(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントの壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
(21)【出願番号】P 2019159539
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月31日に、株式会社竹中工務店が、国立研究開発法人国立循環器病研究センターに、増岡裕士、江藤泉、戸田浩一、清水健司、水谷健一、藤井俊洋、及び、高橋達夫が発明したエキスパンションジョイントの壁構造、床構造、及び天井構造を採用した建築物(国立循環器病研究センター)を引き渡した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】増岡 裕士
(72)【発明者】
【氏名】江藤 泉
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
(72)【発明者】
【氏名】水谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達夫
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-081872(JP,A)
【文献】実開平07-021811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つの建物の間の隙間を覆う状態で壁パネルを備えたエキスパンションジョイントの壁構造であって、
前記壁パネルとして、両側端部が壁パネル用ヒンジ部により回動自在に枢支されて、複数のパネル部材を前記2つの建物間での遠近方向において互いにスライド自在に連結してなる多連式壁パネルを備え
、
前記多連式壁パネルの一側端部側に位置する側端部パネル部材に対して前記遠近方向に沿って並設され、前記側端部パネル部材側とは反対側の側端部が化粧パネル用ヒンジ部により回動自在に枢支されている化粧パネルを備えたエキスパンションジョイントの壁構造。
【請求項2】
前記2つの建物に亘って架設されて当該両建物の相対変位を許容しながら前記遠近方向における中央部にセンターフレームを保持するセンターフレーム保持機構部を備え、
前記センターフレームを前記遠近方向で挟む両側に前記多連式壁パネルが夫々設けられている請求項1に記載のエキスパンションジョイントの壁構造。
【請求項3】
前記側端部パネル部材の前記化粧パネル側の側端部に、前記化粧パネルの遊端部が乗り上げ案内される乗り上げ案内部が設けられている請求項
1又は2に記載のエキスパンションジョイントの壁構造。
【請求項4】
前記化粧パネルを、前記多連式壁パネルにおいて前記側端部パネル部材に連結されたパネル部材に向けて付勢する付勢部を備えた請求項
1から3の何れか一項に記載のエキスパンションジョイントの壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2つの建物の間の隙間を覆う状態で壁パネルを備えたエキスパンションジョイントの壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する2つの建物の間に形成された隙間をパネルで覆うエキスパンションジョイント構造が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
特許文献1記載のパネルは、両建物に固定された一対の固定パネル部材とこれら一対の固定パネル部材の間に配置されて中央維持機構により両建物の隙間の中央部に保持された可動パネル部材とからなる多連式に構成されている。そして、この特許文献1に記載の多連式壁パネルでは、地震等により両建物が上記2つの建物間での遠近方向(パネルの面内方向)に沿って互いに変位する場合において、中央部に保持された可動パネルに対して夫々の固定パネルが面内方向に沿ってスライド移動する形態で幅を変化させて、上記隙間を覆う状態を保つように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の多連式壁パネルは、地震等により両建物が上記遠近方向に対して平面視で交差するずれ方向(パネルの面外方向)に沿って互いに変位する場合には、パネル部材間に隙間が生じたり、パネル部材同士が衝突したりなどの問題が発生する。