリング領域21の外側に存在する腕S2,S3の一部は、磁気共鳴イメージング装置100により画像再構成処理が行われた場合に折返しアーチファクトとして画像化される。しかし、折返しアーチファクトが、画像データにおいて、サンプリング領域21上であってFOV20の外側となる領域に現れる場合は、FOV20の内側を参照する画像診断においては影響を及ぼさない。したがって、例えば、オーバーサンプリングに関する倍率が1.0よりも大きい場合には、ステップS107において、変形制御機能16bは、折返しアーチファクトが発生する可能性がないと判定する(ステップS107:No)。
【0065】
図5Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。FOV20の設定、並びに、被検体Sの腹部S1及び腕S2,S3の配置は図5Aに示す場合と同じであり、サンプリング領域21の設定が異なる。
【0066】
図5Bの例では、FOV20内には、複数の部位のうち、腹部S1が含まれている。また、サンプリング領域21は、FOV20の領域にほぼ等しい。つまり、腕S2,S3はサンプリング領域21の外側にある。
【0067】
ここで、図5Bに示す場合において、オーバーサンプリングの倍率は1.0に設定されている。サンプリング領域21の外側に存在する腕S2,S3の一部は、磁気共鳴イメージング装置100により画像再構成処理が行われた場合に折返しアーチファクトとして画像化される。図5Aの場合と異なり、折返しアーチファクトが、画像データにおいて、FOV20の内側に現れるため、FOV20の内側を参照する画像診断において不都合である。また、折返しアーチファクトが発生した場合は、撮像のやりなおしが生じ、検査のスループットが低下する。したがって、オーバーサンプリングに関する倍率が1.0である場合には、ステップS107において、変形制御機能16bは、折返しアーチファクトが発生する可能性があると判定する(ステップS107:Yes)。
【0068】
上記のように、ステップS107では、変形制御機能16bは、設定情報に含まれるオーバーサンプリングの倍率が、例えば「1.0」よりも大きいか否かを判定することで、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する。例えば、変形制御機能16bは、設定情報に含まれるオーバーサンプリングの倍率が、「1.0」よりも大きい場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性がないと判定する(ステップS107:No)。一方、変形制御機能16bは、設定情報に含まれるオーバーサンプリングの倍率が、「1.0」である場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があると判定する(ステップS107:Yes)。
【0069】
診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性がある場合、磁気共鳴イメージング装置100は、FOV20に基づいて、天板9aを変形させる(ステップS108)。図5Cは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。ステップS108では、磁気共鳴イメージング装置100は、FOV20外の腕S2及び腕S3が、FOV20に対して位相エンコード方向において並んで存在しなくなるように、図5Cに示すように天板9aを変形させる。
【0070】
これにより、腕S2及び腕S3が、FOV20に対して位相エンコード方向に関して並んで存在しなくなる。このため、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生しない。よって、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、折返しアーチファクトの発生の抑制という点から、検査のスループットを向上させることができる。
【0071】
なお、折返しアーチファクトを抑制する方法として、天板9aを変形させて腕S2,S3を持ち上げる代わりに、サンプリング領域21を位相エンコード方向に広げることも考えられる。しかし、サンプリング領域21を位相エンコード方向に広げると、位相エンコード方向の分解能が下がってしまう。したがって、天板9aを変形させて腕S2,S3を持ち上げることにより、画像データの分解能を維持したまま折返しアーチファクトを抑制することができる。
【0072】
このように、ステップS108では、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、位相エンコード方向の折返しアーチファクトに寄与する撮像条件であるFOV20に基づいて天板9aを変形させる。また、ステップS108では、変形制御機能16b及び寝台制御機能13aは、FOV20に基づいて、折返しアーチファクトが抑制されるように天板9aを変形させる。そして、変形制御機能16bは、ステップS108からステップS109に移行する。
【0073】
ステップS109では、磁気共鳴イメージング装置100は、FOV20で本スキャンを実行し、本スキャンにより得られたMR信号データに基づいて診断用の画像データを生成する。例えば、制御機能16aは、FOV20を用いて本スキャン用のシーケンス実行データを生成し、生成した本スキャン用のシーケンス実行データを処理回路14の実行機能14aに送信することで、本スキャンが実行される。すなわち、ステップS109では、制御機能16a及び実行機能14aは、FOV20を用いて、被検体Sの撮像を行う。そして、画像生成機能15aは、本スキャンにより得られたMR信号データに基づいて診断用の画像データを生成する。
【0074】
以上、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100について説明した。第1の実施形態によれば、折返しアーチファクトが発生する可能性の有無をサンプリング領域21の倍率の情報を含む設定情報に基づいて判定する。そして、第1の実施形態によれば、折返しアーチファクトが発生する可能性が高い場合は、天板9aを変形させて腕S2,S3を持ち上げることにより、折返しアーチファクトの発生を抑制することができる。また、第1の実施形態によれば、折返しアーチファクトの発生を抑制できることにより、検査のスループットの低下を防ぐことができる。また、サンプリング領域21を広げることなく、折返しアーチファクトの発生を抑制できるため、画像データの分解能を劣化させない。
【0075】
(第1の実施形態の変形例1)
