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特許7350672ミラー間の多重反射を利用した放射測温装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】ミラー間の多重反射を利用した放射測温装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/08 20220101AFI20230919BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20230919BHJP
【FI】
G01J5/08 Z
G01J5/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020029813
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135105
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 大亮
(72)【発明者】
【氏名】井内 徹
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-085731(JP,A)
【文献】特開平02-208527(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081748(WO,A1)
【文献】特開昭59-087329(JP,A)
【文献】特開2002-303551(JP,A)
【文献】特開平02-245646(JP,A)
【文献】特開2018-054546(JP,A)
【文献】特開2007-078394(JP,A)
【文献】特開2017-156111(JP,A)
【文献】特開2014-032068(JP,A)
【文献】米国特許第4465382(US,A)
【文献】特開平10-123075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、
からなり、
第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれ一以上のミラーから構成されており、
前記θの値が60度以上であり
前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定するための放射温度計を有する放射測温装置。
【請求項2】
前記放射温度計は第一種のミラー又は/及び第二種のミラーの背後に配置され、自身の前方のミラーに設けられた穴部から前記多重反射した光を取り込むように構成される請求項1に記載の放射測温装置。
【請求項3】
放射温度計の光取込面の前方にp偏光子を有する偏光部を設けた請求項1又は請求項2に記載の放射測温装置。
【請求項4】
内部観察用窓を備えたチャンバーを有し、
前記配置部はチャンバー内に配置され、
第一種のミラー及び第二種のミラー、並びに放射温度計の光取込面は、チャンバー外部に配置され、測定試料からの光を内部観察用窓を介して入射させるように構成されている請求項1から請求項のいずれか一に記載の放射測温装置。
【請求項5】
配置部は、測定試料を配置部上で移動可能とする移動手段を有する請求項1から請求項のいずれか一に記載の放射測温装置。
【請求項6】
少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、
放射温度計と、
からなり、
前記θの値が60度以上であり、第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれ一以上のミラーから構成されている放射測温装置の測温方法であって、
配置部に測定試料を配置する配置ステップと、
前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を放射温度計で測定する測定ステップと、
を有する測温方法。
【請求項7】
少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、
配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、
からなり、
第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれN個のミラーから正N角形に配置構成されており、
前記θの値が60度以上であり、
Nの値は、3以上で無限大以下であり、