従って、この多連式壁パネルは、パネルの面外方向が、両建物の相対的な位置関係の変動が生じ難い鉛直方向に沿うものとなるような天井部分や床部分にしか適用することができず、特にパネルの面外方向が水平方向に沿うような壁部分には適用することは困難であった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、隣接する2つの建物の間の隙間を覆う状態で設けられた壁パネルを多連式に構成するにあたり、両建物の相対的な位置関係が地震等により変動した場合であっても、それに追従して当該多連式壁パネルの姿勢及び幅を適切に変化させて、上記隙間を覆う状態を保つ技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、隣接する2つの建物の間の隙間を覆う状態で壁パネルを備えたエキスパンションジョイントの壁構造であって、
前記壁パネルとして、両側端部が壁パネル用ヒンジ部により回動自在に枢支されて、複数のパネル部材を前記2つの建物間での遠近方向において互いにスライド自在に連結してなる多連式壁パネルを備え、
前記多連式壁パネルの一側端部側に位置する側端部パネル部材に対して前記遠近方向に沿って並設され、前記側端部パネル部材側とは反対側の側端部が化粧パネル用ヒンジ部により回動自在に枢支されている化粧パネルを備えた点にある。
【0007】
本構成によれば、隣接する2つの建物の隙間を覆う壁パネルが、両側端部が壁パネル用ヒンジ部により回転自在に枢支された上記多連式壁パネルとして構成されている。よって、両建物が上記遠近方向(壁パネルの面内方向)に沿って互いに変位する場合には、多連式壁パネルを構成する複数のパネル部材が互いにスライド移動する形態で、多連式壁パネルの幅を両建物の相対的な位置関係の変動に適切に追従させて変化させることができる。更に、両建物がパネルの面外方向に沿って互いに変位する場合には、多連式壁パネル全体が壁パネル用ヒンジ部により両側端部に沿った回転軸周りに回動する形態で、多連式壁パネルの姿勢を両建物の相対的な位置関係の変動に適切に追従させて変化させることができる。
従って、本発明により、隣接する2つの建物の間の隙間を覆う状態で設けられた壁パネルを多連式に構成するにあたり、両建物の相対的な位置関係が地震等により変動した場合であっても、それに追従して当該多連式壁パネルの姿勢及び幅を適切に変化させて、上記隙間を覆う状態を保つ技術を提供することができる。
また、本構成によれば、上記多連式壁パネルの側端部パネル部材と上記化粧パネルとが、上記遠近方向に沿って並設された状態となる。よって、多連式壁パネルにおいて互いに重なりあって配置された各パネル部材の段部を化粧パネルにより覆い隠すことができ、化粧パネルが設置された側からみた多連式壁パネルの意匠性を向上することができる。
更に、この化粧パネルは、上記多連式壁パネルの姿勢変更に合わせて、全体が壁パネル用ヒンジ部により両側端部に沿った回転軸周りに回動する形態で姿勢を変更することができる。よって、両建物が上記遠近方向に対して平面視で交差するずれ方向に沿って互いに変位する場合において、上記化粧パネルの姿勢を常に上記多連式壁パネルに沿ったものに維持することで、これらの間に隙間が生じることを防止できる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記2つの建物に亘って架設されて当該両建物の相対変位を許容しながら前記遠近方向における中央部にセンターフレームを保持するセンターフレーム保持機構部を備え、
前記センターフレームを前記遠近方向で挟む両側に前記多連式壁パネルが夫々設けられている点にある。
【0009】
本構成によれば、両建物の隙間の中央部に保持されるセンターフレームの両側に多連式壁パネルが夫々設けられているので、上記隙間が広い場合であっても、夫々の多連式壁パネルを上記隙間の半分以下の幅となる小型なものとしながら、夫々の多連式壁パネルの幅を同じ幅に揃えて意匠性を向上することができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記側端部パネル部材の前記化粧パネル側の側端部に、前記化粧パネルの遊端部が乗り上げ案内される乗り上げ案内部が設けられている点にある。
【0013】
本構成によれば、両建物間の隙間の幅が縮小し、多連式壁パネルの側端部パネルとそれに対して突合せ状態で並設された化粧パネルとが近接する方向に相対的に変位して、それらの端部同士が衝突する状態となる。そのような場合でも、化粧パネルが化粧パネル用ヒンジ部により回動して姿勢変更しながら、当該化粧パネルの遊端部を側端部パネルの乗り上げ案内部により乗り上げ案内させて、上記端部同士の衝突によるパネルの損傷等を防止することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記化粧パネルを、前記多連式壁パネルにおいて前記側端部パネル部材に連結されたパネル部材に向けて付勢する付勢部を備えた点にある。
