(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】モジュール式体外気管支肺補助装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20230919BHJP
A61M 60/113 20210101ALI20230919BHJP
A61M 60/253 20210101ALI20230919BHJP
A61M 60/38 20210101ALI20230919BHJP
A61M 60/90 20210101ALI20230919BHJP
【FI】
A61M1/18 525
A61M1/18 510
A61M60/113
A61M60/253
A61M60/38
A61M60/90
(21)【出願番号】P 2020528430
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 US2019013678
(87)【国際公開番号】W WO2019143623
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506339556
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】University of Pittsburgh - Of the Commonwealth System of Higher Education
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh,PA 15260(US)
(73)【特許権者】
【識別番号】517440818
【氏名又は名称】ミシシッピ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】MISSISSIPPI STATE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】60 Technology Blvd,Suite 115A,Starkville,MS 39759(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フェダースピール,ウィリアム,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マダーニ,シャルヴ
(72)【発明者】
【氏名】オリゾンド,ライアン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェアデン,ピーター,ドルー
(72)【発明者】
【氏名】フランコウスキ,ブライアン,ジョーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】メイ,アレグザンドラ
(72)【発明者】
【氏名】バーグリーン,グレゴリー
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/210089(WO,A1)
【文献】特開昭63-104617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 60/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺補助のためのシステムであって、
複数の繊維束セクションを含み、
前記複数の繊維束セクションの各々は、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、
繊維束と、を含み、
前記繊維束は、前記繊維束コンパートメント内に配置されており、
前記繊維束は、複数の中空ガス透過性繊維を含み、
前記複数の中空ガス透過性繊維は、血液と前記複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合されており、
前記複数の中空ガス透過性繊維は、血液が前記繊維束コンパートメントを通って流れるときに血液が複数の中空ガス透過性繊維の周りを流れるように配置され、
前記複数の繊維束セクションの各々の前記繊維束は、前記複数の繊維束セクションの他の各々の前記繊維束と少なくとも1つの特性が異なり、
各々の前記繊維束ハウジングはさらに、
前記繊維束ハウジングと流体接続しつつ前記複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、
前記繊維束ハウジングと流体接続しつつ前記複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、
前記繊維束の第1端部と流体接続される血液出口と、
第1のインターフェースと、を備えており、さらに、前記システムは、
ベースセクションを含み、前記ベースセクションは、
ハウジングを備え、
前記ハウジングは、加圧コンパートメントとインターフェースセクションを含む加圧セクションを備え、
前記インターフェースセクションは、前記加圧セクションから所定の角度で延びる延長セクションと、前記延長セクションに形成され、且つ、前記複数の繊維束セクションのうちの1つの前記第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成される第2のインターフェースと、を含み、
前記加圧セクションはさらに、
前記加圧コンパートメント内の加圧機構と、
前記加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、
前記加圧コンパートメントの第1の端部で前記加圧コンパートメントと流体接続され、加圧流体が前記加圧コンパートメントから導出される導管と、
を含み、
前記繊維束セクション
の前記繊維束ハウジングが前記第1のインターフェースと前記第2のインターフェースを介して前記ベースセクション
の前記ハウジングに接続された際、前記導管の第2の端部が前記繊維束の第2の端部と流体接続して配置される、システム。
【請求項2】
前記加圧機構は、前記加圧コンパートメント内で回転可能なインペラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記延長セクションは、加圧セクションから略垂直に延在し、
前記導管は、前記延長セクションを通って延びる流路を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記繊維束の各々の前記複数の中空ガス透過性繊維は、前記繊維束の前記第2の端部から前記繊維束の前記第1の端部までの前記繊維束を通る血液のバルクフローの方向に対して略垂直に延びている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の中空ガス透過性繊維は、少なくとも1つの略円筒形の束内に形成される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記略円筒形の束は、繊維織物の複数の層から形成され、前記繊維織物の複数の層のそれぞれは、前記中空ガス透過性繊維を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記流路は、前記延長セクション内に形成されたマニホルドと流体接続している、請求項
3に記載のシステム。
【請求項8】
前記延長セクションは、前記インペラの回転平面に対して略垂直な平面内に延在する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記繊維束セクションの各々の第1のインターフェースは、前記ベースセクションに取り付けられた前記複数の繊維束セクションのうちの1つの前記繊維束セクションの軸が、前記インペラの回転面に対して略平行に配向されるように前記ベースセクションの前記第2のインターフェースに取り付けられる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ベースセクションに取り付けられた前記複数の繊維束セクションのうちの1つは、前記ベースセクションの前記加圧コンパートメント上に配置される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記繊維束を通る血液のバルクフローが概ね軸方向である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の繊維束セクションは、異なる長さの繊維束を含む長さが異なる繊維束セクションを含み、それにより異なる繊維表面領域を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の繊維束セクションのうちの少なくとも1つは、小児患者に使用するように構成され、前記複数の繊維束セクションのうちの少なくとも1つは、成人患者に使用するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の繊維束セクションのうちの1つと前記ベースセクションとの組み合わせの少なくとも1つは、第1の流量範囲において二酸化炭素除去に適しており、且つ、第2の流量範囲において酸素化及び二酸化炭素除去に適しており、前記第2の流量範囲は、より高い流量まで伸びている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
肺補助のためのシステムであって、
一つの繊維束セクションを含み、
前記一つの繊維束セクションは、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、
繊維束と、を含み、
前記繊維束は、前記繊維束コンパートメント内に配置されており、
前記繊維束は、複数の中空ガス透過性繊維を含み、
前記複数の中空ガス透過性繊維は、血液と前記複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合されており、
前記複数の中空ガス透過性繊維は、血液が前記繊維束コンパートメントを通って流れるときに血液が複数の中空ガス透過性繊維の周りを流れるように配置され、
前記繊維束ハウジングはさらに、
