IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特許7350500遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置
<>
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図1
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図2
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図3
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図4
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図5
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図6
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図7
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図8
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図9
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図10
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図11
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図12
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図13
  • 特許-遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20230919BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230919BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230919BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230919BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20230919BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230919BHJP
【FI】
G05D1/00 B
G08G1/09 V
G08G1/16 A
H04N7/18 D
H04N7/18 U
H04N23/698
H04N23/60 500
H04N23/60 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019062484
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161039
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊助
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政康
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 大介
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106676(JP,A)
【文献】特開2017-16474(JP,A)
【文献】特開2002-19491(JP,A)
【文献】特開2006-221339(JP,A)
【文献】特開2001-63500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
G08G 1/09
G08G 1/16
H04N 7/18
H04N 23/60
H04N 23/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行制御機能を備えた車両を、前記車両の外部からの遠隔操作に基づく自律走行制御により走行させる場合に、前記車両から、前記車両の周囲を撮像した周囲映像を取得し、
取得した前記周囲映像を、前記車両の遠隔操作用画像として表示し、
前記車両の状態に応じて、前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する遠隔操作用画像の表示方法において、
前記遠隔操作用画像は、前記車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含み、
前記車両の状態に応じて、重要度が高い方向画像の全体を強調表示し、
前記車両が車線内を走行している場合には、前記方向画像として、前記車両の前方画像、左側画像及び右側画像を強調表示し、
前記車両が走行中の車線から右側車線へ移動する場合には、前記車両の前方画像、右側画像及び右後方画像を強調表示し、
前記車両が走行中の車線から左側車線へ移動する場合には、前記車両の前方画像、左側画像及び左後方画像を強調表示する、遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項2】
前記車両の進行方向に応じて、前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する、請求項1に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項3】
前記車両が走行している方向、もしくは前記車両を自律走行制御により走行させる走行経路の方向を前記進行方向として、前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する、請求項2に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項4】
前記遠隔操作用画像から、前記車両の走行に影響を及ぼす物体を検出し、
前記物体を検出した場合に、前記物体に応じて、前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する、請求項1に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項5】
前記遠隔操作用画像から、前記車両の走行に影響を及ぼす物体を検出した場合に、前記物体と、前記物体を含む前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する、請求項4に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項6】
前記遠隔操作用画像から、前記車両が自律走行制御により走行する走行経路と交差する経路に存在する物体を検出し、
前記物体を検出した場合に、前記物体を強調表示する、請求項1に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項7】
