(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】ルウの製造方法及びルウ
(51)【国際特許分類】
A23L 23/10 20160101AFI20230919BHJP
【FI】
A23L23/10
(21)【出願番号】P 2019089482
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】北川 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】白水 崇
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特許第6431642(JP,B2)
【文献】特開2018-191519(JP,A)
【文献】特開2001-275628(JP,A)
【文献】特開平10-327824(JP,A)
【文献】特開2001-275630(JP,A)
【文献】特開平04-370078(JP,A)
【文献】油化学,1986年,35(5),pp.389-394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルウの製造方法であって、
(1)澱粉質原料及び第1の油脂を含む加熱処理混合物を用意する工程と、
(2)動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂を混合して乳化配合物を調製する工程と、
(3)加熱撹拌中の前記加熱処理混合物に、前記乳化配合物を添加し、得られたルウ原料混合物を加熱撹拌する工程と、
を含み、
合成乳化剤を添加する工程を実質的に含まず、
前記水系原料が、畜肉エキスを含み、前記乳化配合物中の前記動物性タンパク質の含有量が、前記乳化配合物の全質量に対して10質量%以上であり、前記ルウ原料混合物の水分量が、前記ルウ原料混合物の全質量に対して8.5質量%以下であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記畜肉エキスが、ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
澱粉質原料及び第1の油脂を含むルウであって、
動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂
を含む乳化配合物を含み、
合成乳化剤を実質的に含まず、
前記水系原料が、畜肉エキスを含み、
前記ルウ中の前記動物性タンパク質の含有量が、前記ルウの全質量に対して0.3~1.3質量%であることを特徴とする、ルウ。
【請求項4】
前記畜肉エキスが、ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
3に記載のルウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルウの製造方法及びルウに関し、特に合成乳化剤を必要としないルウの製造方法及びルウに関する。
【背景技術】
【0002】
カレー、シチュー、及びハヤシライスソースなどのソースを調理するための調理材料としてルウが用いられており、これまでにルウやソースの風味及び特性に関して種々の研究が行われてきた。例えば、特許文献1には、水系原料と油脂と合成乳化剤とを混合して乳化させる工程を含む固形ルウの製造方法が記載されており、当該固形ルウは、風味がよく保存性に優れたものである旨が記載されている。
【0003】
他方、近年では、食の安全及び安心への関心が高まり、乳化剤などの食品添加物を使用しない製品のニーズが高まっている。例えば、特許文献2には、加熱撹拌クッカーから調理材料を受け取る冷却クッカーを、調理材料のストックタンクとしても兼用できるように、例えば撹拌機能を付加して構成することで、たとえ合成乳化剤を使用せずにルウを製造し、ストックタンク内で原料分離が起こったとしても、必要な時に保存していた調理原料を撹拌して均一な混合状態を再現できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-370078号公報
【文献】特開2001-204403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ルウは、油脂を主成分としている一方で、原料の一部として畜肉エキスや野菜エキスなどの水系原料も必要としているため、合成乳化剤を使用せずに、各原料が均一に混合されたルウを製造することは困難だった。すなわち、前記水系原料は、少量の油脂と混合して乳化させた状態である乳化配合物の形態で、澱粉質原料及び油脂から調製される小麦粉ルウなどの加熱処理混合物に添加されるが、その乳化状態を維持し、水と油が分離するのを抑制するために、通常は合成乳化剤の使用が必須とされていた。そこで、本発明は、合成乳化剤を必要としないルウの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、動物性タンパク質を含む水系原料と油脂との乳化配合物中で、当該動物性タンパク質の濃度を高くすれば、合成乳化剤を使用しなくても当該水系原料と油脂との安定な乳化配合物を調製できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示すルウの製造方法及びルウを提供するものである。
