(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】車両用サイドドアの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20230919BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
B60J5/00 P
(21)【出願番号】P 2019187357
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】大久保 安剛
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077784(JP,A)
【文献】特開2016-141377(JP,A)
【文献】特開2012-106691(JP,A)
【文献】特開2009-173079(JP,A)
【文献】特開2017-149406(JP,A)
【文献】特開平06-320955(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166038(US,A1)
【文献】特開昭59-070223(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008005286(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00- 5/12
B62D 17/00-67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成されるインナパネル本体と、前記インナパネル本体に取り付けられ、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ本体とを含む車両用サイドドアの製造方法であって、
前記インナパネル本体を含む第1の部品を加熱する第1の加熱工程と、
前記サッシュ本体を含む第2の部品を加熱する第2の加熱工程と、
前記第1の加熱工程及び前記第2の加熱工程の後、前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する接合工程と、
を含み、
前記サッシュ本体は、車両前後方向において前記サッシュ本体の前側部分を構成する前側フレーム本体と、前記車両前後方向において前記サッシュ本体の後側部分を構成する後側フレーム本体と、を含み、
前記接合工程において、前記前側フレーム本体の一方の端部である下端部と前記後側フレーム本体の一方の端部である下端部が車両用サイドドアのウエストラインよりも下方に位置するように前記第1の部品と前記第2の部品とを接合
し、
前記第2の部品は、前記前側フレーム本体の一方の端部と前記後側フレーム本体の一方の端部とに接合された補強部材本体をさらに含み、
前記補強部材本体は、前記第1の材料により構成され、
前記第2の加熱工程は、前記前側フレーム本体の他方の端部と前記後側フレーム本体の他方の端部とが前記第2の加熱工程において互いに相対変位することを許容するように、前記前側フレーム本体の前記他方の端部と前記後側フレーム本体の前記他方の端部とが仮止めされた状態で行われる、車両用サイドドアの製造方法。
【請求項2】
第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成されるインナパネル本体と、前記インナパネル本体に取り付けられ、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ本体とを含む車両用サイドドアの製造方法であって、
前記インナパネル本体を含む第1の部品を加熱する第1の加熱工程と、
前記サッシュ本体を含む第2の部品を加熱する第2の加熱工程と、
前記第1の加熱工程及び前記第2の加熱工程の後、前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する接合工程と、
を含み、
前記サッシュ本体は、車両前後方向において前記サッシュ本体の前側部分を構成する前側フレーム本体と、前記車両前後方向において前記サッシュ本体の後側部分を構成する後側フレーム本体と、を含み、
前記接合工程において、前記前側フレーム本体の一方の端部である下端部と前記後側フレーム本体の一方の端部である下端部が車両用サイドドアのウエストラインよりも下方に位置するように前記第1の部品と前記第2の部品とを接合し、
前記第1の部品は、前記インナパネル本体に接合された補強部材本体をさらに含み、
前記補強部材本体は、前記第1の材料により構成される
、車両用サイドドアの製造方法。
【請求項3】
第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成されるインナパネル本体と、前記インナパネル本体に取り付けられ、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ本体とを含む車両用サイドドアの製造方法であって、
前記インナパネル本体を含む第1の部品を加熱する第1の加熱工程と、
前記サッシュ本体を含む第2の部品を加熱する第2の加熱工程と、
前記第1の加熱工程及び前記第2の加熱工程の後、前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する接合工程と、
を含み、
前記サッシュ本体は、車両前後方向において前記サッシュ本体の前側部分を構成する前側フレーム本体と、前記車両前後方向において前記サッシュ本体の後側部分を構成する後側フレーム本体と、を含み、
前記接合工程において、前記前側フレーム本体の一方の端部である下端部と前記後側フレーム本体の一方の端部である下端部が車両用サイドドアのウエストラインよりも下方に位置するように前記第1の部品と前記第2の部品とを接合し、
前記第2の材料の弾性係数は、前記第1の材料の弾性係数より大きい
、車両用サイドドアの製造方法。
【請求項4】
前記インナパネル本体の表面に第1の塗膜を形成する第1の塗膜形成工程と、
前記サッシュ本体の表面に第2の塗膜を形成する第2の塗膜形成工程と、をさらに含み、
前記第1の加熱工程は、前記第1の塗膜形成工程の後に行われ、
前記第2の加熱工程は、前記第2の塗膜形成工程の後に行われる、
請求項1
~3の何れか1項に記載の車両用サイドドアの製造方法。
【請求項5】
前記第1の材料は、アルミニウム合金であり、
前記第2の材料は、鋼である、
請求項
3に記載の車両用サイドドアの製造方法。
【請求項6】
前記第2の部品は、前記前側フレーム本体の一方の端部と前記後側フレーム本体の一方の端部とに接合された補強部材本体をさらに含み、
前記補強部材本体は、前記第2の材料により構成される、
請求項3に記載の車両用サイドドアの製造方法。
【請求項7】
前記接合工程は、前記第1の部品と前記第2の部品との間に接着剤を介在させることを含む、
請求項1~