前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定するための放射温度計を有する放射測温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させるためのミラーを用いて、ミラーによる反射光をも受光することにより、測定試料の見かけの放射率を大きくして、温度測定を行う放射温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延や連続焼きなましなどの金属材の製造プロセスにおける金属材の表面温度の測定には、金属材の表面を傷つけることのない非接触の放射温度計が広く用いられている。放射温度計は対象からの熱放射の強度(放射輝度)を測定し、熱放射の強度から温度への換算を、黒体の熱放射強度と温度との関係に基づいて行う。温度測定の対象となる物質の放射率が黒体の放射率と異なる場合には、その物質の放射率に応じた補正により温度を得ることができる。しかし、圧延プロセス実行中の鋼板は、加熱や冷却により生じる金属表面の酸化膜により金属表面の性状は変動し、それに伴い放射率も変動するため放射率に応じた補正を行うことができず、正確な温度測定は困難であった。
【0003】
そこで、鋼板などの測定対象に対して反射板を傾けて配置し、鋼板からの放射光を反射板と鋼板表面とで多重反射させることにより、鋼板表面の見かけの放射率を大きくして黒体の放射率に近づけることで、黒体放射とみなして温度換算する測温方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-87329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の測温方法では、鋼板に対向して反射板を配置しなくてはならず、鋼板の真上の空間に反射板を配置する余地がない測定環境においては、かかる測温方法は適用できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決するために本発明において、少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、からなり、第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれ一以上のミラーから構成されており、前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定するための放射温度計を有する放射測温装置を提供する。
【0007】
また、上記の放射測温装置において、前記放射温度計は第一種のミラー又は/及び第二種のミラーの背後に配置され、自身の前方のミラーに設けられた穴部から前記多重反射した光を取り込むように構成される放射測温装置を提供する。
【0008】
また、上記いずれかの放射測温装置において、放射温度計の光取込面の前方にp偏光子を有する偏光部を設けた放射測温装置を提供する。
【0009】
また、上記いずれかの放射測温装置において、θの値が60度以上である放射測温装置を提供する。
【0010】
また、上記いずれかの放射測温装置において、内部観察用窓を備えたチャンバーを有し、前記配置部はチャンバー内に配置され、第一種のミラー及び第二種のミラー、並びに放射温度計の光取込面は、チャンバー外部に配置され、測定試料からの光を内部観察用窓を介して入射させるように構成されている放射測温装置を提供する。
【0011】
また、上記いずれかの放射測温装置において、配置部は、測定試料を配置部上で移動可能とする移動手段を有する放射測温装置を提供する。
【0012】
また、少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、放射温度計と、からなり、第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれ一以上のミラーから構成されている放射測温装置の測温方法であって、配置部に測定試料を配置する配置ステップと、前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を放射温度計で測定する測定ステップと、を有する測温方法を提供する。
【0013】
また、少なくとも測定面は平面状の測定試料を配置するための配置部と、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで放射させるように構成される第一種のミラーと、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される第二種のミラーと、からなり、第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれN個のミラーから正N角形に配置構成されており、Nの値は、3以上で無限大以下であり、前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定するための放射温度計を有する放射測温装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、測定試料の測定面の上方空間に余裕のない場合であっても、多重反射により見かけの放射率を大きくすることができ、温度測定の精度を向上させることができる。
【0015】
