(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】橋梁点検用足場
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230919BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20230919BHJP
E04G 3/28 20060101ALI20230919BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20230919BHJP
E04G 5/10 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/10
E04G3/28 301L
E04G5/08 T
E04G5/10 Z
(21)【出願番号】P 2019122379
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】500538715
【氏名又は名称】日軽エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】永田 考
(72)【発明者】
【氏名】三木 英二
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235816(JP,A)
【文献】特開2003-328671(JP,A)
【文献】特開平04-108905(JP,A)
【文献】特開2000-234310(JP,A)
【文献】実開昭62-126444(JP,U)
【文献】実公平07-030730(JP,Y2)
【文献】実公昭48-015940(JP,Y1)
【文献】特公平05-025986(JP,B2)
【文献】廣川亮吾,アルミ合金を用いた橋梁の維持管理向け製品,株式会社横河ホールディングス決算説明資料,株式会社横川ホールディングス,2017年11月10日,13-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01D 19/10
E04G 3/28
E04G 5/08
E04G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部に設けられる桁材の下端を用いて配置された第1足場パネルと、
前記第1足場パネルに対して前記橋梁の幅方向の外側に起立した状態で配置され、上端が下端よりも前記橋梁の幅方向の外側に配置されるように傾斜可能な側面パネルと、
前記第1足場パネルの上方に配置され、前記側面パネルが傾斜することで前記橋梁の幅方向の外側に形成される開放部分に出没可能に設けられる第2足場パネルと
、
前記第2足場パネルを前記橋梁の幅方向にスライドさせるスライド機構と
を備える橋梁点検用足場。
【請求項2】
前記スライド機構は、前記第2足場パネルを前記橋梁の幅方向に案内するレール部材を有する
請求項
1に記載の橋梁点検用足場。
【請求項3】
前記レール部材は、前記橋梁及び前記桁材を吊り下げる吊材の少なくとも一方に固定される
請求項
2に記載の橋梁点検用足場。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記第2足場パネルと前記レール部材とを係止して前記第2足場パネルの前記橋梁の幅方向への移動を規制する規制部材を有する
請求項
2又は請求項
3に記載の橋梁点検用足場。
【請求項5】
前記第2足場パネルは、傾斜した状態の前記側面パネルの上端よりも上方に配置される
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の橋梁点検用足場。
【請求項6】
前記第2足場パネルは、前記橋梁の架設方向の寸法が前記側面パネルよりも小さい
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の橋梁点検用足場。
【請求項7】
前記側面パネルは、前記橋梁の架設方向に複数並んで配置され、
前記第2足場パネルは、隣り合う前記側面パネルの少なくとも一方に設けられる
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の橋梁点検用足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁点検用足場に関する。
【背景技術】
【0002】
車両及び歩行者が通行する橋梁は、通行部分の下部が排気ガスや海又は川からの水分、塩分等によって腐食環境に晒されているため、これを保護する必要がある。また、このような橋梁では、当該橋梁の安全性を確認するための点検用の足場を確保する必要がある。
【0003】
橋梁の下部を腐食環境から保護することについては、例えば橋梁下部に保護カバー材を設けることで橋梁下部を保護するとともに、保護カバー材自体を点検用通路として用いる技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。一方、橋梁の安全性を確認するための点検は、橋梁の下部だけでなく側部においても行う必要がある。そのため、橋梁の通行部分から側部に梯子等を吊り下げることで足場を確保する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4077358号公報
