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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】慣性センサを備えた真空弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/02 20060101AFI20230919BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
F16K51/02 Z
F16K37/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019566094
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067464
(87)【国際公開番号】W WO2019002489
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】17179083.5
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン エシェンモーザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホーファー
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074415(WO,A1)
【文献】特開平11-148328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0362090(US,A1)
【文献】特開2008-121859(JP,A)
【文献】特表2010-534302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/02
F16K 37/00
F16K 3/10,3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するための真空弁であって、
・開口軸線(5)を定める弁開口(2)と、該弁開口(2)を包囲している第1のシール面(6a)とを有する弁座(3)と、
・-体積流量または質量流量の制御および
-流路の遮断
の、少なくとも一方のために形成され、かつ前記第1のシール面(6a)に対応する第2のシール面(6b)を有する弁閉鎖部材(4)であって、
・前記弁閉鎖部材(4)は、該弁閉鎖部材(4)と連結された駆動ユニット(8)を備える、弁閉鎖部材(4)と、を備えており、該駆動ユニット(8)は、
前記弁閉鎖部材(4)が、
-その時々の弁開口状態を提供するために所定のように可変かつ調節可能であり、かつ
-前記弁閉鎖部材(4)が前記弁開口(2)を少なくとも部分的に開放する開放位置(O)から、前記第2のシール面(6b)が前記第1のシール面(6a)の方に押圧されかつ前記弁開口(2)が実質的に気密に閉鎖されている閉鎖位置(G)へ、かつその逆に変位可能であるように、
形成されている、真空弁において、
当該真空弁はさらに、少なくとも1つの慣性センサ(11a)を備えたセンサユニットを有しており、該センサユニットは、当該真空弁に生じる加速度に関する測定信号を検出するように形成されており、
前記センサユニットは、前記測定信号に基づき、次に挙げる場所、すなわち、
・シール(10)の少なくとも一部と前記第1のシール面(6a)の少なくとも一部との間、および
・前記シール(10)の少なくとも一部と前記第2のシール面(6b)の少なくとも一部との間
のうちの少なくとも1つに摩擦振動により生じる加速度が検出されるように配置されかつ形成されており、
前記真空弁はさらに、前記センサユニットを制御しかつ前記駆動ユニット(8)により前記弁閉鎖部材(4)を前記開放位置(O)と前記閉鎖位置(G)との間で変位させるように形成された、管理・制御ユニットを有しており、
前記管理・制御ユニットは、当該真空弁により制御される複数のプロセスの測定値の傾向監視に基づき、
・当該真空弁のシールの摩耗の増大に関する警告、および
・当該真空弁のシールの耐久性に関する予測
のうちの一方または両方を含む出力信号を供給するように形成されていることを特徴とする、真空弁。
【請求項2】
前記管理・制御ユニットは、前記センサユニットによる測定値に基づき周波数スペクトルを提供するように形成されている、請求項記載の真空弁。
【請求項3】
前記管理・制御ユニットは、1つまたは複数の測定値周波数に関する前記測定値の分析に基づき、各測定値周波数を生ぜしめる振動の位置確認に関する出力信号を供給するように形成されている、請求項記載の真空弁。
【請求項4】
前記管理・制御ユニットは、予め規定された誤差値による前記測定値の補正に基づき、当該真空弁により制御されるプロセスの評価に関する出力信号を供給するように形成されている、請求項または記載の真空弁。
【請求項5】
前記管理・制御ユニットは、
・閉鎖過程中に前記開口軸線に対して平行に測定される加速度値および
・連結構成部材の少なくとも1つの既知の強度値
に基づき、前記弁閉鎖部材(4)が前記閉鎖位置(G)において前記弁座(3)に当接する圧着力を決定するように形成されている、請求項からまでのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項6】
前記センサユニットは、前記測定信号に基づき、前記駆動ユニット(8)に生じる加速度が検出されるように配置されかつ形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項7】
前記センサユニットは、前記測定信号に基づき、外部から当該真空弁に作用する加速度が検出されるように配置されかつ形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項8】
前記センサユニットは、少なくとも1つの慣性センサが、次に挙げる場所、すなわち、
・前記第1のシール面の少なくとも一部を有する前記弁座(3)の一部、
・前記第2のシール面の少なくとも一部を有する前記弁閉鎖部材(4)の一部、
・弁ケーシング(17)、および
・前記駆動ユニット(8)のケーシング
