(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】誘導結合プラズマエッチング装置およびプラズマ生成機構
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230919BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2019219241
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】速水 利泰
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 昌浩
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-228272(JP,A)
【文献】特開2000-195841(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029777(WO,A1)
【文献】特開2004-228181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、
前記基板が配置される真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されて
おり、
前記凹部の開口幅に対する前記凹部の深さの比であるアスペクト比は、1未満である、誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記凹部の断面視において、前記凹部の開口端の幅が、前記凹部の前記内側面の前記開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されている、請求項1に記載の誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端側から前記開口端とは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる逆テーパ状に構成されている、請求項2に記載の誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項4】
基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、
前記基板が配置される真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の開口端の幅が、前記凹部の前記内側面の前記開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端側から前記開口端とは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる孤状に構成されている
、誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項5】
基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、
前記基板が配置される真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の開口端の幅が、前記凹部の前記内側面の前記開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されており、
前記凹部の断面視において、前記凹部は、非対称な形状を有する
、誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項6】
基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、
前記基板が配置される真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、
前記凹部の断面視において、前記凹部は、平行四辺形形状を有する
、誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項7】
基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、
前記基板が配置される真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、
前記凹部は、前記誘電体部の真空側の面において、前記誘電体部の軸線方向に沿って延びるように設けられている溝部と、前記誘電体部の周方向に沿って延びるように設けられている溝部とを含む
、誘導結合プラズマエッチング装置。
【請求項8】
真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、
前記誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、前記真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部とを備え、
前記誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、
前記凹部の断面視において、前記凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、前記凹部の開口端よりも、前記凹部の幅方向外側に窪むように形成されて
おり、
前記凹部の開口幅に対する前記凹部の深さの比であるアスペクト比は、1未満である、プラズマ生成機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘導結合プラズマエッチング装置およびプラズマ生成機構に関し、特に、コイル部の内側に円筒形状を有する誘電体部を備える誘導結合プラズマエッチング装置およびプラズマ生成機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部の内側に円筒形状を有する誘電体部を備える誘導結合プラズマエッチング装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、チャンバを備えるエッチング装置が開示されている。このエッチング装置では、チャンバの内部(下方)には、ウェハを載置するウェハ載置台が設けられている。また、チャンバの内部(上方)には、プラズマ発生領域が設けられている。プラズマ発生領域は、円筒形状のチャンバの内壁に囲まれるように設けられている。内壁は、石英(誘電体部)により構成されている。また、プラズマ発生領域の外周側(円筒形状のチャンバの外周側)には、誘導結合型のアンテナ(コイル部)が巻回されている。