6の何れか1項に記載の車両用サイドドアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアの製造方法及び車両用サイドドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱膨張率が異なる複数の材料を用いて形成された車両用ドアにおいてドアアウタパネルに生じる歪を抑制することを目的とする車両用ドア構造を開示している。当該車両用ドア構造は、ドアアウタパネルと、前記ドアアウタパネルと接合されるドアインナパネルと、フレーム部と、を備える。前記フレーム部は、前記ドアインナパネルの熱膨張率と異なる熱膨張率の材料を用いて形成されている。
【0003】
この特許文献1の段落0009は、ドアインナパネルに設けられた第1被接合部及び第2被接合部が、車両外側から見てドアアウタパネルの車両上方側の端よりも車両上方側に突出されていることにより、ドアインナパネルにおいてドアアウタパネルと対向している部位の膨張又は収縮が、フレーム部によって制限されることが抑制されること、その結果、ドアインナパネルにおいてドアアウタパネルと対向している部位が当該ドアアウタパネルに追従して膨張又は収縮することが可能となること、ひいては、車両用ドアの温度変化に伴うドアアウタパネルの歪を抑制することができること、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用ドア構造では、前記インナパネルの熱膨張率(線膨張係数)と前記フレーム部の熱膨張率(線膨張係数)とが互いに異なるので、例えば車両用ドアの製造工程において当該車両用ドアが加熱され、その後冷却されると、前記インナパネル及び前記フレーム部が互いに異なる割合で膨張し、その後収縮する。当該車両用ドア構造では、連続する1本の前記フレーム部における前後一対の下端部がインナパネルの前端部と後端部に接合されている。従って、前記インナパネル及び前記フレームの一方の部材は他方の部材の膨張及び収縮を制限するように当該他方の部材を拘束する。具体的には、前記車両用ドアが加熱されると、前記インナパネル及び前記フレーム部のうち、線膨張係数の小さい方の部材は、線膨張係数の大きい方の部材の膨張を制限する。特に、前記インナパネルと前記フレーム部との接合部位及びその周辺部における膨張は、他の部位に比べてより制限される。従って、前記インナパネル及び前記フレーム部のそれぞれの部材において、前記接合部位に近い領域における加熱時の膨張度合いと、前記接合部位から遠い領域における加熱時の膨張度合いとの間に差が生じる。このことは、前記インナパネル(ドアパネル)及び前記フレーム部(サッシュ)において残留変形が生じる原因となる。
【0006】
本発明の目的は、サッシュを構成する材料とドアパネルを構成する材料の線膨張係数が互いに異なっていても、加熱工程を含む製造工程において前記サッシュ及び前記ドアパネルに残留変形が生じることを抑制できる車両用サイドドアの製造方法及び車両用サイドドアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供されるのは、第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成されるドアパネル本体と、前記ドアパネル本体に取り付けられ、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ本体とを含む車両用サイドドアの製造方法であって、前記ドアパネル本体を含む第1の部品を加熱する第1の加熱工程と、前記サッシュ本体を含む第2の部品を加熱する第2の加熱工程と、前記第1の加熱工程及び前記第2の加熱工程の後、前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する接合工程と、を含む。
【0008】
この製造方法において、前記接合工程よりも前の段階では、前記サッシュ本体は、前記ドアパネル本体の膨張及び収縮を制限せず、前記ドアパネル本体を拘束していない。同様に、前記接合工程よりも前の段階では、前記ドアパネル本体は、前記サッシュ本体の膨張及び収縮を制限せず、前記サッシュ本体を拘束していない。従って、前記第1の加熱工程では、前記ドアパネル本体は、比較的自由に膨張及び収縮することが許容され、前記第2の加熱工程では、前記サッシュ本体は、比較的自由に膨張及び収縮することが許容される。そして、前記第1の加熱工程及び前記第2の加熱工程の後、前記第1の部品と前記第2の部品とが接合される。よって、前記車両用サイドドアの製造方法では、前記サッシュ本体を構成する材料と前記ドアパネル本体を構成する材料の線膨張係数が互いに異なっていても、加熱工程を含む製造工程において前記サッシュ本体及び前記ドアパネル本体に残留変形が生じることを抑制できる。
【0009】
具体的に、前記車両用サイドドアの製造方法は、例えば、前記ドアパネル本体の表面に第1の塗膜を形成する第1の塗膜形成工程と、前記サッシュ本体の表面に第2の塗膜を形成する第2の塗膜形成工程と、をさらに含み、前記第1の加熱工程は、前記第1の塗膜形成工程の後に行われ、前記第2の加熱工程は、前記第2の塗膜形成工程の後に行われるものであってもよい。
【0010】
この態様において、前記第1の加熱工程は、前記第1の塗膜形成工程の後に行われる焼き付け乾燥工程、加熱硬化工程などの加熱工程であり、前記第2の加熱工程は、前記第2の塗膜形成工程の後に行われる焼き付け乾燥工程、加熱硬化工程などの加熱工程である。
【0011】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記サッシュ本体は、車両前後方向において前記サッシュ本体の前側部分を構成する前側フレーム本体と、前記車両前後方向において前記サッシュ本体の後側部分を構成する後側フレーム本体と、を含み、前記第2の部品は、前記前側フレーム本体の一方の端部と前記後側フレーム本体の一方の端部とに接合された補強部材本体をさらに含んでいてもよい。
【0012】
前記第2の部品が前記補強部材本体を含む場合、前記補強部材本体は、前記第2の材料により構成されていてもよい。
【0013】
この態様では、前記補強部材を構成する材料が前記サッシュ本体を構成する材料と同じ前記第2の材料であるので、互いに接合された前記サッシュ本体及び前記補強部材本体を含む前記第2の部品が加熱される前記第2の加熱工程において、前記サッシュ本体及び前記補強部材本体に残留変形が生じることが抑制される。
【0014】
また、前記第2の部品が前記補強部材本体を含む場合、前記補強部材本体は、前記第1の材料により構成され、前記第2の加熱工程は、前記前側フレーム本体の他方の端部と前記後側フレーム本体の他方の端部とが前記第2の加熱工程において互いに相対変位することを許容するように、前記前側フレーム本体の前記他方の端部と前記後側フレーム本体の前記他方の端部とが仮止めされた状態で行われてもよい。
【0015】
この態様では、前記前側フレーム本体の前記他方の端部と前記後側フレーム本体の前記他方の端部とが仮止めされた状態で前記第2の加熱工程が行われるので、当該第2の加熱工程において、前記他方の端部同士が互いに相対変位することが許容される。従って、前記補強部材本体を構成する材料が前記サッシュ本体を構成する前記第2の材料とは異なる前記第1の材料であっても、前記サッシュ本体及び前記補強部材本体に残留変形が生じることが抑制される。
