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特許7350778銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を増加させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/10 20060101AFI20230919BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20230919BHJP
   C23C 22/52 20060101ALI20230919BHJP
   C23F 11/08 20060101ALI20230919BHJP
   C23F 11/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C23G1/10
H05K3/38 B
C23C22/52
C23F11/08
C23F11/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020558589
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061526
(87)【国際公開番号】W WO2019215072
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】18171175.5
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・リュッツォフ
(72)【発明者】
【氏名】ウォンジン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】本多 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・テュス
(72)【発明者】
【氏名】マルック・ラガー
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・タン
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・クロピッシュ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエラ・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・トームス
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321310(JP,A)
【文献】特開平11-043778(JP,A)
【文献】特表2011-517324(JP,A)
【文献】特開2009-299096(JP,A)
【文献】特開2004-119564(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018232(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056534(WO,A1)
【文献】特表2013-537581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C22/00-22/86
C23C26/00-30/00
C23F1/00-4/04
C23F11/00-11/18
C23G1/00-6/06
H05K3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を増加させる方法であって、
(i)少なくとも一方の側に前記表面を含む非導電性基板を準備する工程であり、前記表面が銅又は銅合金の全表面積を有する、工程、
(ii)前記表面を含む前記基板を、
(ii-a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(ii-b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(ii-c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0wt-%を超え0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(ii-d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させる工程
をこの順序で含み、
工程(ii)の間、前記表面の全表面積が、前記保護剤溶液との接触時に増加せず、
前記酸性非エッチング保護剤水性溶液において、全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が1以下であり、
前記酸性非エッチング保護剤水性溶液が2.5~6の範囲のpHを有する
方法。
【請求項2】
工程(i)において、銅又は銅合金の前記表面が、
- Cu-(0)をそれぞれCu-(I)及びCu-(II)に酸化する工程、及び、続いて
- このCu-(I)及びCu-(II)をそれぞれ少なくとも部分的にCu-(0)に還元する工程
によって得られるナノ粗面化表面層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)において、前記ナノ粗面化表面層が500nm以下の最大層厚を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)の間に、1種又は2種以上のアミノアゾールが、銅又は銅合金の保護された表面が結果として生じるように銅又は銅合金の前記表面に吸着する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性非エッチング保護剤水性溶液において、全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が0.8以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1種又は2種以上の前記過酸化物が過酸化水素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1種又は2種以上の前記過酸化物の総量が、保護剤溶液の総質量に対して、0.35wt-%以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性非エッチング保護剤水性溶液が2.7~5.8の範囲のpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1種又は2種以上の前記アミノアゾールが、アミノテトラゾール、アミノトリアゾール、置換アミノトリアゾール、及び置換アミノテトラゾールからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1種又は2種以上の前記アミノアゾールが、保護剤溶液の総質量に対して、2.0wt-%以下の総量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1種又は2種以上の前記有機酸及びその塩の有機酸残基アニオンの総量が、保護剤溶液の総質量に対して、4wt-%以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)において、前記接触させる工程が5秒~600秒間行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
追加の工程、
(iii)工程(ii)の間に前記酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させた銅又は銅合金の前記表面が前記有機層と接触するように、工程(ii)の後に得られる前記基板上に前記有機層を積層する工程
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(iii)における前記有機層がビルドアップ層である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0wt-%を超え0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液であって、
酸性非エッチング保護剤水性溶液中の全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が1以下であり、
前記酸性非エッチング保護剤水性溶液が2.5~6の範囲のpHを有する
