IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-魚釣用リール及び釣具管理システム 図1
  • 特許-魚釣用リール及び釣具管理システム 図2
  • 特許-魚釣用リール及び釣具管理システム 図3
  • 特許-魚釣用リール及び釣具管理システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】魚釣用リール及び釣具管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20230919BHJP
   A01K 89/01 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A01K89/015 A
A01K89/01 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020143244
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038638
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157259(JP,A)
【文献】特開2013-013365(JP,A)
【文献】特開2002-112676(JP,A)
【文献】特開2005-065600(JP,A)
【文献】特開2020-058248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0124297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールと、
該釣糸を巻回操作する操作部と、
魚釣用リールによる該釣糸の放出開始を検出する釣糸放出開始検出部と、
該釣糸の放出開始と、次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔を測定する放出間隔測定部と、を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
一端に仕掛けが取付けられる釣糸を巻回可能なスプールと、
該釣糸を巻回操作する操作部と、
釣用リールによる該釣糸の放出開始を検出する釣糸放出開始検出部と、
該仕掛けの回収を検知する回収終了検知部と、
該仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔を測定する手返し時間測定部と、を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔を表示可能にされる、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記表示部は、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔の履歴を表示する、請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
請求項1に記載の魚釣用リールと、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔の情報を保存する記憶部と、該情報を表示する表示部と、を備える、釣情報管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の魚釣用リールと、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔の履歴を保存する記憶部と、該履歴を表示する表示部と、を備える、釣情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手返し時間の測定・管理が可能な、魚釣用リール及びこれを備えた釣具管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚釣時の利便性向上のため、表示部を有する魚釣用リールが開示されている。このようなリールでは、放出した釣糸の長さや、巻き上げ速度を表示することで、ユーザにリールの状態を把握することを可能としている。
【0003】
このようなリールとして、例えば、特許文献1では、リール本体に回転可能に装着したスプールに巻回される釣糸の繰出し及び巻取り糸長を計測し、その計測糸長値をリール本体に設けた表示装置の表示部に表示させる糸長計測装置を備えた魚釣用リールに於て、水中での仕掛けの待機時間を計数するタイマー手段を備え、当該タイマー手段の刻時内容を表示する表示部を上記表示装置に設けると共に、糸長計測装置による計測糸長値を表示する表示部と、タイマー手段の刻時内容を表示する当該表示部を、夫々、リール本体の上方から同時に確認できるように配置した魚釣用リールについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平05-069614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、水中への仕掛け投入後の経過時間を表示することで、撒餌の残量が無くなるまでの間隔を認識しやすくしたリールが開示されているが、一般に、釣果を上げるためには、手返しの早さが重要だと言われている。ここで、手返しとは、仕掛けを回収し終えてから、次に仕掛けを放出するまでの時間間隔のことである。
【0006】
