(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】CNF及びアニオン性ゲル化多糖を含むバイオ複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 5/00 20060101AFI20230919BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230919BHJP
C08L 5/04 20060101ALI20230919BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230919BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20230919BHJP
C08B 15/00 20060101ALI20230919BHJP
C08B 37/04 20060101ALI20230919BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C08L5/00
C08L1/00 ZBP
C08L5/04
C08K3/08
C08J5/00 CEP
C08B15/00
C08B37/04
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020521530
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 SE2018051060
(87)【国際公開番号】W WO2019078775
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-11
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513148369
【氏名又は名称】セルテック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ベンセルフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・エングストレーム
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・ヴォグバリ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/100856(WO,A1)
【文献】特開2010-189386(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106521706(CN,A)
【文献】Kajsa Markstedt,3D Bioprinting Human Chondrocytes with Nanocellulose-Alginate Bioink for Cartilage Tissue Engineering Applications,Biomacromolecules,Vol16 No5,米国,ACS,2015年,1489-1496
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/00-5/02
C08B 1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、前記複合材料の乾燥重量で計算して、65~99重量%のセルロースナノファイバー(CNF)及び0.5~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含
み、前記複合材料が、乾燥させ、50%RH及び23℃でコンディショニングしたとき、1~1000μmの厚さを有するフィルム又はナノペーパーの形態である、複合材料。
【請求項2】
前記
複合材料が、前記複合材料の乾燥重量で計算して、70~99重量%のセルロースナノファイバー(CNF)及び1~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記
複合材料が少なくとも24時間水中に浸漬された場合、前記
複合材料が、少なくとも10MPaの湿潤引張強度及び少なくとも75MPaの引張ヤング率を有する、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記
複合材料が24時間水中に浸漬された場合、前記
複合材料が、その元の厚さの3.5倍を超えて膨潤しない、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ゲル化多糖が、アルギネートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料が、多価金属又はメタロイドイオンをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記多価金属又はメタロイドイオンが、前記
複合材料中で架橋を形成する、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記多価金属又はメタロイドイオンが、二価又は三価イオンである、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記イオンが、二価イオンである、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記二価イオンが、カルシウムイオンである、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記イオンが、三価イオンである、請求項8に記載の複合材料。
【請求項12】
前記三価イオンが、鉄イオンである、請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
乾燥状態における前記複合材料が、50%RH及び23℃にて、少なくとも250MPaの引張強度、及び少なくとも9.5GPaの引張ヤング率を有する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記
複合材料が少なくとも24時間水中に浸漬された場合、前記複合材料が、少なくとも125MPaの湿潤状態における引張ヤング率を有する、請求項1から
13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記複合材料が、湿潤状態において少なくとも3MJm
-3の破壊仕事を有する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項16】
前記複合材料の総重量に対して計算して、70重量%未満の水を含む、請求項1から
15のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項17】
前記複合材料が、
50%RH及び23℃にて、0.5cm
3・μm・m
-2・day
-1・kPa
-1未満の酸素透過性を有する、請求項1から
16のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の複合材料を調製するための方法であって、前記方法が、
a)CNF懸濁物をアニオン性ゲル化多糖と混合して、分散物であって、前記分散物の乾燥重量に対して計算して、70~99重量%のCNF及び1~30重量%の前記ゲル化多糖を含む、分散物を得る工
程;
b)前記CNF及びアニオン性ゲル化多糖が分散している分散媒体を除去して、CNF、アニオン性ゲル化多糖、及び得られる物体の総重量に対して計算して、20重量%未満の水を含む物体を得る工
程;
c)多価金属又はメタロイドイオンを含む溶液中に、工程b)で得られる
前記物体を浸漬させて、浸漬状態の前記複合材料を得る工
程
を含む、方法。
【請求項19】
c)で得られる前記複合材料を所望の形状に形成する工程d)をさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
工程c)又は工程d)で得られる前記複合材料を乾燥させて、水中でも安定な物体を得る工程をさらに含む、請求項
18又は
19に記載の方法。
【請求項21】
工程c)における前記多価金属又はメタロイドイオンが、二価又は三価イオンである、請求項
18から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程c)における前記多価金属又はメタロイドイオンが、カルシウムイオンを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
工程c)における前記多価金属又はメタロイドイオンが、鉄イオンを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の複合材料を含む包装材料。