また、傾斜ミラーを用いる場合に対して、測定試料とミラー面との間の多重反射の回数を多くすることもできる。また、複数のミラーを用いることで温度測定のレイアウトの自由度が高く、かつレイアウトの設定や変更が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1の放射測温装置の一例を示す概念図
図2】数式6に基づき見かけの放射率εeffの変化を、試料放射率、反射回数をそれぞれパラメータとしてプロットした図
図3図2に示した見かけの放射率εeffの変化を示した表
図4】実施形態1の放射測温装置の他の例を示す概念図
図5】多重反射を利用した放射測温の態様を一般化して示す概念図
図6】第一種のミラー及び第二種のミラーに平面ミラーを用いた放射測温装置の一例を示す概念図
図7】第一種のミラー及び第二種のミラーにシリンドリカルミラー(円筒面ミラー)を用いた放射測温装置の一例を示す概念図
図8】第一種のミラー及び第二種のミラーに直角ミラーを用いた放射測温装置の一例を示す概念図
図9】第一種のミラーと第二種のミラーとでリング状ミラーを構成した放射測温装置の一例を示す概念図
図10】実施形態1の放射測温装置の測温方法の流れの一例を示すフロー図
図11】実施形態2の放射測温装置の一例を示す概念図
図12】Siウェハについて半導体レーザを使用して入射角度θごとに±10度の範囲での反射分布測定結果を示す図
図13】各種試料の偏光方向の偏光方向放射率の実験ないしシミュレーション結果
図14】放射測温装置を加熱装置に適用した例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0018】
なお、実施形態1では、主に請求項1、2、6-8について説明する。実施形態2では、主に請求項3、4について説明する。実施形態3では、主に請求項5について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0019】
本実施形態の放射測温装置は、測定試料を挟んで、測定試料の測定面法線に対して角度θと角度-θとで放射される光を測定対象に対して反射し得る球面型の第一種のミラーと球面型の第二種のミラーとを用いて、それぞれのミラーと測定試料の測定面とで放射光を多重反射させるとともに、一方のミラー面において放射温度計の入射光軸と交差する部分に穴部を設け、その穴部を通して入射した光を放射温度計に取込んで測温するように構成されている。このように構成することで、多重反射により見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定することができる。
<実施形態1 構成>
【0020】
図1は、本実施形態の放射測温装置の一例を示す概念図である。図1(a)は、上方から視た図であり、図1(b)は、側方から視た図である。本実施形態の放射測温装置は、測定試料0101を配置するための配置部0106と、第一種のミラー0102と、第二種のミラー0103と、放射温度計0105と、からなる。
<実施形態1 測定試料>
【0021】
まず、測定試料0101は、少なくともその測定面(測定点は測定面に含まれる)が平面状になっている。すなわち、後述する放射温度計による測定は、放射温度計の焦点を測定試料の平面状になっている領域に合わせて行う。また、測定試料は、例えば鋼板や半導体ウェハ、アルミニウムなど種々である。また、温度測定が行われる場面としては、鉄鋼やアルミニウムの圧延プロセス、シリコンウェハのランプアニール、連続鋳造プロセス、車体の塗装プロセスなど温度管理を要する各種のプロセスで温度測定が行われる。なお、図1においては、測定試料として圧延プロセスにおける鋼板を示している。また、配置部などの基準面に対して同じ方向に法線方向があるスポットがあれば、測定面は必ずしも平面状でなくてもよい。
<実施形態1 配置部>
【0022】
図1(b)に示すように、配置部0106は、測定試料0101を配置するためのものである。配置部による測定試料の配置は、測定試料を固定して配置するものであってもよいし、ローラーコンベアーなどのように測定試料を配置部上で移動可能とする移動手段を設けて測定試料を移動しつつ配置するものであってもよい。
<実施形態1 放射温度計>
【0023】
放射温度計0105は、第一種ミラーと第二種のミラーとの間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定する。放射温度計は、サーモパイルなどの赤外光検出素子と、対象から放射される赤外光を赤外光検出素子に集光するレンズなどの光学系とから構成されている。
<実施形態1 第一種のミラー>
【0024】
図1(a)に示すように、第一種のミラー0102は球面型ミラーであり、測定面の地点Pがそれぞれのミラーの集光点として略一致するように配置されている。また、第一種のミラーには、その反射面の略中心に穴部0107が設けられている。
【0025】
図1(b)に示すように、第一種のミラー0102は、測定面の地点Pから測定面法線0104に対して角度θで放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定面法線に対して角度-θで放射させるように構成される。
