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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20230919BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021029787
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131056
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 才昇
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118867(JP,A)
【文献】特開2019-016558(JP,A)
【文献】特開2022-131049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと上記ケース内部に収容された電極体及び電解液とを備える蓄電デバイスのデバイス電圧の調整方法であって、
上記蓄電デバイスを、
容量性のデバイス成分及び上記デバイス成分の自己放電の大きさを示す短絡抵抗の並列回路と、上記蓄電デバイスの直流抵抗とを直列に接続した等価回路で示すとき、
上記蓄電デバイスは、
荷重で押圧され、上記デバイス成分が充電され成分電圧を生じている状態で、上記荷重を減少させると上記成分電圧が低下し、上記荷重を増加させると上記成分電圧が上昇する特性を有しており、
第1荷重で押圧され、上記デバイス成分に第1成分電圧を生じている上記蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を、上記第1荷重から変化させて、上記成分電圧を上記第1成分電圧から変化させる、荷重変化による電圧変化工程を備える
蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、
前記荷重変化による電圧変化工程に先立ち、前記第1荷重で押圧された前記蓄電デバイスの、前記第1成分電圧を検知する成分電圧検知工程を更に備え、
上記荷重変化による電圧変化工程は、
上記蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を変化させて、荷重変化後の変化後成分電圧を基準成分電圧に等しくする
荷重変化による基準電圧化工程である
蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、
前記荷重変化による電圧変化工程に先立ち、前記第1荷重で押圧された複数の前記蓄電デバイスの、前記第1成分電圧をそれぞれ検知する複数成分電圧検知工程を更に備え、
複数の前記蓄電デバイスから選択した基準蓄電デバイスに生じている上記第1成分電圧を基準第1成分電圧とし、
複数の上記蓄電デバイスのうち、基準蓄電デバイス以外で、かつ、上記第1成分電圧が上記基準第1成分電圧と異なる上記蓄電デバイスを被調整蓄電デバイスとしたとき、
上記荷重変化による電圧変化工程は、
上記被調整蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を変化させて、当該被調整蓄電デバイスの荷重変化後の変化後成分電圧を上記基準第1成分電圧に等しくする
荷重変化による電圧均一化工程である
蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、
前記荷重変化による電圧変化工程は、
複数の前記蓄電デバイスに共通して掛けられた上記荷重を変化させて、複数の上記蓄電デバイスの前記成分電圧をすべて加えた合計成分電圧を、基準合計成分電圧に等しくする
荷重変化による基準合計電圧化工程である
蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスのデバイス電圧を調整するデバイス電圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(以下、単に電池1とも言う)などの蓄電デバイスは、一般に、図1に示す等価回路Ecで示される。即ち、電池1の等価回路Ecは、容量性の電池成分(デバイス成分)1Bと、短絡抵抗Rpと、直流抵抗Rsとの3つの成分からなり、電池成分1B及び短絡抵抗Rpを並列に接続した並列回路Pcと直流抵抗Rsとを直列に接続した回路構成で示される。このうち電池成分1Bは、電池(蓄電デバイス)1がなす容量成分であり、この電池成分1Bには充電されることによって成分電圧VBBを生じているとする。直流抵抗Rsは、電池1の両端子部材30,40間において、電池成分1Bと直列に存在して見える電池抵抗である。一方、短絡抵抗Rpは、電池成分1Bの内部短絡によって生じる自己放電の大きさを示す抵抗である。破線矢印で示す自己放電電流IDは、電池成分1Bから短絡抵抗Rpに流れる自己放電の電流を示す。
【0003】
