(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】ラス型枠
(51)【国際特許分類】
E04B 2/86 20060101AFI20230919BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20230919BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
E04B2/86 601Z
E04B1/16 D
E02D27/01 C
(21)【出願番号】P 2019061726
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018064391
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510144591
【氏名又は名称】BASFジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 道弘
(72)【発明者】
【氏名】玉木 秀和
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-283277(JP,A)
【文献】特開平05-033387(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0114572(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/00 - 2/54
E04B 2/84 - 2/86
E04G 9/00 - 19/00
E04G 25/00 - 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状材料を所定形状に固化させるのに用いられる型枠であって、メッシュ領域を有するラス型枠本体部と、上記ラス型枠本体部の内側となる面に設けられたシート材とを備えており、
上記シート材を上記ラス型枠本体部の下側から半分の高さまたはこの高さよりも低い高さで存在させたことを特徴とするラス型枠。
【請求項2】
液状材料を所定形状に固化させるのに用いられる型枠であって、メッシュ領域を有するラス型枠本体部と、上記ラス型枠本体部の内側となる面に設けられたシート材とを備えており、上記シート材の下端側が、上記ラス型枠本体部の下端の下から外側に回り込
んでおり、上記ラス型枠本体部の上記メッシュ領域を形成する孔よりも小さい孔であって、モルタルまたはノロを排出できる大きさの孔が、上記ラス型枠本体部の上端よりも低い位置に形成されていることを特徴とするラス型枠。
【請求項3】
請求項
2に記載のラス型枠において、上記シート材の上端側が、上記ラス型枠本体部の上端を越えて位置することを特徴とするラス型枠。
【請求項4】
請求項1
~請求項3のいずれか1項に記載のラス型枠において、上記シート材は、透水性を有することを特徴とするラス型枠。
【請求項5】
請求項
4に記載のラス型枠において、上記シート材は、繊維状材を織ってなる織布または繊維状材を絡ませた不織布からなることを特徴とするラス型枠。
【請求項6】
請求項
4に記載のラス型枠において、上記シート材に水分を排出できる貫通孔が形成されていることを特徴とするラス型枠。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のラス型枠において、上記シート材は、経時で分解される素材からなることを特徴とするラス型枠。
【請求項8】
請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載のラス型枠において、上記シート材は、透明または半透明であるか、或いは、水分で変色することを特徴とするラス型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状材料を所定形状に固化させるのに用いられる型枠に係り、特にコンクリート地中梁等の硬化後も残置させておくラス型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メッシュ板やラス網等を用いたラス型枠をコンクリート地中梁等の型枠として用いる工法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ラス型枠を用いたコンクリート地中梁等の作製においては、コンクリートの打設時にメッシュ領域(網目)から多くの量のノロ漏れが生じるため、コンクリートを余分に打設する必要があり、その分、材料コストが増加するという欠点がある。