前記繊維束ハウジングと流体接続しつつ前記複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、
前記繊維束ハウジングと流体接続しつつ前記複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、
前記繊維束の第1端部と流体接続される血液出口と、
第1のインターフェースと、を備えており、さらに、前記システムは、
ベースセクションを含み、前記ベースセクションは、
ハウジングを備え、
前記ハウジングは、加圧コンパートメントとインターフェースセクションを含む加圧セクションを備え、
前記インターフェースセクションは、前記加圧セクションから所定の角度で延びる延長セクションと、前記延長セクションに形成され、且つ、前記繊維束セクションの前記第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成される第2のインターフェースと、を含み、
前記加圧セクションはさらに、
前記加圧コンパートメント内の加圧機構と、
前記加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、
前記加圧コンパートメントの第1の端部で流体接続され、加圧流体が前記加圧コンパートメントから導出される導管と、
を含み、
前記繊維束セクション
の前記繊維束ハウジングが前記第1のインターフェースと前記第2のインターフェースを介して前記ベースセクション
の前記ハウジングに接続された際、前記導管の第2の端部が前記繊維束の第2の端部と流体接続して配置される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、助成金の下で政府の支援を受けてなされ、HL117637およびHL135482は米国国立衛生解析所より授与された。政府はこの発明に対して特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月16日に出願された米国仮特許出願第62/617,809号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
以下の情報は、以下に開示される技術及びそのような技術が典型的に使用され得る環境を理解する際に、読者を助けるために提供される。本明細書で使用される用語は、本文書で別段の明確な言及がない限り、特定の狭義の解釈に限定されることを意図するものではない。本明細書中に記載された参照は、技術またはその背景の理解を促進することができる。本明細書に引用されている全ての参考文献の開示は、参考として援用される。
【0004】
急性であれ慢性であれ、肺疾患は主要な医療上の問題である。米国肺協会の報告によれば、毎年35万人近くの米国人が何らかの肺疾患で死亡している。7人に1人の死因である肺疾患は、米国人の死因の第3位である。急性肺不全および成人呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺疾患の一般的な型である。ARDSは毎年約15万人の米国人を苦しめている。救命救急医療の改善にもかかわらず、ARDSに関連する死亡率は40~60%に留まる。
【0005】
しかしながら、ほとんどの肺疾患は慢性である。肺気腫および慢性気管支炎は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の2つの型であり、毎年1400万人以上の米国人が罹患している。慢性肺疾患は現在、米国における第3位の死因であり、年間40万人以上の死者を出し、1,540億ドルの費用を要している。慢性肺疾患が終末期に達するにつれて、肺移植が効果的な治療の唯一の選択肢となる。肺移植は過去10年間で着実に増加しており、世界中で年間約3300件の肺移植が実施されている。待機リストの平均期間は、患者の状態および施設の専門知識に応じて6~12カ月と幅があり、米国では患者の10~15%が待機リストに記載されている間に死亡する。手術の恩恵を受けられる病状の患者には限られた肺移植の機会が存在するものの、患者はドナーの肺の待ちおよびその後の手術までの数カ月間は生存するほどに健康である必要がある。
【0006】
重篤な状態に達すると、機械的人工換気および体外式膜型人工肺(ECMO)が、急性および慢性呼吸器患者を肺の回復または肺移植に橋渡しするために利用できる呼吸補助の唯一の代替である。機械的人工換気(MV)は、短期的なサポートのために十分なガス交換を維持するが、長期的なサポートは圧外傷(高圧)、容積外傷(過膨張)、および生物学的外傷(分子的および細胞媒介性炎症)による人工呼吸器誘発性の肺損傷をもたらし、患者の呼吸状態をさらに悪化させる可能性がある。ECMOは高価で複雑であり、高度に訓練された技術者によって継続的に監視されなければならない外部ポンプおよび血液回路の使用を必要とする。患者をMV、特にECMOに捕らわれた状態にすると、進行性の体調不良が生じ、これは術後合併症の増加と移植後の死亡率の上昇に反映される。それにもかかわらず、ECMOは患者の肺移植または肺疾患からの急性代償不全後の肺回復への架け橋となる唯一の選択肢としてますます検討されている。より最近では、アクティブな移植センターでの経験の増加と、ECMO技術の向上により「歩行可能なECMO」の概念が普及し、移植後の患者の回復を容易にし、迅速に回復するようになった。歩行可能なECMOの成功は、患者を移動可能に維持することの重要性を強調している。現在利用可能な歩行可能なECMOシステムは、既存の血液ポンプとバイパス人工肺を統合システムに組み合わせるが、巨大で煩雑なままであり、長期的なサポートのために人工肺の頻繁な交換を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
心不全患者に対する体外式左心室補助装置(VADs)の最近の成功は、肺移植または回復への橋渡しとなり得る外来ポンプ肺装置を想定することを促した。しかしながら、完全に統合された外来ポンプ肺は臨床的に使用されていない。開発中の携帯型または外来型システムの多くは、単一のコントローラユニットの下に別個の血液ポンプおよび人工肺を統合するが、煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
一態様では、肺補助のためのシステムは、複数の繊維束セクションを含む。繊維束セクションの各々は、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、繊維束コンパートメント内に配置された繊維束とを含む。繊維束は、血液と複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合された、または構成された、複数の中空ガス透過性繊維を含む。複数の中空ガス透過性繊維は、血液が繊維束コンパートメントを通って流れるときに、血液が複数の中空ガス透過性繊維の周囲を流れるように配置される。複数の繊維束セクションの各々の繊維束は、複数の繊維束セクションの他の各々の繊維束とは、少なくとも1つの特性が異なる。従って、各繊維束セクションは、関連する繊維束の少なくとも1つの特性においてユニークである。繊維束ハウジングは、さらに、繊維束ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、繊維束の第1の端部と流体接続した血液出口とを含む。繊維束ハウジングはまた、第1のインターフェースを含む。
【0009】
システムはさらにベースセクションを含み、ベースセクションは加圧コンパートメントを含むハウジングと、加圧コンパートメント内の加圧機構と、加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、加圧コンパートメントの第1の端部で前記加圧コンパートメント流体接続され、加圧流体が加圧コンパートメントから導出される導管と、を含む。ベースセクションは、複数の繊維束セクションのうちの1つの第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成された第2のインターフェースをさらに含む。繊維束セクションが第1のインターフェースと第2のインターフェースとを介してベースセクションに接続された際、導管の第2の端部が繊維束の第2の端部と流体的に接続して配置される。システムは、例えば、体外設置のシステムであり得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、加圧機構は、加圧コンパートメント内で回転可能なインペラを含む。いくつかの実施形態では、ベースセクションのハウジングは、加圧コンパートメントとインターフェースセクションを含む加圧セクションを含む。インターフェースセクションは、加圧セクションと第2のインターフェースとから延びる延長セクションを含む。前述の導管は、例えば、延長セクションを通って延びる流路を含むことができる。
【0011】
繊維束の各々の複数の中空ガス透過性繊維は、例えば、繊維束の第2の端部から繊維束の第1の端部までの繊維束を通る血液のバルクフローの方向に略垂直に延びることができる。複数の中空ガス透過性繊維は、例えば、複数の繊維織物の層を含んでもよく、繊維織物の複数の層のそれぞれは、中空ガス透過性繊維を含む。いくつかの実施態様において、繊維織物の隣接する層は、繊維織物の隣接する層における複数の中空ガス透過性繊維の配向が異なる配向となるように互いに対して回転される。
【0012】
いくつかの実施態様において、複数の中空ガス透過性繊維は、少なくとも1つの略円筒形の束内に形成される。上述のように、略円筒状の束は、繊維織物の複数の層から形成されてもよく、繊維織物の複数の層のそれぞれは中空のガス透過性繊維を含む。繰り返しになるが、繊維織物の隣接する層における複数の中空ガス透過性繊維の配向が異なる配向となるように、繊維織物の隣接する層を互いに対して回転させることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、流路は、延長セクション内に形成されたマニホルドと流体接続している。延長セクションは、例えば、インペラの回転平面に対して略垂直に延在してもよい。各繊維束セクションの第1のインターフェースは、例えば、ベースセクションに取り付けられた複数の繊維束セクションのうちの1つの繊維束の軸線が、インペラの回転面に略平行に配向されるようにベースセクションの第2のインターフェースに取り付けられてもよい。ベースセクションに取り付けられた繊維束セクションは、例えば、ベースセクションの加圧コンパートメント上に配置されてもよい。繊維束を通る血液のバルクフローは、例えば、流れが概ね軸方向であってもよい。いくつかの実施形態では、血液がガス入口やガス出口に流れないようにブロックされる。
