(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】シールドコネクタ及びコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6581 20110101AFI20230919BHJP
H01R 13/6599 20110101ALI20230919BHJP
H01R 13/6463 20110101ALI20230919BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R13/6599
H01R13/6463
(21)【出願番号】P 2019212135
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】青樹 英二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一栄
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-220813(JP,A)
【文献】特開2000-100525(JP,A)
【文献】特開2014-060073(JP,A)
【文献】特開平6-333629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648-13/6599
H01R 13/6463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電線の端末に設けられ、かつ、相手方コネクタの相手方端子に対して電気的に接続される
第1端子と、
第2電線の端末に設けられ、かつ、前記相手方コネクタにおける前記相手方端子とは別の相手方端子に対して電気的に接続される第2端子と、
前記
第1端子
と前記第2端子とを保持する絶縁性の合成樹脂によって形成された端子ホルダと、
絶縁性の合成樹脂によって形成された壁部を有し、前記壁部によって構成された空間部に前記端子ホルダが挿入されることで前記端子ホルダを収容する筒状のコネクタハウジングと、
少なくとも一部が前記空間部に収容される
、前記第1電線及び前記第2電線がそれぞれ挿通される導電性のリアホルダと、
を備え、
前記コネクタハウジングは、
前記空間部と外部とを連通し、前記相手方コネクタが挿入される挿入開口部と、
前記空間部と前記外部とを連通し、前記リアホルダによって閉塞されるホルダ開口部と、
前記端子ホルダの外周面を囲い、前記コネクタハウジングの内周面に形成され、前記リアホルダに対して電気的に接続される導電性のメッキ層と、
を有
し、
前記第1電線と前記第2電線とは、互いにらせん状に撚った状態で、第1交差部分、及び、第2交差部分においてそれぞれが交差し、
前記第1電線及び前記第2電線は、それぞれが、前記リアホルダと前記第1交差部分との間に弧状の第1部分を有し、前記第1交差部分と前記第2交差部分との間に半リング状の第2部分を有することを特徴とする、
シールドコネクタ。
【請求項2】
前記
第1電線は、導電性を有して前記
第1端子に電気的に接続される
第1導電部と、絶縁性を有して前記
第1導電部を覆う
第1被覆部とを有し、
前記第2電線は、導電性を有して前記第2端子に電気的に接続される第2導電部と、絶縁性を有して前記第2導電部を覆う第2被覆部とを有し、
前記リアホルダは、前記
第1電線を挿通させる
第1挿通孔を有し、前記
第1挿通孔に前記
第1電線を挿通させた状態では、前記
第1挿通孔と前記
第1被覆部とが対向
し、
前記リアホルダは、前記第2電線を挿通させる第2挿通孔を有し、前記第2挿通孔に前記第2電線を挿通させた状態では、前記第2挿通孔と前記第2被覆部とが対向する、
請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記リアホルダは、前記メッキ層に接触するホルダ本体部と、前記
第1電線を挿通させる
第1挿通孔と、
前記第2電線を挿通させる第2挿通孔と、前記ホルダ本体部から前記
第1挿通孔
及び前記第2挿通孔まで延在するスリットとを有して弾性変形可能に形成され、かつ、少なくとも一部が弾性変形した状態で前記空間部に収容されて前記メッキ層に対して電気的に接続される、
請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
シールドコネクタと、
前記シールドコネクタと嵌合する相手方コネクタと、
を備え、
前記シールドコネクタは、
第1電線の端末に設けられ、かつ、前記相手方コネクタの相手方端子に対して電気的に接続される第1端子と、
第2電線の端末に設けられ、かつ、前記相手方コネクタにおける前記相手方端子とは別の相手方端子に対して電気的に接続される第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子とを保持する絶縁性の合成樹脂によって形成された端子ホルダと、