【請求項25】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の複合材料を含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の乾燥重量で計算して、65~99重量%のセルロースナノフィブリル(CNF)及び0.5~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含む複合材料に関する。本発明はさらに、そのような複合材料を調製するための方法、ならびに包装における又はフィラメントとしての複合材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノフィブリル(CNF)は、高等植物の基本的な耐力構造である高アスペクト比のフィブリルを形成する結晶性セルロースから作られている。CNFは、ナノスケール特性及びセルロース結晶構造の固有の強度により、多くの興味深い材料用途の研究に使用されている。CNF製のフィルムの優れたバリア特性により、例えば、包装産業において、石油化学材料と競合するためにCNFを使用するだけではなく、CNFのナノスケール特性を利用して、ハイエンド材料及びデバイスを設計するための処理経路を開発することも望ましい。しかし、水がセルロース等の多糖の可塑剤として作用し、このことは、例えばCNFペーパー(ナノペーパー)の優れた特性が、凝縮形態の水又は湿った空気にさらされると劇的に変化することを意味する。CNFの調製は通常、カルボン酸、硫酸、又は第四級アミン等の荷電基をCNFの表面に導入して、パルプ繊維からのフィブリルの遊離を促進させ、かつ分散物のコロイド安定性を向上させるための改質工程を伴う。イオン性膨潤がCNFから調製された材料の特性リストに追加されるため、この改質により水に対する感度がさらに高くなる。CNF系材料及び複合材料の水との相互作用及びイオン性膨潤は、生分解性に関しては利点であり得るが、一般的に材料の寿命中、特に、フィルム又はコーティングの寸法における大きな変化が壊滅的になる可能性がある包装産業においては、欠点であり得る。CNFナノペーパー/フィルム及びCNF系材料の引張特性は、一般に、材料が水にさらされると大きく損なわれる。酸素透過性は材料の自由空間体積に比例し、水分収着によるバイオ系材料の膨潤は、バリアフィルム特性を大幅に低下させ、この膨潤により、食品パッケージ等の多くの日常製品においてバイオ系材料を使用することが困難になる。Larsson, P.A.ら、Green Materials 2014年、2、163~168頁では、セルロースナノフィブリルの共有結合架橋によりフィルムの膨潤を防ぐことができ、フィルムのガスバリアー特性を維持することができることが、顕微鏡観察試験において示された。Shimizu, M,ら、J. Membr. Sci. 2016年、500、1~7頁では、多価イオンをアニオン荷電CNFとともに使用して、耐水性及び高酸素バリア性のナノセルロースフィルムを調製した。
【0003】
アルギネートは、3つの異なるタイプのブロック、すなわち、GG、MM、及びMG/GMのL-グルロン酸(G)とD-マンヌロン酸(M)とのブロックコポリマーである直鎖状多糖である。GGブロックは、多価イオン、典型的にはCa2+をホストすることができる曲折形状を形成する、α-1,4-結合L-グルロン酸である。Steginskyら、Carbohydr.Res. 1992年、225、11~26頁及びHaugら、Acta Chem. Scand. 1966年、20、183~190頁は、カルシウムイオンがアルギネート鎖を強力なゲルネットワークに架橋することを示している。アルギネートの最も一般的な供給源は、褐藻の細胞壁である。他のゲル化多糖は、植物の一次細胞壁中に見出されるペクチン;紅藻中に見出されるι-カラギーナン及びκ-カラギーナン等のカラギーナン;細菌スフィンゴモナス・エロデア(Sphingomonas elodea)によって産生されるジェランガムである。ペクチン及びι-カラギーナンの特定のゲル化イオンはCa2+、及びκ-カラギーナンの特定のゲル化イオンはK+である。低アシルジェランガムのゲル化は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムイオンによって促進される。アルギネート及びカラギーナンは、増粘剤又はゲル化剤として食品産業において広く使用されているが、最近の研究では、生物医学的用途にも重点が置かれている。Markstedtら、Biomacromolecules 2015年、16、1489~1496頁では、アルギネートにCNFを添加して、3Dバイオプリンティングに使用されるヒドロゲルを形成した。少量のCNF、セルロースナノクリスタル(CNC)、又はバクテリアセルロース(BC)を使用して、アルギネート又はカラギーナンのゲルやフィルムを補強する作用により剛性を提供している。Sirvioら、Food Chemistry 2014年、151、343~351頁では、溶媒キャスト法アプローチを使用して、最大50重量%のセルロース繊維を含むアルギネート系バイオ複合体フィルムを補強した。湿った状態又は湿潤状態において安定であり、乾燥状態において有する特性を失わず、一方で同時に生分解性を維持する、高い湿潤強度を備えた新しいバイオ系材料が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Larsson, P. A.ら、Green Materials 2014年、2、 163~168頁
【文献】Shimizu, Mら、J. Membr. Sci. 2016年、500、1~7頁
【文献】Steginskyら、Carbohydr. Res. 1992年、225、11~26頁
【文献】Haugら、Acta Chem. Scand. 1966年、20、183~190頁
【文献】Markstedtら、Biomacromolecules 2015年、16、1489~1496頁
【文献】Sirvioら、Food Chemistry 2014年、151、343~351頁
【文献】Grasdalenら、in Carbohydr. Res. 1979年、68、23~31頁
【文献】van de Velde, F.ら、in Modern Magnetic Resonance, Webb, G. A.編; Springer Netherlands: Dordrecht、2006年、pp 1605~1610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、湿潤状態での靭性及びハイグロプラスチック(hygroplastic)挙動が優れておりあり、湿潤状態での剛性及び伸張性が向上したバイオ系複合材料を提供することである。驚くべきことに、その後乾燥されて多価イオンを用いて処理されるCNF複合材料中の少量のアニオン性ゲル化多糖により、湿潤状態での靭性及びハイグロプラスチック挙動が優れており、湿潤状態での剛性及び伸張性が向上した耐水性材料が形成されることが、本発明者らによって見出された。高いCNF含有量により、ナノペーパーフィルムを作製するための迅速で制御されたプロセスも可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による複合材料は、複合材料の乾燥重量で計算して、65~99重量%のセルロースナノファイバー及び0.5~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含む。本発明はまた、そのような複合材料の調製方法、及びそのような複合材料の、フィルムとしての、積層体(laminate)における、3D成形物体における、包装材料における使用、又は湿潤安定フィラメントとしての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】異なる環境における本発明による複合材料及び参照材料の相対膨潤厚さを示す。
【
図2a】異なる材料及び複合材料の湿潤引張特性、a)代表的な工学ひずみ-応力曲線、b)引張ヤング率(Young's modulus under tension)対引張強度、c)破壊仕事対破壊時ひずみを示す。
【
図2b】異なる材料及び複合材料の湿潤引張特性、a)代表的な工学ひずみ-応力曲線、b)引張ヤング率(Young's modulus under tension)対引張強度、c)破壊仕事対破壊時ひずみを示す。
【
図2c】異なる材料及び複合材料の湿潤引張特性、a)代表的な工学ひずみ-応力曲線、b)引張ヤング率(Young's modulus under tension)対引張強度、c)破壊仕事対破壊時ひずみを示す。
【
図3a】異なる材料及び複合材料の相対湿度50%、23°Cでの乾燥引張特性、 (a)~(c)代表的な工学ひずみ-応力曲線を示す。
【
図3b】異なる材料及び複合材料の相対湿度50%、23°Cでの乾燥引張特性、 (a)~(c)代表的な工学ひずみ-応力曲線を示す。
【
図3c】異なる材料及び複合材料の相対湿度50%、23°Cでの乾燥引張特性、 (a)~(c)代表的な工学ひずみ-応力曲線を示す。
【
図4】異なる材料及び複合材料の相対湿度50%、23°Cでの乾燥引張特性、 (a)引張ヤング率対引張強度、及び(b)破壊仕事対破壊時ひずみを示す。
【
図5】相対湿度約50%(左)及び約80%(右)における酸素透過性を示す。
【
図6】a)CNF、アニオン性ゲル化多糖、及び20重量%未満の水(左の絵)を含む物体が架橋され、水に浸された(右の絵)ときに形成される相互侵入ネットワーク、及びb)CNF及びアニオン性ゲル化多糖を含む物体が、膨潤ゲル状態で架橋され(左の絵)、次に乾燥して再膨潤する(右の絵)ときに形成される相互侵入ネットワークを示す。星形は、架橋ノードを表す。
【
図7】乾燥材料をCa
2+により処理したとき、又は膨潤ゲル状態からCa
2+により処理したときの、未処理CNFナノペーパー及び90:10 CNF:アルギネート複合材料(10重量部のアルギネートに対して90重量部のCNFを含む)の湿潤引張特性を比較する。
【
図8】ナトリウム又はカルシウム状態のCNF、アルギネート、及び複合材料試料の正規化FTIRスペクトルを示す。
【
図9】複合材料に使用されるCNFの厚さ分布を示す。
【
図10】異なるイオンにより処理された90:10のCNF:アルギネート複合材料の湿潤引張特性を示す。
【
図11】Fe
3+イオンにより架橋された90:10のCNF:アルギネートの湿潤引張特性に対する乾燥及び再膨潤の影響を示す。
【
図12】CNF:アルギネートの比率が異なるCNF:アルギネート複合材料の湿潤引張特性を示す。
【
図13】異なる期間、Ca