酸性非エッチング保護剤水性溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、印刷回路基板(PCB)を製造する方法に関し、特に、銅又は銅合金の表面と有機層、例えばソルダマスク又はビルドアップ層、好ましくはビルドアップ層、最も好ましくは多層PCB中のビルドアップ層との間の接着強度を増加させる方法に関する。本発明は更に、酸性非エッチング保護剤水性溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
PCBは、印刷回路基板アセンブリ(PCBA)を得るために、その表面の少なくとも一方に電気部品、例えば集積回路(IC)、抵抗器、スイッチ等を搭載するための薄板である。PCBの製造プロセス中、典型的には銅回路が、典型的にはエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂製である非導電性基板/層上に形成される。最も一般的な非導電性基板/層は、FR-4として商業的に公知のガラス強化エポキシ積層体である。
【0003】
多層PCBを得るには、典型的には、導電性銅回路を備える非導電性基板/層を積み重ねたものが形成されて、一体製品が得られる。
【0004】
典型的には、PCBの製造中(特に、多層PCBの製造中)、(i)多層PCB内で回路間の非導電性基板/層を形成する、ビルドアップ層と呼ばれる(プリプレグ、内層、絶縁層等とも呼ばれる)前述の非導電性基板/層、及び(ii)多層及び非多層PCBにおける露出する最も外側の回路を覆って保護する、ソルダマスク(ソルダレジスト、外層等と呼ばれることも多い)という特定の2種類の非導電性基板/層が利用され、これらは永久的である。
【0005】
ソルダマスクは、その重合(硬化又は固化とも呼ばれる)後、最も外側の非導電性基板/層の表面とその銅回路のほとんどを覆う、非導電材料の完全に重合した永久層となる。ソルダマスクは、はんだ付けのために露出させることを意図した銅回路の部分を除いて回路を完全に覆うようにパターン化される。このような領域では、ソルダマスクは、典型的には開口部、例えばパッド開口部を呈する。
【0006】
多層PCBは、ビルドアップ層と銅回路とを交互に積み重ねることによって形成される。ビルドアップ層は、銅回路を互いに電気的に絶縁し、更に安定性を提供する。ただし、ビアが明確に定義された位置に形成され、1つの層の回路を他の層の1つ又は2つ以上の回路と電気的に接続する。このようなビアは、例えばレーザー、プラズマ、写真法又は従来の穿孔を使用して形成される。
【0007】
通常、ビルドアップ層は、それぞれの非導電性基板/層又はコア基板上に真空積層され、それぞれ前記基板/層及びコア基板の銅回路を覆う。ビルドアップ層(又は複数のビルドアップ層)は続いて、十分に予備重合されたビルドアップ層を得るために、プレスされる、及び/又は第1の熱処理工程に付される。通常、170℃~200℃の範囲の温度がおよそ30分間適用される。
【0008】
その第1の熱処理工程後、予備重合させたビルドアップ層は、パターン化、特にビア形成のための状態にある。その後、ビルドアップ層の表面とビアの表面は通常、デスミア処理され、基本的には多層PCBに次の銅回路を形成するための状態となる。
【0009】
次の銅回路を形成するプロセスは、例えば、(i)通常は銅箔を積層することによって開始されるサブトラクティブ法、(ii)典型的には銅層を無電解析出させることから開始されるセミアディティブ法(SAP)若しくは高度改良型セミアディティブ法(AMSAP)、又は(iii)銅を選択的に堆積させるための一時的な構造化されたフォトレジスト層を形成することから開始されるフルアディティブ法(FAP)によって行われる。これらのプロセスのうち、SAPは、典型的には特に高密度PCBの製造に適用される。
【0010】
SAPにおいては、銅層をビルドアップ層の表面に無電解析出させてから、第2の熱処理工程(乾燥工程と呼ばれることも多い)が、通常100℃~150℃の範囲の温度で少なくとも30分間行われる。この熱処理工程では、予備重合され、銅めっきしたビルドアップ層に熱が加えられる。
【0011】
次の工程では、非導電材料の一時的な感光層(フォトレジスト層)が無電解析出させた銅の層上に形成され、続いて、開口部を形成するためにパターン化され、硬化される。その後、追加の銅を開口部の中に堆積させる。
【0012】
最終工程では、一時的な感光層と残存する銅層が除去される。結果として、次の層の銅回路が形成され、それは次に、次のビルドアップ層の積層のために下処理される。
【0013】
このような多層PCBの耐用期間中、層間剥離が生じないことが不可欠である。したがって、銅回路とその上に積層されるビルドアップ層との間の接着力は、可能な限り高く、それぞれのPCBの耐用期間中、強いままであり続けることが望ましい。
【0014】
しかし、ビルドアップ層は、接着力が不十分になるという欠点が生じることがあり、その結果、銅回路とビルドアップ層との間の界面で層間剥離が発生する。
【0015】
強力な接着力を得るため、銅回路の表面の様々な下処理方法が公知である。
【0016】
従来の一方法は、銅表面に高温の強アルカリ性水性溶液を接触させることにより、銅表面にいわゆる「黒色酸化物」の層を形成することである。このような層は、典型的にはおよそ1000nm又はそれを超える層厚に達する。多くの場合、得られる接着力は、決して十分ではない。更に、多くの場合、この方法は、細線回路には不向きである。
【0017】
もう1つの方法は、強力なエッチャントを適用することであり、そうすると、マイクロ粗面化された銅表面として通常公知の強力に粗面化された銅表面(例えば、JP 2740768参照)が残ることになる。このような処理は、典型的には回路の表面から銅を激しく除去し、マイクロメートルの範囲でさえも広く深い空洞を含む強力に粗面化された銅表面が残る。結果として、このような方法は、銅の損失が過度に劇的となり、表面が過度に粗くなり、得られる接着力が過度に弱いことが多いため、細線回路、特に高周波用途には同様にあまり適していない。
【0018】
他のアプローチは、銅表面の様々な化学修飾を利用して前記接着力を増加させる。
【0019】
US 2002/0192460 A1は、多層印刷回路基板における銅/銅合金の表面と樹脂との間の接着力が改善された積層体を提供するための、アゾール-銅錯体化合物のコーティングフィルムを開示し、その積層体を製造する方法も開示する。
【0020】
WO 2009/109391 A1は、銅又は銅合金の処理のための非エッチング非レジスト接着組成物、及び銅又は銅合金表面を有する加工物を、後に続く銅又は銅合金表面への高分子堆積物によるコーティングのために、非エッチング非レジスト接着組成物を使用して下処理する方法に関する。
【0021】
WO 2012/005722 A1は、請求項1において、「金属表面を処理して金属表面と有機材料との間の接着を促進する方法であって、金属表面上に金属酸化物層が形成され、金属酸化物層の形成が、金属酸化物と表面改質剤化合物との間の自己制限的反応によって制御されることを特徴とする方法」を開示する。この反応は、金属酸化物層の形成後に、後に続く典型的には500nm以下の層厚を呈するナノ粗面化表面層を得るための金属酸化物層の還元を含む。これは、例えば、上述のようなマイクロ粗面化された表面と比較してかなり滑らかである。このプロセスは、還元後、ナノ粗面化表面層が再酸化(例えば、周囲空気中の酸素による)から保護されることを必要とする。
【0022】
更なる小型化に伴い、接着強度を更に増加させるように、既存の方法を更に改善することが一般に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】JP 2740768
【文献】US 2002/0192460 A1
【文献】WO 2009/109391 A1
【文献】WO 2012/005722 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の目的は、先行技術の方法と比較して接着強度が更に増加されるように、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を増加させるための改善された方法を提供することであった。
【0025】
特に、目的は、有機層に対する印刷回路基板の銅回路の接着強度を更に増加させる、より信頼性の高い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述の目的は、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を増加させる方法であって、
(i)少なくとも一方の側に前記表面を含む非導電性基板を準備する工程であり、前記表面が銅又は銅合金の全表面積を有する、工程、