絶縁性の合成樹脂によって形成された壁部を有し、前記壁部によって構成された空間部に前記端子ホルダが挿入されることで前記端子ホルダを収容する筒状のコネクタハウジングと、
少なくとも一部が前記空間部に収容され、前記第1電線及び前記第2電線がそれぞれ挿通される導電性のリアホルダと、
を備え、
前記コネクタハウジングは、
前記空間部と外部とを連通し、前記相手方コネクタが挿入される挿入開口部と、
前記空間部と前記外部とを連通し、前記リアホルダによって閉塞されるホルダ開口部と、
前記端子ホルダの外周面を囲い、前記コネクタハウジングの内周面に形成され、前記リアホルダに対して電気的に接続される導電性のメッキ層と、
を有し、
前記第1電線と前記第2電線とは、互いにらせん状に撚った状態で、第1交差部分、及び、第2交差部分においてそれぞれ交差し、
前記第1電線及び前記第2電線は、それぞれが、前記リアホルダと前記第1交差部分との間に弧状の第1部分を有し、前記第1交差部分と前記第2交差部分との間に半リング状の第2部分を有し、
前記相手方コネクタは、前記シールドコネクタと嵌合した状態で前記メッキ層に電気的に接続され、かつ接地線に電気的に接続されて接地される接触部を有することを特徴とする、
コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタ及びコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、導電性の端子を内部に収容する絶縁性のコネクタハウジングを有する。この種の技術における開発者は、端子をシールドしたい要望がある。
【0003】
そこで、コネクタは、シールド性能を確保するため、コネクタハウジングの外部に金属製のシールドシェルを設けてある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コネクタハウジングの外部にシールドシェルを設けると、シールドコネクタの構成が複雑になる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構成でシールド性能を確保することができるシールドコネクタ及びコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るシールドコネクタは、電線の端末に設けられ、かつ、相手方コネクタの相手方端子に対して電気的に接続される端子と、前記端子を保持する絶縁性の合成樹脂によって形成された端子ホルダと、絶縁性の合成樹脂によって形成された壁部を有し、前記壁部によって構成された空間部に前記端子ホルダが挿入されることで前記端子ホルダを収容する筒状のコネクタハウジングと、少なくとも一部が前記空間部に収容される導電性のリアホルダと、を備え、前記コネクタハウジングは、前記空間部と外部とを連通し、前記相手方コネクタが挿入される挿入開口部と、前記空間部と前記外部とを連通し、前記リアホルダによって閉塞されるホルダ開口部と、前記端子ホルダの外周面を囲い、前記コネクタハウジングの内周面に形成され、前記リアホルダに対して電気的に接続される導電性のメッキ層と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記シールドコネクタにおいて、前記電線は、導電性を有して前記端子に電気的に接続される導電部と、絶縁性を有して前記導電部を覆う被覆部とを有し、前記リアホルダは、前記電線を挿通させる挿通孔を有し、前記挿通孔に前記電線を挿通させた状態では、前記挿通孔と前記被覆部とが対向する、ことが好ましい。
【0009】
また、上記シールドコネクタにおいて、前記リアホルダは、前記メッキ層に接触するホルダ本体部と、前記電線を挿通させる挿通孔と、前記ホルダ本体部から前記挿通孔まで延在するスリットとを有して弾性変形可能に形成され、かつ、少なくとも一部が弾性変形した状態で前記空間部に収容されて前記メッキ層に対して電気的に接続される、ことが好ましい。
【0010】
また、上記シールドコネクタにおいて、前記被覆部は、前記導電部を覆う絶縁性の第1被覆部分と、前記第1被覆部分を覆い、かつ、前記挿通孔において前記リアホルダに対して電気的に接続される導電性の第2被覆部分とを有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシールドコネクタ及びコネクタ装置は、以下の構成を有する。シールドコネクタは、コネクタハウジングのホルダ開口部を閉塞し、少なくとも一部が空間部に収容される導電性のリアホルダを有する。その上、コネクタハウジングは、端子ホルダの外周面を囲い、リアホルダに対して電気的に接続される導電性のメッキ層を有する。