2+イオンにより処理された90:10のCNF:アルギネート複合材料の湿潤引張特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様では、本発明は、複合材料の乾燥重量で計算して、65~99重量%のセルロースナノファイバー(CNF)及び0.5~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含む複合材料に関する。
【0009】
「CNF」という用語は、木材パルプから、又は例えば植物、被嚢類及び細菌からなる群から選択される他の供給源から、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-オキシル(TEMPO)により酸化させてTEMPO酸化型CNFとする、若しくはカルボキシメチル化することによりカルボキシメチル化CNFとする等の化学的前処理;又は、エンドグルカナーゼ等により酵素処理されたCNFとする酵素処理を行った後に、機械的粉砕によって遊離させたセルロースナノファイバーを指すものとして本明細書で使用する。CNFは典型的には2~100nmの範囲の最小寸法を有する一方で、長さは数マイクロメートル、例えば最高10μmであり得、したがって、CNFのアスペクト比(直径に対する長さの比)は非常に大きい。木材パルプ由来のCNFを使用することの利点は、木系セルロースが豊富であること、並びにパルプ及び繊維の取扱い及び加工に関する効率的なインフラストラクチャーが存在することである。「アニオン性ゲル化多糖」という用語は、カチオンの存在下で液体の粘度を増加させることができるアニオン性多糖を指すものとして、本明細書で使用する。好適なアニオン性ゲル化多糖の例は、アルギネート、カラギーナン、ペクチン又はジェランガムである。特にアルギネートである。
【0010】
本発明による複合材料中のアニオン性ゲル化多糖に対するCNFの重量比は、CNF対アニオン性ゲル化多糖70:30~99:1重量部の範囲であり得る。本発明による複合材料は、複合材料の乾燥重量によって計算して、70~99重量%、又は70~98重量%のセルロースナノファイバー(CNF)、及び1~30重量%、又は1~29重量%のアニオン性ゲル化多糖を含み得る。複合材料は、二価若しくは三価の金属又はメタロイドイオン等の多価金属又はメタロイドイオンをさらに含み得る。好適な二価イオンの例は、カルシウム、銅、マグネシウム、マンガン、ストロンチウム、コバルト及び亜鉛のイオンから選択される。三価イオンの例は、鉄、アルミニウム、又はネオジムイオンから選択される。複合材料は、好ましくは、Ca2+又はFe3+を含む。最も好ましくは、材料はCa2+を含む。多価イオンは、共有結合、又はイオン性共有結合と配位共有結合との混合を形成することにより、材料中の架橋として機能し得る。多価イオンの好適な量は、材料の乾燥重量に対して計算して、0.0005重量%~最大20重量%、又は0.5重量%~最大10重量%、又は1重量%~10重量%、又は1.5重量%~最大10重量%である。本発明による複合材料は、乾燥すると、複合材料の総重量に対して計算して、30重量%未満の水、20重量%未満の水、又は10重量%未満の水を含み得る。本発明による複合材料は、湿潤状態にあるときでさえ、複合材料の総重量に対して計算して、70重量%未満の水を含み得る。この分野の当業者は、材料中の水の量を推定する方法を理解しており、例えば、乾燥材料と湿潤材料との間の重量の差から含水量を計算し得る。本発明による複合材料はまた、顔料、フィラー、及びナノ粒子等の他の添加剤を含んでもよい。
【0011】
本発明による複合材料に関する利点は、この複合材料が、バイオ系材料のみを含み得ることである。本発明による複合材料に関するさらなる利点は、優れた引張機械特性を、湿潤状態と乾燥状態の両方において、CNF及びアニオン性ゲル化多糖の乾燥重量に対して計算して、99重量%、又は95重量%又は90重量%ものCNF、及び1重量%、又は5重量%、又は10重量%のみのアニオン性ゲル化多糖を用いて達成することができることである。したがって、本発明による複合材料は、99:1、又は95:5、又は90:10重量部のCNF対アニオン性ゲル化多糖の比を含み得る。CNFの含有量が高いと、より均質なフィルムが得られる。アニオン性ゲル化多糖の濃度が高すぎると、ゲル化多糖の保持が低すぎるため、濾過によるフィルムの調製が妨げられる。CNF及びアニオン性ゲル多糖の乾燥重量に対して計算して、70~99重量%、又は70~95重量%、又は70~90重量%のCNFと、1~30、又は5~30重量%、又は10~30重量%のアニオン性ゲル化多糖との組合せは、相互侵入ネットワークを形成する可能性があり、ゲル化多糖は、CNFネットワークを相互侵入させる微細な絡み合ったネットワークを形成する。このような相互侵入ネットワークでは、アルギネート等のゲル化多糖は、CNFネットワークが長距離の応力移転を提供する一方で、エネルギーを徐々に破壊及び散逸させ得る犠牲ネットワークとして機能する場合がある。多価イオンは、ゲル化多糖とCNFとの間の相互侵入ネットワークをロックする場合がある(
図6)。この組合せは、非常に延性のある材料を与える。架橋前のCNF及びアニオン性ゲル化多糖の乾燥重量に対して計算して、30重量%を超えるような大量のゲル化多糖は、湿潤状態において、引張強度等の材料の機械的特性を損なう。
【0012】
本発明による複合材料は、個々の成分、すなわち、それぞれが多価イオン又はメタロイドイオン、例えばCa
2+により処理されるCNF及びゲル化多糖の未処理材料からの材料特性の比例的組合せによって期待されるものよりも、著しく良好な引張機械特性を示す(
図2)。CNF及びアニオン性ゲル多糖の乾燥重量に対して計算して、1~30重量%、5~30重量%、又は10~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を、70~99重量%、70~95重量%、又は70~90重量%のCNFとともに使用すること、及びそのような組成物を多価イオン又はメタロイドイオンを用いて架橋することの1つの効果は、引張ヤング率及び引張強度の両方が、湿潤状態において大幅に増加し、多くの場合、個々のCNF又はアニオン性ゲル化多糖材料と比較して、2倍超になることである。特に指定のない限り、本明細書に開示されているすべての試験は、1atm及び23°Cにて実施する。本明細書で使用するとき、「湿潤状態」とは、複合材料を水溶液中に、例えば少なくとも1分、少なくとも10分、少なくとも1時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、又は少なくとも24時間浸漬させることとして定義される。湿潤状態における機械的特性を測定する場合、引張試験の前に複合材料をMilli-Q水に24時間浸漬させて、湿潤状態における機械的特性を推定する。本発明による複合材料の湿潤状態における機械的特性は、硬くかつ丈夫な(though)ゴムに相当し得るが、弾性回復がなく、そのため、材料は、ハイグロプラスチック成形、例えば、真空成形、ブロー成形又は加圧成形により三次元(3D)形状を作成するのには例外的なものとなっている。「ハイグロプラスチック」という用語は、水による可塑化による塑性変形に、本明細書では使用する。本複合材料の引張応力-ひずみ曲線は、3つの異なる領域、すなわち、短い弾性領域、塑性領域、及びひずみによって誘発される硬化を示し得る。湿潤状態において、本明細書に開示される複合材料は、少なくとも40%、又は少なくとも50%の破損前のひずみ、すなわち破壊時ひずみに耐えることができる。複合材料はさらに、湿潤状態において少なくとも3MJm
-3、又は少なくとも5MJm
-3の破壊仕事を有し得る。本明細書で使用される破壊仕事(γ
WOf)は、試験試料の寸法(m
3)により正規化した、引張曲線下
面積(Instron(登録商標)製のBluehill(登録商標)ソフトウェアにより決定することができる)として、破壊時のエネルギー(J)を決定することによって得られる。本発明による複合材料は、湿潤状態で、すなわち材料が少なくとも24時間、MilliQ水等の水に浸漬されている場合、少なくとも10MPa、少なくとも12MPa、又は少なくとも15MPaの引張強度を有し得る。本発明による複合材料は、材料が少なくとも24時間、MilliQ水等の水に浸漬されている場合、少なくとも75MPa、少なくとも100MPa、少なくとも125MPa、少なくとも200MPaの引張ヤング率を有し得る。本発明による複合材料にCa
2+を使用することにより、湿潤状態における複合材料に、引張特性の改善、例えば、ハイグロプラスチック特性の改善、例えば、少なくとも50%の破壊時ひずみが提供される。本発明による複合材料にFe
3+を使用することにより、湿潤状態における複合材料に、剛性の改善、例えば、少なくとも850MPa、又は少なくとも900MPa、又は少なくとも1000MPaの引張ヤング率等、より高いヤング率が提供される。
【0013】
本発明による複合材料は、乾燥状態において、少なくとも250MPa、又は少なくとも300MPaの引張強度、及び少なくとも9.0GPa、少なくとも9.5GPa、少なくとも10GPa、又は少なくとも10.5GPaの引張ヤング率を有し得る。本明細書で使用される「乾燥状態」は、特に指定されない限り、引張試験の前に、材料を乾燥させ、続いて、50%RH及び23℃にて少なくとも24時間コンディショニングすることとして定義される。本発明による複合材料の降伏点は、乾燥状態において少なくとも100MPaであり得る。銅は、2価イオンであり、アルギネートに対する親和性が最も高いもののひとつであり、アルギネートコポリマー中のすべてのブロックと相互作用することができる。
【0014】
