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特許7350766チーグラー・ナッタ触媒の失活および中和
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒の失活および中和
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/08 20060101AFI20230919BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C08F6/08
C08F10/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020551423
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019023809
(87)【国際公開番号】W WO2019190949
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】62/649,205
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アウヨン、エヴェリン
(72)【発明者】
【氏名】エーワルト、ショーン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ、ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィディアン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンスペイブロエック、ロニー
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-126409(JP,A)
【文献】特開昭58-019308(JP,A)
【文献】特開昭60-004509(JP,A)
【文献】特開昭59-174603(JP,A)
【文献】特開昭51-111282(JP,A)
【文献】特開昭57-121004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00- 6/28
C08F 10/00- 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系ポリマーを生成するための溶液重合プロセスであって、
エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒を、溶液重合反応器に導入することと、
前記エチレンモノマーおよび前記炭化水素溶媒を、前記溶液重合反応器内で、前記チーグラー・ナッタ触媒を使用して溶液重合することによって、前記エチレン系ポリマーを生成することと、
触媒失活剤を前記溶液重合反応器に導入し、それによって副生成物として塩酸が生成されることと、を含み、
前記触媒失活剤が、前記チーグラー・ナッタ触媒の有効性を低減させ、塩化カルシウム以外の塩化物塩を形成することによって、前記塩酸を中和
前記チーグラー・ナッタ触媒が、MgCl 担持遷移金属触媒からなる群から選択され、前記MgCl 担持遷移金属触媒中の遷移金属が、Ti、Zr、V、およびHfからなる群から選択され、
前記触媒失活剤が、式:M[RCOO]xを有し、式中、Mは、ナトリウム、亜鉛、およびマグネシウムからなる群から選択され、[RCOO]は12~22個の炭素原子を含む長鎖カルボキシレートであり、xは、1または2であり、
前記触媒失活剤が、前記チーグラー・ナッタ触媒の失活中に形成される遊離塩化物イオンの量に対して、0.2モル当量以上~8.0モル当量未満の量で、前記溶液重合反応器に添加され、そして、
前記溶液重合反応器内の温度が160℃以上~220℃以下である場合、前記触媒失活剤が前記溶液重合反応器の出口に添加される、
プロセス。
【請求項2】
追加のオレフィンコモノマーが、前記エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒のうちの少なくとも1種と共に、前記溶液重合反応器に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加のオレフィンコモノマーが、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ペンテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素溶媒が、C~C12オレフィン、C~C12パラフィン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
助触媒が、前記エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒のうちの少なくとも1種と共に、前記溶液重合反応器に導入される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒失活剤が、前記溶液重合反応器の出口付近で、前記溶液重合反応器に導入される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記式M[RCOO]x中のRはステアリル(C1735)およびオレイル(C1733からなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月28日に出願された米国仮特許出願第62/649,205号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、チーグラー・ナッタ触媒の失活および中和に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、エチレン系ポリマーを生成するための溶液重合プロセスにおけるチーグラー・ナッタ触媒の失活および中和に関する。
