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特許7350754リチウム・スラグからバリューを抽出するプロセス
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  • 特許-リチウム・スラグからバリューを抽出するプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】リチウム・スラグからバリューを抽出するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/04 20060101AFI20230919BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20230919BHJP
   C01B 33/193 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C22B7/04
C22B21/00
C01B33/193
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020541965
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 AU2018051321
(87)【国際公開番号】W WO2019148233
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2018900329
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2018901028
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2018903103
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520280612
【氏名又は名称】ティエンチー リチウム クウィンアーナ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マリー,スザンヌ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ギージ,ミレラ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘーゼル
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ヤフェン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03112170(US,A)
【文献】米国特許第03131022(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0273070(US,A1)
【文献】特表2016-504251(JP,A)
【文献】特表2009-519829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを遊離するステップの後に、リチウム・スラグからバリューを抽出するためのプロセスであって、
(a)選択された温度及び選択された持続時間において、アルカリ化合物(AC)の水溶液を用いて前記リチウム・スラグを熱水処理するステップaであって、前記熱水処理により、アルミナ及びケイ酸塩としてのシリカの両方の少量を可溶化し、前記アルミナよりも高い比率で前記シリカが可溶化する、ステップaと、
(b)カチオンを含む不純物を含有する固体残渣を、前記アルカリ化合物の水溶液から分離するための、固体/液体の分離を実行するステップbであって、前記水溶液は溶解したケイ酸塩を含有する、ステップbと、
(c)イオン交換化合物の水溶液を、前記分離した固体残渣と接触させることで、前記ステップaの実行中において前記アルカリ化合物の前記水溶液により導入されたカチオンを除去することにより、前記分離た固体残渣上におけるイオン交換を実行するステップcと、
(d)イオン交換された固体残渣を、前記イオン交換化合物の前記水溶液から分離するステップdと、
(e)前記分離されたイオン交換された固体残渣を処理することにより、高純度のアルミナを回収するステップeと、