それらのため、本発明に係るシールドコネクタ及びコネクタ装置は、コネクタハウジングの空間部に収容される導電性のリアホルダと、コネクタハウジングの内周面に形成されたメッキ層とによってシールド性能を確保することができる。よって、本発明に係るシールドコネクタ及びコネクタ装置は、コネクタハウジングを外部で囲むシールドシェルを設けなくても、コネクタハウジングの内部でシールド性能を確保することができる。このため、簡単な構成でシールド性能を確保することができるシールドコネクタ及びコネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシールドコネクタを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、シールドコネクタの挿入方向及び高さ方向を含む平面における断面図である。
【
図3】
図3は、シールドコネクタの挿入方向に対して直交する平面における断面図である。
【
図4】
図4は、第1電線、及び、第2電線に発生する誘導電流を示す説明図である。
【
図5】
図5は、第1変形例のシールドコネクタを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2変形例のシールドコネクタの挿入方向に対して直交する平面における断面図である。
【
図7】
図7は、第3変形例のシールドコネクタの挿入方向及び高さ方向を含む平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るシールドコネクタ1の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態]
本実施形態に係るシールドコネクタ1について
図1、
図2、
図3を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るシールドコネクタ1を示す分解斜視図である。
図2は、シールドコネクタ1の挿入方向X1及び高さ方向Zを含む平面における断面図である。
図3は、シールドコネクタ1の挿入方向X1に対して直交する平面における断面図である。
【0015】
以下の説明において、図面におけるX1方向は、コネクタハウジング4の空間部41sに端子ホルダ3を挿入する挿入方向X1である。X2は、挿入方向X1の反対方向X2である。Y方向はコネクタハウジング4の幅方向Yである。Z方向はコネクタハウジング4の高さ方向Zである。
【0016】
シールドコネクタ1は、例えば、各種電子機器への電気信号を送受信する信号線の一部に使用されるシールド付きコネクタである。本実施形態のシールドコネクタ1は、
図1に示すように、例えば、相手方コネクタ9と嵌合するものであって、相手方コネクタ9とともにコネクタ装置100を構成する。
【0017】
相手方コネクタ9は、例えば、車両内の各種電子機器への電気信号を送受信する信号線の一部に使用されるシールド付きのコネクタである。相手方コネクタ9は、例えば、複数(例えば2つ)の相手方端子91と、相手方端子91に対して電気的に接続された相手方電線(不図示)と、相手方ハウジング92と、接触部93とを含んで構成される。本実施形態の相手方端子91は、雌端子である。相手方ハウジング92は、絶縁性の合成樹脂によって内部に空間部9sを有する筒状に形成され、空間部9sに相手方端子91を収容する。接触部93は、シールドコネクタ1の後述するメッキ層43に電気的に接続され、かつ、相手方コネクタ9の接地線(不図示)に電気的に接続されて接地される。また、相手方コネクタ9は、相手方ハウジング92に対して後述するコネクタハウジング4を挿入方向X1に移動させることによって、シールドコネクタ1と嵌合する。この際、相手方端子91及び後述する端子2は、電気的に接続される。以下に、相手方コネクタ9と嵌合するシールドコネクタ1について詳細に説明する。
【0018】
シールドコネクタ1は、端子2と、電線Wと、端子ホルダ3と、コネクタハウジング4と、リアホルダ5とを備える。
【0019】
端子2は、例えば、電線W1の端末に設けられ、相手方コネクタ9の相手方端子91に対して電気的に接続されるものである。端子2は、例えば、導電性を有する銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金等の金属によって形成される。本実施形態の端子2は、雌端子である相手方端子91に嵌合可能な雄端子である。本実施形態のシールドコネクタ1は、例えば、複数(例えば2つ)の端子2(例えば第1端子21、及び、第2端子22)を備える。本実施形態のシールドコネクタ1は、第1端子21の構成と第2端子22の構成とが同一であり、説明の便宜のため、以下に第1端子21について説明し、第2端子22の説明を省略する。
【0020】
