(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】燃料噴射弁及び燃料噴射弁を備える内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 61/16 20060101AFI20230919BHJP
F02M 61/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
F02M61/16 V
F02M61/14 320A
F02M61/14 320P
F02M61/16 F
F02M61/16 K
(21)【出願番号】P 2019120985
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】前田 薫
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146668(JP,A)
【文献】特開2005-330915(JP,A)
【文献】特開平7-63076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0328326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
F02D 13/00-29/06
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)のシリンダヘッド(22)に形成された取付け穴(26)に挿入され、該内燃機関(10)の燃焼室(21)に燃料を直接噴射するノズル部(36)を備える燃料噴射弁(30)において、
前記ノズル部(36)は、
前記燃焼室(21)に燃料を噴射する噴射孔(31)が設けられる噴射部(32)と、 前記取付け穴(26)の内周と前記燃料噴射弁(30)の外周の間にて燃焼ガスをシールするシール部(35)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に形成された厚肉部(34)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に前記厚肉部(34)よりも肉厚が薄く形成された薄肉部(33)と、
を備え
、
前記燃料噴射弁(30)が前記取付け穴(26)に挿入された状態において、前記噴射部(32)が前記取付け穴(26)内に位置する
燃料噴射弁。
【請求項2】
前記噴射部(32)は、前記薄肉部(33)よりも肉厚が厚く形成されている
請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記噴射部(32)の外径(r1)は、前記シール部(35)の外径(r4)よりも小さく形成されている
請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記薄肉部(33)は、前記噴射部(32)に連続して形成されるとともに、該薄肉部(33)の外径(r2)は、前記噴射部(32)の外径(r1)よりも小さく形成されている
請求項3に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記厚肉部(34)は、前記薄肉部(33)に連続して形成されるとともに、該厚肉部(34)の外径(r3)は、前記薄肉部(33)の外径(r2)よりも大きく形成されている
請求項4に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁(30)を備える内燃機関。
【請求項7】
前記内燃機関(10)は、
前記燃焼室(21)に火花放電する点火プラグ(40)と、
前記燃焼室(21)を吸気通路(24)に対して開閉する吸気弁(50)と、
前記燃焼室(21)を排気通路(25)に対して開閉する排気弁(60)と、
を備え、
前記燃料噴射弁(30)及び前記点火プラグ(40)は、前記吸気弁(50)と前記排気弁(60)との間のシリンダヘッド(22)に設けられている
請求項6に記載の燃料噴射弁(30)を備える内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁を備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料噴射弁として、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)のシリンダヘッドに形成されて燃焼室に連通する取り付け孔に挿入されることにより該シリンダヘッドに取り付けられ、燃焼室内に燃料を直接噴射するものがある。このような燃料噴射弁では、その先端部分の外周にフッ素樹脂製等のシールリングが設けられており、該先端部分が取り付け孔に圧入されることにより、シリンダの燃焼室からの燃焼ガスがシールリングによりシールされるように構成されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の燃料噴射弁は、その先端部分が燃焼室に臨むようにシリンダヘッドに取り付けられるので、該先端部分が燃焼室内の燃焼ガスに晒されて高温となる。そのため、燃料噴射弁の先端部分の外周に設けられたシールリングが過剰に加熱されて温度が上昇することにより融解したり、劣化が早まったりする虞がある。