のうちの少なくとも1つに配置されているように形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項9】
・前記駆動ユニット(8)は、前記弁ケーシング(17)と結合されており、かつ
・前記弁閉鎖部材(4)は、連結構成部材を介して前記駆動ユニット(8)と連結されている、請求項記載の真空弁。
【請求項10】
前記センサユニットは、次に挙げる慣性センサ、すなわち、
・所定の方向に向けられた少なくとも1つの軸線に沿って加速度を検出する加速度センサ、および
・所定の方向に向けられた少なくとも1つの軸線を中心とした回転速度または回転加速度を検出するヨーレートセンサ
のうちの少なくとも1つを有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項11】
当該真空弁は、外部環境から隔離された真空領域を規定しており、前記測定信号に寄与する前記センサユニットの慣性センサは、前記真空領域の外側に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の真空弁。
【請求項12】
前記弁座(3)は、
・当該真空弁の一部により形成される、または、
・プロセスチャンバにより提供されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の真空弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの慣性センサを備えたセンサユニットを有する真空弁に関する。
【0002】
一般に、体積流量または質量流量を制御するためおよび/または弁ケーシングに加工成形された開口に通じる流路を実質的に気密に閉鎖するための真空弁は、従来技術から様々な実施形態において周知であり、特に保護雰囲気中で可能な限り汚染粒子の存在無しで行われねばならないIC製造、半導体製造または基板製造の分野で真空チャンバシステムに使用される。このような真空チャンバシステムは、特に加工または製造しようとする半導体素子または基板を収容するために設けられる、排気可能な少なくとも1つの真空チャンバを有しており、真空チャンバは、半導体素子または別の基板を真空チャンバ内へ導入可能かつ真空チャンバから導出可能な少なくとも1つの真空チャンバ開口ならびに真空チャンバを排気するための少なくとも1つの真空ポンプを有している。例えば半導体ウェハまたは液晶基板用の製造設備内では、高感度の半導体素子または液晶素子が連続的に複数のプロセス真空チャンバを通走し、これらのプロセス真空チャンバにおいて、その内部に位置する部品がその都度、加工装置により加工される。プロセス真空チャンバ内での加工処理中も、チャンバからチャンバへの移動中も、高感度の半導体素子または基板は、常に保護雰囲気中-特に真空環境中-に位置していなければならない。
【0003】
このために一方では、気体供給部または気体放出部を開閉するためには外周弁が使用され、かつ他方では、部品の導入および導出用の真空チャンバの移動開口を開閉するためには切換弁が使用される。
【0004】
半導体部品を通す真空弁は、説明した使用分野およびこれに関係する寸法設定に基づき真空切換弁と呼ばれ、真空弁のほぼ矩形の開口横断面に基づき矩形弁とも呼ばれ、かつ真空弁の一般的な機能形式に基づき摺動弁、矩形スライダまたは切換摺動弁とも呼ばれる。
【0005】
外周弁は、特に真空チャンバと真空ポンプまたは別の真空チャンバとの間の気体流をコントロールまたは制御するために使用される。外周弁は、例えばプロセス真空チャンバまたは移動チャンバと、真空ポンプ、雰囲気または別のプロセス真空チャンバとの間の管系内に位置している。ポンプ弁とも呼ばれるこのような弁の開口横断面は、一般に真空切換弁におけるよりも小さくなっている。外周弁は、使用分野に応じて開口を完全に開閉するためだけでなく、完全な開放位置と気密な閉鎖位置との間で開口横断面を連続的に調節することにより、流量をコントロールまたは制御するためにも使用されるため、外周弁は制御弁とも呼ばれる。気体流を制御または制御するための1つの可能な弁は、揺動弁である。
【0006】
例えば米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から公知のような典型的な揺動弁では、第1のステップにおいて、通常は円形の弁板が、やはり通常は円形の開口の上に、開口を開放する位置から、開口を覆う中間位置へ、回転式に旋回させられる。例えば米国特許第6416037号明細書(Geiser)または米国特許第6056266号明細書(Blecha)に記載されたような摺動弁の場合には、弁板は開口と同じく、大抵は矩形に形成されており、前記第1のステップにおいて、開口を開放する位置から、開口を覆う中間位置へ直線的に摺動させられる。この中間位置において、揺動弁または摺動弁の弁板は、開口を包囲する弁座に対して離間された対向位置に位置している。第2のステップにおいて、弁板と弁座との間の距離は縮小され、これにより、弁板と弁座とは互いに均一に押圧されることになり、開口が実質的に気密に閉鎖される。この第2の運動は、好適には弁座に対して実質的に垂直な方向に行われる。シールは、例えば弁板の閉鎖側に配置され、開口を包囲する弁座に押し付けられるシールリングを介して行われるか、または弁板の閉鎖側が押し付けられる、弁座に設けられたシールリングを介して行われる。2つのステップで行われる閉鎖過程により、シールリングが弁板と弁座との間でシールリングを破壊する恐れのある剪断力を受けることはほとんど無い。それというのも、第2のステップにおける弁板の運動が、弁座に対して実質的に直線的に垂直に行われるからである。
【0007】
異なるシール装置が、従来技術から、例えば米国特許第6629682号明細書(Duelli)から公知である。真空弁におけるシールリングおよびシールに適した材料は、例えばFKMとも呼ばれるフッ素ゴム、特に商品名「Viton」で知られているフッ素エラストマ、ならびにパーフルオロゴム、略してFFKMである。
【0008】