また、この電池(蓄電デバイス)1をプローブP1,P2を用いて外部電源EPに接続した場合、外部電源EPの一方のプローブP1と電池1の正極端子部材30との間、及び、外部電源EPの他方のプローブP2と電池1の負極端子部材40との間に、接触抵抗を生じる。図1では、これらの和を接触抵抗R12として示す。また、外部電源EP内、及び、外部電源EPからプローブP1,P2までに分布する配線抵抗Rwも生じる。外部電源EPから電池1に流れる電流を電源電流IPとし、電池1の両端子部材30,40間に生じる電圧を電池電圧VBとする。
【0004】
なお、電池成分1Bに生じる成分電圧VBBは、電源電流IPがゼロ(IP=0)の場合に、電池1の両端子部材30,40間に生じる電池電圧VBに一致する。このことから理解できるように、成分電圧VBBは、電池1の開路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)にも相当している。
【0005】
ところで、電池1などの蓄電デバイスを製造したり、試験したり、使用したりする各段階において、開路状態の電池電圧(デバイス電圧)VB、即ち、成分電圧VBBを基準電圧に揃えたり、他の大きさに変更したり、電流が流れている状態での電池電圧VBの大きさを変化させたい場合がある。このような場合、電池1を外部電源EPに接続し、充電あるいは放電して、電池電圧VB(成分電圧VBB)を所望の大きさとすることが行われる。
【0006】
これとは逆に、電池電圧VBを測定しておき、外部電源EPから、開路状態の電池電圧VB(成分電圧VBB)に等しい電源電圧を電池1に印加する場合もある。なお、後者に関連する従来技術として、特許文献1(特許文献1の特許請求の範囲等を参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-16558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電池(蓄電デバイス)1同士間には、個々の特性の僅かな違いや、自己放電電流IDの大きさ(短絡抵抗Rpの大きさ)の違いが存在する。このため、例えば、複数の電池1を、同一の成分電圧VBBに充電しても、時間の経過や温度変化の経由などにより、相互の成分電圧VBBの大きさに違いが生じる。例えば、同一の成分電圧VBBに充電した複数の電池1について、同様に、高温エージング(例えば、63℃×20時間)を施し、その後、冷却した場合、各電池1の成分電圧VBBは、相互に同じ大きさにはならず、僅かにバラツキを生じる。
【0009】
一方、これら複数の電池(蓄電デバイス)1に同一条件の試験や検査を行うにあたり、成分電圧VBBを、基準電圧に揃えた上で、試験等を開始したい場合がある。このように、成分電圧VBBを基準電圧に揃えるなど、現在の成分電圧VBBを僅かに変化させたい場合は、電池(蓄電デバイス)1の製造、試験、使用の各段階において存在しうる。
【0010】
他方、発明者らは、充電され、且つ、荷重が掛けられた電池(蓄電デバイス)について、掛けられている荷重を減少させると成分電圧(開路電圧)が僅かに低下し、これとは逆に、荷重を増加させると成分電圧(開路電圧)が僅かに上昇する場合があることを見出した。
本発明は、かかる知見に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスの成分電圧を調整する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、ケースと上記ケース内部に収容された電極体及び電解液とを備える蓄電デバイスのデバイス電圧の調整方法であって、上記蓄電デバイスを、容量性のデバイス成分及び上記デバイス成分の自己放電の大きさを示す短絡抵抗の並列回路と、上記蓄電デバイスの直流抵抗とを直列に接続した等価回路で示すとき、上記蓄電デバイスは、荷重で押圧され、上記デバイス成分が充電され成分電圧を生じている状態で、上記荷重を減少させると上記成分電圧が低下し、上記荷重を増加させると上記成分電圧が上昇する特性を有しており、第1荷重で押圧され、上記デバイス成分に第1成分電圧を生じている上記蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を、上記第1荷重から変化させて、上記成分電圧を上記第1成分電圧から変化させる、荷重変化による電圧変化工程を備える蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法である。
【0012】
上述の調整方法で検査する蓄電デバイスは、上述のように、蓄電デバイスに掛けられた荷重を減少させると成分電圧(開路電圧)が低下する一方、荷重を増加させる成分電圧が上昇する特性を有している。
そして、上述の調整方法では、蓄電デバイスに掛けられた荷重を、第1荷重から変化させて成分電圧を第1成分電圧から変化させる、荷重変化による電圧変化工程を備えている。このため、このデバイス電圧調整方法では、蓄電デバイスに対する充放電によらないで、蓄電デバイスの成分電圧(開路電圧)を変化させて、これを調整することができる。或いは、蓄電デバイスの成分電圧の調整によって、蓄電デバイスを流れる電流を調整することができる。