第1端子21は、挿入方向X1側に端子接続部23を有し、反対方向X2側に電線接続部24を有する。端子接続部23は、相手方コネクタ9とシールドコネクタ1とが嵌合した際、相手方端子91と電気的に接続される。電線接続部24は、電線Wに対して電気的に接続される。このような電線接続部24は、基部24aと、基部24aから突出する一対のバレル片24b部とを有する。一対のバレル片24b部は、弾性変形可能に板状に形成してある。第1端子21は、基部24aに、電線Wの導電部Waを載置した状態で、一対のバレル片24b部を変形させることによって導電部Waを一対のバレル片24b部で挟持し、端子2と電線Wの導電部Waとが電気的に接続される。
【0021】
本実施形態のシールドコネクタ1は、例えば、複数(例えば2本)の電線W(例えば第1電線W1、及び、第2電線W2)を備える。本実施形態に係るシールドコネクタ1は、第1電線W1の構成と第2電線W2の構成とが同一であり、説明の便宜のため、以下に第1電線W1について説明し、第2電線W2の説明を省略する。第1電線W1は、例えば、導電性を有して端子2に電気的に接続される導電部Waと、絶縁性を有して導電部Waを覆う被覆部Wbとを有する。導電部Waは、例えば、導電性を有する銅、銅合金、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等の金属によって形成される。被覆部Wbは、例えば、絶縁性のポリプロプレン、ポリ塩化ビニル、又は、ポリエチレン等の合成樹脂によって形成される。
【0022】
端子ホルダ3は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって形成され、端子2を保持する。本実施形態の端子ホルダ3は、直方体状に形成される。より具体的に説明すると、端子ホルダ3は、幅方向Yにおいて対向する第1端子ホルダ壁部31a、及び、第2端子ホルダ壁部31bと、高さ方向Zにおいて対向する第3端子ホルダ壁部31c、及び、第4端子ホルダ壁部31dとを有する。端子ホルダ3の第1端子ホルダ壁部31a、第2端子ホルダ壁部31b、第3端子ホルダ壁部31c、及び第4端子ホルダ壁部31dによって、端子ホルダ3の外周面30は構成される。このような端子ホルダ3の挿入方向X1の長さはL2であり、幅方向Yの長さはT3であり、高さ方向Zの長さはH3である。
【0023】
このような端子ホルダ3は、例えば、第1電線W1及び第2電線W2を撚ってらせん状にした後、各端子2と電線Wの導電部Waとを電気的にそれぞれ接続した後、例えば、熱可塑性の合成樹脂を用いてモールド成型によって形成する。
【0024】
以下に、端子ホルダ3に対する端子2及び電線Wの組み付けを詳細に説明する。先ず、作業者は、第1電線W1及び第2電線W2を撚ってらせん状にする。
【0025】
次に、各端子2における基部24aのそれぞれに、各電線Wの導電部Waを載置する。次いで、各端子2において、基部24aに導電部Waを載置した状態で、端子2における一対のバレル片24b部を変形させ、導電部Waを一対のバレル片24b部で挟持し、端子2と導電部Waとを電気的に接続する。
【0026】
次に、作業者は、金型の内部空間に、電線Wが電気的に接続された端子2をセットし、金型の内部に、例えば、熱可塑性の合成樹脂を入れることによって、端子ホルダ3をモールド成型する。そして、作業者は、端子2と電線Wとを有する端子ホルダ3を得る。
【0027】
コネクタハウジング4は、絶縁性の合成樹脂によって形成された壁部41を有し、挿入方向X1に沿って延在する筒状(より具体的には角筒状)に形成され、壁部41によって構成された空間部41sに端子ホルダ3が挿入されることで端子ホルダ3を収容する。壁部41は、幅方向Yにおいて対向する第1壁部41a、及び、第2壁部41bと、高さ方向Zにおいて対向する第3壁部41c、及び、第4壁部41dとによって構成される。また、コネクタハウジング4は、空間部41sと外部とを連通し、相手方コネクタ9が挿入される挿入開口部42aと、空間部41sと外部とを連通し、リアホルダ5によって閉塞されるホルダ開口部42bと、端子ホルダ3の外周面を囲い、コネクタハウジング4の内周面に形成され、リアホルダ5に対して電気的に接続される導電性を有するメッキ層43とを有する。メッキ層43は、例えば、金、金合金、銀、銀合金、錫、錫合金、パラジウム、又は、パラジウム合金によって形成される。メッキ層43は、例えば、コネクタハウジング4の壁部41における内周面の全域に設ける。このため、シールドコネクタ1を挿入方向X1から視た場合、メッキ層43は、端子ホルダ3を囲うとともに、端子2を囲む。
【0028】
リアホルダ5は、コネクタハウジング4のホルダ開口部42bを閉塞し、コネクタハウジング4の空間部41sに収容される。より具体的に説明すると、リアホルダ5は、例えば、天然ゴム、又は、合成ゴムに、導電性カーボンブラック、又は、金属粉末を加えることによって、導電性を有し、かつ、弾性変形可能に形成してある。本実施形態のリアホルダ5は、直方体状に形成してある。
