(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】医用処理装置及び放射線治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230919BHJP
A61B 8/06 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2019101556
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎二
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210232(JP,A)
【文献】特開2017-035343(JP,A)
【文献】特開2019-072393(JP,A)
【文献】特表2018-517515(JP,A)
【文献】特表2009-504245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療の治療段階において、腫瘍を含む領域に関する超音波ドプラ解析による血流情報を取得する取得部と、
前記取得された血流情報から特定される現在の血管位置と、前記放射線治療の計画段階における、前記領域に含まれる血管と前記腫瘍との間の位置関係とに基づいて、現在の腫瘍位置を推定する推定部と
を具備する医用処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記計画段階における、前記腫瘍を含む領域に関する血流情報及び腫瘍位置を取得し、
前記推定部は、前記計画段階の血流情報から特定される血管位置と、前記計画段階の腫瘍位置とに基づいて、前記計画段階の位置関係を特定する、
請求項1に記載の医用処理装置。
【請求項3】
前記推定された現在の腫瘍位置と、前記計画段階の腫瘍位置との間のズレ量を算出する算出部をさらに備える、請求項1又は2に記載の医用処理装置。
【請求項4】
前記治療段階の治療前において、前記算出されたズレ量に応じて対象患者のセットアップ位置を補正する補正部をさらに備える、請求項3に記載の医用処理装置。
【請求項5】
前記治療段階の治療中において、前記算出されたズレ量に応じて前記放射線治療のゲート制御を行う制御部をさらに備える、請求項3又は4に記載の医用処理装置。
【請求項6】
前記算出されたズレ量を表示するための画像を生成する生成部をさらに備える、請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の医用処理装置。
【請求項7】
前記画像は、前記推定された現在の腫瘍位置と、前記ズレ量の大きさ、前記ズレ量の方向、前記計画段階の腫瘍位置、前記ズレ量に応じたユーザ操作量及び前記ズレ量の時系列変化のうちの少なくとも1つとを含む、請求項6に記載の医用処理装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記取得された血流情報に基づいて、前記領域に関するBモード画像における血管位置を特定する、請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の医用処理装置。
【請求項9】
前記推定部は、前記領域に関するBモード画像から現在の腫瘍位置を仮推定し、前記計画段階の位置関係を用いて前記仮推定された腫瘍位置を補正することにより、前記現在の腫瘍位置を推定する、請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の医用処理装置。
【請求項10】
前記取得された血流情報から特定される現在の血管位置は、第1の血管位置及び第2の血管位置を含み、
前記推定部は、前記現在の腫瘍位置を、前記計画段階における、前記領域に含まれる血管ごとの位置関係に基づいて推定する、
請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の医用処理装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記計画段階における、前記血管と、前記領域に含まれるリスク臓器との間の位置関係に基づいて、現在のリスク臓器位置をさらに推定する、請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の医用処理装置。
【請求項12】
前記推定部は、前記計画段階における、前記腫瘍を含む領域に関するX線コンピュータ断層撮影によるCT画像と、前記領域に関するBモード画像とを位置合せすることにより、前記計画段階の位置関係を特定する、請求項2に記載の医用処理装置。
【請求項13】
前記取得部は、前記計画段階における、前記腫瘍を含む領域に関するX線コンピュータ断層撮影によるCT画像を取得し、
前記推定部は、前記取得されたCT画像に基づいて、腫瘍位置を特定する、
請求項1に記載の医用処理装置。
【請求項14】
放射線治療の治療計画に従い対象患者に放射線を照射する照射部と、
前記放射線治療の治療段階において、腫瘍を含む領域に関する超音波ドプラ解析による血流情報を取得する取得部と、
前記取得された血流情報から特定される現在の血管位置と、前記放射線治療の計画段階における、前記領域に含まれる血管と前記腫瘍との間の位置関係とに基づいて、現在の腫瘍位置を推定する推定部と
を具備する放射線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用処理装置及び放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療に先立って、腫瘍の位置を確認することにより、患者のセットアップ位置を補正したり、患者への放射線の照射のゲート制御をしたりする技術がある。腫瘍の位置を確認するために、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)装置、X線撮影装置及び超音波診断装置などが用いられる。
【0003】
このような中、CT装置及びX線撮影装置を用いて腫瘍の位置を確認する場合には、患者への被曝が発生するという問題がある。一方で、超音波診断装置を用いて腫瘍の位置を確認する場合には、患者への被曝は発生しない。しかしながら、超音波診断装置により得られる画像(超音波画像)は、CT装置又はX線撮影装置により得られる画像と比較して精度が荒く、また、組織差による濃淡の差が小さいために腫瘍の位置が認識し難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-117010号公報
【文献】特開2017-035343号公報