【0013】
上述の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法は、蓄電デバイスの製造過程において行うことができるほか、自動車等の装置に搭載された以降或いは単独で市場に置かれた以降の、使用中、使用済の蓄電デバイスに対して行うこともできる。また、蓄電デバイスの開発段階や量産段階において行う、蓄電デバイスの性能確認試験などにおいても行うことができる。
また、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタが挙げられる。
前述したように、成分電圧は、外部から蓄電デバイスに流れる電流をゼロとした場合に、蓄電デバイスの端子間に生じる開路電圧に相当しており、必ずしも蓄電デバイスの端子を回路から切断(開路)して測定する必要はない。
【0014】
荷重変化による電圧変化工程において行う荷重の変化としては、第1荷重を、単調に減少させるパターン、単調に増加させるパターンが挙げられる。また、荷重を増減させるパターンも挙げられる。荷重を増減させるパターンには、荷重を一旦減少させてから増加させる、あるいは、一旦増加させてから減少させるが挙げられる。また、荷重を繰り返し増減させるパターンも含む。
【0015】
(2)(1)の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、前記荷重変化による電圧変化工程に先立ち、前記第1荷重で押圧された前記蓄電デバイスの、前記第1成分電圧を検知する成分電圧検知工程を更に備え、上記荷重変化による電圧変化工程は、上記蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を変化させて、荷重変化後の変化後成分電圧を基準成分電圧に等しくする荷重変化による基準電圧化工程である蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法とすると良い。
【0016】
このデバイス電圧調整方法では、荷重変化による基準電圧化工程で、蓄電デバイスに掛けられた荷重を第1荷重から変化させて、成分電圧を第1成分電圧から基準成分電圧に等しい変化後成分電圧にする。つまり、充放電によらないで、蓄電デバイスの成分電圧を基準成分電圧に調整することができる。なお、複数の蓄電デバイスについて、それぞれこの手法を適用すれば、いずれの蓄電デバイスについても、変化後成分電圧を基準成分電圧に揃えることができる。
【0017】
(3)(1)の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、前記荷重変化による電圧変化工程に先立ち、前記第1荷重で押圧された複数の前記蓄電デバイスの、前記第1成分電圧をそれぞれ検知する複数成分電圧検知工程を更に備え、複数の前記蓄電デバイスから選択した基準蓄電デバイスに生じている上記第1成分電圧を基準第1成分電圧とし、複数の上記蓄電デバイスのうち、基準蓄電デバイス以外で、かつ、上記第1成分電圧が上記基準第1成分電圧と異なる上記蓄電デバイスを被調整蓄電デバイスとしたとき、上記荷重変化による電圧変化工程は、上記被調整蓄電デバイスに掛けられた上記荷重を変化させて、当該被調整蓄電デバイスの荷重変化後の変化後成分電圧を上記基準第1成分電圧に等しくする荷重変化による電圧均一化工程である蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法とすると良い。
【0018】
このデバイス電圧調整方法では、荷重変化による電圧均一化工程で、被調整蓄電デバイスに掛けられた荷重を第1荷重から変化させて、複数の蓄電デバイスの変化後成分電圧をいずれも基準第1成分電圧に等しくする。つまり、蓄電デバイスに対する充放電によらないで、複数の蓄電デバイスの変化後成分電圧を基準第1成分電圧に揃えることができる。
【0019】
(4)(1)の蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法であって、前記荷重変化による電圧変化工程は、複数の前記蓄電デバイスに共通して掛けられた上記荷重を変化させて、複数の上記蓄電デバイスの前記成分電圧をすべて加えた合計成分電圧を、基準合計成分電圧に等しくする荷重変化による基準合計電圧化工程である蓄電デバイスのデバイス電圧調整方法とすると良い。
【0020】
このデバイス電圧調整方法では、荷重変化による基準合計電圧化工程で、複数の蓄電デバイスの合計成分電圧を基準合計成分電圧に等しくする。つまり、蓄電デバイスに対する充放電によらないで、複数の蓄電デバイスの合計成分電圧を基準合計成分電圧に揃えることができる。
なお、複数の蓄電デバイスが互いに直列に接続されており、合計成分電圧を測定して得ても良いし、複数の蓄電デバイスが接続されておらず、個々の成分電圧を加えて合計成分電圧を算出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】外部電源に接続した電池の、等価回路を含む回路図である。