【背景技術】
【0003】
エチレン系ポリマーは、最も一般的なプラスチックのうちの1種であり、ポリマーの構造に応じて様々な様式、例えば、袋/ライナー、キャップ/クロージャ、衛生フィルム、工業用射出成形などで使用され得る。毎年約8000万トンのエチレン系ポリマーが生成されていると推定されている。需要に応え、エチレン系ポリマーを効率的に生成するために、エチレン系ポリマーを形成するための新しいプロセスおよびシステムが望まれている。
【0004】
チーグラー・ナッタ触媒は、エチレン系ポリマーを形成するために使用されてきた。反応の終わりに、制御された反応器環境の外側での重合の継続を防止するために、触媒を失活させる必要がある。したがって、触媒キル成分が反応に添加されて、重合を停止し、触媒失活から形成される塩酸を中和し得る。しかしながら、触媒キル成分を使用することによって、重合反応システム内で他の問題が引き起こされ得る。したがって、チーグラー・ナッタ触媒を利用するプロセスを含む、エチレン系ポリマーの改善された生成プロセスが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、エチレン系ポリマーを生成するための溶液重合プロセスは、エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒を、溶液重合反応器の入口に導入することと、エチレンモノマーおよび炭化水素溶媒を、溶液重合反応器内で、チーグラー・ナッタ触媒を使用して溶液重合することによって、エチレン系ポリマーを生成することと、触媒失活剤を溶液重合反応器に導入し、それによって塩酸副生成物が生成されることと、を含む。触媒失活剤は、長鎖カルボキシレートと、カルシウムを除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択される少なくとも1種のカチオンと、を含む。触媒失活剤は、チーグラー・ナッタ触媒の有効性を低減させ、塩化カルシウム以外の塩化物塩を形成することによって、塩酸を中和する。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、カチオンは、カルシウムを除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、追加のオレフィンコモノマーおよび助触媒のうちの少なくとも1種が、エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒と共に、溶液重合反応器の入口に導入される。
【0008】
1つ以上の実施形態によれば、触媒失活剤は、溶液重合反応器の出口付近で、溶液重合反応器に導入される。
【0009】
追加の特徴および有益性が、後に続く発明を実施するための形態において記載され、その説明から当業者にとって容易に部分的に明らかになるか、または後に続く発明を実施するための形態、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって部分的に認識されるであろう。
【0010】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特性を理解するための概要または枠組みの提供が意図されていることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、かつ本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原則および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特定の実施形態の以下の発明を実施するための形態は、これと共に添付される図面と併せて読むと理解され得る。
【0012】
図1】本明細書に開示および記載される1つ以上の実施形態による溶液重合反応器の概略図である。
図2A】ステアリン酸カルシウムを使用する方法によって提供される触媒失活のグラフである。
図2B】ステアリン酸カルシウムを使用する方法によって提供される触媒失活のグラフである。
図2C】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって提供される発熱抑制のグラフである。
図2C】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって提供される発熱抑制のグラフである。
図2D】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって提供される発熱抑制のグラフである。
図2E】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって提供される発熱抑制のグラフである。
図2F】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって提供される発熱抑制のグラフである。
図3】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によるHCl中和のグラフである。
図4A】触媒失活剤を用いず、触媒失活剤としてステアリン酸カルシウムを用いた方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