を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記アルカリ化合物は、苛性ソーダ、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムを含むナトリウム又はカリウムの強アルカリ化合物からなる群から選択された強アルカリ化合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルカリ化合物に対する前記リチウム・スラグの重量比は、1:0.1~1:2の範囲内である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記選択された温度は、60℃より高いことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記選択された温度は、90℃より高いことを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルカリ化合物の水溶液中の前記リチウム・スラグの固体密度は、10%~50%の範囲内である、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記可溶化されたケイ酸塩は、沈殿ステップにおいて沈殿し、前記沈殿ステップは、前記ステップaの前記選択されたアルカリ化合物の再生成を可能にし、かつ前記選択されたアルカリ化合物は、前記ステップaにおいてリサイクルされることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記分離されたイオン交換された固体残渣は、酸浸出ステップにかけられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸浸出ステップは、酸浸出液及び酸浸出された残渣内に塩化アルミニウム6水和物を形成するために塩酸を用いる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記イオン交換を実行するステップcは、アンモニウム化合物の水溶液を前記分離した固体残渣に接触させることによって行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アンモニウム化合物は、水酸化アンモニウム及び炭酸アンモニウムから成る群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記分離されたイオン交換された残渣は、全ての湿気が除去され、かつイオン交換中に形成される少なくとも一部のアンモニアが除去されるのに有効な条件下において焙焼され、それによって、前記酸浸出ステップ中に、シリカゲル形成のより低い傾向をもたらすことを特徴とする、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記酸浸出された残渣に由来する反応性シリカは、アルカリ浸出によって再溶融されて溶液を形成し、かつ前記反応性シリカは、前記溶液のpHを下げることによって、前記溶液から沈澱する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項14】
三塩化アルミニウム6水和物が、塩化水素ガスにより前記酸浸出液から沈澱される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項15】
三塩化アルミニウム6水和物は、700℃~1600℃の温度での、さらなるか焼ステップを介してアルミナまたは高純度アルミナ(HPA)に変換される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップ(a)の前に、前記リチウム・スラグは、前記熱水処理のステップaを最適化するために、不純物を除去するための酸を用いる洗浄、磁気分離、および粒子径調整からなる群から選択された少なくとも1つのプロセスで選鉱される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
粒子径は、100ミクロン未満、好ましくは75ミクロン未満、最も好ましくは50ミクロン未満になるように調整される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記リチウムはスポジュメンの硫酸浸出により遊離される、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム・スラグからバリュー、たとえば高純度アルミナおよびシリカを抽出するプロセスに関する。リチウム・スラグは、スポジュメン、レピドライト、葉長石、ぺグマタイト、または他のリチウム含有アルミノケイ酸塩を含むがこれに限定されないリチウム含有アルミノケイ酸塩鉱物の精練からの産業廃棄物である。
【背景技術】
【0002】
アルミノケイ酸塩からアルミナおよびアルミナから誘導された化合物を作るプロセスは、たとえば、第1ステップが酸浸出の前のエネルギ的に高価なか焼ステップである、カオリンの処理を含む。これが、採鉱コストおよび摩損コストに加わる。水酸化アルミニウムがバイヤー法を介して作られる別のプロセスでは、150から200 o Cの温度が使用され、採鉱コストおよび摩損コストに加えてかなりの加熱コストが生じる。バイヤー法の周知の環境ジレンマは、膨大な量の苛性「赤泥」の生成である。