図2】実施形態1~3及び変形形態1に係る電池の縦断面図である。
図3】実施形態1,2及び変形形態1に係る電池を、荷重を増減可能な治具に装着した状態を示す説明図である。
図4】実施形態1に係り、荷重変化工程を含む電池の自己放電検査の検査工程を有する電池の製造工程のフローチャートである。
図5】変形形態1に係り、荷重変化工程を含む電池の自己放電検査の検査工程を有する電池の製造工程のフローチャートである。
図6】実施形態2に係り、荷重変化工程を含む複数の電池の電圧調整及び並列接続工程のフローチャートである。
図7】実施形態3に係り、積層し直列接続した複数の電池を、荷重を増減可能な治具に装着した状態を示す説明図である。
図8】実施形態3に係り、荷重変化工程を含む直列接続した複数の電池の合計電圧調整工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1を、図面を参照しつつ説明する。図2に本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池1の縦断面図を示す。この電池1は、直方体箱状の電池ケース10と、この内部に収容された扁平状捲回型の電極体20及び電解液15と、電池ケース10に支持された正極端子部材30及び負極端子部材40等から構成されている。本実施形態1では、正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的にはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を、負極活物質として、炭素材料、具体的には黒鉛を用いている。なお、後述する変形形態1、実施形態2,3に係る電池1も同様である。
【0023】
次いで、電池1の電池内部の絶縁性を判定する自己放電検査方法、及びこれを含む電池1の製造方法について説明する(図4参照)。まず「組立工程」S1において、未充電の電池1X(図2参照)を組み立てる。後述する初期電池電圧測定工程S7~判定工程S1212は、電池1の製造方法における検査工程に相当している。
【0024】
次に、「荷重付与工程」S2において、組み立てた電池1X(後の電池1)に荷重BLとして、予め定めた第1荷重BL1(本実施形態1では、例えばBL1=918kgf=9kN)を付与する。具体的には、図3に示すように、拘束治具KJを用いて、第1荷重BL1で電池厚み方向(図2において紙面に垂直な方向)に電池1(電池1X)を弾性的に圧縮した状態に拘束する。更に具体的には、拘束治具KJの、支持柱KJC及び固定ナットKJNで間隔が固定された2枚の固定プレートKJP1,KJP2のうち、図中下側の固定プレートKJP1と加圧プレートKJMPとの間に電池1(電池1X)を挟み、柱状の押圧部材KJMCを、その雄ネジ部KJMCsと押圧ナットKJMNと圧縮バネKJMSとを用いて、弾性的に押し込むことで、電池1(電池1X)に荷重BLを掛ける。
【0025】
なお、予め、電池1に代えてロードセル(図示しない)を固定プレートKJP1と加圧プレートKJMPとの間に挟み、押圧ナットKJMNを締め込んで、圧縮バネKJMSの長さLL(圧縮バネKJMSの両側のワッシャKJMW同士の間隔)と、ロードセルに掛かる荷重との関係を得ておく。これにより、圧縮バネKJMSの長さLLを測定すれば、拘束治具KJによって電池1に掛けている荷重BLの大きさを検知することができる。
【0026】
このようにして電池1(電池1X)に第1荷重BL1を掛けたまま状態で、電池1について初充電工程S3から後述する継続判断工程S11までを行う。各工程において、電池1の周囲の環境温度TKは、サーミスタからなる温度センサKTを有する温度検知装置KTSを用いて検知する。また、電池1の電池温度TBは、電池ケース10の所定位置に接触させたサーミスタからなる温度センサSTを有する温度検知装置STSを用いて検知する(図1参照)。
【0027】
次に、「初充電工程」S3において、未充電の電池1Xを初充電して電池1とする。初充電温度FT(FT=20℃)下で、拘束治具KJで拘束した電池1Xの両端子部材30,40に充放電装置(不図示)を接続して、定電流定電圧(CCCV)充電により、電池1Xの電池電圧VBが予め定めた値(本実施形態ではVB=4.0V)になるまで、電池1を初充電する。
【0028】
次に、「高温エージング工程」S4において、初充電した電池1をエージング温度ET(ET=63℃)の温度下、両端子部材30,40を開路した状態でエージング期間EK(EK=20時間)にわたり放置して、高温エージングを行う。この高温エージングを行うと、電池1の電池電圧VBは低下し、それぞれSOC80%程度に相当する電池電圧となる。
【0029】
次に、「冷却工程」S5において、冷却温度CT(CT=20℃)下の冷却室CR内に電池1を20分間配置し、ファンで強制冷却することにより、電池温度TBを概ね20℃(TB≒20℃)とする(図4参照)。