従来技術から、揺動弁の場合の弁板の回動運動と、摺動弁の場合の弁板の、開口を覆う平行な並進運動および実質的に開口に垂直に向かう並進運動との組合せを得るための、複数の異なる駆動システムが、例えば揺動弁に関しては前掲の米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から、かつ摺動弁に関しては前掲の米国特許第6416037号明細書(Geiser)から公知である。
【0009】
弁座に対する弁板の圧着は、所要の気密性が全押圧領域内で保証されていると共に、極度に高い加圧によるシール媒体、特にOリングの形態のシールリングの損傷が回避されるように行われる必要がある。このことを保証するために、周知の弁は、弁板の両面間で支配的な圧力差に応じて制御される、弁板の圧着圧力制御を想定している。ただし特に、大きな圧力変動または負圧から過剰圧力へのまたはその逆の変化に際して、シールリングの全周に沿って均一な力分布を常に保証することはできない。一般に、弁に加えられる圧力から生じる支持力からシールリングを分離することを目標とする。このために前掲の米国特許第6629682号明細書(Duelli)では、例えばシールリングと隣接する支持リングとから構成されたシール媒体を備えた真空弁が提案され、シールリングは支持力から実質的に解放されている。
【0010】
場合により過剰圧力と負圧の両方に対して必要とされる気密性を達成するために、少なからぬ周知の揺動弁または摺動弁が、第2の運動ステップに対して追加的または択一的に、弁板に対して垂直に摺動可能であり、開口を包囲している弁リングを想定しており、弁リングは、弁を気密に閉じるために弁板に対して押圧される。弁板に対して相対的に能動的に摺動可能な弁リングを備えたこのような弁は、例えば独国特許出願公告第1264191号明細書、独国特許発明第3447008号明細書、米国特許第3145969号明細書(von Zweck)および西独国実用新案公開第7731993号明細書から公知である。米国特許第5577707号明細書(Brida)には、開口を有する弁ケーシングと、開口上を平行に旋回可能な弁板とを備えた、開口を通る流量を制御するための揺動弁が記載されている。開口を包囲する弁リングは、複数のばねおよび圧縮空気シリンダにより、弁板に向かって垂直に能動的に可動である。この揺動弁の可能な改良は、米国特許出願公開第20050067603号明細書(Lucas他)において提案される。
【0011】
上記弁はとりわけ、高感度の半導体素子の製造において真空チャンバ内で使用されるため、このようなプロセスチャンバのためにも相応のシール作用が確実に保証されていなければならない。このためには特に、シール材料または加圧時にシール材料と接触するシール面の状態が重要である。真空弁の運転時間が経過するにつれて、典型的にはシール材料またはシール面の摩耗が生じる恐れがある。
【0012】
この場合、場合により生じる非密閉性を回避するため、またはシールの質を十分に高い一定のレベルに保つために、弁閉鎖部材は、典型的には所定の時間間隔で交換されるもしくは新しくされる。この場合、このような保守サイクルは、大抵所定の期間内に予測され得る開放サイクルおよび閉鎖サイクルの数に対して設定される。つまり、保守は大抵用意周到に、非密閉性の発生を事前に十分に排除することができるように行われる。
【0013】
このような保守要求は、シール材料または弁板だけに限られるものではなく、特に真空弁の、弁板に対応する構成部材を形成する弁座にも及ぶ。弁座側のシール面、例えば弁座に形成された溝の構造は、機械的な荷重にも関係する。よって、弁の運転の結果生ぜしめられる溝の構造的な変化も、シールを損なう恐れがある。このためにも、通常は相応する保守間隔が規定されている。
【0014】
この弁保守の1つの欠点は、その用意周到な特徴にある。保守に関係する構成部材は、大抵その正規のまたは実際の耐用年数を経過する前に新しくされるかまたは交換される。さらに、このような各保守ステップは一般に、製造プロセスに関してある程度の停止時間や、技術的な手間および財政的な支出の増加を意味する。この場合、このことは全体として、必要とされているよりも短い間隔での、必要と考えられているよりも頻繁な製造停止状態を意味する。
【0015】
よって本発明の根底を成す課題は、最適化された弁保守ひいては場合により生じるプロセス停止状態の改善すなわち短縮を可能にする、改良された真空弁を提供することにある。
【0016】
本発明の別の課題は、処理容積のより確実な気密なシールを達成することができ、特にこの場合、シールの質を予測することができるような弁システムを提供することにある。
【0017】
これらの課題は、各独立請求項記載の特徴の実現により解決される。本発明を択一的または有利に改良する特徴は、各従属特許請求項から看取され得る。
【0018】
本発明に基づき、真空弁と慣性センサとが組み合わされ、この組合せにより真空弁の監視を行うことができるように構成される。センサにより、時間および/または周波数に関連した測定信号が検出され得、これらの測定信号を用いて、真空弁に関する状態情報を導出することもできる。
【0019】
つまりこれにより、真空弁の状態を監視すると共に、連続して評価することができる。このようにして形成可能なデータを用いて、個々のコンポーネント、例えば駆動装置内の潤滑グリースの保守時点もしくは交換時点を決めることができる。
【0020】
よって例えば、弁のシールの故障が十分に予測され得ると共に、時間的または場所的に正確に制御された対応策が推奨または導入され得る。これにより、保守間隔を改良して計画することができると共に、より効率的に実施することができ、この場合同時に、プロセスの完全性が守られて確保され続ける。
【0021】
例えば駆動装置またはエラストマシール材料の構成部材の振動特性が、真空弁の重要な状態情報と見なされてよい。
【0022】