【0004】
そして、上記特許文献1の誘導結合型プラズマエッチング装置では、アンテナに電力が供給されることにより、高周波磁界が生成される。そして、この高周波磁界を打ち消す方向に誘導電流が流れプラズマが生成される。なお、エッチング対象物は、ウェハ上に形成されたプラチナ、イリジウム、ルテニウム、銅、またはそのいずれかの元素の化合物からなる膜、または、酸化物高誘電体膜、または、酸化物強誘電体膜などである。ここで、チャンバの内壁が、ウェハからスパッタされた物質が隔壁の内周面に付着することなどに起因して汚れると、アンテナから発生する高周波磁界がチャンバの内壁を介して、プラズマ発生領域内に侵入しにくくなる。このため、プラズマ発生領域内のプラズマの密度が小さくなり、プラズマを安定した状態で維持することが困難になる。
【0005】
そこで、上記特許文献1のエッチング装置では、円筒形状のチャンバの内壁(誘電体部)には、凹凸が設けられている。そして、チャンバの内壁に凹凸が設けられていることにより、凹凸の凹部(凹部の側面部と考えられる)に汚れが付きにくいので、プラズマを安定した状態で維持することが可能になる。なお、上記特許文献1では、凹凸の凹部の断面の形状は明記されていないが、
図4などから、凹凸の凹部の断面は、長方形形状を有すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている凹部の断面は、長方形形状を有するため、スパッタされた物質が飛来する方向によっては、スパッタされた物質が凹部の内側面にも付着する場合があると考えられる。この場合、チャンバの内壁に凹部が設けられていても、プラズマを安定した状態で維持することが困難になる場合があるという問題点が考えられる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、プラズマをより安定した状態で維持することが可能な誘導結合プラズマエッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による誘導結合プラズマエッチング装置は、基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、基板が配置される真空チャンバと、真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、凹部の開口幅に対する凹部の深さの比であるアスペクト比は、1未満である。なお、「誘電体部の側面」とは、誘電体部の円筒形状領域である(円筒形状領域をなす)側面を意味する。また、「凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部」とは、対向する内側面のうちの一方の内側面の少なくとも一部という意味と、両方の内側面の少なくとも一部という意味とを含む。
【0010】
この発明の第1の局面による誘導結合プラズマエッチング装置では、上記のように、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されている。これにより、誘電体部の内側から見て、内側面において庇となる(見えない)部分が生じる。その結果、基板からスパッタされた物質が、内側面において庇となる部分の裏側には付着しない。これにより、凹部の断面が長方形形状の場合に比べて、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されるので、プラズマをより安定した状態で維持することができる。その結果、基板のエッチングレートが変化するのを抑制することができる。また、誘電体部に導電体が付着すると、誘電体が高周波電力を消費することになり、その結果としてジュール熱(誘導加熱)が発生する。この誘導加熱により誘電体部が過剰に加熱されることで誘電体部が破損する懸念がある。そこで、上記のように、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されることによって、誘導加熱に起因して、誘電体部が破損するのを抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による誘導結合プラズマエッチング装置において、好ましくは、凹部の断面視において、凹部の開口端の幅が、凹部の内側面の開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されている。このように構成すれば、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部を、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端側から開口端とは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる逆テーパ状に構成されている。このように構成すれば、逆テーパ状の凹部を、一般的なアリ溝加工や逆テーパ状の溝部が予め形成された金型などの鋳型から一体成型することによって、容易に形成することができる。
【0013】
この発明の第2の局面による誘導結合プラズマエッチング装置は、基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、基板が配置される真空チャンバと、真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、凹部の断面視において、凹部の開口端の幅が、凹部の内側面の開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されている。