【0016】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記第1の部品は、前記ドアパネル本体に接合された補強部材本体をさらに含み、前記補強部材本体は、前記第1の材料により構成されていてもよい。
【0017】
この態様では、前記補強部材本体を構成する材料が前記ドアパネル本体を構成する材料と同じ前記第1の材料であるので、互いに接合された前記ドアパネル本体及び前記補強部材本体を含む前記第1の部品が加熱される前記第1の加熱工程において、前記ドアパネル本体及び前記補強部材本体に残留変形が生じることが抑制される。
【0018】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記第2の材料の弾性係数は、前記第1の材料の弾性係数より大きいことが好ましい。
【0019】
この態様は、上記した残留変形の抑制効果に加え、高速走行時におけるサッシュからの風切り音の発生を抑制することを可能にする。具体的には次の通りである。自動車等の車両が走行する際、サイドドアのウィンドウガラス面に作用する負圧によりサッシュが車幅方向外側に吸い寄せられて僅かにたわみ変形することがある。特に車両の走行速度が速くなると、車体に対する車幅方向外側へのサッシュのたわみ変形量も大きくなる。通常、サイドドアと車体とはゴム製のシール部品などを介して密閉されているが、前記たわみ変形量が大きくなるとサイドドアと車体との間に隙間が形成され、これにより、風切り音が発生する。本態様では、前記前側フレーム及び前記後側フレームを構成する前記第2の材料の弾性係数が前記ドアパネル本体を構成する前記第1の材料の弾性係数よりも大きい。このことは、前記サッシュに剛性を付与して前記風切り音の発生を抑制することを可能にする。また、前記サッシュに剛性が付与されることは、当該サッシュの断面サイズの増加を抑制して乗員の視界を確保することを可能にする。
【0020】
前記車両用サイドドアの製造方法において、上記のような材料の組み合わせの具体例として、前記第1の材料は、アルミニウム合金であり、前記第2の材料は、鋼であるという態様を挙げることができる。
【0021】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記接合工程は、前記第1の部品と前記第2の部品との間に接着剤を介在させることを含むことが好ましい。
【0022】
この態様では、前記第1の部品と前記第2の部品との接合部位では、前記接着剤による接合方法と、当該接着剤とは別の接着方法とが併用される。前記接合部位が前記別の接合方法により接合されるとともに前記接着剤により接合されるので、前記別の接合方法のみが用いられる場合と比べて、前記サッシュ本体を含む前記第2の部品が前記ドアパネル本体を含む前記第1の部品に対してより強固に固定される。これにより、前記サッシュ本体が前記ドアパネル本体により強く拘束され、その結果、前記サッシュ本体の剛性が向上する。しかも、前記第1の部品と前記第2の部品との間に前記接着剤が介在するので、前記ドアパネル本体と前記サッシュ本体とが互いに異種の金属により構成される場合であっても、異種金属間におけるガルバニック腐食(電食)の発生が抑制される。なお、前記別の接合方法はサイドドアに要求される接合特性を満たすものであれば特に限定されない。当該別の接合方法の具体例として、溶接による接合方法、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法などを挙げることができる。
【0023】
また、提供される車両用サイドドアは、第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成されるドアパネル本体を含む第1の部品と、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ本体を含み、前記第1の部品に接合された接合部を有する第2の部品と、を備え、前記第1の部品は、少なくとも前記ドアパネル本体の表面に形成された第1の塗膜を有し、前記第2の部品は、少なくとも前記サッシュ本体の表面に形成された第2の塗膜を有し、前記接合部において、前記ドアパネル本体と前記サッシュ本体との間には、前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜が介在している。
【0024】
この車両用サイドドアは、上述の車両用サイドドアの製造方法により製造することができる。従って、この車両用サイドドアでは、前記サッシュ本体を構成する材料と前記ドアパネル本体を構成する材料の線膨張係数が互いに異なっていても、前記サッシュ本体及び前記ドアパネル本体における残留変形が抑制される。また、この車両用サイドドアでは、前記接合部において前記ドアパネル本体と前記サッシュ本体との間に前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜が介在するので、前記ドアパネル本体と前記サッシュ本体とが互いに異種の金属により構成される場合であっても、異種金属間における電食の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、サッシュ本体を構成する材料とドアパネル本体を構成する材料の線膨張係数が互いに異なっていても、加熱工程を含む製造工程において前記サッシュ本体及び前記ドアパネル本体に残留変形が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法を用いて製造される車両用サイドドアを示す側面図である。
【
図3】前記前側フレーム及び前記後側フレームの変形例を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【
図5】
図4の(B-1)のV-V線における断面図、及び
図4の(B-2)のV-V線における断面図である。
【
図6】
図4の(C-1)のVI-VI線における断面図、及び
図4の(C-2)のVI-VI線における断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法を用いて製造される車両用サイドドアを示す側面図である。
【
図8】
図7の一点鎖線VIIIが囲む部位を拡大した側面図である。
【
図9】(A)は、
図8のIX-IX線における断面図である。(B)及び(C)のそれぞれは、前側フレームの上端部(他端部)と後側フレームの上端部(他端部)が互いに相対変位した状態を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【
図12】第1の実施形態の変形例に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法及びこれにより製造される車両用サイドドアについて図面を参照しながら説明する。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、前記第1の実施形態に係る製造方法を用いて製造される車両用サイドドア100を示す側面図であり、前記サイドドア100を車両の車幅方向外側から見た図である。
図1に示す前記サイドドア100は、自動車の前側のサイドドア(フロントサイドドア)であるが、前記車両用サイドドアの製造方法を用いて製造されるサイドドアは、自動車の後側のサイドドア(リアサイドドア)であってもよい。