本発明は、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するための真空弁、特に真空摺動弁、揺動弁またはモノバルブであって、弁ケーシング、弁座を備えており、弁座は、開口軸線を定める弁開口と、弁開口を包囲している第1のシール面とを有しており、体積流量または質量流量の制御および流路の遮断の、少なくとも一方のために形成され、第1のシール面に対応する第2のシール面を有する弁閉鎖部材、特に弁板を備えており、弁閉鎖部材と連結された駆動ユニットを備えており、駆動ユニットは、弁閉鎖部材がその時々の弁開口状態を提供するために所定のように可変かつ調節可能であると共に、弁閉鎖部材が弁開口を少なくとも部分的に開放する開放位置から、第2のシール面が第1のシール面の方に押圧されかつ弁開口が実質的に気密に閉鎖されている閉鎖位置へ、かつその逆に変位可能であるように、形成されており、この場合、真空弁はさらに、少なくとも1つの慣性センサを備えたセンサユニットを有しており、センサユニットは、弁に生じる加速度に関する測定信号を検出するように形成されている。
【0023】
真空弁はさらに、センサユニットを制御しかつ駆動ユニットにより弁閉鎖部材を開放位置と閉鎖位置との間で変位させるように形成された、管理・制御ユニットを有していてよい。特に、測定信号の評価に基づき、前記制御式の変位に介入することもできる。このようにして例えば、異常なもしくは数値的に極度に高い加速度がシステム内に生じた場合に、プロセスを完全に停止させる(緊急停止)か、または減速させることができる。
【0024】
管理・制御ユニットは、測定値に基づき周波数スペクトルを提供するように形成されていてよい。測定値としては、特に加速度値が時間にわたり描かれて記録される。この場合、そこから必要に応じて、時間と共に(例えば弁閉鎖部材が移動する間に)変化し得る周波数スペクトルを導出することができる。
【0025】
管理・制御ユニットはさらに、1つまたは複数の測定値周波数に関する測定値の分析に基づき、各測定値周波数を生ぜしめる振動の位置確認に関する出力信号を供給するように形成されていてよい。例えば低い周波数からは比較的大きな構成部材の振動または外部から導入された振動が推量され得、かつ高い周波数からは比較的小さな構成部材の振動が推量され得ることにより、例えば前記位置確認は、特徴的な周波数の検出を介して実現され得る。個々の構成部材がそれぞれ励振させられる相応の試験を実施することにより、前記のような特徴的な周波数をその都度「習得」し、出力信号の検出パターンとして用いることができる。
【0026】
管理・制御ユニットは同様に、予め規定された誤差値による測定値の補正に基づき、真空弁により制御されるプロセスの評価に関する出力信号を供給するように形成されていてよい。このようにして例えば、出力信号として、システム内に数値的に極度に高い加速度が生じたという内容であり得る警告を発することができる。特にこのような警告は、複数の測定値または1つの測定値が誤差値範囲を逸脱するかまたは誤差値範囲に接する場合に発せられてよい。
【0027】
さらに、管理・制御ユニットは、真空弁により制御される複数の、特に同様のプロセスの測定値の傾向監視に基づき、真空弁のコンポーネントの摩耗の増大に関する警告および真空弁のコンポーネントの耐久性に関する予測のうちの一方または両方を含む出力信号を供給するように形成されていてよい。真空弁のコンポーネントの摩耗の増大に関する警告は、例えば傾向監視の枠内で、システム内の振動振幅がプロセスを追う毎に、誤差増大率によるよりも急速に増大することが確認された場合に行われてよい。真空弁のコンポーネントの耐久性に関する予測は、例えば傾向監視の枠内で確認される振幅増大または振動増大傾向が、プロセスを追う毎に測定されるか、または補間法により算出され、このような傾向が許容限界まで継続することがシミュレートされることにより、行われてよい。
【0028】
また管理・制御ユニットは、閉鎖過程中に開口軸線に対して平行に測定される加速度値および連結構成部材の少なくとも1つの既知の強度値、特に連結構成部材の寸法に関係するE率またはG率に基づき、弁閉鎖部材が閉鎖位置において弁座に当接する圧着力を決定するように形成されていてもよい。特にこのことは、加速度値の積分により行うことができ、これにより、やはり力に対する連結構成部材の剛性の知識を用いて算出可能な移動距離もしくは歪み距離を求めることができる。加速度値の積分の開始点としては、例えば閉鎖過程での弁閉鎖部材と弁座との間の最初の接触が用いられてよい。この最初の接触も同様に、加速度値に基づき検出され得る。このために使用される1つまたは複数のセンサは、例えばそれぞれが例えば駆動装置のケーシングまたは連結部材(アームもしくはロッド)に配置されていてよいヨーレートセンサおよび/または加速度センサであってよい。
【0029】
センサユニットは、測定信号に基づき、次に挙げる場所、すなわち、シールの少なくとも一部と第1のシール面の少なくとも一部との間、およびシールの少なくとも一部と第2のシール面の少なくとも一部との間のうちの少なくとも1つに生じる摩擦振動により生じる加速度が検出されるように配置されかつ形成されていてよい。
【0030】
センサユニットは、測定信号に基づき、駆動ユニットに生じる加速度が検出されるように配置されかつ形成されていてよい。そこで測定される加速度は、例えば潤滑グリースの不足または劣化により、移送部損傷としての伝動装置損傷により、または衝突の結果生じ得る。一般的に見て、加速度は、例えばやはりすり減りまたは摩耗により生じる、システム内の摩擦の増大により生じ得る。
【0031】
センサユニットは、測定信号に基づき、外部から真空弁に作用する加速度が検出されるように配置されかつ形成されていてよい。このようにして、例えば地震または環境内で生じた作業事故を検出することができると共に、場合により、例えば現在進行中のプロセスの休止等の対策を提案または実施することができる。
【0032】
センサユニットは、少なくとも1つの慣性センサが、次に挙げる場所、すなわち、第1のシール面の少なくとも一部を有する弁座の一部、第2のシール面の少なくとも一部を有する弁閉鎖部材の一部、弁ケーシング、および駆動ユニットのケーシングのうちの少なくとも1つに配置されているように形成されていてよい。
【0033】
センサユニットは、次に挙げる慣性センサ、すなわち、所定の方向に向けられた少なくとも1つの軸線に沿って加速度を検出する加速度センサ、および所定の方向に向けられた少なくとも1つの軸線を中心とした回転速度または回転加速度を検出するヨーレートセンサのうちの少なくとも1つを有していてよい。このように、弁内または弁における複数の異なる場所に、異なる種類の複数の慣性センサが配置されていてよい、つまり例えばジャイロスコープまたはヨーレートセンサが連結構成部材に配置されていると共に、加速度センサが駆動装置ケーシングに配置されていてよい。極一般に、加速度センサは、少なくとも1つの直線軸線に沿った加速度を、特にそれぞれが互いに垂直に位置する3つの空間軸線内で三次元的に検出する。