前記物体を検出した場合に、前記物体の種類を特定し、前記物体の種類に応じた前記車両への接近可能性に応じて、前記物体を強調表示する、請求項6に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項8】
前記遠隔操作用画像から、前記車両の走行に影響を及ぼす物体を検出し、
前記物体を検出した場合に、前記物体の種類、前記物体までの距離、前記物体の速度もしくは前記物体と前記車両との相対速度の少なくとも1つを含む物体情報を特定し、
前記物体を検出したことを示す物体検出情報とともに、前記物体情報を前記遠隔操作用画像の上に重ねて表示する、請求項1に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項9】
前記物体検出情報として、前記物体の前記車両への接近状況を示す情報を表示する、請求項8に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項10】
前記遠隔操作用画像から、前記車両の走行に影響を及ぼす物体を検出し、
前記物体を検出した場合に、前記物体の状態に応じた異なる色で強調表示する請求項1に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項11】
前記遠隔操作用画像は、前記車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含み、
前記物体が検出された場合に、検出された前記物体の表示の有無、及び前記物体の接近方向に応じて、前記複数種類の方向画像の外枠を異なる色で強調表示する請求項10に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項12】
前記遠隔操作用画像は、前記車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像と、前記車両の現在位置の地図画像、衛星画像もしくは航空画像の上に、前記車両の上面画像を重ねて表示した俯瞰画像と、を含み、
前記複数種類の方向画像から、前記車両の走行に影響を及ぼす物体を検出し、
前記物体を検出した場合に、前記俯瞰画像に、検出された前記物体を示す画像を重ねて表示する請求項11に記載の遠隔操作用画像の表示方法。
【請求項13】
自律走行制御機能を備えた車両を、前記車両の外部から遠隔操作して自律走行制御により走行させる遠隔操作装置であって、
前記車両から、前記車両の周囲の複数方向を撮像した周囲映像を取得する映像取得手段と、
取得した前記周囲映像を、前記車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含む、前記車両の遠隔操作用画像として表示する表示手段と、
前記車両の状態に応じて、前記遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する表示制御手段と、
前記車両の状態に応じて、重要度が高い方向画像の全体を強調表示し、
前記車両が車線内を走行している場合には、前記方向画像として、前記車両の前方画像、左側画像及び右側画像を強調表示し、
前記車両が走行中の車線から右側車線へ移動する場合には、前記車両の前方画像、右側画像及び右後方画像を強調表示し、
前記車両が走行中の車線から左側車線へ移動する場合には、前記車両の前方画像、左側画像及び左後方画像を強調表示する画像強調部と、を備える遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の遠隔操作に用いられる画像の表示方法と、遠隔操作用画像を表示する遠隔操作装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作の対象となる車両から、車両の前方と、左方及び右方とを撮像した画像を、無線通信を介して取得し、これらの画像を表示装置に表示して、オペレータが表示された画像を見ながら車両を遠隔操作できるようにした遠隔操作装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-180771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の遠隔操作装置では、一人のオペレータが複数種類の画像を見ながら遠隔操作を行なうため、画像確認に要する負荷が大きくなる場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、オペレータによる画像の確認の負荷が低減可能な遠隔操作用画像の表示方法と、遠隔操作装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自律走行制御機能を備えた車両から、車両の周囲を撮像した周囲映像を取得し、取得した周囲映像を、車両の遠隔操作用画像として表示し、車両の状態に応じて、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する場合に、車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含み、車両の状態に応じて、重要度が高い方向画像の全体を強調表示し、車両が車線内を走行している場合には、方向画像として、車両の前方画像、左側画像及び右側画像を強調表示し、車両が走行中の車線から右側車線へ移動する場合には、車両の前方画像、右側画像及び右後方画像を強調表示し、車両が走行中の車線から左側車線へ移動する場合には、車両の前方画像、左側画像及び左後方画像を強調表示することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遠隔操作装置のオペレータは、車両の遠隔操作を行うにあたり、遠隔操作用画像の強調表示された所定領域に注目すればよいので、オペレータによる画像の確認の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る遠隔操作用画像の表示方法及び遠隔操作装置を適用した無人運転システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】車両及び遠隔操作装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】車両に設けられたカメラ、レーダ装置及びライダー装置の位置を示す車両の上面図である。
図4図2の表示制御部によって表示部に表示される操作画面を示す図である。
図5図4の俯瞰画面PVに表示される画像の一例であって、左側通行の片側1車線道路(上下2車線道路)の衛星画像である。
図6図5に示す車両V0の左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVをそれぞれ示す図である。
図7図5及び図6に示す車両V0の回避経路を示す俯瞰画面PVである。
図8】通常の走行を行っている場合において、遠隔操作装置の表示部に表示される操作画面を示す図である。
図9】車両V0が片側1車線道路を走行中に、前方に停車車両V1が停車しているため、停車車両V1の後ろに停車した場合に、遠隔操作により停車車両V1を迂回して走行を再開する状況を示す図である。
図10図9に示す状況において、画像強調部により、遠隔操作装置の表示部に表示される左側画像、前方画像、右側画像、左後方画像、後方画像及び右後方画像の一例を示す図である。
図11図9に示す状況において、物体強調部により、遠隔操作装置の表示部に表示される左側画像、前方画像、右側画像、左後方画像、後方画像及び右後方画像の一例を示す図である。