【0026】
また、第一種のミラーの反射面形状が半径Rの球面である場合には、第一種のミラーの中心と測定面の地点Pとの距離が半径Rと同じ長さになるように、第一種のミラーを測定試料に対して配値する。
【0027】
そして、第一種のミラーは、測定面上の集光点Pから測定面法線0104に対して角度θで放射される光が穴部0107を通過して放射温度計0105に入射するとともに、集光点Pから放射された光であって穴部を通過せずミラー面に到達した光を再び集光点Pの方へ反射するように構成される。
【0028】
そして、放射温度計0105は、第一種のミラーの背後に配置され、自身の前方に設けられた穴部0107から多重反射した光を取り込むように構成され、その受光軸が集光点Pに向くように配置され、集光点Pに焦点が合わせられている。
【0029】
また、第一種のミラーの反射率は高いことが好ましく、反射率ρが0.95以上であることが望ましい。第一種のミラーの反射率が高いほど、見かけの放射率を大きくすることができるからである。これは第二種のミラーについても同様である。
<実施形態1 第二種のミラー>
【0030】
第二種のミラー0103は、配置部に配置される測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θで測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度θで放射させるように構成される。
【0031】
また、第二種のミラーは、第一種のミラーと同様にその反射面の形状が半径Rの球面となる球面型ミラーであり、第二種のミラーの中心と測定面の地点Pとの距離が半径Rと同じ長さになるように測定試料に対して配値される。
<実施形態1 測定原理>
【0032】
上記の構成において、第一種のミラーと第二種のミラーと間で生じる多重反射と、それにより測定試料の見かけの放射率を大きくして温度測定を行う原理を以下に説明する。
【0033】
第一種のミラーは半径Rの球面型ミラーであり、その焦点距離はf=R/2となるので、下記の数式1で示す光学の集光公式が成り立つ。
【数1】
【0034】
測定試料の地点Pと球面型ミラーとの距離をa=Rとすると、数式1からb=Rとなる。すなわち球面型の第一種のミラーが測定試料の地点Pから発せられた放射束はミラー面で反射し再び地点Pに戻る(第二種のミラーにおいても同様である)。そして、第一種のミラーと第二種のミラーは、測定試料の測定面法線に対して鏡面対象となる角度θにて向き合っている。したがって、放射束は、地点P、第一種のミラー、地点P、第二種のミラー、地点Pといった具合に進み、両ミラーと地点Pとで多重反射する。
【0035】
ここで、いま試料試料のθ方向の(分光)放射率εθをとし、測定試料面を完全鏡面的な反射面だとすると、両ミラー間で永久的に多重反射を繰り返す。しかし実際には試料面での吸収や、球面型ミラーの反射率の影響により有限回の反射に収束する。そのため、第一種のミラーでの反射時に穴部から出る放射束φは実質ミラー間を有限のn回往復の積算とみなすと、下記の数式2に比例する量となる。
【数2】
【0036】
放射温度計は数式2の放射束φに対応する放射束を見かけの分光放射輝度Leffとして数式3を検出する。
【数3】
【0037】
ここで、ρは第一種のミラーと第二種のミラーの反射率、Lb,λ(T)は温度T、波長λの黒体分光放射輝度である。数式3の見かけの分光放射輝度Leffは、パラメータαを下記の数式4のようにとれば、下記の数式5のように変形できる。
【数4】
【数5】
【0038】
したがって、見かけの分光放射率εeffは、数式6となる。
【数6】
【0039】
ここで、n→∞のとき、ρ(1-εθ)<1であるため、ρn+1(1-εθ)n+1→0となり、数式5は数式7で表せる。この式は測定試料が完全鏡面的反射面であるときの究極的な見かけの放射輝度を表す。
【数7】
ちなみにρ=0.95のとき、数式4よりα=0.053となる。
【0040】
図2は、数式6に基づき、見かけの放射率εeff の変化を往復反射回数n、および測定試料の放射率εθをそれぞれパラメータとしてプロットしたものである。図2(a)では、横軸は試料放射率ελを表し、図2(b)では、横軸は反射回数nを表している。なお、第一種ミラーと第二種ミラーの反射率ρは、ρ=0.95とした。また、図3は、図2に示した見かけの放射率εeffの変化を、表に示したものである。
【0041】
図2及び図3に示すように、もとの試料放射率が0.6あれば、反射回数n=5でも見かけの放射率は0.95以上になる。見かけの放射率がこの程度まで高くなれば、黒体放射とみなすことができ、実際の試料の放射率が不明かつ変動的であっても、黒体放射とみなして温度測定をすることができる。
<実施形態1 他の態様>
【0042】