図4B】触媒失活剤を用いず、触媒失活剤としてステアリン酸カルシウムを用いた方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
図4C】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
図4D】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
図4E】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
図4F】本明細書に開示および記載される実施形態による方法によって形成された沈殿物を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「ポリマー」という用語は、同じまたは異なる種類に関わらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、ならびに2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0014】
「エチレン系ポリマー」とは、50重量%超のエチレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味する。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導される単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のエチレン系ポリマーの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(Ultra Low Density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(Very Low Density)ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度樹脂と実質的に直鎖状の低密度樹脂との両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」とは、溶液重合を実施する容器であり、エチレンモノマーが、任意選択でコモノマーと、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解された後に、重合または共重合する。熱は、溶液重合反応器に、典型的には熱交換器に結合された後に、除去または追加され得る。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、全ての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0016】
エチレン系ポリマーを生成するための従来のプロセスは、エチレンモノマーおよび任意選択で他のコモノマーの重合を促進するために、1種以上のチーグラー・ナッタ触媒を使用する溶液重合を含む。触媒を効率的にクエンチするために、本明細書に開示されるプロセスは、重合反応器の出口付近で、チーグラー・ナッタ触媒の有効性を無効にし、それによって重合の程度を制御する、触媒失活剤を導入することを含む。
【0017】
一般に、ステアリン酸カルシウム(C3670CaO)は、チーグラー・ナッタ触媒失活剤として、エチレン系ポリマー生成のための溶液プロセスで使用されてきた。重合反応器に導入される場合、チーグラー・ナッタ触媒を失活させるが、塩酸(HCl)を形成する加水分解反応が起こる。しかしながら、ステアリン酸カルシウムはまた、加水分解反応から生成したHClとも反応し(すなわち中和し)、塩化カルシウム(CaCl)およびステアリン酸を形成する。残念ながら、この中和から形成されたCaCl副生成物は、下流の装置の壁に堆積することによって、例えばポスト反応器加熱器などの下流の装置の汚損をもたらし得る。したがって、本開示の実施形態は、チーグラー・ナッタ触媒を失活させ得、加水分解から形成された任意のHClを中和し得、かつCaCl副生成物を形成し得ない化合物の使用を説明する。
【0018】
前述の態様を達成する触媒失活剤を使用する実施形態による溶液重合プロセスは、本明細書で以下に説明される。図1を参照すると、実施形態による溶液重合反応器100は、入口110、出口120、および触媒失活剤を溶液重合反応器100に導入するための流路130を備える。実施形態で使用される溶液重合反応器の種類は、特に限定されず、従来の溶液重合反応器が使用され得る。
【0019】
エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒は、溶液重合反応器100の入口110で導入される。いくつかの実施形態では、追加のオレフィンコモノマーが、溶液重合反応器100の入口110で導入される。また、1つ以上の実施形態では、例えば、アルキルアルミニウムなどの触媒活性剤が、重合反応100に導入される。図1では、流れ115は、これらの成分の溶液重合反応器100への導入を表す。いくつかの実施形態では、エチレンモノマー、炭化水素溶媒、チーグラー・ナッタ触媒、および任意の追加のオレフィンコモノマーは、溶液重合反応器100に導入される前に、一緒に混合されて、供給流混合物を形成し得、次いで、供給流混合物は、図1に示されるように単一流115で溶液重合反応器100に導入される。しかしながら、他の実施形態では、エチレンモノマー、炭化水素溶媒、チーグラー・ナッタ触媒、および任意の追加のオレフィンコモノマーは、そのような実施形態は、図1には示されていないが、別個の流れとして、入口110を通って、溶液重合反応器100に導入され得ることを理解されたい。図1は、溶液重合反応器100の入口110を、単一の流路または開口部として示しているが、実施形態では、溶液重合反応器100の入口110は、複数の流路または開口部であり得ることも理解されたい。例えば、溶液重合反応器100に導入される各成分のための流路または開口部(図示せず)など、それらは全て、例えば、溶液重合反応器100の同じ壁または表面上など、互いに近接して配置される。いくつかの実施形態では、チーグラー・ナッタ触媒は、エチレンモノマーおよび炭化水素溶媒とは別個の流れで添加される。また、1つ以上の実施形態では、例えば、アルキルアルミニウムなどの触媒活性剤が、重合反応100に導入される。触媒活性剤は、チーグラー・ナッタ触媒が重合反応器に添加される前または後のいずれの時点でも導入され得、触媒活性剤は、チーグラー・ナッタ触媒とは別個の開口部または流路によって添加され得ることを理解されたい。