この発明の第2の局面による誘導結合プラズマエッチング装置では、上記のように、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、かつ、凹部の断面視において、凹部の開口端の幅が、凹部の内側面の開口端以外の部分の最大幅よりも小さくなるように構成されている。これにより、誘電体部の内側から見て、内側面において庇となる(見えない)部分が生じる。その結果、基板からスパッタされた物質が、内側面において庇となる部分の裏側には付着しない。これにより、凹部の断面が長方形形状の場合に比べて、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されるので、プラズマをより安定した状態で維持することができる。その結果、基板のエッチングレートが変化するのを抑制することができる。また、誘電体部に導電体が付着すると、誘電体が高周波電力を消費することになり、その結果としてジュール熱(誘導加熱)が発生する。この誘導加熱により誘電体部が過剰に加熱されることで誘電体部が破損する懸念がある。そこで、上記のように、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されることによって、誘導加熱に起因して、誘電体部が破損するのを抑制することができる。
【0014】
上記第2の局面による誘導結合プラズマエッチング装置において、さらに、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端側から開口端とは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる孤状に構成されている。このように構成すれば、内側面が逆テーパ状の場合と比べて、内側面の少なくとも一部がより内周側から見えにくくなるので、誘電体部の真空側の面が汚れるのをさらに抑制することができる。
【0015】
上記第2の局面による誘導結合プラズマエッチング装置において、さらに、凹部の断面視において、凹部は、非対称な形状を有する。このように構成すれば、凹部の形状が複雑になるので、汚れをつきにくくすることができる。
【0016】
この発明の第3の局面による誘導結合プラズマエッチング装置は、基板をエッチングする誘導結合プラズマエッチング装置であって、基板が配置される真空チャンバと、真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部を含むプラズマ生成機構とを備え、誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されている。
この発明の第3の局面による誘導結合プラズマエッチング装置では、上記のように、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されている。これにより、誘電体部の内側から見て、内側面において庇となる(見えない)部分が生じる。その結果、基板からスパッタされた物質が、内側面において庇となる部分の裏側には付着しない。これにより、凹部の断面が長方形形状の場合に比べて、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されるので、プラズマをより安定した状態で維持することができる。その結果、基板のエッチングレートが変化するのを抑制することができる。また、誘電体部に導電体が付着すると、誘電体が高周波電力を消費することになり、その結果としてジュール熱(誘導加熱)が発生する。この誘導加熱により誘電体部が過剰に加熱されることで誘電体部が破損する懸念がある。そこで、上記のように、誘電体部の真空側の面が汚れるのがより抑制されることによって、誘導加熱に起因して、誘電体部が破損するのを抑制することができる。
【0017】
上記第3の局面による誘導結合プラズマエッチング装置において、さらに、凹部の断面視において、凹部は、平行四辺形形状を有する。このように構成すれば、庇となる部分を形成することができる。
【0020】
上記第3の局面による誘導結合プラズマエッチング装置において、さらに、凹部は、誘電体部の真空側の面において、誘電体部の軸線方向に沿って延びるように設けられている溝部と、誘電体部の周方向に沿って延びるように設けられている溝部とを含む。
ここで誘電体部の側面にコイル部を巻回した場合、コイル部により生成された磁界は、誘電体部の軸線方向に沿うように発生する。そこで、上記のように構成することによって、誘電体部の軸線方向および周方向に沿うように汚れが付きにくい部分が生成されるので、この部分を介して、コイル部により生成された磁界は、真空空間に侵入することができる。その結果、プラズマを容易に安定した状態で維持することができる。
また、コイル部から生成される高周波磁界が通過可能な領域を大きくすることができる。
【0021】
この発明の第4の局面によるプラズマ生成機構は、真空チャンバの内部の真空空間を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する誘電体部と、誘電体部の側面でかつ大気側に巻回され、真空空間に供給されたエッチングガスをプラズマ化させるコイル部とを備え、誘電体部の真空側の面には、凹部が設けられており、凹部の断面視において、凹部の互いに対向する内側面の少なくとも一部は、凹部の開口端よりも、凹部の幅方向外側に窪むように形成されており、凹部の開口幅に対する凹部の深さの比であるアスペクト比は、1未満である。
【0022】
この発明の第4の局面によるプラズマ生成機構においても、上記の第1の局面による誘導結合プラズマエッチング装置と同様に、プラズマをより安定した状態で維持することができるので、基板のエッチングレートが変化するのを抑制することができる。また、誘導加熱に起因して、誘電体部が破損するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、プラズマをより安定した状態で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態による誘導結合プラズマエッチング装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態による誘電体部を示す図である。
【
図3】コイル部から発生する高周波磁界を説明するための図である。
【
図4】誘電体部に付着する物質(汚れ)を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の変形例による溝部を示す図(1)である。