一方、該シールリングが過剰に加熱されないように燃料噴射弁の先端部分が燃焼室外の取り付け孔内に配置されると、燃料噴射弁の先端部分が加熱されにくくなり、シールリングの温度上昇を低減することができるが、該先端部分に燃料が付着した場合にその燃料を蒸発させにくくなり、内燃機関でのPN(Particulate Number:PM(Particulate Matter:粒子状物質)の粒子数)が増加する虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、内燃機関の燃料室に燃料を噴射する噴射部の温度低下を低減しつつ、燃料噴射弁と該燃料噴射弁が取り付けられる内燃機関のシリンダヘッドとの間をシールするシール部の温度上昇を低減することができる燃料噴射弁を提供することを目的とする。また、そのような燃料噴射弁を備える内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料噴射弁は、
内燃機関(10)のシリンダヘッド(22)に形成された取付け穴(26)に挿入され、該内燃機関(10)の燃焼室(21)に燃料を直接噴射するノズル部(36)を備える燃料噴射弁(30)において、
前記ノズル部(36)は、
前記内燃機関(10)の燃焼室(21)に燃料を噴射する噴射孔(31)が設けられる噴射部(32)と、
前記取付け穴(26)の内周と前記燃料噴射弁(30)の外周の間にて燃焼ガスをシールするシール部(35)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に形成された厚肉部(34)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に前記厚肉部(34)よりも肉厚が薄く形成された薄肉部(33)と、
を備える。
【0007】
本発明に係る燃料噴射弁によれば、燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁において、噴射部とシール部との間に薄肉部と厚肉部とが設けられており、薄肉部は、厚肉部に比較して熱抵抗が大きく、噴射部側からシール部側への熱の移動の障壁となるので、噴射部の温度が上昇する場合でも、噴射部からシール部への熱の移動を低減し、シール部の温度上昇を低減することができる。また、薄肉部は、厚肉部に比較して熱抵抗が大きく、噴射部側からシール部側への熱の移動の障壁となるので、噴射部が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部に熱が留まり易くすることができ、噴射部の温度低下を低減することができる。
【0008】
本発明に係る内燃機関は、
内燃機関(10)のシリンダヘッド(22)に形成された取付け穴(26)に挿入され、該内燃機関(10)の燃焼室(21)に燃料を直接噴射するノズル部(36)を備える燃料噴射弁(30)において、
前記ノズル部(36)は、
前記内燃機関(10)の燃焼室(21)に燃料を噴射する噴射孔(31)が設けられる噴射部(32)と、
前記取付け穴(26)の内周と前記燃料噴射弁(30)の外周の間にて燃焼ガスをシールするシール部(35)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に形成された厚肉部(34)と、
前記噴射部(32)と前記シール部(35)との間に前記厚肉部(34)よりも肉厚が薄く形成された薄肉部(33)と、
を備える燃料噴射弁(30)を備える。
【0009】
本発明に係る内燃機関によれば、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁において、噴射部とシール部との間に薄肉部と厚肉部とが設けられており、薄肉部は、厚肉部に比較して熱抵抗が大きく、噴射部側からシール部側への熱の移動の障壁となるので、噴射部の温度が上昇する場合でも、噴射部からシール部への熱の移動を低減し、シール部の温度上昇を低減することができる。また、薄肉部は、厚肉部に比較して熱抵抗が大きく、噴射部側からシール部側への熱の移動の障壁となるので、噴射部が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部に熱が留まり易くすることができ、噴射部の温度低下を低減することができる。
【0010】
尚、本発明は、本発明の請求項に記載された発明特定事項のみを有するものであって良いし、本発明の請求項に記載された発明特定事項とともに該発明特定事項以外の構成を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る燃料噴射弁を備える内燃機関について説明するための図である。
【
図3】実施形態に係る燃料噴射弁の先端部分の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る燃料噴射弁及び該燃料噴射弁を備える内燃機関の実施形態の例について図面を用いて説明する。尚、以下で説明する実施形態の構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、以下では、同一の又は類似する説明を、適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付することを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、図示を適宜簡略化又は省略している。
【0013】