(ii)前記表面を含む前記基板を、
(ii-a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(ii-b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(ii-c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(ii-d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させる工程
をこの順序で含み、
工程(ii)の間、前記表面の全表面積が、保護剤溶液との接触時に増加しない、
方法によって解決される。
【0027】
目的は更に、
(a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液であって、
酸性非エッチング保護剤水性溶液中の全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が1以下である、
酸性非エッチング保護剤水性溶液によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法及び本発明の保護剤溶液は、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を、銅/銅合金のエッチング又は顕著な除去を行うことなく増加させるためのものである。これは、本発明の方法の工程(ii)の間、銅又は銅合金の全表面積が増加せず、むしろ一定のままであることを意味する。換言すれば、工程(ii)の後、銅/銅合金の全表面積は、工程(ii)の開始時と比較して実質的に同じである。これは、本発明の方法を、粗面化することによって全表面積を増加させることを目標とする多数の公知の方法、特にエッチング法とは区別する。したがって、本発明の方法は、非エッチング法である。
【0029】
好ましいのは、工程(i)において、銅又は銅合金の表面が銅又は銅合金回路を含み、好ましくは銅又は銅合金回路である、本発明の方法である。このような場合、銅又は銅合金の表面は、構造化されている。それは、好ましくは、非導電性基板が、同じ側に非導電性(好ましくは有機)領域と導電性銅/銅合金領域とを同時に露出させていることを意味する。これは、本発明の方法の文脈において最も好ましい。
【0030】
好ましいのは、工程(i)において、銅又は銅合金回路が100μm以下、好ましくは75μm以下、より好ましくは55μm以下の線幅を有する線を含む、本発明の方法である。場合によっては、工程(i)において、銅又は銅合金回路が30μm以下、好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下の線幅を有する線を含む、本発明の方法が好ましい。
【0031】
非導電性基板は、少なくとも一方の側に、先に定義したような(好ましくは、好ましいものと定義したような)前記銅又は銅合金表面を含む。好ましくは、前記表面は、より好ましくは化学変換によって、最も好ましくは銅の酸化物への酸化と後に続くこれらの酸化銅の少なくとも一部の還元によって事前に処理される。したがって、工程(i)において、銅又は銅合金の表面が、
- Cu-(0)をそれぞれCu-(I)及びCu-(II)に酸化する工程、及び、続いて
- このCu-(I)及びCu-(II)をそれぞれ少なくとも部分的にCu-(0)に還元する工程
によって得られるナノ粗面化表面層を含む、本発明の方法が好ましい。
【0032】
結果として、少なくとも一方の側に銅又は銅合金の表面を含む非常に好ましい非導電性基板が得られ、表面は、ナノ粗面化表面層を含む。最も好ましくは、このような銅又は銅合金の表面は構造化されており、好ましくは回路を含み、最も好ましくは回路である(回路に関しては、上記の詳細を参照)。
【0033】
先に言及したナノ粗面化表面層は、主に銅(Cu-(0))と、銅又は銅合金の表面上の残存量の酸化銅(Cu-(I)及び(Cu-(II)を含む)の層である。このCu-(0)及びCu-(I)は、更なる望ましくない酸化及び/又は再酸化から保護する必要がある。ナノ粗面化表面層は、典型的には針状形態(「毛状表面形態」と呼ばれることもある)を有し、これは、全表面積を大幅に増加させることになるが、表面を著しく粗面化することはない(したがって、ナノ粗面化と呼ばれる)。したがって、好ましいのは、工程(i)において、又は工程(ii)の開始時点に、ナノ粗面化表面層が針状形態を有する、本発明の方法である。最も好ましくは、工程(ii)の後、この針状形態が依然として存在する。本発明の方法の工程(ii)の間、この全表面積は顕著な形で増加しないことに再度留意されたい。
【0034】
独自の実験で示されたことであるが、本発明の方法(本文を通じて定義されるような)は、保護された銅又は銅合金の表面を形成することによって、最も好ましくは保護されたナノ粗面化表面層を形成することによって、銅又は銅合金の表面、最も好ましくはナノ粗面化表面層の前記望ましくない酸化及び/又は再酸化をほぼ防止し、それが有機層、好ましくはビルドアップ層に対する接着強度の増加をもたらす。これは、上記及び本文全体を通じて定義するような酸性非エッチング保護剤水性溶液の利用に起因する。特に、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、工程(ii)において接触させても顕著なエッチングが起こらないため、ナノ粗面化表面層を測定可能なほど劣化させない。結果として、工程(ii)の間、銅又は銅合金の表面から、銅は全く又は本質的に全く除去されず;最も好ましくは、ナノ粗面化表面層は、工程(ii)の間に除去されない。これには、全表面積が顕著な形で増加しないことも含まれる。したがって、本発明の方法は、細線回路(即ち、30μm未満の線幅)を有する多層PCB及び高周波用途向けPCBの製造に強く推奨される。このような用途は、典型的には強力な銅除去/エッチングの影響を非常に受けやすい。
【0035】
好ましくは、本発明の方法において、工程(i)において準備される基板は、既に上記のナノ粗面化表面層を呈する。しかし、場合によっては、
(i)少なくとも一方の側に銅又は銅合金の表面を含む非導電性基板を準備する工程であり、表面が、好ましくは銅又は銅合金回路を含み(最も好ましくは銅又は銅合金回路であり)、前記表面が銅又は銅合金の全表面積を有する、工程、
(ia)Cu-(0)をそれぞれCu-(I)及びCu-(II)に酸化する工程、及び、続いて
(ib)好ましくは銅又は銅合金回路を含む(最も好ましくは銅又は銅合金回路である)表面であって、ナノ粗面化表面層を含む銅又は銅合金の表面が結果として生じるように、このCu-(I)及びCu-(II)をそれぞれ少なくとも部分的にCu-(0)に還元する工程、
(ii)前記表面を含む前記基板を、
(ii-a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(ii-b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(ii-c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(ii-d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させる工程
をこの順序で含み、
工程(ii)の間、前記表面の全表面積が、保護剤溶液との接触時に増加せず、ナノ粗面化表面層は除去されない、
本発明の方法が好ましい。
【0036】
「続いて」という用語は、基本的には工程(ib)が工程(ia)に直ちに続くことを表す。しかし、場合によっては、工程(ib)の前にすすぎ又は状態調節工程が含まれることが好ましい。
【0037】
理論によって拘束されることを望むものではないが、工程(ia)において、銅原子は酸化物に化学的に変換されると想定される。好ましくは、この変換は、自己制限的である。工程(ia)の後、表面形態は著しく改質され、典型的には、非常に低い表面粗さを持つ(ナノ粗面化されている)が、全表面積が著しく増加した(工程(ia)の前の全表面積と比較して)前記針状表面形態が生じる。続いて、これらの酸化物は還元によって減少する一方、針状形態は維持される。得られたナノ粗面化表面層(この変換の結果としての)は、銅又は銅合金の表面と有機層との間に基本的な接着強度を創出する。この基本的な接着強度を、好ましくは本発明の方法によって更に増加させる。
【0038】