図12図9に示す状況において、解析情報強調部により、遠隔操作装置の表示部に表示される左側画像、前方画像、右側画像、左後方画像、後方画像及び右後方画像の一例を示す図である。
図13】無人運転システムの制御手順を示すフローチャートである。
図14図13のステップS7のサブルーチンの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る無人運転システム1の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る無人運転システム1は、本発明に係る遠隔操作用画像の表示方法、及び遠隔操作装置を実施する一実施の形態でもある。
【0010】
本実施形態に係る無人運転システム1は、自律走行制御機能を備え、自律走行制御により、又は外部からの遠隔操作に基づく自律走行制御により走行する車両V0を、タクシー、乗合自動車その他の商用車として運用するシステムである。本実施形態に係る無人運転システム1は、複数台の車両V0と、複数台の遠隔操作装置3と、車両V0と遠隔操作装置3とを相互に通信可能に接続するネットワークNW1と、を備える。
【0011】
遠隔操作装置3は、車両V0が自律走行制御による走行を行えなくなった場合に、車両V0を遠隔操作する。複数台の遠隔操作装置3は、通信設備を備えた車両管理センタ4に設置されている。車両管理センタ4には、遠隔操作装置3とともにLAN等の構内ネットワークNW2に接続された管理サーバ5が設置されている。管理サーバ5は、ネットワークNW1を通じて複数台の車両V0と接続し、構内ネットワークNW2を通じて複数台の遠隔操作装置3と接続して、複数台の車両V0及び遠隔操作装置3を管理する。
【0012】
ネットワークNW1には、例えば、インターネット等が用いられる。また、各車両V0のネットワークNW1への接続には、広いエリアで普及し、かつ、比較的高速な通信速度が得られる携帯電話通信網等が利用される。なお、無人運転システム1が稼働される所定エリア内に無線通信用の複数のアクセスポイントを設置し、無人運転システム専用の無線通信網を形成して、この無線通信網により車両V0と遠隔操作装置3とを接続してもよい。
【0013】
本実施形態に係る無人運転システム1は、例えば、複数台の車両V0を、予め所定の乗車開始位置に配置している。乗客Pは、例えば、スマートフォン等の携帯端末Tにインストールされた専用アプリケーションを操作し、顧客情報や乗車開始時時刻、目的地等の情報を入力して乗車予約を行なう。携帯端末Tの専用アプリケーションに入力された情報は、予約情報として管理サーバ5に送信される。
【0014】
管理サーバ5は、受信した予約情報に基づいて、乗客Pを乗せて走行する車両V0(以下、予約車両ともいう)と、乗車開始時刻と、目的地までの走行順路とを設定する。また、管理サーバ5は、乗客Pの携帯端末Tに予約確認情報として、設定した予約車両V0の車両番号と、乗車開始時刻と、目的地と、走行順路とを送信する。さらに、管理サーバ5は、予約車両V0に運行情報として、乗客Pの顧客情報と、乗車開始時刻と、目的地と、走行順路とを送信する。予約車両V0は、走行順路内の道路で車線をはみ出さずに走行するための走行経路を設定し、自律走行制御により交通法規を遵守しながら走行経路を自律走行することにより、乗車した乗客Pを目的地まで送り届ける。
【0015】
また、車両V0は、走行順路に沿って設定された走行経路を自律走行中に、進行方向に存在する停車車両や工事現場等の路上の障害物により、車線からはみ出さずに自律走行制御が行えなくなった場合には、一旦停車し、管理サーバ5に支援要求信号を送信する。車両V0から支援要求信号を受信した管理サーバ5は、複数台の遠隔操作装置3のうちから車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3を決定し、決定した遠隔操作装置3に支援要請を行い、支援要請を受け付けた遠隔操作装置3と車両V0とを通信可能に接続する。遠隔操作装置3は、車両V0が再び自律走行制御を行えるように、路上の障害物を回避して走行するための走行経路である回避経路を設定し、車両V0に送信する。車両V0は、自律走行制御により回避経路を走行して路上の障害物を回避し、再び走行順路に沿って設定された走行経路を自律走行制御により走行する。
【0016】
図2は、車両V0と遠隔操作装置3の機能的な構成を示すブロック図である。なお、図2では、図面の煩雑化を防ぐため、ネットワークNW1の図示は省略している。本実施形態に係る車両V0は、通信部21と、センサ22と、障害物認識部23と、経路設定部24と、走行制御部25と、車両情報取得部26と、を備える。
【0017】
車両V0を構成する各部のうち、障害物認識部23と、経路設定部24と、走行制御部25と、車両情報取得部26とは、一又は複数のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされたソフトウェアにより構成されている。コンピュータは、上述した各部を機能させるためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。なお、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。また、各部を構成するコンピュータは、通信部21と、センサ22とに対し、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0018】
通信部21は、ネットワークNW1を介して車両管理センタ4と通信を行う。具体的には、通信部21は、管理サーバ5から運行情報として送信された乗客Pの顧客情報と、乗車開始時刻と、目的地と、走行順路とを受信する。また、通信部21は、所定時間毎又は所定の走行距離毎に、車両V0の現在位置情報(例えば、緯度、経度等)と、車両V0の前面が向いている方向(以下、車両方向情報ともいう)と、速度情報とを管理サーバ5に送信する。管理サーバ5は、受信した現在位置情報、車両方向情報及び速度情報に基づいて、各車両V0の走行状況を管理する。さらに、通信部21は、車両V0が自律走行制御による走行を行えなくなった場合に、管理サーバ5に支援要求信号を送信する。また、通信部21は、車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3が決定した場合、その遠隔操作装置3に、車両V0の遠隔操作を行うために必要な各種車両情報を送信する。
【0019】
センサ22は、車両V0の周囲の状況を検出する。センサ22は、例えば、カメラと、障害物センサとを備える。カメラは、CCDやCMOS等のイメージセンサにより車両V0の周囲映像を撮像し、周囲映像の画像データを生成する撮像装置である。センサ22を構成するカメラは、複数のカメラからなり、例えば、車両V0の上面図である図3に示すように、車両V0の前方を撮像する前方カメラ221Fと、車両V0の後方を撮像する後方カメラ221Bと、車両V0の左右の側方をそれぞれ撮像する左側カメラ221L及び右側カメラ221Rと、車両V0の左右の後方をそれぞれ撮像する左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBと、を含む。
【0020】
