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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】クリップ構造及びピン部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
F16B19/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117576
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015002
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジェミン
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166650(JP,A)
【文献】特開平08-014231(JP,A)
【文献】特開2007-315556(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059680(WO,A1)
【文献】特開2020-034024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材と対峙する台座部に、前記被取付部材に挿入される脚部が形成されると共に当該脚部が周囲に配置された被挿入孔が形成されたグロメット部材と、
前記被挿入孔に挿入されて前記脚部と係合する軸部を有するピン部材と、から構成されたクリップ構造であって、
前記グロメット部材が、
前記台座部に対して、被挿入孔の縁において前記脚部と反対側に向けて突出して環状に形成された突部を有し、
前記ピン部材が、
前記台座部よりも前記突部側で前記軸部と交差する方向において前記突部と当たる受部と、
前記受部に連接されたフランジ部と、を有
前記軸部と前記受部とが連接され、
前記受部と前記フランジ部とで、前記突部が挿入される凹溝状に形成された、
ことを特徴とするクリップ構造。
【請求項2】
前記フランジ部が
前記台座部に圧接される薄肉部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載されたクリップ構造。
【請求項3】
前記部が、
前記被取付部材の孔の縁に当たるリブを有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたクリップ構造。
【請求項4】
被取付部材と対峙する台座部に、前記被取付部材に挿入される脚部が形成されると共に当該脚部が周囲に配置された被挿入孔が形成されたグロメット部材と係合するピン部材であって、
前記被挿入孔に挿入されて前記脚部と係合する軸部と、
前記台座部に対して前記脚部と反対側において、前記軸部の延長上で前記軸部と反対側に陥没して、前記グロメット部材の前記被挿入孔の縁に形成された環状の突部が挿入される環状の凹溝部と、
前記軸部の延長上に連接されて前記凹溝部の一部である受部と、
前記凹溝部に連接されて前記台座部に圧接される薄肉部と、を有する、
ことを特徴とするピン部材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に取り付けられるクリップ構造及びピン部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のボディにバンパーを取り付けるために用いられる構造として、例えば、下記特許文献1に記載されたグロメットとピンとから成るクリップがある(以下、「文献公知発明」と記す。)。この文献公知発明では、バンパーリテーナーの一部に形成されたグロメットに、ボディに挿入される複数の脚が形成され、この脚同士の中央に、脚を開かせるためにピンが挿入される孔が形成されている。ピンの頭部には、肉薄のフランジが形成され、このフランジがグロメットに圧接することで、文献公知発明は防水機能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5319586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仮に、バンパーの荷重や外力によって、バンパーリテーナー(グロメット)がボディに対してズレる方向に動いた場合、ピンを剪断する方向に力が作用してピンが傾き、フランジが変形する。