【0034】
駆動ユニットは、弁ケーシングと結合されていてよく、弁閉鎖部材は、連結構成部材を介して駆動ユニットと連結されていてよい。連結構成部材は、連結構成部材を管理してガイドするための、弁ケーシングに結合された支持部材に当て付けられていてよい。
【0035】
真空弁は、外部環境から隔離された真空領域を定めることができ、測定信号に寄与するセンサユニットの慣性センサは、真空領域の外側に配置されていてよい。
【0036】
弁座は、真空弁の一部により形成され得、特にこの場合、弁座は真空弁のケーシングに形成されているか、またはプロセスチャンバ、特にチャンバケーシングにより提供されていてよい。
【0037】
以下に、本発明による真空弁を、概略的に図示した実施例に基づき純粋に例示的に、より詳しく説明する。同一部材は図中、同一符号で表されている。説明する実施形態は通常、縮尺通りには図示されておらず、また限定的であると理解されるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1aおよび図1bは、揺動弁として可能な本発明による真空弁の1つの実施形態を示す図である。
図2図2a~図2cは、切換弁として可能な本発明による真空弁の1つの実施形態を示す図である。
図3図3aおよび図3bは、切換弁内に設けられ、2つの慣性センサを備えた本発明によるセンサユニットを示す概略図である。
図4図4aおよび図4bは、モノバルブ内に設けられた、本発明による別のセンサユニットを示す概略図である。
図5図5a~図5eは、真空弁変位、記録された加速度測定値、ならびに測定値の例示的な評価を示す概略図である。
【0039】
図1aおよび図1bには、本発明による弁の1つの可能な実施形態が、揺動弁の形態で概略的に示されている。流路を実質的に気密に遮断するための弁は、弁ケーシング1を有しており、弁ケーシング1は開口2を有している。開口2は、ここでは例えば円形の横断面を有している。開口2は、弁座3により包囲される。この弁座3は、軸方向において弁板4(弁閉鎖部材)の方を向きかつ開口軸線5に対して横方向に延在する、円環の形状を有するシール面6aにより形成され、シール面6aは、弁ケーシング1に加工成形されている。弁板4は、旋回可能でありかつ開口軸線5に対して実質的に平行に変位可能である。弁板4の閉鎖位置G(図1b)において、開口2は弁板4により気密に閉鎖されている。弁板4の開放位置Oは、図1aに具体的に示されている。
【0040】
弁板4は、板の側方に配置され、開口軸線5に対して垂直に延在するアーム7(連結構成部材)を介して、駆動装置8(駆動ユニット)と結合されている。前記アーム7は、弁板4の閉鎖位置Gでは、開口軸線5に沿って幾何学的に投影された、開口2の開口横断面の外側に位置している。
【0041】
駆動装置8は、相応する伝動装置の使用により、弁板4が-揺動弁では一般的であるように-駆動装置8の旋回運動xにより、開口軸線5に対して横方向に、かつ開口2の横断面上を実質的に平行に、かつ開口軸線5に対して垂直に、旋回軸線9を中心として、開放位置Oと中間位置との間で旋回可能であると共に、開口軸線5に対して平行に行われる駆動装置8の長手方向運動yにより直線的に摺動可能であるように形成されている。開放位置Oにおいて、弁板4は開口2に隣接して側方に配置された滞留区間に位置決めされており、これにより開口2および流路が開放されている。中間位置において、弁板4は開口2の上に離間されて位置決めされており、開口2の開口横断面を覆っている。閉鎖位置では、弁閉鎖部材4(弁板)と弁座のシール面6aとの間に気密な接触が生じることにより、開口2は気密に閉鎖されており、流路は遮断されている。
【0042】
弁の自動化されかつ制御される開閉を可能にするために、弁は例えば、弁板4が処理容積を気密に閉鎖するためまたはこの容積の内部圧力を制御するために相応に変位可能であるように形成されかつ駆動装置8に接続された、電子制御・コントロールユニット(管理・制御ユニット)を想定している。例えば管理・制御ユニットは、駆動装置8のケーシング内に組み込まれているか、またはデータ線路接続を介して外部に収容されている。
【0043】
本実施例では、駆動装置8は電動モータとして形成されており、この場合、伝動装置は、駆動装置8の駆動により横方向運動xまたは長手方向運動yのいずれかが生ぜしめられるように切換可能である。駆動装置8および伝動装置は、制御装置により電子制御される。このような、特にリンクモーションを伴う伝動装置は、従来技術から周知である。さらに、横方向運動xおよび長手方向運動yを生ぜしめるために複数の駆動装置を使用することが可能であり、この場合は制御装置が駆動装置の制御を引き受ける。
【0044】
説明した揺動弁による流量の精密な制御もしくは設定は、開放位置Oと中間位置との間での横方向運動xによる弁板4の旋回変位によってだけでなく、とりわけ中間位置と閉鎖位置との間での長手方向運動yによる開口軸線5に沿った弁板4の直線変位により可能である。説明した揺動弁は、精密に制御する役目を果たすために使用され得る。
【0045】
弁板4と弁座3とは両方共、各1つのシール面6a,6b-第1および第2のシール面-を有している。第1のシール面6aはさらに、シール10を有している。このシール10は、例えばポリマとして加硫されることにより、弁座3に被着されていてよい。択一的に、シール10は例えばOリングとして、弁座3の溝内に形成されていてよい。また、封止材料が弁座3に接着されており、これによりシール10を体現することもできる。1つの択一的な実施形態では、シール10は弁板4の側に、特に第2のシール面6bに配置されていてよい。また、これらの構成の組合せも考えられる。
【0046】