【0014】
複数の繊維束セクションは、例えば、異なる長さの繊維束を含む、長さの異なる繊維束セクションを含むことができ、それにより、異なる繊維表面領域を含むことができる。複数の繊維束セクションのうちの少なくとも1つは、例えば、小児患者に使用するように構成されてもよく、複数の繊維束セクションのうちの少なくとも1つは、例えば、成人患者に使用するように構成されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の繊維束セクションのうちの1つとベースセクションとの組み合わせの少なくとも1つは、第1の流量範囲において二酸化炭素除去に適しており、且つ、第2の流量範囲において酸素化および二酸化炭素除去に適しており、第2の範囲の流速は、より高い流速まで伸びる。
【0016】
別の態様では、患者に対する体外肺補助の方法は、複数の繊維束セクションを提供すること、を含む。上述のように、繊維束セクションの各々は、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、繊維束コンパートメント内に配置された繊維束とを含む。繊維束は、複数の中空ガス透過性繊維を含み、該複数の中空ガス透過性繊維は、血液と複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合されるか、または構成されている。複数の中空ガス透過性繊維は、血液が前記繊維束コンパートメントを通って流れるときに血液が複数の中空ガス透過性繊維の周りを流れるように配置されている。複数の繊維束セクションの各々の繊維束は、複数の繊維束セクションの他の各々の繊維束と少なくとも1つの特性が異なる。従って、各繊維束セクションは、関連する繊維束の少なくとも1つの特性においてユニークである。繊維束ハウジングは、さらに、繊維束ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、繊維束ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、繊維束の第1の端部と流体接続した血液出口とを含む。繊維束ハウジングはまた、第1のインターフェースを含む。本方法はさらに、ベースセクションを提供することを含み、ベースセクションは加圧コンパートメントを含むハウジングと、加圧コンパートメント内の加圧機構と、加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、加圧コンパートメントの第1の端部で流体接続され、加圧流体が加圧コンパートメントから導出される導管と、を含む。ベースセクションは、複数の繊維束セクションのうちの1つの第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成された第2のインターフェースをさらに含む。繊維束セクションが第1のインターフェースと第2のインターフェースとを介してベースセクションに接続された際、導管の第2の端部が繊維束の第2の端部と流体的に接続して配置される。本方法はまた、第1のインターフェースと第2のインターフェースとの接続を介して複数の繊維束セクションのうちの1つをベースセクションに取り付けること、を含み、繊維束セクションのうちの1つの繊維束が患者のために選択される。繊維束セクションおよびベースセクションセクションは、上述のように特徴付けられ得る。
【0017】
上述したように、複数の繊維束セクションのうちの1つとベースセクションのうちの少なくとも1つの組み合わせは、例えば、第1の範囲の流速での二酸化炭素除去に適しており、第2の範囲の流速での酸素化および二酸化炭素除去に適しており、第2の範囲の流速は、より高い流速まで伸びる。
【0018】
別の態様では、肺補助のためのシステムは、一つの繊維束セクションを含む。一つの繊維束セクションは、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、繊維束コンパートメント内に配置された繊維束とを含む。繊維束は、複数の中空ガス透過性繊維を含む。複数の中空ガス透過性繊維は、例えば、血液と複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合されるか、または構成され得る。複数の中空ガス透過性繊維は、血液が繊維束コンパートメントを通って流れるときに血液が複数の中空ガス透過性繊維の周りを流れるように配置される。繊維束ハウジングは、さらに、ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、繊維束の第1の端部と流体接続した血液出口とを含む。繊維束ハウジングはまた、第1のインターフェースを含む。システムはさらにベースセクションを含み、ベースセクションは加圧コンパートメントを含むハウジングと、加圧コンパートメント内の加圧機構と、加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、加圧コンパートメントと第1の端部で流体接続され、加圧流体が加圧コンパートメントから導出される導管と、を含む。ベースセクションは、複数の繊維束セクションのうちの1つの第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成された第2のインターフェースをさらに含む。繊維束セクションが第1のインターフェースと第2のインターフェースとを介してベースセクションに接続された際、導管の第2の端部が繊維束の第2の端部と流体的に接続して配置される。
【0019】
さらなる別の態様では、肺補助を提供する方法は、一つの繊維束セクションを選択すること、を含む。一つの繊維束セクションは、内部に繊維束コンパートメントを画定する繊維束ハウジングと、繊維束コンパートメント内に配置された繊維束とを含む。上述の通り、繊維束は、複数の中空ガス透過性繊維を含む。複数の中空ガス透過性繊維は、血液と複数の中空ガス透過性繊維の内部との間のガスの拡散を可能にするように適合されるか、または構成されている。複数の中空ガス透過性繊維は、血液が前記繊維束コンパートメントを通って流れるときに血液が複数の中空ガス透過性繊維の周りを流れるように配置されている。繊維束ハウジングはさらに、繊維束ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の入口と流体接続するガス入口と、ハウジングと流体接続しつつ複数の中空ガス透過性繊維の出口と流体接続するガス出口と、繊維束の第1の端部と流体接続した血液出口とを含む。繊維束ハウジングはまた、第1のインターフェースを含む。本方法はさらに、繊維束セクションをベースセクションに取外し可能に取り付けること、を含み、ベースセクションは、加圧コンパートメントを含むハウジングと、加圧コンパートメント内の加圧機構と、加圧コンパートメントと流体接続される血液入口と、加圧コンパートメントの第1の端部で流体接続され、加圧流体が加圧コンパートメントから導出される導管とを含む。ベースセクションはさらに、繊維束セクションの第1のインターフェースと取外し可能なシール接続を形成するように構成された第2のインターフェースを含む。繊維束セクションが第1のインターフェースと第2のインターフェースを介してベースセクションに接続された際、導管の第2の端部が繊維束の第2の端部と流体接続して配置される。
【0020】
本発明の装置、システムおよび方法は、それらの属性および付随する利点と共に、添付の図面と併せて取られた以下の詳細な説明に照らして最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、装置のベースセクションに小型の繊維束セクションが接続して配置された、体外肺補助または携帯体外肺補助装置、デバイス、またはシステムの一実施形態の斜視図を示している。
【0022】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の斜視図において、
図1Aに示されている小型の繊維束セクションが除去され、装置のベースセクションセクションに大型の繊維束セクションが接続して配置されているものを示している。
【0023】
【
図2A】
図2Aは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の正面図であって、装置のベースセクションに取り付けるための大型の繊維束セクションと、大型の繊維束セクションの上に配置された小型の繊維束セクションとを示している。
【0024】
【
図2B】
図2Bは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の側面断面図であって、装置のベースセクションに取り付けるための大型の繊維束セクションと、大型の繊維束セクションの上に配置された小型の繊維束セクションとを示している。
【0025】
【
図2C】
図2Cは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の側面断面図であって、大型の繊維束がベースセクションに接続されており、実線の矢印はデバイスを通る血流を示し、破線の矢印はガスの流れを示している。
【0026】
【
図2D】
図2Dは、本明細書の繊維束の実施形態の様々な層の斜視分解図を示しており、隣接する層の繊維の配向は互いに対して回転している(個々の層内の繊維は、概ね同じ方向に配向される)。
【0027】
【
図3A】
図3Aは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の正面図を示し、小型の繊維束セクションがベースセクションに接続されている。
【0028】
【
図3B】
図3Bは、