さらに、木製型枠や鋼製型枠に比べ、表層の密実度や建て込み精度が劣るために、かぶり厚さを厚くしており、これによってもコンクリートを余分に打設する必要が生じる。また、漏れ出たノロの清掃が必要になり、作業コストも増加する。さらに、作業者がノロ漏れを抑えようとして、バイブレータによるコンクリートの締固めが疎かになると、ジャンカ発生のおそれが高くなる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、ノロ漏れを抑制することができるラス型枠を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のラス型枠は、上記の課題を解決するために、液状材料を所定形状に固化させるのに用いられる型枠であって、メッシュ領域を有するラス型枠本体部と、上記ラス型枠本体部の内側となる面に設けられたシート材とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、このラス型枠を用いた現場型枠によるコンクリート地中梁等の作製において、上記現場型枠内に充填された液状材料としてのコンクリート等は、上記シート材によって堰き止められてメッシュ領域を通過することができない。すなわち、上記ラス型枠本体部の内側となる面に上記シート材が介在することによってノロ漏れが抑制されることになる。これにより、ノロ漏れに起因する従来のラス型枠における諸問題を解決することが可能になる。また、ラス型枠の取り扱い等が特に変更されるわけではないので、ラス型枠としての利点が損なわれることもない。
【0008】
上記シート材は、透水性を有していてもよい。これによれば、コンクリート内の余剰水を、上記シート材を介して排出することができる。このような透水性のシート材は、繊維状材を織ってなる織布または繊維状材を絡ませた不織布からなっていてもよい。或いは、上記シート材に水分を排出できる貫通孔が形成されていてもよい。
【0009】
上記シート材は、経時で分解される素材からなっていてもよい。これによれば、例えば、数十年経過後のコンクリート地中梁等を、その解体後にコンクリートガラとして再利用することが容易になる。また、上記シート材が、例えば、数時間から1週間程度で分解される素材からなる場合は、コンクリート充填時に上記シート材が破れて巻き込まれても、上記のように分解されることで、コンクリート体に大きな欠損が生じるのを防止しうる。
【0010】
上記シート材は、透明または半透明であるか、或いは、水分で変色するものであってもよい。これによれば、コンクリートの充填状況をこれまでのラス型枠同様に目視で確認することが可能となる。
【0011】
ここで、コンクリートにおけるノロ漏れは型枠の下部側ほど多く発生する。上記シート材は、上記ラス型枠本体部の上端よりも低い高さで設けられていてもよいものであり、この場合、上記シート材の量を極力少なくしつつ型枠の下部側でのノロ漏れを効果的に抑制することができる。
【0012】
上記シート材の上端側が、上記ラス型枠本体部の上端を越えて位置してもよい。これによれば、上記シート材の上端側を、上記ラス型枠本体部の上端側にクリップ等を用いて留めることができる。これにより、型枠内に投入されるコンクリートが上記シート材に当たっても、当該シート材がコンクリートに巻き込まれるのを防止できる。
【0013】
上記シート材の下端側が、上記ラス型枠本体部の下端の下から外側に回り込んでもよい。これによれば、例えば、上記シート材の下端側に釘等を打ち込んで、上記ラス型枠本体部の下端の下から外側にノロが漏出するのを抑制することができる。
【0014】
上記ラス型枠本体部の上記メッシュ領域を形成する孔よりも小さい孔であって、モルタルまたはノロを排出できる大きさの孔が、上記ラス型枠本体部の上端よりも低い位置に形成されていてもよい。これによれば、上記孔によって、上記ラス型枠本体部の外側にモルタルまたはノロが漏出するが、このモルタルまたはノロは上記シート材の下端側の外側に回り込んだ部分で受け止められる。そして、この受け止めたモルタルまたはノロが重しとなって、上記ラス型枠本体部の下端の下から外側にノロが漏出するのを抑制することができる。また、上記シート材上にモルタルまたはノロが溜まるので、モルタルまたはノロの除去が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、コンクリートのノロ漏れに起因する従来のラス型枠における諸問題を解決することが可能になる。例えば、コンクリート量を低減できるとともに、バイブレータによる締め固め作業が躊躇なく行えるようになり、ジャンカの発生を低減できる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施形態のラス型枠をそのラス型枠本体部とシート材とに分離させて示した説明図である。