【0020】
様々な槽が、溶液重合反応器100として使用するのに企図される。1つ以上の実施形態において、溶液重合反応器100は、スタティックミキサー、機械的ミキサー、または連続撹拌槽反応器(CSTR)を備え得る。特定の実施形態では、溶液重合反応器100は、連続撹拌槽反応器(CSTR)であり得る。他の実施形態では、溶液重合反応器100は、ループ反応器、球状反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、またはバッチ反応器などの従来の反応器であり得る。
【0021】
ループ反応器を含む実施形態では、ループ反応器は、1つ以上の熱交換器(図示せず)、ならびに任意選択で、いくつかの実施形態によれば、それらを互いにおよび/または反応器の残部に接続するパイプを備え得る。フローループは、いくつかの実施形態において、構成要素間の相互接続パイプを用いてまたは用いずに構成され得る。いくつかの実施形態において、流路に沿った全ての要素を反応ゾーンとして機能するように構成することが望ましい場合がある。そのような実施形態において、熱伝達が起こる領域は、伝達が最小限であるかまたは存在しない接続パイプを犠牲にして最大化され得る。熱交換器は、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの冷却流体入口および少なくとも1つの冷却流体出口を備えることができる。いくつかの実施形態によれば、熱交換器は、少なくとも1つの反応ストリーム入口および少なくとも1つの反応ストリーム出口をさらに備え得る。いくつかの実施形態において、任意の熱交換装置が、任意の構成で使用され得る。例えば、熱交換器は、フローループ内に配置された冷却コイルを含んでもよい。別の例では、熱交換器は、フローストリームが管を通過するフローループ内に配置されたシェルアンドチューブ式熱交換器を含むことができる。別の例では、フローループ全体は、冷却ジャケットまたは二重配管で囲むことによって、熱交換器として構成され得る。
【0022】
図1は、単一の反応ゾーンを有する単一の溶液重合反応器100を示すが、実施形態は、従来のプロセス方法および接続を介して直列または並列に接続された、多数の反応ゾーンまたは複数の溶液重合反応器を有する溶液重合反応器を含み得ることを理解されたい。
【0023】
入口110で溶液重合反応器100に導入される、エチレンモノマー、炭化水素溶媒、チーグラー・ナッタ触媒、水素ガス、および任意の追加のオレフィンコモノマーを含む、成分の種類は特に限定されず、エチレン系ポリマーを生成するための溶液重合プロセスに従来から使用される成分は、制限なしに実施形態で使用され得る。
【0024】
しかしながら、いくつかの実施形態では、入口110を通って溶液重合反応器100に導入されるエチレンモノマーは、エチレンガスを含み、本質的にそれからなり、またはそれからなり得る。
【0025】
同様に、1つ以上の実施形態では、入口110を通って溶液重合反応器100に導入される炭化水素溶媒は、C~C12オレフィン、C~C12パラフィン、Isopar-E(エクソンモービル・ケミカル製)、およびこれらの混合物を含み、本質的にそれらからなり、またはそれらからなり得る。他の実施形態では、様々な炭化水素溶媒が、溶液重合反応器での使用に好適であるとみなされる。溶媒は、溶液重合反応器で使用される触媒に基づいて様々であり得る。実施形態では、炭化水素溶媒としては、例えば、パラフィン系/イソパラフィン系溶媒、オレフィン系溶媒、芳香族系溶媒、環状系溶媒、およびこれらの組み合わせのうちの1種以上を挙げることができる。溶媒の例としては、脂肪族および芳香族炭化水素(例えば、トルエン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、およびこれらの混合物)、および/またはエーテル(例えば、テトラヒドロフラン)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
入口110を通って溶液重合反応器100に導入されるチーグラー・ナッタ触媒は、溶液重合プロセスの高い重合温度で特に有用である典型的なチーグラー・ナッタ触媒である。そのようなチーグラー・ナッタ触媒の例は、有機マグネシウム化合物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルミニウム、または塩化水素;および遷移金属化合物から誘導されるものである。そのようなチーグラー・ナッタ触媒の例は、米国特許第4,314,912号、同第4,547,475号、および同第4,612,300号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