一般に、ナノ粗面化表面層は、原子間力顕微鏡法(AFM)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、集束イオンビーム高解像度走査電子顕微鏡法(FIB高解像度SEM)、X線光電子分光法(XPS)及び透過電子顕微鏡法(TEM)によって調査、分析、及び測定が可能である。好ましくは、分析は、それぞれのサンプルの垂直断面において行われる。より好ましくは、FIB高解像度SEM及びAFMによってナノ粗面化表面層の厚さが観察され、判定されて、例えば最大層厚が判定される。非常に好ましい方法は、AFMである。
【0039】
工程(ia)において、酸化する工程は、好ましくは亜塩素酸化合物、次亜塩素酸化合物、過酸化物、過マンガン酸塩、過塩素酸化合物、過硫酸化合物、及びオゾンからなる群から選択される1種又は2種以上の酸化剤によって行われる。好ましい亜塩素酸化合物は、亜塩素酸及びアルカリ性亜塩素酸塩であり、最も好ましくは亜塩素酸ナトリウムである。好ましい次亜塩素酸化合物は、次亜塩素酸及びその塩である。好ましい過酸化物は、過酸化水素である。好ましい過塩素酸化合物は、過塩素酸及びその塩である。好ましい過硫酸化合物は、ペルオキソ一硫酸塩、ペルオキシ二硫酸塩、及びその関連する酸からなる群から選択される。前記酸化剤は、所望の酸化を達成するのに十分な総濃度で存在する。工程(ia)の後、銅は、大部分が酸化数+2で存在する。
【0040】
工程(ib)において、還元する工程は、好ましくは有機還元剤及び無機還元剤からなる群から選択され、好ましくはアルデヒド、ホウ化水素、ボラン、及び置換ボランからなる群から選択される1種又は2種以上の還元剤によって行われる。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒドである。工程(ib)の後、銅は、大部分が酸化数0(Cu-(0))となるが、少量の酸化数+1の銅がCu-(0)の即時の再酸化のために不可避である。しかし、酸化数0の銅が好ましい。還元する間、針状形態は維持される。
【0041】
本発明の方法において、ナノ粗面化表面層は、従来のエッチング法と比較して(工程(i)及び工程(ii)において)非常に滑らかであり、従来のエッチング法は、非常に顕著な表面粗さや表面破壊さえも生じ;通常、表面トポグラフィーの変更を含む。これは、望ましいものではなく、特に細線回路及び高周波用途の場合には、望ましくない。これに対し、本発明の方法の工程(i)における好ましいナノ粗面化表面層は、非常に多くの場合、200ナノメートルの厚さを超えず、針状形態(即ち、ナノ構造化)のために比較的滑らかであり、そのトポグラフィーを変更することなく銅又は銅合金の表面の輪郭に一致する。このような好ましいナノ粗面化表面層(工程(i)及び工程(ii)における)は、いわゆる非エッチング接着促進物(NEAP)の1つに数えられる。工程(i)において、ナノ粗面化表面層が500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは180nm以下、更により好ましくは150nm以下、最も好ましくは120nm以下の最大層厚を有する、本発明の方法が好ましい。
【0042】
最大層厚が500nmを大幅に超える場合、粗さが場合によっては過剰に高く、方法は、多くの細線回路用途(例えば、30μm未満の線幅)にはもはや適さなくなる。最大層厚が、例えば30nmを大幅に下回る場合、接着強度及び剥離強度が場合によっては不十分となる。
【0043】
好ましいナノ粗面化表面層は、様々な利点を提供する。高周波用途に使用されるPCBは、信号損失が減少するため、比較的滑らかな表面の恩恵を受ける。更に、わずかな量の金属銅のみが前記表面層を形成し、従来の苛烈なエッチング法と比較して、回路における金属銅の損失の減少につながる。加えて、接着力の増加が得られ、それは、本発明の方法によって更に増加させることができる。
【0044】
本発明の方法において、銅又は銅合金の表面は、好ましくは銅の表面であり、即ち、銅の表面の総質量に対して、少なくとも99wt-%の銅を含む。この場合、銅の表面は、好ましくは銅以外の他の元素を実質的に含まず、好ましくは含まず;より好ましくは、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、及びチタンからなる群から選択される元素の1種、2種以上、又は全てを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0045】
本発明の文脈において、特定の値と組み合わせた「少なくとも」という用語は、この値であるか、又はこの値を超えること(及びそれと交換可能であること)を表す。例えば、「少なくとも99wt-%」は、「99wt-%であるか、又は99wt-%を超える」こと(及びそれと交換可能であること)を表す。同様に、「少なくとも1」は、「1、2、3、又は4以上」であること(及びそれと交換可能であること)を表す。
【0046】
対照的に、場合によっては、銅合金の表面が好ましい。工程(i)において、銅合金の表面が、銅合金の表面の総質量に対して、少なくとも55wt-%、好ましくは少なくとも75wt-%、より好ましくは少なくとも85wt-%、最も好ましくは少なくとも90wt-%の銅を含む、本発明の方法が好ましい。好ましい合金化元素は、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、及びチタンからなる群から選択される。本発明の文脈において、「銅合金」という用語は、酸化銅を含まない。
【0047】
本発明の文脈において、対象物(例えば、元素、化合物、材料等)を「実質的に含まない」という用語は、前記対象物が全く存在しないこと、又は、本発明の意図する目的に影響を与えることなく、非常にわずかで邪魔にならない量(程度)でのみ存在することを表す。例えば、このような対象物は、例えば不可避不純物として意図せずに添加又は利用されることもあり得る。「実質的に含まない」は、好ましくは、本発明の方法において定義される銅又は銅合金の表面に関して定義する場合、前記表面の総質量に対して、又は、本発明の方法において定義される保護剤溶液に関して定義する場合、前記溶液の総質量に対して、0(ゼロ)ppm~50ppmを表し;好ましくは0ppm~25ppm、より好ましくは0ppm~10ppm、更により好ましくは0ppm~5ppm、最も好ましくは0ppm~1ppmを表す。ゼロppmは、それぞれの対象物が含まれていないことを表す。この原理は、ナノ粗面化表面層及び有機層にも同様に適用される。
【0048】
上記に定義したような(好ましくは本文全体を通じて定義するような)酸性非エッチング保護剤水性溶液で適切に処理された好ましいナノ粗面化表面層は、(a)保護剤溶液を利用しない方法と比較して、又は(b)組成の異なる保護剤溶液、特に1種又は2種以上の過酸化物を含まない、若しくは総量が0.4wt-%を超える1種又は2種以上の過酸化物を含む保護剤溶液を利用する方法と比較して、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度の更なる向上を示す。接着強度の増加は、特に、温度上昇を含む後に続く処理工程における銅の再酸化の減少に起因すると想定される。これは、潜在的なエッチング能力を持つ少量の前記1種又は2種以上の過酸化物が存在するので、驚くべきことである。
【0049】
理論によって拘束されることを望むものではないが、工程(ii)において、アミノアゾールが様々な銅種と錯体を形成し、銅又は銅合金の表面に吸着すると想定される。更に、吸着する錯体は、銅又は銅合金の表面に形成され、それによって薄い保護フィルムを形成すると想定される。したがって、工程(ii)の間に、1種又は2種以上のアミノアゾールが、銅又は銅合金の保護された表面が結果として生じるように前記銅又は銅合金の表面に吸着し、好ましくは、保護されたナノ粗面化表面層が結果として生じるように前記ナノ粗面化表面層に吸着する、本発明の方法が好ましい。
【0050】
本発明の方法では、保護剤溶液と接触させた際に、エッチングが起こらないことが必須である。これは、銅又は銅合金の表面、好ましくはナノ粗面化表面層が元の状態を保つ、即ち、除去されず、その全表面積が増加しないことを意味する。これは主として、過剰な過酸化物を回避し、非エッチングpHを慎重に維持し、強度に腐食性の無機酸を回避することによって達成される。更に、アミノアゾールが必要である。特に、過酸化物は、エッチング溶液中でのその潜在的なエッチング能力、特に銅をエッチングすることで知られている。したがって、接着強度を増加させるための非エッチング法において、過酸化物の存在が、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度を更に増加させることは、驚くべきことであった。
【0051】