図1Aの装置のセクションA-A(
図3Aを参照)の断面図を示しており、小型の繊維束セクションがベースセクションに接続されている。
【0029】
【
図3C】
図3Cは、
図1Aの装置のセクションB-B(
図3Aを参照)の断面図を示しており、小型の繊維束セクションがベースセクションに接続されている。
【0030】
【
図4A】
図4Aは、小型の繊維束セクションを含む、
図1Aの携帯体外肺補助装置の斜視、解体、または分解図を示している。
【0031】
【
図4B】
図4Bは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の側面図であり、大型の繊維束がベースセクションに接続されている。
【0032】
【
図4C】
図4Cは、
図1Aの携帯体外肺補助装置の背面図であり、後部パネルが取り外されて、加圧セクションから繊維束セクションと流体接続しているマニホルドへの流路チャネルを示している。
【0033】
【
図4D】
図4Dは、
図1Aの装置と同様の本明細書の携帯体外肺補助装置の側面図であり、大型の繊維束がベースセクションに接続されている。
【0034】
【
図4E】
図4Eは、
図4Dの携帯体外肺補助装置の背面図であり、後部パネルが取り外されて、加圧セクションから繊維束セクションと流体接続しているマニホルドへの流路チャネルを示している。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【
図6A】
図6Aは、
図1Aに示された、小型の小児用繊維束セクション200(全繊維表面積0.3m
2)を有する本明細書の装置、および
図1Bに示された、大型の成人用繊維束セクション200a(全繊維表面積0.65m
2)を有する本明細書の装置について、流量の関数としての酸素化容量(mL/min)の解析から得られたデータを示している。
【0039】
【
図6B】
図6Bは、
図1Aに示されるような小型の小児用繊維束セクション200を有する本明細書の装置、および市販の制御システム(すなわち、イタリアのSorin Group of Modenaから入手可能なLILLIPUT 2小児用人工肺、およびカリフォルニア州プレザントンのThoratec Corporation of Pleasantonから入手可能なCENTRIMAG(登録商標)血液ポンプとを有する)について、2.5L/分の流速における正規化された溶血指数またはNIH(g/100L)を示している。
【0040】
【
図6C】
図6Cは、18Fr(フレンチ)の静脈カニューレ、14Frの動脈カニューレ、および肺高血圧の結果として50mmHgの流出(肺動脈)圧を想定した、小型の小児用繊維束セクション200を備えた本装置の流量の関数としての圧力の解析を示している。
【0041】
【
図6D】
図6Dは、27Fr(フレンチ)のデュアルルーメンカニューレを想定した、大型の成人用繊維束セクション200aを備えた本装置の流量の関数としての圧力の解析を示している。
【0042】
【
図6E】
図6Eは、15.5Fr(フレンチ)デュアルルーメンカニューレを想定した、成人用繊維束セクション200aを有する本明細書の装置の流量の関数としての圧力の解析を示している。
【0043】
【
図6F】
図6Fは、小型の小児用繊維束セクション200を備えた本明細書の装置の血流速度の関数としての酸素移動速度の解析を示している。
【0044】
【
図6G】
図6Gは、大型の成人用繊維束セクション200aを備えた本明細書の装置の血流量の関数としての酸素移動速度の解析を示している。
【0045】
【
図6H】
図6Hは、大型の成人用繊維束セクション200aを備えた本装置の血流量の関数としての正規化されたCO
2除去率の解析を示している。
【0046】
【
図7A】
図7Aは、本明細書の酸素化または酸素移動速度の解析において使用される血流ループを示している。
【0047】
【
図7B】本明細書の溶血解析において使用される血流ループを示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
実施形態の構成要素は、本明細書の図に一般的に記載され、図示されているように、説明された例示的な実施形態に加えて、広範な異なる構成に配置され、設計されてもよいことが容易に理解されるであろう。従って、以下の図に示されている例示的な実施形態のより詳細な説明は実施形態の範囲を限定することを意図するものではなく、単に例示的な実施形態を代表するものに過ぎない。
【0049】
本明細書中で「一実施形態」または「実施形態」(または類似のもの)への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同一実施形態を参照するものではない。
【0050】
さらに、説明された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、実施形態の完全な理解を与えるために、多くの特定の詳細が提供される。しかし、当業者であれば、種々の実施形態は、特定の詳細の1つ以上を用いることなく、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを理解するであろう。他の例では、不明瞭化を回避するために、周知の構造、材料、または操作は、詳細に示されていないか、説明されていない。
【0051】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「(an)インペラ」への言及は、複数のそのようなインペラおよび当業者に知られているその同等物などを含み、「(the)インペラ」への言及は、当業者に知られている1つ以上のそのようなインペラおよび同等物を意味する。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための簡略化された方法として機能することを意図しているにすぎない。本明細書で別段の指定がない限り、各個別の値および中間範囲は、本明細書で個別に列挙されているかのように、明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、本文によって明確に禁忌されない限り、任意の適切な順序で実行することができる。
【0052】
本明細書で装置10に関して使用する「軸方向」、「軸方向に」または同様の用語は、概して、装置10の構成要素(例えば、繊維束300またはインペラ400)が形成される軸を指す(必ずしもその周囲に対称という訳ではない)。「半径方向」という用語は、一般に、そのような軸に垂直な方向を指す。「後方」、「後方の」または同様の用語は、概して装置10のガスおよび流体ポートから離れる、または反対側の、
図1Aの軸xに沿った方向を指す。用語「前方」、「前方の」または同様の用語は、概して、装置10のガスおよび流体ポートに向かう軸xに沿った方向を指す。「上方」、「上方の」または同様の用語は、概して、
図1Aの軸に沿った方向であって、ベースセクション100の加圧セクション122から離れる方向を指し、一方、用語「下方」、「下方の」または同様の用語は、軸yに沿って、繊維束セクション200から離れて、ベースセクション100の加圧セクション122に向かう方向を指す。一般に、本明細書に記載の方向および/または配向に関連する用語は、説明された実施形態の要素の相対位置を説明するために使用され、本明細書で特に示さない限り、または本明細書から明白でない限り、限定的なものではない。
【0053】
いくつかの実施形態では、体外/携帯体外肺補助装置は、ガス移動効率および生体適合性における利点を提供する。本明細書の装置は、例えばセントラルカニューレ挿入および/または末梢カニューレ挿入のために設計されてもよく、例えば、装置の交換が必要となるまでの期間は1~3ヶ月間であってもよい。本発明の装置は、例えば、重症急性呼吸不全(ARDS)に罹患している患者から、COPDまたは重症肺高血圧症(PH)に罹患している慢性患者にまで適用可能である。体外装置、機器またはシステムは、一般に、使用中に身体のすぐ近くに配置される体外装置/システムである。換言すれば、体外循環装置またはシステムは、「ウェアラブル」または携帯型装置あるいは携帯型システムである。本明細書の装置、機器およびシステムは、体外/歩行可能な状態での使用、ならびに一般的に静止している体外使用に適している。
【0054】
開発中の多くの歩行可能な装置またはシステムでは、血液ポンプは、1つ以上の導管(例えば、チューブの長さ)によって人工肺に接続される。多くのシステムが血液ポンプを組み込んでいるが、このような装置のインペラユニットから出た血液は典型的には、マニホルドによって中空繊維束コンパートメント内に分配される前にチャネルを通って移動する。最近携帯型呼吸補助の増加を提供しながら、開発中の多くの他の装置よりも煩雑でない装置が、PCT国際特許出願公開第2016/210089号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。このような装置は、高度に統合された血液ポンプおよび肺を提供し、そこではインペラのようなポンプ機構が、中空のガス透過性繊維(本明細書では、繊維束とも称される)を通る流れのために血液を加圧する。そのような装置は、例えば、ホルスタに装着されるか、または傍体的にベストに装着され得る。さらに、そのような装置は、例えば他の装置と比較して繊維束を通る平均(average)速度または平均(mean)速度を増加させることができ、これにより、ガス交換が促進される。PCT国際特許出願公開第2016/210089号の肺補助のための一体的に形成された体外システムは、繊維束コンパートメントおよび加圧固定子コンパートメントに流体接続された血流入口を有する一体化ハウジングを含む。
【0055】
図1Aから
図4に示すいくつかの実施形態では、装置10は、第1の、ベース、または血液加圧セクション100(以下、ベースセクション100と称する)と、モジュール式、または、取外し可能に接続可能な第2の、繊維束またはガス交換セクション200(以下、繊維束セクション200、200aと称する)とを含む。多くの実施形態では、ベースセクション100と繊維束セクション200とは、加圧システムおよび繊維束が比較的小さな形状ファクタ内に包囲されるように、取り外し可能に接続可能である。以下にさらに説明するように、例えば、異なるサイズ、異なる形状、異なる表面処理、異なる繊維組成等の繊維束を提供するために、繊維束セクション200は容易に除去され、