【0030】
さらに「放置工程」S6において、環境温度TKを第1環境温度TK1(TK1=20.0℃)とした第1室KR1内に電池1を移送し、放置期間HP(例えばHP=30分間)にわたり放置して、電池1の電池温度TBを第1環境温度TK1と同じ第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とする(図4参照)。そして、放置工程S6の後、後述する初期電池電圧測定工程S7~継続判断工程S11も、電池1の電池温度TBが第1電池温度TB1である条件下で行う。
【0031】
「初期電池電圧測定工程」S7では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とした電池1の開路電圧である第1電池電圧VB1を測定する。具体的には、図1に示すように、外部電源EPの一対のプローブP1,P2を電池1の正極端子部材30及び負極端子部材40にそれぞれ接触させて、電池1に外部電源EPを接続し、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPをゼロ(IP=0:直流電圧源EPEを切り離した状態)として、電池1の第1電池電圧VB1を電圧計EPVで測定する。
【0032】
図1に示す本実施形態1及び変形形態1で用いる外部電源EPは、直流電圧源EPEが発生する電源電圧VPを可変かつ高精度に制御できる精密直流電源であり可変定電圧電源である。この外部電源EPは、電池1に印加する電源電圧VPを高精度に測定可能な電圧計EPVのほか、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPを精密測定可能な電流計EPIをも有している。
【0033】
前述したように、図1において、配線抵抗Rwは、外部電源EP内、及び、外部電源EPからプローブP1,P2までに分布する配線抵抗を示す。また、接触抵抗R12は、外部電源EPの一方のプローブP1と電池1の正極端子部材30との間、及び、他方のプローブP2と電池1の負極端子部材40との間に生じる接触抵抗との和である。
【0034】
また図1には、電池成分1B、直流抵抗Rs及び短絡抵抗Rpを含む電池1の等価回路も示してある。このうち電池成分1Bは、電池1がなす容量成分であり、成分電圧VBBを生じているとする。直流抵抗Rsは、電池成分1Bに直列に存在して見える電池抵抗である。一方、短絡抵抗Rpは、電池1の内部短絡によって生じる自己放電の大きさを示す抵抗である。破線矢印で示す自己放電電流IDは、電池成分1Bから短絡抵抗Rpに流れる自己放電の電流を示す。初期電池電圧測定工程S7で得た第1電池電圧VB1は、当該時点での電池1の開路電圧に相当しており、この時点での電池成分1Bの成分電圧VBBである第1成分電圧VBB1は、第1電池電圧VB1に一致する(VBB1=VB1)。
【0035】
なお、(一対のプローブP1,P2を端子部材30,40に接続し直すことなく)プローブP1と正極端子部材30との接続状態及びプローブP2と負極端子部材40との接触状態を維持して、この初期電池電圧測定工程S7から後述する継続判断工程S11までを行う(変形形態1でも同様)。プローブP1,P2の端子部材30,40に対する接触状態が接触の度に変化して、プローブP1と正極端子部材30との間及びプローブP2と負極端子部材40との間に生じる接触抵抗R12の大きさが変動するのを避けるためである。
【0036】
電池1は、荷重BLを減少させると、電池成分1Bの成分電圧VBBが低下し、荷重BLを増加させると、成分電圧VBBが上昇する特性を有している。具体的には、本実施形態1の電池1では、例えば、荷重BLを、第1荷重BL1(=9kN)から荷重BL=0Nまで減少させた場合(荷重変化量ΔBL=-9kN)には、成分電圧VBBが荷重変化前から6μV低下する(成分電圧変化量ΔVBB=-6μV)特性を有している。
【0037】
そこで「荷重変化工程」S8では、この特性を利用し、押圧ナットKJMNを回動させ、拘束治具KJによって電池1に掛けられている荷重BLを前述の第1荷重BL1から減少或いは増加させて変化後荷重BLaとする(図3参照)。なお、押圧ナットKJMNを一方向に回動させて、荷重BLを単調(一方向)に減少あるいは増加させるようにするとよい。これにより、電池1の成分電圧VBB(=開路状態の電池電圧VB)を、初期電池電圧測定工程S7で測定した第1成分電圧VBB1(=第1電池電圧VB1)から僅かに低下或いは上昇させて、予め定めた基準成分電圧VBBrに等しい変化後成分電圧VBBaにする(VBBa=VBBr)。具体的には、荷重変化後の変化後成分電圧VBBaをVBBa=VBBr±1μVの範囲内の大きさに調整する(なお、基準成分電圧VBBrは、例えばVBBr=3.800000Vなどを採用することができる。)。また、変化後成分電圧VBBaは、荷重変化後の開路状態の電池電圧(変化後電池電圧VBaとする)に等しい(VBBa=VBa)。従って、荷重変化工程S8後における、開路状態での変化後電池電圧VBaは、基準電池電圧VBr(=VBBr)に等しくされたことになる。
