(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】スライダー用引手及びスライダー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/28 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
A44B19/28
(21)【出願番号】P 2020005255
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 理秀
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 玲央奈
(72)【発明者】
【氏名】杉野 圭
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3217235(JP,U)
【文献】特開2017-079884(JP,A)
【文献】実開昭63-017609(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0069645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナー用スライダー(1)に対するスライダー用引手(4)の取付のために設けられた引手構成部品(5)の開口(7)の周縁(56)の少なくとも一部が前記引手構成部品(5)に対して取り付けられた保護部材(6)により保護されたスライダー用引手
であって、前記保護部材(6)は、前記保護部材(6)が前記引手構成部品(5)から外れることを阻止する外れ防止部(66)を有する、スライダー用引手。
【請求項2】
前記保護部材(6)が完全に閉じた又は部分的に欠いた環状部材であり、前記開口(7)の周縁(56)に対して取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のスライダー用引手。
【請求項3】
スライドファスナー用スライダー(1)に対するスライダー用引手(4)の取付のために設けられた引手構成部品(5)の開口(7)の周縁(56)の少なくとも一部が前記引手構成部品(5)に対して取り付けられた保護部材(6)により保護されたスライダー用引手であって、
前記引手構成部品(5)の前記開口(7)の前記周縁(56)が薄肉部(58)を含
み、
前記薄肉部(58)には1以上の貫通孔(57)又は凹部が形成される、スライダー用引手。
【請求項4】
前記保護部材(6)が射出成形部であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のスライダー用引手。
【請求項5】
前記保護部材(6)が前記引手構成部品(5)の前記開口(7)に対して圧入されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のスライダー用引手。
【請求項6】
前記引手構成部品(5)は、前記引手(4)の引手本体であり、
前記引手本体は、前記開口(7)が設けられた取付端部(51)と、前記取付端部(51)とは反対側の把持端部(52)を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のスライダー用引手。
【請求項7】
前記保護部材(6)は、前記引手構成部品(5)よりも軟質の材料から成ることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のスライダー用引手。
【請求項8】
引手取付部(2)が一体又は別体として設けられたスライダー胴体(3)と、
前記引手取付部(2)を介して前記スライダー胴体(3)に対して取り付けられた引手(4)を備えるスライドファスナー用のスライダー(1)であって、
前記引手(4)は、
前記スライダー胴体(3)に対する前記引手(4)の取付のために設けられた開口(7)を有する引手構成部品(5)と、
前記開口(7)の周縁(56)を少なくとも部分的に保護するように前記引手構成部品(5)に対して取り付けられた保護部材(6)を含
み、