図1Bの繊維束セクション200aのような別の繊維束セクションに置換され得る。そのため装置10は、重大な血液損傷を誘発することなく、多数の異なる使用または処置において、効率的で有意なガス移動速度を提供することができる。さらに、繊維束セクション200または200aのような繊維束セクションは、例えば、損傷、汚染または摩耗が生じた際には、それぞれ別の類似または同一の繊維束セクション200または200aに容易に置き換えることができる。
【0056】
繊維束セクション200は、例えば
図2Bおよび3Bに示すように、繊維束コンパートメント222を含むハウジング220を含む。繊維束コンパートメント222は、繊維束300を収容し、繊維束300のガス側を酸素または酸素を含む混合ガスであり得る掃引ガスで均一に潅流するように設計されたガス経路を提供する。
【0057】
例えば、
図2Aおよび
図2Bの実施形態に例示されているように、本明細書のシステム5は、ベースセクション100と、複数の異なる繊維束セクション200、200a等とを含んでもよい。2つの繊維束セクション200および200aが
図2Aおよび2Bに示されているが、より多くの繊維束セクションが設けられてもよい。いくつかの実施形態では、繊維束セクション200および200a(および本明細書の他の繊維束セクション)は、その長さ以外の寸法がほぼ同一であるように形成される。繊維束セクション200aの要素には、繊維束セクション200の対応する要素と同様の番号が付され、それに「a」という指定が付加される。繊維束300aは、例えば、その長さを除いて、繊維束300とほぼ同一の寸法を有するように形成されてもよい。形成されると、繊維束300のガス交換部(任意のポッティングを除く)は、直径1.75インチ(0.044メートル)および長さ1.52インチ(0.039メートル)を有していた。繊維束300aは、直径1.75インチ(0.044メートル)および長さ3.20インチ(0.081メートル)を有した。いくつかの実施態様において、繊維束300は、ガス交換のためのその全体的な表面積または繊維の総表面積が0.3m
2であった。繊維束300は、96のPMP繊維層を含んでいた。繊維束300aは、ガス交換のための総表面積または総繊維表面積が0.65m
2であった。繊維束300aは、200のPMP繊維層を含んでいた。
【0058】
図1A~4Eの実施形態では、様々な繊維束/装置特性は、繊維束長(および、それによるガス交換のための総表面積)や繊維束組成(例えば、繊維束材料、表面処理)などを含む繊維束セクション間のスイッチングによって変化し得るが、これらに限定するものではない。繊維束の特性は、特定の用途または機能、特定の患者群、または特定の患者に特に適合させるために、広範囲にわたって変化し得る。
【0059】
図1から
図4Eの例示の実施形態では、繊維束セクション200および関連する繊維束300は、例えば、小児用に設計され、一方、繊維束セクション200aおよび関連する繊維束300aは、成人用に設計された。繊維束セクション200および200aの各々において、装置10は、例えば、酸素化および/または二酸化炭素除去のために使用されてもよい。インペラ400(いくつかの実施形態では閉または閉鎖されたインペラ)を含む一体型ポンプは、血管内に配置された流入カニューレ(
図3B参照)を介して、患者から静脈血を吸引する。血液は、ガス交換繊維束を通して送り出される。この繊維束は、酸素を血液に運び、血液から二酸化炭素を除去するように作動する。血液が線維束を通過した後、血液は流出カニューレを介して患者の循環系に戻される(
図3B参照)。呼吸補助中に装置10によって提供される必要な血流、ポンプ、およびガス交換のレベルは、呼吸不全の性質だけでなく、患者の大きさ(例えば、小児患者または成人患者)に依存する。酸素化ではなく二酸化炭素の除去が第一の目標である場合には、より低い血流速度とより侵襲性の低いカニューレ挿入ストラテジを用いることができる。二酸化炭素が第一の目標である場合、この方法論は、典型的には、体外二酸化炭素除去またはECCO
2Rと称される。
【0060】
多くの実施形態では、全てのガスおよび流体の入口および出口(総称してポート)は、本明細書の繊維束セクションをベースセクション100に接続することによって、装置10の組み立て時に概ね同じ方向に向けられる(例えば、
図1A~2Bを参照)。図示された実施形態では、ガス入口260、ガス出口264、流体入口130、および流体出口250の軸は、概ね平行である(例えば、平行の状態からの角度が20、10、または5度未満である)。
図1~
図4Cの実施形態では、入口および出口は、装置10の前面または前側に配置される。図示された実施形態では、このような軸は、一般に、同一平面(例えば、同一平面の状態からの角度が20、10または5度未満)である。全てのガスおよび流体ポートを概ね同じ方向に向けることによって、チューブのこのようなポートへの接続、および取り付けられたチューブを備えた装置10の装着が容易になる。上述のように、全てのガスおよび流体ポートを概ね同じ方向に向けることは、各ポートの軸が他のすべての軸と同一直線上とした際の角度が20、10または5度未満であることを示す。
【0061】
多くの実施形態において、装置10の寸法は、高さが13.2cm(5.2インチ)以下(
図1Aのy次元)、幅が11.4cm(4.5インチ)以下(
図1Aのz次元)、長さが14cm(5.5インチ)以下(
図1Aのx次元)であった。多くの実施形態では、繊維束セクションの長さは、6.9cm(2.7インチ)から11.2cm(4.4インチ)の間で変化した。繊維束セクション200を有する装置10の重量は、例えば、550g以下、または500g以下であってもよく、繊維束セクション200aを有する装置10の重量は、620g以下、または570g以下であってもよい。多くの実施形態では、繊維束セクション200を有する装置10のプライミング容積は約125mlであり、繊維束セクション200aを有する装置10のプライミング容積は約160mlであった。本発明の装置の形状係数は、ポンピング効率を増加させることによって(例えば、インペラ設計をさらに最適化することによって)、さらに低減することができる。
【0062】
この点に関し、回転要素またはインペラ400のような加圧機構は、ベースセクション100のハウジング120の、加圧またはポンピング(インペラ/固定子)コンパートメント124内、に配置されてもよい。図示された実施形態では、ベースセクション100は、ポンピングまたは加圧コンパートメント124を収容する第1または加圧セクション122と、繊維束セクションと接続するためのインターフェースを形成するために第1セクション122からの角度で延びる、第2またはインターフェースセクション140とを含む。図示された実施形態では、延長セクション140は第1セクション122のポンピングまたは加圧コンパートメント124によって画定されるインペラ400の回転平面に対して約90°の角度で延びる。ポンピングまたは加圧コンパートメント124は、第1セクション122のインペラ固定子/ボリュート区画として形成された。図示された実施形態では、第1セクション122およびそのポンピングまたは加圧コンパートメント124は、ベースハウジング120の第1のまたは上側のハウジング部120aおよび下側または第2のハウジング部120bの接続を介して形成された。ベースハウジング120の下側または第2のハウジング部分120b(例えば、
図4Aを参照)は、ベースハウジング120のインペラ固定子/ボリュートコンパートメント124へのインペラ400の挿入を可能にするようなサイズにされている。インペラ400を収容するポンピング、または、加圧コンパートメント124は、インペラ400のポンピング効率を最大にするために従来のポンプ理論に従って設計されてもよい。インペラ400は、ハウジング120のポンピングまたは加圧コンパートメント124内で回転する。
【0063】
繊維束セクションハウジング220およびベースセクションハウジング120は、剛性材料から形成される。一般に、このような剛性材料は、使用条件下では、著しい変形や曲げが生じない。いくつかの実施態様において、繊維束セクションハウジング220およびベースセクションハウジング120は、ポリマー材料から、典型的には、同じポリマー材料から形成される。ハウジングセクションは、例えば、押出し成形によって形成することができる。
【0064】
遠心ポンプの固定子部分(ステータセクション)は、流れがインペラを出た後は、通常ディフューザまたはボリュートのいずれかである。これら2つのステータのそれぞれの目的は、速度エネルギーを効率的に圧力に拡散させることである。ディフューザは、インペラを取り囲む複数の半径方向に対称な拡散通路によって特徴付けられる。ボリュート形または環状コレクタのいずれかが、ディフューザと共に使用される。ボリュートは、ポンプ構成に応じて、1つ以上のスクロール形状の拡散通路(本明細書のいくつかの実施形態における1つ)によって特徴付けられる。本明細書のボリュートは、インペラによってポンプで送られる流体を受け取り、流体の流量を減速し、運動エネルギーを圧力に変換する。ボリュートは、排出口に近づくにつれて曲がり、面積が増加する。
【0065】
インペラ400は、例えば、インペラ400上またはインペラ400内に配置された1つ以上の磁石を介して部分的に磁気的に支持されてもよい。インペラ400は、図示の実施形態では、インペラ400の正味の流体力学的荷重が上方(図面の方向)になるように、インペラボリュートコンパートメント124内に配置される。従って、インペラ400を支持するために使用される磁石は、インペラ400に下向きの力を作用させることができる。例えば、PCT国際公開第WO2014/085620号に記載されているように、1つ以上の磁石を、インペラ400の1つ以上の台座に着座させてもよく、(インペラボリュートコンパートメント124の内側または外側にある別の磁石と協働して)力を加えて、組み合わされた流体力学的および結合磁石力をオフセットさせ、それによって、ベアリングに加えられる軸力を最小化し、システム全体の耐久性を向上させるように動作可能である。トップおよびボトムのピボットベアリング412aおよび412b(