【0029】
図面において適宜示す「前」、「後」、「上」、「下」、「外」及び「内」の文字と矢印は、車両前後方向及び車幅方向を基準とした方向であって、前記サイドドア100が図略の車体のドア開口部を閉じた状態(ドア閉状態)のときの方向を示している。従って、前記「外」の文字と矢印は、車幅方向の外側を示し、前記「内」の文字と矢印は、車幅方向の内側を示している。
【0030】
図1に示すように、前記サイドドア100は、第1の部品101と、第2の部品102と、第3の部品と、を備える。第1の実施形態では、前記第1の部品101は、インナパネル20と、複数のリインフォースメントと、を含む。前記第2の部品102は、ウエスト補強部材40と、サッシュ50とを含む。前記第3の部品は、アウタパネル30を含む。前記第1の部品101、前記第2の部品102及び前記第3の部品は、一体化され、前記サイドドア100を構成する。
【0031】
前記アウタパネル30は、前記サイドドア100の外板を構成する板状の部材である。前記インナパネル20は、前記サイドドア100の内板を構成する板状の部材であり、前記アウタパネル30よりも前記車幅方向内側に配置される。前記インナパネル20は、本発明におけるドアパネルを構成する。前記アウタパネル30は、
図1において二点鎖線によりその輪郭のみが図示されている。前記アウタパネル30は、例えば、前後方向の端部や上下方向の端部がヘミング加工されることにより、前記インナパネル20と結合されている。インナパネル20及びアウタパネル30のそれぞれは、例えば、金属板をプレス成形することにより作製される。
【0032】
前記複数のリインフォースメントは、前記サイドドア100の前部において図略のドアヒンジの周辺部分を補強するための一対のヒンジリインフォースメント121,122と、前記サイドドア100の後部において図略のドアロック装置の周辺部分を補強するためのロックリインフォースメント123と、前記サイドドア100において前記車両前後方向に延びる長尺の部材であるインパクトビーム124と、を含む。前記複数のリインフォースメント121~124は、前記インナパネル20に接合されている。
【0033】
前記ウエスト補強部材40は、本発明における補強部材を構成する。前記ウエスト補強部材40は、前記サイドドア100において前記車両前後方向に延びる長尺の部材であり、前記インパクトビーム124よりも上方に配置されている。具体的に、前記ウエスト補強部材40は、前記インナパネル20の上部においてウエストラインWLに沿って車両前後方向に延びるように配置されるウエストリインフォースメントである。前記ウエスト補強部材40は、前記サイドドア100のウエストラインWLよりも下方において、前記インナパネル20に接合されている。
【0034】
前記サッシュ50は、前記インナパネル20及び前記アウタパネル30の上方において窓ガラスを保持するための窓枠を形成する。前記サッシュ50は、当該サッシュ50の前側部分を構成する前側フレーム60と、当該サッシュ50の後側部分を構成する後側フレーム70と、を含む。前記前側フレーム60は、前記ドア閉状態において、前記インナパネル20の前端部から図略の車体のサイドレールに沿って後方に湾曲しながら上方に延びる部材である。前記後側フレーム70は、前記インナパネル20の後端部から図略の車体のセンターピラーに沿って上方に延びる部材である。前記サッシュ50は、前記インナパネル20に直接的に接続されていてもよいが、本実施形態では、前記ウエスト補強部材40を介して前記インナパネル20に間接的に接続されている。
【0035】
具体的に、前記前側フレーム60の一方の端部である下端部61は、前記ウエスト補強部材40の長手方向の一方の端部である前端部41に接合され、前記ウエスト補強部材40の前記前端部41は、前記インナパネル20の上部における前側の端部であるパネル前端部21に接合されている。前記後側フレーム70の一方の端部である下端部71は、前記ウエスト補強部材40の長手方向の他方の端部である後端部42に接合され、前記ウエスト補強部材40の前記後端部42は、前記インナパネル20の上部における後側の端部であるパネル後端部22に接合されている。前記前側フレーム60の他方の端部である上端部62は、前記後側フレーム70の他方の端部である上端部72に接続されている。
【0036】
図2は、
図1のII-II線における断面図である。この
図2では、前記インナパネル20、前記ウエスト補強部材40及び前記サッシュ50のうち、前側の領域及び後側の領域のみが図示され、これらの間の領域の図示は省略されている。
【0037】
図2に示すように、前記インナパネル20は、アルミニウム合金により構成されるインナパネル本体20Aと、前記インナパネル本体20Aの表面に形成された塗膜20Bと、を有する。
【0038】
前記ウエスト補強部材40は、鋼により構成される補強部材本体40Aと、前記補強部材本体40Aの表面に形成された塗膜40Bと、を有する。
【0039】
前記サッシュ50の前記前側フレーム60は、鋼により構成される前側フレーム本体60Aと、前記前側フレーム本体60Aの表面に形成された塗膜60Bと、を有する。同様に、前記サッシュ50の前記後側フレーム70は、鋼により構成される後側フレーム本体70Aと、前記後側フレーム本体70Aの表面に形成された塗膜70Bと、を有する。
【0040】
前記アルミニウム合金は、第1の線膨張係数を有する第1の材料の一例である。当該アルミニウム合金としては、例えば5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金、7000系アルミニウム合金などが用いられる。前記鋼は、第2の線膨張係数を有する第2の材料の一例である。前記インナパネル20の前記塗膜20Bは、第1の塗膜の一例である。前記ウエスト補強部材40の前記塗膜40B、前記前側フレーム60の前記塗膜60B及び前記後側フレーム70の前記塗膜70Bのそれぞれは、第2の塗膜の一例である。前記インナパネル本体20Aは、ドアパネル本体の一例である。前記前側フレーム本体60A及び後側フレーム本体70Aは、サッシュ本体の一例である。
【0041】
なお、前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aのそれぞれは、アルミニウムめっき鋼板を用いて成形されたものであってもよい。また、前記アウタパネル30は、アルミニウム合金(第1の材料)により構成されている。前記複数のリインフォースメント121~124は、アルミニウム合金(第1の材料)により構成されている。
【0042】
前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70を構成する鋼の弾性係数は、前記インナパネル20を構成する前記アルミニウム合金の弾性係数よりも大きい。
【0043】