【文献】特開2012-210232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、超音波画像を用いて腫瘍位置を推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用処理装置は、取得部と、推定部とを備える。取得部は、放射線治療の治療段階において、腫瘍を含む領域に関する超音波ドプラ解析による血流情報を取得する。推定部は、前記取得された血流情報から特定される現在の血管位置と、前記放射線治療の計画段階における、前記領域に含まれる血管と前記腫瘍との間の位置関係とに基づいて、現在の腫瘍位置を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る放射線治療システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の治療支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の放射線治療システムにおいて計画段階に実施される、腫瘍と血管との間の位置関係を特定する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3の流れにおける腫瘍と血管との間の位置関係の特定について説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1の放射線治療システムにおいて治療段階に実施される、超音波画像を用いて現在の腫瘍位置を推定する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5の流れにおける超音波画像を用いた現在の腫瘍位置の推定について説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図5の流れにおいて表示される画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、腫瘍と複数の血管の各々との間で位置関係が特定される場合について説明するための図である。
【
図9】
図9は、リスク臓器及び血管の間の位置関係がさらに特定される場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る治療支援装置及び放射線治療システムを説明する。
【0009】
なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、放射線治療システム1は、互いにネットワークを介して接続された、治療計画用CT装置2、超音波診断装置3、治療計画装置4、放射線治療装置5及び治療支援装置6を有する。ここで、治療支援装置6は、医用処理装置の一例である。
【0011】
なお、治療計画用CT装置2、超音波診断装置3、治療計画装置4、放射線治療装置5及び治療支援装置6の間における各種データの移動は、ネットワークを介して行われる場合に限らず、外部メモリ等を介して行われてもよい。この場合、放射線治療システム1の有する各々の装置は、ネットワークを介して他の装置に接続されていなくてもよい。
【0012】
治療計画用CT装置2は、放射線治療計画に利用するCT画像を生成するためのX線コンピュータ断層撮影装置である。治療計画用CT装置2は、例えば、X線管とX線検出器とを保持する回転フレームを高速で回転させながらX線管から患者にX線を照射し、患者を透過したX線をX線検出器により検出する。治療計画用CT画像を撮像するとき、患者は、治療計画用CT装置2の撮像用天板等に固定具により固定された状態である。治療計画用CT装置2の撮像用天板は、CT撮像と放射線治療との間で患者の体勢が変化しないようにするために、放射線治療装置5の治療用天板と同様に平面形状を有している。患者の位置決め精度の向上のため、撮像用天板は、治療用天板と同一形状を有しているとよい。
【0013】
治療計画用CT装置2のコンソールは、Central Processing Unit(CPU)等のプロセッサ、Read Only Memory(ROM)やRandom Access Memory(RAM)等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータを有する。コンソールは、X線検出器からの生データ(投影データ)に基づいて3次元のCT画像データ(X線CT画像)を再構成する。X線CT画像は、当該X線の透過経路上にある物質のX線減弱係数の空間分布を表現する画像データであってもよいし、X線減弱係数に応じたCT値の空間分布を表現する画像データであってもよい。治療計画用CT装置2により生成されたX線CT画像は、治療計画用CT画像とも呼ばれる。生成された治療計画用CT画像は、治療計画装置4及び/又は治療支援装置6に送信される。
【0014】
なお、放射線治療システム1は、治療計画用CT装置2を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データを生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用CT装置2の代わりに、コーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング(MRI)装置、核医学診断装置等を有してもよい。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像データ(治療計画用医用画像データ)を生成できる医用画像診断装置として、治療計画用CT装置2を有するものとする。
【0015】
超音波診断装置3は、超音波プローブを介して、患者内に超音波を送信し、また、患者体内で反射された超音波を受信する。超音波診断装置3は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含む。超音波診断装置3は、受信された超音波に対応するエコー信号に信号処理を施して超音波画像を生成する。信号処理としては、例えば、Bモード処理及びドプラ処理が利用される。超音波診断装置3は、エコー信号にBモード処理を施すことにより患者内の音響インピーダンス差の空間分布を表現するBモード画像を生成する。超音波診断装置3は、エコー信号にドプラ処理(超音波ドプラ解析)を施すことにより患者内の血流の運動情報(以下、血流情報)の空間分布を表現する血流情報画像を生成する。
【0016】
