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  • 特許-アスファルト舗装道路の補修方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】アスファルト舗装道路の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/00 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
E01C23/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019182890
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059846
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501436045
【氏名又は名称】ヤハギ道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】長沼 明彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 司
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193667(JP,A)
【文献】特開平04-050267(JP,A)
【文献】特開2009-167767(JP,A)
【文献】特開2012-149507(JP,A)
【文献】特開昭56-111713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の層を有するアスファルト舗装道路に適用され、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合することによって形成された補修材を、積層された複数の前記層の境界部分に向けて流し込むアスファルト舗装道路の補修方法であって、
前記複数の層は、下から上に向けて順に積層されている下層、基層、表層を備えており、
前記基層及び前記表層には水密性が持たされており、
前記表層側から前記下層側に向けて前記基層と前記下層との境界部分まで延びる穴を形成し、その穴を介して前記補修材を前記表層と前記基層との境界部分及び前記基層と前記下層との境界部分に注入することにより、それら境界部分に向けて前記補修材が流し込まれることを特徴とするアスファルト舗装道路の補修方法。
【請求項2】
積層された複数の層を有するアスファルト舗装道路に適用され、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合することによって形成された補修材を、積層された複数の前記層の境界部分に向けて流し込むアスファルト舗装道路の補修方法であって、
前記複数の層は、下から上に向けて順に積層されている下層、基層、表層を備えており、
前記表層は、排水性を有するものであり、
前記表層の上から前記補修材を散布することにより、前記補修材が前記基層と前記表層との境界部分に向けて流し込まれ、
前記補修材の使用量Vは、前記表層の空隙率P及びその空隙率Pを前記使用量Vに変換する係数aに基づき、式「V≧a・P」を用いて決定されており、
前記係数aは、式「0.11≦a≦0.15」を満たす値とされていることを特徴とするアスファルト舗装道路の補修方法。
【請求項3】
前記補修材を形成するための前記ゴムアスファルトエマルジョンの粘度が350~650mPa・sとされている請求項1又は2に記載のアスファルト舗装道路の補修方法。
【請求項4】
前記補修材を形成するための前記セメントグラウトはセメントと水とを混合することによって形成されており、その混合の際のセメントの質量に対する水の質量の比率が90~110%とされている請求項1~のいずれか一項に記載のアスファルト舗装道路の補修方法。
【請求項5】
前記補修材を形成するために前記ゴムアスファルトエマルジョンと前記セメントグラウトとを混合する際、セメントグラウトの質量に対するゴムアスファルトエマルジョンの質量の比率が400~500%とされている請求項1~のいずれか一項に記載のアスファルト舗装道路の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装道路の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装道路においては、路盤や床版といった下層の上に基層が積層されており、その基層の上には表層が積層されている。上記表層はアスファルト舗装道路上を通過する車両の荷重を受けて同荷重を分散させるためのものであり、上記基層は下層の不陸を整正して表層に加わる荷重を下層に対し均一に伝達するためのものである。
【0003】
上記表層及び上記基層は、多数の骨材同士をアスファルトによって結合したアスファルト混合物によって形成されている。なお、上記基層を形成するアスファルト混合物には水密性が持たされており、それによって雨水等が下層側に浸透することが抑制される。また、上記表層を形成するアスファルト混合物としては、水密性を持たせたものが採用されたり、排水性を持たせたものが採用されたりする。