これまで、第一種のミラー及び第二種のミラーをそれぞれ球面型のミラーによって構成するとともに第一種のミラーに設けられる穴部を通して測定試料の放射輝度を測定した放射測温装置を示してきた。以下では、放射測温装置の他の種々の態様を示す。いずれの態様においても、上述した実施形態と同様に、測定試料を配置するための配置部、測定試料から放射される第一種のミラー、第二種のミラー及び放射温度計の各構成要素を有し、第一種のミラー及び第二種のミラーの形態などが異なる。
<穴部を有さないミラーによる多重反射>
【0043】
図1で示した放射測温装置は、第一種のミラー及び第二種のミラーを球面型のミラーとするとともに、いずれかのミラーに穴部を設けることで、多重反射した放射束を放射温度計が測定し得るように構成した。このように構成することで、最小限のミラー数で測温可能であるため設置スペースをコンパクトにすることができるという利点がある。
【0044】
以下の態様は、穴部を有する球面型ミラーという相対的に加工精度が求められるミラーを用いることなく多重反射により見かけの放射率を大きくして温度測定を行えるものである。図4は、穴部を有さないミラーを用いる基本的な放射測温装置の態様を示すものである。
【0045】
図4は、複数のミラーによる多重反射を利用する放射測温装置の一例を示す概念図である。図4(a)は、上方から視た図であり、図4(b)は、側方から視た図である。本実施形態の放射測温装置は、測定試料0401を配置するための配置部0406と、第一種のミラー0402と、二つの第二種のミラー0403、0404と、放射温度計0405と、からなる。第一種のミラー、第二種のミラー、測定試料の測定面における地点P、P、P、及び放射温度計のそれぞれの間に示されている矢印は、地点Pから放射温度計に入射し得る光の経路を示している。
【0046】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第一種のミラー0402は、測定面の地点Pから測定面法線に対して角度θで放射される光を反射して再び測定面の地点Pに入射させるように構成されている。また、逆に測定面の地点Pから測定面法線に対して角度θで放射される光を反射して再び測定面の地点Pに入射させることができるように構成されている。
【0047】
また、第二種のミラー0403は、測定面の地点Pから測定面法線に対して角度-θで放射される光を反射して再び測定面の地点Pに入射させるように構成されている。また、逆に測定面の地点Pから測定面法線に対して角度-θで放射される光を反射して再び測定面の地点Pに入射させることができるように構成されている。また、地点Pから放射される光を反射する第二種のミラー0404は、地点Pに正対しており、Pから放射される光を反射してPに入射し得るように構成されている。このような第二種のミラーを再帰反射型ミラーという。
【0048】
本例においても、第一種のミラーとして球面の凹面を反射面とする球面型ミラーを用いており、ミラーの反射率は高いことが好ましく、反射率ρが0.95以上であることが望ましい。
【0049】
放射温度計0405は、測定面に対して斜め方向から焦点を合わす位置に存在する。したがって、測定面から放射される光を十分に受光するために、放射温度計の光学系について被写界深度と焦点深度とを大きくするように構成することが望ましい。測定面上で焦点の合う領域を広くとれるようにすることで、測定面からの受光量及び受光強度を高めることができ、放射輝度を高くすることに寄与するからである。例えば、被写界深度は20~30cm、焦点深度は2~3cm程度が好ましく、このように構成することで直径3cm程度の領域をフォーカスすることができる。
【0050】
続いて、本態様における多重反射について説明する。図4(a)に示すように、放射温度計が受光する光は、次の六つの光の総和であると考えられる。まず、地点Pから直接受光する光である。そして、地点Pから発せられ第二種のミラー0403で反射して地点Pに入射し、地点Pで反射して放射温度計に達する光である。そして、地点Pから発せられ第一種のミラー0402で反射して地点Pに入射し、地点Pで反射してから第二種のミラー0403で反射して地点Pに入射し、地点Pで反射して放射温度計に達する光である。ここまでで三つの光である。なお、このような経路をとる多重反射のことを、本明細書では順方向の多重反射という。
【0051】
また、P、P、Pの各地点から発せられた光であって、地点Pに正対する第二種のミラー0404による反射を経た光も放射温度計に入射する。例えば、地点Pからは、第一種のミラー0402が位置する方向だけでなく、第二種のミラー0404が位置する方向にも光が放射される。地点Pから第二種のミラー0404に発せられた光は、反射し再び地点Pに入射する。地点Pに入射した光は地点Pにて反射し、第一種のミラー0402に入射して反射する。以降、地点P、第二種のミラー0403、を経由し、最終的に地点Pから放射温度計に入射する。同様に、地点P及び地点Pから発せられ、第二種のミラー0404による反射を経由して放射温度計に到達する。これらが、さらなる三つの光である。なお、このような経路とる多重反射のことを、本明細書では逆方向を含む多重反射という。