Bモード処理において、超音波診断装置3は、受信信号に対して包絡線検波処理及び対数増幅処理等を施してBモードデータを生成する。生成されたBモードデータは、超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。ドプラ処理において、超音波診断装置3は、受信信号を周波数解析して移動体のドプラデータを生成する。移動体とは、例えば、被検体内に含まれる血流又は組織等である。移動体の運動情報として平均速度や平均分散値、平均パワー値等が算出される。これら運動情報は、ドプラ処理対象のRegion Of Interest(ROI)内に設定された複数のサンプル点各々について算出される。生成されたドプラデータは、超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。ドプラ処理において、超音波診断装置3は、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法等のカラードプラ法を実行可能である。CFM法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行なわれる。超音波診断装置3は、同一位置のデータ列に対してMoving Target Indicator(MTI)フィルタを掛けることで血流又は組織等に由来する信号を抽出する。超音波診断装置3は、抽出した信号から血流又は組織等の速度、分散又はパワー等の運動情報を推定する。
【0017】
超音波診断装置3は、Bモード処理及びドプラ処理により生成されたデータに基づいて画像を生成する。例えば、超音波診断装置3は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像を生成する。超音波診断装置3は、2次元スキャンが行われた場合、スキャン面に関する2次元の画像を生成する。3次元スキャンが行われた場合、超音波診断装置3は、スキャン領域に関する3次元の画像データを生成し、3次元の画像データに任意の3次元画像処理を施して2次元の画像を生成する。3次元画像処理としては、Multi-Planer Reconstruction(MPR)処理やボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、Curved MPR(CPR)処理が用いられればよい。
【0018】
具体的には、超音波診断装置3は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換又はRAW-ボクセル変換を実行することで、2次元又は3次元のBモード画像を生成する。また、超音波診断装置3は、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換又はRAW-ボクセル変換を実行することで、血流又は組織が映像化された2次元又は3次元のドプラ画像を生成する。ドプラ画像は、速度画像、分散画像、パワー画像又はこれらを組み合わせた画像を含む。以下、2次元Bモード画像と2次元ドプラ画像とを総称して単に超音波画像と呼ぶことにする。超音波診断装置3は、生成した画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、及びボディマーク等を合成しても構わない。
【0019】
治療計画装置4は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータである。治療計画装置4は、治療計画用CT装置2から直接的に又はPicture Archiving and Communication Systems(PACS)を介して治療計画用CT画像を受信する。治療計画装置4は、受信した治療計画用CT画像に基づいて患者に関する放射線治療計画を作成する。放射線治療計画の作成時(計画時)には、例えば、ディスプレイに表示された治療計画用CT画像に応じたユーザの入力に基づいて、腫瘍位置が特定される。作成された放射線治療計画及び特定された腫瘍位置は、それぞれ、放射線治療装置5及び治療支援装置6に供給される。
【0020】
放射線治療計画の作成方法としては、フォーワード・プランニング(Forward Planning)とインバース・プランニング(Inverse Planning)の2種類がある。フォーワード・プランニングは、放射線治療の照射方向数や各照射角度、各照射の放射線強度、各照射のコリメータ開度、ウェッジフィルター等の放射線治療条件を詳細に設定し、それらの条件で最終的に得られる放射線分布を見て、放射線治療条件を評価する。放射線分布を変更する時は、放射線治療条件の一部あるいは全部を変更して再度放射線分布を求める。このようにフォーワード・プランニングにおいては、放射線治療条件を変えながら、少しずつ放射線分布を変化させ、所望の放射線分布が実現できるまで何度も繰り返し放射線条件が変更される。インバース・プランニングは、腫瘍領域及び適切なマージンを設定し、その領域に照射する放射線量及び許容範囲を設定する。さらに危険臓器などのリスク領域を治療計画用CT画像から抽出し、リスク領域に対する放射線量を、所定レベル以上の放射線量にならない安全レベルに設定する。治療計画装置4は、この放射線分布に対する要求を満足する放射線治療計画を、放射線治療条件を変更しながら逐次的に立案する。
【0021】
放射線治療装置5は、放射線治療計画に従い患者内の標的腫瘍等に放射線を照射することにより、患者を治療する装置である。具体的には、放射線治療装置5は、治療用架台(ガントリ)と治療用寝台とコンソールとを有する。治療用架台は、照射ヘッドを回転軸回りに回転可能に支持する。照射ヘッドには、電子銃等により発生された電子等を加速する加速管と、加速管により加速された電子が衝突する金属ターゲットとが搭載される。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線の一種であるX線が発生する。照射ヘッドは、治療計画装置4により計画された放射線治療計画に従い放射線を照射する。照射ヘッドからの放射線のビーム軸と回転軸とが交わる点は、空間的に不動であり、アイソ・センタと呼ばれている。治療用寝台は、患者が載置される治療用天板と、治療用天板を移動自在に支持する基台とを有する。治療用天板は、撮像用天板と同様に平面形状を有している。患者の治療部位がアイソ・センタに一致するように治療用架台、治療用寝台及び患者が位置合せされる。ここで、照射ヘッドは、照射部の一例である。
【0022】
治療支援装置6は、放射線治療計画又は放射線治療を支援するためのコンピュータである。治療支援装置6は、例えば、放射線治療のスケジュール情報や放射線治療計画情報、医用画像等を管理する情報システムに含まれる。このような情報システムとしては、例えば、Oncology Information System(OIS)が知られている。治療支援装置6は、例えば、放射線治療装置5に放射線治療計画を供給する。また、治療支援装置6は、後述するように、超音波画像に基づいて現在の腫瘍位置を推定し、推定された腫瘍位置と計画時の腫瘍位置とのズレ量を算出し、算出されたズレ量に応じて患者位置補正及び/又は照射のゲート制御を実行する。ズレ量は、例えば、ズレの方向及び/又は大きさを示す。