【0004】
ところで、アスファルト舗装道路では、表層と基層との付着性が乏しかったり、基層の遮水性(水密性)が乏しかったりすると、降雨等によって表層や基層に水が浸透して滞留したり、複数の層の境界部分に水が滞留したりすることがある。そして、そのように滞留した水がアスファルト舗装道路の劣化を早めるおそれがある。
【0005】
詳しくは、滞留した水が気化して膨張することにより表層がふくれあがったり、滞留した水によって基層と表層との付着が弱くなったりする。更に、表層及び基層を形成するアスファルト混合物が滞留した水に触れていると、アスファルト混合物における骨材とアスファルトとの間に水が浸入してしまい、アスファルト舗装道路を通過する車両からの荷重をアスファルト混合物が受けたとき、骨材とアスファルトとの結合が解けることにより、ひび割れや分離が生じる場合もある。
【0006】
このため、アスファルト舗装道路では、劣化予防のために次のような補修が行われている。すなわち、アスファルト舗装道路における基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じる空隙に対し、特許文献1に示されるアスファルト乳剤(補修材)を流し込む。その後、流し込まれたアスファルト乳剤に含まれる水分の揮発を促進するための分解剤を流し込む。こうしてアスファルト乳剤を水分の揮発を通じて固化させることにより、アスファルト舗装道路における基層及び表層におけるひび割れ及び空隙が生じた部分や、複数の層の境界部分に生じた空隙を補修するとともに、その補修した部分に耐水性を持たせる。
【0007】
ちなみに、表層を形成するアスファルト混合物が排水性を持たせたものである場合、アスファルト乳剤を表層の上から散布することにより、アスファルト舗装道路における基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、表層と基層との境界部分に生じた空隙に対し、上記アスファルト乳剤を流し込むことができる。更に、分解剤を表層の上から散布することにより、その分解剤を流し込むこともできる。なお、この場合には、表層の表面にアスファルト乳剤が固化した皮膜(アスファルト皮膜)が形成され、それによって表層の表面のすべり抵抗が小さくなる。このため、表層の表面をブラッシングして細かい凹凸を形成することにより、同表面のすべり抵抗を大きくする必要がある。
【0008】
一方、表層を形成するアスファルト混合物が排水性を持たせたものである場合には、表層側から下層側に向けて穴を形成し、その穴を介してアスファルト乳剤を複数の層の境界部分に注入することにより、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙に対し、上記アスファルト乳剤を流し込むことができる。更に、上記穴を介して上記分解剤を注入することにより、その分解剤を流し込むこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-149507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したアスファルト舗装道路の補修方法では、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙を補修するとともに、その補修した部分に耐水性を持たせることができるようにはなる。しかし、分解剤の流し込みやブラッシング等を行う工程が必要となるため、その工程を実施する際の手間が無視できない問題となる。
【0011】
本発明の目的は、補修の際に手間がかかることを抑制できるアスファルト舗装道路の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するアスファルト舗装道路の補修方法では、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合することによって形成された補修材が、アスファルト舗装道路における積層された複数の層の境界部分に向けて流し込まれる。
【0013】
この方法によれば、複数層の境界部分に向けて流し込まれた補修材が、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙に入り込む。そして、その補修材を構成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、アスファルト舗装道路における基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙が補修されるとともに、その補修された部分に耐水性が持たされる。上記補修材はゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合することによって形成されているため、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙に入り込んだ上記補修材からは、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応を通じて速やかに水分が除かれる。このため、分解剤を流し込んで補修材からの水分の揮発を促進する必要はなく、同分解剤を流し込む工程の実行に手間がかかるということもない。