【0038】
上述のようにして、荷重変化工程S8により、特定の電池1の変化後成分電圧VBBaを基準成分電圧VBBrに等しく(電池電圧VBを基準電池電圧VBrに等しく)することができる。また、供試される複数の電池1について、荷重変化工程S8を適用することにより、各電池1の成分電圧VBBを、それぞれ基準成分電圧VBBrに等しく(電池電圧VBを基準電池電圧VBrに等しく)して、互いの成分電圧VBB(電池電圧VB)を揃えることもできる。
【0039】
続く「電圧継続印加工程」S9では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1が第1環境温度TK1に等しい状態で、外部電源EPの直流電圧源EPEに、前述の荷重変化工程S8で生じさせた変化後電池電圧VBaに等しい継続電源電圧VPc(VPc=VBa)を発生させて、電池1に印加開始し(電圧印加時間t=0)、これ以降、継続電源電圧VPcの印加を継続する。即ち、外部電源EPで発生する継続電源電圧VPcを、当初の変化後電池電圧VBaに等しい大きさのまま維持する。このようにVPc=VBaとするため、特許文献1と同様、この電圧継続印加工程S9の当初、電池1には、電源電流IPが流れない。本実施形態1では、外部電源EPで発生する継続電源電圧VPcを、電池1毎に変更する必要がないので、外部電源EPとして、予め定めた基準電池電圧VBr(=基準成分電圧VBBr)に設定した定電圧源で足りる。
【0040】
外部電源EPから電池1に変化後電池電圧VBaに等しい継続電源電圧VPcを印加し続けると、電圧印加時間tの経過と共に、電池成分1Bの成分電圧VBBは、電圧継続印加工程S9の開始時(t=0)の変化後成分電圧VBBaから徐々に低下する。電池成分1Bに蓄えられていた電荷が、短絡抵抗Rpを通じて自己放電電流IDにより徐々に放電されるためである。
【0041】
このため、変化後電池電圧VBaの印加当初(電圧印加時間t=0)には電源電流IPは流れない(IP(0)=0)が、電池成分1Bで生じる成分電圧VBBが小さくなると、図1から容易に理解できるように、直流抵抗Rs、接触抵抗R12、及び配線抵抗Rwの三者を加えた回路直流抵抗Rcsの両端に電位差(VPc-VBB)が生じ、これに応じた電源電流IPが二点鎖線の矢印で示すような経路で電池1に流れる(VPc=VBB+(Rs+R12+Rw)・IP)。
【0042】
そして、電源電流IPの大きさは、電池成分1Bの成分電圧VBBが低下するに従って、徐々に大きくなる。但し、図1から理解できるように、成分電圧VBBの低下に伴って電源電流IPが増加して、短絡抵抗Rpに生じる逆起電力Vp(Vp=Rp・IP)が、電池成分1Bに生じる成分電圧VBBに等しくなると、もはや、電池成分1Bから自己放電電流IDが流れ出すことが無くなる。これにより、電池成分1Bにおける成分電圧VBBの低下も止まって、電源電流IPは、電池1毎に異なる固有の自己放電電流IDに等しい大きさ(安定時電源電流)となって安定する。
【0043】
そこで「電流検知工程」S10では、電流計EPIで電源電流IPを検知する。
【0044】
続く「継続判断工程」S11では、電圧継続印加工程S9及び電流検知工程S10を再度繰り返すか否かを判断する。本実施形態1では、電池1に継続電源電圧VPcを印加開始して以降、電源電流IPが安定したか否かを判断する。ここで、No即ち電源電流IPが安定していない場合には、電圧継続印加工程S9に戻り、電池1に継続電源電圧VPcを印加するのを継続し(S9)、電源電流IPを再び検知する(S10)。一方、Yes即ち電源電流IPが安定した場合には、後述する「判定工程」S12に進む。
【0045】
なおこの継続判断工程S11において、電源電流IPが安定したか否かを判断する手法としては、例えば、電流検知工程S10で取得した電源電流IPの値の移動平均値(例えば直近の60秒間に得た7個の電源電流値IP(n-6)~IP(n)の移動平均値)を逐次算出し、その移動平均値の推移(例えば、移動平均値の差分値や微分値の大小)から、電源電流IPが安定したか否かを判断する手法が挙げられる。
【0046】
「判定工程」S12では、得られた電源電流IPに基づいて、具体的には、電圧継続印加工程S9の開始(電圧印加時間t=0)以降に得られた電源電流IPの値IP(n)を用いて、電池1の自己放電状態を判定する。
本実施形態1では、具体的には、電流検知工程S10で所定の時間間隔(本実施形態では10秒毎)で取得された一連の電源電流値IP(0),IP(1),…,IP(n)のうち、継続判断工程S11で最後に得た複数個(例えば7個)の電源電流値IP(n-6)~IP(n)の移動平均値MIP(n)を平均終期電源電流値IPEとする。この平均終期電源電流値IPEは、電圧継続印加工程S9の終期に得られる安定時電源電流の値を,従って、自己放電電流IDの大きさを示している。そこでこれをしきい電流値IPthと比較し、平均終期電源電流値IPEがしきい電流値IPthよりも小さい(IPE<IPth)電池1を良品と判定する。かくして、充電され、自己放電状態を検査された良品の電池1が製造できる。