1つ以上の実施形態において、入口110を通って溶液重合反応器100に導入されるチーグラー・ナッタ触媒は、MgCl担持遷移金属触媒を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなり得、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、およびハフニウム(Hf)からなる群から選択される。重合反応器に導入されるチーグラー・ナッタ触媒の量は、チーグラー・ナッタ触媒中の遷移金属と供給流中のCモノマーの量との比として測定され得る。チーグラー・ナッタ触媒は、1つ以上の実施形態では、Cモノマーに対して、0.5ppm~20.0ppmの遷移金属、例えば、Cモノマーに対して、1.0ppm~19.0ppmの遷移金属、Cモノマーに対して、2.0ppm~18.0ppmの遷移金属、Cモノマーに対して、4.0ppm~16.0ppmの遷移金属、Cモノマーに対して、6.0ppm~14.0ppmの遷移金属、1ppmCモノマーに対して、8.0ppm~12.0ppmの遷移金属、またはCモノマーに対して、9.0ppm~11.0ppmの遷移金属の量で添加され得る。
【0028】
先に開示されたように、追加のα-オレフィンコモノマーも、溶液重合反応器100に導入され得る。いくつかの実施形態では、オレフィンコモノマーは、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ペンテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、オレフィンコモノマーは、オクテンである。
【0029】
1つ以上の実施形態では、上記のチーグラー・ナッタ触媒に加えて、助触媒も、溶液重合反応器100に添加され得る。この助触媒は、特に限定されず、追加のチーグラー・ナッタ触媒、またはエチレンモノマーの重合以外の反応を引き起こす触媒であり得る。1つ以上の実施形態では、助触媒は、例えば、四塩化チタンなどのマルチサイトチタン含有触媒、または例えば、トリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム種であり得る。
【0030】
上述のように、エチレンモノマーは、従来のチーグラー・ナッタ溶液重合プロセスを介して、チーグラー・ナッタ触媒および炭化水素溶媒の存在下で重合し、エチレン系ポリマーを形成する。この重合反応は、発熱性であり、チェックされないままにしておくと望ましくないポリマーが形成され得、溶液重合反応器内の温度が危険なレベルに上昇し得るような速度で進行し得る。したがって、本明細書で開示および記載される溶液重合プロセスの方法の実施形態は、触媒失活剤を溶液重合反応器に導入して、重合反応を制御することを含む。
【0031】
図1を再度参照すると、触媒失活剤135は、溶液重合反応器100の出口120の付近に配置された流路130を介して、溶液重合反応器100に導入される。エチレン系ポリマーを含む生成物流125は、溶液重合反応器100の出口120で溶液重合反応器100を出る。触媒失活剤135および中和中に形成される反応生成物は、チーグラー・ナッタ触媒の失活中にポリマー相に留まるため、溶液反応器内の、チーグラー・ナッタ触媒中毒をもたらす再循環溶媒流(図示せず)に入らない。溶液重合反応器100に導入されると、触媒失活剤135は、チーグラー・ナッタ触媒の活性を低減させ、それによってエチレンモノマーの重合を制御する。しかしながら、触媒はまた、チーグラー・ナッタ触媒の失活中に加水分解を受け、それによってHClを形成し、これは、溶液重合反応器100内で起こる反応に悪影響を及ぼし、溶液重合反応器100および下流の装置に損傷を引き起こし得る。したがって、チーグラー・ナッタ触媒を失活させることに加えて、実施形態によれば、触媒失活剤135は、第2の機能である加水分解中に形成されるHClの中和を実施する。
【0032】
上述のように、ステアリン酸カルシウムは、チーグラー・ナッタ触媒を失活させ、加水分解中に形成されるHClを中和するために、チーグラー・ナッタ溶液重合プロセスにおける触媒失活剤として従来から使用されてきた。しかしながら、中和中に形成される副生成物は、CaClであり、これは、前記装置の壁に堆積することなどによって、下流の装置の汚損を引き起こし得る。本明細書で開示および記載される実施形態によるエチレン系ポリマーの溶液重合プロセスで使用される触媒失活剤は、CaClのような汚損を引き起こす副生成物を形成することなく、従来から使用されているステアリン酸カルシウムの機能を発揮する。
【0033】
1つ以上の実施形態では、触媒失活剤135は、長鎖カルボキシレートと、カルシウムを除く、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)周期律表の1、2、および12族から選択される少なくとも1種のカチオンと、を含む。
【0034】
触媒失活剤が、長鎖カルボキシレートと、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択される少なくとも1種のカチオンと、を含む実施形態では、長鎖カルボキシレートは、6個以上の炭素原子~40個以下の炭素原子、例えば、10個以上の炭素原子~30個以下の炭素原子、または12個以上の炭素原子~22個以下の炭素原子を含み得る。長鎖カルボキシレートは、様々な実施形態では、飽和または不飽和であり得る。本明細書で使用される場合、「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。同様に、「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、および炭素-ケイ素二重結合を含有すること、存在する場合、置換基R中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。1つ以上の実施形態では、長鎖カルボキシレートは、ラウレート(C12)、ステアレート(C18)、オレエート(C18不飽和)、およびベヘネート(C22)を含む。