しかしながら、従来のリールでは手返し時間を実測し、表示することはできず、ユーザの記憶に頼っているのが実情であった。特許文献1のリールは、仕掛け投入後の経過時間を表示するのみであり、釣人の熟練度に関連する手返し時間を表示することはできなかった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手返し時間を測定又は算出することが可能な魚釣用リール又はこれを備える釣情報管理システムを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、 該釣糸を巻回操作する操作部と、魚釣用リールによる該釣糸の放出開始を検出する釣糸放出開始検出部と、該釣糸の放出開始と、次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔を測定する放出間隔測定部と、を備えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、一端に仕掛けが取付けられる釣糸を巻回可能なスプールと、該釣糸を巻回操作する操作部と、該魚釣用リールによる該釣糸の放出開始を検出する釣糸放出開始検出部と、該仕掛けの回収を検知する回収終了検知部と、該仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔を測定する手返し時間測定部と、を備えるように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔、又は、前記仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔の少なくともいずれかを表示可能に構成される。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該表示部は、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔、又は、前記仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔の少なくともいずれかの履歴を表示するように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムは、上記魚釣用リールと、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔、又は、前記仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔の少なくともいずれかの情報を保存する記憶部と、該情報を表示する表示部と、を備えるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣情報管理システムは、上記魚釣用リールと、前記釣糸の放出開始と、前記次回の該釣糸の放出開始との間の時間間隔、又は、前記仕掛けの回収から次の釣糸放出開始までの時間間隔の少なくともいずれかの履歴を保存する記憶部と、該履歴を表示する表示部と、を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0013】
上記実施形態によれば、釣人の熟練度に関連する手返し時間の測定、表示又は管理が可能な魚釣用リール及びこれを備えた釣情報管理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システム100を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システム100における表示部の表示例を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システム100における表示部の表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る魚釣用リール及び釣情報管理システムの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0016】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システムについて説明する。図1は、魚釣用リール10の基本的構成を示す図であり、(A)は魚釣用リール10として両軸リールと呼ばれるタイプを用いた場合、(B)はスピニングリールと呼ばれるタイプを用いた場合である。まず、両軸リール10Aについて説明する。
【0017】
図示のスプール11Aは、釣糸31を巻回可能であり、操作部14Aによって正回転させると釣糸31を巻き取ることができる。クラッチ12は、操作部14Aとの動力伝達の接続・解放を選択することができる。接続状態では操作部14Aによる巻き取りが可能である。開放状態ではスプール11Aを正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸31は放出可能となる。
【0018】
また、図示のドラグ装置13は、釣糸31に設定した張力以上の負荷がかかると、スプール11を空転させることができる。操作部14Aは、例えば、ハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ等の伝達機構によってスプール11Aに伝え、該スプール11Aを正回転することができる。なお、操作部4は、レバー等の操作部材と、モータ等の動力源との組み合わせでもよい。
【0019】
また、図示の制動装置15は、スプールに制動力を発生させることができる。これにより、キャスティング時のバックラッシュ発生を抑制することが可能となる。この制動力は、制動力設定部151で設定可能とされる。
【0020】
次に、魚釣用リール10としてスピニングリール10Bを用いた場合について説明する。スプール11Bは、リール本体に対してドラグ装置13Bを介して固定されている。
【0021】
図示のドラグ装置13Bは、釣糸31に設定した張力以上の負荷が掛かると、スプール11を空転させることができる。釣糸31は、ラインガイド12Bに案内され、ラインガイド12Bがスプール11の周囲を回転することで、スプール11Bに巻き取られる。
【0022】
図示のラインガイド12Bは、リール本体に対して回転可能に支持されるロータの先に保持され、ベールアームの開閉により釣糸31の案内可否が切り替えられる。ベールアームが開状態では巻き取り不能となり、釣糸31は放出可能となる。ベールアームが閉状態では巻き取り可能となり、釣糸31は放出不能となる。図示の操作部14Bは、例えば、ハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ等の伝達機構によってロータに伝え、該ラインガイド12Bを正回転することができる。
【0023】
次に、ユーザが釣りをする際の一般的な作業及び用語の定義について説明を行う。一般に、釣りをしている間は、ユーザは下記のような手順で仕掛けの投入と回収を繰り返す。