弁板4は、例えば調整値および送出された制御信号に基づき可変に制御される。入力信号として、例えば弁と接続された処理容積内の現在の圧力状態に関する情報が受信される。さらに、制御装置に別の入力値、例えば容積内への質量流量が提供され得る。次いで、これらの値および予め設定された、容積に関して制御もしくは達成しようとする目標圧力に基づき、制御サイクル時間にわたり制御される弁の設定が行われ、これにより、容積から流出する質量流量を、弁を介して前記時間にわたって制御することができる。このために弁の下流側には真空ポンプが設けられている、すなわち、弁はプロセスチャンバとポンプとの間に配置されている。これにより、所望の圧力推移が制御され得る。
【0047】
弁閉鎖部材4の制御により、弁開口2のその時々の開口横断面が制御されひいては単位時間毎に処理容積から排気することが可能な気体量が制御される。このために弁閉鎖部材4は、円環形状とは異なる形状を有していてよく、これにより特に、可能な限り層状の媒体流が達成され得る。
【0048】
開口横断面を制御するために、弁板4は制御・コントロールユニットにより、駆動装置8の横方向運動xを介して開放位置Oから中間位置へ変位可能でありかつ駆動装置8の長手方向運動yを介して中間位置から閉鎖位置へ変位可能である。流路を完全に開放するためには、弁板4が制御装置により駆動装置8の長手方向運動yを介して閉鎖位置から中間位置へ変位可能であり、そこからは駆動装置8の横方向運動xを介して中間位置から開放位置Oへ変位可能である。
【0049】
弁座3に対する弁板4の圧着は、全押圧領域内で所要の気密性が保証されていると共に、極度に高い加圧によるシール10の損傷が回避されるように行われる必要がある。このことを保証するために、周知の弁は、弁板の両面間を支配する圧力差に応じて制御される、弁板4の圧着圧力制御を想定している。
【0050】
ただし特に、大きな圧力変動または負圧から過剰圧力へのまたはその逆の変化に際して、制御プロセス中、すなわち開口横断面の変化中に均一な力分布を常に保証することはできない。つまり弁荷重に応じて、例えばシール10(シール材料)、弁板4およびシール面6a,6bには異なる荷重が加えられ、これにより、例えば弁荷重に応じて可変の有効保守間隔が生ぜしめられる。
【0051】
従来技術では、場合により生じる非密閉性を回避するため、またはシールの質を十分に高い一定のレベルに保つために、弁閉鎖部材は、典型的には用意周到に決められた時間間隔で交換されるもしくは新しくされる。このことはとりわけ、弁構成部材が大抵はその正規のまたは実際の耐用年数を経過する前に新しくされるかまたは交換される、という欠点を有している。
【0052】
本発明に基づき、真空弁は、少なくとも1つの慣性センサ、図示の例では駆動ユニット8のケーシングに設けられた加速度センサ11aを備えたセンサユニットを有しており、これにより、例えば真空弁のシール摩耗の監視または駆動ユニットの監視を行うことができる。
【0053】
例えば慣性センサ11aにより、互いに対応し合うシール面6a,6bのうちの一方と、シール面6a,6b間に位置するシール10との間の摩擦振動の検出を、プロセスチャンバの圧力変動または他の構成部材の摩耗に関係無く行うことができる。つまり、前記のような振動および別の振動を、処理継続時間にわたり、例えばリアルタイムで検出することができる。特に、複数の処理にわたって前記のような記録が収集され、動向監視の枠内で分析される。これにより、シール摩耗の推移を監視することができ、このように実際の摩耗に相応して、保守間隔を動的に制御することができる。
【0054】
センサユニットにより測定信号が検出され得、これらの信号に基づき真空弁の状態情報が、弁に生じている加速度に関して導出され得る。つまり真空弁の特性を監視し、継続して評価することができる。
【0055】
図示の例では、加速度センサ11aは、例えばケーシング表面に対して垂直な、少なくとも1回の並進における、例えば駆動装置ケーシング8に対する加速度を検出する。これにより結果として、開口軸線5に対して垂直に行われる振動が記録される。特に本発明によるセンサユニットは、3つの空間軸線全てにおいて、すなわち三次元で加速度が検出されるように構想されている。択一的または追加的に、回動の速度もしくは加速度も、センサユニットに含まれる1つまたは複数のヨーレートセンサにより検出され得る。各軸線およびその向きは、必要に応じて構成され得る。
【0056】
記録された振動の周波数分析および/または振幅分析により、その都度振動源を求めることができる。このような位置確認は、場合により経験値または個々の弁コンポーネントが人為的に励振される試験記録に基づいている。
【0057】
追加的または択一的に、慣性センサは図示のコンポーネント全てに供給されることも考えられ、この場合、各測定値の評価は適宜に適合されている。
【0058】
図示のような揺動弁に対して択一的に、本発明による真空弁は、別の真空弁タイプ、例えばフラップ弁、摺動弁またはいわゆるバタフライ制御弁により実現されていてもよい。特に本発明による弁は、真空領域で使用されるように形成されている。さらに、閉鎖部材が1方向にのみ変位可能な揺動弁も、同様に使用可能である。
【0059】
図2a~図2cには、本発明による弁の1つの可能な実施形態が、切換弁の形態で、それぞれ異なる閉鎖位置において概略的に示されている。先行図面において用いられた符号は、ここでも同様に適用される。
【0060】
図示の切換弁は、摺動弁の特殊な形式である。この真空弁は、矩形で板状の閉鎖部材4(例えば弁板)を有しており、弁閉鎖部材4は、開口2を気密に閉鎖するためのシール面6bを有している。開口2は、閉鎖部材4に対応する横断面を有しており、壁14に加工成形されている。開口2は、弁座3により包囲されており、弁座自体も同様に、閉鎖部材4のシール面6bに対応するシール面6aを提供する。閉鎖部材4のシール面6bは、閉鎖部材4を包囲すると共に、封止材料10(シール)を支持している。閉鎖位置において、シール面6a,6bは互いに押圧し合い、封止材料は両シール面6a,6b間で加圧される。
【0061】
開口2は、図面では壁14の左側に位置する第1の気体領域Lを、壁14の右側の第2の気体領域Rに接続している。壁14は、例えば真空チャンバのチャンバ壁により形成される。この場合、真空弁は、チャンバ壁14と閉鎖部材4との協働により形成される。
【0062】