【
図6】第1実施形態の変形例による溝部を示す図(2)である。
【
図7】第2実施形態による誘電体部を示す図である。
【
図8】第2実施形態の変形例による溝部を示す図(1)である。
【
図9】第2実施形態の変形例による溝部を示す図(2)である。
【
図10】第3実施形態による誘電体部を示す図である。
【
図11】第3実施形態の変形例による誘電体部の展開図である。
【
図12】第1~第3実施形態の変形例による誘電体部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1~
図4を参照して、第1実施形態による誘導結合プラズマエッチング装置1の構成について説明する。誘導結合プラズマエッチング装置1は、半導体基板Kをエッチングするように構成されている。なお、本願では、エッチング対象物は、金、銀、プラチナ、チタン、銅等の金属膜およびこれらの元素の化合物からなる膜の他、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、InP、AlGaInPなどの3元系・4元系材料等の難エッチング材料のような導電性物質を例示できる。
【0027】
図1に示すように、誘導結合プラズマエッチング装置1は、真空チャンバ2と、ガス供給機構3と、プラズマ生成機構4と、試料台機構5と、排気機構6と、誘電体部7とを備えている。
【0028】
真空チャンバ2は、内部に半導体基板Kが配置されるように構成されている。また、真空チャンバ2は、密閉された空間を内部に含むように構成されている。具体的には、真空チャンバ2は、チャンバ上部21と、チャンバ下部22とを備えている。チャンバ上部21の内部には、プラズマが生成されるプラズマ生成空間SP1が設けられている。チャンバ下部22は、チャンバ上部21の下方に配置されているとともに、内部に半導体基板Kが処理される処理空間SP2が設けられている。処理空間SP2は、プラズマ生成空間SP1の下方に設けられているとともに、プラズマ生成空間SP1とつながっている。そして、真空チャンバ2の内部において、半導体基板Kのエッチング処理が行われる。なお、半導体基板Kは、特許請求の範囲の「基板」の一例である。また、プラズマ生成空間SP1は、特許請求の範囲の「真空空間」の一例である。
【0029】
ガス供給機構3は、エッチングガスを、真空チャンバ2内のプラズマ生成空間SP1に供給する。ガス供給機構3は、ガス供給部31と、供給管32とを備えている。ガス供給部31は、エッチングガスを、プラズマ生成空間SP1に供給する。エッチングガスは、たとえば、SF6やC4F8およびCF4などのCF系、HeやArなどである。また、ガス供給機構3は、上記のガス以外に、HFO1234yf、Cl2、BCl3、SiCl4、O2、H2、SiF4、CHF3、N2などを供給してもよい。また、ガス供給機構3は、用いられるエッチングガスの数に合わせて1つ以上設けられる。
【0030】
供給管32は、ガス供給機構3と、チャンバ上部21とを接続する。上記のガスは、供給管32を介して、ガス供給機構3からチャンバ上部21のプラズマ生成空間SP1に送り出される。
【0031】
プラズマ生成機構4は、ガス供給機構3からプラズマ生成空間SP1に供給されたエッチングガスをプラズマ化する。プラズマは、誘導結合プラズマ(ICP)である。プラズマ生成機構4は、コイル部41を含む。コイル部41は、誘電体部7の円筒形状領域である(円筒形状領域をなす)外周面7aでかつ大気側に巻回されている。具体的には、コイル部41は、円筒形状を有する誘電体部7の外周面7aの外側に巻回されている。具体的には、コイル部41は、チャンバ上部21の外側に巻回されている。そして、コイル部41に高周波電力が供給されることにより、プラズマ生成空間SP1に供給されたエッチングガスがプラズマ化される。なお、外周面7aは、特許請求の範囲の「(誘電体部の)側面」の一例である。また、内周面7bは、特許請求の範囲の「真空側の面」の一例である。また、
図1では、コイル部41は、3ターン分、巻回されているが、コイル部41の巻回のターン数は、3ターンに限られない。たとえば、帯状(平板状)のコイルを、1ターン分、巻回してもよい。
【0032】
誘電体部7は、真空チャンバ2の内部のプラズマ生成空間SP1を形成する、少なくとも一部が円筒形状を有する。また、誘電体部7は、セラミックスや石英などからなる。また、誘電体部7は、プラズマ生成空間SP1を区画する隔壁を構成する。なお、誘電体部7の具体的な構成は、後述する。
【0033】
試料台機構5は、試料台51と、リフトピン53と、リフトピン53を昇降させる昇降シリンダ54と、高周波電源55と、冷却機構56と、駆動源59とを備える。試料台51は、チャンバ下部22の処理空間SP2に配置される。試料台51の上面には、半導体基板Kが載置される載置領域が設けられている。また、載置領域には、静電チャック52が配置されている。半導体基板Kは、静電チャック52の上面に載置される。静電チャック52が、半導体基板Kの裏面を電気的に吸着することにより、半導体基板Kが試料台51に固定される。
【0034】
リフトピン53は、昇降シリンダ54に取り付けられており、昇降シリンダ54には駆動源59が接続されている。処理前の半導体基板Kは、搬送機構(図示せず)によって、真空チャンバ2の外部から内部に搬送されて、試料台51よりも上方に突出したリフトピン53上に載置される。その後、昇降シリンダ54によってリフトピン53が降下することにより試料台51に半導体基板Kが載置される。また、処理後は、昇降シリンダ54によってリフトピン53が上昇し、上昇した半導体基板Kは、搬送機構によって真空チャンバ2の外部に搬送される。
【0035】
試料台機構5は、さらに、高周波電源55と、冷却機構56とを備える。高周波電源55は、試料台51に接続されている。高周波電源55は、試料台51にバイアス電力を印加する。そして、試料台51にバイアス電力が印加されることにより、プラズマ化されたイオンが、試料台51に載置された半導体基板Kに入射する。冷却機構56は、供給管57と、ガス供給部58とを備えている。ガス供給部58は、不活性ガスを収容する。不活性ガスは、たとえば、Heなどである。なお、ガス供給部58は、He以外の不活性ガスを収容していてもよい。