【文献】特開2014-205961号公報
【文献】特開2003-160913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献3に記載の構成では、橋梁の下部及び側部のうち一方のみを点検することができるが、その両方を点検したり、橋梁の側方から上部を点検したりすることは困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、橋梁の下部を腐食環境から保護し、かつ橋梁の下部、側部及び上部の点検を効率よく行うことが可能な橋梁用点検足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る橋梁点検用足場は、橋梁の下部に設けられる桁材の下端を用いて配置された第1足場パネルと、前記第1足場パネルに対して前記橋梁の幅方向の外側に起立した状態で配置され、上端が下端よりも前記橋梁の幅方向の外側に配置されるように傾斜可能な側面パネルと、前記第1足場パネルの上方に配置され、前記側面パネルが傾斜することで前記橋梁の幅方向の外側に形成される開放部分に出没可能に設けられる第2足場パネルとを備える。
【0008】
この構成によれば、第1足場パネル及び側面パネルにより、橋梁の下部を腐食環境から保護することができる。また、第1足場パネルを足場とすることで、橋梁の下部の点検を行うことができる。更に、側面パネルの上端が下端よりも橋梁の幅方向の外側に配置されるように当該側面パネルを傾斜させることにより、傾斜した側面パネルの上部から橋梁の側部にアクセスすることが可能となるため、橋梁の側部の点検を行うことができる。そして、側面パネルが傾斜した状態で橋梁の幅方向の外側に形成される開放部分に第2足場パネルを配置することにより、第2足場パネルから橋梁の上部にアクセスすることが可能となる。これにより、橋梁の下部を腐食環境から保護し、かつ橋梁の下部、側部及び上部の点検を効率よく行うことができる。
【0009】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記第2足場パネルを前記橋梁の幅方向にスライドさせるスライド機構を更に備える。
【0010】
この構成によれば、第2足場パネルを橋梁の幅方向の外側の開放部分に容易に出没させることができる。
【0011】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記スライド機構は、前記第2足場パネルを前記橋梁の幅方向に案内するレール部材を有する。
【0012】
この構成によれば、第2足場パネルを容易に幅方向にスライドさせることができる。
【0013】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記レール部材は、前記橋梁及び前記桁材を吊り下げる吊材の少なくとも一方に固定される。
【0014】
この構成によれば、橋梁及び吊材の少なくとも一方に固定されたレール部材に足場部材が案内されるため、第2足場パネルを安定してスライドさせることができる。
【0015】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記スライド機構は、前記第2足場パネルと前記レール部材とを係止して前記第2足場パネルの前記橋梁の幅方向への移動を規制する規制部材を有する。
【0016】
この構成によれば、橋梁の幅方向への第2足場パネルの移動を容易かつ効率的に規制することができる。
【0017】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記第2足場パネルは、傾斜した状態の前記側面パネルの上端よりも上方に配置される。
【0018】
この構成によれば、第2足場パネルを側面パネルよりも上方の位置に配置させることで、橋梁の上部に容易にアクセスすることが可能となる。
【0019】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記第2足場パネルは、前記橋梁の架設方向の寸法が前記側面パネルよりも小さい。
【0020】
この構成によれば、側面パネルのうち橋梁の架設方向の端部側から容易に第2足場パネルにアクセスすることが可能となる。
【0021】
上記橋梁点検用足場の望ましい態様として、前記側面パネルは、前記橋梁の架設方向に複数並んで配置され、前記第2足場パネルは、隣り合う前記側面パネルの少なくとも一方に設けられる。
【0022】