【0029】
リアホルダ5は、メッキ層43に接触するホルダ本体部51と、電線Wを挿通させる挿通孔52と、ホルダ本体部51から挿通孔52まで延在するスリット53を有する。本実施形態のホルダ本体部51は、幅方向Yにおいて対向する第1ホルダ壁部51a、及び、第2ホルダ壁部51bと、高さ方向Zにおいて対向する第3ホルダ壁部51c、及び、第4ホルダ壁部51dとによって構成される。本実施形態の挿通孔52は、第1電線W1を挿通する第1挿通孔52aと、第2電線W2を挿通する第2挿通孔52bとを有する。本実施形態のスリット53は、第4ホルダ壁部51dから高さ方向Zへ延在する。より具体的に説明すると、スリット53は、第4ホルダ壁部51dから第2挿通孔52bを通過し、第1挿通孔52aまで延在する。
【0030】
リアホルダ5は、外力が作用されていない状態では、幅方向Yの長さT1が、コネクタハウジング4における第1壁部41aと第2壁部41bとの幅方向Yにおける間隔T2よりも長い。また、リアホルダ5は、高さ方向Zの長さH1が、コネクタハウジング4における第3壁部41cと第4壁部41dとの高さ方向Zにおける間隔H2よりも長い。さらに、リアホルダ5は、挿入方向X1の長さがL1である。このようなリアホルダ5は、幅方向Y、及び、高さ方向Zに圧縮して弾性変形させた後、例えば、リアホルダ5の全部を空間部41sに収容し、弾性復元力によって、ホルダ本体部51とメッキ層43とが電気的に接続される。
【0031】
次に、このような構成を有するシールドコネクタ1の組み付けを説明する。先ず、作業者は、コネクタハウジング4の内部に端子ホルダ3を挿入し、不図示の固定具によって、コネクタハウジング4に端子ホルダ3を固定する。
【0032】
次に、作業者は、スリット53に対して、幅方向Yの一方に位置する第1ホルダ壁部51aを一方の手に持ち、かつ、スリット53に対して幅方向Yの他方に位置する第2ホルダ壁部51bを他方の手に持ち、幅方向Yにおいて、第1ホルダ壁部51aと第2ホルダ壁部51bとを離隔させる。すると、リアホルダ5は、幅方向Yにおけるスリット53の間隔が広くなる。この状態で、作業者は、第4ホルダ壁部52dからスリット53の内部に第1電線W1及び第2電線W2を挿入する。より具体的には、作業者は、第1挿通孔52aに第1電線W1を挿通させ、かつ、第2挿通孔52bに第2電線W2を挿通させる。その後、作業者は、リアホルダ5を幅方向Y、及び、高さ方向Zにおいて圧縮して弾性変形させながら、リアホルダ5を挿入方向X1にスライド移動させることによって、リアホルダ5と、第1電線W1及び第2電線W2における挿入方向X1の相対的な位置を調整しながら、リアホルダ5の全部をコネクタハウジング4の空間部41sに収容する。その後、リアホルダ5は、弾性復元力によって、ホルダ本体部51の全周とメッキ層43とが電気的に接続される。
【0033】
第1電線W1を第1挿通孔52aに挿通させた状態では、
図3に示すように、被覆部Wbと第1挿通孔52aとが対向する。また、第2電線W2を第2挿通孔52bに挿通させた状態では、被覆部Wbと第2挿通孔52bとが対向する。その後、作業者は、シールドコネクタ1と相手方コネクタ9とを嵌合させ、コネクタ装置100を形成する。
【0034】
上記のようなシールドコネクタ1は、
図4に示すように、第1電線W1と第2電線W2とを撚った状態で第1端子21と第2端子22とにそれぞれ電気的に接続する。このため、第1電線W1及び第2電線W2は、第1交差部分C1、第2交差部分C2、第3交差部分C3、第4交差部分C4においてそれぞれ交差する。
【0035】
本実施形態のシールドコネクタ1は、反対方向X2において、リアホルダ5の反対方向X2側の端部から第1交差部分C1までの長さP1が、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの長さP2と同一である。また、本実施形態のシールドコネクタ1は、反対方向X2において、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの長さP2が、第2交差部分C2から第3交差部分C3までの長さP3と同一である。さらに、また、本実施形態のシールドコネクタ1は、反対方向X2において、第2交差部分C2から第3交差部分C3までの長さP3が、第3交差部分C3から第4交差部分C4までの長さP4と同一である。本実施形態の第1電線W1及び第2電線W2における反対方向X2において、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの構成と、第2交差部分C2から第3交差部分C3までの構成と、第3交差部分C3から第4交差部分C4までの構成とが同一である。このため、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの構成について以下に説明し、第2交差部分C2から第3交差部分C3までの構成の説明、及び第3交差部分C3から第4交差部分C4までの構成の説明を省略する。