ネオジムイオンは、アルギネートとの相互作用も示し、高い乾燥強度を有する層状構造を形成する。本発明による複合材料においてNd2+及びCu2+を使用することにより、Ca2+の使用と比較して、乾燥状態においてより硬いがより脆い材料が提供される。本発明による複合材料の降伏点は、乾燥状態において少なくとも100MPa、少なくとも125MPa、又は少なくとも150MPaであり得る。本発明による複合材料は、乾燥状態において破損する前に、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、又は少なくとも11%のひずみに耐えることができ、さらに、乾燥状態において、少なくとも17MJm-3、又は少なくとも20MJm-3、又は少なくとも24MJm-3の破壊仕事を有することができる。二価イオンは、靭性がより高く、かつ破壊時ひずみがより大きいため、カルシウムが好ましい。
【0015】
本明細書に開示される複合材料は、フィルム又はナノペーパーの形態であってもよく、50%RH及び23°Cにて乾燥させてコンディショニングした場合、1~1000μm、1~500μm、5~200μm、30~100μm、40~70μm、又は50~60μmの厚さを有し得る。水は、本発明による複合材料の可塑剤として作用することができ、熱可塑性ポリマーに使用されるものと同様の処理経路を可能にすることができるハイグロプラスチック特性を材料に提供し得る。複合材料は、水に浸漬されると、変形後に弾性回復せずに元の寸法の50%を超えて伸びる場合があり、したがって、加圧して3次元(3D)物体にすることができる。次に、材料を乾燥させて、硬くかつ丈夫な3Dナノペーパー構造にすることができる。本発明による複合材料がフィルム又はナノペーパーの形態である場合、この複合材料は、厚さ方向に一方向の膨潤を有し得る。本発明による複合材料において、アニオン性ゲル化多糖、特にアルギネート、及び多価イオンを使用することの予想外の効果は、それらがCNFネットワークをロックし、湿潤状態においてCNFネットワークより安定させることができることである。これにより、複合材料を水に浸漬させた場合、膨潤が減少する。相対膨潤厚さΔdは、複合材料を水溶液に24時間浸漬させて、浸漬前後のフィルムの厚さ(d)を測定することによって測定される。ナノペーパー又はフィルムの相対膨潤厚さは、式(1)を使用して計算する:
【数1】
式中、d
dryは、浸漬前の乾燥材料の厚さであり、d
wetは、浸漬後の材料の厚さである。複合材料の乾燥重量に対して計算して、65~99重量%のCNF及び0.5~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含み、24時間水溶液に浸漬させた本発明による複合材料の相対膨潤厚さ、Δdは、最大で2.5、又は最大で3.5であり得る。本発明による複合材料は、Milli-Q水等の水に浸漬させた場合、1~3500μm、10~3500μm、40~3500μm、1~1000μm、10~1000μm、40~1000μm、1~200μm、10~200μm、40~200μm、又は80~150μmの厚さを有し得る。
【0016】
これらのフィルムのガスバリア特性により、包装の面でも価値が高められる。本発明による複合材料は、ガスバリアとして使用し得る。RH50%、23℃にて、本発明による複合材料は、0.5cm3・μm・m-2・day-1・kPa-1未満の酸素透過性を有し得る。酸素透過性は、測定された酸素透過率と測定されたフィルムの厚さの算術積として得られる。本発明による複合体の利点は、高い相対湿度、例えば、相対湿度80%で、アニオン性ゲル化多糖を含まないCNFから調製された対応する材料及びカルシウム処理CNFから調製された対応する材料と比較して、酸素バリアがかなり改善されることである。本発明による複合材料は、RH80%及び23°Cにて、10cm3・μm・m-2・day-1・kPa-1未満、又は8cm3・μm・m-2・day-1・kPa-1未満、又は7cm3・μm・m-2・day-1・kPa-1未満の酸素透過性を有し得る。複合材料のそのようなガスバリア特性は、酸素感受性材料、例えば食品の包装に有用であり得る。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、本発明による複合材料の調製方法に関し、この方法は、以下の工程、すなわち、
a)CNF懸濁物をアニオン性ゲル化多糖と混合して、分散物の乾燥重量に対して計算して、70~99重量%のCNF及び1~30重量%のアニオン性ゲル化多糖を含む分散物を得る工程と;
b)CNF及びゲル化多糖が分散している分散媒体を除去して、CNF、及びアニオン性ゲル化多糖、及び得られる物体の総重量に対して計算して、20重量%未満の水を含む物体を得る工程と;
c)多価金属又はメタロイドイオンを含む溶液中に、工程b)で得られる物体を浸漬させて、浸漬状態の複合材料を得る、工程と
を含む。
【0018】
工程(c)での浸漬は、工程(b)で得られる物体を多価金属若しくはメタロイドイオンを含む溶液中に浸すこと、又は好ましくは材料を、多価金属若しくはメタロイドイオンを含む溶液中に少なくとも1分間、少なくとも10分間、少なくとも1時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、又は少なくとも24時間浸漬させることを含み得る。多価金属又はメタロイドイオンを含む溶液は、水溶液であり得、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%の濃度の多価金属又はメタロイドイオンの塩を有し得る。工程(c)で物体を浸漬させるために使用される水溶液中の多価金属又はメタロイドイオンの塩の濃度は、最大40重量%、又は最大20重量%であり得る。複合体は、工程c)の後、例えばMilli-Q水ですすいで過剰な金属イオンを除去してもよい。この方法は、c)で得られる複合材料を所望の形状に形成する工程d)をさらに含み得る。成形は、熱成形法又はブロー成形、例えば真空成形又は加圧成形等のプラスチック材料を形成するための従来の方法によって行うことができる。この方法はまた、工程c)又はd)の複合材料を乾燥させて、複合材料の総重量に対して計算して、20重量%未満の水、又は10重量%未満の水を含む物体を得る追加の工程e)を含み得る。乾燥物体は、水中で安定である。多価イオンにより処理した後、複合材料を乾燥させ、次に水溶液に浸漬させるサイクルを繰り返すと、湿潤状態でさらに良好な機械的特性が得られる場合がある(
図11)。
【0019】
工程(a)で混合するCNF懸濁物中のCNFの濃度は、前記の懸濁物の総重量に対して計算して、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.5重量%であり得る。CNF懸濁物の総重量に対して計算して、最大6重量%まで、最大5重量%まで、最大3重量%まで、又は最大1重量%までのCNFを含むCNF懸濁物をまた、工程(a)で使用してもよい。工程(a)で混合するアニオン性ゲル化多糖は、溶液又は懸濁物中にあってもよく、例えば水溶液中に溶解させてもよく、又は固体形態でCNF懸濁物に添加してもよい。ゲル化多糖が溶液又は懸濁物中にあるとき、ゲル化多糖は、前記溶液又は懸濁物の総重量に対して計算して、少なくとも0.001重量%、少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%の濃度であり得る。前記溶液又は懸濁物の総重量に対して計算して、最大3重量%まで、又は最大2重量%まで、又は最大1重量%まで、のアニオン性ゲル化多糖を含むアニオン性ゲル化多糖の溶液又は懸濁物をまた、工程(a)で使用してもよい。好適なアニオン性ゲル化多糖の例は、アルギネート、カラギーナン、ペクチン又はジェランガムである。特にアルギネートは、好適なアニオン性ゲル化多糖である。
【0020】
工程(a)におけるCNF及びアニオン性ゲル化多糖を、好ましくは水等の水性溶媒中に分散させる。分散媒体は、塩化ナトリウム等の一価イオンの塩を含み得る。工程(a)で得られるCNF及びアニオン性ゲル化多糖の分散物は、分散物の総重量に対して計算して、0.1重量%から、又は0.15重量%から、又は0.25重量%から、最大5重量%まで、又は最大3重量%まで、又は最大2重量%までの総固形分を有し得る。
【0021】
工程b)では、分散媒体、例えば水は、従来の方法によって、好ましくは真空濾過等の濾過、又は高温での乾燥、又はより好ましくは濾過とそれに続く乾燥等のこれらの組合せによって除去し得る。濾過により液体を除去すると、フィルターケーキを得られる。フィルターケーキは、高温で又は減圧で、或いはそれらの組合せでさらに乾燥させてもよい。工程b)における分散媒体の除去は、得られる物体の含水量が、得られる物体の総重量に対して計算して、20重量%未満、又は好ましくは10重量%未満、又はより好ましくは5重量%未満になるまで実施してもよい。工程(b)で得られる物体の工程(c)での浸漬により、多価イオンを含む架橋を提供することができる。架橋は、共有結合の形態、又はイオン性共有結合と配位共有結合との混合の形態であり得、CNFネットワークをコンパクトな状態でロックし得る(
図6a)。本発明による方法を用いて工程b)で得られる物体は、スラブ、フィルム、ナノペーパーの形態、又はフィラメントの形態であってよい。「フィラメント」という用語は、本明細書では、例えば、糸又は織糸の形態の、長い連続した長さの複合材料を指すのに使用する。フィラメントの長さは、原則として、利用可能な複合材料の量によってのみ制限される。複合材料のフィラメントは、工程a)で得られる分散物を塩又は酸性水溶液中に注入するか又は押出して、ゲルフィラメントを形成し、次に工程b)に従って、例えば、濾過、又は高温での乾燥、又は、例えば、濾過とそれに続く乾燥等のこれらの組合せによって、分散媒体及び前記塩又は水溶液を除去することにより、得ることができる。次いで、得られたフィラメントを、工程c)に従って多価金属又はメタロイドイオンにより処理する。
【0022】
