特許 7350592 支柱防水構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-09-15

(45)【発行日】2023-09-26

(54)【発明の名称】支柱防水構造

(51)【国際特許分類】

   E04D 11/00 20060101AFI20230919BHJP

   E04B 1/66 20060101ALI20230919BHJP

   E04D 13/00 20060101ALN20230919BHJP

【ＦＩ】

E04D11/00 Q

E04B1/66 Z

E04D13/00 K

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2019179159

(22)【出願日】2019-09-30

(65)【公開番号】P2021055385

(43)【公開日】2021-04-08

【審査請求日】2022-09-01

(73)【特許権者】

【識別番号】390037154

【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100105843

【弁理士】

【氏名又は名称】神保 泰三

(72)【発明者】

【氏名】園田 千絵

【審査官】山口 敦司

(56)【参考文献】

【文献】特開２００４－０７６３８１（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭６０－１５９０１３（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２００８－１６９５７６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－２１３９２１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－３４８６４３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－０３７８２９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１０－１７６４０３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１１－０４２９６４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１９９９０６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－０３１０６５（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第６５９１５６１（ＵＳ，Ｂ１）

【文献】米国特許第５０１０７００（ＵＳ，Ａ）

【文献】米国特許第５５３６０４８（ＵＳ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｄ １１／００

Ｅ０４Ｂ １／６６

Ｅ０４Ｄ １３／００

Ｅ０４Ｂ １／００

Ｅ０４Ｆ １１／１８

Ｅ０４Ｈ １２／２２

Ｅ０４Ｈ １２／２８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

屋外の平場部に形成された開口から突出する支柱部材の周囲部を防水する支柱防水構造であって、
上記支柱部材の周囲の平場部の上面に位置する平場側シート部および上記支柱部材の下部側の表面を覆う支柱側シート部を有する平場側防水役物と、
上記支柱側シート部と上記支柱部材の表面との境目を封止する２次防水部と、
上記２次防水部の表面に上部側が位置するように被された上側防水役物と、
上記上側防水役物の上記上部側と上記支柱部材の表面との境目を封止する１次防水部と、
を備えることを特徴とする支柱防水構造。

【請求項2】

請求項１に記載の支柱防水構造において、上記上側防水役物の上記上部側の下側には上記支柱側シート部の外面側に重なる重なり部が形成されることを特徴とする支柱防水構造。

【請求項3】

請求項２に記載の支柱防水構造において、上記上側防水役物の上記重なり部と上記上部側との間が段状に形成されていることを特徴とする支柱防水構造。

【請求項4】

請求項２または請求項３に記載の支柱防水構造において、上記支柱側シート部の外面側に位置する上記２次防水部と上記上側防水役物の上記重なり部との間に弾性止水部を備えることを特徴とする支柱防水構造。

【請求項5】

請求項１～請求項４のいずれか１項に記載の支柱防水構造において、上記上側防水役物の下部側に、斜め下方に向けて拡がる裾部が形成されており、上記支柱部材を覆う化粧カバー部材の内面に上記裾部が接触または近接することを特徴とする支柱防水構造。

【請求項6】

請求項５に記載の支柱防水構造において、上記裾部に切欠部が形成されていることを特徴とする支柱防水構造。

【請求項7】

請求項１～請求項６のいずれか１項に記載の支柱防水構造において、上記１次防水部の上記上側防水役物の上記上部側に位置する部位を当該上側防水役物の上記上部側に圧接させる押さえ金物を備えることを特徴とする支柱防水構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、屋外の平場部に形成された開口から突出する支柱部材の周囲部を防水する支柱防水構造に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、柱脚部の防水構造が開示されている。この柱脚部の防水構造は、柱脚部の上部表面にシーリング剤を塗布し、このシーリング剤の上から、少なくとも表面がポリ塩化ビニル等の合成樹脂でできている帯状の取付けシートを、その両端部が重なるように貼設し、少なくともこの取付けシートの両端部が重なった部分に固着具を打ち込み、この取付けシートの表面の合成樹脂と同種類の合成樹脂でできている防水部材を、その上端縁と前記取付けシートの上端縁とが略一致するようにして、溶着して取付け、更に、前記取付けシートおよび前記防水部材の上端縁部分をコーキングする防水構造である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開平１０－２１２７９４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、上記従来の技術では、上記溶着による取付け作業が必要であり、柱脚部の防水施工に熟練が必要であった。