【0036】
第1電線W1は、反対方向X2において、リアホルダ5の反対方向X2側の端部と第1交差部分C1との間に、弧状の第1部分W101を有する。また、第1電線W1は、反対方向X2において、第1交差部分C1と第2交差部分C2との間に、半リング状の第2部分W102を有する。
【0037】
第2電線W2は、反対方向X2において、リアホルダ5の反対方向X2側の端部と第1交差部分C1との間に、弧状の第1部分W201を有する。また、第2電線W2は、反対方向X2において、第1交差部分C1と第2交差部分C2との間に、半リング状の第2部分W202を有する。
【0038】
シールドコネクタ1は、弧状の第1部分W101、W201において、外部からの電磁波による磁力線φ1が第1電線W1と第2電線W2との間を通過すると、磁力線φ1によって、誘導電流R1、R2が流れる。より具体的に説明すると、第1電線W1において、リアホルダ5と第1交差部分C1との間における第1部分W101には、時計回りに第1誘導電流R1が流れ、第2電線W2において、リアホルダ5と第1交差部分C1との間における第2部分W202には、時計回りに第1誘導電流R2が流れる。
【0039】
同様に、シールドコネクタ1は、半リング状の第2部分W102、W202において、外部からの電磁波による磁力線φ2が第1電線W1と第2電線W2との間を通過すると、磁力線φ2によって、誘導電流R3、R4が流れる。より具体的に説明すると、第1電線W1において、第1交差部分C1と第2交差部分C2との間における第2部分W102には、時計回りに第3誘導電流R3が流れ、第2電線W2において、第1交差部分C1と第2交差部分C2との間における第2部分W202には、時計回りに第4誘導電流R4が流れる。
【0040】
本実施形態のシールドコネクタ1の第1電線W1は、リアホルダ5から第1交差部分C1までの反対方向X2に沿った長さP1と、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの反対方向X2に沿った長さP2が同一である。このため、第1誘導電流R1の大きさと、第3誘導電流R3の大きさとがほぼ同一である。また第1誘導電流R1の流れる方向と、第3誘導電流R3の流れる方向とは逆向きである。これらのため、第1誘導電流R1と第3誘導電流R3とが相殺され、外部からの磁力線φ1、φ2によって、第1電線W1にノイズが侵入することが抑制される。
【0041】
同様に、本実施形態のシールドコネクタ1の第2電線W2は、リアホルダ5から第1交差部分C1までの反対方向X2に沿った長さP1と、第1交差部分C1から第2交差部分C2までの反対方向X2に沿った長さP2が同一である。このため、第2誘導電流R2の大きさと、第4誘導電流R4の大きさとがほぼ同一である。また第2誘導電流R2の流れる方向と、第4誘導電流R4の流れる方向とは逆向きである。これらのため、第3誘導電流R3と第4誘導電流R4とが相殺され、外部からの磁力線φ1、φ2によって、第2電線W2にノイズが侵入することが抑制される。
【0042】
上記に説明したシールドコネクタ1は、以下の構成を有する。シールドコネクタ1は、コネクタハウジング4のホルダ開口部42bを閉塞し、少なくとも一部が空間部41sに収容される導電性のリアホルダ5を有する。その上、コネクタハウジング4は、端子ホルダ3の外周面を囲い、リアホルダ5に対して電気的に接続される導電性のメッキ層43を有する。それらのため、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、リアホルダ5とメッキ層43とによってシールド性能を確保することができる。しかも、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、上記構成によって、複数の端子2をメッキ層43によって一括して囲むことが可能であるとともに、シールドコネクタ1自身がシールド性能を有する。従って、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、シールドコネクタ1自身がシールド性能を有するため、金属製のシールドシェルを設ける必要がない。この結果、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、小型にすることができるとともに、軽量にすることができる。その上、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、外部において発生したノイズが信号線である第1電線W1、及び、第2電線W2に侵入することを抑制することができる。