なお、第1の実施形態では、ステップS107で、変形制御機能16bが、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かをオーバーサンプリングの倍率を含む設定情報に基づいて判定する場合について説明した。しかしながら、FOV20が十分に大きい場合、オーバーサンプリングの倍率が1.0であっても折返しアーチファクトは発生しない。そこで、第1の実施形態の変形例1として、変形制御機能16bが、FOV20の大きさに基づいて、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する例を説明する。
【0076】
図6は、第1の実施形態の変形例1に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。被検体Sの腹部S1及び腕S2,S3の配置は図5Aに示す場合及び図5Bに示す場合と同じであり、FOV20及びサンプリング領域21の設定が異なる。
【0077】
図6の例では、FOV20およびサンプリング領域21内には、複数の部位のうち、腹部S1および腕S2,S3が含まれる。このとき、オーバーサンプリングの倍率は1.0となるが、サンプリング領域21の外に人体(被検体Sの部位)が位置していないため、折返しアーチファクトの発生のおそれがない。したがって、図6の例に示す場合には、変形性制御機能16bは、天板9aを変形させない。
【0078】
図6の例に相当する場合に対応するため、変形制御機能16bは、天板9aを変形させる前に、FOV20が折返しアーチファクトを発生させない程度に大きいか否かを判定してもよい。例えば、プレスキャンで得られた画像データの輝度値分布に基づいて、FOV20内に被検体Sが収まっているかを判定してもよい。そして、例えば、FOV20の外に被検体Sの一部が位置していないと判定した場合には、変形制御機能16bは、天板9aを変形させないようにする。一方、FOV20の外に被検体Sの一部が位置していると判定した場合には、変形制御機能16bは、天板9aを変形させるようにしてもよい。また、例えば、変形制御機能16bは、天板9aを変形させる前に、操作者に対してFOV20内に被検体Sが収まっているかを問うダイアログを表示するなどして、FOV20が十分に広い旨の入力を受けた場合は天板9aを変形させないようにしてもよい。
【0079】
以上説明した変形例1に係る磁気共鳴イメージング装置100は、オーバーサンプリングの倍率の情報のみならず、FOV20内に被検体Sが収まっているか否かを判定する。この変形例1にかかる構成によれば、折返しアーチファクトが発生する可能性が低い場合には、天板9aを変形させずに検査を進めることができる。
【0080】
(第1の実施形態の変形例2)
なお、第1の実施形態では、ステップS107で、変形制御機能16bが、設定情報に基づいて、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する場合について説明した。しかしながら、ステップS107で、変形制御機能16bが、サンプリング領域21及び撮像対象部位に基づいて、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定してもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の変形例2として説明する。
【0081】
例えば、操作者により入力回路10を用いて設定された撮像対象部位が、記憶回路12に記憶されている。本変形例では、撮像対象部位として「腹部」が設定されている場合について説明する。本変形例に係る変形制御機能16bは、ステップS107で、まず、プレスキャンにより得られた画像データを用いて、位相エンコード方向におけるサンプリング領域21の両端のそれぞれと、腹部S1の位相エンコード方向の端部との位相エンコード方向における距離を算出する。
【0082】
図7は、第1の実施形態の変形例2に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。被検体Sの腹部S1及び腕S2,S3の配置及びサンプリング領域21の設定は図5Aに示す場合と同じである。
【0083】
位相エンコード方向におけるサンプリング領域21の両端のうち一方の端部と、当該端部に近い腹部S1の端部との位相エンコード方向における距離D1を「第1の距離D1」とする。また、位相エンコード方向におけるサンプリング領域21の両端のうち他方の端部と、当該端部に近い腹部S1の端部との位相エンコード方向における距離D2を「第2の距離D2」とする。
【0084】
ここで、第1の距離D1及び第2の距離D2のうち、少なくとも一方の距離が、所定の閾値以下の場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性がある。一方、第1の距離及び第2の距離ともに、所定の閾値よりも大きい場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性がない。
【0085】
そこで、本変形例に係る変形制御機能16bは、ステップS107で、更に、第1の距離D1及び第2の距離D2のうち、少なくとも一方の距離が、所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があるか否かを判定する。具体的には、変形制御機能16bは、第1の距離D1及び第2の距離D2のうち、少なくとも一方の距離が、所定の閾値以下の場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性があると判定する。一方、変形制御機能16bは、第1の距離D1及び第2の距離D2が、所定の閾値よりも大きい場合には、診断用の画像データに折返しアーチファクトが発生する可能性がないと判定する。
【0086】
本変形例におけるステップS108以降の処理は、上述した第1の実施形態におけるステップS108以降の処理と同様である。
【0087】
以上説明した、変形例2に係る磁気共鳴イメージング装置100は、サンプリング領域21と撮像対象部位との距離に応じて折返しアーチファクトが発生する可能性を判定する。変形例2にかかる構成によれば、撮像対象部位に応じて、画像データに被検体Sの撮像部位以外の部位が折返しアーチファクトとして発生することを抑制することができる。
【0088】
以上述べた少なくとも1つの実施形態又は変形例に係る磁気共鳴イメージング装置によれば、検査のスループットを向上させることができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
100 磁気共鳴イメージング装置
9a 天板
13a 寝台制御機能
14a 実行機能
16a 制御機能
16b 変形制御機能
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7