【0005】

この発明は、上記の事情に鑑み、特段の熟練を要しなくても、上記支柱部材の周囲部の防水施工が行える支柱防水構造を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

この発明の支柱防水構造は、上記の課題を解決するために、屋外の平場部に形成された開口から突出する支柱部材の周囲部を防水する支柱防水構造であって、
上記支柱部材の周囲の平場部の上面に位置する平場側シート部および上記支柱部材の下部側の表面を覆う支柱側シート部を有する平場側防水役物と、
上記支柱側シート部と上記支柱部材の表面との境目を封止する２次防水部と、
上記２次防水部の表面に上部側が位置するように被された上側防水役物と、
上記上側防水役物の上記上部側と上記支柱部材の表面との境目を封止する１次防水部と、
を備えることを特徴とする。

【0007】

上記の構成であれば、上記上側防水役物の上部側と上記支柱部材の表面との境目が１次防水部として封止され、上記平場側防水役物の支柱側シート部と上記支柱部材の表面との境目が２次防水部として封止される。そして、これら１次防水および２次防水に、上記上側防水役物と上記平場側防水役物の定型の部材が各々用いられるので、上記支柱部材の周囲部の防水施工が容易且つ的確に行える。すなわち、特段の熟練を要しなくても、上記支柱部材の周囲部の防水施工が行える。

【0008】

上記上側防水役物の上記上部側の下側には上記支柱側シート部の外面側に重なる重なり部が形成されてもよい。これによれば、上からの雨水を、上記支柱側シート部の外面ではなく、上記上側防水役物の外側面で流すことができる。

【0009】

上記上側防水役物の上記重なり部と上記上部側との間が段状に形成されてもよい。これによれば、例えば、後述する押さえ金物を配置において、上記段状の箇所を上記押さえ金物の位置決めに利用することができる。

【0010】

上記支柱側シート部の外面側に位置する上記２次防水部と上記上側防水役物の上記重なり部との間に弾性止水部を備えてもよい。これによれば、上記２次防水部と上記上側防水役物との隙間からの雨水の浸入を抑制できる。

【0011】

上記上側防水役物の下部側に、斜め下方に向けて拡がる裾部が形成されており、上記支柱部材を覆う化粧カバー部材の内面に上記裾部が接触または近接してもよい。これによれば、上記化粧カバー部材の下側から風の吹き上げで入ってくる雨水を、上記裾部の部分で反すことができる。

【0012】

上記裾部に切欠部が形成されていてもよい。これによれば、上記裾部の上側に雨水が入り込んだ場合でも、この雨水を上記切欠部から下に流すことができる。

【0013】

上記１次防水部の上記上側防水役物の上記上部側に位置する部位を当該上側防水役物の上記上部側に圧接させる押さえ金物を備えてもよい。これによれば、上記圧接によって、上記上側防水役物の上記上部側と上記１次防水部との間に隙間が生じるのを抑制でき、また、上記上側防水役物の上記上部側を、上記２次防水部や上記支柱部材の表面に圧接させることができる。

【発明の効果】

【0014】

本発明であれば、上記上側防水役物の上部側と上記支柱部材の表面との境目が１次防水部として封止され、上記平場側防水役物の支柱側シート部と上記支柱部材の表面との境目が２次防水部として封止される。そして、これら１次防水および２次防水に、上記平場側防水役物と上記上側防水役物の２個の定型の部材が各々用いられるので、上記支柱部材の周囲部の防水施工が容易且つ的確に行えるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】実施形態の支柱防水構造を示した概略の縦断面図である。

【図2】図１の支柱防水構造の施工工程を示した説明図である。

【図3】図１の支柱防水構造の施工工程を示した説明図である。

【図4】図１の支柱防水構造の施工工程を示した説明図である。

【図5】図１の支柱防水構造の施工工程を示した説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この実施形態の支柱防水構造は、例えば、屋上等の周縁に配置される手摺を支える支柱部材に施される。この支柱防水構造は、図１に示すように、屋外の平場部８０に形成されている開口８１から突出する支柱部材８２の周囲部を防水する。上記支柱部材８２は、断面矩形の板材からなり、図示しない下部フランジ部が建物の梁にボルト等を用いて立設支持される。また、上記平場部８０は、合板、勾配板、防水下地層等を備えて構成される。また、この支柱防水構造は、手摺りを固定する固定部８２ａよりも下側の位置に設けられる。