【0052】
以上のように、放射温度計が受光する光は、上述した六つの光の総和になる。つづいて、それら六つの光のそれぞれの分光放射輝度について考える。測定面の温度T、測定試料の角度θ方向の放射率εθ、第一種のミラー及び第二種のミラーの反射率ρ、波長λで角度θ方向で温度Tにおける黒体の分光放射輝度をLb,λ(T)とした場合、地点Pから発せられ、直接放射温度計に入射する光の分光放射輝度は、εθb,λ(T)となる。
【0053】
また、地点Pから発せられ、第二種のミラー0403で反射してPに入射し、Pにて反射して放射温度計に入射する光の分光放射輝度は、ρ(1-εθ)εθb,λ(T)となる。ここで、(1-εθ)は、キルヒホッフの法則とエネルギー保存則から測定試料の角度θ方向での反射率である。なお、測定試料は非透過体であるとみなしている。
【0054】
このように、地点Pから発せられた光は、第一種のミラーによる反射と測定試料による反射とをそれぞれ1回ずつ経由して放射温度計に入射する。したがって、この光の分光放射輝度は、Pから発せられた光の分光放射輝度εθb,λ(T)に第一種のミラーの反射率ρと、測定試料の反射率(1-εθ)とを乗じた、ρ(1-εθ)εθb,λ(T)となる。
【0055】
そして、六つの光の総和は、以下のように示すことができる。
εθ{1+ρ(1-εθ)+ρ(1-εθ+・・・+ρ(1-εθ}Lb,λ(T)
【0056】
また、図5は、上記のような多重反射を利用した放射測温の態様を一般化して示す概念図である。図示するように、複数の第一種のミラー0502と複数の第二種のミラー0503(一の再帰反射型の第二種のミラー0504を含む)とにより測定面から発せられた光は反射を繰り返し、地点「P」から放射温度計0505に入射する。この放射温度計に入射する光の分光放射輝度Leffは、以下の数式8で示すことができる。
【数8】
【0057】
この数式8は、すでに説明した数式3と同じである。そして、本態様においても上述したように、n→∞とし、測定試料が完全鏡面的反射面であるとすれば、見かけの放射輝度は、数式7で示したものとなる。したがって本態様に放射測温装置においても、見かけの放射率を大きくして温度測定を行うことができる。
<平面ミラーによる多重反射>
【0058】
図6は、第一種のミラー及び第二種のミラーに平面ミラーを用いた放射測温装置の一例を示す概念図である。図6(b)に示すように、第一種のミラー0601は、測定対象0602の測定面法線0603に対して角度θにてミラー面が向くように配置され、第二種のミラー0604は、測定面法線に対して角度-θにてミラー面が向くように配置されている。
【0059】
図6(a)に示すように、測定面の地点Pに焦点を合わせた放射温度計0605は、対向する第二種のミラーのミラー面法線方向から角度φの方向に受光軸が向くように配置されている。また、第二種のミラー0604の一端には、測定面の地点Pから入射する光を再び地点Pに入射するように反射面が第二種のミラーの主たるミラー面法線方向から角度φ傾けた再帰反射型ミラー0606が備わる。
【0060】
以上のような構成により、測定面から放射される光が第一種のミラー及び第二種のミラーとの間で多重反射し、多重反射によって放射温度計に入射する光の見かけの放射率を大きくすることができる。
<シリンドリカルミラーによる多重反射>
【0061】
図7は、第一種のミラー及び第二種のミラーにシリンドリカルミラー(円筒面ミラー)を用いた放射測温装置の一例を示す概念図である。図7(b)に示すように、第一種のミラー0701は、測定対象0702の測定面法線0703に対して角度θにてミラー面が向くように配置され、第二種のミラー0704は、測定面法線に対して角度-θにてミラー面が向くように配置されている。
【0062】
図7(a)に示すように、測定面の地点Pに焦点を合わせた放射温度計0705は、対向する第二種のミラーのミラー面法線方向から角度φの方向に受光軸が向くように配置されている。また、第二種のミラーの一端には、測定面の地点Pから入射する光を再び地点Pに入射するように反射面が第二種のミラーの主たるミラー面法線方向から角度φ傾けた再帰反射型ミラー0706が備わる。
【0063】
以上のような構成により、測定面から放射される光が第一種のミラー及び第二種のミラーとの間で多重反射し、多重反射により放射温度計に入射する光の見かけの放射率を高めることができる。
<直角ミラーによる多重反射>
【0064】
図8は、第一種のミラー及び第二種のミラーに直角ミラーを用いた放射測温装置の一例を示す概念図である。図8(b)に示すように、第一種のミラー0801は、測定対象0802の測定面法線0803に対して角度θにてミラー面が向くように配置され、第二種のミラー0804は、測定面法線に対して角度-θにてミラー面が向くように配置されている。
【0065】