前記保護部材(6)は、前記保護部材(6)が前記引手構成部品(5)から外れることを阻止する外れ防止部(66)を有する、スライダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライダー用引手及びスライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナー用のスライダーの引手取付柱には、紐といった軟質の引手に限らず、金属製のものといった硬質の引手も取り付けられる。特許文献1には、金属又は樹脂といった硬質な連結部材3に対して軟質な把持部材2が取り付けられた引手が開示されている。特許文献2には、スライダー本体と引手がダイカストにより同時に形成されることが開示されている。特許文献3には、引手の把持側端部の開口内に環状の樹脂が設けられた引手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-186544号公報
【文献】特表2019-510608号公報
【文献】中国意匠304977548S
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライドファスナーの開閉のためにスライダー胴体に対して引手が変位可能に設けられる。しかしながら、このような場合、スライダーの引手取付部に対する引手の取付端の摺動が繰り返され、またスライダーの引手取付部と引手の取付端の衝突が繰り返され、引手取付部の表面及び/又は引手の表面に形成された表面皮膜(例えば、めっき膜、化成処理膜、塗膜等)が部分的に剥がれてしまうおそれがある。なお、表面皮膜は、様々な異なる目的(例えば、耐食性、耐摩耗性、デザイン性等)のために形成されるものである。このように、スライダーの引手取付部及び/又は引手に生じ得る表面皮膜の剥がれを簡便かつ効果的に抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るスライダー用引手は、スライドファスナー用スライダーに対するスライダー用引手の取付のために設けられた引手構成部品の開口の周縁の少なくとも一部が前記引手構成部品に対して取り付けられた保護部材により保護されたものである。保護部材は、開口の周縁に固着し得る。
【0006】
幾つかの実施形態においては、前記保護部材が完全に閉じた又は部分的に欠いた環状部材であり、前記開口の周縁に対して取り付けられる。
【0007】
幾つかの実施形態においては、前記保護部材は、前記保護部材が前記引手構成部品から外れることを阻止する外れ防止部を有する。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記引手構成部品の前記開口の前記周縁が薄肉部を含む。
【0009】
幾つかの実施形態においては、前記薄肉部には1以上の貫通孔又は凹部が形成される。
【0010】
幾つかの実施形態においては、前記保護部材が射出成形部である。射出成形部は、例えば、樹脂から成る。
【0011】
幾つかの実施形態においては、前記保護部材が前記引手構成部品の前記開口に対して圧入される。
【0012】
幾つかの実施形態においては、前記引手構成部品は、前記引手の引手本体であり、
前記引手本体は、前記開口が設けられた取付端部と、前記取付端部とは反対側の把持端部を有する。
【0013】
幾つかの実施形態においては、前記保護部材は、前記引手構成部品よりも軟質の材料から成る。前記保護部材は、例えば、樹脂から成る。
【0014】
本開示の一態様に係るスライダーは、引手取付部が一体又は別体として設けられたスライダー胴体と、前記引手取付部を介して前記スライダー胴体に対して取り付けられた引手を含むスライドファスナー用のスライダーであって、
前記引手は、
前記スライダー胴体に対する前記引手の取付のために設けられた開口を有する引手構成部品と、
前記開口の周縁を少なくとも部分的に保護するように前記引手構成部品に対して取り付けられた保護部材を含む。保護部材は、開口の周縁に固着し得る。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、スライダーの引手取付部及び/又は引手に生じ得る表面皮膜の剥がれを簡便かつ効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一態様に係るスライダーの概略的な斜視図である。
【
図2】本開示の一態様に係る引手の概略的な正面図である。