〔1〕ルウの製造方法であって、
(1)澱粉質原料及び第1の油脂を含む加熱処理混合物を用意する工程と、
(2)動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂を混合して乳化配合物を調製する工程と、
(3)加熱撹拌中の前記加熱処理混合物に、前記乳化配合物を添加し、得られたルウ原料混合物を加熱撹拌する工程と、
を含み、前記乳化配合物中の前記動物性タンパク質の含有量が、前記乳化配合物の全質量に対して10質量%以上であり、前記ルウ原料混合物の水分量が、前記ルウ原料混合物の全質量に対して8.5質量%以下であることを特徴とする、方法。
〔2〕合成乳化剤を添加する工程を実質的に含まない、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記水系原料が、畜肉エキスを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記畜肉エキスが、ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕澱粉質原料及び第1の油脂を含むルウであって、
動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂を含み、
前記ルウ中の前記動物性タンパク質の含有量が、前記ルウの全質量に対して0.3~1.3質量%であることを特徴とする、ルウ。
〔6〕合成乳化剤を実質的に含まない、前記〔5〕に記載のルウ。
〔7〕前記水系原料が、畜肉エキスを含む、前記〔5〕又は〔6〕に記載のルウ。
〔8〕前記畜肉エキスが、ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記〔7〕に記載のルウ。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従えば、動物性タンパク質を含む水系原料と油脂との乳化配合物中で、当該動物性タンパク質の濃度を高くすることにより、合成乳化剤を使用しなくても当該乳化配合物の乳化状態を安定して維持することができる。したがって、合成乳化剤を使用しなくても、各原料が均一に混合されたルウを製造することが可能となり、例えば、合成乳化剤不使用の製品への要望に応えることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書に記載の「ルウ」とは、カレー、シチュー、ハヤシライスソース、ハッシュドビーフ、スープ、及びその他各種ソースを調理する際に使用する調理材料のことをいう。前記ルウを、肉や野菜などの食材を水と一緒に煮込んだところに投入することで、各料理を手軽に作ることができる。前記ルウの形態は、本技術分野で通常採用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ブロック状(固形ルウ)、フレーク状、顆粒状、粉状、又はペースト状のいずれであってもよい。
【0009】
本発明のルウの製造方法は、澱粉質原料及び第1の油脂を含む加熱処理混合物を用意する工程を含む。本明細書に記載の「澱粉質原料」とは、澱粉を主成分とする食品原料のことをいう。前記澱粉質原料は、前記ルウを製造することができる限り特に限定されないが、例えば、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、くず澱粉、及び加工澱粉などの澱粉、並びに、小麦粉、コーンフラワー、米粉、ライ麦粉、蕎麦粉、あわ粉、きび粉、はと麦粉、及びひえ粉などの穀粉などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記澱粉質原料の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約20~約50質量%であってもよく、好ましくは約30~約40質量%である。
【0010】
本明細書に記載の「油脂」とは、食用に供される天然油脂又は加工油脂などの油脂のことをいう。前記油脂としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記油脂は、バター、牛脂、及び豚脂などの動物油脂、マーガリン、パーム油、綿実油、及びコーン油などの植物油脂、これらの硬化油脂、並びにこれらの混合油脂などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記油脂の融点は、特に制限されず、目的の形状のルウを製造するために適宜選択され得る。例えば、固体状のルウを製造するためには融点35℃以上の油脂が好ましい。前記第1の油脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約20質量%以上であってもよく、好ましくは約30~約40質量%である。