対イオンの導入によりネットワークが形成されている状態が、重要である。多価金属イオンを膨潤した乾燥していない複合フィルムに導入すると、膨潤状態は、物理的にロックされたフィブリル間に多くの空隙を有するネットワークを形成する。この場合、アニオン性ゲル化多糖のネットワークはCNFの膨潤状態に適合し、CNFネットワークが乾燥すると、アニオン性ゲル化多糖は崩壊し(
図6b)、アニオン性ゲル化多糖のネットワークの崩壊は、湿潤状態における材料の特性に対し、ほとんど影響を与えない。本発明の方法のように、CNF、アニオン性ゲル化多糖、及び20重量%未満の水を含む物体を架橋させる場合、CNFのネットワークは膨潤せず、したがって、アニオン性ゲル化多糖はCNFネットワークに適合し、コンパクトな状態で架橋され、水中で丈夫な材料を提供する(
図6a)。この材料はまた、膨潤状態で架橋された材料と比較して相対膨潤厚さの減少を示す。
【0023】
CNFのコロイド分散物は、フィブリルのアスペクト比が高いため、オーバーラップ濃度が低く、したがって、イオン濃度の増加、pH、及び荷電ポリマー又は相互作用する非荷電ポリマーの添加に非常に敏感であり、このことにより、CNFと凝集又はゲル化をもたらさない他の成分との混合が困難になる。ゲル化多糖とナノセルロースの両方のアニオン性により、均質な混合が促進され、この均質な混合は、反対に荷電した系又は荷電していない系により達成されることはほとんど不可能である。均質な複合材料を、異なる多価イオン、例えばCa2+、Cu2+、Mg2+、Mn2+、Sr2+、Co2+、Zn2+、Al3+、Fe3+、又はNd3+等に曝露すると、相乗効果を示す材料に異なるネットワークがロックされる。したがって、本発明による方法では、工程c)の溶液は、Ca2+、Cu2+、Mg2+、Mn2+、Sr2+、Co2+、Zn2+等の二価イオン、又はAl3+、Fe3+、Nd3+等の三価イオンを含み得る。好ましくは、工程c)の溶液は、Ca2+又はFe3+を含む。最も好ましくは、工程c)の溶液は、Ca2+を含む。
【0024】
追加の態様では、本発明は、ナノペーパーとしての本発明による複合材料の使用に関する。材料はハイグロプラスチックであり、複合材料が湿潤状態にある場合、つまり水又は水溶液に浸漬している場合、加圧して3D物体にしてもよい。その後の乾燥により、材料は、硬くかつ丈夫な3Dナノペーパー構造になる。そのような材料は、例えば食品包装において、熱可塑性材料に取って代わることができる。複合材料は、積層体、包装材料において、3D物体において、又はフィラメントとしても使用することができる。
【0025】
実験
特性評価
相対膨潤厚さ
フィルムの試料を、Milli-Q又は1重量%の塩溶液中で24時間膨潤させ、表面をファインペーパーで軽くたたいて過剰な水を除去した後、厚さ(d)を測定した。複合フィルムは厚さ方向に一方向の膨潤を有することを観察し、厚さを、湿潤完全性を試験する簡易な方法として使用した。相対膨潤厚さは次の式を使用して計算した:
【数2】
式中、d
dryは、浸漬前の乾燥材料の厚さであり、d
wetは、浸漬後の材料の厚さである。
【0026】
引張試験
フィルムの試料を、強化レーザーブレードカッティング(強化、No.743、VWR社)によって50×3mmの断片に切断した。試料を、500Nロードセルを備えたinstron(intron)5944において、ゲージ長20mmでクランプし、2mm/分のひずみ速度で試験した。引張ヤング率は、ひずみ0~0.3%の間の曲線の傾きとして計算した。湿潤状態での引張特性を測定する場合、湿潤試料は0~0.15%の間の小さな線形領域を有し、この領域の傾きを使用して、引張ヤング率を計算した。各複合材料の7~10個の試料を試験し、スチューデントのt検定を使用して、平均弾性率、破壊時ひずみ、引張強度、及び破壊仕事を、95%信頼区間として示した。材料の乾燥引張特性を、試験前に50%RH及び23°Cにて24時間乾燥させてコンディショニングしたフィルムにおいて実施した。フィルムの乾燥は、Rapid Kothenを使用して実施した。材料の湿潤引張特性を、試験前に24時間Milli-Q水に浸漬させたフィルムにおいて実施した。
【0027】
酸素透過性
酸素透過性は、MOCON社(Minneapolis、MN、USA)製、OX-TRAN 2/21(ISO 9001:2015)を使用して、5cm2の試料面積について測定した。測定を、試料の両側に対して同じ相対湿度により、23°C及び51~52%又は82~83%の相対湿度にて対称的に実施した。各複合試料において2つの測定を実施した。
【0028】
実施例1:異なる組成から調製された材料の比較
材料
CNF調製
2重量%CNFゲルは、RISE bioeconomy社(旧Innventia社)、Stockholm、Swedenの好意により提供された。CNFは、解繊前に500~600μmol/gの電荷密度にカルボキシメチル化された溶解グレードのパルプ由来のものであった。マイクロフルイダイザーを使用して、直列200-100チャンバー構成を3回通過させることによりゲルをさらに均質化し、900mLの体積で0.2重量%の乾燥含有量に希釈し、ultra-turraxを13000rpmで20分間使用して分散させた。ゲルを4100×gで1時間遠心分離して、より大きな凝集物又はフロックを除去した。
【0029】
フィブリルの寸法は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、 pH 7.5の0.1 g/Lの溶液から2分間吸着させたポリビニルアミンアンカー層(Lupamin 9095、BASF社)で既に覆われたプラズマ処理シリコンウェーハ(ホウ素ドープ、p型、610~640μm)上に、0.001重量%の分散物からCNFを1分間吸着させて測定した。MultiMode 8 AFM(Bruker社、Santa Barbara、CA、USA)をScanAsystモードで使用して、サイズが1x1μmの画像を、調製したウェーハ上のランダムな位置で取得した。250フィブリルの高さを測定し、厚さの分布を
図9に示す。
【0030】
藻類多糖の調製
巨大褐藻(高粘度、Alfa Aesar社)由来のアルギン酸ナトリウム塩の溶液を、水中0.25重量%のアルギン酸塩濃度で穏やかに撹拌しながら一晩溶解させることによって調製した。アルギネートは、約15重量%の不溶性画分を含み、これを5μmシリンジフィルター(Acrodisc、Suporメンブレン、Pall社)を通した濾過により除去し、濾過後に凝集物は顕微鏡で観察されなかった。
【0031】
アルギネートのGとMの比率は、Grasdalenらによる、Carbohydr. Res. 1979年、68、23~31頁に記載された方法により、1H-NMRスペクトルを使用して、G、M、及びGGに対応する3つの異なる化学シフトを比較して推定した。アルギネートをpH3及び100°Cで1時間加水分解し、中和して、室温で乾燥させた。アルギネート加水分解物を、Bruker DMX-500 NMR分光計における500MHzでの1H-NMR分析のために、2重量%の乾燥含有量で重水中に溶解させた。このアプローチにより、27%GG、28%MG、及び45%MMのブロックに分散した41%の推定G含有量及び59%の推定M含有量が得られた。
【0032】
カッパ(κ)カラギーナン(Sigma Aldrich社)及びイオタ(ι)カラギーナン(Sigma Aldrich社)は受け取ったままの状態で使用し、0.2重量%の濃度で一晩溶解させた。組成を、室温で1H-NMRを使用して確認し、ここで、κ-カラギーナンは5.01ppmでシグネチャシフトを、ι-カラギーナンは5.20ppmでシグネチャシフトを有する。ι-カラギーナンは5.32にもピークがあり、これは紅藻デンプンからのλ-カラギーナン又は混入物質である場合がある(van de Velde, F.ら、Modern Magnetic Resonance, Webb, G.A.編; Springer Netherlands: Dordrecht、2006年、pp 1605~1610、における)。オリゴマー又はモノマー画分を示す鋭いNMRシフトも観察され、透析により除去することができた。ピークの積分比較により、ι-カラギーナンは22%のκ-カラギーナン及び12%の混入物質を含んでおり、κ-カラギーナンは12%のι-カラギーナンを含んでいることが示された。ι-カラギーナンの分子量は、Mnが193~324kDa、Mwが453~652kDaで、供給元によって与えられた。アルギネート及びカラギーナンの分子量は、孔径形態30Å、1000Å、及び1000Åの一連の3つのPSS supremaカラムを備えたDionex Ultimate-3000 HPLCシステム(Dionex社、Sunnyvale、CA、USA)のサイズ排除クロマトグラフィーによって、10mM NaOHの移動相(1ml/分)で40°Cに維持して特性評価した。相対分子量を、342~708,000Daの範囲のプルラン標準(PSS社、ドイツ)を使用して測定し、結果をTable1(表1)に示す。
【0033】
【0034】
すべての試料はカラムとプルラン標準の両方の制限上にあり、正確な値ではなく、比較及び分散度の指標と考える必要があるという点に留意すべきである。さらに、これらの多糖の高分子電解質効果により、SECではそれらがより大きく見えるようになり、分子量をプルランに対する相対値としてのみ考えることが重要である。
【0035】
CNF/アルギネートメタロイドイオン複合フィルムの調製