(1)クラッチ12またはベールアームを操作して、釣糸31を放出可能な状態にする。
(2)竿を振って仕掛けを投擲したり、錘の重力により仕掛けを落下させて釣糸31を放出する。
(3)仕掛けが所定の場所に到達したら、(1)と逆の操作により、釣糸31を巻き取り可能(放出不可能)な状態にする。
(4)操作手段14を操作してルアーを泳がせたり、そのまま放置する等して、魚種や釣法に応じた手段により、魚が食い付くのを待つ。
(5)魚が掛かったら、または所定の時間が経過したら、操作手段14を操作して釣糸31を巻き取り、仕掛けを回収する。
(6)巻き取り終えたら、必要に応じて魚を回収したり、釣り餌やルアーを交換し、再度(1)に戻る。
【0024】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10において、「手返し時間」とは、上記(6)から次の(1)までの時間間隔と定義される。また、「放出間隔」とは、上記(1)から次の(1)までの時間間隔と定義される。
【0025】
一般に、釣果を上げるためには、手返し時間は短い程よい。魚が釣れる可能性のあるのは、上記(2)から(5)の間であるため、釣りをしている全時間のうち、この区間の割合が長いほど釣果は上がり得る。(2)から(5)以外で最も時間がかかるのが(6)~(1)の区間であるため、この間に行うべき作業を手際よく進めることで、魚が釣れる可能性が上がる。熟練者程(6)から(1)までに要する時間が短く、より多くの魚を釣る傾向がある。
【0026】
また、釣種によっては、放出間隔が短いほど釣果が上がるものもある。例えば、仕掛けの投擲を繰り返すルアー釣りなどの釣りでは、放出間隔を短くして、投擲回数を多くすることで、より広い範囲に仕掛けを投げることができる。したがって、より多くの魚が釣れる可能性がある。これらの手返し時間や放出間隔を測定し、表示することで、釣人の熟練度に応じた指標を得ることができることに繋がる。
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システム100の構成について説明する。図2に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10及び釣情報管理システム100の構成を示す。魚釣用リール10は、ユーザによる各種操作や、リールの状態を検出するための検出部19を有する。当該検出部19による検出結果は演算部16に送られ、必要に応じて演算処理や、記憶部17で保存若しくは一時保存された後、表示部(図示しない)に表示される。
【0028】
演算部16、表示部(図示しない)、記憶部17はいずれも魚釣用リールに設けられてもよいし、釣情報管理システムの一部を構成するようにしてもよい。より具体的には、当該表示部は、スマートフォン、ウェアラブル端末、ノートパソコン、魚群探知機などの外部機器であってもよいし、魚釣用リールや釣竿にLCDなどを設けても実現できる。外部機器を利用する場合、魚釣用リールには無線通信、有線通信などによる通信部を設ける。
【0029】
前述の検出部19として、下記のようなものが挙げられる。なお、コストや大きさなどの制限から、一部を省略してもよい。当該検出部19として、スプール回転検出部192が考えられ、該スプール回転検出部192は、スプール11の回転を検出する。フォトインタラプタを利用したインクリメンタル式の回転センサなど、公知の手段で実現できる。スプール11のスムーズな回転を実現するため、非接触式の回転センサが望ましい。
【0030】
また、当該検出部19として、巻き取り操作検出部193が考えられ、該巻き取り操作検出部193は、操作部14の回転を検出する。操作部14またはそれに連動して回転するギヤ等に回転センサを取付けることで実現できる。巻き取り操作検出部193と、スプール回転検出部192との差分を取ることにより、ドラグ装置13によって空転した回転量を算出することができる。
【0031】
また、当該検出部19として、放出可能状態検出部194が考えられ、該放出可能状態検出部194は、魚釣用リール10から釣糸31が放出可能であるか否かを検出する。上述の両軸リール10Aの例では、クラッチ12の接続状態を検出することで実現できる。クラッチの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。スピニングリール10Bの例では、ベールアームの開閉状態を検出することで実現できる。ベールアームの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。
【0032】
次に、当該検出部19で取得した測定値は、演算部16に送られる。該演算部16内は、釣糸の放出を検出する放出開始検出部161と、釣糸の回収終了を検知する回収終了検出部162を有する。放出開始検出部161による釣糸の放出開始検出方法について説明する。
【0033】
両軸リール10Aの場合、放出可能状態検出部194によって、クラッチが接続状態から解放状態に切り替わることを検出した場合、上記(1)になったことを認識できる。その後、スプール回転検出部192によってスプール11Aが回転を開始したことを検出した場合、上記(2)になったことを認識できる。
【0034】
その後、放出可能状態検出部194によって、クラッチが開放状態から接続状態に切り替わることを検出した場合、上記(3)になったことを認識できる。当該(1)から(3)までの現象が連続して発生した場合に、釣糸の放出が発生したと認識できる。このときの発生時刻を記録する。
【0035】
放出開始検出部161による釣糸の放出開始の検出方法の、別の方法について説明する。上記(6)、(1)の間は、ユーザは釣糸の先を手元で操作する必要があるため、釣糸の放出長さは使用している釣竿の長さ程度である。一方、上記(2)、(3)、(4)、(5)の間は、釣竿の長さより数m以上長い。したがって、釣糸の放出長さとその変化量を検出することで、釣糸の放出を検出することができる。
【0036】