図4A参照)は、それぞれ、例えば、それらの耐摩耗性を最大にする、ステンレス鋼シェル内に収容された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ピボットおよびカップ型ベアリングであってもよい。
【0066】
図2Cは、装置10を通る流体(血液)の流れ(実線矢印)および掃引ガスの流れ(点線矢印)を示す。この点に関して、血液のような流体は、ベースセクション100に形成された流体入口130を介してインペラ400の中央部に吸引され、
図2Cの半径方向外方に向いた実線矢印によって示されるように、インペラベーン410(例えば、
図3Cおよび5Aを参照)を介して遠心的に外方へ遠心分離される。次に、例えば、
図1Bおよび
図3Cに示すように、血液を繊維束300に流す。例えば、
図3Cに示すように、チャネル126は、インペラボリュートコンパートメント124から流路142まで延びている。流路126がインペラボリュートコンパートメント124から延びる地点では、流路142は、例えば、インペラ400の高さ(すなわち、
図2Cの方向における垂直寸法)まで伸び得、例えば、ピボットポンプにおける血栓堆積のための一般的な領域であるインペラ400の下側の洗浄を最大限にすることができる。図示された実施形態では、流路126は、一般に、インペラボリュートコンパートメントから接線方向に(例えば、接線方向に5度以内に)延び、流路142に接続する。多くの実施形態では、流路142は、円形断面を有している。チャネル126は、流路142に接続するインペラ400の中心線に近い角度で後方に延びる。
【0067】
流路142は、それが繊維束300、ひいては繊維束セクション200の形状因子をさらに増加させないように、ベースハウジング120(すなわち、延長セクション140内)に組み込むことができる。図示の実施形態(例えば、
図2B、2C、および4Cを参照)において、流路142は、ベースセクション100の延長セクション140を通って、インペラ400の回転平面に対して垂直に(図面の配向において)上方に、約90°の角度(ほぼ垂直または垂直に)に伸び、流体/血液入口容積またはマニホルド144部分に入り、そこで、流体/血液は、繊維束300の第2の表面または後方の表面に接触する。流路142に丸いまたは弧状のコーナー/端部を設けることは、例えば、溶血および血栓を低減または最小化することをアシストする。多くの実施形態では、流路142は、丸の、または円形の断面形状を有する。
【0068】
いくつかの実施態様において、血液は、マニホルド144から繊維束300の第2端部または後端に入り、その中空繊維の周囲を通過する。繊維束300を通過した後、血液は出口容積またはマニホルド224を介してシステム10を出る。マニホルド224は、その第1の端部は繊維束300の第1の端部または前方端部に、その第2の端部は血液/流体出口250に流体接続されている。液体/流体流路は、(i)繊維束300の後面の周囲と表面146との間、および(ii)繊維束300の前面の周囲と繊維束ハウジング220との間の接触/シールによって、装置10を通るガス流路から分離されてもよい。
【0069】
図示の実施形態では、繊維束セクション200は、インターフェース270を含む(繊維束セクション200aは、同様のインターフェース270aを含む)。インターフェース270は、ベースセクション100の延長セクション140の協働インターフェース170に接続する。本明細書の各繊維束セクションは、インターフェース170と協働して、本明細書の繊維束セクションの1つとベースセクション100との間にシールされた接続を形成する、類似または同一のインターフェースを含んでもよい。従って、本明細書の繊維束セクションは、異なる流れおよび/または質量交換特性(ならびに異なる寸法、体積および/または重量)を有する装置10において、本明細書のベースセクション100に容易に接続可および取り外し可能である。
図2Cの代表的な実施形態で概略的に示すように、繊維束セクション200aは、コネクタ272aを有するインターフェース270aを含んでもよい。該コネクタ272aはインターフェース170上の協働コネクタ172と協働し、繊維束セクション200aのインターフェース270aとベース部100のインターフェース170との間にシールされた接続を形成する。本明細書の他の繊維束セクションは、同様に、協働コネクタ172と協働するための同様のコネクタを含むことができる。コネクタ272a(および本明細書の他の繊維束セクションの類似または同一のコネクタ)は、機械的/医療的接続技術において知られているように、滑り嵌め、スナップ嵌め、ねじ嵌め、ルアーロック連結嵌合などを介して、協働コネクタ172と協働してもよい。インターフェース270aとインターフェース170との間のシール接続は、例えば、図示した実施形態の前面146に形成された台座に着座するOリングのようなシール180により容易にすることができる。
【0070】
装置10のガス経路は、例えば、比較的単純であってもよい。気体は、気体入口ポート260を通って繊維束300の一方の側のチャネル262に入り、繊維束300の他方の側のチャネル266と流体接続した気体出口ポート264を通って出る。従って、繊維束300を通るガスの流れは、
図2Cの破線矢印のアベレージまたはバルク方向である。チャネル262はガス流路への入口であり、チャネル266は出口である。掃引ガスは、繊維の管腔を横切って(半径方向に横切って)262を通ってチャネル266に入る。チャネル262は、例えば、ハウジング220の内表面と繊維束300との間の接触をシールすることによって、またはハウジング220の内表面と繊維束300との間に延びるシール部材との接触をシールすることによって、チャネル266からシールされる。いくつかの実施態様において、チャネル262および266の高さは、約0.8cm(0.3インチ)であった。例えば、幅は、繊維束300内の繊維の全てを均一に灌流するのを助けるように選択されてもよい。ガスの流れの方向は、例えば、装置10が患者によって着用されるときに、一般に、それが重力の方向に沿っているか、またはそれによって補助されるようなものであってもよく、その結果、形成された如何なる凝縮が重力の効果の結果として除去されるようなものであってもよい。
【0071】
図4Aは、小型の小児用繊維束セクション200を含む装置10の斜視図、分解図、または解体図を示す。
図4Bは、ベースセクション100に接続された、大型の成体繊維束200aを有する装置10の側面図を示す。
図4Cは、加圧セクション122から(延長セクション140を通って)マニホルド144に延びる流路142を示すために、背面パネルが除去された装置10の背面図を示す。上述したように、図示の実施形態では、流路142は、繊維束300、ひいては繊維束セクション200の形成因子をさらに増加させないように、延長セクション140内のベースハウジング120内に組み込まれる。上述したように、流路142は、ベースセクション100の延長セクション140を通ってインペラ400の回転面に直交または垂直な平面内を移動し、流体/血液入口容積またはマニホルド144ポーションに入る。
【0072】
図4Dは、設計および操作が装置10と類似しており、大型の成人用繊維束セクション200aがベースセクション100’に接続されている、携帯体外肺補助装置10’の別の実施形態の側面図を示す。装置10’を説明するにあたり、装置10’の要素は、装置10の対応する要素に「’」という呼称を加えた参照番号を含む。
図4Eは、加圧セクション122’からマニホルド144’へ延びる流路142’を示すために、背面パネルを除去した装置10’の背面図を示す。装置10の流路142と同様に、流路142’は、インペラ400’の回転面に略垂直な平面において、加圧セクション122’から延長セクション140を通って上方に延びる。しかしながら、流路142’は、延長セクション140’を通って略直線的かつ垂直に上方に延びるのではなく、延長セクション140’を通ってマニホルド144’へ曲線経路を移動する。再度、流路142’に丸いまたは弧状のコーナー/端部を設けることは、例えば、溶血および血栓症を低減または最小化するのを助けることができる。多くの実施形態において、流路142’は、例えば、丸のまたは円形の断面形状を有し得る。
図4Eおよび
図4Cの比較で分かるように、延長セクション140’の形状因子は延長セクション140の形状因子よりも大きく、その結果、装置10’は、装置10よりもわずかに大きな形状因子を有し、わずかに重い。流路142および142’のような流路の経路または形状は、例えば、公知の工学的原理を用いて、インペラ設計、圧力要件、溶血限界、装置形状因子などのような変数に基づいて、容易に最適化することができる。
【0073】
装置10と同様に、全てのガスおよび流体の入口および出口(総称してポート)は、装置10’の組み立て時に、概ね同じ方向に向けられてもよい。図示された実施形態では、ガス入口260’、ガス出口264’、流体入口130’、および流体出口250’の軸は、概ね平行であり、装置10’の一方の側に配置される。上述のように、全てのガスおよび流体ポートを概ね同じ方向に向けることによって、チューブのこのようなポートへの接続、および取り付けられたチューブを備えた装置10’の装着が容易になる。
【0074】
繊維束300は、例えば、PCT国際公開第WO2014/085620号に記載されている方法に従って製造することができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施態様において、繊維束300は、ガス交換を最大限にするために、層状(例えば互いに5~15度の角度で、かつ主血流方向に対してほぼ垂直に(すなわち