したがって、本発明(方法及び酸性非エッチング保護剤水性溶液)の文脈において、酸性非エッチング保護剤水性溶液が、前記1種又は2種以上の過酸化物(好ましくは本文を通じて好ましいものと記載されるような)を含むことは必須である。「総量が0.4wt-%以下」という用語(及び他の全ての好ましい総量)における「以下(未満)」という単語は、前記過酸化物が完全に存在しない可能性があることを意味しない、即ち、以下(未満)にはゼロwt-%が含まれない。したがって、1種又は2種以上の過酸化物は、0wt-%を超える総量で存在する。好ましくは、前記1種又は2種以上の過酸化物の総量は、保護剤溶液の総質量に対して、少なくとも0.01wt-%、より好ましくは少なくとも0.03wt-%、更により好ましくは少なくとも0.05wt-%、最も好ましくは少なくとも0.07wt-%である。
【0052】
本発明の文脈において、過酸化物は、過酸化物部分(-O-O-)を含む化合物であり、各酸素原子は、酸化数-1(マイナス1)を有する。好ましいのは、1種又は2種以上の過酸化物が、過酸化水素、有機過酸化物、及び無機過酸化物からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0053】
好ましい有機過酸化物は、有機ペルオキシ酸及び非酸性アルキル過酸化物からなる群から選択される。好ましい有機ペルオキシ酸は、過酢酸である。好ましい非酸性アルキル過酸化物は、tert-ブチルヒドロペルオキシドである。
【0054】
好ましい無機過酸化物は、無機ペルオキシ酸及び金属過酸化物からなる群から選択される。好ましい無機ペルオキシ酸は、ペルオキシ一硫酸及びペルオキシ二硫酸である。好ましい金属過酸化物は、アルカリ金属過酸化物、より好ましくは過酸化ナトリウム及びペルオキシ二硫酸カリウムである。
【0055】
より好ましいのは、1種又は2種以上の過酸化物が、過酸化水素及び有機過酸化物からなる群から選択される、本発明の方法である。特に、場合によっては、酸性非エッチング保護剤水性溶液が無機ペルオキシ酸を実質的に含まず、好ましくは含まない;より好ましい場合は、無機ペルオキシ酸及び金属過酸化物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0056】
最も好ましいのは、1種又は2種以上の過酸化物が過酸化水素を含み、好ましくは過酸化水素である、本発明の方法である。最も好ましくは、酸性非エッチング保護剤水性溶液中、過酸化水素のみが過酸化物化合物である。過酸化水素は、水素と酸素のみからなり、したがって、追加の化合物又は元素で作業環境を汚染しない。更に、過酸化水素は、酸性非エッチング保護剤水性溶液にごく少量を利用するだけで、接着強度を十分に高める。
【0057】
好ましいのは、1種又は2種以上の過酸化物の総量が、保護剤溶液の総質量に対して、0.35wt-%以下、好ましくは0.30wt-%以下、より好ましくは0.25wt-%以下、更により好ましくは0.20wt-%以下、最も好ましくは0.16wt-%以下、更に最も好ましくは0.12wt-%以下である、本発明の方法である。
【0058】
より好ましいのは、1種又は2種以上の過酸化物が過酸化水素を含み、酸性非エッチング保護剤水性溶液中の過酸化物の総量が、保護剤溶液の総質量に対して、0.35wt-%以下、好ましくは0.30wt-%以下、より好ましくは0.25wt-%以下、更により好ましくは0.20wt-%以下、最も好ましくは0.16wt-%以下、更に最も好ましくは0.12wt-%以下である、本発明の方法である。このような場合、過酸化水素は、酸性非エッチング保護剤水性溶液中の全過酸化物の総質量に対して、質量パーセントの点で好ましくは主な過酸化物(50wt-%を超える)である。
【0059】
最も好ましいのは、酸性非エッチング保護剤水性溶液中、過酸化水素のみが過酸化物であり、酸性非エッチング保護剤水性溶液中の過酸化物の総量が、保護剤溶液の総質量に対して、0.35wt-%以下、好ましくは0.30wt-%以下、より好ましくは0.25wt-%以下、更により好ましくは0.20wt-%以下、最も好ましくは0.16wt-%以下、更に最も好ましくは0.12wt-%以下である、本発明の方法である。この場合、過酸化物の総量は、過酸化水素の総量に等しい。
【0060】
望ましくないエッチングを回避するため、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、そのエッチング特性、特に銅をエッチングすることで周知の無機酸をほとんど含有しない。それらの総量は、保護剤溶液の総質量に対して、0~0.01wt-%の範囲である。
【0061】
酸性非エッチング保護剤水性溶液が過酸化物部分を更に含む無機酸(例えばペルオキシ一硫酸)を含む場合、本発明の文脈において、そのような化合物は、(ii-c)の1つに数えられ、即ち、主に過酸化物であるとみなされる。好ましくは、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、ペルオキシ一硫酸及びペルオキシ二硫酸を実質的に含まず、好ましくは含まない。より好ましくは、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、過酸化物部分を更に含む無機酸を実質的に含まず、好ましくは含まない。これにより、意図しないエッチングが回避される。
【0062】
好ましいのは、酸性非エッチング保護剤水性溶液が、硫酸、硝酸、塩酸、及びリン酸からなる群から選択される無機酸のうちの1種、2種以上、又は全てを実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法である。この場合、前述の具体的総量(ppm単位)が前述の無機酸のそれぞれに個別に適用されるが、ただし、これらの全ての酸の総量は、保護剤溶液の総質量に対して、合計で0.01wt-%を超えない。
【0063】
非常に好ましくは、本発明の方法において、非エッチング保護剤溶液は、硫酸を実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0064】
特に好ましいのは、酸性非エッチング保護剤水性溶液が無機酸を実質的に含まず、好ましくは含まない本発明の方法である。この場合、前述の具体的総量(ppm単位)が全ての無機酸の合計に適用される。これは、過酸化物部分を更に含むものを除く全ての無機酸に適用される。
【0065】
銅用のエッチング溶液には、多くの場合、銅エッチングを加速させるために、典型的にはハロゲン化物イオンが存在することも公知である。したがって、酸性非エッチング保護剤水性溶液が塩化物イオン及びフッ化物イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない、好ましくはハロゲン化物イオンを実質的に含まず、好ましくは全く含まない、本発明の方法が好ましい。酸性非エッチング保護剤水性溶液がフッ素原子を含有する化合物を実質的に含まず、好ましくは含まないことが更に好ましい。これにより、望ましくないエッチングが回避される。
【0066】
酸性非エッチング保護剤水性溶液がリン酸イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない、好ましくはリン酸部分を含む化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、より好ましくは、リンを含有する化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0067】
場合によっては、酸性非エッチング保護剤水性溶液がポリマーを実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0068】
場合によっては、酸性非エッチング保護剤水性溶液が第四級窒素部分を含む化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0069】
場合によっては、酸性非エッチング保護剤水性溶液が1つ又は2つ以上のスルフヒドリル基を含む化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0070】
本発明の方法の工程(ii)において定義するような酸性非エッチング保護剤水性溶液は、酸性(即ち、6.5以下のpH)の水性溶液であり、即ち、水が主な溶媒であり、好ましくは水のみが溶媒である。
【0071】
酸性非エッチング保護剤水性溶液が2.5~6の範囲、好ましくは2.7~5.8の範囲、より好ましくは2.9~5.5の範囲、最も好ましくは3.1~4.9の範囲のpHを有する、本発明の方法が好ましい。pHが2.5を大幅に下回る場合、望ましくないエッチングが起こり、それは、銅又は銅合金の表面に有害である。pHが6を大幅に上回る場合、アミノアゾールの吸着が不十分となり、酸性非エッチング保護剤水性溶液の全体的な性能が満足のいかないものとなる。非常に好ましいpH範囲は、4.1~4.9である。本発明の文脈において、pHは、25℃の温度を参照する。