すなわち、釣糸の放出長さが所定値(例えば、釣竿の長さ+1m以下)の状態から、長くなった(例えば、釣竿の長さ+2m以上まで増加した)状態を検出した場合、上記(2)になったことを認識できる。その後、釣糸の長さが最大値まで放出された後に、釣糸が巻き取り方向に巻かれることを検出した場合、上記(3)になったことを認識できる。当該(2)と(3)が連続して発生した場合に、釣糸の放出が発生したと認識できる。このときの発生時刻を記録する。この方法では、検出部19としてスプール回転検出部192を備えていれば実現できるため、検出部19の省部品化ができる。
【0037】
次に、魚釣用リール10としてスピニングリール10Bを用いた場合について説明する。スピニングリール10Bでは、釣糸の放出時にスプール11Bが回転しないため、上記(2)を検出するのが難しい。しかしながら、放出可能状態検出部194によって、ベールの開閉状態を検出することができるので、上記(1)及び(3)を検出することができる。
【0038】
放出可能状態検出部194によって、ベールが閉状態から開状態に変わったことを検出することで、(1)になったと認識できる。通常の使用方法では、ベールを開状態にするのは(2)の間だけである。従って、ベールが開状態である場合は、(2)になったと認識できる。
【0039】
その後、ベールが開状態から閉状態に変わったことを検出することで、(3)になったと認識できる。当該(1)から(3)が連続して発生した場合に、釣糸の放出が発生したと認識できる。このときの発生時刻を記録する。
【0040】
さらにその後、巻き取り操作検出部193によって巻き取り操作が行われた場合に上記(4)から(5)が発生したことを認識できる。当該(4)が発生せずに連続してベール開閉操作が行なわれた場合、最新のベール開閉のみを釣糸の放出と認識してもよい。
【0041】
次に、回収終了検出部162による仕掛けの回収終了の検出方法について説明する。上記(6)で釣糸の回収が終了してから、次回放出時の(3)の間、ほとんどの場合、ユーザは巻き取り操作を行なわない。従って、釣糸の放出開始を検出した場合、その直前に行われた最後の巻き取り操作を行った時間が、回収終了を行った時間である。この時間を記録しておくことで、仕掛けの回収を検出することができる。
【0042】
仕掛けの回収終了の別の検出方法について説明する。上述の放出開始と同様、釣糸の放出長さによっても仕掛けの回収を検出することができる。すなわち、釣糸の放出長さが所定値(例えば、釣竿の長さ+2m以上)の状態から、短くなった(例えば、釣竿の長さ+1m以下まで減少した)状態を検出した場合、上記(5)から(6)に変化したと認識できる。この時の時刻を記録する。その後、再度釣糸の放出長さが増加したら、(1)から(2)になったと変化したと認識できる。このように、検出部19によって魚釣用リール10への操作を検出したり、釣糸の放出長さを算出したりすることで、釣糸の放出開始や回収終了を検出することができる。
【0043】
そして、釣糸の放出開始時刻や、仕掛けの回収終了時刻を記憶することで、手返し時間および放出間隔を算出できる。仕掛け回収終了から次の放出開始までの時間差を算出することで、手返し時間が得られる。最新の放出開始時間と直前の放出開始時間の差分を算出することで、放出間隔が得られる。これらの手返し時間や放出間隔を測定し、表示することで、釣り人の熟練度に応じた指標を得ることができる。
【0044】
上述の方法で得られた手返し時間および放出間隔は、算出後すぐに表示してもよいが、記憶部17によって、取得した手返し時間、または放出間隔の履歴を保存し、その結果を表示部に表示してもよい。
【0045】
これにより、手返し時間や放出間隔を、測定後すぐに表示するだけでなく、釣りの終了後や休憩中に表示することができるため、履歴を演算して、一定期間内(例えば1日間、1ヵ月間内など)の平均値や最高値、最低値などの統計値を表示しても良い。
【0046】
次に、図3図4を参照して、手返し時間、または放出間隔の履歴の表示方法についてより具体的に説明する。まず、図3では、1時間毎の手返し時間の平均値、最小値、最大値の変化を示している。これにより、ユーザはその日の作業の効率性や、釣果との関連性を把握することができる。また、集計期間を1ヵ月、1年等の長期間にすると、ユーザに習熟度の変化を把握させることができる。
【0047】
図4に、1日の手返し時間をヒストグラム表示した例を示す。手返し時間は、何もしない場合、餌交換のみの場合、仕掛けも交換する場合、釣れた魚を外す場合、釣り糸が絡まった場合、釣り場所の移動を伴う場合など、作業状態などによって大きく変わり得るので、平均値よりもヒストグラム表示の方が全体像を把握しやすくなることがある。
【0048】
また、この例では、ヒストグラム表示の他に、左欄にその日の統計値を表示している。開始時間は、釣りを開始した時刻であり、ユーザがその日の最初の操作を行なった時間を検出することなどで取得できる。終了時間は、釣りを終了した時刻であり、ユーザがその日の最後の操作を行った時間を検出するなどして取得できる。実釣時間は、開始時間から終了時間までの経過時間である。
【0049】
投入回数は、開始時間から終了時間までに行われた、釣糸の放出開始検出の回数である。平均放出間隔は、上述の方法により算出した放出間隔の平均値である。実釣時間を投入回数で割った値と等しくなる。平均手返し時間は、上述の方法により算出した手返し時間の平均値である。手返し時間率は、その日の手返し時間の合計値を実釣時間で割った値である。平均手返し時間を、平均放出間隔で割った値と等しくなる。この例では100分率表示をしている。
【0050】
100%から手返し時間率を引くと、仕掛けが水中にある割合であり、魚が釣れる可能性のある時間の割合となる。従って、手返し時間率が小さくなるほど、効率的に釣りを行なっていると判断できる。
【0051】
これらの、平均手返し時間、平均放出間隔、手返し時間率などの値は、釣種によっては習熟度や釣果と相関がある。したがって、これらの値を算出し、表示することで、ユーザのスキルアップのための目安とすることができ、やりがい向上や満足度向上につなげることができる。
【0052】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 魚釣用リール
11 スプール
12 クラッチ
13 ドラグ装置
14 操作部
15 制動装置
16 演算部
17 記憶部
19 検出部
31 釣糸












図1
図2
図3
図4