前記第2の部品102を構成する前記ウエスト補強部材40及び前記サッシュ50は、前記第1の部品101を構成する前記インナパネル20に対して、1つ又は複数の箇所において、接着剤90により形成された接着層91によって接合されている。また、必須ではないが、本実施形態では、さらに、前記ウエスト補強部材40及び前記サッシュ50は、前記インナパネル20に対して、当該接着剤90による接合方法とは別の接合方法により形成された1つ又は複数の接合部92において接合されている。前記接合部92を形成するための前記別の接合方法としては、例えば、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法などを挙げることができる。なお、
図2に示す具体例では、前記接着層91と前記接合部92とが同じ位置に形成されているが、前記接着層91と前記接合部92とは異なる位置に形成されていてもよい。
【0044】
前記サッシュ50の前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、前記ウエスト補強部材40に対して、例えば、溶接による接合方法、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法、接着剤による接合方法などにより接合されている。
【0045】
図2に示すように、前記接合部92において、前記インナパネル本体20Aと、前記補強部材本体40A及び前記前側フレーム本体60Aとの間には、前記インナパネル20の前記塗膜20B(第1の塗膜の一例)及び前記ウエスト補強部材40の前記塗膜40B(第2の塗膜の一例)が介在している。なお、本実施形態では、前記接合部92に対応する領域だけでなく、前記補強部材本体40Aの全体に対応する領域において、前記インナパネル本体20Aと、前記補強部材本体40A及び前記前側フレーム本体60Aとの間に前記塗膜20B及び前記塗膜40Bが介在していることが好ましい。
【0046】
図2に示すように、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、例えば、剛性に優れた閉断面構造と、窓ガラスの縁を収容するための図略の溝部を形成するチャネル断面構造と、を有する。
図2においては、前記チャネル断面構造の図示は省略されている。
図2に示すように、前記前側フレーム60における前記閉断面構造は、車幅方向内側に位置するインナー部分601と、車幅方向外側に位置するアウター部分602とにより形成されている。同様に、前記後側フレーム70における前記閉断面構造は、車幅方向内側に位置するインナー部分701と、車幅方向外側に位置するアウター部分702とにより形成されている。前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、例えば金属板をロール成形することにより作製されるが、ロール成形以外の方法、例えばプレス成形することにより作製されたものであってもよい。前記プレス成形が用いられる場合には、例えば
図3の断面図に示すように、前記前側フレーム60のインナー部分601と、前記前側フレーム60のアウター部分602とは、前記プレス成形により個別に成形された後、例えば溶接などの接合方法を用いて互いに接合される。前記プレス成形が用いられる場合の前記後側フレーム70の作製方法についても同様である。
【0047】
[サイドドアの製造方法]
図4は、第1の実施形態に係る車両用サイドドア100の製造方法の工程を示す図である。
図5は、
図4の(B-1)のV-V線における断面図、及び
図4の(B-2)のV-V線における断面図である。
図6は、
図4の(C-1)のVI-VI線における断面図、及び
図4の(C-2)のVI-VI線における断面図である。
【0048】
第1の実施形態に係る製造方法は、第1の準備工程(A-1)と、第2の準備工程(A-2)と、第3の準備工程と、第1の組立工程(B-1)と、第2の組立工程(B-2)と、第3の組立工程と、第1の塗膜形成工程(C-1)及び第1の加熱工程(C-1)と、第2の塗膜形成工程(C-2)及び第2の加熱工程(C-2)と、第3の塗膜形成工程及び第3の加熱工程と、接合工程(D)と、を備える。
【0049】
前記第1の準備工程(A-1)は、前記第1の部品101を構成する複数の部材を準備する工程である。具体的に、第1の実施形態では、前記第1の準備工程(A-1)は、前記インナパネル20の前記インナパネル本体20Aと、前記複数のリインフォースメント121~124と、を準備する工程である。
【0050】
前記第2の準備工程(A-2)は、前記第2の部品102を構成する複数の部材を準備する工程である。具体的に、第1の実施形態では、前記第2の準備工程(A-2)は、前記ウエスト補強部材40の補強部材本体40Aと、前記前側フレーム60の前記前側フレーム本体60Aと、前記後側フレーム70の前記後側フレーム本体70Aと、を準備する工程である。
【0051】
前記第3の準備工程は、前記第3の部品を構成する1つ又は複数の部材を準備する工程である。具体的に、第1の実施形態では、前記第3の準備工程は、前記アウタパネル30のアウタパネル本体及びそれに付属する部材を準備する工程である。
図4では、前記第3の準備工程の図示は省略されている。
【0052】
前記第1の組立工程(B-1)は、前記第1の部品101を構成する複数の部材を互いに接合する工程である。具体的に、第1の実施形態では、前記第1の組立工程(B-1)は、前記複数のリインフォースメント121~124を、例えば溶接、リベット、ボルト、接着剤などによって前記インナパネル20の前記インナパネル本体20Aに接合する。
【0053】
前記第2の組立工程(B-2)は、前記第2の部品102を構成する複数の部材を互いに接合する工程である。具体的に、第1の実施形態では、
図4及び
図5に示すように、前記第2の組立工程(B-2)は、前記前側フレーム本体60Aの下端部61及び前記後側フレーム本体70Aの下端部71のそれぞれを、接合部93において、例えば溶接による接合方法、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法、接着剤による接合方法などによって前記ウエスト補強部材40の補強部材本体40Aに接合する。
【0054】
前記第3の組立工程は、前記第3の部品が複数の部材から構成される場合に、当該複数の部材を互いに接合する工程である。
【0055】
前記第1の塗膜形成工程(C-1)は、前記第1の組立工程(B-1)において互いに接合された複数の部材の表面に第1の塗膜を形成する工程である。具体的に、第1の実施形態では、
図4及び
図6に示すように、前記第1の塗膜形成工程(C-1)は、前記インナパネル本体20Aを含む前記複数の部材の表面に塗膜20Bを形成する工程である。
【0056】
前記第1の加熱工程(C-1)は、前記第1の塗膜形成工程の後に行われる工程であり、前記インナパネル本体20Aを含む前記複数の部材及び前記塗膜20Bにより構成される前記第1の部品101を加熱する工程である。
【0057】
前記第2の塗膜形成工程(C-2)は、前記第2の組立工程(B-2)において互いに接合された複数の部材の表面に第2の塗膜を形成する工程である。具体的に、第1の実施形態では、
図4及び
図6に示すように、前記第2の塗膜形成工程(C-2)は、補強部材本体40Aの表面に塗膜40Bを形成するとともに前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aの表面に塗膜60B及び塗膜70Bを形成する工程である。