【
図3】
図2の一点鎖線III-IIIに沿う引手の概略的な断面図である。
【
図4】保護部材取付前の単体の引手本体の概略的な断面図である。
【
図5】保護部材取付前の単体の引手本体の概略的な正面図である。
【
図6】固定型上に引手本体が置かれた状態を示す製造工程図である。
【
図7】固定型に可動型が重ね合わされて保護部材形成用の空間が画定された状態を示す製造工程図である。
【
図8】本開示の別態様に係る引手の概略的な分解斜視図である。
【
図9】引手本体に対して保護部材が圧入によって取り付けられることを示す模式図であり、(a)は、引手本体に対して保護部材が圧入される前の状態を示し、(b)は、引手本体に対して保護部材が圧入される後の状態を示す。
【
図10】保護部材が部分的に切りかかれた環状部材(端的には、C字状部材)であることを示す概略的な模式図であり、(a)は、環状部材の非変形状態を示し、(b)は、環状部材の変形状態を示す。
【
図11】本開示の更なる別態様に係る引手の概略的な分解斜視図である。
【
図12】引手本体に対して保護部材が取り付けられることを示す模式図であり、(a)は、引手本体の開口内で保護部材の分割片が結合される前の状態を示し、(b)は、引手本体の開口内で保護部材の分割片が結合された後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1乃至
図12を参照しつつ、様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示されたスライダー用引手にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なスライダー用引手にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0018】
図1に示すようにスライドファスナー用のスライダー1は、引手取付部2が一体又は別体として設けられたスライダー胴体3を含む。スライダー1に引手4が取り付けられ、引手4を引くことによってスライダー1を動かすことができる。
【0019】
引手4は、複数の構成部品を有し、必ずしもこの限りではないが、図示例では2つの構成部品から構成される。第1構成部品は、スライダー1に対する引手4の取付のために設けられた開口7(
図5参照)を有する引手本体5である。開口7は、スライダー胴体3に対する引手4の取付のために設けられる。引手4の開口7に引手取付部2が通されること等によって、引手取付部2を介してスライダー胴体3に引手4が取り付けられる。スライダー1に対する引手4の取付態様は様々である。スライダー胴体3の上面に引手4を載置し、次に、スライダー胴体3の上面に引手取付部2を実装し、これによりスライダー胴体3からの引手4の脱落を阻止することもできる。
【0020】
第2構成部品は、引手本体5の開口7の周縁56(
図5参照)を少なくとも部分的に保護するように引手本体5に対して取り付けられた保護部材6である。保護部材6は、スライダー胴体3及び/又は引手本体5よりも軟質の材料から成る。保護部材6は、引手本体5の開口7の周縁56に対して固着し得る。
【0021】
スライダー1(例えば、引手取付部2とスライダー胴体3の一方又は両方)は、金属製又は樹脂製であり、表面皮膜(例えば、めっき膜、化成処理膜、塗膜等)を有する。同様、引手本体5は、金属製又は樹脂製であり、表面皮膜(例えば、めっき膜、化成処理膜、塗膜等)を有する。表面処理の種類や組み合わせは、様々であり、当業者により適切に決定される。例えば、表面処理として、めっき(電気めっき、無電解めっき等)、化成処理(クロメート処理、リン酸塩皮膜処理、黒染め処理等)、塗装、又はこれらの任意の組み合わせが採用可能である。なお、スライダー胴体3及び引手本体5の一方が表面皮膜を有しない形態も想定される。
【0022】
典型的には、ダイカスト成形又は射出成形により製造された成形品が表面処理されてスライダー1及び引手本体5が製造される。例えば、ダイカスト成形品(金属部品)に対して電気めっきが行われ、単層又は複層のめっき層によってダイカスト成形品が保護される。電気めっきの追加又は代替として化成処理が行われ、単層又は複層の化成処理膜(例えば、クロメート処理による酸化皮膜を含む)が形成され得る。射出成形品に対して無電解めっきを行う場合も、単層又は複層のめっき層によって射出成形品が保護される。塗装においては、ダイカスト成形品又は射出成形品が塗料中に浸されてその表面に塗膜が形成される。