【0015】
本構成によれば、上記付勢部により上記化粧パネルが常に上記多連式壁パネルのパネル部材に向けて付勢されるので、この化粧パネルの姿勢を多連式壁パネルのパネル部材に沿った安定したものに維持しながら、これらの間に隙間が生じることを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】センターフレーム保持機構部の通常状態での平面図
【
図6】センターフレーム保持機構部の近接状態での平面図
【
図7】センターフレーム保持機構部の離間状態での平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、2つの建物1,2の間の隙間3の幅(建物1,2間の距離)が通常時の幅となる通常状態でのエキスパンションジョイントの壁構造100(以下、「本壁構造100」と呼ぶ。)の状態を示しており、
図2は、同隙間3の幅が上記通常状態と比べて縮小した近接状態での本壁構造100の状態を示しており、
図3は、同隙間3の幅が上記通常状態と比べて拡大した離間状態での本壁構造100の状態を示しており、
図4は、2つの建物1,2が平面視で建物1,2間での遠近方向Xと直交する方向にずれたずれ状態での本壁構造100の状態を示している。
【0018】
本壁構造100には、2つの建物1,2に亘って架設されて当該両建物1,2の相対変位を許容しながら2つの建物1,2間での遠近方向Xにおける中央部にセンターフレーム51を保持するセンターフレーム保持機構部50が設けられている。尚、センターフレーム保持機構部50の構成については、公知の構成を採用することができ、本実施形態での詳細構成については後述する。
【0019】
本壁構造100において、壁パネル10は、隙間3においてセンターフレーム保持機構部50により中央部に保持されたセンターフレーム51を構成する縦センターフレーム材51Aの左右両側の夫々に配置されている。尚、本壁構造100は、縦センターフレーム材51Aを挟んで左右対称の構造を有している。
本壁構造100には、隣接する2つの建物1,2の間の隙間3を覆う状態で壁パネル10が設けられている。壁パネル10の両端部には、当該壁パネル10を上下方向に沿う軸心周りで回動自在に枢支する壁パネル用ヒンジ部11が夫々設けられている。
即ち、縦センターフレーム材51Aの両側の夫々に設けられた壁パネル10は、一端側が縦センターフレーム材51Aに固定された壁パネル用ヒンジ部11により回動自在に枢支されており、他端側が建物1,2に固定された壁パネル用ヒンジ部11により回動自在に枢支されている。
【0020】
このように両建物1,2の隙間3の中央部に保持される縦センターフレーム材51Aの両側に壁パネル10が夫々設けられているので、両建物1,2の隙間3が広い場合であっても、夫々の壁パネル10を半分以下の幅となる小型なものとしながら、夫々の壁パネル10の幅を同じ幅に揃えて意匠性を向上することができる。
【0021】
壁パネル10は、両側端部が壁パネル用ヒンジ部11により回動自在に枢支されて、3つのパネル部材10A,10B,10Cを遠近方向Xにおいて互いにスライド自在に連結してなる3連式に構成されている。具体的には、3連式の壁パネル10の一端部側に位置して縦センターフレーム材51Aに対して壁パネル用ヒンジ部11により回動自在に枢支されている第1パネル部材10Aと、当該第1パネル部材10Aの裏面に沿った状態で3連式の壁パネル10の中央部に位置する第2パネル部材10Bとは、遠近方向Xに沿って第1パネル部材10Aの背面に設けられたレール15上を、第2パネル部材10Bの前面に設けられたスライダ16がスライドする形態で、遠近方向Xに沿って相対的に変位可能に連結されている。また、この第2パネル部材10Bと、その裏面に沿った状態で3連式の壁パネル10の他端部側に位置して建物1,2に対して壁パネル用ヒンジ部11により回動自在に枢支されている第3パネル部材10Cとは、遠近方向Xに沿って第2パネル部材10Bの背面に設けられたレール15上を、第3パネル部材10Cの前面に設けられたスライダ16がスライドする形態で、遠近方向Xに沿って相対的に変位可能に連結されている。
【0022】