【0058】
前記第2の加熱工程(C-2)は、前記第2の塗膜形成工程の後に行われる工程であり、前記補強部材本体40A及び前記塗膜40Bと、前記前側フレーム本体60A及び前記塗膜60Bと、前記後側フレーム本体70A及び前記塗膜70Bとにより構成される前記第2の部品102を加熱する工程である。
【0059】
前記第3の塗膜形成工程は、前記第3の組立工程において互いに接合された複数の部材の表面に塗膜を形成する工程である。
【0060】
前記第3の加熱工程は、前記第3の塗膜形成工程の後に行われる工程であり、前記アウタパネル本体を含む前記複数の部材及び前記塗膜により構成される前記第3の部品を加熱する工程である。
【0061】
前記第1~第3の塗膜形成工程のそれぞれにおいて用いられる塗装の種類は、特に限定されるものではない。当該塗装としては、例えば、前記インナパネル本体20A、前記補強部材本体40A、前記前側フレーム本体60A、前記後側フレーム本体70A、前記アウタパネル本体などの金属部材の防錆性能を向上させることができる防錆塗装が採用される。前記防錆塗装では、例えば、カチオン塗装などの電着塗装により前記金属部材に前記塗膜が形成される。前記電着塗装の場合、前記第1~第3の加熱工程において、前記金属部材は、例えば160~200℃程度の焼き付け温度で焼き付け乾燥される。
【0062】
前記接合工程(D)は、前記第1の加熱工程(C-1)、前記第2の加熱工程(C-2)及び前記第3の加熱工程の後に行われる工程であり、前記第1の部品101と前記第2の部品102と前記第3の部品とを接合する工程である。具体的に、第1の実施形態では、
図2に示すように、前記ウエスト補強部材40は、前記インナパネル20に対して、複数の接合部92において、例えば、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法などの接合方法によって接合される。前記アウタパネル30は、例えば、前後方向の端部や上下方向の端部がヘミング加工されることにより、前記インナパネル20と接合される。
【0063】
前記接合工程(D)は、前記第1の部品101と前記第2の部品102との間に接着剤90を介在させる工程を含む。前記接着剤90としては、例えば、常温で硬化するタイプの接着剤が用いられる。なお、第1の実施形態では、
図2に示すように、前記第1の部品101の前記インナパネル本体20Aと、前記第2の部品102の前記補強部材本体40A、前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aとの間に前記塗膜20B,40Bが形成されており、異種金属間における電食が抑制される。従って、前記接合工程(D)では、前記接着剤90を介在させる工程は省略可能である。
【0064】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法を用いて製造される車両用サイドドア100を示す側面図である。
図8は、
図7の一点鎖線VIIIが囲む部位を拡大した側面図である。
図9(A)は、
図8のIX-IX線における断面図である。
図9(B)及び
図9(C)のそれぞれは、前記前側フレーム本体60Aの上端部62と前記後側フレーム本体70Aの上端部72が互いに相対変位した状態を示す断面図である。
図10は、第2の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【0065】
第2の実施形態は、次の点で第1の実施形態と相違する。
【0066】
第2の実施形態では、前記補強部材本体40A及び前記インナパネル本体20Aが前記アルミニウム合金(第1の材料の一例)により構成され、前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aが前記鋼(第2の材料の一例)により構成される。すなわち、前記補強部材本体40Aと前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aとは異なる材料により構成される。
【0067】
また、第2の実施形態では、
図10に示す第2の組立工程(B-2)において、前記前側フレーム本体60Aの上端部62と前記後側フレーム本体70Aの上端部72とが前記第2の加熱工程において互いに相対変位することを許容するように、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが仮止めされ、前記上端部62と前記上端部72とが仮止めされた状態で、
図10に示す第2の加熱工程(C-2)が行われる。
【0068】
また、第2の実施形態では、
図10に示す接合工程(D)において、前記前側フレーム本体60Aの上端部62と前記後側フレーム本体70Aの上端部72とが互いに相対変位しないように、前記上端部62と前記上端部72とが互いに固定される。
【0069】
第2の実施形態におけるその他の構成及び方法は、前記第1の実施形態と同様である。以下、主に上記の相違点について説明し、前記第1の実施形態と同様の構成及び方法の説明は省略する。
【0070】
図10に示すように、第2の実施形態に係る前記第2の組立工程(B-2)では、前記前側フレーム本体60Aの下端部61及び前記後側フレーム本体70Aの下端部71のそれぞれを、
図5に示す接合部93と同様の位置において、接着剤による接合方法によって前記ウエスト補強部材40の補強部材本体40Aに接合する。なお、前記前側フレーム本体60Aの下端部61及び前記後側フレーム本体70Aの下端部71のそれぞれと、前記ウエスト補強部材40の補強部材本体40Aとの接合方法は、本実施形態のように接着剤による接合方法ではなく、例えば、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法であっても良い。
【0071】
また、
図9(A)及び
図10に示すように、第2の実施形態に係る前記第2の組立工程(B-2)は、仮止め工程を含む。前記仮止め工程は、前記第2の加熱工程(C-2)よりも前に行われる工程である。
【0072】
前記仮止め工程は、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とを重ねることと、これらの上端部62,72同士を重ねた状態を保持しながら、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが前記第2の加熱工程(C-2)において互いに相対変位することを許容するように、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とを仮止めすることとを含む。
【0073】
具体的には、
図7、
図8及び
図9(A)に示すように、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72は、互いの相対変位が許容される仮止め状態と、互いの相対変位が規制される固定状態と、が切り換え可能に構成される。これらの上端部62,72同士は、ボルト81及びナット82により、仮止め又は固定される。前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62は挿通孔84を有し、前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72は挿通孔83を有し、前記ボルト81がこれらの挿通孔83,84に挿通された状態で前記ボルト81にナット82が螺合される。これにより、前記上端部62,72同士が仮止め又は固定される。前記ボルト81及び前記ナット82は、前記仮止め工程において用いられる仮止め部材80を構成する。