センサ22を構成する障害物センサは、車両V0の周囲の障害物を検出する。障害物センサには、レーダ装置や、ライダー装置等の各種センサが、単独であるいは適宜組み合わせて利用される。図3に示すように、レーダ装置222aは、例えば、車両V0の前部に設置されており、ミリ波や超音波を車両V0の前方に照射して反射波を受信することにより、車両V0の周囲に存在する障害物(物体)までの距離や相対速度等を検出する。ライダー装置222b、222cは、例えば、車両V0の前部及び後部に設置されており、レーザ光を車両V0の周囲に照射して反射光を受光し、受光した反射光を三次元にマッピングすることにより、車両V0の周囲に存在する物体までの距離や、物体の形状等を検出する。
【0021】
障害物認識部23は、センサ22のカメラで撮像された画像データと、障害物センサの検出結果である障害物センサ情報とを解析して、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する。障害物認識部23により認識される物体としては、例えば、歩行者、自転車、バイク及び自動車等の移動物体や、停止車両、工事現場、路上落下物及び路上建造物等の静止物体等である。路上建造物としては、ガードレール、路肩、中央分離帯及び信号機等が含まれる。なお、前方カメラ221Fの画像データは、センターラインや車道外側線等のレーンマークや、停止線、横断歩道等の路面標示の検出にも用いられる。
【0022】
経路設定部24は、車両管理センタ4から受信した走行順路に沿って車両V0が実際に走行する経路である走行経路を設定する。経路設定部24は、詳しくは図示しないが、位置検出部と、地図データベースとを備える。
【0023】
位置検出部は、GPSユニットと、ジャイロセンサと、車速センサ等を備える。位置検出部は、GPSユニットにより複数のGPS衛星から送信される電波を検出し、車両V0の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した車両V0の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した速度情報とに基づいて、車両V0の現在位置情報を生成する。
【0024】
地図データベースは、カーナビゲーション装置等で用いられている地図情報と同様のものであり、各種施設や特定の地点の位置情報とともに、道路に関する情報が記録されている。道路に関する情報としては、道路種別、道路幅、車線数、交差点や信号機の位置、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、制限速度、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報等が記録されている。
【0025】
経路設定部24は、位置検出部により生成された車両V0の現在位置情報と、地図データベースと、障害物認識部23による障害物の認識結果とに基づいて、車両V0が走行する走行順路の道路の幅を特定し、この道路の幅の中央に車両V0の走行経路を設定することにより、車両V0が走行順路の車線からはみ出さずに走行可能な走行経路を設定する。経路設定部24は、本発明の経路設定部に相当する。
【0026】
走行制御部25は、車両V0の自律走行制御機能を司る機能部であり、車両V0の各部を制御して、車両V0を経路設定部24により設定された走行経路に沿って走行させる。より具体的には、走行制御部25は、例えば、エンジンやモータ等の駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御して車両V0の速度を調節するとともに、車両V0の前後方向に沿って設定された車両中心線VL(図3参照)が走行経路上を移動するように操舵機構を制御する。また、走行制御部25は、車両V0が走行経路に沿って右折又は左折をする場合には、駆動機構、変速機構及び制動機構を制御して速度を調節するとともに、操舵機構及び方向指示器等を制御して、車両V0を右折又は左折させる。
【0027】
さらに、走行制御部25は、現在位置情報と、地図データベースと、障害物認識部23の認識結果とに基づいて、車両V0の進行方向に一時停止位置や、赤信号の交差点等が存在することが判明した場合には、駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御し、車両V0の速度を低下させて停車させる。また、走行制御部25は、障害物認識部23により、車両V0の進行方向に、自律走行制御の支障となる停止車両や工事現場、歩行者等の障害物が存在することが判明した場合には、駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御して車両V0の速度を低下させ、必要に応じて車両V0を停止させる。なお、本実施形態において、走行制御部25が備える自律走行制御機能は、特に限定されるものではなく、本発明の出願時における技術を適宜援用できる。
【0028】
また、走行制御部25は、車両V0が自律走行制御による走行が行えなくなって停車させた場合には、通信部21により、車両管理センタ4の管理サーバ5に支援要求信号を送信する。なお、支援要求信号は、たんに支援を求めるだけの信号であってもよいし、支援要請の内容を含む信号であってもよい。支援要求信号に、支援要請の内容を含めて送信すれば、管理サーバ5では、その支援要請の内容に応じて車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3の決定に利用することができる。また、支援要求信号が複数の車両V0から送信されている場合には、支援要求信号の支援要請の内容に応じて、支援を開始する車両V0の優先順位の決定等に利用することができる。
【0029】
車両情報取得部26は、車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3に送信する各種車両情報を取得する。車両情報取得部26により取得される車両情報としては、例えば、センサ22の前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより撮像された周囲映像の画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより検出された障害物に関する障害物センサ情報と、車両V0の現在位置情報と、車両方向情報等が含まれる。
【0030】
次に、遠隔操作装置3について説明する。遠隔操作装置3は、図2に示すように、通信部31と、入力部32と、表示部33と、表示制御部34と、遠隔制御部35と、を備える。遠隔操作装置3の表示制御部34及び遠隔制御部35は、一又は複数のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされたソフトウェアにより構成されている。コンピュータは、上述した各部を機能させるためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。なお、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。また、各部を構成するコンピュータは、通信部31と、入力部32と、表示部33とに対し、相互に情報の送受信を行うように接続されている。
【0031】