0.2重量%の分散CNFを約0.2重量%のアルギネート溶液と種々のCNF:アルギネート比(90:10及び70:30)で混合した。ウルトラターラックスを大量の気泡の形成を回避するのに十分な9000rpmで9分間使用して、各試料を混合して200mLの体積で約0.2重量%の総固形分にした。分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過した。濾過時間は、藻類多糖の画分に応じて9~36時間の間で変わった。保持は、濾液の乾燥含有量を測定することによって決定し、アルギネートについては90%超であった。濾過後に形成された1~2mmの湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマー(Paper Testing Instruments社、Austria)の乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。乾燥フィルムは50~60μmの厚さであった。次に、乾燥フィルムを、1重量%CaCl2(>97%、Sigma Aldrich社)、1重量%KCl(>99%、Sigma Aldrich社)、1重量%Cu(NO3)2(>99%、Sigma Aldrich社)、又は1重量%NdCl3(>99%、Sigma Aldrich)のいずれかの溶液中に24時間浸漬させて、複合材料を架橋させた。その後、複合フィルムをMilli-Q水で24時間すすいだ。
【0036】
CNF/カラギーナンメタロイドイオン複合フィルムの調製
CNF及びι-カラギーナン又はκ-カラギーナンのいずれかを含む複合フィルムを調製するために、上記と同じ手順を使用した。CNF:藻類の比率はどちらの場合も70:30であった。乾燥フィルムを、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過し、その後、湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマーの乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させることにより得た。
【0037】
この方法で調製されたいくつかの乾燥フィルムを、乾式引張試験において参照として使用し、他のフィルムを、複合材料を架橋するために、1重量%のCaCl2又は1重量%のKClのいずれかの中に24時間浸漬させて、次に、Milli-Q水で24時間すすいだ。
【0038】
参照材料の調製
未処理CNFフィルム
未処理CNFフィルムは、0.2重量%のCNF分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過することにより調製した。濾過後に形成された湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマーの乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。乾燥フィルムは、CNF:アルギネート複合フィルムと同じ厚さの範囲にあった。
【0039】
いくつかの未処理CNFフィルムを、以下に記載するように、乾燥引張試験の参照試料として使用した。他の試料をさらに1重量%CaCl2中に24時間浸漬させ、次にMilli-Q水で24時間すすいだ。これらの試料は、CNF Ca2+等の参照名を有する。
【0040】
未処理CNF熱圧成形ナノペーパーを、上記の方法に従って調製された未処理CNFフィルムを150℃にて1時間、20kNの圧力下で熱圧成形することによって調製した。ナノペーパーは黄-橙色に変わり、この試料は共有結合架橋ネットワークの参照として使用した。
【0041】
未処理アルギネートフィルム
未処理アルギネートフィルム(乾燥重量400mg)を、0.4重量%アルギネート溶液で開始し、7~10日間の期間にわたって室温にて換気下で溶媒キャストした。アルギネート溶液は、実施例1の方法セクションに記載されたのと同じ方法で調製した(かつ濾過した)が、0.4重量%の最終固形分に達した。
【0042】
結果
相対膨潤厚さ
CNFのみ、アルギネートのみ、又はCNF及び10若しくは30重量%の藻類多糖のいずれかを含む複合材料のフィルムを上記のように調製し、カルシウムイオンとカリウムイオンのいずれかにより架橋した。これらのフィルムの一方向性の膨潤により、厚さを、質量の変化と比較して湿潤完全性の定性的測定値として使用することが可能になった。高分子電解質ゲルの平衡膨潤圧(Π)は、
Π
mix+Π
net+Π
ion=0 (2)
に従う3つの寄与部分に分けられる。
式中、Π
mixは混合水及びネットワークの成分のエントロピー及びエンタルピーであり、Π
netは膨潤力に逆らって作用するネットワークの変形であり、及びΠ
ionはゲルを形成するポリイオンの対イオンによる浸透圧である。平衡状態でΠはゼロであり、このことは、Π
netがゼロの場合、ゲルは溶解しており、Π
netが高い場合、他の寄与要因を抑制して、膨潤がほとんど発生しない可能性があることを意味する。異なるイオンにより処理された複合材料の相対膨潤厚さを
図1に示し、バーの凡例は次のとおりである、すなわち、CNF=未処理CNFフィルム材料; CNF:Alg 90:10=イオンにより後処理する前のCNFとアルギネートの乾燥重量により計算して、90重量%のCNF及び10重量%のアルギネート;CNF:Alg 70:30=イオンにより後処理する前のCNFとアルギネートの乾燥重量により計算して、70重量%のCNF及び30重量%のアルギネート;CNF熱圧成形体=熱圧成形CNF材料;CNF:ι-Carr 70:30=イオンにより後処理する前のCNFとアルギネートの乾燥重量により計算して、70重量%のCNF及び30重量%のι-カラギーナン;CNF:κ-Carr 70:30=イオンにより後処理する前のCNF及びアルギネートの乾燥重量により計算して、70重量%のCNF及び30重量%のκ-カラギーナン;及びアルギネート=アルギネート材料。乾燥CNF参照ナノペーパーは、Milli-Q水中で平衡化すると、厚さが約50倍に増加した。CNFナノペーパーをCa
2+イオンで処理すると、ほとんど全体の膨潤が妨げられた。添加したアルギネートの量は、浸透圧理論に従って、フィルムの電荷の増加に比例して膨潤厚さに影響を与えた:
Π
ion=Π
osm=kTΣ(C
gel-C
0)
i (3)
式中、(C
gel-C
0)
i は、周囲溶液に対するゲル中のイオンiの濃度である。カルシウムイオンによる架橋によって、ほとんどの膨潤が抑制され、CNF参照よりもCNF:アルギネート複合材料の膨潤抑制の程度が高くなり、このことは、より強いネットワーク(Π
net)が形成されていることを意味する。すすいで過剰な塩を除去するだけで、厚さのわずかな増加がもたらされる。共有結合による架橋との比較として、未処理ナノペーパーを150℃で1時間熱圧成形すると、黄変色及び同様の膨潤が得られ、熱処理なしのCa
2+処理CNF:アルギネート複合材料のように湿潤完全性が得られた。イオン配位のないカラギーナン複合材料は、同じ組成のCNF及びアルギネートよりも膨潤が低かった。κ-カラギーナンがカリウムイオンにより最も強力なゲルを形成し、ι-カラギーナンがカルシウムイオンにより最も強力なゲルを形成するため、CNF:カラギーナン複合材料ナノペーパーをカルシウムイオンとカリウムイオンの両方により架橋した。CNF:カラギーナン複合材料は、カルシウムイオンにより処理された参照CNFよりも膨潤した。未処理アルギネートフィルムは、乾燥厚さの0.6倍に膨潤した。しかし、この膨潤は、
図1のアスタリスクで示されているCNFフィルムのように一方向ではないことに留意すべきである。
【0043】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)
乾燥フィルムを、ATRアドオン(PerkinElmer社 Spectrum 2000)を備えたFTIRを使用してさらに特性評価した。正規化したFTIRスペクトルを
図8に示す。Na
+は、ベンダーから提供されたままの状態の多糖材料において発生し、材料を、多価イオンを含む溶液に浸漬させていないことを示す。FTIR曲線の凡例は、CNF熱圧成形体Na
+=熱圧成形CNF材料;CNF Na
+=CNF材料;CNF Ca
2+=CaCl
2に浸漬させたCNF材料;CNF:Alg 70:30 Na
+=70重量%のCNF及び30重量%のアルギネート;CNF:Alg 70:30 Ca
2+=CaCl
2に浸漬させた70重量%のCNF及び30重量%のアルギネート;アルギネートNa
+=アルギネート材料;及びアルギネートCa
2+=CaCl
2に浸漬させたアルギネート材料;
【0044】
湿潤状態における機械的特性
6~7の相対膨潤厚さは、引張試験で実施可能な限界に近く、これは、高膨潤試料が弱すぎて、クランプされた領域でその構造を維持できなかったためであり、CNF熱圧成形参照、カルシウムイオン処理CNF及びアルギネート参照、ならびにCa
2+、Cu
2+、又はNd
3+により架橋されたCNF:アルギネート複合材料のみを、湿潤状態において評価することが可能であった。すべての試料を、材料セクション(実施例1)に記載されているように調製した。この特定の湿式機械的試験では、手順に記載されているMilli-Q水での24時間のすすぎ工程後に試料を測定した。CNF熱圧成形試料の場合、湿潤引張試験の前に、記載されている手順で得られたナノペーパーをMilli-Q水に24時間浸漬させた。結果を
図2及びTable2(表2)に示す。曲線に近い表記は、架橋イオンを示す。エラーバーは、95%信頼区間である。
【0045】
【0046】
図2及びTable2(表2)は、カルシウム処理された未処理CNFナノペーパー(CNF Ca
2+)は、破損前に非常に伸長してかなりの湿潤強度を有していたが、カルシウム処理された未処理アルギネートフィルムほど硬くなかったことを示す。複合材料におけるCNFとアルギネートとの組合せは、個々の成分の材料特性の比例組合せについて期待されるよりも、かなり良好な湿潤強度特性を示した。このことは、CNFとアルギネートとが、相乗的相互侵入ネットワークを形成しているということを示している。CNF Ca
2+は、ヤング率が約62MPa、引張強度が約8MPaである。CNFを10重量%のアルギネートと混合して、90:10 CNF:アルギネートをカルシウムイオンで架橋させた場合、弾性率と引張強度の両方が2倍超になり、材料は破損前に50%超のひずみ及びほぼ5MJm