以上のように壁パネル10が3連式に構成されているので、両建物1,2が遠近方向X(壁パネル10の面内方向)に沿って互いに変位する場合には、壁パネル10を構成する複数のパネル部材10A,10B,10Cが互いにスライド移動する形態で、壁パネル10の幅を両建物1,2の相対的な位置関係の変動に適切に追従させて変化させることができる。例えば、両建物1,2が上記遠近方向Xに沿って近接する状態で相対的に変位して上記隙間3の幅が狭くなる近接状態(
図2参照)においては、夫々のパネル部材10A,10B,10Cの重畳部分を拡大しながら壁パネル10の幅を縮小させ、一方、両建物1,2が上記遠近方向Xに沿って離間する状態で相対的に変位して上記隙間3の幅が広くなる離間状態(
図3参照)においては、夫々のパネル部材10A,10B,10Cの重畳部分を縮小しながら壁パネル10の幅を拡大させることができる。
更に、両建物1,2がパネルの面外方向に沿って互いに変位するずれ状態(
図4参照)においては、壁パネル10の幅を変化させながら全体が壁パネル用ヒンジ部11により両側端部に沿った回転軸周りに回動する形態で、壁パネル10の姿勢を両建物1,2の相対的な位置関係の変動に適切に追従させて変化させることができる。
【0023】
本壁構造100は、隙間3を介して隣接する建物1,2間を連絡する通路等の連絡部5に面する内壁構造として構成されている。そして、3連式の壁パネル10において互いに重なりあって配置された各パネル部材10A,10B,10Cの段部を連絡部5に対して覆い隠して意匠性を向上するための化粧パネル20が設けられている。
【0024】
化粧パネル20は、3連式壁パネル10の一側端部側に位置する第1パネル部材10A(側端部パネル部材の一例)に対して遠近方向Xに沿って並設され、第1パネル部材10A側とは反対側の側端部が建物1,2に対して化粧パネル用ヒンジ部21により上下方向に沿う軸心周りで回動自在に枢支されている。
更に、化粧パネル用ヒンジ部21は、バネ付きヒンジが利用されており、化粧パネル20を、壁パネル10において第1パネル部材10Aに連結された第2パネル部材10Bに向けて付勢する付勢部として機能する。
即ち、化粧パネル用ヒンジ部21により化粧パネル20が常に第1パネル部材10Aの裏面側に位置する第2パネル部材10Bに向けて付勢されることになる。よって、化粧パネル20の姿勢は、夫々のパネル部材10A,10B,10Cに沿った安定したものに維持され、これらの間に隙間が生じることが良好に防止されている。
【0025】
第1パネル部材10Aの化粧パネル20側の側端部には、当該化粧パネル20の遊端部20aが乗り上げ案内される乗り上げ案内部25が設けられている。かかる乗り上げ案内部25は、化粧パネル20の遊端部20aと対向する箇所において、前方ほど遊端部20aから離間する形態の傾斜面として形成されている。
即ち、両建物1,2が上記遠近方向Xに沿って近接する状態で相対的に変位して上記隙間3の幅が狭くなる近接状態(
図2参照)において、化粧パネル20が化粧パネル用ヒンジ部21により回動して姿勢変更しながら、当該化粧パネル20の遊端部20aが乗り上げ案内部25により乗り上げ案内される。このことで、化粧パネル20の遊端部20aがセンターフレーム51等に衝突して損傷することが防止されている。
尚、化粧パネル20の遊端部20aの先端面は、上記乗り上げ案内部25への乗り上げがスムーズに行われるように、当該乗り上げ案内部25に沿った傾斜面として形成されている。
【0026】
〔センターフレーム保持構造〕
次に、上述した夫々の実施形態で利用してセンターフレーム保持機構部50の詳細構成について、
図5~
図7に基づいて説明を加える。
尚、
図5は、2つの建物1,2の間の隙間3の幅(建物1,2間の距離)が通常時の幅となる通常状態でのセンターフレーム保持機構部50の状態を示しており、
図6は、同隙間3の幅が上記通常状態と比べて縮小した近接状態でのセンターフレーム保持機構部50の状態を示しており、
図7は、同隙間3の幅が上記通常状態と比べて拡大した離間状態でのセンターフレーム保持機構部50の状態を示している。
【0027】
センターフレーム保持機構部50は、壁パネル10の裏面側に配置されており、建物1,2の間に架設された状態で設けられている。
両建物1,2の夫々には、第1連結梁55及び第2連結梁57がそれぞれ複数架け渡されている。
【0028】
第1連結梁55は、当該連結梁55の長手方向に沿って摺動自在な一対の可動軸56が設けられている。更に、夫々の可動軸56は、夫々の建物1,2に配置されたレール6に係合し、当該レール6に沿って摺動自在に保持されている。夫々の建物1,2において、レール6は、平面視で建物1,2間での遠近方向X(
図5~