【
図2】
図1のラス型枠におけるラス型枠本体部を例示した説明図である。
【
図3】
図1のラス型枠を用いて作製されたコンクリート型枠を示した説明図である。
【
図4】他の実施形態のラス型枠を示した説明図である。
【
図5】
図4のラス型枠を用いて作製されたコンクリート型枠を示した説明図である。
【
図6】
図1のラス型枠で生じるノロ漏れを示した説明図である。
【
図7】他の実施形態のラス型枠を用いて作製されたコンクリート型枠を示した説明図である。
【
図8】他の実施形態のラス型枠を用いて作製されたコンクリート型枠を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、この実施形態のラス型枠1は、コンクリート等の液状材料を所定形状に固化させるのに用いられる型枠であって、孔部が多数形成されたメッシュ領域2aを有する金属製のラス型枠本体部2と、上記ラス型枠本体部2の内側となる面に貼り付けられたシート材3とを備える。このシート材3の取り付けは、例えば、工場内において、刷毛やスプレー等によって、接着剤を上記ラス型枠本体部2の内側となる面に塗布し、上記シート材3を上記ラス型枠本体部2の内側となる面に当てて接着させることにより行うことができる。或いは、上記シート材3が熱で溶融するような素材であれば、熱溶着によって上記シート材3を上記ラス型枠本体部2に貼り付けることもできる。もちろん、上記接着や溶着に限らず、糸や紐を用いて上記シート材3の複数箇所を上記メッシュ領域2aの非孔部に縫い付けるようにしてもよい。また、上記ラス型枠本体部2の縁を折り曲げて上記シート材3の縁を、圧着保持するようにしてもよい。
【0018】
上記ラス型枠本体部2は、
図2に示すように、メッシュ領域2aの他、例えば、鉄線等による外枠部2b、鉄線等による横補強部2c、鉄線等による縦補強部2d等を備えていてもよい。また、上記シート材3は、充填されるコンクリートの圧力でラス型枠本体部2側に押されて変形し、メッシュ領域2aの網目を塞ぐ柔軟性を有している。また、上記シート材3の素材は特に限定されず、ビニールシート等を用いることができる。
【0019】
上記ラス型枠1は、例えば、
図3に示すように、捨てコンクリート4上でコンクリート地中梁等を作製するために用いられる。上記ラス型枠1は基本的に2枚のラス型枠1を向かい合わせにして用いられる。この向かい合う面が、上記ラス型枠本体部2の内側面となる。なお、
図3においては、上記シート材3を太破線で示しており、コンクリート5を仮想線で示している。
【0020】
上記ラス型枠1を用いたコンクリート型枠100の作製については、既存の作製法を用いることができる。例えば、上記コンクリート型枠100は、向かい合うラス型枠1、1を一定間隔に保持するセパレータ101と、上記ラス型枠1に通されて上記ラス型枠1を外側から押さえる商品名フォームタイ102と、上記ラス型枠1の外側に立てられた縦部材(縦単管、縦端太等)103と、上記フォームタイ102の軸部を上下から挟むように上記縦部材103の外側に設けられた横部材(横単管、横端太等)104とを備える。上記横部材104は、上記フォームタイ102によって上記ラス型枠1側に締め付けられる。なお、上記セパレータ101は、上記ラス型枠本体部2のメッシュ領域2aの網目を通して設けられるとともに上記シート材3に貫通孔を形成して通すことができる。また、コンクリート硬化後は、セパレータ101、フォームタイ102、縦部材103、横部材104は取り外されるが、上記ラス型枠1は残置され、また、上記コンクリートによる作製物であるコンクリート地中梁は土で埋め戻される。
【0021】
このように、上記ラス型枠1を用いた現場のコンクリート型枠100によるコンクリート地中梁等の作製過程において、上記コンクリート型枠100内に充填された液状材料としてのコンクリートは、上記シート材3によって堰き止められてメッシュ領域2aを通過することができない。すなわち、上記ラス型枠本体部2の内側となる面に上記シート材3が介在することによってノロ漏れが抑制されることになる。これにより、ノロ漏れに起因する従来のラス型枠における諸問題を解決することが可能になる。
