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  • 特許-半透明電波吸収体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】半透明電波吸収体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230919BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230919BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/025
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021017938
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022120897
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-311330(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009229(WO,A1)
【文献】特開平01-235195(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168008(WO,A1)
【文献】特開2017-163141(JP,A)
【文献】特開2005-109095(JP,A)
【文献】特開2012-180630(JP,A)
【文献】特開2008-174701(JP,A)
【文献】特開2008-138350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ETCシステムが設けられた高速道路のインターチェンジにおけるスロープの側壁上に立設されるパネル部材の半透明電波吸収体であって、
少なくとも一方の面が梨地に形成された透明誘電体層を備えた半透明電波吸収体。
【請求項2】
請求項1に記載された半透明電波吸収体において、
片方向入射用のパネル部材である半透明電波吸収体。
【請求項3】
請求項2に記載された半透明電波吸収体において、
前記透明誘電体層の梨地に形成された面が、電波入射側とは反対側の前記半透明電波吸収体における最外面である半透明電波吸収体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された半透明電波吸収体において、
前記透明誘電体層の電波入射側に積層された抵抗膜を更に備えた半透明電波吸収体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された半透明電波吸収体において、
全光線透過率が50%以上である半透明電波吸収体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された半透明電波吸収体において、
ヘーズ値が65%以上95%以下である半透明電波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路の電子料金収受システム(ETCシステム)の料金体系は、定額制から距離制に移行する傾向が強まっている。この距離制への移行に伴い、インターチェンジのスロープ上には、車両と通信するための路側アンテナが設置される。路側アンテナからの電波は、隣接する一般道や上部本線まで拡散するため、対象車両以外の車両がその電波を受信しないように、スロープの側壁上にパネル状の電波吸収体を立設することが必要となる。
【0003】
電波吸収体は、基材に導電性カーボンを含浸させた不透明タイプのものが一般的であるが、樹脂板間にITOフィルム等の導電フィルムを積層した透明タイプのものもある。インターチェンジの出口の先は一般道と合流していることが多いので、視認性の確保のため、インターチェンジのスロープの側壁上に立設される電波吸収体は、これらのうちの透明タイプのものとなる。特許文献1及び2には、かかる透明タイプの電波吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-063587号公報
【文献】特開2004-111750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、インターチェンジに民家や企業が隣接していると、透明タイプの電波吸収体では、車両からそれらの屋内の視認が可能であるため、プライバシーが侵害される虞がある。
【0006】
本発明の課題は、視認性確保及びプライバシー保護が可能である半透明電波吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ETCシステムが設けられた高速道路のインターチェンジにおけるスロープの側壁上に立設されるパネル部材の半透明電波吸収体であって、少なくとも一方の面が梨地に形成された透明誘電体層を備える
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明誘電体層の少なくとも一方の面が梨地の凹凸面に形成され、全体として半透明とされているので、視認性を確保しつつ、プライバシーの保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る半透明電波吸収体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る半透明電波吸収体10を示す。実施形態に係る半透明電波吸収体10は、例えば、ETCシステムが設けられた高速道路のインターチェンジにおけるスロープの側壁上に立設される片方向入射用のパネル部材である。
【0012】
実施形態に係る半透明電波吸収体10は、電波入射側から順に積層された第1透明誘電体層11、第1抵抗膜12、第2透明誘電体層13、第2抵抗膜14、及び第3透明誘電体層15を備える。そして、第3透明誘電体層15の電波入射側とは反対側の半透明電波吸収体10における最外面が梨地に形成されている。
【0013】
ここで、本出願における「透明」とは、JIS K7136:2000に準じて求められるヘーズ値が5%以下であることをいう。本出願における「半透明」とは、ヘーズ値が65%以上95%以下であることをいう。本出願における「梨地」とは、微細な凹凸によって均一に形成された無方向性のつや消し表面形態をいう。