【0005】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、剪断力が高いクリップ構造及びピン部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るクリップ構造は、被取付部材と対峙する台座部に、前記被取付部材に挿入される脚部が形成されると共に当該脚部が周囲に配置された被挿入孔が形成されたグロメット部材と、前記被挿入孔に挿入されて前記脚部と係合する軸部を有するピン部材と、から構成されたクリップ構造であって、前記グロメット部材が、前記台座部に対して、前記脚部と反対側に向けて突出した突部を有し、前記ピン部材が、前記台座部よりも前記突部側で前記軸部と交差する方向において前記突部と当たる受部を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るクリップ構造は、前記軸部と前記受部とが連接され、前記受部にフランジ部が連接され、前記受部と前記フランジ部とで、前記突部が挿入される凹溝状に形成された、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るクリップ構造は、前記フランジ部が、前記台座部に圧接される薄肉部を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るクリップ構造は、前記脚部が、前記被取付部材の孔の縁に当たるリブを有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るクリップ構造は、前記突部が、前記被挿入孔の縁において環状に形成され、前記受部が、前記軸部の延長上において環状に形成された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るピン部材は、被取付部材と対峙する台座部に、前記被取付部材に挿入される脚部が形成されると共に当該脚部が周囲に配置された被挿入孔が形成されたグロメット部材と係合するピン部材であって、前記被挿入孔に挿入されて前記脚部と係合する軸部と、前記台座部に対して前記脚部と反対側において、前記軸部の延長上で前記軸部と反対側に陥没して前記グロメットの部材一部が挿入される環状の凹溝部と、前記軸部の延長上に連接されて前記凹溝部の一部である受部と、前記凹溝部に連接されて前記台座部に圧接される薄肉部と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るクリップ構造は、グロメット部材が、台座部に対して、脚部と反対側に向けて突出した突部を有し、ピン部材が、台座部よりも突部側で軸部と交差する方向において突部と当たる受部を有している。何らかの力が、グロメット部材に対し、ピン部材の軸部と交差する方向から、グロメット部材が被取付部材に対してズレる方向に作用した場合であっても、ピン部材が傾こうとする方向の先に、グロメット部材の突部があり、この突部にピン部材の受部が当たることで、ピン部材が傾くことが抑制される。すなわち、本発明は剪断力が高いといえる。
【0013】
本発明に係るクリップ構造は、軸部と受部とが連接され、受部にフランジ部が連接され、受部とフランジ部とで、突部が挿入される凹溝状に形成されている。すなわち、グロメット部材の突部が、ピン部材の凹溝状部分に挿入される。この状態で、何らかの力が、グロメット部材が被取付部材に対してズレる方向に作用した場合であっても、グロメット部材の突部が凹溝状部分に挿入されたピン部材は、傾くことが抑制される。すなわち、本発明は剪断力が高いといえる。
【0014】
本発明に係るクリップ構造は、フランジ部が、台座部に圧接される薄肉部を有している。すなわち、ピン部材が傾くことが抑制されるため、フランジは変形しないし、フランジ部が突部を覆った状態でグロメット部材の台座部に圧接される。したがって、本発明は、水密性を実現することができる。
【0015】
本発明に係るクリップ構造は、脚部が、被取付部材の孔の縁に当たるリブを有している。すなわち、リブによって脚部の剛性が高まるため、グロメット部材がズレにくい。また、何らかの力が、グロメット部材が被取付部材に対してズレる方向に作用した場合であっても、被取付部材の孔の縁において、グロメット部材の脚部のリブが当たることで、グロメット部材がズレ難い。
【0016】
本発明に係るクリップ構造は、突部が、被挿入孔の縁において環状に形成され、受部が、軸部の延長上において環状に形成されている。この構成により、ピン部材の受部とグロメット部材の突部とが、互いの周面の全面で当たって堅固であり、高い剪断力が実現する。また、突部が被挿入孔の縁にあり、受部がピン部材の軸部上にあることから、突部や受部が、被挿入孔や軸部から離れた位置に形成された場合と比較して、ピン部材は、傾くことが抑制される。すなわち、本発明は剪断力が高いといえる。
【0017】
本発明に係るピン部材は、被挿入孔に挿入されて脚部と係合する軸部と、台座部に対して脚部と反対側において、軸部の延長上で軸部と反対側に陥没してグロメットの部材一部が挿入される環状の凹溝部と、軸部の延長上に連接されて凹溝部の一部である受部と、凹溝部に連接されて台座部に圧接される薄肉部とを有している。