図2Bおよび2Dを参照して、繊維束300の軸Aに対してほぼ垂直に))に積み重ねられた、ほぼ円筒状の束(例えば、上述のようなファイバーアレイ、膜、布)である。本明細書で検討した多くの代表的な実施形態では、繊維束300は、互いに約14度の角度で層状に積層された中空繊維膜のほぼ円筒状の束であった。この点に関し、繊維を丸いシートに切断し、隣接するシートの間で14度の角度となるようにポッティング型内に積み重ねた。中空繊維の端部を半円形ガスマニホルドチャネル(ガス入口マニホルドチャネル262およびガス出口マニホルドチャネル266)内にポットした。ポリウレタン接着剤を、旋盤中で鋳型を回転させることによって発生する遠心力を用いて鋳型に射出した。ポリウレタンは、全ての繊維を結合し繊維束300を形成する。ポッティング接着剤の厚さは、略0.25インチであり、適切な機械的支持を提供するように選択された。
【0075】
中空繊維を軸Aにほぼ垂直(例えば、垂直から5°以内、または垂直から2.5°以内でも)に位置合わせすることは、中空繊維がハウジング/血流の軸にほぼ平行であるシステムと比較して、容積を著しく減少させる(すなわち、コンパクト性を改善する)ことができる。
【0076】
いくつかの実施態様において、繊維束300は、繊維束コンパートメント222の内壁に形成された軸方向に延びるシール部分にシールされて、ほぼ半円形(断面)のマニホルドを形成する。シール部分は、例えば、半径方向内方に延びて、繊維束300と接触し、シール接続を形成することができる。2つのシール部を使用して、ほぼ半円形(すなわち、約180度延びている)のマニホルドを形成することができる。例えば、追加のシール部を使用して、繊維束コンパートメント222の内周の周りに180度未満に延在するマニホルドを形成することができる。
【0077】
繊維束300は、例えば、巻かれて、ポッティング用のアセタール(デルリン)から作られた4ピースの再使用可能な型内に配置されてもよい。ポッティングの間、2液型ポリウレタン接着剤(ニュージャージー州バイヨンのCas Chemから入手可能)が金型に注入される。次いで、モールドを遠心分離して、ボイドが無いよう周囲に均一に分布するようにする。一旦接着剤が硬化すると、ポットされた繊維は除去され、トリムされる。この手順により、すべての繊維間に共通のガス経路が確立される。
【0078】
上述のように、装置10の解析で使用される繊維は、アレイ、布または膜形態で提供された。血栓抵抗性を改善するためのアプローチには、繊維表面を横切るガス輸送に著しい影響を与えることなく、繊維の表面に(例えば共有結合的に)付着した双性イオン分子種の使用が含まれる。炭酸脱水酵素は、例えば、繊維表面上またはその近傍に固定化されて、二酸化炭素の除去を促進することができる。例えば、米国特許第7,763,097号を参照されたい。該開示は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、装置10内の血流経路およびパターンは、例えば、血液適合性を改善するための計算流体力学またはCFDを用いて最適化することができる。装置10の最終的な抗凝固要件は、血液出射装置10から流出する血液が患者の肺を通って流れるので、さらに低減することができ、これは、小塞栓のフィルターとして作用し続け得る。
【0079】
上述のように、血液は、流体流入口または血流入口ポート130を通って装置10に入り、インペラ400によって圧送される。多くの解析された実施形態では、インペラ400は、ハウジング120内に取り付けられ、半径方向インペラ400の中心軸上の延長部材414aおよび414bと整合および協働する2つのピボットベアリング412aおよび412bによって支持された。ベアリング技術において知られているように、延長部材414aおよび414bは、例えば、ベアリング412aおよび412bのベアリングカップに対して回転可能な丸い端部(例えば、ボールおよびソケットジョイントに類似の)を含んでもよい。ベアリングカップは、例えば、超高分子量ポリエチレンから形成することができ、例えば、コネチカット州シェルトンのModern Plastics of Shelton, Connecticutから入手することができる。ピボットベアリング412aおよび412bを使用することにより、シールおよびベアリングの必要性がなくなる。ピボットベアリングは、インペラ400をシステム10内で軸方向および半径方向に整列させて維持する。また、血液が摩擦/発熱成分に接触しないようにするために一部のシステムで使用される二次生理食塩水注入も必要ではない。新鮮な血液が装置10に入り、ピボットベアリングを横切って流れ、その領域を新鮮な流体で洗い流す。
【0080】
例えば、ベアリングを有さない磁気的に吊り下げられたインペラまたは浮上したインペラを使用して、寿命をさらに延ばすことができる。しかしながら、多くの実施形態において、装置10は、肺コンパートメント内のファウリングの結果として、周期的な交換(例えば、1~3ヶ月毎)を必要とし得る。インペラ400の磁気結合の、磁気浮上ではないより単純で複雑でないアプローチが、いくつかの実施形態で選択された。図示された実施形態では、回転インペラ400上の台座460(
図5A~5C参照)に着座した磁石450は、外部モータ駆動装置(
図2Aに概略的に示す)上の回転磁石に磁気的に結合し、密封シールを維持する。システム10は、例えば、1つ以上のバッテリを含む電力モジュール(
図2A参照)によって給電されてもよい。図示の実施形態では、6つの比較的小さな(直径0.75インチ、厚さ0.25インチ)磁石450が、モータ駆動装置とインペラ400との間の磁気結合を維持するための「カップリング磁石」として使用される。1つ以上の磁石を使用して、流体力を安定化することもできる。
【0081】
装置10の動作は、繊維束セクション200を含む装置10について以下でさらに説明される。しかしながら、本明細書の他の繊維束セクションとの動作は、本質的に同じである。動作中、酸素含有「掃引ガス」(例えば、酸素)は、ガス流入口260を介してガス流入口チャネル262に流入し、繊維束300の個々の繊維膜の管腔を通って分配される。二酸化炭素(CO
2)は血液から繊維中に拡散し、掃引ガスによって出口チャネル266に運ばれ、それを通ってガス流出口264に運ばれ、酸素(O
2)は繊維から拡散して流れる血液中(血液の周りを流れ、繊維の向きにほぼ垂直に流れる)の中に入る。上述のように、血液は、次に、血液流出口250を介して装置10から導出される。酸素および二酸化炭素は、繊維の管腔を出てガス出口流路266に入る。例えば、
図3Bに示すように、繊維束300の端部は、繊維束セクションハウジング220の繊維束コンパートメント222の第1の端部と接触し、ガス入口チャネル262およびガス出口チャネル266を形成する。それにより、血液は、ガス入口チャネル262および/またはガス出口チャネル266へ直接流入することが防止される。繊維束300のポッティングは、血液が繊維束300から半径方向にガス入口チャネル262および/またはガス出口チャネル266に流入するのを防止する。
【0082】
本試験で使用した装置10は、完全に最適化されている訳ではない。さらなる最適化は、例えば、CFD、ベンチ試験および/またはインビボ試験を含む多くのツールを用いて行うことができる。1000~1800RPMの間で動作する繊維束セクション200を含む装置10は、流量を1~3リットル/分(またはLPM)から送出することができ、一方で圧力ヘッドを最大280mmHg発生させることができる。700~2100RPMの間で動作する繊維束セクション200aを含む装置10は、流量を0.25~4リットル/分または0.25~4LPM)から送出することができ、一方で圧力ヘッドを410mmHg発生させることができる。これらのダイナミックレンジにより、本明細書の装置10は、アクセスカニューレまたは直接接続グラフトのいずれかを使用して、末梢および/または中心配置モードのいずれかを使用して取り付けられることを可能とする。
【0083】
一般に物質移動が高速環境で増強されるので、繊維束300または300a内の速度は、ガス交換効率を支配する。しかし、比較的速い速度に達すると、十分にコントロールされていない場合には溶血を誘発することがある。装置10では、速度は、本明細書において流れる繊維束の前面/断面領域を指定することによって制御される。この領域は、繊維束の直径によって指定される。上述のように、流れは繊維に対して垂直である。線維束の直径が3インチ(または2.5インチ)未満であれば、効率が向上する可能性がある。3インチの直径を有する略円筒形の束は、7.07in2の前面領域または断面積に相当し、2.5インチの直径は、4.9in2の前面領域または断面積に相当する。多くの実施形態において、直径は2インチ以下(断面積3.14in2)であってもよい。多くの解析において、繊維束300および300aの直径は、それぞれ1.75インチであり、これは、2.41in2の前面領域または断面積に相当し、効率のレベルを増加させる。直径が小さくなるにつれて、繊維の単一の層に収まる繊維の数が少なくなる。従って、ガス交換の所定の速度を達成するために、繊維層の数を増加させ、それにより特定の束の高さを増加させなければならない。上述したように、多くの実施形態では、繊維束の直径は、異なる繊維束セクション間で一定に維持される。繊維束の長さは、その使用のために十分な繊維束の表面積を提供し得るように特定の使用のために決定され得る。本発明の繊維束の直径は、例えば、繊維束を通る血液の所望の平均速度に基づいて選択することができる。繊維束の所定の直径および繊維密度に基づいて、所望の表面積を得るためのシートの数または繊維束の長さが選択され得る。本明細書で使用される平均速度は、装置10を通る流量を繊維束の断面積で除したものとして定義される。
【0084】
本発明の解析で使用されるポリメチルペンテン(PMP)繊維は、外径(ODともいう)が380ミクロンであり、内径(IDともいう)が200ミクロンである。多くの他の材料(例えば、ポリプロピレン、シリコーンなどのポリマー材料)を本明細書の繊維に使用することができる。このような繊維は、広範な材料で被覆および/または機能化することができる。これらの繊維は、アレイ、膜または中空繊維の生地として製造され、複数の繊維は、ほぼ同じ繊維配向を有する、一体化された、略平面アレイとして製造される。繊維束300および本明細書の他の繊維束を形成する際に、シートに切断され、他のシート上に重ねられて複数の層として積層される。繊維束の多孔性は約0.5に維持された。