【0047】
一方、平均終期電源電流値IPEがしきい電流値IPth以上(IPE≧IPth)の電池1を不良と判定する。不良判定された電池1は除外し廃棄する。或いは、分解等して再利用する。
【0048】
本実施形態1の手法では、電池1の製造工程のうち、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S12の自己放電検査において、荷重変化工程S8を採用することにより、電圧継続印加工程S9に先立ち、電池1に対する充放電によらないで、電池1の成分電圧VBB(開路状態の電池電圧VB)を変化させて、これを調整することができる。具体的には、充放電によらないで、電池1の成分電圧VBBを基準成分電圧VBBrに調整することができる。また、複数の電池1のいずれについても、変化後成分電圧VBBaを基準成分電圧VBBrに揃えることができる。
このため、電池1の変化後成分電圧VBBaを基準成分電圧VBBrに揃えた状態で、電圧継続印加工程S9を開始することができる。
【0049】
(変形形態1)
上述の実施形態1では、自己放電検査のうち、荷重変化工程S8において、電池1に掛けられている荷重BLを第1荷重BL1から減少或いは増加させて変化後荷重BLaとし、電池1の成分電圧VBBを、第1成分電圧VBB1から低下或いは上昇させて、基準成分電圧VBBrに等しい変化後成分電圧VBBaとし、開路状態の電池電圧VBを基準電池電圧VBrに等しい変化後電池電圧VBaとした。即ち、荷重変化工程S8で、電池電圧VBが基準電池電圧VBrに等しくなるように、電池1に掛かる荷重BLを変化させた。
【0050】
しかし、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPが、基準電源電流IPrに等しい変化後電源電流IPaとなるように、電池1に掛かる荷重BLを変化させ、電池1の成分電圧VBBを変化させても良い。
なお本変形形態1では、実施形態1における荷重変化工程S8及び電圧継続印加工程S9に代えて、電圧継続印加工程S18及び荷重変化工程S19を行う点で異なるが、他は同様であるので、異なる部分を中心に説明し、同様な部分については説明を省略あるいは簡略化する。
【0051】
即ち、図5に示す変形形態1の電池1の製造工程で行う自己放電検査(S7,S18,S19,S10~S12)のうち、初期電池電圧測定工程S7で第1電池電圧VB1を測定する。続く電圧継続印加工程S18では、実施形態1と異なり、荷重変化工程S8を行うこと無く、電池1に、初期電池電圧測定工程S7で測定した第1電池電圧VB1に等しい継続電源電圧VPcを印加し、これを継続する。
【0052】
一方、電圧継続印加工程S18に並行して、電圧継続印加工程S18の開始後速やか(例えば、電圧印加時間t=1分以内)に荷重変化工程S19を開始し、外部電源EPから電池1に流れる変化後電源電流IPaが基準電源電流IPrに等しくなる(例えば、IPa=IPr=30μA)ように、電池1に掛かっている第1荷重BL1を変化後荷重BLbに減少させ、電池1の成分電圧VBBを変化後成分電圧VBBaに低下させる。これによれば、電圧継続印加工程S18の初期段階において、荷重変化工程S19によって、いずれの電池1にも基準電源電流IPrに等しい変化後電源電流IPaを流すことができ、電源電流IPの収束を早めることができる。加えて、各電池1の自己放電検査において、電圧継続印加工程S18の初期段階における電源電流IPの大きさを変化後電源電流IPa(=基準電源電流IPr)に揃えることができるので、電池1の良否の判定が容易となる。
【0053】
本変形形態1の手法でも、自己放電検査において、電圧継続印加工程S18に並行して荷重変化工程S19を採用することにより、電池1に対する充放電によらないで、電池1の成分電圧VBBを変化させて、電池1に流れる変化後電源電流IPaを調整することができる。このため、荷重変化工程S19の後には、電池1の変化後電源電流IPaを基準電源電流IPrに揃えた状態で、電圧継続印加工程S18を継続することができる。
【0054】
なお、電源電流IPは、電池電圧VBに比して比較的外界のノイズなどの影響を受けにくく、かつ、電源電流IPの流れている部位いずれにおいても測定可能である。この点でも、荷重変化工程における電池1に掛かる荷重BLを変化によって、電池1の成分電圧VBBを変化させ、電池1に流れる電源電流IPを基準電源電流IPrに揃えるなど、電源電流IPの大きさを変化させる利点となる。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態2では、拘束治具KJによって、それぞれに第1荷重BL1が掛けられた複数の電池1(図2図3参照)の開路状態の電池電圧VBを揃える電圧調整を行う場合、或いはさらに相互に並列接続する場合について説明する。