図7における上下方向)と直交する方向(
図5~
図7における左右方向)に沿って配置されている。
第1連結梁55はセンターフレーム51を構成する横センターフレーム材51Bの長手方向に沿って複数設けられ、隣接する第1連結梁55同士は横センターフレーム材51Bの長手方向に対して傾斜する角度が異なるように配置されている。また、上述した縦センターフレーム材51A(
図1~
図4参照)は、立面視で上記横センターフレーム材51Bに対して直交する状態で固定されている。
【0029】
第2連結梁57は、当該連結梁57の長手方向に沿って摺動自在な一対の可動軸58が設けられている。更に、夫々の可動軸58は、夫々の建物1,2に上下方向に沿う軸心周りで回動自在に接合されている。第2連結梁57は横センターフレーム材51Bの長手方向に沿って複数設けられ、互いに平行に配置されている。
【0030】
センターフレーム保持機構部50には、平常時において建物1と建物2との対向面に対して平行にH形鋼の横センターフレーム材51Bが配置されている。横センターフレーム材51Bは本発明におけるセンターフレームの一例であり、建物1,2の間の隙間3の中央部に配置されている。
【0031】
横センターフレーム材51Bは、枢支部52を介して第1連結梁55及び第2連結梁57に載置されている。当該枢支部52は、横センターフレーム材51Bに対しては上下方向に沿う軸心周りで回動自在に接合されており、第1連結梁55及び第2連結梁57に対しては、当該連結梁55,57の長手方向に沿って摺動自在に接合されている。
【0032】
以上のようなセンターフレーム保持機構部50は、2つの建物1,2間での遠近方向Xにおける中央部に横センターフレーム材51Bを保持しながら、
図5に示す通常状態から、
図6に示す近接状態や
図7に示す離間状態に、状態を変化させることができる。
【0033】
即ち、
図5に示す地震力が作用していない平常時の通常状態から、建物1,2に地震による水平力が作用して、建物1,2がそれぞれ互いに近づく方向に相対変位した場合、建物1,2の位置関係は
図6に示す近接状態になる。
一方、
図5に示す地震力が作用していない平常時の通常状態から、建物1,2に地震による水平力が作用して、建物1,2がそれぞれ互いに離れる方向に相対変位した場合、建物1,2の位置関係は
図7に示す離間状態になる。
つまり、
図5に示す通常状態から
図6に示す近接状態や
図7に示す離間状態に状態変化すると、第1連結梁55の両端部の可動軸56が建物1,2に設けられたレール6に沿ってスライドし、第1連結梁55が横センターフレーム材51Bの枢支部52を中心に回動し、また、建物1,2に設けられた可動軸58が第2連結梁57に沿ってスライドする。このとき、枢支部52は、第1連結梁55の軸方向の中心に配置されているため、横センターフレーム材51Bは建物1と建物2との隙間3の中心に保持される。
【0034】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0035】
(1)上記実施形態では、センターフレーム保持機構部50が建物1,2間の隙間3の中央部に保持するセンターフレーム51を遠近方向Xで挟む両側に、壁パネル10を夫々設けたが、例えばセンターフレーム保持機構部50を省略し、隙間3全体を一の壁パネルで覆うように構成しても構わない。また、上記センターフレーム51と同様に隙間3の途中に保持されるフレームを複数配置して、それらの間の夫々に壁パネルを設けても構わない。
【0036】
(2)上記実施形態では、パネル部材10A,10B,10Cの段部を連絡部5に対して覆い隠すための化粧パネル20を設けたが、この化粧パネル20については適宜省略することもできる。
【0037】
(3)上記実施形態では、壁パネル10を3つのパネル部材10A,10B,10Cからなる3連式に構成したが、パネル部材の連装数については2又は4以上に変更しても構わない。
【0038】
(4)上記実施形態では、本壁構造100を内壁構造として構成したが、建物間の隙間を壁パネルにより外部から覆い隠すための外壁構造として構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 建物
2 建物
3 隙間
10 壁パネル
10A 第1パネル部材(側端部パネル部材)
10B 第2パネル部材
10C 第3パネル部材
11 壁パネル用ヒンジ部
20 化粧パネル
20a 遊端部
21 化粧パネル用ヒンジ部
25 乗り上げ案内部
50 センターフレーム保持機構部
51 センターフレーム
100 壁構造
X 遠近方向