したがって、ピン部材は、上記したクリップ構造と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係るクリップ構造におけるグロメット部材を被挿入孔側から視した斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るクリップ構造におけるグロメット部材を脚部側から視した斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るクリップ構造におけるピン部材をフランジ部側から視した斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るクリップ構造におけるピン部材を軸部側から視した斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るクリップ構造においてピン部材が挿入される側から視した斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るクリップ構造においてピン部材が挿入された側から視した斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るクリップ構造においてピン部材が挿入された側である後面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII断面であって、本発明の実施形態に係るクリップ構造の断面図である。
図9図9は、図7におけるIX-IX断面であって、本発明の実施形態に係るクリップ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係るクリップ構造を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、クリップ構造3を構成するグロメット部材10が示され、図3及び図4は、クリップ構造3を構成するピン部材24が示されている。図5及び図6は、クリップ構造3が示され、図7図8及び図9は、クリップ構造3が被取付部材1に取り付けられた状態の外観及び断面が示されている。図1図2図3図4図5及び図6に示されているとおり、クリップ構造3は、ピン部材24がグロメット部材10に取り付けられるものであり、図7図8及び図9に示されているとおり、クリップ構造3は、被取付部材1に取り付けられる。クリップ構造3は、例えば、自動車のボディにバンパーが取り付けられる際に用いられるバンパーリテーナー等に施される(自動車、ボディ、バンパー及びバンパーリテーナーは、それぞれ図示省略。)。すなわち、被取付部材1は、例えば、自動車のボディ等であり、グロメット部材10は、例えば、バンパーリテーナー等に形成されている。バンパーリテーナーには、バンパーが取り付けられ、この状態で、バンパーリテーナーがボディに取り付けられることで、バンパーがボディに装着される。なお、本実施形態は、単一のクリップ構造3であるが、バンパーリテーナーに形成されるクリップ構造3の数は、任意である。
【0020】
以下の説明では、挿入方向の下手側を前方(Front)とし、上手側を後方(Back)とし、挿入方向と直交する方向を、上方及び下方(Up、Down)、左方及び右方(Left Side、Right Side)とする(図1図3参照。)。
【0021】
図1に示されているとおり、グロメット部材10は、被取付部材1であるボディと対峙する台座部11を有し、この台座部11に、ピン部材24が挿入される被挿入孔12が形成されている。台座部11の後面において、被挿入孔12の周縁には、突部13が形成されている。突部13は、被挿入孔12を中心とした円環状又は円筒状であって、後方に向けて突出している。台座部11の後面において、突部13の周囲には、壁部14が形成されている。壁部14は、突部13と同軸の円環状又は円筒状であって、後方に向けて突出している。すなわち、台座部11は、壁部14の高さに対して、窪んで配置されている。台座部11と壁部14との連接部分には、段部15が形成されている。段部15は、壁部14に沿って環状に形成されている。台座部11のうち、突部13と段部15との間には、複数の段片16が形成されている。段片16は、突部13を中心として放射状に形成され、突部13の円周方向においてほぼ等間隔に配置されている。
【0022】
図2に示されているとおり、台座部11の下面において、被挿入孔12の周縁には、複数の脚部17が形成されている。脚部17は、ほぼ板状であって、前方に向けて突出している。脚部17は、被挿入孔12を中心に、左右側方において互いに対面した一対の第一脚部18と、この第一脚部18に隣接すると共に、被挿入孔12を中心に、上下において互いに対面した一対の第二脚部19とから構成されている。第一脚部18のうち、台座部11と連接した部分である基部20は、外側面に、リブ21が形成されている。リブ21は、二箇所に形成され、基部20において上下の端部に配置されている。第二脚部19の内側面には、隆起部22が形成されている(図8参照。)。各脚部18,19の先端部は、各脚部18,19が対面する内側に向けて突出した係止片23が形成されている。第二脚部19の係止片23は、隆起部22と連接されている。
【0023】