図8(a)に示すように、第一種のミラーと第二種のミラーとは、互いに対向するミラー面を図中のy軸方向に平行にずらして配置している。また、第二種のミラーの一端には、測定面の地点Pから入射する光を再び地点Pに入射するように反射面が地点Pに正対する再帰反射部0806が備わる。また、上述のようにずらすことで、ミラー面間での多重反射を経由して第二種のミラーの他端から放射される光は、対向する第一種のミラーに干渉することなく放射温度計0805に入射するように構成されている。
【0066】
以上のような構成により、測定面から放射される光が第一種のミラー及び第二種のミラーとの間で多重反射し、多重反射により放射温度計に入射する光の見かけの放射率を高めることができる。なお、直角ミラーを直角プリズムに代えても同様の作用効果を奏することができる。
<リング状ミラーによる多重反射>
【0067】
本態様は、上述の放射測温装置を基本とし、第一種のミラーと第二種のミラーの配置などに特徴を有するものである。すなわち、本態様における第一種のミラーと、第二種のミラーとは、それぞれN個のミラーから正N角形に配置構成されており、Nの値は、3以上で無限大以下である。
【0068】
図9は、Nの値が無限大の場合を示す一例である。図9(a)に示すように、第一種のミラーと第二種のミラーとが正N角形に配置構成されるところ、Nの値を無限大とすることで、結果的に一のリング状ミラー0901を構成している。
【0069】
リング状ミラーは、測定試料の測定面法線0906に対して角度θ(角度-θ)で測定試料から放射される光を反射して再び測定試料に入射させ、入射点から測定試料の測定面法線に対して所定範囲の角度-θ(角度θ)で放射させるように構成される。そして、放射温度計0903は、リング状ミラーの中心から少しずれた地点Pから測定面法線に対して角度θで放射される光を穴部0902を通して受光するように配置される。このような構成により、放射温度計は、リング状ミラーと測定面の地点Pを中心とする領域との間で多重反射することで見かけの放射率を大きくした放射輝度を測定することができる。
<実施形態1 測温方法>
【0070】
上述した本実施形態の放射測温装置に係る発明は、測温方法に係る発明としても表すことができる。すなわち、上述した配置部と第一種のミラーと第二種のミラーと放射温度計とからなり、第一種のミラーと第二種のミラーとはそれぞれ一以上のミラーから構成されている放射測温装置の測温方法として表すことができる。
【0071】
図10は、本実施形態の放射測温装置の測温方法の流れの一例を示すフロー図である。図示するように、まず、配置部に測定試料を配置する(1001 配置ステップ)。そして、前記複数のミラー間で多重反射した光によって測定試料の見かけの放射率を大きくした放射輝度を放射温度計で測定する(1002 測定ステップ)。
<実施形態1 効果>
【0072】
本実施形態の放射測温装置により、測定試料の測定面の上方空間に余裕のない場合であっても、多重反射により見かけの放射率を高くすることができ、放射率が不明で変動的な対象についても精度よく温度測定を行うことができる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0073】
本実施形態は、実施形態1を基本とし、p偏光を受光することで見かけの放射率をより大きくし、また前述の角度θの範囲をより鏡面反射特性を示す範囲に特定することで見かけの放射率をより大きくするものである。
<実施形態2 構成>
【0074】
図11は、本実施形態の放射測温装置の一例を示す概念図である。この放射測温装置は、実施形態1において図1にて示した放射測温装置と基本的な構成を同じくし、さらに放射温度計の前方にp偏光子を有する偏光部を設けるものである。
【0075】
図11(a)に示すように、第一種のミラー1102及び第二種のミラー1103はそれぞれ球面型ミラーであり、それぞれの集光点が測定試料1101の測定面の地点Pにおいて略一致するように配置されている。また、第一種のミラーには、その反射面の略中心に穴部1107が設けられている。そして、第一種のミラーの後方であって、放射温度計1105の光取込面の前方にp偏光子を有する偏光部1108が設けられている。
【0076】
また、図11(b)に示すように、第一種のミラー1102は、測定面上の地点Pから測定面法線に対して角度θで放射される光が穴部1107を通過して放射温度計1105に入射するとともに、地点Pから発せられた光であって穴部を通過せずミラー面に到達した光を再び地点Pの方へ反射するように構成される。また、第二種のミラー1103は、測定面上の地点Pから測定面法線に対して角度-θで放射される光を反射して、再び地点Pの方に入射するように構成される。
<実施形態2 角度θ>
【0077】
本実施形態において、角度θは60度以上であると限定する。より好ましくは70度以上であると限定する。実施形態1において説明したように、多重反射における反射回数nが多いことが見かけの放射率を高くすることに寄与する。したがって、測定試料が鏡面的な反射特性を有することが好ましい。換言すれば、測定試料が拡散反射の少ない反射特性を有することが好ましいと言える。