【0036】
試料台51は、さらに図示しない内部配管を含む試料台冷却システムを含む。試料台冷却システムは、内部配管に冷媒を導入して、冷媒の温度を管理しながら冷媒を循環させるチラー機構を有する。循環する冷媒は、たとえば、フロリナート(登録商標)、ガルデン(登録商標)、純水などである。供給管57は、ガス供給部58と静電チャック52の表面とを接続している。ガス供給部58内の不活性ガス(Heガス)は、供給管57を介して、静電チャック52の表面に到達し、外部に流れる。具体的には、Heガスは、半導体基板Kの裏面と静電チャック52の表面との間に流れることにより、エッチング中の半導体基板Kを冷却する。排気機構6は、真空ポンプ61と、排気管62とを備えている。排気管62は、チャンバ下部22と真空ポンプ61とを接続する。排気機構6は、真空チャンバ2内の気体(ガス)を排気して、真空チャンバ2内を所定の圧力に調整する。
【0037】
(誘導結合プラズマエッチング装置の仕様の一例)
誘導結合プラズマエッチング装置1のエッチング対象物は、SiCである。エッチングマスクは、銅などのメタルマスクである。使用ガスは、SF6である。使用ガスの流量は、300sccmである。使用ガスの圧力は、3Paである。コイル部41の高周波周波数は、13.56MHzであり、供給される電力は、2500Wである。なお、好ましい周波数は、13.56MHz以上26MHz以下(試料台51の高周波周波数と比べて同等又はより高い周波数)である。また、試料台51に印加される電圧の周波数は、13.56MHzであり、試料台51に供給されるバイアス電力は、500Wである。なお、好ましい周波数は、380kHz以上13.56MHz以下である。なお、好ましい周波数は、2MHzなどでもよい。また、好ましいバイアス電力は、0W以上1000W以下であり、バイアス電力の上限は、下地選択比(オーバーエッチによる下地へのダメージなど)やマスク選択比などで決まる。また、より好ましいバイアス電力は、100W以上1000W以下であり、メタルスパッタ量が比較的多いバイアス電力印加範囲で、本発明の後述する溝部71を設けることが有効である。また、試料台51のチラー機構(冷媒)の温度は、20℃である。
【0038】
また、誘導結合プラズマエッチング装置1の仕様の他の例として、例えばエッチング対象物が金や銅などの金属膜であり、マスクがレジスト、またはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などのハードマスクの構成もある。また、これらの組み合わせに応じて使用ガスは適宜変更可能である。また、加工の要求値(エッチレート、マスク選択比、下地選択比、テーパ角度など)に合わせて条件は適宜変更可能である。
【0039】
(誘電体部の構成)
誘電体部7の構成について、具体的に説明する。なお、
図2(b)は、円筒形状の誘電体部7が展開された図(誘電体部7を切り開いて内壁面を平面にした図)を示している。
【0040】
第1実施形態では、
図2(a)および
図2(b)に示すように、誘電体部7の内周面7bには、溝部71が設けられている。溝部71は、円筒形状の誘電体部7の内周面7bにおいて、円筒形状の誘電体部7の軸線方向Zに沿って延びるように設けられている。なお、溝部71は、誘電体部7の内周面7bに沿って、略等角度間隔で複数設けられている。また、軸線方向Zにおいて、溝部71は、誘電体部7の一方端に達しないとともに、他方端に達しないように設けられている。
【0041】
そして、第1実施形態では、
図2(c)に示すように、溝部71の断面視において、溝部71の互いに対向する内側面71aの少なくとも一部は、溝部71の開口端71bよりも、溝部71の幅方向(内周面7bの周方向C)の外側に窪むように形成されている。すなわち、溝部71の断面視において、溝部71の開口端71bの開口幅W1が、溝部71の内側面71aの開口端71b以外の部分の最大幅W2よりも小さい。たとえば、開口幅W1は、最大幅W2の1/2倍以上1倍よりも小さい。なお、
図2(c)では、軸線方向Zに垂直な平面で切断した断面視において、内側面71aが、幅方向(周方向C)の外側にくぼむように形成されている例を示している。また、周方向Cに垂直な平面で切断した断面視における、内側面(図示せず)も、幅方向(軸線方向Z)の外側に窪むように形成されていてもよい。
【0042】
また、第1実施形態では、
図2(c)に示すように、溝部71の断面視において、溝部71の互いに対向する内側面71aの少なくとも一部は、溝部71の開口端71b側から開口端71bとは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる逆テーパ状に構成されている。また、内側面71aの全体(溝部71の開口端71bから底部71cまで)が、逆テーパ状に構成されている。また、内側面71aは、底部71cに対して90度未満の角度θで交差している。また、溝部71の開口幅W1に対する溝部71の深さD1の比(=深さD1/開口幅W1:アスペクト比)は、1未満が好ましい。これにより、溝部71を容易に加工することが可能になる。また、アスペクト比が1よりも大きい場合と比べて、誘電体部7の厚みが薄くなるのが抑制されるので、誘電体部7の機械的強度が大きくなる。たとえば、誘電体部7の厚みは、5mm~15mmである。また、JIS規格のOリングに合わせたアリ溝は既に公知であり、一般的なアリ溝加工の最小深さは、1mm~3mmである。この点から、誘電体部7の厚みの下限は5mm、上限は、20mm程度となるのが好ましい。なお、誘電体部7の厚みの上限は、高周波磁界が通過が妨げられることによる損失が考慮される。つまり、誘電体部7の厚みの上限は、プラズマを安定して維持可能な程度に、高周波磁界が通過可能な厚みが好ましい。また、溝部71の深さD1も、誘電体部7の厚みに合わせて、2mm~10mm程度が好ましい。また、より好ましくは、溝部71の深さD1は、2mm~5mm程度である。また、アリ溝加工によって形成されるテーパの角度(
図2(c)の角度θ)は、好ましくは、30度から80度であり、一般的なアリ溝加工では、66度となる。
【0043】
(プラズマに発生する誘導磁界)
図3に示すように、コイル部41に高周波電流I1が流される。これにより、コイル部41に流れる高周波電流I1に対応するように、高周波磁界Bが発生する。
