(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
B60H1/00 102K
B60H1/00 102P
(21)【出願番号】P 2018236441
(22)【出願日】2018-12-18
(62)【分割の表示】P 2018536907の分割
【原出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】近川 法之
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335288(JP,A)
【文献】特開2008-094187(JP,A)
【文献】特開2009-143330(JP,A)
【文献】特開2010-018248(JP,A)
【文献】特許第6457160(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を冷やすことで冷風を生成するエバポレータと、
前記エバポレータの下流側に配置されて前記冷風を温めて温風を生成するヒータコアと、
前記エバポレータの上流側に配置されて前記エバポレータに前記空気を供給する空気供給用流路、前記エバポレータの下流側であって前記ヒータコアの上流側に配置されて前記冷風が流れる冷風用流路、前記ヒータコアの下流側に配置されて前記温風が吹き出される温風用流路、及び前記冷風用流路と前記温風用流路とに接続されるとともに前記冷風用流路及び前記温風用流路の下流側に配置されて前記冷風と前記温風が混合されるエアミックス空間を区画する筐体と、
前記エアミックス空間に連通する流路を形成するダクトと、
前記筐体内で前記ヒータコアと前記エバポレータとの間で、前記冷風用流路と前記エアミックス空間とを接続する冷風連通口と、前記温風用流路と前記エアミックス空間とを接続する温風連通口とにわたって配置され、スライド移動することで前記冷風連通口と前記温風連通口との開度の比を調節するダンパと、
前記筐体内の前記ダンパの下流側に、前記筐体とは別部材として設けられ、前記温風用流路から前記ダンパ及び前記エアミックス空間に向かって延び、前記温風の流れる方向に交差する幅方向に互いに離れて配置された複数のフィンを有する案内部材と、
を備え
、
前記複数のフィンは、前記幅方向から前記温風を挟むように設けられており、
前記複数のフィンのうち少なくとも一つのフィンは、前記ダンパに向かうに従って前記幅方向の一方側に向かって傾斜して延びている車両用空調装置。
【請求項2】
前記複数のフィンは、前記ダンパに向かうに従って互いに前記幅方向に近接するように傾斜して延びている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記複数のフィンのすべては、前記ダンパに向かうに従って前記幅方向の一方側に向かって傾斜して延びている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記案内部材は、前記幅方向に延びて前記筐体に着脱可能に支持されて、かつ、前記複数のフィンを支持するベース部をさらに有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記案内部材は、前記幅方向に延びて前記筐体に一体に設けられ、かつ、前記複数のフィンを着脱可能に支持するベース部をさらに有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に適用される車両用空調装置は、エバポレータ及びヒータコアを収容する筐体内において、エバポレータを通じて発生する冷風と、冷風の一部を用いてヒータコアが生成する温風と、を適宜混合することで所望の温度の空気を車内に送風する。このような装置の具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に係る空調装置は、ケーシング(空調ユニット)内に、エバポレータを通過した風が流れる冷風通路と、ヒータコアを通過した風が流れる温風通路と、これら冷風通路を通過した冷風と温風通路を通過した温風の混合割合を調節するためのミックスダンパと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では車両用空調装置の小型化が進められている。特に小型車ではスペースが限定的であることから、空調装置に対する小型化の要求が大きい。このため、空調ユニット内の容積に制約が生じ、上記の冷風通路、温風通路、及び冷風と温風とを混合させるための空間(エアミックス空間)が従来よりも狭くなる傾向にある。その結果、冷風と温風が十分に混合されずに室内に供給されてしまう場合がある。
【0005】