【0023】
ここで、治療支援装置6の構成の一例について、図面を参照して説明する。
図2は、
図1の治療支援装置の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、治療支援装置6は、処理回路61、画像処理回路62、通信インタフェース63、表示機器64、入力インタフェース65及び記憶回路66を有する。処理回路61、画像処理回路62、通信インタフェース63、表示機器64、入力インタフェース65及び記憶回路66は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0024】
処理回路61は、ハードウェア資源として、CPU、Micro Processing Unit(MPU)、Graphics Processing Unit(GPU)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路61は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、治療支援プログラムと呼ぶ)を実行して、取得機能611、位置推定機能612、ズレ量算出機能613、患者位置補正機能614、ゲート制御機能615及び表示制御機能616を実現する。
【0025】
取得機能611において処理回路61は、放射線治療の対象患者に関し、現在の腫瘍位置の推定等に必要な各種の情報を取得する。例えば、処理回路61は、放射線治療の計画段階において、治療計画用CT装置2から腫瘍を含む領域に関するX線CT画像を取得し、治療計画装置4から腫瘍位置を取得し、超音波診断装置3から腫瘍を含む領域に関する超音波画像(血流情報画像及びBモード画像)を取得する。例えば、処理回路61は、放射線治療の治療段階において、超音波診断装置3から腫瘍を含む領域に関する超音波画像(血流情報画像及びBモード画像)を取得し、記憶回路66から計画段階における血管及び腫瘍の位置関係を取得する。なお、予め上述した各種の情報の一部又は全部が記憶回路66に記憶されている場合、処理回路61は、各段階において、記憶回路66から各種の情報を取得する。ここで、取得機能611を実現する処理回路61は、取得部の一例である。
【0026】
位置推定機能612において処理回路61は、血流情報からBモード画像上の血管位置を特定する。処理回路61は、治療計画用CT画像上の腫瘍位置を特定してもよい。処理回路61は、Bモード画像及び治療計画用CT画像の位置合せをすることにより、血管及び腫瘍の位置関係を特定する。処理回路61は、治療段階の血流情報から特定される現在の血管位置と、計画段階の位置関係とに基づいて、現在の腫瘍位置を推定する。ここで、位置推定機能612を実現する処理回路61は、推定部の一例である。
【0027】
ズレ量算出機能613において処理回路61は、治療段階で推定された現在の腫瘍位置と、計画時(計画段階)の腫瘍位置との間のズレ量を算出する。ここで、ズレ量算出機能613を実現する処理回路61は、算出部の一例である。
【0028】
患者位置補正機能614において処理回路61は、算出されたズレ量に応じて対象患者のセットアップ位置を補正する。ここで、患者位置補正機能614を実現する処理回路61は、補正部の一例である。
【0029】
ゲート制御機能615において処理回路61は、算出されたズレ量に応じて前記放射線治療のゲート制御を行う。ここで、ゲート制御機能615を実現する処理回路61は、制御部の一例である。
【0030】
表示制御機能616において処理回路61は、表示機器64に種々の情報を表示する。具体的には、処理回路61は、操作画面や位置合せされた治療計画用CT画像及び超音波画像(重畳画像)、算出されたズレ量を提示する画像等の画像データを画像処理回路62に生成させる。処理回路61は、表示機器64に生成された各種の画像を表示する。ここで、表示制御機能616を実現する処理回路61は、生成部の一例であると表現できる。
【0031】
なお、処理回路61は、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、処理回路61は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
【0032】
なお、各機能611~616は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能611~616を実現するものとしても構わない。
【0033】
画像処理回路62は、種々の画像を生成する。画像処理回路62は、ハードウェア資源として、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、画像処理回路62は、取得又は生成された種々の画像に対して各種の画像処理を施す。画像処理回路62は、操作画面や位置合せされた治療計画用CT画像及び超音波画像(重畳画像)、算出されたズレ量を提示する画像等の画像データを生成する。また、画像処理回路62は、3次元画像に3次元画像処理を施して2次元画像を生成することも可能である。3次元画像処理としては、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、MPR処理、CPR処理等のレンダリングが利用されればよい。なお、画像処理回路62は、例えば、処理回路61の一部として構成されていてもよい。ここで、画像処理回路62は、生成部の一例であると表現できる。
【0034】
通信インタフェース63は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム1が有する治療計画用CT装置2、超音波診断装置3、治療計画装置4及び放射線治療装置5との間でデータ通信を行う。
【0035】
表示機器64は、表示制御機能616により種々の情報を表示する。表示機器64は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器64は、プロジェクタでもよい。
【0036】
入力インタフェース65は、具体的には、入力機器と入力インタフェース回路とを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器からの出力信号は、入力インタフェース回路を介して処理回路61に供給される。
【0037】