閉鎖部材4は、ここでは例えば棒状である変位アーム15に配置されており、かつ幾何学上の変位軸線16に沿って延在している。変位アーム15は駆動ユニット8と機械的に結合されており、駆動ユニット8を介して、閉鎖部材4は壁14の左側の第1の気体領域L内で、変位アーム15が駆動ユニット8により変位させられることにより、開放位置O(図2a)から中間位置Z(図2b)を経て、閉鎖位置G(図2c)に変位可能である。
【0063】
開放位置Oにおいて、閉鎖部材4は図2aに示すように、開口2の投影領域の外側に位置しており、開口2を完全に開放している。
【0064】
変位アーム15が、軸方向において変位軸線16に対して平行にかつ壁14に対して平行に変位させられることにより、駆動ユニット8を介して閉鎖部材4を開放位置Oから中間位置Zに変位させることができる。
【0065】
この中間位置Zにおいて、図2bに示すように、閉鎖部材のシール面6bは開口2を覆っており、かつ開口2を包囲している弁座3のシール面6aに対して離間された対向位置に位置している。
【0066】
変位アーム15が、変位軸線16に対して横方向に、つまり例えば壁14および弁座3に対して垂直方向に変位させられることにより、閉鎖部材4を、中間位置Zから閉鎖位置G(図2c)に変位させることができる。
【0067】
閉鎖位置Gにおいて、閉鎖部材4は開口2を気密に閉鎖すると共に、第1の気体領域Lを第2の気体領域Rから気密に隔離する。
【0068】
要するに真空弁の開閉は、駆動ユニット8を介して閉鎖部材4と変位アーム15とを、L字形に移動させることにより行われる。したがって、図示の切換弁はL型弁とも呼ばれる。
【0069】
図示のような切換弁は、典型的には処理容積(真空チャンバ)を封止するためおよび容積に対する出し入れのために設けられる。このような使用において、開放位置Oと閉鎖位置Gとの間での頻繁な切換は一般的である。これにより、シール面6a,6b、シール10および駆動装置8の強められた摩耗現象が生じる恐れがある。
【0070】
本発明に基づき、センサユニットには少なくとも1つの慣性センサ11bが、弁にかつ/または弁内で生じる加速度、特に加速度推移に関する測定信号を検出するために設けられている。つまり検出された測定信号は、特に時間に関連して記録され、次いで評価され得る。
【0071】
図示の例では、慣性センサ11bは、駆動装置8のケーシングに配置されておりひいては例えば駆動装置により生ぜしめられる振動を検出する。本発明によるセンサユニットにより、異常な、すなわち極度に高い加速度(震動、振動、衝撃)またはこのような加速度の望ましくない傾向が警告されることで、処理進行中に、様々な構成部材の故障を予測することができる。
【0072】
図3aおよび図3bには、閉鎖位置G(図3a)および開放位置O(図3b)において図示された本発明による切換弁に設けられた、1つの別の可能なセンサユニットが概略的に示されている。
【0073】
先行図面において用いられた符号は、ここでも同様に適用される。示した図面では、弁座3はさらに、真空弁のケーシング17に形成されている。ただし以下の説明が、実質的に複数の実施形態に同様に適用可能であるということは、当業者には明らかであり、この場合、弁座3は、プロセスチャンバ、すなわちチャンバケーシングにより提供される。
【0074】
さらに、ここで純粋に傾動機構として略示された弁機構は限定的ではないと理解され、当業者は本発明によるセンサユニットを例えば同様の形式で任意のLモーション駆動装置、例えば互いに垂直に位置する2つの直線的な弁板変位方向を有するLモーション駆動装置に転用することができる、ということは自明である。
【0075】
変位アーム15のガイドを管理するために、真空弁は、ここでは例えばガイドコンポーネント18を有しており、この場合、駆動ユニット8とガイドコンポーネント18とはそれぞれ、ここでは例えば駆動ユニット8もガイドコンポーネント18もそれぞれ弁ケーシング17に位置固定されて結合されていることにより、互いに不動に配置されている。変位アーム15はさらに、弁閉鎖部材4と駆動ユニット8とに機械的に結合されており、この場合、駆動ユニット8を介して変位アーム15を変位させることにより、弁閉鎖部材4は、開放位置Oと閉鎖位置Gとの間で実質的に弁座3に対して平行に、特に図2a~図2cにおいて説明したようなLモーション運動で変位可能である。
【0076】
センサユニットは、例えば慣性センサ11cおよび11dを有しており、測定信号が、連結構成部材および/または駆動装置8におけるスティックスリップ作用を検出するように形成されていてよい。また、シール10における摩擦振動も、このようなセンサユニットにより検出され得ると考えられ、この場合、このためにはシール付近に位置する慣性センサを、例えば弁ケーシング17に配置することも考えられる。
【0077】
図3aおよび図3bに示すセンサユニットは、2つの慣性センサ11d,11eを有しており、この場合、例えば加速度センサ11dはガイドコンポーネント18に提供され、ジャイロスコープまたはヨーレートセンサ11eは駆動ユニット8に提供される。つまりこの配置は、駆動ユニット8に対する回転の速度または加速度と、ガイドコンポーネント18に対する並進加速度とを、それぞれ直接に検出することを可能にする。
【0078】
これにより、例えば駆動ユニット8を起点とする既知の通常の(加速度値で表される)振動に関して検出された測定信号に関する目標-実際比較に基づき、真空弁の状態情報が導出され得る。加速度が、事前に危機的であると評価された値の範囲に到達した場合には、警告信号が供給され得る。
【0079】
図4aおよび図4bには、閉鎖位置G(図4a)および開放位置O(図4b)において図示された、ここでは例えばいわゆるモノバルブに設けられた、1つの別の可能なセンサユニットが概略的に示されている。
【0080】
直線運動により流路を気密に閉鎖するための弁は、流路用の開口2を備えた弁ケーシング17を有しており、この場合、開口2は流路に沿った幾何学上の開口軸線5を有している。閉鎖部材4は、閉鎖部材平面20内で開口軸線5に対して横方向に延在する幾何学上の変位軸線19に沿って直線的に、開口2を開放する開放位置Oから、開口2を覆うように直線的に押しずらされた閉鎖位置Gへ、閉鎖方向に摺動可能であると共に、反対に開放方向に戻るように摺動可能である。