本実施例に係る燃料噴射弁は、内燃機関(例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)において燃料を噴射する燃料噴射弁として適用することができる。また、本発明に係る燃料噴射弁を備える内燃機関は、ガソリンを燃料とする内燃機関であって、例えば、車両用や発電装置用等の内燃機関として適用することができる。本実施形態では、内燃機関として車両用のガソリン内燃機関を例に説明するが、本発明が特にこれに限定されるものではない。
【0014】
<実施形態>
[内燃機関について]
本実施形態に係る内燃機関10の構成について、
図1に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、内燃機関10は、燃焼室21を形成する機関本体20、燃焼室21の内部に燃料を噴射する燃料噴射弁30、燃焼室21に火花放電する点火プラグ40、燃焼室21を吸気通路24に対して開閉する吸気弁50、燃焼室21を排気通路25に対して開閉する排気弁60、燃焼室21での燃料及び空気の混合気の燃焼に伴って直線運転するピストン70、及び該ピストン70の直線運転を回転運動に変換するコネクティングロッド80及びクランクシャフト(図示略)、燃料が貯留される燃料タンク(図示略)から燃料噴射弁30へ燃料を供給する燃料供給装置(図示略)等を有する。
【0016】
機関本体20は、シリンダヘッド22、シリンダブロック23を備え、当該シリンダヘッド22、シリンダブロック23により燃焼室21が形成される。シリンダヘッド22には、該シリンダヘッド22の外側から燃焼室21に連通する第1の取付け穴26及び第2の取付け穴27が形成されている。また、第1の取付け穴26には、シリンダヘッド22の外面側に大径部26aが形成され、燃焼室側に該大径部26aに連続して形成されて該大径部26aよりも小径の小径部26bが形成されている(
図2参照)。第1の取付け穴26に燃料噴射弁30が挿入され、第2の取付け穴27に点火プラグ40が挿入される。
【0017】
燃料噴射弁30は、燃料を噴射する噴射孔31が設けられる噴射部32が燃焼室21に臨むように第1の取付け穴26に挿入され、燃焼室21に燃料を直接噴射する。また、後述するように、燃料噴射弁30の先端部分の外周部には、シール部35が設けられており、燃料噴射弁30と第1の取付け穴26との間隙を塞いで、燃焼室21からの燃焼ガスをシールするように構成されている。
【0018】
第1の取付け穴26及び第2の取付け穴27は、シリンダヘッド22において、吸気弁50の取付け位置と排気弁60の取付け位置との間に設けられており、燃料噴射弁30及び点火プラグ40は、吸気弁50と排気弁60との間のシリンダヘッド22に設けられるようになっている。
【0019】
[燃料噴射弁について]
本実施形態に係る燃料噴射弁30の構成について、
図1~
図3に基づいて説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、燃料噴射弁30は、燃料供給装置から燃料が供給されるデリバリーパイプ(図示略)と接続される基端部38と、燃焼室21に燃料を噴射する噴射孔31が形成された噴射部32を先端に有するノズル部36と、を備える。燃料噴射弁30は、第1の取付け穴26の大径部26aに基端部38側が配置され、小径部26bにノズル部36側が配置されるように該第1の取付け穴26に挿入される。
【0021】
図2に示すように、基端部38の燃焼室21側の端部には、燃料噴射弁30の中心軸CFから外周面に向けて突出する突出部37が設けられている。突出部37は、燃料噴射弁30がシリンダヘッド22に取り付けられたとき該シリンダヘッド22に接触する接触面37aを有する。燃料噴射弁30は、接触面37aにより接触するシリンダヘッド22とデリバリーパイプにより挟持されることにより、シリンダヘッド22及びデリバリーパイプに固定されるようになっている。
【0022】
燃料噴射弁30が第1の取付け穴26に挿入されてシリンダヘッド22に固定された状態において、ノズル部36の先端の噴射部32は、第1の取付け穴26の燃焼室21側の開口から燃焼室21内に突出されずに燃焼室21内に位置し、第1の取付け穴26の開口A部周辺の燃焼室21の壁面と噴射部32の先端が一致するように、燃料噴射弁30がシリンダヘッド22に固定される。
【0023】
ノズル部36において、噴射孔31が形成された噴射部32と、基端部38側の端部との間には、燃焼室21からの燃焼ガスをシールするシール部35が設けられている。シール部35では、ノズル部36の外周面に周方向に溝35aが形成さており(
図3参照)、当該溝35aの内周面に、弾性を有する樹脂材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、いわゆるテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂により形成されるにシール部材35bが環状に配置される。燃料噴射弁30が第1の取付け穴26に挿入され、ノズル部36が該第1の取付け穴26の小径部26bに圧入されることにより、シール部材35bは、径方向に圧縮されて、ノズル部36の溝35aの内周面及び第1の取付け穴26の内周面に密着し、燃焼室21からシリンダヘッド22の外部側へ燃焼ガスが流出しないようにシールするようになっている。
【0024】