通信部31は、ネットワークNW1を介して車両V0と通信を行う。具体的には、通信部31は、管理サーバ5から要請された車両V0の遠隔操作を行う場合に、当該車両V0から遠隔操作に必要な各種の走行情報として、前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより撮像された周囲映像の画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより検出された障害物に関する障害物センサ情報と、車両V0の現在位置情報及び車両方向情報と、を受信する。また、通信部31は、例えば、車両V0が路上の障害物を回避して自律走行制御を継続できるようにするために、回避経路等の遠隔制御情報を車両V0に送信する。すなわち、通信部31は、本発明の映像取得手段に相当する。
【0032】
入力部32は、遠隔操作装置3のオペレータにより操作される機器であり、車両V0の回避経路の生成などの各種操作を行うために用いられる。入力部32としては、例えば、ディスプレー上に配置されるタッチパネルやキーボード、マウスやジョイスティックなどのオペレータの手動操作を検知する装置や、マイク及び音声認識部を備えた音声入力装置等が用いられる。
【0033】
表示部33は、液晶ディスプレー等の表示装置であり、車両V0を遠隔操作するための操作画面等が表示される。表示制御部34は、表示部33に操作画面を表示させる。表示部33及び表示制御部34は、本発明の表示手段及び表示制御手段に相当する。
【0034】
図4は、表示制御部34によって表示部33に表示される操作画面を示している。この操作画面は、俯瞰画面PVと、左側画面LVと、前方画面FVと、右側画面RVと、左後方画面LBVと、後方画面BVと、右後方画面RBVと、を備える。これらの俯瞰画面PVと、左側画面LVと、前方画面FVと、右側画面RVと、左後方画面LBVと、後方画面BVと、右後方画面RBVとに表示される画像は、車両V0から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像に相当する。
【0035】
俯瞰画面PVは、例えば、車両V0の現在位置情報に基づいて取得した地図画像又は衛星画像あるいは航空画像に、車両V0の上面画像と、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより検出された障害物センサ情報とが重ね合わせて表示される。左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVには、車両V0から受信した左側カメラ221L、前方カメラ221F、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB、後方カメラ221B、及び右後方カメラ221RBの画像データが、それぞれ表示される。
【0036】
例えば、図5に示す俯瞰画面PVは、左側通行の片側1車線道路(上下2車線道路)の衛星画像である。この道路の図中下方から上方へと向かう上り車線L1と、図中上方から下方へと向かう下り車線L2には、それぞれ車両待避所L1s、L2sが設けられている。また、上り車線L1と下り車線L2との間の一部には、ゼブラゾーンZが設けられている。さらに、上り車線L1と下り車線L2との外側には、路肩U1、U2と、歩道J1、J2とがそれぞれ配置されている。また、上り車線L1には、自律走行制御により走行経路に沿って自律走行する車両V0の上面図が表示されている。また、車両V0の前方には、上り車線L1に存在する停車車両V1(図6の前方画面FV参照)を、車両V0のライダー装置222b、222cにより検出した検出結果である障害物センサ情報FIが表示されている。障害物センサ情報FIには、停車車両V1の後部の輪郭のみが表示される。
【0037】
図6は、図5に示す車両V0の左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVを示している。前方画面FVには、前方カメラ221Fによって撮像された停車車両V1の後部が表示されている。なお、左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVにおいて、ドットでハッチングされている部分は、車両V0のボディを示している。
【0038】
遠隔制御部35は、走行順路に沿って設定された走行経路を自律走行制御により走行する車両V0が、停車車両や工事現場等の路上の障害物によって自律走行が行えなくなった場合に、路上の障害物を自律走行制御により回避するための回避経路を設定する。すなわち、遠隔制御部35は、車両V0の経路設定部24とともに、本発明の経路設定部に相当する。回避経路の設定は、入力部32を操作して、表示部33に表示されている俯瞰画面PV上で車両V0の前部から障害物を回避して元の走行経路に戻るまでの回避経路を入力することにより行われる。
【0039】
図7は、図5、6に示す車両V0の回避経路を示す俯瞰画面PVである。遠隔操作装置3のオペレータは、車両V0の前部から、停車車両V1を回避するように、車両V0が通過する予定位置である経路ポイントPtを複数設定する。遠隔制御部35は、設定された複数の経路ポイントPtを接続して回避経路Raを生成する。俯瞰画面PVには、設定された複数の経路ポイントPtと、生成された回避経路Raと、回避経路Raに沿って走行する車両V0の移動軌跡Mtとが、衛星画像上に表示される。設定された回避経路Raは、通信部31によって車両V0に送信される。
【0040】
表示制御部34は、画像表示部341と、画像強調部342と、物体検出部343と、物体強調部344と、物体予測部345と、解析情報強調部346と、を備える。画像表示部341は、車両V0から受信した左側カメラ221L、前方カメラ221F、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB、後方カメラ221B、及び右後方カメラ221RBの画像データを、表示部33の左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVにそれぞれ表示する。また、画像表示部341は、車両V0から定期的に受信した左側カメラ221L、前方カメラ221F、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB、後方カメラ221B、及び右後方カメラ221RBの画像データに基づいて、表示部33の左側画面LV、前方画面FV、右側画面RV、左後方画面LBV、後方画面BV及び右後方画面RBVを更新する。
【0041】
画像強調部342は、車両V0の状態に応じて、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。具体的には、車両V0の進行方向に応じて、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。この進行方向とは、車両V0が走行している方向、もしくは車両V0を自律走行制御により走行させる走行経路の方向を進行方向として、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。
【0042】
例えば、車両V0が自律走行制御により設定された走行経路を走行している場合、すなわち、通常の走行を行っている場合には、図8に示すように、表示部33の左側画面LV、前方画面FV及び右側画面RVの外枠が、例えば、赤色の太線等によって強調表示される。
【0043】