そこで本発明は、設置スペースが小さくとも、適切に車内の温度調節が可能な車両用空調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この構成によれば、車両用空調装置は、複数のフィンを有する案内部材を備えている。複数のフィンは温風用流路からエアミックス空間に向かって延びている。したがって、これらフィンによって冷風及び温風の流れを乱して複雑な流れを生み出すことができる。よって、冷風と温風の混合を促進することができる。さらに複数のフィンは、幅方向から温風を挟むように設けられていることになり、温風がエアミックス空間に向かうにつれて幅方向外側に広がることを抑制でき、温風の流速が増す。その結果、エアミックス空間内を流通する冷風に対する温風の貫通力が増大し、温風が冷風によって吹き飛ばされてしまうことがなくなる。よって温風と冷風とを十分に混合することができる。
また、少なくとも一つのフィンがダンパに向かうに従って幅方向の一方側に向かって傾斜して延びている。これにより、フィンに沿って温風を幅方向の一方側に案内することができる。その結果、冷風と温風が入れ替わるような流れとすることができ、温風と冷風との混合を促進することができる。
【0007】
この構成によれば、車両用空調装置は、複数のフィンを有する案内部材を備えている。複数のフィンは温風用流路からエアミックス空間に向かって延びている。したがって、これらフィンによって冷風及び温風の流れを乱して複雑な流れを生み出すことができる。よって、冷風と温風の混合を促進することができる。さらに複数のフィンは、幅方向から温風を挟むように設けられていることになり、温風がエアミックス空間に向かうにつれて幅方向外側に広がることを抑制でき、温風の流速が増す。その結果、エアミックス空間内を流通する冷風に対する温風の貫通力が増大し、温風が冷風によって吹き飛ばされてしまうことがなくなる。よって温風と冷風とを十分に混合することができる。
【0008】
また、上記の車両用空調装置では、前記案内部材は、前記幅方向に延びて前記筐体に着脱可能に支持されて、かつ、前記複数のフィンを支持するベース部をさらに有してもよい。
【0009】
この構成によれば、案内部材がベース部によって筐体に対して着脱可能に支持されている。これにより、筐体を例えば樹脂による射出成形で形成する場合に、案内部材の形状を考慮することなく金型を製作することができる。さらに、金型による制約を受けないことから、案内部材自体の形状にも自由度を持たせることができる。
【0010】
また、上記の車両用空調装置では、前記案内部材は、前記幅方向に延びて前記筐体に一体に設けられ、かつ、前記複数のフィンを着脱可能に支持するベース部をさらに有してもよい。
【0011】
この構成によれば、筐体と一体のベース部によって、複数のフィンが筐体に対して着脱可能に設けられている。これにより複数のフィンの形状、設置方向、及び設置位置などを温風の流れに合わせて容易に変更可能である。
【0014】
また、上記の車両用空調装置では、前記複数のフィンは、前記ダンパに向かうに従って互いに前記幅方向に近接するように傾斜して延びていてもよい。
【0015】
この構成によれば、複数のフィンが互いに近接するように傾斜して延びている。これにより、フィン同士の間の空間(流路)が温風の流れの下流側に向かって狭くなっていき、フィン同士の間の空間を通過する温風の流速を高めることができる。その結果、温風と冷風との混合をさらに促進することができる。
【0016】
また、上記の車両用空調装置では、前記複数のフィンのすべては、前記ダンパに向かうに従って前記幅方向の一方側に向かって傾斜して延びていてもよい。
【0017】
この構成によれば、複数のフィンがダンパに向かって互いに同じ方向に傾斜して延びている。これにより、フィンによって温風を円滑に幅方向の一方側に案内することができる。その結果、冷風と温風が入れ替わるような流れとすることができ、温風と冷風との混合を促進することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記の車両用空調装置によれば、設置スペースが小さくとも、適切に車内の温度調節を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る車両用空調装置の要部拡大図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る案内部材の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る案内部材の変形例を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る案内部材の構成を示す図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る案内部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。本実施形態に係る車両用空調装置10は、筐体11と、送風機13と、エバポレータ15と、ヒータコア17と、スライドダンパ19と、ロータリーダンパ28と、デフ及びフェイス用ダンパ31と、案内部材40と、を有する。