【0043】
本実施形態に係るシールドコネクタ1は、以下の構成を有する。リアホルダ5は、弾性変形可能に形成され、かつ、少なくとも一部が弾性変形した状態で空間部41sに収容されてメッキ層43に対して電気的に接続される。このため、力を加えて圧縮したリアホルダ5を空間部41sに収容すれば、弾性復元力によってリアホルダ5がホルダ開口部42bを閉塞するとともにメッキ層43とリアホルダ5とが電気的に接続される。この結果、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、力を加えて圧縮したリアホルダ5を空間部41sに収容することによって、コネクタハウジング4に対するリアホルダ5の収容と、ホルダ開口部42bの閉塞と、メッキ層43とリアホルダ5の電気的接続とを行うことができる。よって、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、組み立て作業性を向上することができる。その上、リアホルダ5は、メッキ層43に接触するホルダ本体部51と、電線Wを挿通させる挿通孔52と、ホルダ本体部51から挿通孔52まで延在するスリット53とを有する。そのため、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、挿通孔52に電線Wを挿通させる際、スリット53によって挿通孔52の径を大きくさせた状態で、ホルダ本体部51からスリット53を通して挿通孔52に電線Wを挿通されることができる。この結果、本実施形態に係るシールドコネクタ1は、スリット53を有さないリアホルダにおいて、電線Wの先端を挿通孔に入れることによって挿通孔に電線Wを挿通させる場合と比較して、電線Wを挿通孔52に挿通させる作業を容易にすることができる。
【0044】
[第1変形例]
上述した実施形態に係るシールドコネクタ1は、端子ホルダ3が2つの端子2を保持するものを説明した。しかし、この実施形態に係るシールドコネクタ1は、それに限られず、2つの端子2を保持する端子ホルダ3に代えて4つの端子2を保持する端子ホルダ3Aを使用することができる。以下に、第1変形例に係る端子ホルダ3Aについて
図5を用いて説明する。
図5は、シールドコネクタ1の第1変形例を示す斜視図である。この端子ホルダ3Aは、4つの端子2を保持することに関して上述した端子ホルダ3と異なり、他の構成は、上述した端子ホルダ3の構成と同一である。そのため、以下に、第1変形例に係る端子ホルダ3Aにおいて、上述した端子ホルダ3と異なる構成のみ説明し、端子ホルダ3と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
第1変形例に係る端子ホルダ3Aの挿入方向X1の長さL3は、上述した実施形態に係る端子ホルダ3の挿入方向X1の長さL2と同一である。また、第1変形例に係る端子ホルダ3Aの幅方向Yの長さT4は、上述した実施形態に係る端子ホルダ3の幅方向Yの長さT3と同一である。さらに、第1変形例に係る端子ホルダ3の高さ方向Zの長さH4は、上述した実施形態に係る端子ホルダ3の高さ方向Zの長さH3と同一である。
【0046】
このため、第1実施形態に係るシールドコネクタ1によれば、端子ホルダ3、及び、端子ホルダ3Aを変更することによって、保持する端子2の数を容易に変更することができるとともに、端子ホルダ3、又は、端子ホルダ3Aを挿入するコネクタハウジング4を共通して使用することができる。この結果、保持する端子2の数に応じて端子ホルダ3、3Aを変更する一方、コネクタハウジング4を共通して使用することができる。これにより、本発明に係るシールドコネクタ1は、コネクタハウジング4の種類を増加させることがなく、保持する端子2の数を任意に変更することができるため、汎用性を有するシールドコネクタ1を提供することができる。
【0047】
なお、上述した第1変形例には、端子ホルダ3Aが4つの端子2を保持するものを説明した。また、上述した実施形態には、端子ホルダ3が2つの端子2を保持するものを説明した。しかし、この発明は、それらに限られず、端子ホルダ3、3Aは、1つの端子2を保持してもよいし、3つの端子2を保持してもよいし、5つ以上の端子2を保持してもよい。
【0048】
[第2変形例]
上述した実施形態には、導電性を有して端子2に電気的に接続される導電部Waと、絶縁性を有して導電部Waを覆う被覆部Wbとを有する第1電線W1を備えるシールドコネクタ1を説明した。しかし、この実施形態に係るシールドコネクタ1は、それに限られず、被覆部Wbが、導電部Waを覆う絶縁性の第1被覆部分Wb1と、第1被覆部分Wb1を覆い、かつ、挿通孔52においてリアホルダ5に対して電気的に接続される第2被覆部分Wb2とを有する第1電線W11(電線W)及び第2電線W12(電線W)を使用することができる。第1電線W11の構成と第2電線W12の構成とは同一であり、説明の便宜のため、以下に第1電線W11について