記憶回路66は、種々の情報を記憶するHard Disk Drive(HDD)やSolid State Drive(SSD)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路66は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路66は、治療支援プログラムやX線CT画像、超音波画像(Bモード画像及び血流情報画像)、腫瘍位置、血管位置、血管と腫瘍との間の位置関係、腫瘍位置のズレ量等を記憶する。記憶回路66は、各種の処理中のデータを記憶してもよい。
【0038】
以下、本実施形態に係る放射線治療システム1の動作例について説明する。
【0039】
<動作例の概要>
放射線治療の計画段階において、治療計画用CT画像に基づいて放射線治療計画が作成される。また、超音波画像から特定される血管位置と、計画時に治療計画用CT画像から特定された腫瘍位置との間の位置関係が特定される。
【0040】
放射線治療の治療段階において、所定の期間に亘って複数回の治療が実施される。各治療回の治療時においては、新たに収集された超音波画像に基づいて、その時点での腫瘍位置が推定される。また、推定された腫瘍位置と計画時の腫瘍位置とのズレ量が算出される。算出されたズレ量は、治療前(照射開始前)の時点では、患者のセットアップ位置の補正(患者位置補正)に用いられる。また、算出されたズレ量は、治療中(照射開始後)の時点では、照射のゲート制御に用いられる。
【0041】
なお、複数回の治療の間において、新たに収集された治療計画用CT画像に基づいて放射線治療計画が変更(再計画)される場合もあり得る。つまり、治療段階には再計画段階が含まれていてもよい。再計画段階においては、再計画時に新たに収集された治療計画用CT画像及び超音波画像に基づいて、上述の計画段階と同様にして、血管位置と腫瘍位置との間の位置関係が特定されればよい。また、再計画段階の後に実施される治療段階においては、再計画段階で特定された位置関係に基づいて、上述の治療段階と同様にして、腫瘍位置の推定、ズレ量の算出、患者位置補正及びゲート制御のそれぞれが実施されればよい。
【0042】
本実施形態においては、計画段階において特定された血管位置と腫瘍位置との相対的な位置関係を利用して、治療段階において特定された血管位置から当該治療段階における腫瘍位置を推定する。これは、腫瘍位置とその周辺にある血管位置との相対的な位置関係は略不変であるとの経験則に基づいている。腫瘍位置の推定の基準となる血管は比較的太い血管が好適である。このような血管としては、肺野、肝臓、腎臓、前立腺及び頸部それ自身又はその周辺に存在する。したがって本実施形態は、肺野、肝臓、腎臓、前立腺及び頸部に発生した腫瘍を治療対象とする。
【0043】
<計画段階の動作例>
ここで、放射線治療の計画段階における放射線治療システム1の動作の一例について、図面を参照してより詳細に説明する。
図3は、
図1の放射線治療システム1において計画段階に実施される、腫瘍と血管との間の位置関係を特定する流れの一例を示すフローチャートである。
図4は、
図3の流れにおける腫瘍と血管との間の位置関係の特定について説明するための図である。
【0044】
ステップS11において、治療計画用CT装置2による腫瘍の撮影が実施される。治療計画用CT装置2は、腫瘍を含む領域に関する治療計画用CT画像を生成する。生成された治療計画用CT画像は、治療計画装置4及び治療支援装置6に供給される。
【0045】
ステップS12において、超音波診断装置3による腫瘍の撮影が実施される。超音波診断装置3は、腫瘍を含む領域に関する超音波画像I10を生成する。ここで、超音波画像I10は、Bモード画像I11及び血流情報画像I12を含む。生成された超音波画像I10は、治療支援装置6に供給される。
【0046】
ステップS13において、治療計画装置4は、治療計画用CT画像に基づいて治療計画を作成する。治療計画装置4は、計画時に治療計画用CT画像から特定された腫瘍位置に関する情報を治療支援装置6に供給する。
【0047】
ステップS14において、超音波画像I10から血管位置PBが特定される。治療支援装置6において、取得機能611を実現する処理回路61は、超音波診断装置3から腫瘍を含む領域に関する超音波画像I10を取得する。表示制御機能616は、表示機器64に、取得された超音波画像I10のうちの少なくとも血流情報画像I12を表示する。位置推定機能612を実現する処理回路61は、取得された血流情報画像I12に基づいて、腫瘍を含む領域内の血管位置PBを特定する。換言すれば、処理回路61は、Bモード画像I11における血管位置PBを特定する。血管位置PBの特定は、例えば、表示された血流情報画像I12に応じたユーザの入力に基づいて行われる。特定された血管位置PBは、記憶回路66に記憶されてもよい。
【0048】
なお、血管位置PBの特定は、例えば、血流情報の値と、予め設定されて記憶回路66に記憶されている所定の閾値との比較に基づいて処理回路61により行われてもよい。より詳細には、処理回路61は、所定の閾値を超える血流情報値を有する画素を探索し、当該画素の集合を血管位置PBとして特定する。当該画素の集合の外形(血管の外形)が血管位置PBとして定義されてもよいし、当該画素の集合の重心や中心等の代表点が血管位置PBとして定義されてもよいし、少なくとも2つの代表点により定義されてもよい。
【0049】
ステップS15において、取得機能611を実現する処理回路61は、治療計画用CT装置2から治療計画用CT画像を取得する。処理回路61は、治療計画装置4から計画時に特定された腫瘍位置PTを取得する。位置推定機能612を実現する処理回路61は、治療計画用CT画像と、Bモード画像I11(超音波画像)とを位置合せする。位置合せされた治療計画用CT画像及びBモード画像I11は、重畳表示される。重畳表示用の画像データは、例えば、画像処理回路62により生成される。重畳表示は、例えば
図4に示すように、超音波画像I10上に特定された腫瘍位置PTを表示することにより行われる。
【0050】
なお、重畳表示は、治療計画用CT画像上に特定された血管位置PBを表示することにより行われてもよい。
【0051】
なお、治療計画用CT画像は、治療計画用CT装置2から取得される場合に限らず、腫瘍位置PTとともに治療計画装置4から取得されてもよい。
【0052】
なお、腫瘍位置PTは、治療支援装置6において特定されてもよい。この場合、位置推定機能612を実現する処理回路61は、治療計画装置4の処理回路と同様にして、取得された治療計画用CT画像から腫瘍位置PTを特定する。この場合、取得機能611を実現する処理回路61は、治療計画装置4から計画時に特定された腫瘍位置PTを取得しなくてもよい。
【0053】