この構成によれば、隣り合う側面パネルの両方を傾斜させた状態とし、一方の側面パネルの第2足場パネルを橋梁の外側の開放部分に配置させることで、他方の側面パネルを伝って容易に第2足場パネルにアクセスすることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、橋梁の下部を腐食環境から保護し、かつ橋梁の下部、側部及び上部の点検を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る橋梁点検用足場の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、橋梁点検用足場の使用態様の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、橋梁点検用足場の使用態様の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、橋梁点検用足場の使用態様の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2足場パネル及びスライド機構の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2足場パネル及びスライド機構の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、橋梁を上下方向の上側から見た状態を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る橋梁点検用足場を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る橋梁点検用足場を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る橋梁点検用足場を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る橋梁点検用足場の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
図1は、本実施形態に係る橋梁点検用足場100の一例を示す斜視図である。
図2から
図4は、橋梁点検用足場100の使用態様の一例を示す図である。
図1から
図4に示すように、橋梁点検用足場100は、橋梁BGにおける床版101の下部を保護する。
【0027】
ここで、橋梁BGについて説明する。橋梁BGは、床版101と、路面102と、桁材103と、壁高欄104とを有する。また、橋梁BGには、水平支持材105と、吊材106とが設けられる。床版101は、例えば一方向に沿って架け渡される。以下、床版101が架け渡される方向を架設方向D1と表記する。路面102は、車両及び歩行者等が通行する部分である。本実施形態において、路面102の下面部分が、床版101の下部(以下、「橋梁下部」と表記する)101aとなる。
【0028】
桁材103は、橋梁下部101aに設けられ、幅方向D2に複数並んだ状態で配置される。なお、幅方向D2は、上記の架設方向D1及び鉛直軸に沿った上下方向D3にそれぞれ直交する方向である。桁材103は、例えば鉄鋼等によって板状に形成され、床版101の架設方向D1に沿って配置される。各桁材103の下端には、幅方向D2の両側に突出した板状の載置部103aが設けられる。壁高欄104は、路面102に対して幅方向D2の両端に配置される。本実施形態において、壁高欄104のうち幅方向D2の外面部分が、床版101の側部(以下、「橋梁側部」と表記する)101bとなる。また、壁高欄104のうち上下方向D3の上面部分が、床版101の上部101cとなる。
【0029】
水平支持材105は、幅方向D2の最も外側に配置される桁材103に連結部材121(121a、121b)を介して連結される。水平支持材105は、当該桁材103から幅方向D2の外側に向けて延び出している。水平支持材105は、上下方向D3に複数本、例えば2本配置されている。
【0030】
水平支持材105は、支持部材122(122a、122b)を介して吊材106を支持する。吊材106は、例えば柱状であり、水平支持材105によって支持された状態で上下方向D3に平行に配置される。吊材106は、幅方向D2の最も外側に配置される桁材103に対して、幅方向D2の外側に所定の間隔を空けて配置される。本実施形態では、1つの吊材106を上下の2つの水平支持材105で支持する構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。吊材106は、架設方向D1に沿って複数配置される。吊材106は、下端部に支持機構107を有する。
【0031】
また、本実施形態では、桁材103の上部に連結される連結部材121aと、吊材106の下部に連結される支持部材122bとの間に、補強部材119が連結される。補強部材119は、幅方向D2及び上下方向D3について、桁材103と吊材106との間の連結構造を補強する。
【0032】
橋梁点検用足場100は、第1足場パネル10と、側面パネル20と、第2足場パネル40とを備える。第1足場パネル10は、橋梁下部101aに対して下方に配置され、当該下部101aを保護する。第1足場パネル10は、例えば平板状であり、下部101aに沿って配置される。第1足場パネル10は、架設方向D1及び幅方向D2にそれぞれ複数配置され、橋梁下部101aを覆った状態となっている。なお、第1足場パネル10は、水平面(架設方向D1及び幅方向D2に平行な平面)に沿って配置されてもよい。
【0033】