図6を用いて説明し、第2電線W12の説明を省略する。
図6は、第2変形例のシールドコネクタ1の挿入方向X1に対して直交する平面における断面図である。
図6に示す第1電線W11は、被覆部Wbの構成が上述した実施形態の第1電線W1の構成と異なり、他の部分の構成は、上述した実施形態の第1電線W1の構成と同一である。そのため、以下に第2変形例に係る第1電線W11において、上述した第1電線W1と異なる構成のみ説明し、第1電線W1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
第1被覆部分Wb1は、例えば、絶縁性のポリプロプレン、ポリ塩化ビニル、又は、ポリエチレン等の合成樹脂によって形成され、導電部Waを覆うものである。
【0050】
第2被覆部分Wb2は、例えば、第1被覆部分Wb1の外周面をメッキすることによって形成される。第2被覆部分は、例えば、金、金合金、銀、銀合金、錫、錫合金、パラジウム、又は、パラジウム合金によって形成される。このような第2被覆部分Wb2は、第1被覆部分Wb1を覆い、かつ、挿通孔52においてリアホルダ5に対して電気的に接続されるものである。
【0051】
第2変形例に係るシールドコネクタ1は、以下の構成を有する。被覆部Wbは、第1被覆部分Wb1を覆い、かつ、挿通孔52においてリアホルダ5に対して電気的に接続される導電性の第2被覆部分Wb2を有する。このため、リアホルダ5と第2被覆部分Wb2とを電気的に接続するための別の部品を設ける必要がないため、組み立ての作業性を向上することができる。
【0052】
上述した実施形態の構成、第1変形例の構成、及び、第2変形例の構成は、分離して実施することができ、かつ、一部の構成を組み合わせて実施することができる。
【0053】
[第3変形例]
上述した実施形態に係るシールドコネクタ1には、コネクタハウジング4の内部にリアホルダ5の全部が収容されるものを説明した。しかし、この実施形態に係るシールドコネクタ1は、それに限られず、コネクタハウジング4の内部にリアホルダ5の一部が収容されてもよい。以下に、第3変形例に係るリアホルダ5Aについて
図6を用いて説明する。
図6は、シールドコネクタ1の第3変形例を示す断面図である。このリアホルダ5Aは、リアホルダ5Aの一部がコネクタハウジング4の内部に収容されること関して上述したリアホルダ5と異なり、他の構成は、上述した実施形態に係るシールドコネクタ1の構成と同一である。そのため、以下に、第3変形例に係るリアホルダ5Aにおいて、上述したリアホルダ5と異なる構成のみ説明し、他の同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
第3変形例に係るリアホルダ5Aの挿入方向X1の長さは、上述した実施形態に係るリアホルダ5の挿入方向X1の長さよりも長い。このため、リアホルダ5Aの一部は、コネクタハウジング4の内部に収容されず、コネクタハウジング4の外部にはみ出る。そのため、コネクタハウジング4の挿入方向X1におけるリアホルダ5の位置を容易に決定することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態には、各種電子機器への電気信号を送受信する信号線に使用されるシールドコネクタ1を説明した。しかし、本実施形態は、それに限られず、車両内のインバータやモータ等への電力を供給する送電線にシールドコネクタ1を使用することができる。送電線の一部にシールドコネクタ1を使用すれば、送電線から発生するノイズが外部に漏れることを抑制することができる。
【0056】
さらに、上述した実施形態には、シールドコネクタ1が、雄型の端子2を備えるものを説明した。しかし、この発明はそれに限られず、シールドコネクタ1は、雌型の端子2を備えてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態には、コネクタハウジング4が挿入方向X1に沿って直線状に延在する角筒状のものを説明した。しかし、この発明は、それに限られず、コネクタハウジング4は、例えば、L字状の角筒状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 シールドコネクタ
2 端子
3 端子ホルダ
4 コネクタハウジング
41 壁部
42a 挿入開口部
42b ホルダ開口部
43 メッキ層
5 リアホルダ
51 ホルダ本体部
52 挿通孔
53 スリット
9 相手方コネクタ
91 相手方端子
W 電線
W1、W11 第1電線(電線)
W2、W12 第2電線(電線)
Wa 導電部
Wb 被覆部
Wb1 第1被覆部分
Wb2 第2被覆部分