【0017】

上記支柱防水構造では、耐候性を備えるシート材からなる平場側防水役物１が用いられる。この平場側防水役物１は、上記支柱部材８２の周囲の平場部８０の上面に位置する略四角形の平場側シート部１ａおよび上記支柱部材８２の下部側の表面を覆う支柱側シート部１ｂを有する。この支柱側シート部１ｂは、上記支柱部材８２の断面矩形に合わせた扁平な四角筒状に形成される。

【0018】

上記支柱側シート部１ｂと上記支柱部材８２の表面との境目（以下、２次防水境目という。）には、この２次防水境目を封止するように２次防水テープ部（２次防水部）３が設けられる。この２次防水テープ部３は、例えば、粘着剤が塗布されたブチルテープからなり、作業者がブチルテープを巻いて貼り付けることで得られる。なお、上記支柱側シート部１ｂの天端（２次防水境目天端）は、図示しないオーバーフロー管よりも高い位置に設定される。また、上記支柱側シート部１ｂの上部を接着剤によって上記支柱部材８２の表面に接着している。

【0019】

さらに、この支柱防水構造は、上側防水役物２を備える。この上側防水役物２は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム（ＥＰＤＭ）を用いた成形品である。

【0020】

上記上側防水役物２は、その上部側の部位である上側筒部２１が、上記支柱部材８２上の上記２次防水テープ部３の表面に位置するように、上記支柱部材８２に被される。上記上側筒部２１は、上記支柱部材８２の断面矩形に合わせた扁平な四角筒状に形成される。また、上記上側筒部２１の下側には、上記支柱側シート部１ｂの上部の周囲側に位置する四角筒状の中央筒部（重なり部）２２が位置している。また、上記上側防水役物２の上記中央筒部（重なり部）２２と上記上側筒部２１との間は段状に形成されている。

【0021】

また、上記中央筒部２２の下側には、略四角錐台形状の裾部２３が形成されている。上記裾部２３は、上記上側防水役物２の下縁側で斜め下方に向けて拡がり、上記支柱部材８２を覆う化粧カバー部材８３の内面に接触または近接する。

【0022】

上記裾部２３においては、その略四角錐台形状における４つの角辺部が２０ｍｍ程度の長さでカットされて広げられることで、各角辺部に切欠部２３ａが形成される（図５参照）。

【0023】

上記支柱側シート部１ｂの外面側に位置する上記２次防水テープ部３と上記上側防水役物２の中央筒部（重なり部）２２との間には、例えば、発泡材からなる弾性止水部４が設けられている。

【0024】

そして、上記上側防水役物２の上側筒部２１の上部と上記支柱部材８２の表面との境目（以下、１次防水境目という。）には、当該１次防水境目を封止し、上記２次防水テープ部３よりも外側の層として位置する１次防水テープ部（１次防水部）５が設けられている。この１次防水テープ部５は、例えば、粘着剤が塗布されたブチルテープからなり、作業者がブチルテープを巻いて貼り付けることで得られる。

【0025】

上記１次防水テープ部５の外側には、上記化粧カバー部材８３内に収まる押さえ金物６が設けられる。この押さえ金物６は、上記１次防水テープ部５を、上記上側防水役物２の上部の上側筒部２１に圧接させる。上記押さえ金物６は、上側筒部２１の長辺側に位置する押さえ部６１から段部６２（図５参照）を介して上記上側筒部２１の短辺側に位置する締結部６３から成る金具を１対備えており、これら一対の金具を互いに左右反転させ、上記締結部６３と上記押さえ部６１の端を接近させることで、上記押さえ部６１によって上側筒部２１の長辺側を挟むようにしたものであり、上記押さえ部６１で当該押さえ金物６の厚みが極力厚くならないようにしたものである。上記締結部６３には、例えば、ボルト・ナットが設けられる。