【0011】
本発明のルウの製造方法は、動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂を混合して乳化配合物を調製する工程を含む。本明細書に記載の「水系原料」とは、ある程度の水分を含有する食品原料のことをいい、固体、液状、又はペースト状であり得る。前記水系原料の水分量は、特に限定されないが、例えば、当該水系原料の全質量に対して約10質量%以上であってもよい。前記製造方法においては、動物性タンパク質を含む水系原料が使用される。そのような水系原料としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスなどの畜肉エキスを使用してもよい。前記第2の油脂としては、前記第1の油脂と同じ油脂を採用してもいいし、異なる油脂原料を採用してもよい。
【0012】
本発明のルウの製造方法は、加熱撹拌中の前記加熱処理混合物に、前記乳化配合物を添加し、得られたルウ原料混合物を加熱撹拌する工程を含む。前記乳化配合物中の前記動物性タンパク質の含有量は、前記乳化配合物の全質量に対して約10質量%以上であり、好ましくは約14~約25質量%である。そして、前記ルウ原料混合物の水分量は、前記ルウ原料混合物の全質量に対して約8.5質量%以下であり、好ましくは約5.0~約8.0質量%である。前記動物性タンパク質の含有量及び水分量が、このような濃度範囲に含まれるように前記水系原料を使用すると、前記乳化配合物の乳化状態が特に安定化され、かつ前記ルウ原料混合物の加熱撹拌の操作性も良好なものとなる。なお、前記ルウ原料混合物中の前記動物性タンパク質の含有量は、動物に由来する前記水系原料中のタンパク質の量を、ケルダール法によって測定することで求めることができる。そして、前記ルウ原料混合物中の水分量は、それを常圧乾燥法によって直接測定するか、又は、前記ルウ原料混合物の各構成原料(前記加熱処理混合物及び前記乳化配合物、並びに、存在する場合には後述する任意の食品原料又は任意の添加剤)の水分量を常圧乾燥法によって個別に測定し、それらを積算することで求めることができる。
【0013】
前記動物性タンパク質を含む水系原料は、前記第2の油脂と安定した乳化配合物を調製することができるので、当該乳化配合物の調製に合成乳化剤は必ずしも必要とされない。すなわち、ある態様では、本発明の製造方法は、合成乳化剤を添加する工程を実質的に含まない。本明細書に記載の「合成乳化剤」とは、食品添加物として使用するために工業的に製造されている乳化剤のことをいい、ルウに配合する食品原料にもともと混入している天然物質までは含まれない。
【0014】
本発明の製造方法は、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の食品原料又は任意の添加剤を添加する工程をさらに含んでもよい。例えば、前記加熱処理混合物、前記乳化配合物、及び/又は前記ルウ原料混合物に、他の水系原料及び粉体原料などを添加する工程をさらに含んでもよい。また、本発明の製造方法は、ルウの製造において通常採用され得る工程、例えば、前記ルウ原料混合物の加熱撹拌後に、得られた混合物を冷却する工程、容器に充填する工程、及び/又は固化させる工程をさらに含んでもよい。
【0015】
また別の態様では、本発明は、澱粉質原料及び第1の油脂を含むルウにも関している。前記ルウは、動物性タンパク質を含む水系原料及び第2の油脂を含み、前記ルウ中の前記動物性タンパク質の含有量は、前記ルウの全質量に対して約0.3~約1.3質量%であり、好ましくは約0.5~約1質量%である。このような濃度範囲に含まれるように前記動物性タンパク質を含む水系原料を使用すると、前記動物性タンパク質を含む水系原料及び前記第2の油脂を含む乳化配合物の乳化状態が特に安定化され、かつルウを製造する際の加熱撹拌の操作性も良好なものとなる。なお、前記ルウ中の前記動物性タンパク質の含有量は、動物に由来する前記水系原料中のタンパク質の量を、ケルダール法によって測定することで求めることができる。また、前記ルウ中の水分量は、前記ルウの全質量に対して約7.0質量%以下であり、好ましくは約4~約6.5質量%である。前記ルウ中の水分量は、それを常圧乾燥法によって直接測定することで求めることができる。
【0016】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
〔試験例1〕種々の水系原料による乳化配合物の調製及び評価
タンパク質濃度、水分量、及び油脂量が同じになるように、後掲の表1に記載の原料を混合して、試料1~3及び対照1の乳化配合物を調製した。タンパク質濃度、水分量、及び油脂量は、それぞれ以下のように測定又は計算した。