【0021】
筐体11は、送風機収容空間11Aと、空気供給用流路11Bと、エバポレータ収容空間11Cと、冷風用流路11Dと、ヒータコア収容空間11Eと、温風用流路11Fと、エアミックス空間11Gと、デフ及びフェイス用流路11H(ダクト)と、フェイス吹出口11Iと、デフ吹出口11Lと、を区画している。
【0022】
送風機収容空間11Aは、送風機13を収容する空間である。空気供給用流路11Bは、送風機収容空間11A及びエバポレータ収容空間11Cに連通している。空気供給用流路11Bは、エバポレータ15の上流側に配置されている。
エバポレータ収容空間11Cは、空気供給用流路11Bの下流側に配置されている。エバポレータ収容空間11Cは、エバポレータ15を収容するための空間である。
【0023】
冷風用流路11Dは、エバポレータ収容空間11Cの下流側に配置されている。冷風用流路11Dは、エバポレータ収容空間11C及びヒータコア収容空間11Eに連通している。冷風用流路11Dの出口のうち、スライドダンパ19(後述)の上側の領域は冷風連通口51とされ、下側の領域は温風連通口52とされている。
【0024】
ヒータコア収容空間11Eは、冷風用流路11Dの下流側に配置されている。ヒータコア収容空間11Eは、ヒータコア17を収容するための空間である。
【0025】
温風用流路11Fは、ヒータコア収容空間11Eの下流側に配置されており、ヒータコア収容空間11Eと接続されている。温風用流路11Fには、ヒータコア17により生成された温風が吹き出される。なお、以降の説明では、温風の流れ方向に交差(直交)する方向を幅方向D1と呼ぶことがある。さらに、この幅方向D1に対して水平面内で直交する方向を前後方向D2と呼ぶことがある。
【0026】
エアミックス空間11Gは、冷風用流路11D及び温風用流路11Fの下流に配置されている。スライドダンパ本体19B(スライドダンパ19の構成要素のうちの1つ)が
図1に示す位置にある時、エアミックス空間11Gは、上述の冷風連通口51及び温風連通口52を介して、冷風用流路11D及び温風用流路11Fに連通している。
【0027】
スライドダンパ本体19Bが
図1に示す位置にある状態では、エアミックス空間11Gには、冷風用流路11Dを通過した冷風と、温風用流路11Fを通過した温風とが供給される。エアミックス空間11Gでは、冷風と温風とが混合されて、所望の温度とされた空気が生成される。
【0028】
なお、スライドダンパ本体19Bが下方にスライドして、エバポレータ15からの冷風がヒータコア17に供給されない状態では、エアミックス空間11Gには、冷風のみが供給される。
【0029】
ロータリーダンパ28は、エアミックス空間11Gに配置されている。ロータリーダンパ28は、デフ及びフェイス用流路11Hの入口の開度、フロントフット用流路(図示省略)、及びリアフット用流路(図示省略)の開度を調節する。ロータリーダンパ28は、回転軸60と、回転軸60とともに回動するダンパ本体61と、を有する。
【0030】
デフ及びフェイス用流路11Hは、エアミックス空間11Gの上方に配置されている。ロータリーダンパ28が
図1に示す位置にある状態では、デフ及びフェイス用流路11Hは、エアミックス空間11Gに連通している。この状態において、デフ及びフェイス用流路11Hには、エアミックス空間11Gを通過した空気が供給される。なお、ロータリーダンパ28がデフ及びフェイス用流路11Hの入口を塞いだ場合には、デフ及びフェイス用流路11Hには、エアミックス空間11Gを通過した空気は供給されない。
【0031】
フェイス吹出口11Iは、デフ及びフェイス用流路11Hの下流に配置されており、デフ及びフェイス用流路11Hに連通している。
【0032】
デフ吹出口11Lは、デフ及びフェイス用流路11Hの下流に配置されており、デフ及びフェイス用流路11Hに連通している。デフ吹出口11Lは、フェイス吹出口11Iよりも送風機13側に配置されている。
【0033】
送風機13は、送風機収容空間11Aに配置されている。送風機13は、空気供給用流路11Bに空気を供給する。エバポレータ15は、エバポレータ収容空間11Cに配置されている。エバポレータ15は、送風機13から供給された空気を冷やすことで冷風を生成する。生成された冷風は、冷風用流路11Dを流れる。
【0034】
ヒータコア17は、ヒータコア収容空間11Eに配置されている。ヒータコア17は、エバポレータ15から冷風が供給された際、冷風を温めることで、温風を生成する。生成された温風は、温風用流路11Fを流れる。