-3の破壊仕事に耐えることができ(
図2a~
図2c)、これは、硬くかつ丈夫なゴムに相当する。このデータは、少量のアルギネートがCNF間の微細なネットワークを形成して、より長い距離にわたって負荷を移転することができることを示唆している。CNFを、より多量の、例えば30重量%のアルギネートと混合させて、カルシウムイオンにより架橋させた場合(CNF:アルギネート70:30 Ca
2+)、材料は、10重量%のみのアルギネートを含む複合材料よりも低いヤング率、引張強度、及び破壊時ひずみを示した。このことは、より多量のアルギネート(30重量%)によってCNFネットワークがある程度破壊され、材料がより脆く、より硬さの低いものになり得るためであるが;それでも、この材料は、相乗効果を示し、個々の成分の材料特性の比例的組合せについて期待されるものよりも、はるかに良好な特性を示した。
【0047】
銅イオン及びネオジムイオンも、90:10 CNF:アルギネート複合フィルムの架橋剤として試験して、湿潤強度をさらに改善することができるかどうかを調査した。結果は、破断時ひずみの悪化という犠牲を払って、かなりの硬化を示した。
【0048】
乾燥状態における機械的特性
参照及び複合材料の機械的特性をまた、乾燥状態において、すなわち50%の相対湿度、23°Cにて試験して、乾燥強度という犠牲を払って湿潤安定性の向上が達成されなかったことを確認した。すべての試料を、材料セクション(実施例1)に記載されているように調製した。異なるイオンを用いて架橋させて、Milli-Q水で洗浄した複合材料フィルムは、Rapid Kothenを使用してさらに乾燥させ、乾燥状態における引張試験用の試料を乾燥させた。
【0049】
乾燥状態におけるフィルムの引張ヤング率、引張強度、破壊時ひずみ、及び破壊仕事を、
図3及び
図4、ならびにTable3(表3)に示す。
【0050】
【0051】
CNFナノペーパーにポリマーを添加すると、通常、剛性が失われ、一方で、広範囲に渡る架橋により材料はより硬くなるが、同時により脆くなる。
図3及び
図4、ならびにTable3(表3)は、CNFに10%アルギネートを添加して90:10のCNF:アルギネートフィルムを作成しても、乾燥材料の特性に著しくは影響を与えなかったことを示しており、フィルムをカルシウムイオンにより架橋した場合、CNF:アルギネートCa
2+複合材料は、約10.5GPaの弾性率、300MPa超の引張強度、及びほぼ25MJm
-3の破壊仕事を有し、剛性及び破断時ひずみの増加を示し(
図3及び
図4)、これは、50%RHでほぼ300MPaか又は300MPa超の強度にめったに達することがない、無配向のフィルム複合体に関して優れた特性である。しかし、70:30 CNF:アルギン酸Ca
2+複合材料及び銅イオン又はネオジムイオンにより架橋された90:10 CNF:アルギン酸複合材料は、乾燥状態においてより脆い材料になる。
【0052】
酸素透過性
図5は、カルシウムイオンにより架橋されたCNF:アルギネート90:10、未処理CNFナノペーパー、及びカルシウムイオンで処理された未処理CNFナノペーパーの、50%及び80%相対湿度における酸素透過性データを示し、10%のアルギネートを含むCa
2+処理複合材料は、おそらく柔軟なアルギネートが材料をより高密度かつより均一にするため、50%相対湿度における参照CNF又はカルシウム処理CNFよりもわずかに良好なバリアであったことを示している。相対湿度が80%の場合、CNF試料の透過性は大幅に増加したが、カルシウム処理ナノペーパーの方がわずかに安定であった。
【0053】
実施例2:異なる処理により形成された相互侵入ネットワークの重要性。
材料
相互侵入ネットワークの重要性を評価するために、CNF:アルギネート材料を、2つの異なる経路に従って調製した。第1の経路では、CNFが膨潤状態(物理的にロックされたフィブリル間に多くの空隙を含む)にある間に、アルギン酸ネットワークが形成され、もう1つの経路では、CNFが乾燥している(つまり、崩壊した状態にある)間にアルギン酸ネットワークが形成された。第1の材料は、Milli-Q水で膨潤状態における非乾燥CNF:アルギン酸フィルターケーキにカルシウムイオンを導入することによって架橋し、第2の材料は、カルシウムイオンを導入する前に、CNF:アルギン酸フィルムをまず乾燥させ、構造を崩し、フィブリル間の空隙の量を減少させることによって架橋した。フィルムが乾燥しているとき、及び膨潤状態にあるときに、それぞれカルシウムイオンにより処理されたCNFフィルムの参照試料も調製した。すべての試料について、湿潤状態における引張機械特性を試験した(
図7及びTable4(表4))。
【0054】
乾燥フィルムから架橋したCNF:アルギン酸Ca2+の調製。
0.2重量%の分散CNFを、約0.2重量%のアルギネート溶液と、90:10のCNF:アルギネートの比率で混合した。ultra-turraxを9000rpmで9分間使用して、試料を、200mLの体積で約0.2重量%の総固形分に混合した。分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過した。濾過後に形成された1~2mmの湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマー(Paper Testing Instruments社、Austria)の乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。乾燥フィルムは、50~60μmの厚さであった。次に、乾燥フィルムを、1重量%CaCl2(>97%、Sigma Aldrich社)溶液中に24時間浸漬させて、複合材料を架橋させ、複合フィルムをMilli-Q水で24時間すすいだ。その後、これらの湿潤フィルムに対して湿潤引張試験を実施した。
【0055】
非乾燥フィルム(膨潤フィルム)から架橋したCNF:アルギン酸Ca2+の調製
0.2重量%の分散CNFを、約0.2重量%のアルギネート溶液と、90:10のCNF:アルギネートの比率で混合した。ultra-turraxを9000rpmで9分間使用して、試料を、200mLの体積で約0.2重量%の総固形分に混合した。分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過した。濾過後に形成された1~2mmの湿潤ゲル(フィルターケーキ)をMilli-Q水で膨潤させ、次に、1重量%CaCl2(>97%、Sigma Aldrich社)溶液中に24時間浸漬させて、その膨潤状態の複合材料を架橋させた。その後、架橋した材料をMilli-Q水で24時間すすいだ。
【0056】
この状態では、材料はまだゲルコンシステンシーを保持しており、湿潤引張試験により特性を測定することはできなかった(バラバラになったであろう);したがって、材料をRapid Kothenを用いて乾燥させ、フィルムを得た。次に、試験前に24時間Milli-Q水にフィルムを浸漬させて湿潤引張試験を行った。
【0057】
乾燥フィルムからCa2+により処理された未処理CNFフィルムの調製:
未処理CNFフィルムは、0.2重量%のCNF分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過することにより調製した。濾過後に形成された湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマーの乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。次に、乾燥CNFを、1重量%CaCl2(>97%、Sigma Aldrich社)溶液中に24時間浸漬させて、次に、Milli-Q水で24時間すすいだ。その後、この湿潤ナノペーパーCNF Ca2+に対して湿潤引張試験を実施した。
【0058】
非乾燥フィルムからCa2+により処理された未処理CNFフィルムの調製:
未処理CNFフィルムは、0.2重量%のCNF分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過することにより調製した。次に、濾過後に形成された湿潤ゲルを、1重量%CaCl2(>97%、Sigma Aldrich社)溶液中に24時間浸漬させて、次に、Milli-Q水で24時間すすいだ。その後、CNF材料をRapid Kothenを用いて乾燥させ、CNFナノペーパーを得た。次に、試験前に24時間Milli-Q水中にナノペーパーを浸漬させて、湿潤引張試験を行った。
【0059】
結果
湿潤状態における機械的特性
相互侵入ネットワークの重要性を理解するために、湿潤状態における引張機械特性を試験した(
図7及びTable4(表4))。
【0060】
【0061】
膨潤状態において製造された試料の湿潤機械特性は、架橋前に乾燥させたそれらの同等の試料よりもどちらも悪かった。実際、CNF:Alg 90:10 Ca
2+膨潤フィルムは、CNF参照よりも湿潤機械特性が劣ってさえいた、このことは、対イオンの導入によってアルギン酸ネットワークが形成されている状態が重要であることを示している(
図6及び7)。その場合(CNF:Alg 90:10 Ca
2+膨潤フィルム)、アルギン酸ネットワークは膨潤状態に適応し、後に(ゲルを乾燥させてフィルムを形成する間に)崩壊し、乾燥中にCNFネットワークが形成されたとき材料特性にほとんど影響を与えない。カルシウムを膨潤ゲル状態において導入した場合、同じ傾向が参照CNFナノペーパーで観察され、このことは、多価イオンを使用するCNFの架橋メカニズムにとって近接性が重要であることを示唆している。
【0062】
CNF:Alg 90:10 Ca