【0023】
表面皮膜の密着力は、表面皮膜の種類(めっき膜、化成処理膜、塗膜)、組成、積層構造、積層数等に依存して変化し得る。スライドファスナーの長期の使用に適するように表面皮膜自体が最適化されるが、継続的に受ける摩擦や衝撃によって表面皮膜が徐々に剥がれてしまうこと自体を回避することは容易ではない。
【0024】
スライダー胴体3は、様々な形状を有することができる。例えば、スライダー胴体3は、上下の翼板31,32と、上下の翼板31,32を連結する連結柱(不図示)を有する。スライダー胴体3には、連結柱の左右両側の位置に左右の前口34が設けられ、各々の前口34を介して左右のファスナーエレメント(不図示)がスライダー胴体3の内外に出入りする。スライダー胴体3には後口35も設けられ、この後口35を介して係合状態の左右のファスナーエレメント(不図示)がスライダー胴体3の内外に出入りする。なお、スライドファスナー(不図示)を閉じるべくスライダー1が動く方向が前方であり、スライドファスナー(不図示)を開けるべくスライダー1が動く方向が後方である。
【0025】
スライダー1は、ファスナーエレメント上でのスライダー1の変位を阻止するためのロック爪を有することができる。ロック爪を有するスライダー胴体の構成は当業者に良く知られており、詳細な説明は省略する。また、スライダー1は、隠しスライドファスナー用に構成することができる。この種のスライダーも当業者に良く知られており、詳細な説明は省略する。
【0026】
必ずしもこの限りではないが、引手取付部2は、スライダー胴体3の上下の翼板31,32の一方又は両方上において片持ち梁又は両持ち梁として設けられる。引手取付部2は、スライドファスナーを開閉するためのスライダー1の移動方向に一致する方向に沿って延び、又は、これとは異なる別の方向に沿って延びる。引手取付部2が片持ち梁として翼板31上に設けられる場合、引手取付部2の基端が翼板31の前端部(又は後端部)に結合し、引手取付部2の自由端が翼板31の後端部(又は前端部)上に隙間を空けて位置付けられる。引手取付部2の塑性変形を介して引手取付部2から引手4が脱落することを阻止することができるが、これに限らず、引手取付部2の自由端と翼板31の隙間を閉鎖部材により閉鎖しても良い。引手取付部2が両持ち梁として翼板31上に設けられる場合、引手取付部2への(後述の)引手本体5の取付のため、スライダー胴体3と引手本体5の同時ダイカスト成形を採用可能である(特許文献2参照)。これに限らず、3Dプリンターといった3次元造形装置を活用することもできる。
【0027】
引手4は、上述のように複数の構成部品(例えば、引手本体5と保護部材6)を有する。複数の構成部品に含まれる第1構成部品は、引手本体に限らず、他の部材(例えば、スライダー胴体と引手本体を連結するリンク部材)であり得る。この場合、保護部材6は、引手本体ではなくリンク部材に対して取り付けられる。従って、第1構成部品が引手本体であることを前提とする本明細書の記述は、第1構成部品が引手本体ではない場合にも通用するものとする。
【0028】
引手本体5は、幅W5に比べて長さL5が大きい平板部材であり、その長手方向の両端に取付端部51と把持端部52を有する(
図5参照)。取付端部51に開口7が設けられ、把持端部52に開口8が設けられる。開口7,8の開口形状は、円形、楕円、多角形といった様々な形状であり得る。開口7の開口形状と開口8の開口形状は、同一であり、又は異なり得る。把持端部52に開口8が設けられない形態も想定される(例えば、
図8参照)。引手本体5の幅W5は、取付端部51から把持端部52に向けてテーパー状に漸増し、把持端部52の幅W5がヒトによる把持端部52の把持に適するように設定される。引手本体5の把持端部52には引手本体5の厚みを増加するように反対方向に隆起した隆起部55が設けられる(
図3及び
図4参照)。隆起部55は、把持端部52がヒトの親指とひとさし指の間で把持される時の滑り止めとして機能する。
【0029】