図3では、コイル部41に右回りに高周波電流I1が流れる。この場合、右ネジの法則に従って、右回りに高周波磁界Bが発生する。次に、高周波磁界Bを打ち消す向きに誘導電流I2が発生する。なお、誘導電流I2は、高周波電流I1が流れる向きとは逆向きに流れる。これにより、プラズマPが生成される。
【0044】
(誘電体部の内周面に付着する物質による汚れ)
図1に示すように、真空チャンバ2のプラズマ生成空間SP1にプラズマPが発生されるとともに維持される。そして、試料台51にバイアス電力が印加されることにより、プラズマ化されたイオンが、試料台51に載置された半導体基板Kに入射する。そして、半導体基板Kからスパッタされた物質M(導電性物質など)が隔壁の誘電体部7の内周面7bに付着する。
【0045】
ここで、第1実施形態では、
図4に示すように、溝部71の内側面71aが逆テーパ状に構成されているので、誘電体部7の内周面7b側から見て、内側面71aが見えにくくなる。言い換えると、内側面71aの少なくとも一部は、半導体基板Kからスパッタされた物質Mが直進する方向(
図4(a)の矢印参照)から見て、陰(隠れて見えない)となり、物質Mが到達しない非付着領域となる。なお、溝部71の底部71cや、溝部71が設けられていない内側面71aの部分には、半導体基板Kからスパッタされた物質Mは付着する。しかしながら、溝部71の内側面71aには、スパッタされた物質Mが付着しにくいので、
図4(b)に示すように、誘電体部7の内周面7bにおいて、軸線方向Zに沿って、スパッタされた物質Mが付着していない部分N1(溝部71の内側面71a)が生じる。なお、
図4(b)では、実際には、物質Mが付着していない部分は見えないが、説明のため白抜きで示している。また、周方向Cに垂直な平面で切断した断面視における内側面(図示せず)を幅方向(軸線方向Z)の外側に窪むように形成した場合、周方向Cに沿っても、物質Mが付着していない部分N2が生じる。
【0046】
そして、この部分N1およびN2(溝部71の内側面71a)を介して、コイル部41に高周波電流I1が流れることによって発生した高周波磁界Bが、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。なお、高周波磁界Bは、誘電体部7の軸線方向Zに沿って発生しているので、部分N1(溝部71の内側面71a)を介して、容易に(遮られることなく)プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。これにより、プラズマPを安定した状態で維持することができる。
【0047】
第1実施形態では、誘電体部7の内側(内周面7b側)から見て、内側面71aにおいて庇となる(見えない)部分が生じる。その結果、半導体基板Kからスパッタされた物質Mが、内側面71aにおいて庇となる部分の裏側には付着しない。これにより、溝部71の断面が長方形形状または順テーパ形状の場合に比べて、誘電体部7の内周面7bが汚れるのがより抑制されるので、プラズマをより安定した状態で維持することができる。その結果、基板のエッチングレートが変化するのを抑制することができる。また、誘導加熱に起因して、誘電体部7が破損するのを抑制することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、溝部71の互いに対向する内側面71aの少なくとも一部を、溝部71の開口端71bよりも、溝部71の幅方向外側に窪むように形成することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、逆テーパ状の溝部71を、一般的なアリ溝加工や逆テーパ状の溝部が予め形成された金型などの鋳型から一体成型することによって、容易に形成することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、誘電体部7の軸線方向Zに沿うように汚れが付きにくい部分N1が生成されるので、この部分N1を介して、コイル部41により生成された高周波磁界Bは、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。その結果、プラズマを容易に安定した状態で維持することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、溝部71が誘電体部7の軸線方向の端部に達する場合と比べて、誘電体部7の機械的強度を高めることができる。
【0052】
[第1実施形態の変形例]
図5(a)に示すように、軸線方向Zにおいて、溝部72が、誘電体部7の一方端に達しているが他方端に達しないように設けられていてもよい。また、
図5(b)に示すように、溝部73が、誘電体部7の両端に達するように設けられていてもよい。また、
図5(c)に示すように、溝部74が、櫛歯状に設けられていてもよい。つまり、誘電体部7の一方端に達しているが他方端に達しない溝部74と、誘電体部7の一方端には達していないが他方端に達している溝部74とが周方向Cに沿って交互に設けられていてもよい。
【0053】
また、
図5(d)に示すように、溝部75が軸線方向Zに交差するように(かつ、溝部75が誘電体部7の両端に達しないように)設けられていてもよい。また、
図5(e)に示すように、溝部76が軸線方向Zに交差するように(かつ、溝部75が誘電体部7の両端に達するように)設けられていてもよい。なお、溝部75(溝部76)の傾斜の方向は、限定されない。
【0054】
また、
図5(f)に示すように、溝部77が軸線方向Zに沿って不連続に、かつ、軸線方向Zにおける溝部77の高さ位置が揃うように設けられていてもよい。また、
図5(g)に示すように、溝部78が軸線方向Zに沿って不連続に、かつ、溝部78の高さ位置が揃わないように設けられていてもよい。
【0055】
また、
図5(h)に示すように、溝部79が、I字状に設けられていてもよい。また、
図5(i)に示すように、溝部80が、波状に設けられていてもよい。また、
図5(j)に示すように、溝部81が、ジグザグ状に設けられていてもよい。
【0056】
また、