【0072】
本発明の方法において、1種又は2種以上のアミノアゾールは、酸性非エッチング保護剤水性溶液における必須の化合物である(先に概説した理由による)。独自の実験では、前記アミノアゾールを酸性非エッチング保護剤水性溶液に利用した場合のみ満足のいく結果が得られることが示唆されている。
【0073】
本発明の文脈において、アミノアゾールは、複素環式5員芳香族環を有する化合物を表し、化合物は、少なくとも1つの(好ましくは1つの)アミノ部分(-NH2)を更に含み、5員芳香族環は、好ましくは少なくとも2つの窒素環原子をヘテロ原子として含む。好ましくは、窒素原子のみが芳香族環内のヘテロ原子である。
【0074】
1種又は2種以上のアミノアゾールが、独立して芳香族環に少なくとも3つの窒素環原子、より好ましくは芳香族環に少なくとも4つの窒素環原子を含む、本発明の方法が好ましい。
【0075】
好ましいのは、少なくとも1つのアミノ部分(好ましくは1つのアミノ部分)が共有結合を介して芳香族環に、好ましくは芳香族環の炭素環原子に直接結合している、本発明の方法である。
【0076】
場合によっては、芳香族環がイミダゾールではない、本発明の方法が好ましい。
【0077】
好ましいのは、1種又は2種以上のアミノアゾールのそれぞれにおいて、5員芳香族環のみが環構造である、本発明の方法である。
【0078】
好ましいのは、1種又は2種以上のアミノアゾールが、アミノテトラゾール、アミノトリアゾール、置換アミノトリアゾール、及び置換アミノテトラゾールからなる群から選択され、好ましくはアミノテトラゾール及び置換アミノテトラゾールからなる群から選択され、最も好ましくは、1種又は2種以上のアミノアゾールが5-アミノテトラゾールを含む、本発明の方法である。好ましくは、アミノテトラゾールはアミノアルキルテトラゾール、例えば5-(アミノメチル)-テトラゾールも含むが、アミノアルキルテトラゾールは、5-アミノテトラゾールと比較してあまり好ましくない。
【0079】
好ましくは、酸性非エッチング保護剤水性溶液において、アミノアゾールのみがアゾール化合物である。独自の実験では、アミノアゾールが本発明の方法において接着強度の最良の増加を実現することが示されている。
【0080】
置換アミノトリアゾール及び置換アミノテトラゾールにおいて、好ましい置換基は、独立してアルキル基である。好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基及びプロピル基である。場合によっては、1-プロピル-5-アミノテトラゾール及び1-メチル-5-アミノテトラゾールが好ましい置換アミノテトラゾールである。
【0081】
好ましいのは、1種又は2種以上のアミノアゾールが、保護剤溶液の総質量に対して、2.0wt-%以下、好ましくは1.5wt-%以下、より好ましくは1.0wt-%以下、最も好ましくは0.8wt-%以下の総量で存在する、本発明の方法である。
【0082】
より好ましいのは、1種又は2種以上のアミノアゾールが5-アミノテトラゾールを含み、酸性非エッチング保護剤水性溶液中のアミノアゾールの総量が、保護剤溶液の総質量に対して、2.0wt-%以下、好ましくは1.5wt-%以下、より好ましくは1.0wt-%以下、最も好ましくは0.8wt-%以下である、本発明の方法である。このような場合、5-アミノテトラゾールは、酸性非エッチング保護剤水性溶液中の全てのアミノアゾールの総質量に対して、質量パーセントの点で好ましくは主なアミノアゾール(50wt-%を超える)である。
【0083】
最も好ましいのは、酸性非エッチング保護剤水性溶液中、5-アミノテトラゾールのみがアミノアゾールであり、酸性非エッチング保護剤水性溶液中のアミノアゾールの総量が、保護剤溶液の総質量に対して、2.0wt-%以下、好ましくは1.5wt-%以下、より好ましくは1.0wt-%以下、最も好ましくは0.8wt-%以下である、本発明の方法である。更により好ましいのは、5-アミノアゾールのみが酸性非エッチング保護剤水性溶液中のアゾール化合物であり、酸性非エッチング保護剤水性溶液中のアゾール化合物の総量が、保護剤溶液の総質量に対して、2.0wt-%以下、好ましくは1.5wt-%以下、より好ましくは1.0wt-%以下、最も好ましくは0.8wt-%以下である、本発明の方法である。
【0084】
好ましいのは、酸性非エッチング保護剤水性溶液において、全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が1以下であり、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.6以下であり、更により好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.4以下である、本発明の方法である。望ましくないエッチングを回避するため、1:1以下のモル比を有することが最も望ましく、より好ましくは、全アミノアゾールのモル濃度は、全過酸化物のモル濃度より高い。
【0085】
本発明の方法において、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、好ましくは有機酸を含む。有機酸は主に、酸性保護剤水性溶液のpHを調節するために利用される。これは、アミノアゾール化合物は、溶解度を増加させるためにアルカリ性溶液に溶解させることが多いので、必要となる場合がある。
【0086】
酸性非エッチング保護剤水性溶液は、スルホン酸を実質的に含まず、好ましくは含まないことが好ましい。典型的には、このような酸は強すぎて、望ましくないエッチングを引き起こす場合がある。
【0087】
好ましくは、1種又は2種以上の有機酸のそれぞれは、正のpKa値、好ましくは3.0又はそれを超え、好ましくは3.3又はそれを超え、より好ましくは3.3~6.5の範囲のpKa値を有する。これらのpKa値は、22℃の温度に基づく。
【0088】
好ましいのは、1種又は2種以上の有機酸及びその塩が、モノカルボン酸、ヒドロキシモノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシトリカルボン酸、アミノカルボン酸、及びその塩からなる群から選択され;好ましくは、モノカルボン酸、ヒドロキシモノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシトリカルボン酸、及びその塩からなる群から選択され;最も好ましくは、モノカルボン酸、ヒドロキシモノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、及びその塩からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0089】
特に好ましい具体的な有機酸及びその塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、グリコール酸、n-酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、トレオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、及びその塩からなる群から選択される。
【0090】
最も好ましいのは、1種又は2種以上の有機酸及びその塩がギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及びその塩、最も好ましくはギ酸、酢酸、及びその塩からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0091】
1種又は2種以上の有機酸は、塩として存在し得る。したがって、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、好ましくは金属カチオンを含む。酸性非エッチング保護剤水性溶液中の好ましい金属カチオンは、アルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオン、好ましくはアルカリ金属カチオン、より好ましくはナトリウムカチオン及びカリウムカチオンである。最も好ましくは、1種又は2種以上の有機酸は、その酸性形態で存在する。
【0092】