【0074】
図8及び
図9(A)~(C)に示すように、前記後側フレーム70に設けられた前記ボルト挿通孔83は、当該ボルト挿通孔83に挿通された前記ボルト81の軸部81Bが前記ボルト挿通孔83に対して相対変位することを許容する寸法を有する。つまり、前記ボルト挿通孔83は、特定方向の寸法が当該特定方向に直交する方向の寸法よりも大きい長孔である。第2の実施形態では、前記特定方向の寸法は、前記ボルト挿通孔83の車両前後方向の大きさに相当し、当該特定方向に直交する方向の寸法は、前記ボルト挿通孔83の車両の上下方向の大きさに相当する。当該長孔の前記特定方向の寸法は、前記ボルト81の頭部81Aにおける幅(前記軸部81Bの軸方向に直交する方向における前記頭部81Aの大きさ)よりも大きくても良いが、前記ボルト81の頭部81Aにおける幅よりも小さい方がより望ましい。一方、前記長孔の前記特定方向に直交する方向の寸法は、前記ボルト81の頭部81Aにおける幅よりも小さい。頭部81Aの表面は、前記長孔を画定する縁に連続する前記後側フレーム70の表面と前記軸方向に対向する。
【0075】
第2の実施形態では、
図8に示すように、当該長孔の前記特定方向は、略前後方向である。なお、前記後側フレーム本体70Aに設けられた前記ボルト挿通孔83は、長孔に限られず、円形の孔、多角形の孔などのように他の孔形状を有していてもよい。また、前記前側フレーム本体60Aの前記ボルト挿通孔84が長孔であり、前記後側フレーム本体70Aの前記ボルト挿通孔83が前記長孔以外の前記他の孔形状を有していてもよい。また、前記前側フレーム本体60Aの前記ボルト挿通孔84および前記後側フレーム本体70Aの前記ボルト挿通孔83のそれぞれが前記長孔以外の前記他の孔形状を有していてもよい。
【0076】
第2の実施形態では、前記仮止め工程を含む前記第2の組立工程(B-2)が行われた後、
図10に示す第2の塗膜形成工程(C-2)及び第2の加熱工程(C-2)が行われる。第2の実施形態における第2の塗膜形成工程(C-2)は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
第2の実施形態では、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが仮止めされた状態で、
図10に示す第2の加熱工程(C-2)が行われる。すなわち、当該第2の加熱工程(C-2)は、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが固定されていない状態で前記第2の部品102を加熱する工程である。この第2の加熱工程(C-2)では、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが互いに相対変位することが許容される。従って、前記補強部材本体40Aを構成する材料が前記サッシュ本体(前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70A)を構成する材料とは異なっていても、前記サッシュ本体及び前記補強部材本体に残留変形が生じることが抑制される。
【0078】
第2の実施形態では、
図10に示す接合工程(D)は、前記前側フレーム本体60Aの上端部62と前記後側フレーム本体70Aの上端部72とが互いに相対変位しないように、前記上端部62と前記上端部72とを互いに固定する固定工程を含む。
【0079】
前記固定工程は、前記第2の加熱工程(C-2)の後、前記第2の部品102の温度が前記第2の加熱工程(C-2)における温度よりも下がった状態(例えば常温まで下がった状態)で、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とを固定する(接合する)工程である。前記上端部62,72同士は、前記ボルト81及び前記ナット82を用いて固定される。すなわち、前記仮止め工程において用いられる前記仮止め部材80は、前記固定工程において固定部材80(接合部材)としても用いられる。
【0080】
具体的に、前記固定工程では、前記仮止め工程における第1の締め付けトルクよりも大きな第2の締め付けトルクで前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62及び前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72を前記ボルト81によって互いに固定する。前記第1の締め付けトルクは、前記第2の加熱工程(C-2)において、前記前側フレーム本体60Aの前記上端部62と前記後側フレーム本体70Aの前記上端部72とが互いに相対変位することを許容する締め付けトルクである。前記第2の締め付けトルクは、前記上端部62と前記上端部72とが互いに相対変位することを規制する締め付けトルクである。
【0081】
[第3の実施形態]
図11は、第3の実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法の工程を示す図である。
【0082】
第3の実施形態は、次の点で第1の実施形態と相違する。
【0083】
第3の実施形態では、前記補強部材本体40A及び前記インナパネル本体20Aが前記アルミニウム合金(第1の材料の一例)により構成され、前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aが前記鋼(第2の材料の一例)により構成される。すなわち、前記補強部材本体40Aと前記インナパネル本体20Aとは同じ材料により構成される。
【0084】
第3の実施形態では、前記第1の部品101は、インナパネル本体20Aと、前記補強部材本体40Aと、複数のリインフォースメント121~124と、を含む一方で、前記第2の部品102は、前記補強部材本体40Aを含まない。
【0085】
第3の実施形態では、
図11に示す第1の組立工程(B-1)において、前記補強部材本体40Aが前記インナパネル本体20Aに対して接合される一方で、
図11に示す第2の組立工程(B-2)において、前記補強部材本体40Aは、前記前側フレーム本体60A及び前記後側フレーム本体70Aには接合されない。
【0086】
第3の実施形態では、
図11に示す第1の塗膜形成工程(C-1)において、前記第1の組立工程(B-1)において互いに接合されたインナパネル本体20A及び前記補強部材本体40Aを含む複数の部材の表面に第1の塗膜を構成する塗膜20B及び塗膜40Bが形成される。そして、前記第1の加熱工程(C-1)において、前記インナパネル本体20A及び前記補強部材本体40Aと、前記塗膜20B,40Bとを含む第1の部品101が加熱される。
【0087】
第3の実施形態では、