【0085】
図6Aは、繊維束セクション200および繊維束セクション200aを含む、装置10における血液流速(mL/分)の関数としての体積酸素化速度(mL/分)の解析を示す。予想されるように、繊維束セクション200の繊維束300の総表面積(0.3m
2)が低いと、繊維束セクション200aの繊維束300a(総繊維表面積が0.65m
2)よりも酸素化が低くなる。繊維束セクション200a(成人用に設計された)を有する装置10は、成人用に設計された既存の装置と同等の良好な性能を提供し、一方、繊維束セクション200(小児用に設計された)を有する装置10は、小児用の既存の装置と同等の良好な性能を提供する。
【0086】
図6Bは、
図1Aに示されるような小児用繊維束セクション200を有する本明細書の装置、および市販の制御システム(すなわち、イタリアのSorin Group of Modenaから入手可能なLILLIPUT 2小児用人工肺とカリフォルニア州プレザントンのThoratec Corporation of Pleasantonから入手可能なCENTRIMAG(登録商標)血液ポンプとを有する)について、2.5L/分の流量で正規化された溶血指数またはNIH(g/100L)の形でのイン・ビトロ溶血試験の結果を提供する。
【0087】
溶血試験では、ヘマトクリット(HCT)および血漿遊離ヘモグロビン(pfHb)を測定するために30分毎にサンプルを採取した。血漿を2回の遠心分離スピン(800gで15分、7200gで10分)で全血から分離し、540nmの吸光度を分光光度計(Genesys 10S UV-Vis; Thermo Scientific, Waltham, MAより入手)で測定した。PfHb濃度は、100%溶血対吸光度による連続希釈全血の線形適合から作製した標準曲線を使用して、吸光度から計算した。
【0088】
正規化された溶血指数(NIH)を回路比較のために計算した。
NIH(g/100L)=ΔpfHb/Δt×V×(100-HCT)/100×100/Q
ここで、NIHは、回路を流れる流量100Lあたりの血中に放出されたヘモグロビンのグラムで表した溶血の正規化された指標(g/100L)である。
ΔpfHbは、サンプリング時間間隔にわたるpfHbの増加(g/L)である。
Vは、回路容積である。
HCTは、ヘマトクリット(%)である。
Δtは、サンプリング時間間隔(分)である。
Qは、平均血流量(L/分)である。
【0089】
図6C~
図6Hは、小児用繊維束セクション200および成人用繊維束セクション200aを有する本明細書の装置のさらなるポンピングおよびガス交換の解析を示す。ポンプ試験は、血液と同程度の粘度を有する血液類似体溶液(カルボキシメチルセルロース溶液)を用いて実施した。
図6C~
図6Hのこれらの実験台上の結果は、本発明の装置が、広範な肺治療シナリオにわたって、適切な流速およびガス交換を生成することができることを示す。
図6Cは、18Fr(フレンチ)静脈カニューレ、14Fr動脈カニューレ、および肺高血圧の結果として50mmHgの流出(肺動脈)圧を想定した、小児用繊維束セクション200を有する本明細書の装置の、流量の関数としての圧力の解析を示す。
図6Dは、27Fr(フレンチ)デュアルルーメンカニューレを想定した、成人用繊維束セクション200aを有する本明細書の装置の流量の関数としての圧力の解析を示す。
図6Eは、15.5Fr(フレンチ)デュアルルーメンカニューレを想定した、成人用繊維束セクション200aを有する本明細書の装置の流量の関数としての圧力の解析を示す。
図6C~
図6Eは、本明細書の装置が、様々な用途に使用するために十分な血流速度を生成することができることを示す。例えば、
図6Cは、本明細書の装置10(小児の繊維束セクション200を含む)が、小児の呼吸補助のために典型的に使用されるであろう、流速およびカニューレサイズに必要な圧力を発生することができることを示す。同様に、
図6Dは、本発明の装置10(成人の繊維バンドルセクション200aを含む)が、成人の呼吸サポートに典型的に使用されるであろう、流速およびカニューレサイズに必要な圧力を発生することができることを示す。
図6F~
図6Hは、本明細書の装置が、種々の用途のための目標酸素および二酸化炭素移動速度(移動流量)を達成できることを示す。この点に関し、
図6Fは、小児用繊維束セクション200を有する本明細書の装置の血流量の関数としての酸素移動速度の解析を示す。
図6Gは、成人の繊維束セクション200aを有する本明細書の装置の血流速度の関数としての酸素移動速度の解析を示している。
図6Fおよび6Gのデータも、比較のために
図6Aに示されている。
図6Hは、成人の繊維束セクション200aを有する本装置の血流量の関数としての正規化された二酸化炭素除去速度の解析を示している。
【0090】
本明細書のガス交換(酸素化/CO
2除去)解析に使用される血液/試験液流ループを
図7Aに示し、本明細書の溶血解析に使用される血流ループを
図7Bに示す。イン・ビトロ酸素交換速度は、例えば、
図7Aの実験回路を用いてウシ血液中で測定された。使用前に血液を濾過し(40μmフィルター、Pall Biomedical Inc., Fajardo, PRより入手)、ヘパリン(15IU/mL)およびゲンタマイシン(0.1mg/mL)で処理した。最初に、血液を、デオキシジェネータを通過させた再循環を介して静脈条件(O
2サチュレーション65±5%、pCO
245±5mmHg)に事前調整した。一旦静脈血液条件が達成されると、デオキシジェネータへの掃引ガスを停止し、チューブをクランプし、酸素交換速度測定のための試験装置を通して単一通過血流を生成した。血液温度は、熱交換器を介して実験全体を通して37±1℃に維持された。酸素交換速度は、様々な血流速度とインペラ回転速度で評価した。純酸素を掃引ガスとして使用し、GRシリーズマスフローコントローラ(テキサス州ジョージタウンのFathom Technologiesより入手)を用いて制御した。血液サンプルを試験装置の入口および出口で採取し、コオキシメトリー付きRAPIDPoint405血液ガス分析器(ニューヨーク州ターリタウンのSiemens Healthcare Diagnostics Inc.,より入手)を用いて分析した。酸素交換速度は、入口および出口の酸素分圧と飽和度から次に示す式を用いて計算した。
【0091】
VO2=Q[αO2(PO2
OUT-PO2
IN)+10CtHgb(SO2
OUT-SO2
IN)]
ここで、VO2は酸素交換速度(mL/min)であり、Qは血流速度(L/min)であり、αO2は血液中の酸素の溶解度[3E-2mL O2/(L blood・mmHg)]であり、PO2
OUT-PO2
INは装置入口出口間の酸素分圧差(mmHg)であり、Ctはヘモグロビン結合能(1.34mL O2/g)であり、Hgbはヘモグロビン濃度(g/dL)であり、SO2
OUT-SO2
INは装置入口出口間の酸素飽和分率の差である。
【0092】
血液損傷は、牛血液を用いて様々な流速で評価した。使用前に血液を濾過し(40μmフィルター、Pall Biomedical Inc., Fajardo, PRより入手)、ヘパリン(15IU/mL)およびゲンタマイシン(0.1mg/mL)で処理した。評価は、意図した用途のカニューレを介して800mLの適合血液リザーバに接続された試験装置から成る連続流回路(以下に示す概略図)を用いて実施した。血液温度を37±1℃に維持するために、試験中、適合リザーバを加熱した水浴中に浸漬した。評価した各操作条件について、血液(ヘマトクリット=30%)を6時間循環させ、その間、血液サンプルを30分毎に採取した。血漿を2回の遠心分離スピン(800gで15分、7200gで10分)で全血から分離し、540nmの吸光度を分光光度計(Genesys 10S UV-Vis;マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Scientificより入手)で測定した。PfHb濃度は、100%溶血対吸光度の連続希釈全血の線形フィットから作製した標準曲線を用いて、吸光度から計算した。
【0093】
多くの装置とは異なり、本明細書の装置10は、比較的高流速の呼吸補助/酸素供給、および比較的低流速の二酸化炭素除去の両方に使用することができる。線維束セクション200による小児の呼吸補助の場合、血流速度は、例えば、約1~約2.5L/分の範囲であり得る。18~22Fr(フレンチ)静脈カニューレまたは12~16Fr動脈カニューレを使用してもよい。繊維束セクション200aを備えた成人の呼吸補助の場合、血流速度は、例えば、約1~約3.5L/分の範囲であり得る。27Frデュアルルーメンカニューレを使用してもよい。低流量二酸化炭素除去または繊維束セクション200aを有するECCO2Rの場合、流量は、例えば、1L/分未満であってもよい。さらに、15.5Frのデュアルルーメンカニューレを使用してもよい。臨床医は、例えば、患者にカニューレとECCO2Rの流量を開始し、後に更なる介入(酸素化)が必要であることを発見してもよい。酸素化および二酸化炭素除去を含む完全な呼吸補助は、例えば、カニューレを大型のカニューレに変更し流速を増加させることにより、異なる装置を使用する必要がなくまたは装置の繊維束セクションを変更する必要もなく、開始され得る。したがって、本明細書のデバイスは、二酸化炭素の除去を提供する低流量の範囲から、二酸化炭素を除去しつつ酸素化を提供する高流量までの範囲にわたり、繊維束セクションのベースセクション(ポンピング機構を含む)を変更することを要さず、それにより、異なる患者間での使用、ならびに特定の患者に対する治療方針の変更を提供する。
【0094】
前述の説明および添付の図面は、現時点でいくつかの代表的な実施形態を記載している。当然のことながら、種々の修正、追加、および代替の設計は、前述の説明ではなく、以下の特許請求の範囲によって示される本明細書の範囲から逸脱することなく、前述の教示に照らして当業者に明らかになるであろう。クレームの同等性の意味および範囲内にあるすべての変更および変形は、それらの範囲内に包含されるものとする。