【0014】
上記アスファルト舗装道路の補修方法において、上記複数の層が下から上に向けて順に積層されている下層、基層、表層を備えている場合、上記補修材を複数の層の境界部分に向けて次のように流し込むことが考えられる。すなわち、表層側から下層側に向けて穴を形成し、その穴を介して補修材を下層と基層との境界部分、もしくは基層と表層との境界部分に注入することにより、上記補修材が上記境界部分に向けて流し込まれる。
【0015】
この方法によれば、基層及び表層が水密性を有するものであったとしても、下層と基層との境界部分、もしくは基層と表層との境界部分に向けて補修材を流し込むことができる。そして、上記補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙を補修することができ、その補修された部分に耐水性を持たせることができる。
【0016】
上記アスファルト舗装道路の補修方法において、上記複数の層が下から上に向けて順に積層されている下層、基層、表層を備えており、上記表層が排水性を有するものである場合、上記補修材を複数の層の境界部分に向けて次のように流し込むことが考えられる。すなわち、表層の上から補修材を散布することにより、同補修材が基層と表層との境界部分に向けて流し込まれる。
【0017】
この方法によれば、表層の上から散布された補修材が、基層と表層との境界部分に向けて流し込まれる。そして、上記補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、基層及び表層におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分に生じた空隙が補修され、その補修された部分に耐水性が持たされる。この場合、表層の表面に補修材が固化した皮膜(アスファルト皮膜)が形成されるが、同補修材にはセメントグラウトが含まれている関係から、上記被膜によって表層の表面のすべり抵抗が過度に小さくなることは抑制される。このため、表層の表面のすべり抵抗を大きくするために同表面をブラッシングする必要はなく、そのブラッシングの実行に手間がかかるということもない。
【0018】
なお、上記補修材を形成するためのゴムアスファルトエマルジョンの粘度は350~650mPa・sとされているものとすることが考えられる。
また、上記補修材を形成するためのセメントグラウトはセメントと水とを混合することによって形成されており、その混合の際のセメントの質量に対する水の質量の比率が90~110%とされているものとすることが考えられる。
【0019】
更に、上記補修材を形成するためにゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合する際、セメントグラウトの質量に対するゴムアスファルトエマルジョンの質量の比率が400~500%とされているものとすることが考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補修の際に手間がかかることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】アスファルト舗装道路を示す断面図。
図2】アスファルト舗装道路を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、アスファルト舗装道路の補修方法の第1実施形態について、図1を参照して説明する。
【0023】
図1は、道路橋上のアスファルト舗装道路の断面を示している。このアスファルト道路においては、コンクリート床版である下層1の上に、防水層2を介して基層3が積層されている。この基層3は、多数の骨材同士をアスファルトによって結合したアスファルト混合物によって形成されている。そして、基層3を形成するアスファルト混合物には、下層1側に雨水等が浸透しないよう水密性が持たされている。また、基層3の上には、アスファルト混合物によって形成された表層4が積層されている。そして、表層4を形成するアスファルト混合物には、雨水等が表層4の表面に溜まることがないよう排水性が持たされている。
【0024】
アスファルト舗装道路においては、降雨等によって表層4や基層3に水が浸透して滞留したり、複数の層の境界部分に水が滞留したりすることがあるが、そのようにして滞留した水がアスファルト舗装道路の劣化を早めるおそれがある。こうしたアスファルト舗装道路の劣化は、基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙、並びに、複数の層の境界部分に生じる空隙というかたちで生じる。そして、アスファルト舗装道路の劣化が進むと、車線規制や通行止めを伴う大規模な修繕工事が必要となり、そうした修繕工事による社会損失も大きなものとなる。このため、アスファルト舗装道路では、上述した劣化の予防を目的とした補修を行うことが考えられる。
【0025】
次に、アスファルト舗装道路の上記補修を行うための補修方法について説明する。
アスファルト舗装道路の補修には、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを攪拌機で混合することによって形成された補修材が用いられる。
【0026】