第1足場パネル10は、このように橋梁下部101aを覆うことにより、腐食環境から橋梁下部101aを保護する。また、第1足場パネル10は、作業者が橋梁下部101aの点検作業等を行う場合の足場となる。そのため、第1足場パネル10は、橋梁下部101aとの間に、作業者が作業可能な間隔を空けて配置される。
【0034】
複数の第1足場パネル10は、幅方向D2に隣り合う桁材103の載置部103a同士の間に架け渡される。複数の第1足場パネル10のうち、幅方向D2の最も外側に配置される第1足場パネル10は、幅方向D2の内側の端部が桁材103の載置部103aに支持され、幅方向D2の外側の端部が吊材106の下端の支持機構107に支持される。
【0035】
側面パネル20は、第1足場パネル10に対して幅方向D2の外側に配置される。
図1から
図4では、側面パネル20が幅方向D2の一方側に配置された構成を例に挙げて示しているが、当該側面パネル20は、幅方向D2の他方側にも配置されている。側面パネル20は、例えば平板状であり、第1足場パネル10に対して起立した状態で配置される。本実施形態において、側面パネル20は、第1足場パネル10に直交して配置されるが、これに限定されない。
【0036】
側面パネル20は、架設方向D1に複数並んだ状態で配置され、橋梁下部101aを幅方向D2の両側から覆った状態となっている。これにより、側面パネル20は、橋梁側部101bの下方を幅方向D2の両側から保護する。
【0037】
側面パネル20は、下端を軸にして幅方向D2の外側に傾斜可能となっている。側面パネル20は、軸部22を有する。軸部22は、例えば円柱状であり、側面パネル20の下端に配置され、中心軸が架設方向D1に沿って配置される。軸部22は、吊材106の下端に連結されたガゼット部123に固定される。側面パネル20は、軸部22により、当該軸部22の中心軸の周りに回転可能に支持される。本実施形態において、ガゼット部123は、吊材106に対して幅方向D2の外側かつ下側に向けて突出している。軸部22は、このガゼット部123のうち幅方向D2の外側かつ下側に向けて突出した部分に配置される。この構成により、側面パネル20が軸部22の中心軸の周りに回転する場合、側面パネル20のうち軸部22の下方側に配置される部分が吊材106や支持機構107等に接触しないようになっている。
【0038】
側面パネル20は、軸部22の中心軸を中心として回転することにより、橋梁側部101bの下方を閉塞する閉塞位置P1と、橋梁側部101bの下方を開放する開放位置P2との間を移動可能である。なお、
図2は、側面パネル20が閉塞位置P1に配置される場合の一例を示している。また、
図3及び
図4は、側面パネル20が開放位置P2に配置される場合の一例を示している。本実施形態において、閉塞位置P1は、側面パネル20が第1足場パネル10に対して垂直に配置される位置である。また、開放位置P2は、側面パネル20が閉塞位置P1に対して外側に傾いて配置される位置である。開放位置P2における側面パネル20の傾斜角度については、適宜設定することができる。側面パネル20が傾斜して開放位置P2に配置されることで、床版101の幅方向D2の外側に開放部分Kが形成される。
【0039】
側面パネル20は、閉塞位置P1に配置された状態において、幅方向D2の外側の面(以下、外面と表記する)20aが、橋梁側部101bに対して幅方向D2の内側に配置される(
図2等参照)。このため、側部101bを伝わって落下する水等が側面パネル20に対して幅方向D2の内側に到達し難くなっている。
【0040】
側面パネル20が閉塞位置P1から開放位置P2に配置されることで、側面パネル20の上部と橋梁下部101aとの間に開口部分が形成された状態となる。このため、側面パネル20に対して幅方向D2の内側の位置から、当該開口部分を介して橋梁側部101bにアクセス可能となる。
【0041】
側面パネル20は、幅方向D2の内側の面(以下、内面と表記する)20bにリブ部20cを有する。リブ部20cは、上下方向に沿って配置され、側面パネル20を補強している。側面パネル20は、内面20b側にステップ部材21を有する。ステップ部材21は、側面パネル20が開放位置P2に配置される場合に作業者の足場となる板状部材である。ステップ部材21は、側面パネル20が開放位置P2に配置された状態において水平面に平行となるように配置される。つまり、側面パネル20が閉塞位置P1に配置された状態において、ステップ部材21は、水平面に対して傾いて配置される。本実施形態において、ステップ部材21は、側面パネル20に固定される。例えば、ステップ部材21は、リブ部20cに固定することができる。ステップ部材21は、
図2に示すように、閉塞位置P1に配置される側面パネル20の高さ方向に複数設けられる。この構成により、
図3に示すように、側面パネル20が開放位置P2に配置される場合、複数のステップ部材21が階段状に配置される。このため、作業者が高さ方向について容易に複数段の足場を確保することができる。
【0042】