【0035】
スライドダンパ19は、エバポレータ15とヒータコア17との間に配置されている。スライドダンパ19は、回転軸19Aと、スライドダンパ本体19Bと、を有する。回転軸19Aは、軸線回りに回動可能なギアである。回転軸19Aの周方向には、複数の歯が形成されている。
【0036】
スライドダンパ本体19Bは、回転軸19Aよりもヒータコア17側に配置されている。スライドダンパ本体19Bは、回転軸19Aの歯と係合するラックギアを有する。
図1に示す状態において、回転軸19Aが右回りに回転すると、スライドダンパ本体19Bは、下方にスライド(移動)する。その結果、冷風連通口51が温風連通口52よりも大きく開放された状態となる。一方、回転軸19Aが左回りに回転すると、スライドダンパ本体19Bは、上方にスライド(移動)する。その結果、温風連通口52が冷風連通口51よりも大きく開放された状態となる。即ち、スライドダンパ19は、スライド移動することで冷風連通口51と温風連通口52との開度の比を調節する。
【0037】
デフ及びフェイス用ダンパ31は、フェイス吹出口11I、及びデフ吹出口11Lとの間に位置する筐体11の内側に回動可能な状態で設けられている。デフ及びフェイス用ダンパ31は、フェイス吹出口11I、及びデフ吹出口11Lの開度を調節するためのダンパである。
【0038】
案内部材40は、温風用流路の下流側に配置されている。案内部材40は、温風用流路から流れ出た温風を整流するために設けられている。案内部材40は、ベース部41と、複数のフィン42と、を有している。
【0039】
ベース部41は、ヒータコア17の上端部からわずかに上方に離間して配置された板状の部材である。
図2に示すように、ベース部41は、前後方向D2他方側に設けられた第一支持部41Aと、前後方向D2一方側に設けられた第二支持部41Cと、これら第一支持部41A及び第二支持部41Cの間に前後方向D2にわたって延びるベース部本体41Bと、を有している。第一支持部41Aは、上方から下方に向かうに従って、前後方向D2における寸法が次第に小さくなることで、断面が三角形状をなしている。第二支持部41Cは、下方から上方に向かうに従って、前後方向D2における寸法が次第に小さくなることで、断面が三角形状をなしている。
【0040】
第一支持部41Aには、幅方向D1に沿って延びるピン41Dが設けられている。第二支持部41Cには、同様に幅方向D1に沿って延びるピン41Eが設けられている。筐体11の内面に形成された穴(不図示)にこれらピン41D,41Eを挿入することで、案内部材40が筐体11内で着脱可能に支持される。ベース部本体41Bの一方側の面は、エアミックス空間11Gを向いている。一方で、ベース部本体41Bの他方側の面は、ヒータコア17側を向いている。
【0041】
図1、及び
図2に示すように、ベース部41(ベース部本体41B)の一方側の面上には、複数のフィン42が一体に設けられている。各フィン42は、ベース部41からエアミックス空間11G側(上側)及びスライドダンパ19側(前側)に向かって突出する矩形板状をなす。ただしフィン42の形状は矩形には限定されない。本実施形態では、各フィン42の突出高さは、温風用流路側からヒータコア収容空間側に向かうに従って次第に大きくなっている。さらに、
図2に示すように、スライドダンパ本体19Bが最も下方にある状態(即ち、温風用流路11Fがスライドダンパ本体19Bによって閉塞されている状態)において、各フィン42はスライドダンパ本体19Bの上端部の高さ(
図2中の鎖線で示す位置)よりもわずかに上方に突出している。即ち、各フィン42の上端は、エアミックス空間11Gの下方の冷風連通口51の中途の高さの位置に配置されている。よって各フィン42は冷風連通口51を高さ方向の全域で遮ることがなく、高さ方向の一部のみで遮るように設けられている。また、各フィン42の前方の端部は冷風連通口51に対して後方に離れた位置に配置されている。
【0042】
図3に示すように、本実施形態に係る案内部材40は、4つのフィン42を有している。これら4つのフィン42は、幅方向D1に間隔をあけて配列されている。幅方向D1における一方側に位置する2つのフィン42は、前後方向D2の一方側から他方側(即ち、スライドダンパ19側)に向かうに従って、幅方向D1の一方側から他方側に向かって傾斜して延びている。幅方向D1における他方側に位置する2つのフィン42は、前後方向D2の一方側から他方側に向かうに従って、幅方向D1の他方側から一方側に向かって傾斜して延びている。言い換えると、一対ずつのフィン42が、前後方向D2一方側から他方側に向かうに従って次第に近接するように配置されている。
【0043】