図6(a)に示すように、溝部82の断面視において、溝部82の互いに対向する内側面82aの少なくとも一部が、溝部82の開口端82b側から開口端82bとは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる孤状に構成されていてもよい。つまり、溝部82が楕円状に構成されていてもよい。なお、溝部82の底面が平坦であってもよい。溝部82においても、開口端82bの開口幅W11が、最大幅W12よりも小さいとともに、アスペクト比(=深さD11/開口幅W11)は、1未満が好ましい。上記のように、内側面82aが孤状に構成されていることによって、内側面82aが逆テーパ状の場合と比べて、内側面82aの少なくとも一部がより内周側から見えにくくなるので、溝部82の内側面82aが汚れるのをさらに抑制することができる。
【0057】
また、
図6(b)に示すように、溝部83の断面視において、内側面83aが、溝部83の開口端83b側から開口端83bとは反対側に向かって、略直線状に延びた(一対の内側面83aの間隔が変化しない)後、互いの間隔が徐々に広くなる逆テーパ状に構成されていてもよい。つまり、溝部83が、三角フラスコ形状を有していてもよい。なお、
図6(b)では、開口端83bの幅W13が、最大幅W14よりも小さい。
【0058】
また、
図6(c)に示すように、溝部84の断面視において、内側面84aが、溝部84の開口端84b側から開口端84bとは反対側に向かって、略直線状に延びた(一対の内側面84aの間隔が変化しない)後、互いの間隔が徐々に広くなる孤状に構成されていてもよい。つまり、溝部84が、丸型フラスコ形状を有していてもよい。なお、丸型フラスコ形状の溝部84の底面が平坦であってもよい。また、
図6(c)では、開口端84bの幅W15が、最大幅W16よりも小さい。
【0059】
また、
図6(d)に示すように、溝部85の断面視において、溝部85は、非対称な形状を有する。具体的には、溝部85の断面視において、溝部85は、溝部85の開口端85b側から開口端85bとは反対側に向かって略直線状に延びるとともに、開口端85bとは反対側で略90度屈曲(紙面右方向に屈曲)する略L字形状を有していてもよい。なお、溝部85が、紙面左方向に略90度屈曲してもよい。また、
図6(d)では、開口端85bの幅W17が、最大幅W18よりも小さい。溝部85の断面視において、溝部85が略L字形状を有することによって、溝部85の形状が複雑になるので、汚れをつきにくくすることができる。また、溝部85の奥側で略90度屈曲された部分が、誘電体部7の内周面7b側から見て、完全に見えなくなるので、誘電体部7の内周面7bが汚れるのを確実に抑制することができる。なお、溝部71~85は、特許請求の範囲の「凹部」の一例である。
【0060】
[第2実施形態]
第2実施形態では、
図7(a)に示すように、誘電体部7cでは、溝部86は、円筒形状の誘電体部7cの内周面7dにおいて、円筒形状の誘電体部7cの周方向Cに沿って延びるように設けられている。溝部86は、円周状(つまり、周方向Cに沿って途切れることなく)設けられている。また、溝部86は、誘電体部7cの内周面7dにおいて、軸線方向Zに沿って、略等間隔で複数設けられている。また、内周面7dは、特許請求の範囲の「真空側の面」の一例である。
【0061】
また、
図7(b)に示すように、溝部86の断面は、上記第1実施形態の溝部71と同様に構造を有する。すなわち、溝部86の断面視(周方向Cに垂直な平面で切断した断面視)において、溝部86の互いに対向する内側面86aは、溝部86の開口端86b側から開口端86bとは反対側に向かって、互いの間隔が徐々に広くなる逆テーパ状に構成されている。また、開口端86bの幅W21が、最大幅W22よりも小さいとともに、アスペクト比(=深さD21/開口幅W21)は、1未満が好ましい。
【0062】
そして、
図7(c)に示すように、誘電体部7cの内周面7dにおいて、周方向Cに沿って、スパッタされた物質Mが付着していない部分N3(溝部86の内側面86aに対応する部分)が生じる。そして、この部分を介して、コイル部41に高周波電流I1が流れることによって発生した高周波磁界Bが、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。
【0063】
第2実施形態では、誘電体部7cの周方向Cに沿うように汚れが付きにくい部分N3が生成されるので、この部分N3を介して、コイル部41により発生した高周波磁界Bは、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。その結果、誘電体部7cの内周面7dに溝部86が設けられていない場合に比べて、プラズマをより安定した状態で維持することができる。
【0064】
[第2実施形態の変形例]
図8(a)および
図8(b)に示すように、溝部86c(溝部86d)が、周方向Cに交差するように設けられていてもよい。また、溝部が螺旋状に設けられていてもよい。
【0065】
また、
図9(a)に示すように、断面視において、溝部87aが楕円状であってもよい。また、
図9(b)に示すように、断面視において、溝部87bが三角フラスコ状であってもよい。また、
図9(c)に示すように、断面視において、溝部87cが丸型フラスコ状であってもよい。また、
図9(d)に示すように、断面視において、溝部87dが略L字形状であってもよい。なお、溝部87a~溝部87dの構成は、それぞれ、上記第1実施形態の変形例の溝部82~溝部85の構成と同様である。
【0066】
また、
図9(e)に示すように、断面視において、溝部87eの形状が、平行四辺形形状であってもよい。この場合、内側面87fは、円筒形状の誘電体部7cの中央に向かって斜め上方に傾斜するように設けられる。これにより、下方に配置された半導体基板Kから飛来する物質Mは、下方側の内側面87f(非付着領域)に付着しにくくなる。なお、溝部86、86c、86d、87a~87eは、特許請求の範囲の「凹部」の一例である。
【0067】
[第3実施形態]
第3実施形態では、
図10(a)に示すように、誘電体部7eには、円筒形状の誘電体部7eの軸線方向Zに沿って延びるように設けられている第1溝部88aと、周方向Cに沿って延びるように設けられている第2溝部88bとが設けられている。第1溝部88aと第2溝部88bとは、それぞれ、複数個ずつ設けられている。また、第1溝部88aは、誘電体部7eの内周面7fにおいて、軸線方向Zの両端に達しないように設けられている。なお、第1溝部88aおよび第2溝部88bの構成は、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、および、第2実施形態の変形例と同様である。また、内周面7fは、特許請求の範囲の「真空側の面」の一例である。