<タンパク質濃度>
ケルダール法によって測定された各原料(ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス、及び大豆粉)の動物性タンパク質又は植物性タンパク質含有量から、各乳化配合物中のタンパク質濃度を計算。
<水分量>
常圧乾燥法(105℃、16時間加熱)により水分量を測定。
<油脂量>
エーテル抽出法(65℃、16時間抽出)により油脂量を測定。
【0018】
また、各乳化配合物を室温で10分間静置して、当該配合物における分離の有無を確認するとともに、各乳化配合物を水に分散させたときの水中油滴(O/W)エマルションの分離の有無を確認することで、その乳化状態を総合的に評価した。結果を○(安定なO/W乳化状態)又は×(不安定で分離)で表1に示す。
【0019】
【0020】
ビーフエキス、ポークエキス、及びチキンエキスなどの動物性タンパク質を含む水系原料を使用した試料1~3の乳化配合物では、安定なO/W乳化状態が維持されたが、それらの水系原料に代えて、植物性タンパク質を含む大豆粉及び水を使用した対照1の乳化配合物では、乳化状態を維持できず、水分と油脂が分離してしまった。したがって、乳化配合物における乳化状態の安定化作用には、植物性タンパク質ではなく動物性タンパク質が寄与していることが分かった。
【0021】
〔試験例2〕動物性タンパク質の濃度の乳化状態への影響の評価
動物性タンパク質濃度が後掲の表2に記載されている値となるように水系原料(ビーフエキス、ポークエキス、又はチキンエキス)、デキストリン、及び水の量を調節した以外は試験例1と同様にして、水分量及び油脂量が、それぞれ21.2質量%及び31.5質量%である乳化配合物を調製した。そして、試験例1と同様にして、各乳化配合物の乳化状態を評価した。
【0022】
【0023】
動物性タンパク質の濃度が8質量%以下だと、水系原料の種類によっては乳化配合物の乳化状態を十分に維持することができず、当該乳化配合物は、ルウの製造に使用できるようなものではなかったが、それより多くの動物性タンパク質を含む場合には、良好な乳化状態を維持することができた。
【0024】
〔試験例3〕乳化剤不使用のルウの調製及び評価
表3に記載の量の食用油脂及び小麦粉を使用して、常法により小麦粉ルウ(加熱処理混合物)を調製した。そして、表3に記載の原料で乳化配合物を調製し、当該乳化配合物及び他の原料を前記小麦粉ルウと適宜混合し、100℃になるまで加熱撹拌した。その後、混合物を冷却して容器に充填し、固化することによって、試料4及び対照2の固形ルウを調製した。試料4のルウは、乳化剤を使用しなくても分離を起こさずに調製することができた。
【0025】
乳化配合物中又は固形ルウ中の動物性タンパク質濃度は、試験例1と同様にして計算した。ルウ原料混合物の水分量は、そこに含まれる小麦粉ルウ、乳化配合物及びその他の各原料の水分量を常圧乾燥法(105℃、16時間加熱)によって個別に測定し、それらの水分量を積算して求めた。また、固形ルウ中の水分量は、それを常圧乾燥法(105℃、16時間加熱)により直接測定して求めた。
【0026】
【0027】
試料4又は対照2のルウと湯とを、1:6の質量比で混合し、ソースを作製した。作製したソースの風味を5人のパネルが評価した結果、試料4のルウで作製したソースは、従来品の対照2のルウで作製したソースと比較して、非常に深いコクと香りを有していた。
【0028】
〔試験例4〕動物性タンパク質の濃度及び水分量の影響の評価
表4に記載の原料を使用した以外は、試験例3と同様にして、ルウ及びソースを作製した。すなわち、乳化配合物中での動物性タンパク質の含有量は揃えて、ルウ及びソースにおける動物性タンパク質の濃度及び水分量の影響を検討した。
【0029】
【0030】
全原料を混合したルウ原料混合物中の水分量が高くなると、当該混合物の物性が硬くなる傾向にあり、その水分量が9.2質量%(対照3)になると、ルウ原料混合物を十分に加熱撹拌することができなくなった。また、作製したソースの風味を5人のパネルが評価した結果、ルウ中に含まれる動物性タンパク質の濃度が高くなると、ソースのコクが増し、特に試料7のルウから調製したソースでは、強いうま味を感じた。対照3のルウから調製したソースでも、試料7のルウから調製したソースと同程度のコクが感じられたが、十分な加熱撹拌ができなかったせいか、原料が加熱された時の香ばしく深みのある風味が弱かった。
【0031】
以上より、動物性タンパク質を含む水系原料と油脂との乳化配合物中で、当該動物性タンパク質の濃度を高くすることにより、合成乳化剤を使用しなくても当該乳化配合物の乳化状態を安定して維持できることがわかった。したがって、合成乳化剤を使用しなくても、各原料が均一に混合されたルウを製造することが可能となり、例えば、合成乳化剤不使用の製品への要望に応えることも可能となる。