【0078】
図12は、Siウェハ(粗さRa=0.28μm)について半導体レーザ(λ=532nm、無偏光)を使用して入射角度θ(30度~80度)ごとに±10度の範囲での反射分布測定結果である。入射角度θが小さいところでは拡散的な広がりのある反射分布であるが、θ=70度以上で反射の拡散分布が著しく縮小し、鏡面的反射特性を示しており、反射回数nを高めることができ、多重反射により見かけの放射率を高めるという本発明における効果を高めることに大いに寄与する。また、以下に示す偏光特性との関係で相乗効果を奏し得る。
<実施形態2 p偏光子による作用>
【0079】
図13は、各種試料((a)Siウェハ、(b)アルミニウム、(c)冷延鋼板、(d)ステンレス鋼板)の偏光方向の偏光方向放射率の実験ないしシミュレーション結果である(下記の文献を参考にした)。Siウェハや各種金属放射率および反射率は偏光によって大きく変化する。いずれもθ=70度~80度の方向でp偏光放射率は増大する(p偏光反射率は減少する)。逆にs偏光放射率は減少する(s偏光反射率は増大する)。したがって、本手法はθ=70度~80度の方向でp偏光を利用すれば放射率が増大するので、本発明の効果をより高めることができる(参考文献 井内徹,石井,偏光輝度を利用した常温付近における光沢金属の放射測温法,計測自動制御学会論文集,36, 395/401 (2000))。
【0080】
なお、角度θを60度以上とすることの作用及び効果や、偏光部を設けることによる作用及び効果は、実施形態1で示した種々の放射測温装置においても同様に生じるものである。
<実施形態2 効果>
【0081】
本実施形態の放射測温装置によれば、見かけの放射率をより高めることができ、放射率が不明で変動的な対象についても精度よく温度測定を行うことができる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0082】
本実施形態の放射測温装置は、実施形態1又は2を基本とし、加熱手段を備えるチャンバー内に配置される測定試料の温度を測定するための放射測温装置である。
<実施形態3 構成>
【0083】
図14は、本実施形態の放射測温装置を加熱装置に適用した例を示す概念図である。図示するように、チャンバー1401には、その内部にシリコンウェハなどの測定試料1402を下方から加熱するための加熱手段1403と、内部観察用窓1404とを備えている。そして、上述した配置部1405は、チャンバー内に配置されている。なお、内部観察用窓には、赤外光を透過するフッ化カルシウム、合成石英、ゲルマニウム、フッ化マグネシウム臭化カリウム、サファイア、シリコン、塩化ナトリウム、ジンクセレン、硫化亜鉛などを用いることができる。
【0084】
第一種のミラー1406及び第二種のミラー1407、並びに放射温度計1408の光取込面は、チャンバー外部に配置され、測定試料からの光を内部観察用窓を介して入射させるように構成されている。なお、本図の例では、第一種のミラー及び第二種のミラーはいずれも球面型ミラーであり、第一種のミラーには前述した穴部が設けられ、第一種のミラーの後方に配置されている放射温度計は穴部を通った光を受光するように構成されている。
【0085】
このように放射測温装置を構成することにより、チャンバー内で加熱処理などに供される測定試料から放射される光が内部観察用窓を介して第一種のミラー及び第二種のミラーと多重反射し、多重反射した光が放射温度計に入射し、実施形態1などで説明したように、見かけの放射率を高くして温度測定を行うことができる。
【0086】
また、上述した加熱装置に適用する場合には、測定試料は配置部に載置して止まった状態で測定されるが、配置部はこのような態様に限られるものではなく、測定試料を配置部上で移動可能とする移動手段を有するように構成することもできる。
【0087】
例えば、コンベア焼成炉やコンベア加熱炉などのように、チャンバーの内外を通るコンベアにより測定試料をチャンバー内に搬送するとともに、チャンバー内にて測定試料をチャンバー入口からチャンバー出口まで移動させ、再びチャンバー外に測定試料を搬送するように構成することができる。係る構成によれば、搬送される測定試料に対して熱処理等を行うチャンバー内で測定対象の温度測定を行うことができる。
<実施形態3 効果>
【0088】
本実施形態の放射測温装置により、チャンバー内に配置される測定試料についても多重反射により見かけの放射率を高めることができ、放射率が不明で変動的な対象についても精度よく温度測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
0101 測定試料
0102 第一種のミラー
0103 第二種のミラー
0104 測定面法線
0105 放射温度計
0106 配置部
0107 穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14