また、図9(A)に示すように、車両V0が片側1車線道路を走行中に、前方に停車車両V1が停車しており、車両V0が停車車両V1の後ろに停車したような場合には、車両V0は、同図(B)に示すように、遠隔操作により停車車両V1を迂回して走行を再開する必要がある。このような場合には、遠隔操作装置3によって生成された回避経路の方向が進行方向として特定され、図10に示すように、回避経路の進行方向である前方画面FV、右側画面RV及び右後方画面RBVの外枠が、例えば、赤色の太線等によって強調表示される。
【0044】
物体検出部343は、車両V0から受信した左側カメラ221L、前方カメラ221F、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB、後方カメラ221B、及び右後方カメラ221RBの画像データを解析し、その解析結果と、車両V0から受信したレーダ装置222a及びライダー装置222b、222cの障害物センサ情報とに基づいて、車両V0の走行に影響を及ぼす物体や、車両V0の走行経路と交差する経路に存在する物体等を検出する。物体検出部343により認識される物体としては、例えば、歩行者、自転車、バイク及び自動車等の移動物体や、停止車両、工事現場、路上落下物及び路上建造物等の静止物体等である。路上建造物としては、ガードレール、路肩、中央分離帯及び信号機等が含まれる。
【0045】
物体予測部345は、物体検出部343により検出された物体の種類を特定し、物体の種類に応じて車両V0への接近可能性を判断する。例えば、移動物体として、歩行者、自転車及び自動車等が検出されるが、これらの各物体の位置と、移動速度と、移動方向と、自車両V0の位置等に基づいて接近可能性を判断する。
【0046】
物体強調部344は、物体検出部343で車両V0の走行に影響を及ぼす物体を検出した場合、又は車両V0に対する接近可能性の高い物体を検出した場合に、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。具体的には、車両V0の走行に影響を及ぼす物体と、この物体を含む遠隔操作用画像の所定領域とを強調表示する。
【0047】
例えば、図11に示す例では、物体検出部343により、前方画面FVに表示されている停車車両V1が検出されるので、物体強調部344は、前方画面FVの外枠を点滅させるなどして強調表示する。また、物体強調部344は、物体検出部343の検出結果に基づいて、俯瞰画面PVの停車車両V1が停車している位置に、停車車両V1を示す画像を、注意を引きやすい赤色等の色調で表示したり、点滅表示させる等して強調表示する。このように、物体が実際に表示されている画面だけでなく、俯瞰画面PVにも検出された物体を表示するので、自車両V0との位置関係が把握しやすくなる。なお、俯瞰画面PVは、車両V0の遠隔操作において、オペレータにより必ず確認される画面であるため、外枠等の強調表示は行っていないが、検出された物体を表示する際に強調表示するようにしてもよい。
【0048】
解析情報強調部346は、物体検出部343により物体が検出された場合に、物体の種類、物体までの距離、物体の速度もしくは物体と車両との相対速度の少なくとも1つを含む物体情報を特定し、物体を検出したことを示す物体検出情報とともに、物体情報を遠隔操作用画像の上に重ねて表示する。また、物体検出情報として、物体の車両への接近状況を示す情報を表示する。
【0049】
例えば、図12に示す例では、物体検出部343により、前方画面FVに表示されている停車車両V1と、右側画面RVに表示されている追い越し車両V2とが検出される。追い越し車両V2は、車両V0と停車車両V1とを反対車線から追い越そうとしている車両である。物体強調部344は、前方画面FVと右側画面RVの外枠を点滅させるなどして強調表示する。また、物体強調部344は、物体検出部343の検出結果に基づいて、俯瞰画面PVの停車車両V1が停車している位置に、停車車両V1を示す画像を強調表示し、追い越し車両V2が停車している位置に、追い越し車両V2を示す画像を強調表示する。解析情報強調部346は、前方画面FVに「停車車両あり」という物体検出情報を表示する。また、解析情報強調部346は、右側画面RVに「接近車両あり」という物体検出情報と、「XXkmで接近中」という物体情報を表示する。さらに、解析情報強調部346は、俯瞰画面PVの停車車両V1の近傍と、追い越し車両V2の近傍に、「停車車両あり」と、「接近車両あり」という物体検出情報をそれぞれ表示する。
【0050】
次に、図13及び図14に示すフローチャートを参照し、本実施形態の無人運転システム1の作用について説明する。管理サーバ5は、乗客Pの携帯端末Tから予約情報を受信すると、乗客Pを乗せて走行する車両V0と、乗車開始時刻と、目的地までの走行順路等を設定し(ステップS1)、携帯端末Tに予約確認情報を送信し、予約車両V0に運行情報を送信する(ステップS2)。管理サーバ5は、車両V0から所定時間毎又は所定の走行距離毎に送信される現在位置情報、車両方向情報及び速度情報を受信し、車両V0の自律走行の状況を管理、監視する(ステップS3)。
【0051】
車両V0は、管理サーバ5から送信された運行情報を通信部21により受信し、経路設定部24により運行情報の走行順路に基づいて、車両V0が走行順路上の車線からはみ出さずに走行するための走行経路を設定する。
【0052】
車両V0は、乗車開始時刻になると乗客Pを乗車させ、乗客Pを目的地まで送り届けるための自律走行制御を開始する。この自律走行制御では、車両V0は、走行制御部25により駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御して速度を調節するとともに、車両中心線VLが走行経路上を移動するように操舵機構を制御する。また、車両V0は、走行経路に沿って右折又は左折をする場合には、走行制御部25により駆動機構、変速機構及び制動機構を制御して速度を調節し、操舵機構及び方向指示器等を制御して右折又は左折を行う。さらに、車両V0は、現在位置情報と、地図データベースと、障害物認識部23の認識結果とに基づいて、進行方向に一時停止位置や、赤信号の交差点等が存在することが判明した場合には、走行制御部25により駆動機構、変速機構及び制動機構等を制御して車両V0の速度を低下させ、停車させる。
【0053】
自律走行制御により走行中の車両V0は、センサ22の前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより、車両V0の周囲を撮像する。また、自律走行中の車両V0は、センサ22のレーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより、車両V0の周囲の物体を検出する。車両V0の障害物認識部23は、センサ22の各カメラで撮像された画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cの検出結果である障害物センサ情報とを解析して、車両V0の周囲に存在する、自律走行に影響を及ぼす物体を認識する。
【0054】
車両V0の進行方向に、停車車両や工事現場等の路上の障害物が存在し、車両V0が車線からはみ出さずに自律走行制御が行えない場合には、走行制御部25は、自律走行制御により車両V0を一旦停車させ、管理サーバ5に支援要求信号を送信する。
【0055】
車両V0から支援要求信号を受信した管理サーバ5は(ステップS4でYES)、複数台の遠隔操作装置3のうちから車両V0を遠隔操作する遠隔操作装置3を決定し、決定した遠隔操作装置3に支援要請を行い、支援要請を受け付けた遠隔操作装置3と車両V0とを通信可能に接続する(ステップS5)。
【0056】