なお、本実施形態において、側面パネル20は、作業者の足場となる構成として、板状のステップ部材21を有する構成を例に挙げているが、これに限定されない。例えば、作業者の足場となりうる構成であれば、他の態様の凹部又は凸部を有する構成であってもよい。また、側面パネル20は、ステップ部材21を有しない構成であってもよい。また、側面パネル20は、ステップ部材21に替えて、例えば作業者の足場となりうる板状部材や脚立等の足場機構を支持する支持部として、凹部又は凸部を内面20bに有する構成であってもよい。
【0043】
側面パネル20は、開放位置P2よりも外側に開くことを防止するストッパ機構23を有する。ストッパ機構23は、側面パネル20と吊材106とに連結される。ストッパ機構23は、パネル側連結部材23aと、吊材側連結部材23bと、連結軸23cとを有する。
【0044】
パネル側連結部材23aは、パネル側連結軸23dを介して側面パネル20のリブ部20cに連結される。パネル側連結部材23aは、パネル側連結軸23dの中心軸を中心として回転可能である。吊材側連結部材23bは、吊材側連結軸23eを介して吊材106に連結される。吊材側連結部材23bは、吊材側連結軸23eの中心軸を中心として回転可能である。また、連結軸23cは、パネル側連結部材23aと吊材側連結部材23bとを連結する。パネル側連結部材23a及び吊材側連結部材23bは、連結軸23cの中心軸を中心として回転可能である。
【0045】
吊材側連結部材23bには、取手部24が設けられる。取手部24は、側面パネル20が閉塞位置P1及び開放位置P2のいずれの位置にある場合でも、作業者が側面パネル20に対して幅方向D2の内側から把持可能な位置に配置される。そのため、本実施形態において、取手部24は、幅方向D2の内側に配置される吊材側連結部材23bに固定される。
【0046】
側面パネル20は、手摺部30を有する。手摺部30は、側面パネル20の上部に配置される。手摺部30は、支持柱31と、手摺部材32と、軸部33とを有する。支持柱31は、手摺部材32を支持する。支持柱31は、架設方向D1に複数、例えば2本配置される(
図1参照)。支持柱31の本数については、これに限定されず、1本又は3本以上であってもよい。手摺部材32は、架設方向D1に沿って配置される。
【0047】
軸部33は、例えば円柱状であり、側面パネル20のリブ部20cの上部に配置され、中心軸が架設方向D1に沿って配置される。支持柱31は、軸部33により、当該軸部33の中心軸の周りに回転可能に支持される。支持柱31が軸部33の中心軸の周りに回転することにより、手摺部30は、側面パネル20に対して回動可能に取り付けられる。また、手摺部30は、側面パネル20に対して回動させることで、側面パネル20の上部に出没可能である。
【0048】
第2足場パネル40は、第1足場パネル10の上方に配置される。第2足場パネル40は、側面パネル20の上記開放部分Kに出没可能に設けられる。第2足場パネル40は、例えばアルミニウム等の軽金属を用いて形成される。このため、第2足場パネル40の重量化が抑制され、幅方向D2に移動しやすい構成となる。
【0049】
第2足場パネル40は、後述するスライド機構41により、幅方向D2にスライド可能に設けられる。第2足場パネル40は、幅方向D2にスライドすることにより、第1足場パネル10の上方の待機位置P3(
図2、
図3参照)と、床版101の幅方向D2の外側に突出する突出位置P4(
図4参照)との間で移動可能である。なお、
図2及び
図3は、第2足場パネル40が待機位置P3に配置される場合の一例を示している。また、
図4は、第2足場パネル40が突出位置P4に配置される場合の一例を示している。
【0050】
図5及び
図6は、第2足場パネル40及びスライド機構41の一例を示す図である。
図5は、幅方向D2の外側から見た図である。
図6は、上下方向D3の上側から見た図である。
図5及び
図6に示すように、第2足場パネル40は、上面40aが床版101の下部101aに対向するように配置される。第2足場パネル40は、架設方向D1の両側面40bに軸部40cが設けられる。軸部40cは、架設方向D1に延びている。軸部40cは、幅方向D2に間隔を空けて複数並んだ状態で配置される。軸部40cには、転動部40dが取り付けられる。転動部40dは、軸部40cに支持された状態で架設方向D1に平行な中心軸を中心として回転可能となっている。
【0051】
スライド機構41は、第2足場パネル40を幅方向D2にスライドさせる。スライド機構41は、レール部材42を有する。レール部材42は、第2足場パネル40の架設方向D1の両側に配置される。各レール部材42は、幅方向D2から見てコ字状となるように繰り抜かれた凹部42aを有する。凹部42aは、平面状の底面42dを有する。底面42dは、幅方向D2に延びており、例えば水平面に平行又は略平行に配置される。各レール部材42は、第2足場パネル40側に開口部42bが位置するように配置される。レール部材42は、固定部材43によって床版101の下部101aに固定される。固定部材43は、レール部材42の上面に接続される。
【0052】