【0003】
対照的に、上で説明したリチウム・スラグは、現在、セメント産業および建設業での低バリュー添加剤としての使用のみに適する、硬岩リチウム精練産業の低バリュー副産物である。リチウム・スラグは、採鉱コスト、摩損コスト、およびか焼コストをリチウム精練プロセスですでに考慮に入れられて精練所から配送されるものとして使用され得る副産物である。
【0004】
しかし、アルミナおよびシリカの源としてのリチウム・スラグは、まだ成功裡に活用されていない。従来の酸浸出技法および実際に他の技法は、不成功であったと思われる。米国特許第3007770号および米国特許第3112170号に、リチウムを抽出するためのβスポジュメンのアルカリ処理が記載されている。形成されるゼオライト材料は、副産物と考えられる。米国特許第3112170号では、アルミナの源としてではなく、リチウムを抽出するために炭酸アンモニウムを用いるイオン交換が実行される。
【0005】
本発明の目的は、リチウム・スラグから、望ましくは高純度のアルミナおよびシリカなどのバリューを抽出するプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的に鑑みて、本発明は、
(a)選択された温度および持続時間でアルカリ化合物の水溶液を用いてリチウム・スラグを熱水処理することと、
(b)アルカリ処理されたリチウム・スラグにイオン交換ステップを実行することと、
(c)アルミニウム化合物、シリコン化合物、ならびにシリコンおよびアルミニウムを含む化合物からなる群から選択されたバリューを回復することと
を含む、リチウム・スラグからバリューを摘出するプロセスを提供する。
【0007】
望ましくは、アルカリ化合物(AC)の水溶液は、強アルカリであり、望ましくは、苛性ソーダ、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムを含むナトリウムまたはカリウムの強アルカリ化合物である。ACに対するリチウム・スラグ重量比は、バリュー化合物へのリチウム・スラグの変換を最適化するために、好ましくは約1:0.1から約1:2の範囲内である。
【0008】
アルカリ熱水処理から得られるアルミニウムおよびシリコン(アルミノケイ酸塩)化合物の性質は、温度依存ならびにアルカリ濃度依存である。アルカリ処理されたリチウム・スラグは、望ましくは、約90 o C以上の温度および10%超、好ましくは20%超、オプションで約50%までの固体密度で、許容可能な収率で入手されると期待されるイオン交換特性を示す、1つまたは複数の化合物(たとえば、A型、X型、またはP型のゼオライト)を含む。60 o Cもの低さのより低い温度も十分である可能性があるが、熱水処理または滞留時間がより長くなる可能性が高い。このプロセスは、所望のアルミニウム抽出レベル、たとえば85%以上の抽出を与えることができるが、要求される抽出は、プロセス経済性によって規定され、したがって、より低い抽出レベルが許容可能である場合がある。
【0009】
熱水処理は、通常、少量のアルミナおよびより大きい比率のシリカを可溶化する。シリカは、上で説明した熱水処理に使用されるアルカリ化合物に依存する性質のケイ酸塩化合物に可溶化する。苛性ソーダが使用される場合には、ケイ酸ナトリウムが可溶化される。水酸化カリウムが使用される場合には、ケイ酸カリウムが可溶化される。溶解したケイ酸塩は、石灰などの適切な沈澱剤を使用する沈澱ステップで沈澱され得る。やはり、沈澱ステップ温度および沈澱ステップ持続時間は、沈澱ステップを最適化するように選択される。しかし、加熱が不要である場合があり、ステップを、室温を含む温度で行える場合がある。望ましくは、沈澱ステップは、熱水ステップのために選択されたアルカリ化合物の再生成を可能にし、選択されたアルカリ化合物は、熱水処理ステップにリサイクルされ得る。
【0010】
固体/液体分離ステップが、単一ステージまたは複数ステージのいずれで行われるにせよ、アルカリ化合物を用いる通常は熱水処理に続く。複数ステージ・プロセスを、P型ゼオライトを作るのに使用することができる。そのような複数ステージ・プロセスは、2つのステージを含むことができ、ここで、第1のステージ(熟成ステージと呼ばれる場合がある)は、第1の温度で行われ、第2の熱水処理ステージは、第1の温度より高い第2の温度で行われる。第2のステージの滞留時間も、第1のステージの滞留時間より長くてもよい。これは、生成物ゼオライト品質を改善する可能性がある。しかし、生成物品質に関して同様の結果を伴う、好都合に第2の温度以上の温度での、第1の熟成ステップを伴わない単一ステージ熱水処理も、可能である。どの場合でも、その後、有利なことに、分離された固体残渣を、望ましくは塩化アルミニウム6水和物を形成するために塩酸を使用する、酸浸出ステップにかけることができる。
【0011】