尚、本実施形態では、ノズル部36の先端の噴射部32が、第1の取付け穴26の燃焼室21側の開口部から該燃焼室21内に突出されずに第1の取付け穴26内に位置するように、燃料噴射弁30がシリンダヘッド22に固定される構成であるが、噴射部32が、第1の取付け穴26の燃焼室21側の開口部から該燃焼室21内に突出されて燃焼室21内に位置するように、燃料噴射弁30がシリンダヘッド22に固定される構成でも良い。噴射部32が第1の取付け穴26内に位置するように燃料噴射弁30が固定される構成では、ノズル部36の先端が燃焼室21内に位置する構成に比較して、噴射部32が高温の燃焼ガスに晒されにくくすることができ、シール部35が加熱されにくくすることができる。一方、ノズル部36の先端の噴射部32が燃焼室21内に位置するように燃料噴射弁30が固定される構成では、噴射部32が第1の取付け穴26内に位置する構成に比較して、噴射部32がより高温の燃焼ガスに晒され易くすることができる。そして、燃焼ガスにより噴射部32の温度を上昇させることにより、該噴射部32に燃料が付着した場合に、付着した燃料を気化させて、内燃機関でのPN(Particulate Number:PM(Particulate Matter:粒子状物質)の粒子数)を低減することができる。
【0025】
次いで、本実施形態に係る燃料噴射弁30の熱障壁部について説明する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、燃料噴射弁30では、ノズル部36における噴射部32とシール部35との間に、該噴射部32から該シール部35への熱の移動の障壁となる熱障壁部として薄肉部33と厚肉部34とが設けられている。
【0027】
図3に示すように、薄肉部33は、ノズル部36において噴射部32とシール部35との間に、噴射部32から連続して形成されている。該薄肉部33の肉厚L2は、噴射部32の側部の肉厚L1や厚肉部34の肉厚L3よりも薄く形成されている。
【0028】
厚肉部34は、ノズル部36において噴射部32とシール部35との間に、薄肉部33から連続して形成されている。該厚肉部34の肉厚L3は、薄肉部33の肉厚L2よりも厚く形成されている。また、厚肉部34の薄肉部33と反対側には、該厚肉部34に連続してシール部35が形成されている。尚、厚肉部34は、薄肉部33よりも肉厚が厚く形成されるとともに、噴射部32の側部よりも肉厚が薄く形成される構成でも良いし、薄肉部33よりも肉厚が厚く形成されるとともに、噴射部32の側部よりも肉厚が厚く形成される構成でも良い。
【0029】
ノズル部36において噴射部32とシール部35との間に、薄肉部33及び厚肉部34を設ける構成では、薄肉部33の軸CF方向の断面積が厚肉部34の軸CF方向の断面積に比較して小さいことにより、薄肉部33の熱抵抗が厚肉部34の熱抵抗に比較して大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32の温度が上昇する場合に、噴射部32からシール部35への熱の移動を低減し、シール部35の温度上昇を低減することができる。また、薄肉部33は、厚肉部34に比較して熱抵抗が大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度低下を低減することができる。これにより、噴射部32の温度が上昇し易くなるので、該噴射部32に燃料が付着した場合に、付着した燃料を気化させ易くすることができる。
【0030】
また、噴射部32は、薄肉部33よりも肉厚が厚く形成されている。これにより、噴射部32は、熱容量が大きくなるので、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度低下を低減することができる。
【0031】
ノズル部36において噴射部32の外径r1は、シール部35の外径r4よりも小さく形成されており、噴射部32の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に所定間隔の間隙が生じるようになっている。噴射部32の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に間隙が生じる構成とすることで、当該間隙の空間s1に燃焼室21から燃焼ガスを流入させて、噴射部32を外周側から燃焼ガスにより加熱することができ、燃焼ガスにより噴射部32の温度を上昇させることにより、該噴射部32に燃料が付着した場合に、付着した燃料を気化させることができる。
【0032】
薄肉部33の外径r2は、噴射部32の外径r1及び厚肉部34の外径r3よりも小さく形成されており、薄肉部33の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に所定間隔の間隙が生じるようになっている。薄肉部33の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に間隙を生じさせる構成とすることで、当該間隙の空間s2に燃焼室21から燃焼ガスを流入させて、噴射部32を薄肉部33側から燃焼ガスにより加熱することができ、燃焼ガスにより噴射部32の温度を上昇させることにより、該噴射部32に燃料が付着した場合に、付着した燃料を気化させることができる。
【0033】