引手本体5は、取付端部51において開口7の外周に沿って延びる延在部53を有する。延在部53の延在態様は、開口7の開口形状に依存する。開口7が円形状の場合、延在部53が弧状部分である。開口7が矩形状である場合、延在部53がまっすぐに延びる直線部分である。この場合、延在部53は、引手4の回動軸として機能し得る。スライダー胴体3を前進又は後進させるべく引手4がヒトの指(例えば、親指とひとさし指)の間で把持されて操作される時、引手4の延在部53は、(正確には、保護部材6を介して)スライダー胴体3の引手取付部2に対して力を与える。作用反作用の原理より、引手4の延在部53は、スライダー胴体3の引手取付部2から(正確には、保護部材6を介して)力を受ける。引手取付部2に対して引手本体5ではなく保護部材6が接触し、引手取付部2の表面皮膜及び引手本体5(特にその延在部53)の表面皮膜が部分的に剥がれてしまうことが抑制される。なお、表面皮膜が一部でも剥がれると、そこから表面皮膜の剥がれが拡大してしまうこともある。
【0030】
引手本体5の把持端部52に開口8が設けられるならば、引手本体5は、把持端部52において開口8の外周に沿って延在部54を有し得る。開口8が楕円形状であり、延在部54が引手4の幅方向に沿って弧状に延びる。上述の隆起部55は、延在部54に設けられ得る。隆起部55の厚みTH55は、引手4の中心線AX4において最大となり得る。
【0031】
保護部材6は、第1構成部品(例えば、引手本体5)の開口7の周縁56の少なくとも一部を保護するように第1構成部品(例えば、引手本体5)に対して取り付けられる。保護部材6は、スライダー胴体3、引手取付部2及び/又は引手本体5の材料よりも軟質な材料(例えば、樹脂、シリコーン、ゴムなど)から成り、引手本体5の開口7の周縁56に対して固着する。保護部材6の採用により、引手取付部2及び/又は引手本体5の表面皮膜(例えば、めっき膜、化成処理膜、塗膜等)が部分的に剥がれてしまうことが抑制される。有利には、保護部材6は、引手本体5の取付端部51の延在部53を保護するように引手本体5に対して取り付けられる。上述のようにスライダー1の前進又は後進のために引手4の延在部53に力が付与されることが多いためである。なお、引手本体5の開口7は、部分的に欠いた開口であっても良い。周縁56は開口7の周方向に連続している必要はない。開口7の周方向は開口7の輪郭に沿う方向であり、円形に限らず、多角形状でもあり得る。
【0032】
必ずしもこの限りではないが、保護部材6が完全に閉じた環状部材であり、第1構成部品(例えば、引手本体5)の開口7の周縁56に対して取り付けられる(
図1乃至
図3参照)。この場合、第1構成部品(例えば、引手本体5)の開口7の周縁56の全周が保護部材6により保護される。また、第1構成部品(例えば、引手本体5)に対する保護部材6の取付も容易である。
【0033】
幾つかの場合、第1構成部品(例えば、引手本体5)の開口7の周縁56が薄肉部58を含み、この薄肉部58には1以上の貫通孔57が形成される(
図4参照)。薄肉部58は、開口7を規定する周縁56の側面56pから径方向内側に突出する。薄肉部58は、
引手本体5の厚み中心に設けられ、引手本体5の厚みよりも薄い。貫通孔57は、薄肉部58の厚み方向に延びて薄肉部58を貫通する。貫通孔57は、開口7の周方向において一定間隔(例えば、90°間隔)で設けられ得る。
【0034】
保護部材6は、開口7を規定する周縁56の側面56pの内側に設けられ、そこに接触する。保護部材6は、引手本体5と同等の厚みを有する。保護部材6の内周面61は、周縁56の側面56p及び薄肉部58の先端面58pよりも径方向内側に位置する。周縁56の薄肉部58に貫通孔57が設けられる場合、保護部材6は、貫通孔57内に設けられた外れ防止部66を有し(
図3及び
図4参照)、これによって引手本体5からの保護部材6の脱落が阻止される。外れ防止部66は、開口7の周方向において一定間隔(例えば、90°間隔)で設けられ得る。貫通孔57及び外れ防止部66の具体的形状は様々であり、引手本体5の厚み方向に延びるものに限られないことに留意されたい。なお、貫通孔57の代替として底部を有する凹部を薄肉部58に設けることもできる。
【0035】
引手本体5の開口7の周縁56に対する保護部材6の取付は、様々な方法で行うことができる。まず、射出成形によって引手本体5に対して保護部材6が固着する場合について述べる。まず、固定型M1のキャビティーに引手本体5を配置し(