上記ゴムアスファルトエマルジョンとしては、例えば次のようなものを用いることが考えられる。すなわち、固形成分の含有率55%以上、密度約1.0gcm3 、粘度350~650mPa・s、PH5~8であり、エマルジョンのイオン性をカチオンとしたゴムアスファルトエマルジョンを用いる。なお、ゴムアスファルトエマルジョンの粘度に関しては、400~600mPa・sとすることが好ましく、450~550mPa・sとすることがより好ましい。
【0027】
上記セメントグラウトは、攪拌機を用いて水とセメントとを練り混ぜることによって形成される。セメントグラウトの形成に用いられるセメントとしては、例えばポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント等)や、混合セメント(例えば高炉セメント)を用いることが考えられる。また、特殊なセメントに分類されるセメント系固化材や超速硬セメント等を用いることも可能である。なお、セメントグラウトの形成に用いられるセメントとしては、上述した各セメントのうちのいずれかを用いるだけでなく、それらセメントを混合して用いることも考えられる。
【0028】
上記セメントグラウトにおける水とセメントとの混合比(質量比)については、セメントに対する水の比率を90~110%とすることが考えられるが、95~105%とすることが好ましく、100%とすることがより好ましい。また、上記補修材におけるゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの混合比(質量比)については、セメントグラウトに対するゴムアスファルトエマルジョンの比率を400~500%とすることが考えられるが、この例では450%とされている。ちなみに、上記比率を変更することにより、補修材から水分を除いて固化させた後(硬化後)の同補修材の性質を変えることができる。詳しくは、補修材に含まれるセメントグラウトの割合を多くすれば硬化後の補修材の剛性が高くなる一方、補修材に含まれるゴムアスファルトエマルジョンの割合を多くすれば硬化後の補修材のたわみ性が向上する。
【0029】
上述したように形成された補修材は、アスファルト舗装道路における積層された複数の層の境界部分に向けて流し込まれる。詳しくは、表層4の上から補修材を図1に矢印で示すように散布することにより、同補修材が基層3と表層4との境界部分に向けて流し込まれる。なお、このときの補修材の使用量V(単位はリットル)、すなわち水平方向についての補修面積1m2 (平方メートル)当たりの容量は、表層4の空隙率P(単位はパーセント)を用いて次の式「V≧a・P…(1)」を用いて決定されている。また、式(1)で用いられる係数aは、空隙率Pを使用量Vに変換するためのものであり、例えば次の式「0.11≦a≦0.15…(2)」を満たす値とされる。なお、式(1)の空隙率Pとしては、表層4を形成する際の空隙率の設定値を用いてもよいし、表層4からコアを採取して同コアから測定した値を用いてもよい。
【0030】
表層4の上から散布された補修材は、基層3と表層4との境界部分に向けて流し込まれる。このように流し込まれた補修材は、基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分(この例では基層3と表層4との境界部分)に生じた空隙に入り込む。そして、その補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、アスファルト舗装道路における基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙や、基層3と表層4との境界部分に生じた空隙が補修されるとともに、その補修された部分に耐水性が持たされる。また、基層3と表層4との境界部分に生じた空隙が補修材によって補修されることにより、その空隙によって低下していた基層3と表層4との付着性が向上するようになる。更に、基層3に発生しているひび割れ及び空隙が補修材によって閉塞されるため、アスファルト舗装道路における基層3以下の部分に対する防水性が向上し、それによって道路全体の劣化が抑制される。
【0031】
次に、本実施形態におけるアスファルト舗装道路の補修方法の作用効果について説明する。
(1)複数層の境界部分に向けて流し込まれた補修材が、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとを混合することによって形成されている。このため、基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙や、複数の層の境界部分(この例では基層3と表層4との境界部分)に生じた空隙に入り込んだ上記補修材からは、ゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応を通じて速やかに水分が除かれる。このため、補修材を流し込んだ後に分解剤を流し込んで同補修材からの水分の揮発を促進する必要はなく、同分解剤を流し込む工程の実行に手間がかかるということもない。従って、補修の際に手間がかかることを抑制できるようになる。
【0032】