厚肉部34の外径r3は、シール部35の外径r4よりも小さく形成されており、厚肉部34の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に所定間隔の間隙が生じるようになっている。また、該厚肉部34の外径r3は、薄肉部33の外径r2よりも大きく形成されており、厚肉部34の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に生じる間隙の空間s3が、薄肉部33と第1の取付け穴26との間に生じる空間s2よりも小さくなるようになっている。厚肉部34の外周面と第1の取付け穴26の内周面との間に生じる間隙の空間s3が、薄肉部33と第1の取付け穴26との間に生じる空間s2よりも小さくなる構成とすることで、当該間隙の空間s3に燃焼室21から流入する燃焼ガス量を空間s3に流入する燃焼ガス量より低減するとともに、厚肉部34に連続して形成されているシール部35のシール部材35bと燃焼ガスが接触する面積を低減することができ、シール部35の温度上昇を低減することができる。
【0034】
[作用効果について]
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、内燃機関10のシリンダヘッド22に形成された取付け穴26に挿入され、該内燃機関10の燃焼室21に燃料を直接噴射するノズル部36を備える燃料噴射弁30において、ノズル部36は、内燃機関10の燃焼室21に燃料を噴射する噴射孔31が設けられる噴射部32と、取付け穴26の内周と燃料噴射弁30の外周の間にて燃焼ガスをシールするシール部35と、噴射部32とシール部35との間に形成された厚肉部34と、噴射部32とシール部35との間に厚肉部34よりも肉厚が薄く形成された薄肉部33と、を備える構成である。このような構成によれば、燃焼室21に燃料を直接噴射する燃料噴射弁30において、噴射部32とシール部35との間に薄肉部33と厚肉部34とが設けられており、薄肉部33は、厚肉部34に比較して熱抵抗が大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32の温度が上昇する場合に、噴射部32からシール部35への熱の移動を低減し、シール部35の温度上昇を低減することができる。また、薄肉部33は、厚肉部34に比較して熱抵抗が大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度低下を低減することができる。
【0035】
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、噴射部32と、シール部35と、噴射部32とシール部35との間に形成された厚肉部34と、噴射部32とシール部35との間に厚肉部34よりも肉厚が薄く形成された薄肉部33と、を備える構成であり、噴射部32は、薄肉部33よりも肉厚が厚く形成されている構成である。このような構成によれば、噴射部32は、薄肉部33よりも肉厚が厚いことにより熱容量が大きくなるので、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度低下を低減することができる。
【0036】
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、噴射部32とシール部35とを備え、噴射部32の外径r1は、シール部35の外径r4よりも小さく形成されている構成である。このような構成によれば、噴射部32の外径r1は、シール部35の外径r4よりも小さく形成されているので、ノズル部36がシリンダヘッド22の取付け穴26に挿入される場合に噴射部32の外周と取付け穴26の内周との間に空間s1を形成させることができ、該空間s1に燃焼ガスを流入させて、外周側から噴射部32を燃焼ガスにより加熱することができる。
【0037】
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、噴射部32とシール部35とを備え、薄肉部33は、噴射部32に連続して形成されるとともに、該薄肉部33の外径r2は、噴射部32の外径r1よりも小さく形成されている構成である。このような構成によれば、薄肉部33は、噴射部32に連続して形成されるとともに、該薄肉部33の外径r2は、噴射部32の外径r1よりも小さく形成されているので、ノズル部36がシリンダヘッド22の取付け穴26に挿入される場合に、噴射部32、薄肉部33の各外周と取付け穴26の内周との間に空間s2を形成させることができ、該空間s2に燃焼ガスを流入させて、薄肉部33側から噴射部32を燃焼ガスにより加熱することができる。
【0038】
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、噴射部32とシール部35とを備え、厚肉部34は、薄肉部33に連続して形成されるとともに、該厚肉部34の外径r3は、薄肉部33の外径r2よりも大きく形成されている構成である。このような構成によれば、厚肉部34は、薄肉部33に連続して形成されるとともに、該厚肉部34の外径r3は、薄肉部33の外径r2よりも大きく形成されているので、ノズル部36がシリンダヘッド22の取付け穴26に挿入される場合に、厚肉部34の外周と取付け穴26の内周との間に生じる空間s3を、薄肉部33の外周と取付け穴26の内周との間に生じる空間s2に比較して小さくして、薄肉部33の外周の空間s3に流入した燃焼ガスとシール部35が接触する面積を低減することができ、シール部35の温度上昇を低減することができる。