図6参照)、続いて、固定型M1上に可動型M2を積層し(
図7参照)、これにより保護部材6の成形のための空間が画定される。固定型M1と可動型M2から構成された金型装置内の流路を介して上述の空間に溶融樹脂が流入する。金型装置の冷却によって空間に充填された溶融樹脂が硬化して保護部材6が形成される。保護部材6は、引手本体5の開口7を規定する周縁56の側面56p及び薄肉部58の表面に固着する。引手本体5の開口7の周縁56の薄肉部58に貫通孔57が設けられる場合、溶融樹脂が貫通孔57に流入し、金型装置の冷却によって外れ防止部66になる。保護部材6により画定される開口7’は、引手本体5の開口7よりも(少なくとも部分的に)僅かに縮径されたものである(
図2及び
図5参照)。
【0036】
射出成形の追加又は代替として、引手本体5の開口7に対して保護部材6が圧入されて取り付けられることも想定される(
図8及び9参照)。必ずしもこの限りではないが、幾つかの場合、保護部材6は、閉じた環状部材である。保護部材6の外周面には径方向内側に凹んだ凹部65が形成される。凹部65の挟む両側の位置には外れ防止部66が形成される。各外れ防止部66は、径方向外側に突出する。凹部65及び外れ防止部66は、周方向に連続的又は断続的に延びる。引手本体5の開口7の周縁56は開口7に関する径方向内側に反り出た弧状縁である。引手本体5の開口7の周縁56と保護部材6の凹部65が嵌合する。引手本体5の開口7の周縁56の弧状縁の頂部と外れ防止部66の干渉により引手本体5からの保護部材6の外れが抑制される。
【0037】
保護部材6が部分的に欠いた環状部材であり、引手本体5の開口7の周縁56に対して取り付けられることも想定される(
図10参照)。
図10(a)に示す非変形状態から
図10(b)に示す変形状態に保護部材6を変形させ、続いて、その変形状態の保護部材6が引手本体5の開口7の周縁56内に挿入される。引手本体5の開口7の周縁56内で保護部材6が変形状態から非変形状態に復帰し、引手本体5に対して保護部材6が取り付けられる。保護部材6は、
図8及び
図9に図示されたものと同様の凹部65及び外れ防止部66を有し得る。
【0038】
保護部材6が部分的に欠いた環状部材である場合、引手本体5の開口7の周縁56は、保護部材6の欠いた空間に対応して保護部材6により保護されない。しかしながら、環状部材の欠いた空間の寸法が引手取付部2の最小断面幅未満であるならば、引手本体5の開口7の周縁56と引手取付部2の接触は全く生じない。
【0039】
保護部材6は、環状以外の他の形状も取り得ることに留意されたい。一つの開口7に対して複数の保護部材6が設けられる形態も予期される。幾つかの場合、複数の保護部材6同士の間隔が、引手取付部2の最小断面幅未満に設定され、これにより、引手本体5の開口7の周縁56と引手取付部2の接触が効果的に回避又は抑制される。
【0040】
保護部材6が分割片6A,6Bの結合により構成されることも想定される(
図11及び
図12参照)。分割片6A,6Bが引手本体5の開口7内で結合される。嵌合、接着、溶接(例えば、超音波溶接)といった方法で分割片6A,6B同士を結合することができる。なお、分割片の個数は、2つに限られない。
図11及び
図12に示す分割片6A,6Bは、
図8及び
図9に示した保護部材6が、その厚み中心において2分割されたものである。引手本体5の開口7に分割片6Aが一方側から挿入され、引手本体5の開口7に分割片6Bが他方側から挿入される。引手本体5の開口7内での分割片6A,6Bの積層によって両者が結合して保護部材6が構成される。保護部材6は、外れ防止部66を有し、引手本体5から容易に脱落しない。分割片6A,6Bの一方又は各接触面に接着剤が塗布しても良く、分割片6A,6Bが積層された状態で超音波を付与しても良い。
【0041】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 スライダー
2 引手取付部
3 スライダー胴体
4 引手
5 引手本体
6 保護部材
6A、6B 分割片
7、7'、8 開口
51 取付端部
52 把持端部
53、54 延在部
55 隆起部
56 周縁