(2)表層4の上から補修材を散布する場合、表層4の表面に補修材が固化した皮膜(アスファルト皮膜)が形成されるが、同補修材にはセメントグラウトが含まれている関係から、上記被膜によって表層4の表面のすべり抵抗が過度に小さくなることは抑制される。このため、表層4の表面のすべり抵抗を大きくするために同表面をブラッシングする必要はなく、そのブラッシングの実行に手間がかかるということもない。従って、補修の際に手間がかかることを抑制できるようになる。
【0033】
(3)補修材におけるゴムアスファルトエマルジョンに対するセメントグラウトの比率を変更することにより、硬化後の同補修材の性質を適宜変えることができる。すなわち、補修材に含まれるセメントグラウトの割合を多くして硬化後の補修材の剛性を高くしたり、補修材に含まれるゴムアスファルトエマルジョンの割合を多くして硬化後の補修材のたわみ性を向上させたりすることができる。従って、補修するアスファルト舗装道路に合わせて補修材の性質を調整することができ、その調整を通じてアスファルト舗装道路の補修後の耐久性をより一層向上させることができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、アスファルト舗装道路の補修方法の第2実施形態について説明する。
図2に示すように、この実施形態では、表層4側から下層1側に向けて穴5を形成し、図2に矢印で示すように、穴5を介して補修材を下層1と基層3との境界部分、もしくは基層3と表層4との境界部分に向けて注入することにより、上記補修材がアスファルト舗装道路における積層された複数の層の境界部分に向けて流し込まれる。なお、この例では、補修材が下層1と基層3との境界部分に流し込まれるとともに、基層3と表層4との境界部分にも流し込まれる。
【0035】
下層1と基層3との境界部分に流し込まれた補修材は、下層1及び基層3におけるひび割れ及び空隙や、下層1と基層3との境界部分に生じた空隙に入り込む。そして、その補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、アスファルト舗装道路における下層1及び基層3におけるひび割れ及び空隙や、下層1と基層3との境界部分に生じた空隙が補修されるとともに、その補修された部分に耐水性が持たされる。
【0036】
このように下層1と基層3との境界部分に生じた空隙が補修材によって補修されることにより、その空隙によって低下していた下層1と基層3との間の防水層2の機能を回復することができる。その結果、アスファルト舗装道路全体の劣化を抑制することができる。
【0037】
一方、基層3と表層4との境界部分に流し込まれた補修材は、基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙や、基層3と表層4との境界部分に生じた空隙に入り込む。そして、その補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンとセメントグラウトとの反応に基づき同補修材から水分が除かれて固化することにより、アスファルト舗装道路における基層3及び表層4におけるひび割れ及び空隙や、基層3と表層4との境界部分に生じた空隙が補修されるとともに、その補修された部分に耐水性が持たされる。
【0038】
このように基層3と表層4との境界部分に生じた空隙が補修材によって補修されることにより、それら空隙によって低下していた基層3と表層4との付着性が向上するようになる。更に、基層3に発生しているひび割れ及び空隙が補修材によって閉塞されるため、アスファルト舗装道路における基層3以下の部分に対する防水性が向上し、それによって道路全体の劣化が抑制されるようになる。
【0039】
本実施形態によれば、第1実施形態における(1)及び(3)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(4)基層3が水密性を有するものであるとしても、その基層3と下層1との境界部分に向けて補修材を流し込むことができる。この補修材により、アスファルト舗装道路における下層1及び基層3におけるひび割れ及び空隙や、下層1と基層3との境界部分に生じた空隙が補修されるとともに、その補修された部分に耐水性を持たせることができる。
【0040】
(5)アスファルト舗装道路において、顕在化した劣化部分に対応して穴5を形成すれば、その穴5を介して上記劣化部分に対しピンポイントで補修材を流し込み、その補修材による補修を施すことができる。
【0041】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・第2実施形態において、表層4を形成するアスファルト混合物には、必ずしも排水性が持たされている必要はなく、水密性が持たされていてもよい。
・補修材を形成するゴムアスファルトエマルジョンの性質(粘度等)については、適宜変更することが可能である。
【0043】
・補修材を形成するセメントグラウトにおいて、水に対するセメントの比率を適宜変更してもよい。
・補修材におけるゴムアスファルトエマルジョンに対するセメントグラウトの比率を適宜変更してもよい。
【0044】
・アスファルト舗装道路を道路橋上ではなく地面の上に形成してもよい。この場合には、路盤がアスファルト舗装道路の下層1となる。
【符号の説明】
【0045】
1…下層、2…防水層、3…基層、4…表層、5…穴。
図1
図2