このプロセスは、高純度アルミナおよびP型ゼオライトなどの目標バリュー生成物または高バリュー目標生成物の品質に影響する可能性がある、導入されたナトリウムもしくはカリウムまたはすでに鉱物マトリックス内にあるすべてのカチオンを除去するために、アルカリ処理の後のイオン交換ステップを含む。これは、イオン交換ステップが実行されない場合より高い純度およびバリューの生成物の回収を可能にする。イオン交換ステップは、好都合に、アンモニア化合物、たとえば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、または炭酸アンモニウムなどの適切な化合物の水溶液をアルカリ処理されたリチウム・スラグ残渣に接触させることによって行われる。
【0012】
代替案では、アルカリ液体を使用して、次のステップで説明する酸抽出残渣から反応性シリカを再溶解させることができる。再溶解は、温和な条件、たとえば90 o Cおよび約1時間の反応時間を使用して、反応性シリカだけを含むことができる。これは、いくつかのリチウム・スラグ品質でのシリカの約60~80重量%を考慮に入れなければならない。残りのシリカは、主に、シリカ可溶化に高温、たとえば180 o Cと高められた圧力とを必要とする石英である。任意の適切な酸、たとえば硫酸またはCOを適切な温度、たとえば室温で使用することによって、シリカを、pHを下げることによって沈澱させ、その後、分離の後に洗浄することができる。
【0013】
アルカリ処理から直接のまたはイオン交換ステップを介する残渣を、有用な中間体を形成するために酸浸出ステップにかけることができる。塩酸が選択される場合に、塩化アルミニウム6水和物が、アルカリ処理されたリチウム・スラグまたはイオン交換された残渣のいずれかから浸出される。三塩化アルミニウム6水和物が、有用な中間体である。このステップは、シリカも固相に凝集させる。シリカの枯渇した浸出液は、濾過または適切な分離方法、たとえば加圧濾過によって固体残渣から分離される。
【0014】
シリカに富んだイオン交換固体残渣のアルカリ浸出は、シリカ・ゲルの形成をもたらす傾向がある場合があり、このシリカ・ゲルは、その後の固液分離を妨げる可能性があるので、イオン交換残渣は、望ましくは、酸浸出の前にさらなるステップで処理される。都合の良いことには、イオン交換残渣は、すべての湿気およびイオン交換に使用される場合にアンモニアの一部またはすべてを除去するのに有効な条件の下で焙焼される。上で説明したようにアンモニア化合物の溶液がイオン交換に使用される場合に、焙焼ステップは、後続の酸浸出ステップでのアンモニアおよび湿気の遊離と、シリカ・ゲル形成のより低い傾向とを引き起こす。遊離されたアンモニアは、たとえばこれを塩酸に接触させることによって、イオン交換ステップでの使用に関して塩化アンモニウムとして再生成され得る。
【0015】
その後、酸浸出からのシリカに富んだ残渣は、たとえば再生成ステップからのアルカリ液体を使用するアルカリ浸出を介して残渣を溶解することと、その後、反応性シリカを沈澱させるために沈澱剤を用いてケイ酸塩を含む浸出液を処理することとによって、>97%純度、オプションで>99%純度の沈澱したシリカに変換され得る。
【0016】
バリュー・アルミニウムを含む生成物を、酸浸出液から作ることもできる。第1の例は、たとえば塩化水素ガスなどの酸性ガスを使用して酸浸出液から沈澱され得る三塩化アルミニウム6水和物(Al(H0)Cl)である。反応の発熱性に起因して、沈澱を最適化するために冷却が必要になる場合がある。さらに、いくつかの情況で、再溶解および再沈澱を含む精製ステップが行われる必要がある場合がある。
【0017】
Al(H0)Clは、約700 o Cと1600 o Cとの間の温度で有利に行われるさらなるか焼ステップを介して、アルミナまたはおそらくは高純度アルミナ(HPA)に変換され得る。
【0018】
熱水処理ステップの前に、鉄などの不純物の一部を除去するために、リチウム・スラグを、適切な酸で洗浄することができる。リチウム・スラグを、他の鉱物処理方法を介して選鉱することもできる。たとえば、磁性粒子を、磁気分離の任意の手段を介して除去することができ、あるいは、粒子径を調整して、ふるい分け、ミリング、または重量分離などの手段を介して熱水処理ステップを最適化することができる。100ミクロン未満、より好ましくは75ミクロン未満、最も好ましくは50ミクロン未満の粒子径を使用することが好ましいが、より大きい粒子サイズを選択することができ、ただし、熱水処理ステージおよびおそらくはさらなる処理ステージでのより長い反応時間および十分な攪拌を必要とすると予想される。
【0019】
このプロセスは、現在の低バリュー副産物であるリチウム・スラグを、試薬を再生成でき、リサイクルでき、産業廃棄物を最小化できるコスト効率の良い形で高純度のアルミニウムおよびシリコンを含む化合物の生成に使用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】プロセスの流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