【0035】
実施形態では、触媒失活剤135はまた、長鎖カルボキシレートと組み合わせてカチオンも含む。実施形態では、カチオンは、カルシウムを除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択され得る。いくつかの実施形態では、カチオンは、カルシウムおよび亜鉛を除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択され得る。さらに他の実施形態では、カチオンは、ナトリウム、マグネシウム、および亜鉛からなる群から選択される。他の実施形態では、カチオンは、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。
【0036】
実施形態では、触媒失活剤135は、以下の式(1)を有し得、
【化1】
式中、Mは、ナトリウム、亜鉛、およびマグネシウムから選択され、Rは、ステアリル(C1735)およびオレイル(C1733)から選択され、xは、1または2である。特定の実施形態では、触媒失活剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される。
【0037】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、長鎖カルボキシレートおよびIUPAC周期律表の1、2、および12族から選択されるカチオンを含む触媒失活剤は、チーグラー・ナッタ触媒の失活中に形成されるHClを、長鎖カルボキシレートからのカチオンの解離および塩化物塩の形成によって中和する。これらのHClの中和反応は、従来のステアリン酸カルシウムが、触媒失活剤として使用される場合のHClの中和と比較して、より急速に起こる。
【0038】
本明細書で使用される場合、溶液重合反応器内の溶液のpHが、6.0以上~8.0以下、例えば、6.5以上~7.5以下、または約7.0のpHを有する場合、HClの中和が起こったと判断される。上記のように、本明細書に開示および記載される実施形態による触媒失活剤を使用することによって、従来のステアリン酸カルシウムよりも、より急速なHClの中和が提供される。例えば、2.5当量のステアリン酸カルシウムが、4.0のpHを有する溶液に添加される場合、ステアリン酸カルシウムがHClを中和するのに約24時間かかる。対照的に、同量以下のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸ナトリウムが、同じ溶液のHClを中和するのに約8時間しかかからない。加えて、オレイン酸ナトリウムが、同じ溶液のHClを中和するのに約1時間しかかからない。したがって、本明細書で開示および記載される実施形態による触媒失活剤が使用される場合、HClを中和するのにかかる時間の著しい減少が存在する。
【0039】
触媒失活剤135は、1つ以上の実施形態では、チーグラー・ナッタ触媒の失活中に形成され得る遊離の塩化物イオンの量に対する量で溶液重合反応器に添加され得る。例えば、金属塩化物担体を含むチーグラー・ナッタ触媒では、金属塩化物担体中に存在する塩化物は、例えば、130℃~270℃、150℃~250℃、または175℃~225℃などの関連するプロセス温度では加水分解しないと判断されている。したがって、遊離塩化物イオンは、チーグラー・ナッタ触媒の他の塩化物含有成分(すなわち、金属塩化物担体以外の成分)から形成される。遊離塩化物イオンの量が決定されると、当量で測定される遊離塩化物イオンの量に基づいて、触媒失活剤の量が選択され得る。1当量の触媒失活剤は、チーグラー・ナッタ触媒中に存在する遊離塩化物イオンの量と触媒失活剤中の中和成分(例えば、カチオンなど)の量との間に化学量論的バランスを有する。非限定的な例として、チーグラー・ナッタ触媒が塩化物分子を含み、触媒失活剤が式M[RCOO]の化合物を含み、式中、x=1である場合、チーグラー・ナッタ触媒に対して1当量の触媒失活剤は、1モルの触媒失活剤であり、2当量の触媒失活剤は、2モルの触媒失活剤である。しかしながら、チーグラー・ナッタ触媒が式M[RCOO]の化合物を含み、式中、x=2である場合、チーグラー・ナッタ触媒に対して1当量の触媒失活剤は、2モルの触媒失活剤であり、2当量の触媒失活剤は、4モルの触媒失活剤である。
【0040】
実施形態では、触媒失活剤135は、0.2当量以上~8.0当量未満、例えば0.5当量以上~7.5当量以下、1.0当量以上~7.0当量以下、1.5当量以上~6.0当量以下、2.0当量以上~5.0当量以下、2.0当量以上~3.0当量以下、または約2.5当量の量で溶液重合反応器に添加され得る。当量は、遊離塩化物の量に対して定義される。したがって、実施形態では、当量は、カルボキシレートに関するので、式M[RCOO]では、等価物は、xとして定義される。
【0041】
チーグラー・ナッタ触媒の失活中に形成されるHClをより急速に中和することに加えて、本明細書に開示および記載される触媒失活剤を使用するプロセスはまた、従来のステアリン酸カルシウムより少ない当量の触媒失活剤を使用して、チーグラー・ナッタ触媒を失活させ得る。例えば、例として、触媒を失活させるためには、8~16当量のステアリン酸カルシウムが必要あり、これは、溶液重合反応器内の温度が50℃以下で少なくとも8分間であることで表される。しかしながら、本明細書に開示および記載される実施形態による触媒失活剤がわずか4当量以下で、溶液重合反応器内で同じ温度が8分以上維持され得る。これは、従来の触媒失活剤に比べて著しい改善である。