図3及び図4に示されているとおり、ピン部材24は、グロメット部材10の被挿入孔12に挿入される軸部25と、この軸部25の延長上に連接された受部26と、この受部26と連接されて台座部11に取り付けられるフランジ部35とを有している。軸部25は、ほぼ中空の円筒状又は円柱状である。軸部25は、受部26から前方に伸びた中間部27と、この中間部27から前方に伸びた前端係止部28とを有している。前端係止部28は、前端である前端部29と、この前端部29から後方に伸びた仮止め部30と、この仮止め部30の後方に連接された被係止溝部34とを有している。前端部29は、フランジ部35よりも小さな円板状であり、中心に仮止め部30が連接されている。仮止め部30は、仮止め溝部31と、後方に向かうにしたがって側方に向けて広がった傾斜面32と、側方に突出した複数の仕切り部33とが形成されている。仕切り部33は、前端部29から傾斜面32に渡っており、軸部25の周方向においてほぼ等間隔に配置されている。したがって、仮止め溝部31及び傾斜面32は、仕切り部33によって区分されている。被係止溝部34は、軸部25の中心に向けて窪み、仕切り部33と同じ間隔で区分されている。被係止溝部34の後方から伸びた中間部27は、凹凸の無い円筒状又は円柱状であり、受部26は円環状又は円筒状である。
【0024】
フランジ部35は、円形の平板である頂部37と、この頂部37の周縁から前方に突出した円環状又は円筒状の覆部39と、この覆部39の前端から外側に向けて突出した円環状の薄肉部40を有している。頂部37の後面には、工具等(図示省略。)が差し込まれる被差し込み孔38が形成されている。頂部37の前面には、中央に受部26が連接されている。受部26は円環状又は円筒状であり、覆部39の内側に対面して配置されている。受部26と覆部39とは、軸部25を中心とした同心円であり、受部26、覆部39及び頂部37とで囲まれた空間に、凹溝状である凹溝部41が形成されている。すなわち、凹溝部41は、受部26を一部とする環状であって、軸部25の延長上で軸部25が伸びる方向とは反対側に陥没している。薄肉部40は、頂部37及び覆部39と比較して厚みが薄く、容易に撓む。薄肉部40において、覆部39との連接部分の近傍には、前方に突出すると共に薄肉部40の円周方向に傾斜した傾斜突片36が形成されている。傾斜突片36は、二箇所に形成され、軸部25を中心とした側方に配置されている。換言すれば、傾斜突片36は、薄肉部40の円周上においてゼロ度及び180度の位置にある。
【0025】
図5及び図6に示されているとおり、グロメット部材10とピン部材24とは合体する。ピン部材24の軸部25が、グロメット部材10の被挿入孔12に挿入されると共に、グロメット部材10の各脚部18,19と係合する。
【0026】
ここで、ピン部材24とグロメット部材10とが係合する過程を図面に基づいて説明する。図7図8及び図9に示されているとおり、グロメット部材10の各脚部18,19が、被取付部材1に形成された被取付孔2に挿入される。その際、第一脚部18のリブ21は、被取付孔2の内側において縁に当たる。この状態で、ピン部材24の軸部25が、グロメット部材10の被挿入孔12に挿入される。被挿入孔12を通過した軸部25の前端部29は、第二脚部19の隆起部22に当たって第二脚部19を押し広げながら前進し、第二脚部19は撓んで外側に開く。隆起部22を通過した前端部29は、第一脚部18の係止片23に当たって第一脚部18を押し広げながら前進し、第一脚部18は撓んで外側に開く。前端部29が係止片23を通過すると、軸部25の仮止め溝部31が隆起部22と対面することで、第二脚部19が元の状態に戻ると共に隆起部22が仮止め溝部31に配置される。同時に、第一脚部18も元の状態に戻る。係止片23は、仮止め溝部31に配置される。この状態では、ピン部材24が、グロメット部材10に対して、仮止めされている。
【0027】
ピン部材24が更に押し込まれると、ピン部材24の傾斜面32が隆起部22に当たって第二脚部19を押し広げながら前進し、第二脚部19は撓んで外側に開く。傾斜面32は、隆起部22と擦れ、係止片23に当たって各脚部18,19を押し広げながら前進し、各脚部18,19は撓んで外側に開く。傾斜面32が係止片23を通過すると、被係止溝部34が係止片23と対面することで、各脚部18,19が元の状態に戻ると共に係止片23が被係止溝部34に配置される。この状態では、ピン部材24はグロメット部材10と係合している。
【0028】
この係合状態において、グロメット部材10の突部13は、ピン部材24の凹溝部41に挿入されている。受部26は、台座部11よりも突部13側である後方で、軸部25と交差する方向である側方において突部13と対面している。フランジ部35は、突部13を覆っている。すなわち、受部26と覆部39と頂部37とで突部13を覆い、また、薄肉部40の先端が、グロメット部材10の段部15に押し当てられて撓むことで、薄肉部40が台座部11に圧接され、台座部11の後面側が水密となる。フランジ部35の傾斜突片36は、グロメット部材10における段片16同士の間に配置されている。
【0029】
なお、係合状態を解除する場合、ピン部材24の被差し込み孔38に工具が差し込まれ、工具を介してピン部材24が回転することで、ピン部材24の傾斜突片36がグロメット部材10の段片16に乗り上がると共に、ピン部材24がグロメット部材10に対して浮き上がる。同時に、軸部25が、各脚部18,19から外れる。