リチウム・スラグからバリューを抽出するプロセスは、プロセスの流れ図を示す図面を参照して行われる以下の好ましいが非限定的な実施形態の説明から、より十分に理解される。
【0022】
たとえばスポジュメン鉱石残渣の形のリチウム・スラグは、たとえば鉱石から実質的にすべてのリチウムを遊離するスポジュメン浸出ステップの後に、リチウム精練からの廃棄副産物として入手される。スポジュメン浸出ステップは、硫酸浸出を用いる場合がある。リチウム・スラグ(たとえば68%SiOおよび26%Alを含む場合がある)は、まず、ステップ1に従って選鉱される。リチウムの粒子サイズは、ミリングおよび/または他の分類技法などの方法を介して、100ミクロン未満、望ましくは50ミクロン未満の平均粒子サイズに調整される。磁性粒子は、任意の磁気分離技法を介して除去される。
【0023】
50ミクロン未満(たとえば38ミクロン未満)の粒子サイズのリチウム・スラグ粒子が、ステップ2で、攪拌されたタンク型反応器内の水性苛性アルカリ(AC)溶液内で、約30%の固体密度で懸濁される。スラリのACに対するリチウム・スラグ重量比は、リチウム・スラグからバリュー・シリコンおよびアルミナ化合物への変換を最適化するために、約1:0.1から約1:2(3.75M NaOHで)の範囲、すなわち強アルカリ性に維持される。より低いAC比またはアルカリ濃度では、十分なアルミニウム抽出のためにより長い反応時間が必要になる可能性がある。
【0024】
熱水処理ステップから入手されるアルミニウム化合物およびシリコン化合物の性質は、温度およびアルカリ液の濃度に依存する。アルカリ処理されたリチウム・スラグ残渣は、約90 o C以上の温度および約12時間の持続時間で許容可能な収率で入手されると期待されるイオン交換特性を望ましく示す1つまたは複数の化合物(たとえばA型、X型、またはP型のゼオライト)などを含むが、目標バリュー化合物が入手されると仮定して、持続時間がクリティカルではないことを理解されたい。このプロセスは、上で説明したように、所望のアルミニウム抽出レベル、たとえば85%以上の抽出に最適化される。
【0025】
オプションで、熱水処理が、2ステージで、タンク型交換機内で行われる。第1の熟成ステップは、1時間にわたって50℃で行われる。第2の熱水処理ステージは、約7から10時間にわたって90℃の加熱を用いて行われる。たとえば90~95℃での単一の熱水処理ステージも、生成物品質に関する期待される同等の結果を有する代替物として使用され得る。
【0026】
苛性が、熱水処理に選択されたアルカリ化合物であることを考慮すると、熱水処理は、少量のアルミナを可溶化するが、シリカは、ケイ酸ナトリウムとして、より大量に可溶化される。
【0027】
リチウム・スラグのアルカリ処理と固液分離ステップ3の後に、このプロセスは、目標バリュー生成物の品質に影響する可能性がある、導入されたナトリウムもしくはカリウムまたはすでに鉱物マトリックス内にあるすべてのカチオンを除去するために、イオン交換ステップ4を含む。イオン交換ステップ4は、アンモニア化合物、たとえば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、または炭酸アンモニウムなどの適切な化合物の水溶液を、たとえば2Mの濃度のアルカリ処理されたリチウム・スラグ残渣と、アルカリ処理されたリチウム・スラグ残渣と接触させることによって行われる。アルカリ処理されたリチウム・スラグ残渣は、濾過またはシックニングなどの固体/液体分離ステップ3によってイオン交換から回収される。
【0028】
もう一度イオン交換ステップ4を参照すると、イオン交換ステップは、十分なイオン交換および不純物除去を可能にする体積での30~60分の持続時間を有するものとすることができる。濃度および固体密度は、変化し得る。より低い濃度が使用される場合に、イオン交換プロセスは、イオン交換平衡を補償するために繰り返される必要がある場合がある。高濃度が使用される場合には、イオン交換ステップを、1回だけまたは単一のステップとして実行できる可能性がある。イオン交換ステップ4は、室温よりわずかに高い温度、たとえば40または50 o Cで行うことができる。残渣が、向流の形で塩化アンモニウムを用いて洗浄されるプロセスが、イオン交換ステップ4をさらに最適化することができる。
【0029】