遠隔操作装置3は、支援要請を受け付けた車両V0から、車両情報取得部26により取得した画像データ等の各種走行情報を受信する。この各種走行情報とは、前方カメラ221F、後方カメラ221B、左側カメラ221L、右側カメラ221R、左後方カメラ221LB及び右後方カメラ221RBにより撮像された周囲映像の画像データと、レーダ装置222a及びライダー装置222b、222cにより検出された障害物に関する障害物センサ情報と、車両V0の現在位置情報と、車両方向情報等である。
【0057】
遠隔操作装置3は、車両V0から受信した画像データ等の各種データに基づいて、車両V0が障害物を回避して走行させるための回避処理を開始する。具体的には、表示制御部34の画像表示部341により、表示部33に対し、車両V0及び障害物センサ情報FIが衛星画像上に表示された俯瞰画面PVと、左側カメラ221Lにより撮像された左側画面LVと、前方カメラ221Fにより撮像された前方画面FVと、右側カメラ221Rにより撮像された右側画面RVと、左後方カメラ221LBにより撮像された左後方画面LBVと、後方カメラ221Bにより撮像された後方画面BVと、右後方カメラ221RBにより撮像された右後方画面RBVと、を表示する(ステップS6)。
【0058】
次いで、遠隔操作装置3は、遠隔操作画像の注目領域を決定する注目領域決定処理を実行する(ステップS7)。図14は、図13のステップS7の注目領域決定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図14に示すように、注目領域決定処理では、画像強調部342により、車両V0の走行方向、又は走行経路の方向を進行方向として特定し(ステップS71)、特定した進行方向に基づいて、強調表示する方向画像の画面を決定する(ステップS72)。たとえば、車両V0が自律走行制御により設定された走行経路を通常に走行している場合には、図8に示すように、表示部33の左側画面LV、前方画面FV及び右側画面RVの外枠が、例えば、赤色の太線等によって強調表示されるように、注目領域を左側画面LV、前方画面FV及び右側画面RVの3つに決定する。
【0059】
あるいは、図9(A)及び(B)に示すように、車両V0が片側1車線道路を走行中に、前方に停車車両V1が停車しており、車両V0が停車車両V1の後ろに停車したような場合には、車両V0は、遠隔操作により停車車両V1を迂回して走行を再開する必要がある。このような場合には、遠隔操作装置3によって生成された回避経路の方向が進行方向として特定され、図10に示すように、回避経路の進行方向である前方画面FV、右側画面RV及び右後方画面RBVの外枠が、例えば、赤色の太線等によって強調表示されるように、注目領域を前方画面FV、右側画面RV及び右後方画面RBVの3つに決定する。
【0060】
次に、追加注目領域を決定する(ステップS73)。ここで、物体検出部343は、各方向画像を解析して、車両V0の走行に影響を及ぼす物体や、車両V0の走行経路と交差する経路に存在する物体等を検出する。また、物体予測部345は、物体検出部343により検出された物体の種類を特定し、物体の種類に応じて車両V0への接近可能性を判断する。物体強調部344は、物体が検出された場合、又は接近可能性が予測された物体が検出された場合に、強調表示する物体として決定する。たとえば、図11に示す例では、物体検出部343により、前方画面FVに表示されている停車車両V1が検出されるので、前方画面FVの外枠を強調表示するように、追加注目領域を前方画面FVに決定する。また、物体強調部344は、物体検出部343の検出結果に基づいて、俯瞰画面PVの停車車両V1が停車している位置に、停車車両V1を示す画像を強調表示するように、追加注目領域を俯瞰画面PVに決定する。
【0061】
次のステップS74では、物体検出部343により物体が検出されたか否かを判定し、物体が検出された場合はステップS75へ進み、物体が検出されない場合は図13のステップS8へ進む。物体検出部343により物体が検出された場合、ステップS75にて、解析情報強調部346は、検出された物体の種類、物体までの距離、物体の速度もしくは物体と車両との相対速度の少なくとも1つを含む物体情報を特定する。そして、続くステップS76にて、この物体情報と、物体を検出したことを示す物体検出情報とを生成する。なお、物体検出情報として、物体の車両への接近状況を示す情報を生成する。例えば、図12に示す例では、物体検出部343により、前方画面FVに表示されている停車車両V1と、右側画面RVに表示されている追い越し車両V2とが検出される。したがって、解析情報強調部346は、車両V1は停車車両であることを特定し、追い越し車両V2は、車両V0と停車車両V1とを反対車線から追い越そうとしている車両であることを特定する。
【0062】
図13のステップS8に戻り、ステップS8において、画像強調部342は、ステップS72で決定した画面に対して強調表示を行う処理を実行する。図8に示す例について言えば、表示部33の左側画面LV、前方画面FV及び右側画面RVの3つがステップS72で決定した画面であるから、これら左側画面LV、前方画面FV及び右側画面RVの各外枠を、例えば、赤色の太線等によって強調表示する。
【0063】
また、同じくステップS8において、物体強調部344は、物体が検出された場合、又は接近可能性が予測された物体が検出された場合に、当該物体に対して強調表示を行う処理を実行する。図11に示す例について言えば、ステップS73において決定される追加注目領域が前方画面FVであるので、当該前方画面FVの外枠を強調表示する。また、ステップS73において俯瞰画面PVも追加注目領域に決定されるので、当該俯瞰画面PVの停車車両V1が停車している位置に、停車車両V1を示す画像を強調表示する。
【0064】
さらに同じくステップS8において、解析情報強調部346は、ステップS76で生成した物体情報を該当する画面に強調表示する。例えば、図12に示す例では、物体検出部343により、前方画面FVに表示されている停車車両V1と、右側画面RVに表示されている追い越し車両V2とが検出され、これにより車両V1は停車車両であり、追い越し車両V2は、車両V0と停車車両V1とを反対車線から追い越そうとしている車両であることが特定されるので、解析情報強調部346は、俯瞰画面PVの車両V1の横に「停車車両」というテキストデータを強調表示し、車両V2の横に「接近車両」というテキストデータを強調表示する。また、解析情報強調部346は、前方画面FVの車両V1の横に「停車車両あり」というテキストデータを強調表示し、右側画面RVの車両V2の横に「接近車両あり、XXkmで接近中」というテキストデータを強調表示する。
【0065】
ステップS9では、ステップS5にて遠隔操作装置3に対して遠隔操作が要求されているので、当該遠隔操作装置3のオペレータは、車両V0から受信した画像データ等の各種データに基づいて遠隔操作装置3を操作し、車両V0が路上の障害物を自律走行制御により回避するための回避経路を設定する。具体的には、遠隔操作装置3の表示制御部34は、表示部33に対し、車両V0及び障害物センサ情報FIが衛星画像上に表示された俯瞰画面PVと、左側カメラ221Lにより撮像された左側画面LVと、前方カメラ221Fにより撮像された前方画面FVと、右側カメラ221Rにより撮像された右側画面RVと、左後方カメラ221LBにより撮像された左後方画面LBVと、後方カメラ221Bにより撮像された後方画面BVと、右後方カメラ221RBにより撮像された右後方画面RBVと、を表示する。