軸部40cは、レール部材42の開口部42bから凹部42aの内部に挿入された状態で配置される。転動部40dは、レール部材42の凹部42aの底面42dに載置され、当該底面42d上を幅方向D2に沿って転動可能である。この構成により、第2足場パネル40は、レール部材42に沿って、待機位置P3と突出位置P4との間を幅方向D2に滑らかに移動可能である。このように、レール部材42は、幅方向D2に沿って第2足場パネル40を案内する構成となっている。
【0053】
また、第2足場パネル40は、突出位置P4において、例えば規制部材44を用いることで幅方向D2の移動を規制することができる。規制部材44は、例えばピン状であり、第2足場パネル40とレール部材42とを貫通する位置に配置することで、当該第2足場パネル40とレール部材42とを係止する。第2足場パネル40には、規制部材44を挿入するための孔部40eが設けられる。レール部材42には、規制部材44を挿入するための孔部42eが設けられる。孔部40e及び孔部42eは、第2足場パネル40が突出位置P4に配置される場合に架設方向D1に並ぶような位置に設けられる。これにより、第2足場パネル40が突出位置P4に配置される場合、孔部40eと孔部42eとに亘って規制部材44を差し込むことが可能となる。孔部40eと孔部42eとに亘って規制部材44が差し込まれることにより、当該規制部材44によって第2足場パネル40とレール部材42とが係止される。このため、幅方向D2への第2足場パネル40の移動が規制される。このように、規制部材44は、第2足場パネル40とレール部材42とを係止し、第2足場パネル40の幅方向D2への移動を規制する。
【0054】
なお、
図4に示すように、第2足場パネル40の高さ位置H1は、傾斜した状態の側面パネル20の上端の高さ位置H2よりも上方に配置される。この構成により、第2足場パネル40が側面パネル20に対して高い位置に配置されるため、床版101の上部101cに容易にアクセスすることが可能となる。
【0055】
図7は、床版101を上下方向D3の上側から見た状態を示す図である。
図7に示すように、側面パネル20は、架設方向D1に隣り合った状態で複数並んで配置される。
図7では、3つの側面パネル20が並んだ状態が示されているが、2つ又は4つ以上並んだ状態であってもよい。
図7に示す3つの側面パネル20は、それぞれ開放位置P2に配置されている。
【0056】
第2足場パネル40は、側面パネル20毎に1つずつ設けられる。第2足場パネル40は、架設方向D1において3つの側面パネル20に対応する位置にそれぞれ配置されている。
図7に示す例では、3つの第2足場パネル40のうち、架設方向D1の中央の第2足場パネル40が突出位置P4に配置されている。また、他の2つの第2足場パネル40は、待機位置P3に配置されている。
【0057】
上記のように構成された橋梁点検用足場100において、作業者は、突出位置P4に配置される第2足場パネル40上に到達しようとする場合、当該第2足場パネル40に対して架設方向D1に隣り合う側面パネル20の経由することで、容易に当該第2足場パネル40上に到達することができる。以下、第2足場パネル40上に到達するための手順の一例を説明する。
【0058】
作業者は、まず、移動対象となる第2足場パネル40に対応する位置の側面パネル20を開放位置P2に配置する。側面パネル20を開放位置P2に配置することで、開放部分Kが形成される。次に、作業者は、形成された開放部分Kに第2足場パネル40をスライドさせる。第2足場パネル40は、転動部40dがレール部材42に沿って転動することで、第2足場パネル40を容易に突出位置P4に移動可能となる。
【0059】
第2足場パネル40が突出位置P4に配置された後、当該第2足場パネル40に対して架設方向D1に隣り合う側面パネル20の一方を開放位置P2に配置する。
図7では、第2足場パネル40に対して架設方向D1の両側の側面パネル20を開放位置P2に配置しているが、いずれか一方を開放位置P2に配置すればよい。開放位置P2に配置された側面パネル20は、複数のステップ部材21が上下方向に階段状に配置される(
図3等参照)。次に、作業者は、この複数のステップ部材21を伝って上方に移動し、ステップ部材21から第2足場パネル40に向けて架設方向D1に移動することで、第2足場パネル40に到達する。第2足場パネル40に到達した作業者は、床版101の上部101cにアクセスすることが可能となる。
【0060】
このように、第2足場パネル40に対して架設方向D1に隣り合う側面パネル20の開放部分Kを経由して第2足場パネル40に移動することで、作業者が移動する際に十分なスペースを確保できる。このため、作業者が容易に第2足場パネル40に到達することができる。本実施形態において、第2足場パネル40は、架設方向D1の寸法L1が側面パネル20の寸法L2よりも小さい。このため、第2足場パネル40に容易にアクセスすることが可能となる。なお、第2足場パネル40に対応する側面パネル20から直接第2足場パネル40に到達可能となるように、例えば第2足場パネル40の架設方向D1の寸法を上記寸法L1に対してさらに小さくしてもよい。なお、