【0014】
実施形態に係る半透明電波吸収体10によれば、第3透明誘電体層15の電波入射側とは反対側の半透明電波吸収体10における最外面が梨地の凹凸面に形成され、全体として半透明とされているので、視認性を確保しつつ、プライバシーの保護を図ることができる。しかも、半透明電波吸収体10における電波入射側とは反対側の最外面が梨地に形成されており、第3透明誘電体層15の電波入射側に積層された低抵抗の第2抵抗膜14により電波の透過が規制されるので、梨地表面の電波吸収性能への影響を抑制することができる。また、半透明電波吸収体10における最外面が梨地に形成されており、第1乃至第3透明誘電体層11,13,15の第1抵抗膜12又は第2抵抗膜14との接触面に形成されていないので、梨地表面による強度低下を回避することができる。
【0015】
第1乃至第3透明誘電体層11,13,15の形成材料としては、例えば、樹脂、ガラス等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。第1乃至第3透明誘電体層11,13,15は、同一材料で形成されていても、また、異種材料で形成されていても、どちらでもよい。第1乃至第3透明誘電体層11,13,15の厚さは、例えば1mm以上10mm以下である。なお、図1では、第2透明誘電体層13、第1透明誘電体層11、第3透明誘電体層15の順で厚さが厚いが、特にこれに限定されるものではない。
【0016】
第1及び第2抵抗膜12,14としては、例えば、光透過性を有する銀等の金属蒸着膜、酸化インジウムスズ膜(ITO膜)、酸化スズ膜等が挙げられる。第1及び第2抵抗膜12,14は、同一材料で形成されていても、また、異種材料で形成されていても、どちらでもよい。第1及び第2抵抗膜の厚さは、例えば50μm以上200μm以下である。
【0017】
第1乃至第3透明誘電体層11,13,15のそれぞれと、第1抵抗膜12及び/又は第2抵抗膜14とは、両面粘着テープ等により接着されている。実施形態に係る半透明電波吸収体10の全体厚さは、例えば5mm以上25mm以下である。
【0018】
実施形態に係る半透明電波吸収体10のJIS K7361-1:1997に準じて測定される全光線透過率は、視認性確保とプライバシー保護とのバランスの観点から、好ましくは50%以上75%未満、より好ましくは60%以上75%未満、更に好ましくは70%以上75%未満である。
【0019】
実施形態に係る半透明電波吸収体10のヘーズ値は、視認性確保とプライバシー保護とのバランスの観点から、好ましくは65%以上95%以下、より好ましくは70%以上90%以下、更に好ましくは75%以上85%以下である。このヘーズ値は、JIS K7136:2000に準じて求められるものである。
【0020】
実施形態に係る半透明電波吸収体10の第3透明誘電体層15の梨地の凹凸面の算術平均粗さ(Ra)は、視認性確保とプライバシー保護とのバランスの観点から、好ましくは3μm以上8μm以下以下、より好ましくは4μm以上7μm以下以下、更に好ましくは5μm以上6μm以下である。この算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準じて求められるものである。
【0021】
実施形態に係る半透明電波吸収体10は、例えば、第1透明誘電体層11に第1抵抗膜12を貼り合わせるとともに、第3透明誘電体層15に第2抵抗膜14を貼り合わせた後、これらを第2透明誘電体層13と貼り合わせることにより製造することができる。
【0022】
なお、上記実施形態では、片方向入射用の半透明電波吸収体10としたが、特にこれに限定されるものではなく、両方向入射用であってもよい。
【0023】
上記実施形態では、第3透明誘電体層15の電波入射側とは反対側の半透明電波吸収体10における最外面が梨地に形成された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、第1乃至第3透明誘電体層11,13,15のうちの1又は2以上について、少なくとも一方の面が梨地に形成されていればよい。したがって、第3透明誘電体層15の電波入射側とは反対側の半透明電波吸収体10における最外面に加えて、又は、これに代えて、第1透明誘電体層11の電波入射側の半透明電波吸収体10における最外面、第1透明誘電体層11の電波入射側とは反対側の第1抵抗膜12との接触面、第2透明誘電体層13の電波入射側の第1抵抗膜12との接触面、第2透明誘電体層13の電波入射側とは反対側の第2抵抗膜14との接触面、及び第3透明誘電体層15の電波入射側の第2抵抗膜14との接触面のうちの1又は2以上が梨地に形成された構成であってもよい。
【実施例
【0024】
(電波吸収体)
<実施例>
上記実施形態と同様の構成の半透明電波吸収体10であって、第1及び2透明誘電体層11,13を、それぞれ厚さが4mm及び6mmのポリカーボネイト板で構成するとともに、第3透明誘電体層15を、一方の面が梨地に形成された厚さが2mmのポリカーボネイト板で構成し、且つ第1抵抗膜12を酸化インジウムスズ膜(ITO膜)及び第2抵抗膜14を銀蒸着フィルムでそれぞれ構成したものを実施例とした。
【0025】
<比較例>
第3透明誘電体層を、梨地を有さない厚さが2mmのポリカーボネイト板で構成したことを除いて実施例と同一構成の電波吸収体を比較例とした。
【0026】
(試験方法及び結果)
実施例及び比較例のそれぞれについて、JIS K7361-1:1997に準じて全光線透過率を測定した。また、JIS K7136:2000に準じて拡散透過率及びヘーズ値を求めた。さらに、JIS B0601:2013に準じて電波入射側とは反対側の最外面の算術平均粗さ(Ra)を求めた。試行回数を3回とし、その平均をデータとした。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、半透明電波吸収体の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0029】
10 半透明電波吸収体
11 第1透明誘電体層
12 第1抵抗膜
13 第2透明誘電体層
14 第2抵抗膜
15 第3透明誘電体層
図1