図11に示す接合工程(D)において、前記第1の部品101と前記第2の部品102と前記第3の部品とが接合される。具体的に、第3の実施形態では、前記前側フレーム本体60Aの下端部61及び前記後側フレーム本体70Aの下端部71が、前記補強部材本体40Aの前端部41及び後端部42に対して、例えば、リベットによる接合方法、ボルトによる接合方法などの接合方法によって接合される。
【0088】
また、第3の実施形態では、前記接合工程(D)は、前記第1の部品101と前記第2の部品102との間に接着剤90を介在させる工程を含む。この工程では、前記前側フレーム本体60Aの下端部61及び前記後側フレーム本体70Aの下端部71と、前記補強部材本体40Aの前端部41及び後端部42との間に、前記接着剤90を介在させる。前記接着剤90としては、第1の実施形態と同様に、例えば、常温で硬化するタイプの接着剤が用いられる。なお、第3の実施形態の前記接合工程(D)では、第1の実施形態と同様に、前記接着剤90を介在させる工程は省略可能である。
【0089】
この第3の実施形態では、前記補強部材本体40Aを構成する材料が前記インナパネル本体20Aを構成する材料と同じ前記アルミニウム合金であるので、互いに接合された前記インナパネル本体20A及び前記補強部材本体40Aを含む前記第1の部品101が加熱される前記第1の加熱工程(C-1)において、前記インナパネル本体20A及び前記補強部材本体40Aに残留変形が生じることが抑制される。
【0090】
第3の実施形態におけるその他の構成及び方法は、前記第1の実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0091】
[変形例]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0092】
(A)補強部材について
前記実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法及び前記車両用サイドドア100は、ウエスト補強部材40を備えているが、例えば
図12に示す変形例のように前記補強部材40は省略可能である。
図12に示す変形例では、前記第1の部品101は、インナパネル20を含む一方で、ウエスト補強部材40を含まない。前記第2の部品102は、サッシュ50を含む一方で、ウエスト補強部材40を含まない。
【0093】
(B)ドアパネル本体について
前記実施形態に係る車両用サイドドアの製造方法及び前記車両用サイドドア100では、前記ドアパネル本体が前記インナパネル本体20Aにより構成されるが、前記ドアパネル本体は、前記アウタパネル本体により構成されていてもよい。
【0094】
(C)仮止め工程について
前記第2の実施形態では、前記仮止め工程において前記上端部62,72同士が前記ボルト81及びナット82により仮止めされる場合を例示したが、これに限られない。例えば、前記仮止め工程では、前記上端部62,72同士がこれらを挟み込む狭持部材によって仮止めされてもよい。
【0095】
(D)加熱工程について
前記実施形態では、当該加熱工程は、前記塗膜形成工程の後に行われる焼き付け乾燥工程、加熱硬化工程などの加熱工程であったが、これに限られず、焼き付け乾燥工程、加熱硬化工程以外の他の工程であってもよい。
【0096】
(E)固定工程について
前記第2の実施形態では、前記接合工程(D)に含まれる前記固定工程において前記上端部62,72同士を固定する固定方法(接合方法)は、前記ボルト81及びナット82を用いたものに限定されず、例えば、溶接による固定方法、リベットによる固定方法などであってもよい。
【0097】
(F)インナパネル、サッシュ及びウエスト補強部材の配置について
前記実施形態では、例えば
図1、
図2及び
図7に示すように、前記インナパネル20、前記ウエスト補強部材40及び前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)は、これらの接合部位において、車幅方向にこの順に並ぶように配置されるが、このような配置に限られない。前記インナパネル20、前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)、及び前記ウエスト補強部材40がこれらの接合部位において車幅方向にこの順に並ぶように配置されていてもよい。
【0098】
(G)ウエスト補強部材とサッシュとの接合について
前記実施形態では、例えば
図1、
図2及び
図7に示すように、前記ウエスト補強部材40と前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)とが直接接合されるが、このような態様に限られない。
【0099】
例えば、前記ウエスト補強部材40と前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)とが、他の部材を介して接合(接続)されていてもよい。具体的には、前記サッシュ50の前記前側フレーム60の下端部61が前記他の部材を構成するヒンジリインフォースメントに接合され、このヒンジリインフォースメントに前記ウエスト補強部材40の前端部41が接合される態様を挙げることができる。また、前記サッシュ50の前記後側フレーム70の下端部71が前記他の部材を構成するロックリインフォースメントに接合され、このロックリインフォースメントに前記ウエスト補強部材40の後端部42が接合される態様を挙げることができる。前記他の部材は、前記第1の材料により構成されていてもよく、前記第2の材料により構成されていてもよい。
【0100】
また、前記ウエスト補強部材40、前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)、及び他の部材が、前記車幅方向において重なる位置において接合されていてもよい。具体的に、前記ウエスト補強部材40の前端部41、前記サッシュ50の前記前側フレーム60の下端部61、及び前記他の部材を構成するヒンジリインフォースメントが、前記車幅方向において重なる位置において接合され、前記ウエスト補強部材40の後端部42、前記サッシュ50の前記後側フレーム70の下端部71、及び前記他の部材を構成するロックリインフォースメントが、前記車幅方向において重なる位置において接合される態様を挙げることができる。この場合、前記ウエスト補強部材40、前記サッシュ50(前側フレーム60,後側フレーム70)、及び前記他の部材が前記車幅方向に並ぶ順番は、特に限定されない。前記他の部材は、前記第1の材料により構成されていてもよく、前記第2の材料により構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
20 インナパネル
20A インナパネルのインナパネル本体
20B インナパネルの塗膜
40 ウエスト補強部材
40A ウエスト補強部材の補強部材本体
40B ウエスト補強部材の塗膜
50 サッシュ
60 前側フレーム
60A 前側フレームの前側フレーム本体
60B 前側フレームの塗膜
70 後側フレーム
70A 後側フレームの後側フレーム本体
70B 後側フレームの塗膜
90 接着剤
91 接着層
92 接合部
100 車両用サイドドア
101 第1の部品
102 第2の部品