【0066】
遠隔操作装置3のオペレータは、図7に示すように、表示部33に表示された俯瞰画面PVと、左側画面LVと、前方画面FVと、右側画面RVと、左後方画面LBVと、後方画面BVと、右後方画面RBVと、に基づいて、車両V0の状況を把握し、入力部32を操作して、俯瞰画面PV上で障害物を回避するように複数の経路ポイントPtを設定する。遠隔操作装置3は、設定された複数の経路ポイントPtを接続するようにして回避経路Raを生成する。俯瞰画面PVには、表示制御部34により、設定された複数の経路ポイントPtと、生成された回避経路Raと、回避経路Raに沿って走行する車両V0の移動軌跡Mtとが表示され、オペレータによって確認される。この回避経路を設定する際に、オペレータは、強調表示された画面に注目しながら操作するので、オペレータの操作負荷を軽減することができる。
【0067】
ステップS10では、ステップS9において設定された回避経路Raが、通信部31によって車両V0に送信され、これを受信した車両V0は、回避経路にしたがって回避のための自律走行を開始する。車両V0の走行制御部25は、障害物を回避して元の走行経路に戻った場合には(ステップS11でYES)、元の走行経路の自律走行制御を再開する。そして、ステップS11にて回避走行が終了するまでステップS6~S10の処理を繰り返し、回避走行が終了したらステップS12へ進む。
【0068】
ステップS12において、自律走行を実行している車両V0が目的地に到着したか否かを判定し、目的地に到着するまでステップS3~S12の処理を繰り返し、目的地に到着したらステップS13へ進んで、車両V0の自律走行の監視を終了する。
【0069】
以上で説明したように、本実施形態の無人運転システム1は、自律走行制御機能を備えた車両V0を、車両の外部からの遠隔操作に基づく自律走行制御により走行させる場合に、車両V0から、車両の周囲を撮像した周囲映像を取得し、取得した周囲映像を、車両V0の遠隔操作用画像として表示し、車両V0の状態に応じて、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。これにより、遠隔操作装置3のオペレータは、注目すべき領域が把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷を軽減することができる。
【0070】
また、本実施形態の無人運転システム1は、車両V0の進行方向(車両が走行している方向、もしくは車両を自律走行制御により走行させる走行経路の方向を含む)に応じて、遠隔操作用画像の所定領域を強調表示するので、遠隔操作装置3のオペレータは、注目すべき領域がより把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【0071】
さらに、本実施形態の無人運転システム1は、遠隔操作用画像から、車両V0の走行に影響を及ぼす物体を検出し、物体を検出した場合に、物体に応じて遠隔操作用画像の所定領域を強調表示する。このとき、物体と、物体を含む遠隔操作用画像の所定領域を強調表示してもよい。これにより、遠隔操作すべき車両V0と干渉する可能性がある物体を把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の無人運転システム1は、遠隔操作用画像から、車両V0が自律走行制御により走行する走行経路と交差する経路に存在する物体を検出し、物体を検出した場合に、物体を強調表示する。このとき、物体の種類を特定し、物体の種類に応じた車両への接近可能性に応じて、物体を強調表示してもよい。これにより、遠隔操作すべき車両V0と干渉する可能性がある物体を把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【0073】
さらに、本実施形態の無人運転システム1は、遠隔操作用画像から、車両V0の走行に影響を及ぼす物体を検出し、物体を検出した場合に、物体の種類、物体までの距離、物体の速度もしくは物体と車両V0との相対速度の少なくとも1つを含む物体情報を特定し、物体を検出したことを示す物体検出情報とともに、物体情報を遠隔操作用画像の上に重ねて表示する。このとき、物体検出情報として、物体の車両への接近状況を示す情報を表示してもよい。これにより、遠隔操作すべき車両V0と干渉する可能性がある物体の詳細な情報が把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【0074】
さらに、本実施形態の無人運転システム1は、遠隔操作用画像は、車両V0から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含み、車両の状態に応じて、重要度が高い方向画像の全体を強調表示する。たとえば、車両が車線内を走行している場合には、方向画像として、車両の前方画像、左側画像及び右側画像を強調表示し、車両が走行中の車線から右側車線へ移動する場合には、車両の前方画像、右側画像及び右後方画像を強調表示し、車両が走行中の車線から左側車線へ移動する場合には、車両の前方画像、左側画像及び左後方画像を強調表示し、車両を自律走行制御により走行させる走行経路を生成する場合には、走行経路の方向に応じた前記方向画像を強調表示する。これにより、遠隔操作装置3のオペレータは、注目すべき領域が把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【0075】
さらに、本実施形態の無人運転システム1は、遠隔操作用画像から、車両V0の走行に影響を及ぼす物体を検出し、物体を検出した場合に、物体の状態に応じた異なる色で強調表示する。このとき、遠隔操作用画像は、車両V0から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像を含み、物体が検出された場合に、検出された物体の表示の有無、及び物体の接近方向に応じて、複数種類の方向画像の外枠を異なる色で強調表示してもよい。またこのとき、遠隔操作用画像は、車両から周囲の複数方向を撮像した複数種類の方向画像と、車両の現在位置の地図画像、衛星画像もしくは航空画像の上に、車両の上面画像を重ねて表示した俯瞰画像と、を含み、複数種類の方向画像から、車両の走行に影響を及ぼす物体を検出し、物体を検出した場合に、俯瞰画像に、検出された物体を示す画像を重ねて表示してもよい。これにより、遠隔操作装置3のオペレータは、注目すべき領域が把握し易くなり、オペレータの画像確認に要する負荷をより一層軽減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…無人運転システム
V0…車両
21…通信部
22…センサ
221F…前方カメラ
221L…左側カメラ
221R…右側カメラ
221B…後方カメラ
221LB…左後方カメラ
221RB…右後方カメラ
222a…レーダ装置
222b、222c…ライダー装置
23…障害物認識部
24…経路設定部
25…走行制御部
26…車両情報取得部
3…遠隔操作装置
31…通信部
32…入力部
33…表示部
PV…俯瞰画面
LV…左側画面
RV…右側画面
BV…後方画面
LBV…左後方画面
RBV…右後方画面
34…表示制御部
35…遠隔制御部
4…車両管理センタ
5…管理サーバ
Ra…回避経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14