【0068】
そして、
図10(b)に示すように、誘電体部7eの内周面7fにおいて、軸線方向Zおよび周方向Cに沿って、スパッタされた物質Mが付着していない部分N4(第1溝部88aおよび第2溝部88bの内側面に対応する部分)が生じる。そして、この部分N4を介して、コイル部41に高周波電流I1が流れることによって発生した高周波磁界Bが、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。
【0069】
[第3実施形態の変形例]
図11(a)に示すように、第1溝部89aが、誘電体部7eの内周面7fにおいて、軸線方向Zの両端に達するように設けられていてもよい。また、
図11(b)に示すように、第1溝部89bが、誘電体部7eの内周面7fにおいて、軸線方向Zの一方端のみに達するように設けられていてもよい。また、
図11(c)に示すように、軸線方向Zの一方端のみに達する第1溝部89cと、軸線方向Zの両端に達する第1溝部89dとが、周方向Cに沿って、交互に設けられていてもよい。なお、溝部88a、88b、89a~89dは、特許請求の範囲の「凹部」の一例である。
【0070】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、逆テーパ状、楕円状、三角フラスコ状、および、丸型フラスコ状の溝部において、一対の内側面の両方が逆テーパ状(円弧状)である例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、一対の内側面の一方のみが、逆テーパ状(円弧状)であってもよい。すなわち、一対の内側面の一方のみが、凹部の開口端よりも凹部の幅方向外側に窪むように構成されていてもよい。
【0072】
また、上記第1および第2実施形態では、誘電体部の内周面に溝部が設けられている例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、
図12(a)に示すように、誘電体部7gの内周面7hに、複数の凹部90が設けられていてもよい。複数の凹部90は、行列状に配置されている。また、複数の凹部90の各々は、略正方形形状を有する。なお、凹部90の内側面は、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、および、第2実施形態の変形例と同様である。そして、
図12(b)に示すように、誘電体部7gの内周面7hにおいて、枠形状の、スパッタされた物質Mが付着していない部分N5が生じる。そして、この部分N5を介して、コイル部41に高周波電流I1が流れることによって発生した高周波磁界Bが、プラズマ生成空間SP1に侵入することができる。また、内周面7hは、特許請求の範囲の「真空側の面」の一例である。
【0073】
また、上記第1~第3実施形態では、誘導結合プラズマエッチング装置によって、半導体基板がエッチングされる例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、誘導結合プラズマエッチング装置を、半導体基板以外の基板をエッチングするように構成してもよい。
【0074】
また、上記第1~第3実施形態では、誘電体部が1つの円筒形状により構成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、特開2002-334800号公報のように、円環状の外壁と、円環状の外壁の内側に円環状の内壁とを設けるとともに、外壁と内壁とを底部において接続するように誘電体部を構成し(つまり、誘電体部を溝槽状に構成し)、外壁と内壁との間にコイル部を配置してもよい。なお、特開2002-334800号公報では、誘電体部の外側および内側に高導電性または低伝導性のデポジション・シールドが設けられている。デポジション・シールドは、処理空間の内部で生成されたプラズマによる相互作用(スパッタされた物質)から誘電体部を保護する。一方、本願では、誘電体部に溝部(または、凹部)が設けられていることにより、デポジション・シールドを設ける必要がない。また、特開2003-59914号公報のように、凸状に突き出た筒状窓(
図1の符号26参照)(本願でいうところの円筒形状を有する誘電体部に相当)において、コイル部が筒状窓(つまり円筒形状を有する誘電体部)の円筒形状領域である(円筒形状領域をなす)側面でかつ大気側に巻回されている構成でもよい。この場合、誘電体部の円筒形状部分の内壁側である大気側にコイル部が存在し、誘電体部の円筒形状部分の外壁側である真空側に溝部が設けられる。なお、特開2003-59914号公報では、プラズマ室14とウェーハWとの間にガス供給ヘッド16が存在する。一方、本願ではこのガス供給ヘッド16は存在せず、スパッタ物がガス供給ヘッド16に付着することによるガス供給ヘッド16のガス穴の目詰まりによるエッチレートの低下などを防ぐことができる。上記変形例における溝部の構成は、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例と同様である。なお、溝部を、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態および第3実施形態の変形例と同様に構成してもよい。また、これらの変形例は、上記第1~第3の実施形態のチャンバ構造に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 誘導結合プラズマエッチング装置 2 真空チャンバ 4 プラズマ生成機構 7、7c、7e、7g 誘電体部 7a 外周面(側面) 7b、7d、7f、7h 内周面(真空側の面) 41 コイル部 71a、82a、83a、84a、85a、86a、87f 内側面 71b、82b、83b、84b、85b、86b 開口端 71~86、86c、86d、87a~87e、88a、88b、89a~89d 溝部(凹部) 90 凹部 K 半導体基板(基板) SP1 プラズマ生成空間(真空空間)