【0022】
すなわち、コンクリート充填時のノロ漏れが低減されるので、コンクリート量を低減でき、また、コンクリート地中梁等のかぶり厚さを増す程度を0~5mm程度にできるので、材料コストを低減することがでる。また、同様にコンクリート充填時のノロ漏れが低減されるので、バイブレータによる締め固め作業が躊躇なく行えるようになり、ジャンカの発生を低減することができる。また、ラス型枠の取り扱い等が特に変更されるわけではないので、ラス型枠としての利点が損なわれることもない。
【0023】
上記シート材3は、ビニールシート等に限定されず、透水性を有する素材からなっていてもよい。また、素材自体が透水性を有しなくても、この透水性を有しない素材の繊維状材を織ってなる織布または、繊維状材を絡ませた不織布をシート材3として透水性を持たせることができる。なお、織布とする場合、幅が数mmから数十mm程度の広幅の繊維状材を用いることもできる。
【0024】
上記シート材3がこのような透水性を有すると、ノロ漏れを防止しつつ余剰水を型枠側面から外側に出すことができるようになる。また、上記織布または不織布によるシート材3であれば、上記セパレータ101をシート材3に通す操作を行い易くできる。また、透水性を有するシート材3としては、透水性を有しない素材のシート材に水分を排出できる貫通孔(例えば、直径0.5~3mm程度の貫通孔)が多数形成されたものとすることもできる。
【0025】
上記シート材3は、経時で分解される素材からなっていてもよい。例えば、アルカリ性の水で分解されるキトサン等を用いたフィルムをシート材3とすることができる。これによれば、上記コンクリートのアルカリ性で上記シート材3を分解させることができるため、上記コンクリート地中梁等の解体後、コンクリートガラとして再利用することが容易になる。また、上記シート材3の分解が数時間から1週間程度で生じるようであれば、コンクリート充填時に上記シート材3が破れて巻き込まれても、このシート材は分解によって消失し得るため、シート巻き込みによる無コンクリート部の発生も抑制できる。
【0026】
また、経時で分解する素材として、土中において微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解される生分解性樹脂を用いてもよい。例えば、上記シート材3を、カルボニル基を有する生分解性樹脂で製造してもよい。カルボニル基を有する生分解性樹脂としては、芳香族ポリエステルのBASF社製の商品名エコフレックス (PBAT / Polybutylene Adipate Terephthalate copolymer / ポリブチレンアジペート・テレフタレート共重合体)、BASF社製の商品名エコバイオ(商品名エコフレックスとポリ乳酸のコンパウンド材料)がある。また、その他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系材料等がある。もちろん、生分解性樹脂は、上記のような樹脂に限られない。
【0027】
このように、上記シート材3が上記の生分解性樹脂からなっている場合においてコンクリート地中梁等が作成されると、経時(経年)で上記シート材3が分解するため、上記コンクリート地中梁等の解体後、コンクリートガラとして再利用することが容易になる。
【0028】
なお、先述した繊維状材についても、このような経時で分解する素材である生分解性樹脂の繊維を用いることができる。また、上記繊維状材として、経時で分解する生分解性天然繊維(木綿、わら等)を用いることもできる。
【0029】
また、上記シート材3は、透明または半透明であってもよい。これによれば、コンクリートの充填状況をこれまでのラス型枠同様に目視で確認することができる。また、上記シート材3が水分で変色するものでもよい。この変色は、繊維間に水分が存在する場合と存在しない場合とでの光の屈折・吸収の程度の相違によって生じるものでもよい。
【0030】
また、コンクリートのノロ漏れは型枠の下部側ほど多く発生する。そこで、
図4および
図5に示すように、上記シート材3は、上記ラス型枠本体部2の上端の高さよりも低い高さで設けられていてもよい。これによれば、上記シート材3の量を極力少なくしつつ型枠の下部側でのノロ漏れを効果的に抑制することができる。上記シート材3の高さは、上記ラス型枠本体部2の下側から半分の高さ、或いは下側から1/3の高さ等とすることができる。例えば、実験によって、上記ラス型枠本体部2の高さと、各高さでのノロ漏れ量とから最適のシート高さを求めるようにしてもよい。
【0031】