ステップS16において、位置推定機能612を実現する処理回路61は、腫瘍を含む領域における、特定された血管位置PB及び腫瘍位置PTの間の位置関係RBTを特定する。特定された位置関係RBTに関する情報は、記憶回路66に記憶される。このとき、治療計画用CT画像及びBモード画像I11の位置合せ情報がさらに記憶されてもよい。その後、位置関係を特定する流れは終了する。
【0054】
<治療段階の動作例>
ここで、放射線治療の治療段階における放射線治療システム1の動作の一例について、図面を参照してより詳細に説明する。
図5は、
図1の放射線治療システム1において治療段階に実施される、超音波画像I20を用いて現在の腫瘍位置PTbを推定する流れの一例を示すフローチャートである。
図6は、
図5の流れにおける超音波画像I20を用いた現在の腫瘍位置PTbの推定について説明するための図である。
【0055】
ステップS21において、超音波診断装置3による治療時の腫瘍の撮影が、計画段階のステップS11と同様にして実施される。
【0056】
ステップS22において、取得機能611を実現する処理回路61は、超音波診断装置3から腫瘍を含む領域に関する超音波画像I20を取得する。取得された超音波画像I20は、Bモード画像I21及び血流情報画像I22を含む。表示制御機能616は、表示機器64に、取得された超音波画像I20のうちの少なくともBモード画像I21を表示する。位置推定機能612を実現する処理回路61は、取得されたBモード画像I21に基づいて、腫瘍を含む領域内の腫瘍位置PTaを推定(仮推定)する。換言すれば、処理回路61は、Bモード画像I21における腫瘍位置PTaを仮推定する。腫瘍位置PTaの仮推定は、例えば、表示されたBモード画像I21に応じたユーザの入力に基づいて行われる。仮推定された現在の腫瘍位置PTaは、記憶回路66に記憶されてもよい。
【0057】
なお、腫瘍位置PTaの仮推定は、例えば、処理回路61又は画像処理回路62がBモード画像I21にエッジ検出等の画像処理を施すことにより行われてもよい。
【0058】
なお、腫瘍位置PTaの仮推定は、検出された腫瘍の外形により定義されてもよいし、その重心位置により定義されてもよいし、少なくとも2つの代表点の設定により定義されてもよい。
【0059】
ステップS23において、計画段階のステップS14と同様にして、超音波画像I20から血管位置PBが特定される。特定された現在の血管位置PBは、記憶回路66に記憶されてもよい。
【0060】
ステップS24において、取得機能611を実現する処理回路61は、記憶回路66から計画段階における位置関係RBTを取得する。位置推定機能612を実現する処理回路61は、ステップS23で特定された現在の血管位置PBと、計画段階における位置関係RBTとに基づいて、ステップS22で仮推定された腫瘍位置PTaを補正する。
図6に示す例では、仮推定された腫瘍位置PTaは、矢印ACで示されるように位置が補正されている。
【0061】
以上説明したように、治療支援装置6は、ステップS22乃至ステップS24の流れにより、取得された血流情報画像I22(血流情報)から特定される現在の血管位置PBと、放射線治療の計画段階における、血管及び腫瘍の間の位置関係RBTとに基づいて、現在の腫瘍位置PTbを推定する。推定された現在の腫瘍位置PTbは、記憶回路66に記憶されてもよい。
【0062】
このように、本実施形態に係る放射線治療システム1によれば、計画段階において特定された血管位置と腫瘍位置との相対的な位置関係を利用して、治療段階において特定された血管位置から当該治療段階における腫瘍位置を推定する。このため、治療計画用CT画像を新たに収集することなく、超音波画像を用いて現在の腫瘍位置を推定することができるという効果がある。また、計画段階において特定された血管位置と腫瘍位置との相対的な位置関係を利用するので、単にBモード画像や血流情報画像のみで腫瘍位置を推定する場合に比して、腫瘍位置を精度良く把握できる。つまり、本実施形態に係る技術によれば、ユーザは、患者への被曝を増やすことなく、超音波画像だけでは判断し難い腫瘍位置を精度良く把握できる。
【0063】
ステップS25において、ズレ量算出機能613は、推定された現在の腫瘍位置PTbと、計画時(計画段階)の腫瘍位置PTとの間のズレ量を算出する。算出されたズレ量は、記憶回路66に記憶されてもよい。
【0064】
このように、本実施形態に係る技術によれば、治療計画用CT画像を新たに収集することなく、治療計画時に特定された腫瘍位置と、現在の腫瘍位置との間のズレ量を算出できるという効果がある。
【0065】
ステップS26において、算出されたズレ量に応じて、患者位置補正又は照射のゲート制御が実施される。算出されたズレ量に応じた患者位置補正及び照射のゲート制御については、後述する。
【0066】
ステップS21乃至ステップS26の流れは、ステップS26の患者位置補正又は照射のゲート制御が完了するまで適宜繰り返され、患者位置補正又は照射のゲート制御が完了したときに終了する。
【0067】
ここで、ステップS26で実施される患者位置補正又は照射のゲート制御について、図面を参照して説明する。
図7は、
図5の流れにおいて表示される表示画像I30の一例を示す図である。
【0068】
(治療前の場合)
まず、ステップS21乃至ステップS26の流れが治療前(治療時)に実施される場合について説明する。この場合、ステップS26では、算出されたズレ量がユーザに提示される。ユーザへの提示は、例えば表示により行われるが、音声により行われてもよい。ユーザは、提示されたズレ量に応じて患者位置補正を行う。換言すれば、治療前に実施される本ステップでは、算出されたズレ量に応じた患者位置補正が実施される。
【0069】
患者位置補正機能614を実現する処理回路61は、算出されたズレ量に応じたパラメータの値を算出する。パラメータは、現在の腫瘍位置と、計画時の腫瘍位置との間の位置関係をユーザが判断できる値又は記号であればよい。換言すれば、パラメータは、患者のセットアップ位置が適切であるか否かをユーザが判断できる値又は記号であればよい。パラメータは、例えば、治療用天板の操作量(ユーザ操作量、移動量)を含む。記号は、例えば、治療用天板の操作方向や適切か否かを示す文字や印を含む。画像処理回路62は、パラメータを表示するパラメータ表示画像I50を生成する。表示制御機能616を実現する処理回路61は、生成されたパラメータ表示画像I50を表示機器64に表示する。つまり、算出されたズレ量がパラメータの値又は記号としてユーザに提示される。例えば、ユーザは、表示されたパラメータの値又は記号に従って治療用天板を移動させる。
【0070】