図7に一点鎖線で示すように、第2足場パネル40に作業者が通過可能なマンホール45が設けられてもよい。マンホール45は、例えば開閉可能な蓋部材によって覆われる構成とすることができる。この構成では、蓋部材を開くことでマンホール45が開放され、作業者が通過可能となる。また、蓋部材を閉じることでマンホール45が閉塞され、作業者が当該蓋部材上を移動可能となる。この場合、作業者は、第2足場パネル40に対応する側面パネル20のステップ部材21を介してそのままマンホール45を通過して第2パネル40上に到達することができる。このため、隣り合う側面パネル20を介することなく第2足場パネル40上に到達できる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る橋梁点検用足場100は、橋梁BGの床版101の下部101aに設けられる桁材103の下端を用いて配置された第1足場パネル10と、第1足場パネル10に対して床版101の幅方向D2の外側に起立した状態で配置され、上端が下端よりも床版101の幅方向D2の外側に配置されるように傾斜可能な側面パネル20と、第1足場パネル10の上方に配置され、側面パネル20が傾斜することで床版101の幅方向D2の外側に形成される開放部分Kに出没可能に設けられる第2足場パネル40とを備える。
【0062】
この構成によれば、第1足場パネル10及び側面パネル20により、床版101の下部101aを腐食環境から保護することができる。また、第1足場パネル10を足場とすることで、床版101の下部101aの点検を行うことができる。更に、側面パネル20の上端が下端よりも床版101の幅方向D2の外側に配置されるように当該側面パネル20を傾斜させることにより、傾斜した側面パネル20の上部から床版101の側部101bにアクセスすることが可能となるため、床版101の側部101bの点検を行うことができる。そして、側面パネル20が傾斜した状態で床版101の幅方向D2の外側に形成される開放部分Kに第2足場パネル40を配置することにより、第2足場パネル40から床版101の上部101cにアクセスすることが可能となる。これにより、床版101の下部101aを腐食環境から保護し、かつ床版101の下部101a、側部101b及び上部101cの点検を効率よく行うことができる。
【0063】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、第2足場パネル40は、床版101の幅方向D2にスライド可能に設けられる。この構成によれば、第2足場パネル40を床版101の幅方向D2の外側の開放部分Kに容易に出没させることができる。
【0064】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、床版101及び桁材103を吊り下げる吊材の少なくとも一方に固定され、第2足場パネル40を床版101の幅方向D2に案内するレール部材42を更に備える。この構成によれば、床版101及び吊材106の少なくとも一方に固定されたレール部材42に足場部材が案内されるため、第2足場パネル40を安定してスライドさせることができる。
【0065】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、第2足場パネル40とレール部材42とを係止して第2足場パネル40の床版101の幅方向D2への移動を規制する規制部材44を更に備える。この構成によれば、床版101の幅方向D2への第2足場パネル40の移動を容易かつ効率的に規制することができる。
【0066】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、第2足場パネル40は、傾斜した状態の側面パネル20の上端よりも上方に配置される。この構成によれば、第2足場パネル40を側面パネル20よりも上方の位置に配置させることで、床版101の上部101cに容易にアクセスすることが可能となる。
【0067】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、第2足場パネル40は、床版101の架設方向D1の寸法が側面パネル20よりも小さい。この構成によれば、側面パネル20のうち床版101の架設方向D1の端部側から容易に第2足場パネル40にアクセスすることが可能となる。
【0068】
本実施形態に係る橋梁点検用足場100において、側面パネル20は、床版101の架設方向D1に複数並んで配置され、第2足場パネル40は、隣り合う側面パネル20の少なくとも一方に設けられる。この構成によれば、隣り合う側面パネル20の両方を傾斜させた状態とし、一方の側面パネル20の第2足場パネル40を床版101の外側の開放部分Kに配置させることで、他方の側面パネル20を伝って容易に第2足場パネル40にアクセスすることが可能となる。
【0069】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上記した実施形態では、開放位置P2における側面パネル20が上方に向けて傾斜する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0070】
図8は、変形例に係る橋梁点検用足場100Aを概略的に示す図である。