好ましいのは、1種又は2種以上の有機酸及びその塩の有機酸残基アニオンの総量が、保護剤溶液の総質量に対して、4wt-%以下であり、好ましくは3.2wt-%以下であり、より好ましくは2.5wt-%以下であり、更により好ましくは1.9wt-%以下であり、最も好ましくは1.5wt-%以下である、本発明の方法である。総量が過度に少ない場合、所望のpHが適切に得られない。総量が4wt-%を大幅に上回る場合、時として望ましくないエッチングが観察される。
【0093】
好ましくは、本発明の方法において利用される酸性非エッチング保護剤水性溶液は、基本的に溶媒としての水、(ii-a)、(ii-b)、(ii-c)、(ii-d)、及び任意選択で導電性カチオンとしてのアルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンからなる。接着強度を十分に増加させるために、酸性非エッチング保護剤水性溶液には更なる化合物が必ずしも必要ない。
【0094】
これに基づき、溶媒、(ii-a)、(ii-b)、(ii-c)、(ii-d)、及び任意選択で導電性カチオンとしてのアルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンを含む酸性非エッチング保護剤水性溶液は、酸性非エッチング保護剤水性溶液における全原材料の総質量の少なくとも99wt-%を構成することが最も好ましい。
【0095】
本発明の方法の工程(ii)において、接着強度を増加させるように、酸性非エッチング保護剤水性溶液を前記表面を含む基板に接触させる。好ましいのは、工程(ii)において、接触させる工程が5秒~600秒間、好ましくは10秒~300秒間、より好ましくは15秒~150秒間、更により好ましくは20秒~90秒間、最も好ましくは25秒~45秒間行われる、本発明の方法である。600秒でもエッチングは観察されないが、600秒を大幅に上回っても通常は利点がなく、商業的な観点からは、望ましくない。対照的に、接触させる工程が5秒を大幅に下回ると、接着強度の増加が見られないことがある。
【0096】
好ましいのは、工程(ii)において、接触させる工程が15℃~50℃の範囲、好ましくは20℃~40℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法である。
【0097】
本発明の方法において利用される酸性非エッチング保護剤水性溶液は、好ましくは化学的及び/又は機械的研磨、例えばCMPのためのものではない。したがって、本発明の方法は、研磨法ではなく、好ましくはCMP法ではない。
【0098】
本発明の方法において利用される酸性非エッチング保護剤水性溶液は、研磨粒子(磨砕粒子と呼ばれることもある)を含まない。典型的な研磨粒子は、二酸化ケイ素粒子及びアルミニウム含有粒子である。したがって、本発明の方法において、酸性非エッチング保護剤水性溶液は、透明な溶液であり、即ち、固体粒子を含まない。
【0099】
本発明の方法の結果として、銅又は銅合金の表面と有機層との間の接着強度が増加する。好ましいのは、追加の工程、
(iii)工程(ii)の間に酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させた銅又は銅合金の表面が有機層と接触するように、工程(ii)の後に得られる基板上に有機層を積層する工程
を含む、本発明の方法である。
【0100】
工程(iii)の後、有機層は、銅又は銅合金の表面に直接接触している。前記表面は本発明の方法に従って改質されているため、有機層と前記表面との間の接着強度が増加する。銅又は銅合金の表面が銅又は銅合金回路を含む(好ましくは銅又は銅合金回路である)場合、有機層は、好ましくは非導電性基板の非導電性領域及び導電性銅/銅合金領域を覆う。
【0101】
好ましくは、積層する工程は、真空及び高温下、好ましくは50℃~140℃の範囲の温度で行われる。
【0102】
後に続く工程において、積層した有機層を、有機層が重合するように、好ましくは硬化させる、即ち、より高い温度での熱処理に供する。したがって、好ましいのは、工程(iii)の後に、追加の工程、
(iv)工程(iii)の後に得られる有機層を有する基板を、有機層が重合するように、142℃~220℃の範囲、好ましくは145℃~210℃の範囲、より好ましくは150℃~205℃の範囲の温度での熱処理に供する工程
を含む、本発明の方法である。
【0103】
好ましくは、工程(iv)における処理は、20分~180分間、好ましくは20分~150分間行われる。
【0104】
有機層は、好ましくは永久層である。「永久(的)」という用語は、本発明の方法の間、又はその後に有機層の除去が意図されていないことを表す。有機層は、一時的な層ではなく;むしろ、最も好ましくは、非導電性基板、好ましくはPCBの耐用期間全体にわたって存在し続ける。しかし、この用語は、有機層の様々な一時的条件、例えば重合化及び非重合化を除外するものではない。
【0105】
好ましくは、本発明の方法において処理される非導電性基板は、回路基板の前駆体、好ましくは多層印刷回路基板の前駆体である。このような好ましい回路基板の前駆体は、最終的に印刷回路基板を形成するために必要である。この場合、好ましくは、本発明の方法の第1のサイクルにおいて、工程(iii)で積層される有機層は、好ましくはビルドアップ層であり、それは、本発明の方法の後に続く第2のサイクルの工程(i)における非導電性基板を形成する。
【0106】
したがって、工程(iii)における有機層がビルドアップ層である、本発明の方法が好ましい。
【0107】
より好ましいのは、工程(iii)における有機層が、銅層を含まないビルドアップ層、より好ましくは金属層を含まないビルドアップ層である、本発明の方法である。後に続く第2のサイクルの工程(i)のために、少なくとも一方の側に銅又は銅合金の表面(好ましくは回路、最も好ましくは本文を通じて好ましいと定義されるようなもの)を含む非導電性基板を形成するため、有機層(好ましくは銅層を含まないビルドアップ層、より好ましくは金属層を含まないビルドアップ層)が、第1のサイクルの工程(iii)の後(最も好ましくは工程(iv)の後)に、それぞれの銅又は銅合金の表面(好ましくは回路、最も好ましくは本文を通じて好ましいと定義されるようなもの)を形成するための銅メタライゼーションプロセスに供される。その後、好ましくはナノ粗面化表面層が、好ましくは本文を通じて定義されるように形成される。このような一連のサイクルは、セミアディティブ法に典型的なものであり、独自の実験では、本発明の方法が、こうしたプロセスに特に有益であることが示されている。したがって、本発明の方法は、好ましくは印刷回路基板を製造するためのセミアディティブ法に利用される。
【0108】
本発明の方法の工程(i)において準備される非導電性基板は、好ましくはコア基板又は本発明の方法の前のサイクルの工程(iii)で積層される有機層である。コア基板は、好ましくは多層PCBを構築するための基礎及び出発点である。好ましいコア基板は、少なくとも一方の側に銅又は銅合金の表面(好ましくは銅/銅合金回路)を有するガラスクロス強化繊維材料を含む。好ましくは、そのようなコア基板は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2からなる群から選択されるフィラー粒子の1群又は2群以上を更に含む。そのようなコア基板は、ビルドアップ層ではない。
【0109】
好ましくは、本発明の方法では、工程(iii)において、有機層はフィラー繊維を実質的に含まず、好ましくは含まない、好ましくはガラス繊維を実質的に含まず、好ましくは含まない。代わりに、工程(iii)において、有機層がフィラー粒子、好ましくはSiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2からなる群から選択される1種又は2種以上のフィラー粒子、最も好ましくはSiO2を含む、本発明の方法が好ましい。
【0110】
工程(iii)において、有機層が乾燥フィルム又は液体、好ましくは乾燥フィルム、最も好ましくは乾燥フィルムビルドアップ層である、本発明の方法が好ましい。この文脈における液体有機層が、十分に流動的ではないが、本技術分野において典型的なある特定の粘度を呈することは当業者には公知である。同様に、乾燥フィルムが完全に乾燥しているのではなく、むしろある特定の量の典型的な溶媒を含有していることは、当業者には公知である。
【0111】
工程(iii)において、有機層が50μm以下、好ましくは33μm以下、より好ましくは21μm以下、更により好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下の層厚を有する、本発明の方法が好ましい。
【0112】