【0042】
また上記のように、従来のステアリン酸カルシウム触媒失活剤は、HClとの反応の結果として、CaCl副生成物を形成する。CaCl副生成物は、下流の装置の壁に堆積することなどによって、下流の装置を汚損し得る。これは、下流装置でのCaClの沈殿によって証明されている。しかしながら、本明細書に開示および記載される実施形態による触媒失活剤を使用することによって、そのような沈殿物は形成されず、下流の装置の汚損は軽減され得る。
【実施例
【0043】
実施形態は、以下の実施例によってさらに明確化される。
【0044】
実施例1および比較例1:ポリオクテン試験に基づく触媒の失活
【0045】
実施例1の化学反応スキームが以下に提供される。
【化2】
【0046】
反応を、不活性雰囲気で窒素パージされたグローブボックス内で実施した。このグローブボックス内で、5.5mLの1-オクテンおよび5.5mLのIsopar-E(エクソンモービル・ケミカル製)を、磁気撹拌子を備えた4つの40mLのガラスバイアルに添加した。バイアルを磁気撹拌ブロックの絶縁スロットに挿入した。熱電対をバイアルのゴム製セプタムを通して挿入して、温度の監視を開始した。4つのバイアルの各々に、ヘキサン中の1.0Mトリエチルアルミニウム(Tiに対して5等量)を40μL添加し、続いて、MgCl担持Ti系チーグラー・ナッタ触媒溶液(8.00μmolのTi)を添加した。バイアルを直ちにセプタムキャップで密閉し、反応混合物の温度を5秒間隔で記録した。温度が40℃(約10℃の発熱量)に達した際に、触媒失活剤溶液を注入した。比較例1は、ステアリン酸カルシウム(一水和物)および乾燥ステアリン酸カルシウムを2つの別個のバイアルに注入した2つの試料を含み、実施例1は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウムを4つの別個のバイアルに注入した4つの試料を含んでいた。失活の有効性を、触媒失活剤の注入後の温度上昇の抑制によって決定した。以下のプロットの当量は、チーグラー・ナッタ触媒の活性塩化物含有量から予測されるClに対するものである。
【0047】
触媒の失活の程度は、オクテンの重合中に発生する発熱量の抑制に基づいており、図2A~2Gに示される。特に、図2Aおよび2Bは、それぞれ、ステアリン酸カルシウム(一水和物)および乾燥ステアリン酸カルシウムを使用した比較例1のy軸に沿った摂氏での発熱量抑制およびx軸に沿った分単位の時間を示す。図2C~2Fは、それぞれ、触媒失活剤として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウムを使用した実施例1の発熱量抑制を示す。図2A~2Fに示されるように、ステアリン酸カルシウム(一水和物)または乾燥ステアリン酸カルシウムと比較した場合、発熱量を抑制するために、より少ない当量のオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウムが必要とされる。したがって、実施例1は、本明細書に開示および記載される実施形態による触媒失活剤を使用した場合の触媒失活の著しい改善を示す。
【0048】
実施例2:異なる金属カルボン酸塩によるHCl中和の比較
【0049】
実施例2の化学反応スキームが以下に提供される。
【化3】
【0050】
1mLのチーグラー・ナッタ触媒スラリー溶液(0.013MのTi)および9mLのIsopar-Eを、撹拌子を備えた40mLのバイアルに添加し、10mLの脱イオン水でクエンチした。70℃で1時間撹拌した後、有機層、水層ともに無色透明になった。pH紙では、水層のpHは酸性であり、チーグラー・ナッタ触媒の加水分解によるHClの存在を示した。
【0051】
HClを中和するために、金属カルボン酸塩の溶液(カルボン酸の部分を基準にして0.5、1.0、2.0、または5.0当量)をバイアルに注入し、水層のpHを継続的に監視しながら、溶液を70℃で8時間激しく撹拌した。
【0052】
pHが中性の場合(pH紙による)、または8時間後(24時間反応させた5当量のステアリン酸カルシウムとの1つの反応を除いて、いずれか早い方)、水層を収集してpHをpHメーターで測定した。Cl-含有量を、クロム酸カリウム指示薬(Mohr法)を使用して、標準AgNO溶液に対する滴定により測定して、MgClからの予測される塩化物を検証し、1mLのチーグラー・ナッタ触媒からのEADCを考慮した。結果を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上記の表1に提供されたpHデータを、図3にグラフで示す。チーグラー・ナッタ触媒の加水分解によって形成されるHClの中和は、70℃で24時間反応させた後にのみ、2.5当量のステアリン酸カルシウムによって達成される。同じ反応条件下で、ステアリン酸亜鉛(2.5当量)、ステアリン酸マグネシウム(2.5当量)、およびステアリン酸ナトリウム(2当量)は、8時間後にHClを中和する。オレイン酸ナトリウム(2当量)は、同じ反応条件下でわずか1時間後にHClを中和する。
【0055】
実施例3および比較例3:Z-N触媒および触媒キル化合物(TEAありおよびTEAなし、190℃)の加熱からの沈殿の観察
【0056】