このように、本実施形態に係る技術によれば、患者への被曝を増やすことなく、超音波画像だけを用いて、放射線治療装置5のアイソ・センタに患者の治療部位(腫瘍位置)を一致させることができるという効果がある。
【0071】
なお、患者位置補正機能614を実現する処理回路61により、治療用天板の移動によって実現できるズレ量(大きさ、方向)であるか否かが判定されてもよい。治療用天板の移動によって実現できるズレ量であると判定されなかったとき、処理回路61は、ユーザへの通知を行ってもよい。通知は、音声で行われてもよいし、表示により行われてもよい。通知は、固定具の再装着を促すものであってもよいし、超音波診断装置3のプローブ位置の修正を促すものであってもよいし、放射線治療計画の再計画を促すものであってもよい。
【0072】
なお、治療用天板の移動は、表示に応じたユーザ操作に限らず、算出されたズレ量に応じた処理回路61の制御により実現されてもよい。この場合、患者位置補正機能614は、算出されたズレ量に応じたパラメータの値として、例えば、治療用天板の移動量を算出すればよい。処理回路61は、算出された移動量に応じて、治療用天板を移動させるための制御信号を生成する。生成された制御信号は、放射線治療装置5に供給される。
【0073】
(治療中の場合)
次に、ステップS21乃至ステップS26の流れが治療中(治療時)に実施される場合について説明する。この場合、ステップS26では、算出されたズレ量がユーザに提示される。ユーザへの提示は、例えば表示により行われるが、音声により行われてもよい。ユーザは、提示されたズレ量に応じて照射のゲート制御を行う。換言すれば、治療中に実施される本ステップでは、算出されたズレ量に応じた照射のゲート制御が実施される。
【0074】
ゲート制御機能615を実現する処理回路61は、算出されたズレ量に応じたパラメータの値を算出する。パラメータは、現在の腫瘍位置と、計画時の腫瘍位置との間の位置関係をユーザが判断できる値であればよい。換言すれば、パラメータは、治療中に照射を開始(再開)したり、終了(停止)したりするタイミングをユーザが判断できる値であればよい。パラメータは、例えば、ズレの大きさと所定の閾値とを含む。パラメータは、例えば、所定の閾値とズレの大きさとの差分値であってもよいし、ズレの大きさが所定の閾値範囲内であるか否かを示す値であってもよい。画像処理回路62は、パラメータを表示するパラメータ表示画像I50を生成する。表示制御機能616を実現する処理回路61は、生成されたパラメータ表示画像I50を表示機器64に表示する。つまり、算出されたズレ量がパラメータの値としてユーザに提示される。例えば、ユーザは、表示されたパラメータの値に従って照射の開始(再開)又は終了(停止)を指示する。
【0075】
このように、本実施形態に係る技術によれば、患者への被曝を増やすことなく、超音波画像だけを用いて、照射のゲート制御を実現することができるという効果がある。つまり、本実施形態に係る技術によれば、治療部位(腫瘍位置)の他の部位への放射線の照射を低減できるという効果がある。
【0076】
なお、算出されたズレ量のユーザへの提示は、パラメータに限らず、ズレの大きさが所定の閾値範囲内であるか否か等、照射タイミングであるか否かを示す表示により行われてもよい。この表示は、単に「ON」又は「OFF」等の表示により行われてもよいし、照射タイミングであるか否かに応じて表示される色が変わることにより行われてもよい。
【0077】
なお、照射のゲート制御は、表示に応じたユーザの指示操作に限らず、算出されたズレ量に応じた処理回路61の制御により実現されてもよい。この場合、ゲート制御機能615を実現する処理回路61は、例えばズレの大きさが所定の閾値範囲内であるか否かを判定する。
【0078】
例えば、ズレの大きさが所定の閾値範囲内であると判定されなかったとき、処理回路61は、照射の開始(再開)を指示するユーザ操作が行われても照射が開始(再開)されないようにしたり、照射中の場合には照射を終了(停止)させたりするための制御信号を生成する。生成された制御信号は、放射線治療装置5に供給される。
【0079】
例えば、処理回路61は、ユーザが照射の開始を指示した後、算出されたズレ量に応じて照射の開始を指示する制御信号を生成してもよい。その後、処理回路61は、算出されたズレ量に応じて照射を停止又は再開させるための制御信号を生成する。
【0080】
なお、患者位置補正及び照射のゲート制御のうち、いずれか一方が実施されなくてもよい。
【0081】
なお、治療時(治療前及び/又は治療中)に表示される表示画像I30には、
図7に示すように、超音波画像I40が含まれていてもよい。超音波画像I40としては、Bモード画像I41が用いられてもよいし、血流情報画像I42がさらに用いられてもよい。
【0082】
なお、治療時(治療前及び/又は治療中)に表示される表示画像I30には、
図7に示すように、推定された現在の腫瘍位置PTbが含まれていてもよい。また、算出されたズレ量のユーザへの提示は、パラメータに限らず、ズレ量(大きさ、方向)を示す矢印ASにより行われてもよい。
【0083】
なお、治療時(治療前及び/又は治療中)に表示される表示画像I30には、
図7に示すように、計画時の腫瘍位置PTcがさらに表示されてもよい。このとき、推定された現在の腫瘍位置PTb及び計画時の腫瘍位置PTcの表示は、算出されたズレ量の表示に相当するとも言える。つまり、算出されたズレ量のユーザへの提示は、パラメータに限らず、現在の腫瘍位置PTb及び計画時の腫瘍位置PTcの表示により行われてもよい。
【0084】
なお、治療時(治療前及び/又は治療中)に表示される表示画像I30には、
図7に示すように、ズレ量の経時変化(時系列変化)を示すグラフ表示画像I60が含まれていてもよい。例えば、腫瘍位置の周期的な変位が存在する場合もある。この場合、ズレ量の経時変化と閾値(
図7中の破線)との表示により、推定された現在の腫瘍位置と、計画時の腫瘍位置とが一致する又は一致するとみなすことができるタイミングをユーザに提示することができる。なお、ズレ量に周期的な変位が存在する場合には、例えば治療前の患者位置補正においては、息止め時に相当する腫瘍位置、腫瘍位置の平均値(中央値)等が、推定された腫瘍位置として用いられてもよい。
【0085】
<腫瘍と複数の血管の各々との間で位置関係が特定される場合>
なお、
図3を参照して上述した腫瘍及び血管の間の位置関係を特定する流れにおいて、腫瘍と、複数の血管との間でそれぞれ位置関係が特定されてもよい。
図8は、腫瘍と複数の血管の各々との間で位置関係が特定される場合について説明するための図である。
図8には、血流情報画像I72(超音波画像I70)から特定された複数の血管位置PB1,PB2(第1の血管位置及び第2の血管位置)と、Bモード画像I71(超音波画像I70)上に重畳表示された腫瘍位置PTが示されている。