独自の実験では、50μm以下、特に21μm以下の層厚を呈する有機層、好ましくはビルドアップ層は、特に高温にさらされた場合に酸素透過に対して非常に影響を受けやすいことが示されている。このような透過は、銅の再酸化につながるため、極めて望ましくない。したがって、本発明の方法は、望ましくない銅の酸化銅への再酸化を防止するために、非常に薄い、特に21μm未満の有機層にとって特に有益である。
【0113】
好ましくは、有機層は、エポキシ化合物、ポリイミド、シアン酸エステル、ビスマレイミド-トリアジン化合物、ポリプロピレンエーテル、及びポリオレフィンからなる化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。工程(iii)において、有機層がエポキシ化合物を含み、より好ましくは有機層がエポキシ化合物を含むビルドアップ層である、本発明の方法が好ましい。
【0114】
本発明はまた、
(a)1種又は2種以上のアミノアゾール、
(b)1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩、
(c)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0.4wt-%以下の1種又は2種以上の過酸化物、及び
(d)保護剤溶液の総質量に対して、総量が0~0.01wt-%の無機酸
を含む酸性非エッチング保護剤水性溶液であって、
酸性非エッチング保護剤水性溶液中の全過酸化物の全アミノアゾールに対するモル比が1以下であり、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.6以下であり、更により好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.4以下である、酸性非エッチング保護剤水性溶液に関する。
【0115】
好ましいのは、全アミノアゾールのモル濃度が全過酸化物のモル濃度よりも高い、本発明の酸性非エッチング保護剤水性溶液である。
【0116】
この保護剤溶液の利点は、本発明の方法に関して上記の本文に既に説明されている。本発明の方法に関する前述の事柄は、本発明の酸性非エッチング保護剤水性溶液にも同様に適用される。
【0117】
本発明を、下記の非限定的実施例によって更に説明する。
【実施例
【0118】
A.サンプル調製
工程(i):少なくとも一方の側に銅又は銅合金の表面を含む非導電性基板を準備する工程:
本発明の方法を代表して、銅箔(150mm×75mm×35μm)を使用した。
【0119】
第1の工程において、全ての箔の銅の表面を、180ml/LのSoftClean UC168、200ml/LのCupraEtch Starter、75ml/LのHydrox(全てAtotech社の製品)、及び545ml/LのDI水を含有する硫酸/H2O2溶液を使用してエッチング洗浄し、エッチング洗浄済銅箔を得た。エッチング洗浄は、重酸化物及び他の化合物、例えば変色防止剤及び/又は界面活性剤を除去した。エッチング洗浄後、エッチング洗浄済銅箔を冷水でおよそ2分間すすいだ。結果として、エッチング洗浄済すすぎ済銅箔が得られた。
【0120】
続いて、ナノ粗面化表面層を形成した。
【0121】
次に、第1の工程後に得られたエッチング洗浄済すすぎ済銅箔を酸化と後に続く還元反応によって化学的に処理した。
【0122】
第2の工程において、前記箔を15.5ml/LのNovaBond IT Stabilizer(Atotech社)を含有する状態調節溶液に50℃で30秒間浸漬した。状態調節剤は、pH及び電気化学ポテンシャルに関して銅表面を安定化させる。結果として、状態調節済銅箔が得られた。
【0123】
第3の工程において、状態調節済銅箔を、100ml/LのNovaBond IT 102(Atotech社)及び15.5ml/LのNovaBond IT Stabilizer(Atotech社)を含む酸化性溶液中で処理した。処理は、70℃で6分間行われ、Cu(0)のそれぞれCu(I)-酸化物及びCu(II)-酸化物への均一で自己制限的な変換をもたらし、最終的に最大層厚が180nm未満の変換済銅の針状層が形成された。酸化後、酸化済銅箔を冷水ですすいだ。
【0124】
第4の工程において、酸化済すすぎ済銅箔を、20ml/LのNovaBond IT Reducer(Atotech社)及び5ml/LのNovaBond IT Stabilizerを含む還元性溶液に接触させた。還元は、35℃で5分間行い、還元済銅箔が得られた。還元は、酸化銅を主にCu(0)に変換し、それによって変換済銅の針状層の化学物質に対する安定性が強化された。還元する間、針状形態は維持された。還元に続いて、銅箔を冷水でおよそ2分間すすいだ。結果として、ナノ粗面化表面層を有する還元済すすぎ済銅箔が得られた。
【0125】
工程(ii):前記表面を含む前記基板を酸性非エッチング保護剤水性溶液と接触させる工程:
第5の工程において、ナノ粗面化表面層を有する還元済すすぎ済銅箔を、表1に要約するような様々な酸性非エッチング保護剤水性溶液(PS)にさらした。
【0126】
【表1】
【0127】
それぞれの場合において、還元済すすぎ済銅箔をそれぞれの保護剤溶液(PS)に30秒間浸漬し、保護剤溶液の温度は、およそ35℃であった。浸漬後、銅箔を冷水でおよそ30秒間すすぎ、続いて60℃から70℃の間の温度で乾燥させた。結果として、保護済すすぎ済銅箔が得られた。これらの銅箔を、続いて有機層の積層に供し、更に試験を行った。
【0128】
工程(iii):工程(ii)の後に得られた基板上に有機層を積層する工程:
積層する工程において、第5の工程後に得られた様々な保護済すすぎ済銅箔に、下記の商業的に公知のビルドアップ層(即ち、有機層)を積層した:細線回路用途向けに設計されたGX-T31及びGZ-41(いずれもAjinomoto社の製品)。
【0129】
積層は、室温が20℃~25℃の範囲、相対湿度が50%~60%のクリーンルームにおいて、真空下、およそ100℃で黄色光の下、真空ラミネータ(Dynachem社VA 7124-HP6)を使用して行った。各ビルドアップ層は、20μmの層厚を有する。
【0130】
工程(iv):工程(iii)の後に得られた有機層を有する基板を熱処理に供する工程:
工程(iii)の後に得られたそれぞれの基板を、従来の熱風対流オーブン(Heraeus社Oven UT 6200)を使用して160℃で60分間の熱処理に供し、ビルドアップ層を重合(即ち、硬化)させた。
【0131】
B.接着強度評価:
それぞれのサンプルについて、接着強度(初期及びHAST)を評価した。
「初期」 工程(iv)の後、その他の処理の前に判定した接着強度
「HAST」 HAST試験(96時間、130℃、相対湿度85%、HASTチャンバ:EHS-221M)後に判定した接着強度
【0132】
結果の概要を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2の値は、PS3が「初期」の接着強度、及び、最も重要なことに、「HAST」後の接着強度を大幅に向上させることを示している。
【0135】
非エッチング接着促進プロセスで利用される非エッチング保護剤溶液に比較的少量の強酸化剤、例えばH2O2を添加すると、公知の非エッチング接着促進プロセス(US 2002/0192460 A1参照)と比較して、有機層に対する接着強度を更に向上させることは、驚くべきことであった。GZ-41の場合、接着強度は、US'460と比較して2倍となり、少量の強酸化剤を含まない組成物と比較して、ほぼ2倍となった。GX-T31の場合の接着強度の増加は「初期」ではわずかであるが、「HAST」後にはUS'460に対応するPS1と比較してほぼ40%の大幅な増加が観察されている。
【0136】
接着強度の増加は、PS3と同様であるが、酢酸の濃度が1wt-%未満であることだけが異なる保護剤溶液でも得られた(データは示さず)。
【0137】
サンプルの接着強度を判定するため、各サンプルから幾つかの帯状片を準備した。そのために、それぞれの銅箔を、硬質基板(銅箔と同一のサイズ)に、銅箔を有する硬質基板がビルドアップ層に面するようにして接着した。結果として、構造的に強化されたビルドアップ層を有する銅箔が得られた。
【0138】
その後、それぞれの強化された銅箔を、前記帯状片にスライス(10×100mm、ミリングカッター、Walter Lemmen社CCD)した。
【0139】
帯状片を剥離力測定機(Roell Zwick社Z010)にかけ、銅箔をそれぞれの構造的に強化されたビルドアップ層から層剥離するのに必要な力に基づき接着強度(角度:90°、速度:50mm/分)を個別に評価した。
【0140】
追加の対照実験において、PS3のエッチング挙動を調べた(データは示さず)。浸漬中、質量の減少は観察されず、銅及びナノ粗面化表面層はそれぞれ除去されず、元の状態を保ったことが示された。