【0081】
例えば、湾曲した第1のシール面6aが、弁ケーシング17の開口2を、第1の平面22a内の第1の部分21aおよび第2の平面22b内の第2の部分21bに沿って包囲している。第1の平面22aと第2の平面22bとは互いに離間されており、互いに平行にかつ閉鎖部材平面20に対して平行に延在している。つまり、第1の部分21aと、反対側に位置する第2の部分21bとは、変位軸線19に対して横方向で、開口軸線5の方向において、互いに幾何学的なずれを有している。互いに反対の側に位置する2つの部分21aと21bとの間で、変位軸線19に沿って延在する領域内に、開口2が配置されている。
【0082】
閉鎖部材4は、第1のシール面6aに対応する第2のシール面6bを有しており、第2のシール面6bは、第1および第2の部分21a,21bに対応する部分に沿って延在している。
【0083】
モノバルブ、すなわちただ一度の直線運動により閉鎖可能な真空弁は、例えば2度の運動により閉鎖可能で、比較的複雑に形成された駆動装置を必要とする切換弁と比較すると、例えば比較的単純な閉鎖機構である、という利点を有している。閉鎖部材はさらに一体に形成されていてよいので、高い加速力に晒されてよく、これによりこの弁は、急速閉鎖および緊急閉鎖用にも使用され得る。閉鎖およびシールは、ただ一度の直線運動により行うことができ、これにより、弁の極めて迅速な開閉が可能である。
【0084】
特に、モノバルブの利点は例えば、シールがその延在部に基づき、閉鎖時にシールの長手方向延在部に対して横方向での横方向荷重に全く影響されない、という点にある。他方では、シールは開口軸線5に対するその横方向延在部に基づき、特に圧力差が大きい場合に閉鎖部材4に作用することがある、開口軸線5に沿って閉鎖部材4に当たる力を吸収することはほぼできず、このことは閉鎖部材4、その駆動装置およびその支持部の頑丈な構造を必要とする。
【0085】
図4aおよび図4bに示したセンサユニットは、弁ケーシング17に配置された慣性センサ11eを、例えば閉鎖部材4の変位から生じる、例えば変位軸線19に沿った加速度を検出するために有している。この場合は閉鎖プロセスの異常を点検することができる。
【0086】
図5aには、時間にわたり描かれた、本発明による真空弁の例示的な閉鎖軌跡が示されている。図5b~図5dには、この閉鎖プロセス中に、互いに直交する3つの空間軸線において1つまたは複数の加速度センサにより記録された加速度が示されている。図5cにおいて破線で丸く囲んだ範囲の例示的な分析が、図5eに周波数スペクトルで示されている。例えば特徴的な周波数に基づき、弁の個々のコンポーネントが識別され得、これにより、予め設定されたまたは求められた限界振幅の超過に関する評価を行うことができる。
【0087】
慣性センサは、例えば圧電セラミックセンサプレートに基づき動的な圧力変動を電気的な測定信号に変換する、圧電式の加速度センサである。別の例は、例えば「古典的な」ばね・質量系の変位が電気的に(容量を介して)測定される、シリコンを基礎とした微小電気機械システム(MEMS)である。
【0088】
本発明によるセンサユニットは、複数の重力加速度(g)の振幅範囲内で、かつ最高1/100000gの振幅分解能でもって測定するように構成されている。慣性センサは常に、慣性センサに力が作用すると加速させられる。例えばセンサは、運動開始時には正の方向に加速させられ、かつ運動制動時には負の方向に加速させられる。(例えば震動時のような)最小の変位でさえ、センサが検出可能な大きな加速度を有することがある。震動は、高周波数を有する可能性があるため、センサにより、例えば52000サンプル/秒が測定される(比較的低いまたは高い周波数も同様に可能であり、用途に応じて用いられる)。これらの信号を評価するために、時間に関連した測定を、周波数に関連した信号(周波数スペクトル)に変換することができる。センサはこのことを、特に三軸において実行することができる。震動に基づき、例えば駆動装置の状態を推量することができる。つまり例えば、周波数スペクトルに基づき、潤滑グリースがまだ十分な粘ちゅう度を有しているか否か、または既に劣化現象を有しているか否かを判断することができる。またシステム内で(例えば複数のプロセスにわたり)周波数スペクトルが例えば摩耗、特に駆動ユニットにおける摩耗により変化したか否か、かつ/または求められた傾向に基づき、最早甘受し得ない摩耗の発生が見込まれるのはいつなのかも検出され得る。また(最初の使用からすぐに)輸送時の損傷、処理中の地震あるいは弁または近くに位置するコンポーネントとの衝突も検出され得、特にこの場合は、例えばプロセスの緊急停止または減速の形態で対策を講じることができる。
【0089】
本発明の1つの実施形態では、測定された加速度、特に1つの特定の方向において検出された加速度から、積分計算により移動距離または歪み距離が算出される。これにより算出された距離と、ロッド15もしくはアーム7(連結構成部材)の既知の剛性(例えばE率、G率)とを用いて、弁閉鎖部材4から弁座3に作用する圧着力を求めることができる。例えば、現在の全加速度方向(X方向、Y方向およびZ方向において検出された加速度値から形成されるベクトル)を測定することによっても、弁機構のその時々の閉鎖段階または開放段階を観察することができる。このようにして、開口軸線に対して横方向の運動と、開口軸線に沿った運動とが、測定値において互いに区別され得る。また、本来の閉鎖時点、すなわち弁閉鎖部材が弁座に突き当たる時点も検出され得る。この場合、各閉鎖時点から、特に圧着力測定に用いられる前記歪み距離を求めることができる。例えばこのために、加速度センサとしての慣性センサがロッド15またはアーム7に配置されていてよい。また、ヨーレートセンサとしての慣性センサが駆動装置8にあるいはロッド15またはアーム7の一方の端部に配置されていてもよい。
【0090】
示したこれらの図面が、可能な実施例を概略的に表すものであるに過ぎない、ということは自明である。同じく、様々なアプローチが互いにかつ従来技術の方法と組み合わされてもよい。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b-5d】
図5e