2+膨潤フィルムは、同様に処理された参照CNFナノペーパーの4.8と比較して、5.9の大きな相対膨潤厚さを示した。このことと、CNF:Alg 90:10 Ca
2+乾燥フィルムと比較した、剛性及び伸張性の大幅な相対低下は、膨潤ゲル状態に適合したネットワークが形成されたときに、アルギネートの影響がいくぶん除去されたということを示す(
図6及び
図7)。
【0063】
実施例3:異なるCNF:アルギネート比率の比較
材料
湿潤状態における複合材料の機械的特性に対するCNF:アルギネートの比率の影響を調査するために、カルシウムイオンにより架橋され、CNF対アルギネートの比が90:10、50:50、10:90重量部のCNF:アルギネート複合材料のフィルムを調製した(
図12)。
【0064】
CNF:アルギネート 90:10 Ca2+複合フィルムの調製:
フィルムを、実施例1に記載されているように調製した。
【0065】
CNF Ca2+ナノペーパーの調製
参照ナノペーパーを、実施例1に記載されているように調製した。
【0066】
Ca2+により架橋したCNF:アルギン酸50:50及び10:90フィルムの調製:
0.2重量%のCNF分散物を、約0.4重量%のアルギネート溶液と、種々のCNF:アルギネート比(50:50及び10:90)で混合した。分散物(乾燥重量700mg)を、ultra-turraxを使用して9000rpmで9分間混合し、脱ガスして、次に直径9.5cmのPTFEカップに溶媒キャストした。溶媒キャストは、フィルムが乾燥するまで約2週間かかった。次に、乾燥フィルムを、1重量%CaCl2溶液中に24時間浸漬させて、複合材料を架橋させた。その後、複合フィルムをMilli-Q水で24時間すすいだ。アルギネートの含有量が高いとアルギネートの保持が低すぎるため、これらのフィルムは濾過法によって調製することができなかった。溶媒キャストフィルムは、非常に不均質な厚さを示した。
【0067】
結果
フィルムの調製及び外観
CNF:アルギネート90:10及び70:30から調製された複合フィルムは非常に均一で均質な外観を有していたが、50:50及び10:90の比率の溶媒キャストCNF:アルギネートフィルムは、非常に不均質な外観及びフィルムに沿ってさまざまな厚さを示した。アルギネートの保持が低すぎるため、これらのフィルム(50:50及び10:90)は濾過法によって調製することができなかった。得られたフィルムの特性のため及び溶媒キャストには時間がかかるため(真空濾過の12~24時間と比較して1~2週間)に、溶媒キャストはCNF:アルギネート複合フィルムの調製に好ましい方法ではない。
【0068】
湿潤状態における機械的特性
湿潤機械試験の結果を
図12及びTable5(表5)に示す。
【0069】
【0070】
湿潤状態において、90:10及び70:30の比率で調製されたCNF:アルギン酸Ca2+の複合材料は、個々の成分の材料特性の比例的組合せについて期待されるよりも、著しく良好な強度特性を示した。比率50:50及び10:90で調製された複合CNF:アルギン酸Ca2+の場合にはこうではなかった。溶媒キャストによって得られたフィルムの不均質性のため、ある試料や別の試料(同じ複合フィルムから調製された引張試料)からとで得られた結果は、大幅に異なる可能性がある。
【0071】
実施例4:異なるイオンにより架橋されたCNF:アルギン酸90:10複合材料の機械的特性。
材料
CNF:アルギネート複合材料のフィルムを異なるイオン(すなわち、Ca
2+、Cu
2+、Fe
3+)により処理し、異なる材料の湿潤状態における機械的特性を調査した(
図10)。
【0072】
CNF調製
2重量%CNFゲルは、RISE bioeconomy社(旧Innventia社)、Stockholm、Swedenの好意により提供された。CNFは、解繊前に500~600μmol/gの電荷密度にカルボキシメチル化された溶解グレードのパルプ由来のものであった。マイクロフルイダイザーを使用して、直列200-100チャンバー構成を3回通過させることによりゲルをさらに均質化し、900mLの体積で0.2重量%の乾燥含有量に希釈し、ultra-turraxを13000rpmで20分間使用して分散させ、6mmマイクロチッププローブを振幅30%で10分間使用して超音波処理した。ゲルを4100xgで1時間遠心分離して、大きめの凝集物又はフロックを除去した。
【0073】
アルギネート調製
0.2重量%のアルギネート溶液を、実施例1に記載されたのと同じ方法で調製した。
【0074】
CNF/アルギネート90:10の調製及び異なるイオンによる架橋:
0.2重量%の分散CNFを、約0.2重量%のアルギネート溶液と、90:10のCNF:アルギネートの比率で混合した。ultra-turraxを9000rpmで9分間使用して、試料を、200mLの体積で約0.2重量%の総固形分に混合した。分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過した。濾過後に形成された1~2mmの湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマー(Paper Testing Instruments社、Austria)の乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。乾燥フィルムは、50~60μmの厚さであった。次に、乾燥フィルムを、1重量%のCaCl2、1重量%のCuCl2、又は1重量%のFeCl3のいずれかの溶液中に24時間浸漬させて、複合材料を架橋させ、複合フィルムをMilli-Q水で24時間すすいだ。その後、これらの湿潤フィルムに対して湿潤引張試験を実施した。
【0075】
結果
湿潤状態における引張機械特性
得られた結果を、
図10及びTable6(表6)において見ることができる。
【0076】
【0077】
すべてのCNF:アルギネート複合材料は、湿潤引張試験で優れた特性を示した。
図10では、異なるイオンが湿潤状態におけるCNF:アルギネート90:10複合フィルムの引張特性にどのように影響を与えたかを示し、Fe
3+が、ヤング率及び引張強度に優れた影響を与えている。Fe
3+により架橋されたCNF:アルギネート90:10複合材料は、Ca
2+及びCu
2+により処理された他の複合材料フィルムよりも、著しく硬くなり、破壊時ひずみが小さかった。
【0078】
実施例5:複合材料の乾燥再膨潤効果。
材料
実施例4に記載の手順に従って、Fe
3+により架橋されたCNF:アルギネート90:10の複合フィルムを製造した。これらの手順に従って、(過剰なイオンを除去するために)Fe
3+イオンにより処理した後にフィルムをすすぎ、これらの湿潤試料の引張機械特性をその湿潤状態において測定した(
図11)。この実施例では、Milli-Q水でフィルムを洗浄した後、Rapid Kothenを用いてフィルムをもう一度乾燥させ、その後、Milli-Q水に24時間浸漬浸させることでフィルムを再膨潤させた。
【0079】
結果
湿潤状態における引張機械特性
これらの乾燥及び再膨潤試料の引張機械特性を測定し、得られた結果を、
図11及びTable7(表7)において見ることができる。
【0080】
【0081】
結果からわかるように、複合フィルムを乾燥させて再膨潤させると、湿潤機械特性がさらに良好になり、乾燥して再膨潤したCNF:アルギン酸90:10 Fe3+のヤング率が1.3GPaに達した。
【0082】
実施例6:イオン架橋時間の影響
材料
CNF調製
2重量%CNFゲルは、RISE bioeconomy社(旧Innventia社)、Stockholm、Swedenの好意により提供された。CNFは、解繊前に500~600μmol/gの電荷密度にカルボキシメチル化された溶解グレードのパルプ由来のものであった。マイクロフルイダイザーを使用して、直列200-100チャンバー構成を2回通過させることによりゲルをさらに均質化し、900mLの体積で0.2重量%の乾燥含有量に希釈し、ultra-turraxを13000rpmで20分間使用して分散させた。ゲルを4100xgで1時間遠心分離して、大きめの凝集物又はフロックを除去した。
【0083】
アルギネート調製
0.2重量%のアルギネート溶液を、実施例1に記載されたのと同じ方法で調製した。
【0084】
CNFアルギネート90:10の調製及び異なる期間の架橋:
0.2重量%の分散CNFを、約0.2重量%のアルギネート溶液と、90:10のCNF:アルギネートの比率で混合した。ultra-turraxを9000rpmで9分間使用して、試料を、200mLの体積で約0.2重量%の総固形分に混合した。分散物(乾燥重量400mg)を、フィルター直径8cmのKontes精密濾過アセンブリのDuraporeメンブレンフィルター(PVDF、親水性、0.65μm)に通して濾過した。濾過後に形成された1~2mmの湿潤ゲルを、Rapid Kothenシートフォーマー(Paper Testing Instruments社、Austria)の乾燥セクションを使用して、92°Cにて、95kPaの減圧下で20分間乾燥させた。乾燥フィルムは、50~60μmの厚さであった。次に、複合材料を架橋させるために、乾燥フィルムを、1重量%CaCl2溶液中に3分、30分、又は3時間のいずれかで浸漬させた。次に、複合フィルムをMilli-Q水で24時間すすいだ。その後、これらの湿潤フィルムに対して湿潤引張試験を実施した。
【0085】
結果
湿潤状態における引張機械特性
得られた結果を、
図13及びTable8(表8)において見ることができる。
【0086】
【0087】
すべてのCNF:アルギネート複合材料は、材料をCaCl2により3分間だけ処理した場合でも、湿潤引張試験で優れた機械特性を示した。引張強度及び破壊時ひずみは、同じ複合材料をCaCl2により24時間処理した場合と同じである(Table5(表5)及びTable6(表6))。