本実施形態では、案内部材40は筐体11に対して別部材として形成されている。即ち、案内部材40は、筐体11に着脱可能に取り付けられている。上記の説明では複数のフィン42がベース部41に対して一体に形成されている例について説明した。しかしながら、各フィン42のみを、筐体11に一体に設けられたベース部41に対して着脱可能とすることも可能であるし、筐体11に対してベース部41が着脱可能であり、かつ、ベース部41に対してフィン42も着脱可能であってもよい。
【0044】
続いて、本実施形態に係る車両用空調装置10の動作について説明する。車両用空調装置10を運転するに当たっては、まず送風機13を稼動させる。送風機13の稼動に伴って、空気供給用流路11Bを空気が流通する。空気供給用流路11Bを通過した空気は、エバポレータ15に接触することで熱交換されて冷風となり、冷風用流路11Dに流れ込む。スライドダンパ本体19Bが
図1に示す位置にある状態では、冷風用流路11Dに流れ込んだ空気の一部は、スライドダンパ本体19Bの下方(温風連通口52)を通過してヒータコア収容空間11Eに流れ込む。ヒータコア収容空間11Eに流れ込んだ空気は、ヒータコア17に接触することで熱交換されて温風となる。この温風は、温風用流路11Fを通じて上述のエアミックス空間11Gに向かう。一方で、冷風用流路11Dに流れ込んだ空気の残余の成分は、スライドダンパ本体19Bの上方(冷風連通口51)を通過してエアミックス空間11Gに向かう。即ち、エアミックス空間11Gでは、冷風と温風とが、スライドダンパ本体19Bの位置に応じた割合で混合される。
【0045】
ここで、近年では空調装置の小型化が進められている。特に小型車ではスペースが限定的であることから、空調装置に対する小型化の要求が大きい。このため、空調ユニット内の容積に制約が生じ、上記の冷風用流路11D、温風用流路11F、及び冷風と温風とを混合させるための空間(エアミックス空間11G)が従来よりも狭くなる傾向にある。その結果、冷風と温風が十分に混合されずに室内に供給されてしまう場合がある。
【0046】
特に、上記の車両用空調装置において、冷風は冷風用流路11Dから直接エアミックス空間11Gに到達するのに対して、温風は冷風用流路11D、ヒータコア17、及び温風用流路11Fを通じてエアミックス空間11Gに到達する。つまり、冷風流路11Dに比べ温風流路11Fは、流路の圧力損失が大きい為、温風の流速が低下してしまう可能性がある。温風の流速が低下すると、エアミックス空間11Gで冷風と混合される際に、相対的に高速である冷風によって温風が吹き飛ばされ、両者が十分に混合されなくなってしまう。その結果、精緻な温度調節に困難が生じる可能性がある。
【0047】
しかしながら、本実施形態に係る車両用空調装置では、温風用流路11Fの下流側に、複数のフィン42を有する案内部材40が設けられている。複数のフィン42は、温風用流路からエアミックス空間に向かって延びている。したがって、これらフィン42によって冷風及び温風の流れを乱して複雑な流れを生み出すことができる。よって、冷風と温風の混合を促進することができる。さらに複数のフィン42が幅方向D1から温風を挟むように設けられていることで、温風がエアミックス空間11Gに向かうにつれて幅方向D1外側に広がることを抑制でき、温風の流速が増す。その結果、エアミックス空間内を流通する冷風に対する温風の貫通力が増大し、温風が冷風によって吹き飛ばされてしまうことがなくなる。よって温風と冷風とを十分に混合することができる。
【0048】
さらに、上記の構成によれば、案内部材40がベース部41によって筐体11に対して着脱可能に支持されている。これにより、筐体11を例えば樹脂による射出成形で形成する場合に、案内部材40の形状を考慮することなく金型を製作することができる。さらに、案内部材40を着脱可能な構成としたことから、案内部材40自体の形状にも自由度を持たせることができる。
【0049】
加えて上述したように筐体11と一体のベース部41と着脱可能に複数のフィン42が設けられていることで複数のフィン42が筐体11に対して着脱可能に設けられている場合には、複数のフィン42の形状、設置方向、及び設置位置などを温風の流れに合わせて容易に変更可能である。
【0050】
さらに、上記の構成によれば、複数のフィン42が互いに近接するように傾斜して延びている。これにより、フィン42同士の間の空間(流路)が温風の流れの下流側に向かって狭くなっていき、フィン42同士の間の空間を通過する温風の流速を高めることができる。その結果、温風と冷風との混合をさらに促進することができる。
【0051】