図8に示す橋梁点検用足場100Aは、側面パネル20が鉛直方向に対して90°傾斜するように開放位置P2Aが設定される。つまり、開放位置P2Aに配置される側面パネル20は、水平面に対して平行又は略平行となる。
【0071】
この構成において、開放位置P2Aに配置される側面パネル20の上方には、開放部分KAが形成される。作業者は、開放部分KAに第2足場パネル40をスライドさせ、側面パネル20上に例えば脚立50等を接地することにより、脚立50を上って第2足場パネル40に到達することができる。
【0072】
また、上記した実施形態では、レール部材42が床版101に固定された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図9は、変形例に係る橋梁点検用足場100Bを概略的に示す図である。
図9に示す橋梁点検用足場100Bは、床版101の壁高欄104が上記実施形態に比べて低くなっている。このため、床版101の上部101cの高さは、上記実施形態の構成に比べて低くなる。したがって、第2足場パネル40の高さを高くしなくても、床版101の上部101cにアクセス可能となる。そこで、
図9に示す橋梁点検用足場100Bにおいて、レール部材42は、上記した実施形態の高さ位置と比べて、低い位置に配置することができる。この場合、レール部材42は、固定部材43Aを介して吊材106に固定することができる。
【0073】
この構成において、作業者は、開放部分Kの突出位置P4Bに第2足場パネル40をスライドさせることで、上記実施形態に比べて低い位置に第2足場パネル40が配置される。このため、作業者は、容易に第2足場パネル40上に移動することができる。作業者は、第2足場パネル40上に移動することで、床版101の上部101cにアクセス可能となる。
【0074】
また、上記した実施形態では、床版101が桁材103に加えて吊材106を有し、第1足場パネル10を固定する構成及び側面パネル20を支持する構成において吊材106を含む構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、吊材106が設けられることなく、第1足場パネル10が桁材103に固定されると共に側面パネル20が桁材103に支持される構成であってもよい。この場合、レール部材42を桁材103に固定してもよい。
【0075】
また、上記した実施形態では、橋梁BGにおいて、第1足場パネル10が桁材103の間に設置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図10は、変形例に係る橋梁点検用足場100Cを概略的に示す図である。
図10に示す橋梁点検用足場100Cは、第1足場パネル10が桁材103に固定される吊り下げ機構108と、上記実施形態に比べて下方に延長された吊材106とにより吊り下げられた構成の橋梁BGCに設けられている。
【0076】
吊り下げ機構108は、固定部108aと、吊材108bと、支持機構108cとを有する。固定部108aは、桁材103に固定され、幅方向D2の内側に延びている。吊材108bは、柱状であり、上端が固定部108aに連結され、上下方向D3に平行に配置される。支持機構108cは、吊材108bの下端に連結され、第1足場パネル10を支持する。
【0077】
また、第1足場パネル10の幅方向D2の外側には、下部カバー機構109が設けられる。下部カバー機構109は、支持機構107によって支持され、側面パネル20の下側を覆うように設けられる。下部カバー機構109は、側面パネル20の下方を幅方向D2の両側から保護する。下部カバー機構109は、第1足場パネル10に直交して配置されるが、これに限定されない。
【0078】
このように、橋梁点検用足場は、桁材103の間に第1足場パネル10が設置された構成の橋梁BGに限られず、桁材103の下端から第1足場パネル10が吊り下げられた構成の橋梁BGC等、桁材103の下端を用いて第1足場パネル10が配置された他の構成の橋梁に対しても、適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
BG,BGC…橋梁、D1…架設方向、D2…幅方向、D3…上下方向、K,KA…開放部分、P1…閉塞位置、P2,P2A…開放位置、P3…待機位置、P4,P4B…突出位置、10…第1足場パネル、20…側面パネル、20a,20b…面、20c…リブ部、22,33,40c…軸部、23…ストッパ機構、23a…パネル側連結部材、23b…吊材側連結部材、23c…連結軸、23d…パネル側連結軸、23e…吊材側連結軸、24…取手部、30…手摺部、31…支持柱、32…手摺部材、40…第2足場パネル、40a…上面、40b…側面、40d…転動部、40e,42e…孔部、41…スライド機構、42…レール部材、42a…凹部、42b…開口部、42d…底面、43,43A…固定部材、44…規制部材、50…脚立、100,100A,100B…橋梁点検用足場、101…床版、101a…下部、101b…側部、101c…上部、102…路面、103…桁材、103a…載置部、104…壁高欄、105…水平支持材、106…吊材、107…支持機構、119…補強部材、121,121a…連結部材、122,122b…支持部材、123…ガゼット部