反応を、窒素パージされた不活性雰囲気のグローブボックス内で実施した。グローブボックスに、Isopar-E中の0.25Mのステアリン酸カルシウム、0.25Mのステアリン酸亜鉛、および0.25Mのステアリン酸マグネシウム、0.5Mのステアリン酸ナトリウム、および0.5Mのオレイン酸ナトリウムを調製した。50mLの丸底フラスコ内。加えて、1mLのHEC-3触媒溶液(0.013MのTi)と20mLのヘキサデカンを添加した。トリエチルアルミニウムを用いた実験では、HEC-3中のTiに対して5等量のTEAを追加的に添加した。溶液を190℃に加熱した後に、1mLの異なる触媒失活剤溶液(約250g触媒失活剤/1gのTi)をフラスコに添加した。比較例2は、触媒失活剤を含まない試料フラスコおよび触媒失活剤としてステアリン酸カルシウムを含むフラスコを含み、実施例3は、触媒失活剤としてオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウムを含む5つのフラスコを含んだ。溶液を約1時間撹拌し、沈殿と色変化が観察された。図4Aおよび4Bは、それぞれ、触媒失活剤を含まない、および触媒失活剤としてステアリン酸カルシウムを含む比較例2の溶液の写真である。図4C~4Gは、それぞれ、触媒失活剤として、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸亜鉛を使用した実施例3の溶液の写真である。図4A~4Fの各々では、左側の画像は、トリエチルアルミニウム(TEA)を含有せず、右側の画像は、5当量のTEAを含有する。図4A~4Fに見られるように、比較例2(図4Aおよび4B)の溶液は、実施例3(図4C~4F)の溶液と比較してより多くの沈殿を含有する。加えて、ステアリン酸亜鉛触媒失活剤(図4F)は、実施例3による他の触媒失活剤よりも多量の沈殿物を示すが、比較例2の溶液ほど多くの沈殿物を示さない。
【0057】
結果を表2においても数値化する。
【0058】
【表2】
【0059】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正および変更が加えられ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
エチレン系ポリマーを生成するための溶液重合プロセスであって、
エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒を、溶液重合反応器に導入することと、
前記エチレンモノマーおよび前記炭化水素溶媒を、前記溶液重合反応器内で、前記チーグラー・ナッタ触媒を使用して溶液重合することによって、前記エチレン系ポリマーを生成することと、
触媒失活剤を前記溶液重合反応器に導入し、それによって塩酸副生成物が生成されることと、を含み、
前記触媒失活剤が、
長鎖カルボキシレートと、カルシウムを除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択される少なくとも1種のカチオンと、を含み、
前記触媒失活剤が、前記チーグラー・ナッタ触媒の有効性を低減させ、塩化カルシウム以外の塩化物塩を形成することによって、前記塩酸を中和する、プロセス。
項2.
追加のオレフィンコモノマーが、前記エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒のうちの少なくとも1種と共に、前記溶液重合反応器に導入される、項1に記載の方法。
項3.
前記追加のオレフィンコモノマーが、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ペンテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項2に記載の方法。
項4.
前記炭化水素溶媒が、C~C12オレフィン、C~C12パラフィン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
項5.
助触媒が、前記エチレンモノマー、炭化水素溶媒、およびチーグラー・ナッタ触媒のうちの少なくとも1種と共に、前記溶液重合反応器に導入される、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6.
前記チーグラー・ナッタ触媒が、MgCl担持遷移金属触媒からなる群から選択され、前記遷移金属が、Ti、Zr、V、およびHfから選択され得る、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7.
前記触媒失活剤が、前記溶液重合反応器の出口付近で、前記溶液重合反応器に導入される、項1~6のいずれか1項に記載の方法。
項8.
前記少なくとも1種のカチオンが、カルシウムを除く、IUPAC周期律表の1、2、および12族から選択される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
項9.
前記長鎖カルボキシレートが、6個以上の炭素原子~40個以下の炭素原子を含む、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
項10.
前記長鎖カルボキシレートが、12個以上の炭素原子~22個以下の炭素原子を含む、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
項11.
前記触媒失活剤が、式:M[RCOO]xを有し、式中、Mは、ナトリウム、亜鉛、およびマグネシウムから選択され、Rは、ステアリル(C1735)およびオレイル(C1733)から選択され、xは、1または2である、項1~10のいずれか1項に記載の方法。
項12.
前記触媒失活剤が、前記加水分解性塩化物に対して、0.2モル当量以上~8.0モル当量未満の量で、前記溶液重合反応器に添加される、項1~13のいずれか1項に記載の方法。
項13.
前記溶液重合反応器内の温度が、160℃以上~220℃以下である場合、前記触媒失活剤が、前記溶液重合反応器の前記出口に添加される、項1~14のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F