【0030】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0031】
本実施形態では、グロメット部材10の被挿入孔12の周縁であって、台座部11に対して各脚部18,19と反対側から、被挿入孔12を中心とした円環状又は円筒状の突部13が突出している。一方で、ピン部材24は、軸部25の延長上であって、軸部25の中間部27とフランジ部35との間に、円環状又は円筒状の受部26が連接され、この受部26を一部とする環状の凹溝部41を有している。この構成により、ピン部材24がグロメット部材10と係合した状態において、突部13は、台座部11よりも後方で凹溝部41に挿入され、この凹溝部41において、受部26は、台座部11よりも後方において、側面が突部13と対面している。換言すれば、突部13が被挿入孔12の周縁にあることから、被挿入孔12は、突部13によって、疑似的に台座部から後方に伸びた円筒の孔となり、この円筒の被挿入孔12に、ピン部材24の軸部25及び受部26が挿入される。
【0032】
何らかの力Fが、グロメット部材10に対し、側方から、グロメット部材10が被取付部材1に対してズレる方向(図8において上下方向)に作用した場合、ピン部材24は、被挿入孔12の内面に押されて傾こうとするところ、ピン部材24が傾こうとする方向の先に、突部13が伸びており、この突部13に受部26が当たることで、ピン部材24が傾くことが抑制される。すなわち、本実施形態は、剪断力が高いといえる。
【0033】
ピン部材24がグロメット部材10と係合した状態では、グロメット部材10の突部13が、凹溝部41に挿入され、その分、ピン部材24は、傾くことが抑制される。すなわち、本実施形態は剪断力が高いといえる。
【0034】
特に、円環状又は円筒状の受部26と、円環状又は円筒状の突部13とが、互いの周面の全面で当たって堅固であり、高い剪断力が実現する。
【0035】
本実施形態では、ピン部材24のフランジ部35は、受部26と連接した円形の平板である頂部37と、この頂部37の周縁から前方に突出した円環状又は円筒状の覆部39と、この覆部39の前端から外側に向けて突出した円環状の薄肉部40を有している。ピン部材24がグロメット部材10と係合した状態では、フランジ部35が、突部13を覆うと共に、薄肉部40の先端が、グロメット部材10の段部15に押し当てられて撓むことで、薄肉部40が台座部11に圧接される。したがって、台座部11の後面側において、水密性を実現することができる。また、ピン部材24が傾くことが抑制されるため、フランジ部35は、変形せず、水密性を維持することができる。
【0036】
本実施形態では、第一脚部18の基部20は、外側面に、リブ21が形成されている。すなわち、リブ21によって第一脚部18の剛性が高まるため、グロメット部材10がズレにくい。また、グロメット部材10の各脚部18,19が、被取付部材1の被取付孔2に挿入されると、リブ21が、被取付孔2の内側において縁に当たる。この構成により、何らかの力Fが、グロメット部材10に対し、側方から、グロメット部材10が被取付部材1に対してズレる方向に作用した場合であっても、被取付孔2の縁において、リブ21が当たることで、グロメット部材10がズレ難い。すなわち、本実施形態は、剪断力が高いといえる。
【0037】
本発明の他の実施形態では、リブが、第二脚部の基部にのみ形成されている。
他の実施形態では、リブが、第一脚部の基部及び第二脚部の基部にそれぞれ形成されている。
他の実施形態では、リブの形状、数、位置は、基部において任意である。
他の実施形態では、突部は、連続した環状ではなく、複数の突起が環状に整列している。
他の実施形態では、グロメット部材の突部やピン部材の受部が、グロメット部材の被挿入孔やピン部材の軸部から側方に離れた位置に形成されている。
他の実施形態では、ピン部材が、フランジ部を有していない。
【0038】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、例えば、自動車、航空機、船舶等の乗り物にも用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1 被取付部材
2 被取付孔
3 クリップ構造
10 グロメット部材
11 台座部
12 被挿入孔
13 突部
14 壁部
15 段部
16 段片
17 脚部
18 第一脚部
19 第二脚部
20 基部
21 リブ
22 隆起部
23 係止片
24 ピン部材
25 軸部
26 受部
27 中間部
28 前端係止部
29 前端部
30 仮止め部
31 仮止め溝部
32 傾斜面
33 仕切り部
34 被係止溝部
35 フランジ部
36 傾斜突片
37 頂部
38 被差し込み孔
39 覆部
40 薄肉部
41 凹溝部
F 力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9