【0026】

上記の構成であれば、上記上側防水役物２の上部側の上側筒部２１と上記支柱部材８２の表面との境目が１次防水部として封止され、上記平場側防水役物１の上記支柱側シート部１ｂと上記支柱部材８２の表面との境目が２次防水部として封止される。そして、これら１次防水および２次防水に、上記上側防水役物２と上記平場側防水役物１の定型の部材が各々用いられるので、上記支柱部材８２の周囲部の防水施工が容易且つ的確に行える。

【0027】

上記上側防水役物２に上記支柱側シート部１ｂの外面側に重なる中央筒部（重なり部）２２が形成されていると、上からの雨水を、上記支柱側シート部１ｂの外面ではなく、上記上側防水役物２の外側面で流すことができる。

【0028】

上記支柱側シート部１ｂの外面側に位置する上記２次防水テープ部３と上記上側防水役物の中央筒部（重なり部）２２との間に弾性止水部４を備えると、上記２次防水テープ部３と上記上側防水役物２との隙間からの雨水の浸入を抑制できる。

【0029】

上記上側防水役物２の下部側に、外側且つ下方に向けて拡がる裾部２３が形成され、上記支柱部材８２を覆う化粧カバー部材８３の内面に上記裾部２３が接触または近接すると、上記化粧カバー部材８３の下側から風の吹き上げで入ってくる雨水を、上記裾部２３で反すことができる。

【0030】

上記裾部２３に上記切欠部２３ａが形成されていると、上記裾部２３の上側に雨水が入り込んだ場合でも、この雨水を上記切欠部２３ａから下に流すことができる。

【0031】

上記１次防水テープ部５の上記上側筒部２１側に位置する部位を当該上側筒部２１に圧接させる押さえ金物６を備えると、上記圧接によって、上記上側防水役物２の上部側と上記１次防水テープ部５との間に隙間が生じるのを抑制でき、また、上記上側防水役物２の上記上側筒部２１を、上記２次防水テープ部３や上記支柱部材８２の表面に圧接させることができる。

【0032】

上記上側防水役物２の上記中央筒部（重なり部）２２と上記上側筒部２１との間が段状に形成されていると、上記押さえ金物６の配置において、上記段状の箇所を上記押さえ金物６の位置決めに利用することができる。

【0033】

次に、上記支柱防水構造の施工方法について説明する。図２に示すように、屋外の平場部８０に形成された開口８１から突出する支柱部材８２に、平場側防水役物１を上側から被せる。このとき、上記支柱側シート部１ｂと上記支柱部材８２の表面との境目に２次防水境目ができるので、図３に示すように、この２次防水境目を塞ぐように、２次防水テープ部３を支柱部材８２に巻き付ける。次に、上記支柱側シート部１ｂの外面側に位置する上記２次防水テープ部３の部位の外側に、上記弾性止水部４を貼り付ける。

【0034】

そして、図４に示すように、上記上側防水役物２を上記支柱部材８２の上側から嵌め込む。このとき、上記上側防水役物２の上側筒部２１の上部と上記支柱部材８２の表面との境目に１次防水境目ができるので、この１次防水境目を封止するように、上記１次防水テープ部５を支柱部材８２に巻き付ける。次に、図５に示すように、上記上側防水役物２の上側筒部２１上に位置する上記１次防水テープ部５の外側に押さえ金物６を配置し、この押さえ金物６によって、上記１次防水テープ部５を上記上側筒部２１に圧接させる。

【0035】

その後、上記化粧カバー部材８の取り付け、手摺りの取り付けの作業等を行う。

【0036】

以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。

【符号の説明】

【0037】

１ ：平場側防水役物
１ａ ：平場側シート部
１ｂ ：支柱側シート部
２ ：上側防水役物
３ ：２次防水テープ部（２次防水部）
４ ：弾性止水部
５ ：１次防水テープ部（１次防水部）
６ ：押さえ金物
２１ ：上側筒部（上部側）
２２ ：中央筒部（重なり部）
２３ ：裾部
２３ａ ：切欠部
６１ ：押さえ部
６２ ：段部
６３ ：締結部
８０ ：平場部
８１ ：開口
８２ ：支柱部材
８２ａ ：固定部
８３ ：化粧カバー部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】