図3及び
図8に示すように、ステップS14において、複数の血管位置PB1,PB2が特定された後、ステップS16において、複数の血管位置PB1,PB2に関する複数の位置関係RBT1,RBT2がそれぞれ特定される。
図8に示す例では、位置関係RBT1,RBT2の各々は、血管位置PB1,PB2の各々と、腫瘍位置PTとの間の位置関係である。
【0086】
なお、腫瘍を含む領域に関する1つの超音波画像内で検出される複数の血管の各々に関して、腫瘍に対する位置関係が特定される場合を例として説明したが、これに限らない。腫瘍を含む領域に関する複数の超音波画像で検出される複数の血管に関して、腫瘍に対する位置関係が特定されてもよい。
【0087】
これらの構成によれば、上述の実施形態で得られる効果に加えて、腫瘍位置の特定精度を向上させることができるという効果がある。
【0088】
<リスク臓器及び血管の間の位置関係がさらに特定される場合>
なお、
図3を参照して上述した腫瘍及び血管の間の位置関係を特定する流れにおいて、リスク臓器及び血管の間の位置関係がさらに特定されてもよい。
図9は、リスク臓器及び血管の間の位置関係がさらに特定される場合について説明するための図である。
図9には、血流情報画像I82(超音波画像I80)から特定された血管位置PBと、Bモード画像I81(超音波画像I80)上に重畳表示された腫瘍位置PT及びリスク臓器位置PRが示されている。
図3及び
図9に示すように、ステップS13において、治療計画装置4から計画時に治療計画用CT画像から特定されたリスク臓器位置PRがさらに取得された後、腫瘍位置PTに関する位置関係RBTの特定と同様にして、血管位置PB及びリスク臓器位置PRの間の位置関係RBRがさらに特定される。その後、血管位置PB及びリスク臓器位置PRの間の位置関係RBRを用いて、腫瘍と同様にして、現在のリスク臓器位置PRの推定やリスク臓器位置PRのズレ量の算出、ズレ量に応じた患者位置補正、ズレ量に応じた照射のゲート制御等が実施される。
【0089】
なお、腫瘍位置PTに関する位置関係RBTと、リスク臓器位置PRに関する位置関係RBRとは、同一の血管(血管位置)に対する位置関係であってもよいし、互いに異なる血管(血管位置)に対する位置関係であってもよい。
【0090】
なお、腫瘍位置PTに関する位置関係RBTに加えて、リスク臓器位置PRに関する位置関係RBRがさらに特定される場合を例として説明したが、これに限らない。位置関係の特定は、腫瘍位置PTに関する位置関係RBTと、リスク臓器位置PRに関する位置関係RBRとのうちのいずれか一方に関して行われてもよい。つまり、腫瘍位置PTに関する位置関係RBTに代えて、リスク臓器位置PRに関する位置関係RBRが特定されてもよい。
【0091】
これらの構成によれば、上述の実施形態で得られる効果に加えて、リスク臓器への放射線の照射を低減できるという効果がある。
【0092】
上記の実施形態において処理対象の超音波画像は1フレームであることを前提とした。しかしながら、計画段階及び治療段階において超音波診断装置3は、時系列の複数フレームに関する超音波画像を収集、すなわち、動画撮影してもよい。この場合、
図3及び
図5に示す処理は、複数フレーム各々について実行されてもよいし、複数フレームのうちの任意の1フレームについて実行されてもよい。この任意の1フレームは、経時的な形態変化が比較的小さい呼吸時相、例えば、深吸期のフレームが選択されるとよい。このようなフレームは、ユーザにより入力インタフェース65を介して選択されてもよいし、呼吸計測器により収集された呼吸波形に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0093】
なお、上述の実施形態では、位置関係の特定、腫瘍位置の推定、ズレ量の算出、患者位置補正及び照射のゲート制御が治療支援装置6により実行される場合を例として説明したが、これに限らない。これらの処理は、治療計画用CT装置2、超音波診断装置3、治療計画装置4、放射線治療装置5及び治療支援装置6の有する処理回路により分散処理されてもよいし、治療計画用CT装置2、超音波診断装置3、治療計画装置4、放射線治療装置5及び治療支援装置6のうちいずれか1つが有する処理回路により実行されてもよい。換言すれば、治療計画装置4又は放射線治療装置5は、上述の実施形態に係る治療支援装置6の一部又は一部と同等の要素を有していてもよい。例えば、放射線治療装置5は、上述の実施形態に係る治療支援装置6の処理回路61、画像処理回路62及び記憶回路66を有していてもよい。ここで、放射線治療装置5は、医用処理装置の一例であり、放射線治療装置5に設けられた取得機能611及び位置推定機能612を実現する処理回路61は、それぞれ、取得部及び推定部の一例であり、放射線治療装置5の照射ヘッドは、照射部の一例であると表現できる。また、例えば、血管と腫瘍との間の位置関係の特定が治療計画装置4により実行され、治療計画装置4から取得された位置関係を用いた現在の腫瘍位置の特定が治療支援装置6により実行されてもよい。
【0094】
なお、上述の実施形態では、計画段階で位置関係の特定が実施される場合を例として説明したが、これに限らない。位置関係の特定は、治療段階で実施されてもよい。例えば、治療段階において治療計画用CT画像が収集されたとき、位置関係の特定が実施されればよい。
【0095】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、超音波画像を用いて腫瘍位置を推定することができる。
【0096】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1…放射線治療システム、
2…治療計画用CT装置、
3…超音波診断装置、
4…治療計画装置、
5…放射線治療装置(照射部)、
6…治療支援装置、
61…処理回路、
62…画像処理回路(生成部)、
63…通信インタフェース、
64…表示機器、
65…入力インタフェース、
66…記憶回路、
611…取得機能(取得部)、
612…位置推定機能(推定部)、
613…ズレ量算出機能(算出部)、
614…患者位置補正機能(補正部)、
615…ゲート制御機能(制御部)、
616…表示制御機能(生成部)、
I10,I20,I40,I70,I80…超音波画像、
I11,I21,I41,I71,I81…Bモード画像(超音波画像)、
I12,I22,I42,I72,I82…血流情報画像(超音波画像)、
I30…表示画像、
I50…パラメータ表示画像、
I60…グラフ表示画像、
PB1…血管位置、
RBT1…位置関係。