固体のイオン交換された残渣を加熱して、アンモニアの一部ならびに吸着された水を除去する。加熱プロセス中に、ゼオライトは、アンモニア放出に関する可能性が高い(それだけに起因するとは限らない)構造的変化を受ける可能性がある。さらに、イオン交換された残渣内の残存アンモニアおよび内部水分は、下で説明する後続の酸浸出処理中のシリカ・ゲル形成および結果の固液分離の困難に関連する可能性があるので、固体のイオン交換された残渣は、過剰なアンモニアおよび内部水分を除去するために焙焼されることが望ましい。そのような過剰なアンモニアを、塩酸との接触によってたとえば塩化アンモニウムとしてリサイクルし、イオン交換ステップ4で再利用することもできる。リサイクルおよび廃棄物の最小化に焦点を合わせることは、イオン交換ステップ、後続の酸浸出ステップ8、およびプロセス全体のコスト利益および環境利益をもたらす。
【0030】
イオン交換残渣は、分離され、1時間にわたってたとえば350 o Cまで加熱され得るが、温度は、より低く、たとえば250 o Cとすることができるが、おそらくは8時間にわたる。ゼオライトの構造の硬化が発生し、より長い焙焼時間が、アルミナ抽出効率の低下につながり、より短い時間が、同一の酸浸出条件の下でのシリカ・ゲル形成につながる結果を生じる。
【0031】
イオン交換された残渣は、その後、酸浸出ステップ5にかけられ、ここで、イオン交換された残渣は、有用な中間体すなわち三塩化アルミニウム6水和物を作る目的で、塩酸内で再スラリ化される。プロセス条件は、たとえば、ゲル生成がどれほどよく制御されるのかに応じて、室温で25重量%のHClおよび10%~25%の固体密度での1時間の反応持続時間を含む。より高い固体密度が、ゲル形成が制限される場合に達成可能である。やはり、攪拌タンク型反応器(1つまたは複数)が使用される。より高いHCl濃度では、Al(H0)Clの可溶性が低下する。より低いHCl濃度では、抽出が成功する可能性があるが、塩化アルミニウム6水和物を沈澱させるためにAl(H0)Cl溶液を飽和させるのに、大量のHClが必要になる。抽出は、より低い温度、たとえば室温でも行われ得る。
【0032】
酸浸出ステップ5は、Al(H0)Clを形成するための反応の化学量をわずかに超える塩酸のみを必要とする。すなわち、残渣内のアルミニウムの1モル等量ごとに3モル等量をわずかに超えるHClである。酸浸出液は、濾過または、さらなる処理ステップを受ける固体成分および液体成分の両方の遠心分離によって、シリカに富む酸浸出された残渣から分離される。
【0033】
固液分離ステップ6で分離されたシリカに富む酸浸出された残渣は、反応性シリカを沈澱させるために処理され、生成され得るケイ酸ナトリウム溶液にシリカを可溶化するために、アルカリ浸出ステップ8にかけられる。アルカリ熱水処理ステージ2からのアルカリ液体が、酸抽出残渣から反応性シリカを再溶解するのに使用され得る。再溶解は、温和な条件、たとえば90 o Cおよび約1時間の反応時間を使用して反応性シリカだけを含むことができる。これは、一部のリチウム・スラグh品質でのシリカの約60~80重量%を考慮に入れなければならない。残りのシリカは、主に、シリカ可溶化により高い温度、たとえば180 o Cおよび高められた圧力を必要とする石英である。
【0034】
その後、ケイ酸ナトリウム溶液を酸性化することができ、酸、たとえば硫酸もしくは塩酸またはCOを室温または任意の他の適切な条件の下で使用してシリカ生成ステップ9で既知のプロセスを介してシリカを沈澱させることができる。その後、シリカは、たとえばナトリウムまたはカリウムなどの不純物の溶解を促進するためにスラリのpHをより低い値に調整することによって、洗浄されまたは要求される純度に他の形で精製され得る。不溶物は、沈澱されたシリカを形成するために少なくとも10未満またはpH 2もの低さまでpHを下げるためにHClまたはHSOなどの酸を用いる酸性化の前に、ケイ酸塩溶液から除去されなければならない。
【0035】
酸浸出ステップ5からの酸浸出液からAl(H0)Clを沈澱させるために、浸出液は、沈澱ステージ7で、既知の方法を介してHClガスによって飽和され、混合物は、反応の発熱性に起因する沈澱の最良条件を提供するために冷たく保たれる。Al(H0)Clの純度は、所望の純度に達するまでの水または薄いHClによる再溶解とHClガスによる再沈澱とによって改善され得る。望ましいと証明される場合に、36%HClによる生成物の洗浄を含めることができる。
【0036】
このプロセスは、以前には低バリューであったリチウム・スラグの処理を可能にすることと、高純度アルミナ、高純度シリカ、およびアルミニウム、シリコン、またはその両方を含むある範囲の他の化合物を作る供給原料としてリチウム・スラグを使用することとによって、リチウム抽出作業の収益性を高める高い潜在能力を有する。それと同時に、コストを最小化し、実質的に廃棄物を除去するために試薬をリサイクルすることによって、商業的利益を達成することができる。
【0037】
リチウム・スラグからバリューを抽出するプロセスに対する修正および変更は、本開示の技量を有する読者には明白である。そのような修正および変更は、本発明の範囲に含まれると考えられる。
図1