さらに、上記の構成によれば、各フィン42の上端を、エアミックス空間11Gの下方の冷風連通口51の中途の高さ位置に配置した構成とすることにより、冷風連通口51の上部における冷風連通口51付近の領域で、冷風が各フィン42に干渉してしまうことを最小限に抑制でき、この領域での冷風の好適な流通を確保することができる。これにより、特に最大冷房運転時(冷風連通口51の開度が最大になっている時)の騒音及び振動が抑制されるとともに圧力損失の増大による装置全体の効率低下が抑制される。また、各フィン42の前方の端部は冷風連通口51に対して後方に離れた位置に配置されているため、冷風の流通を大きく妨げることがない。
【0052】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、案内部材40のフィン42の数が4つである例について説明した。しかしながら、フィン42の数は4つに限定されず、仕様や設計に応じて適宜に変更することが可能である。例えば
図4に示すように、2つのみのフィン42を設けることも可能である。
【0053】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、
図5を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態では、案内部材40が2つのみのフィン42Bを有し、かつ、これらフィン42Bが互いに同一の方向に向かって延びている。具体的には、各フィン42Bは、前後方向D2一方側から他方側に向かうに従って、幅方向D1他方側から一方側に向かって傾斜して延びている。各フィン42Bは互いに同じ方向に傾斜して延びていればよく、互いに平行に延びていていもよいし、互いに幅方向D1に対する傾斜角度が異なっていてもよい。
【0054】
この構成によれば、複数のフィン42Bがスライドダンパ19に向かって互いに同じ方向に傾斜して延びている。これにより、フィン42Bによって温風を円滑に幅方向D1の一方側に案内することができる。その結果、冷風と温風が入れ替わるような流れとすることができ、温風と冷風との混合を促進することができる。
【0055】
以上、本発明の第二実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、案内部材40のフィン42Bの数が2つである例について説明した。しかしながら、フィン42Bの数は2つに限定されず、仕様や設計に応じて適宜に変更することが可能である。また、フィン42Bは、上述の場合とは逆に前後方向D2一方側から他方側に向かうに従って、幅方向D1一方側から他方側に向かって傾斜して延びていてもよい。
【0056】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第四実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、案内部材40が2つのみのフィン42C,42Dを有し、これらフィン42C,42Dが互いに異なる方向に延びている。幅方向D1他方側に位置するフィン42Cは、前後方向D2一方側から他方側に向かうに従って幅方向D1他方側から一方側に向かって延びている。一方で、幅方向D1一方側に位置するフィン42Dは、前後方向D2に延びている。
【0057】
この構成によれば、複数のフィン42C,42Dがダンパに向かって互いに同一の方向に延びている。これにより、温風を円滑に案内することができる。さらに、2つのフィン42C,42Dが前後方向D2他方側に向かうに従って次第に近接するように配列されているため、温風の流速を増加させることができる。その結果、温風と冷風との混合を促進することができる。
【0058】
以上、本発明の第三実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、案内部材40のフィン42C,42Dの数が2つである例について説明した。しかしながら、フィン42C,42Dの数は2つに限定されず、仕様や設計に応じて適宜に変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記の車両用空調装置では、設置スペースが小さくとも、適切に車内の温度調節を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用空調装置
11…筐体
11A…送風機収容空間
11B…空気供給用流路
11C…エバポレータ収容空間
11D…冷風用流路
11E…ヒータコア収容空間
11F…温風用流路
11G…エアミックス空間
11H…デフ及びフェイス用流路(ダクト)
11I…フェイス吹出口
11L…デフ吹出口
13…送風機
15…エバポレータ
17…ヒータコア
19…スライドダンパ
19A,60…回転軸
19B…スライドダンパ本体
28…ロータリーダンパ
31…デフ及びフェイス用ダンパ
40…案内部材
41…ベース部
41A…第一支持部
41B…ベース部本体
41C…第二支持部
41D,41E…ピン
42…フィン
51…冷風連通口
52…温風連通口
61…ダンパ本体
D1…幅方向
D2…前後方向