また、上記シート材3を単一の素材で作製するのではなく、例えば、高さ位置で区切って性状の異なる素材を用いるようにしてもよい。例えば、上側のシートをアルカリ性で溶融するシートとし、コンクリート圧を受けやすい下側は比較的頑丈な生分解性樹脂のシートとすることが考えられる。また、このように複数の素材を用いる場合に、互いに異なるコンクリート養生目的を持たせるようにしてもよい。コンクリート養生目的としては、例えば、保水目的、遮光目的、遮風目的、保温目的等がある。
【0032】
また、上記ラス型枠1は、所定の大きさの板状体とされて積層状態で現場へ搬送されることに限らず、上記ラス型枠本体部2に上記シート材3が貼られた状態でロール状にして出荷され、現場で必要量が繰り出されて使われるようにしてもよい。また、施工現場で上記ラス型枠本体部2に上記シート材3を貼ってラス型枠1を生産してもよい。
【0033】
図6は、上記ラス型枠1を用いたコンクリート型枠100において、上記シート材3の下端が上記ラス型枠本体部2の下端に位置しており、上記シート材3の下端からノロが多少漏出した状態を示している。このようなノロの漏出が生じると、この漏出したノロの除去に多くの手間がかかる。
【0034】
次に、他の実施形態を
図7に基づいて説明する。なお、
図7においても、上記シート材3を太破線で示しており、コンクリート5を仮想線で示している。この実施形態のラス型枠1Aにおいては、上記シート材3の高さは、上記ラス型枠本体部2の高さよりも高く(広幅)なっており、上記シート材3の下端側は、上記ラス型枠本体部2の下端の下から外側に回り込んでいる。そして、例えば、上記外側に回り込んだシート材3の部分に、角材60をコンクリート型枠100の延設方向に配置し、釘61によって上記角材60を捨てコンクリート4に固定する。このようにすることで、捨てコンクリート4とシート材3とが密着し、上記ラス型枠本体部2の下端から外側にノロが漏出するのを抑制することができる。なお、角材60を設けずに、釘61を直にシート材3上から捨てコンクリート4に打ち込んでもよい。
【0035】
また、ラス型枠1Aにおいては、上記シート材3の上端側は、上記ラス型枠本体部2の上端を越えて位置している。これによれば、上記シート材3の上端側を、上記ラス型枠本体部2の上端側にクリップ等を用いて留めることができる。これにより、型枠内に投入されるコンクリートが上記シート材3に当たっても、当該シート材3がコンクリートに巻き込まれるのを防止することができる。
【0036】
他の実施形態を
図8に基づいて説明する。この実施形態のラス型枠1Bは、ラス型枠本体部2の上記メッシュ領域2aを形成する孔よりも小さい孔であって、モルタルまたはノロは排出できる大きさの孔31が、上記ラス型枠本体部2の上端よりも低い位置に形成されている。ノロは細骨材を含まないセメントペーストであり、モルタルは細骨材を含むものであるので、上記孔31は、先述した透水性を確保するための貫通孔(例えば、直径0.5~3mm程度の貫通孔)よりも、多少大きくされ、例えば、直径5~10mm程度とすることができる。また、上記孔31を形成する領域の高さ範囲は、上記ラス型枠本体部2の下側から半分の高さ、或いは下側から1/3の高さ等とすることができる。例えば、実験によって、上記ラス型枠本体部2の高さと、各高さでのノロ漏れ量とから上記孔31を形成する領域の最適の高さを求めるようにしてもよい。なお、上記孔31から上記モルタルまたはノロが漏れるのは、コンクリート投入の当初だけであり、しばらくすれば、上記孔31は細骨材等で詰まることになる。
【0037】
これによれば、上記孔31から、上記ラス型枠本体部2の外側にモルタルまたはノロが漏出するが、このモルタルまたはノロが上記シート材3の下端側の外側に回り込んだ部分で受け止められる。そして、この受け止めたノロが重しとなって、上記ラス型枠本体部2の下端の下から外側にノロが漏出するのを抑制することができる。また、上記シート材3上にモルタルまたはノロが溜まるので、モルタルまたはノロの除去が容易になる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 :ラス型枠
1A :ラス型枠
1B :ラス型枠
2 :ラス型枠本体部
2a :メッシュ領域
2b :外枠部
2c :横補強部
2d :縦補強部
3 :シート材
4 :捨てコンクリート
5 :コンクリート
31 :孔
60 :角材
61 :釘
100 :コンクリート型枠
101 :セパレータ
102 :フォームタイ
103 :縦部材
104 :横部材