【0039】
本実施形態に係る内燃機関10は、内燃機関10のシリンダヘッド22に形成された取付け穴26に挿入され、該内燃機関10の燃焼室21に燃料を直接噴射するノズル部36を備える燃料噴射弁30において、ノズル部36は、内燃機関10の燃焼室21に燃料を噴射する噴射孔31が設けられる噴射部32と、取付け穴26の内周と燃料噴射弁30の外周の間にて燃焼ガスをシールするシール部35と、噴射部32とシール部35との間に形成された厚肉部34と、噴射部32とシール部35との間に厚肉部34よりも肉厚が薄く形成された薄肉部33と、を備える燃料噴射弁30を備える構成である。このような構成によれば、内燃機関10の燃焼室21に燃料を直接噴射する燃料噴射弁30において、噴射部32とシール部35との間に薄肉部33と厚肉部34とが設けられており、薄肉部33は、厚肉部34に比較して熱抵抗が大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32の温度が上昇する場合に、噴射部32からシール部35への熱の移動を低減し、シール部35の温度上昇を低減することができる。また、薄肉部33は、厚肉部34に比較して熱抵抗が大きく、噴射部32側からシール部35側への熱の移動の障壁となるので、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度低下を低減することができる。
【0040】
本実施形態に係る内燃機関10は、該内燃機関10の燃焼室21に燃料を直接噴射する燃料噴射弁30と、燃焼室21に火花放電する点火プラグ40と、該燃焼室21を吸気通路24に対して開閉する吸気弁50と、燃焼室21を排気通路25に対して開閉する排気弁60と、を備え、燃料噴射弁30及び点火プラグ40は、吸気弁50と排気弁60との間のシリンダヘッド22に設けられている構成である。
【0041】
例えば、燃焼ガスにより燃料噴射弁30の噴射部32の温度を上昇させ易くするために該噴射部32を燃焼室21内に配置する場合には、該噴射部32を取付け穴26の小径部26b内に配置する場合に比較して深い大径部26aを設ける必要がある。しかし、内燃機関10において、燃料噴射弁30及び点火プラグ40が吸気弁50と排気弁60との間のシリンダヘッド22に配置される構成においては、取付け穴26の大径部26aを深くすると、シリンダヘッド22において、燃料噴射弁30の取付け穴26と点火プラグ40の取付け穴27との間隔が狭くなることにより肉厚が薄くなる部分が生じて、シリンダヘッド22の機械的強度が低下する虞がある。
【0042】
これに対して、本実施形態の燃料噴射弁30では、噴射部32とシール部35との間に厚肉部34よりも肉厚が薄く形成された薄肉部33と、を備えており、噴射部32が燃焼ガスにより加熱される場合に該噴射部32に熱が留まり易くすることができ、噴射部32の温度を上昇させ易くすることができるので、取付け穴26の大径部26aを浅くして、シリンダヘッド22おける取付け穴26と取付け穴27との間隔を比較的厚くすることができる。
【0043】
尚、本実施形態では、噴射部32とシール部35との間に薄肉部33及び厚肉部34が設けられる構成であって、噴射部32から連続して薄肉部33が形成されるとともに、該薄肉部33から連続して厚肉部34が形成される構成であるが、噴射部から連続して厚肉が形成されるとともに、該厚肉部から連続して薄肉部が形成される構成でも良い。このような構成でも、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態では、噴射部32とシール部35との間に薄肉部33及び厚肉部34が設けられる構成であるが、噴射部とシール部との間に、噴射部よりも薄い肉厚を有する薄肉部のみが設けられる構成でも良い。このような構成でも、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
また、本実施形態では、薄肉部33の肉厚L2は、噴射部32の側部の肉厚L1や厚肉部34の肉厚L3よりも薄く形成される構成であるが、薄肉部は、厚肉部よりも肉厚が薄く形成されるとともに噴射部の側部よりも肉厚が厚く形成される構成でも良い。このような構成でも、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
また、本実施形態では、燃料噴射弁30のノズル部36において、薄肉部33の外径r2は、噴射部32の外径r1及び厚肉部34の外径r3よりも小さく形成され、厚肉部34の外径r3は、シール部35の外径r4よりも小さく形成される構成であるが、噴射部、薄肉部、厚肉部がそれぞれ同じ外径となるように形成される構成でも良い。このような構成でも、噴射部とシール部との間に厚肉部と該厚肉部よりも肉厚が薄い薄肉部が形成される構成とすることで、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
以上、本発明の実施形態の例を説明してきたが、本発明はこの実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 内燃機関
21 燃焼室
22 シリンダヘッド
26 第1の取付け穴
27 第2の取付け穴
30 燃料噴射弁
31 噴射孔
32 噴射部
33 薄肉部
34 厚肉部
35 シール部
36 ノズル部