まず、「荷重付与工程」S21において、同じ電池電圧VBに充電された複数の電池1(図2図3参照)を、拘束治具KJを用いて、第1荷重BL1で電池厚み方向(図2において紙面に垂直な方向)に電池1を弾性的に圧縮した状態に拘束する。
【0056】
その後、「電池電圧測定工程」S22では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とした複数の電池1の開路状態の第1電池電圧VB1(電池成分1Bの第1成分電圧VBB1)をそれぞれ測定する(図1参照)。なお既に説明したように、電池1において、開路状態の第1電池電圧VB1は、電池成分1Bの第1成分電圧VBB1に等しい。
【0057】
「基準・被調整電池選択工程」S23では、複数の電池1から、基準電池1rと被調整電池1cとを選択する。即ち、複数の電池1から特定の電池を選択して基準電池1rとし、この選択した基準電池1rに生じている第1成分電圧VBB1を基準第1成分電圧VBB1rとし、この基準電池1rに生じている開放状態の第1電池電圧VB1を基準第1電池電圧VB1rとする。また、複数の電池1のうち、基準電池1r以外で、かつ、第1成分電圧VBB1が基準第1成分電圧VBB1rと異なる電池1を被調整電池1cとする。
【0058】
なお、複数の電池1のうち、適宜の電池1を基準電池1rに選択すれば良いが、第1成分電圧VBB1が最も高い電池1を、基準電池1rに選択すると良い。次述する荷重変化工程S24で、いずれの被調整電池1cに掛かる荷重BLをも減少させることになり、拘束治具KJの操作が単純になるからである。あるいはこの逆に、第1成分電圧VBB1が最も低い電池1を、基準電池1rに選択するのも好ましい。次述する荷重変化工程S24で、いずれの被調整電池1cに掛かる荷重BLをも増加させることになるからである。
【0059】
「荷重変化工程」S24では、基準・被調整電池選択工程S23で選択された1又は複数の被調整電池1cについて、荷重BLを変化させて成分電圧VBBを変化させる。即ち、選択された被調整電池1cについて、拘束治具KJ(図3参照)の押圧ナットKJMNを回動させ、荷重BLを第1荷重BL1から減少或いは増加させて変化後荷重BLcとする。これにより、被調整電池1cの成分電圧VBB(=開路状態の電池電圧VB)を、基準電池1rの基準第1成分電圧VBB1r(=基準第1電池電圧VB1r)に等しい変化後成分電圧VBBcに調整する。
【0060】
「調整検知工程」S25では、選択したすべての被調整電池1cについて、荷重変化による成分電圧VBBの調整が済んだか否かを検知し、済んでいない(No)の場合にはステップS24に戻る。一方、すべての被調整電池1cについて、荷重変化による成分電圧VBBの調整が済んだ場合(Yes)には、複数の電池1の電圧調整を終了する。これにより、すべての電池1について、充放電によらず、その成分電圧VBBが基準電池1rの基準第1成分電圧VBB1rに揃えられ、開路状態における電池電圧VBが基準電池1rの基準第1電池電圧VBB1rに揃え得たことになる。
【0061】
なお、調整検知工程S25に続いて、破線で示す「並列接続工程」S26において、複数の電池1を相互に並列接続しても良い。この場合、上述のように、すべての電池1の開路状態における電池電圧VBが基準第1電池電圧VBB1rに等しいので、相互に並列接続しても電圧差に伴う電流が流れず、いずれの電池1についても、接続前の充電状態(成分電圧VBB)を保って、並列接続状態を開始することができる。
【0062】
(変形形態2)
あるいは、調整検知工程S25に続いて、一点鎖線で示す「直列接続工程」S27において、複数の電池1を相互に直列接続しても良い。この場合も、すべての電池1の開路状態における電池電圧VBが基準第1電池電圧VBB1rに等しい。つまり、電池電圧VBが等しい電池1同士を直列接続して、直列接続状態を開始することができる。
【0063】
本実施形態2及び変形形態2では、荷重付与工程S21に次いで電池電圧測定工程S22を行った例を示したが、実施形態1と同じく、荷重付与工程S21において未充電の電池1Xに荷重を付与し、その後、実施形態1と同様、初充電工程S3~放置工程S6を行った後に、電池電圧測定工程S22で第1電池電圧VB1をそれぞれ測定し、以降の工程を行っても良い。
【0064】
また本実施形態2及び変形形態2では、基準・被調整電池選択工程S23で、基準電池1r及び被調整電池1cを選択し、荷重変化工程S24で、被調整電池1cについて荷重BLを変化させて成分電圧VBBを基準第1成分電圧VBB1rに揃えた。しかし、基準電池1r及び被調整電池1cを選択せず、実施形態1と同様に、複数の電池1のいずれも荷重BLを変化させて、成分電圧VBBを予め定めた基準成分電圧VBBrに揃えるようにしても良い。
【0065】
(実施形態3)
本実施形態3では、複数の電池1を積層し直列接続した電池群1Gの合計電圧を調整する場合について説明する。
まず「積層・荷重付与・直列接続工程」S31では、概ね同じ電池電圧に充電された複数の電池1(図2参照)を積層し、図7に示す複数用の拘束治具PKJを用いて、共通の第1荷重BL1で(図2において紙面に垂直な方向)に弾性的に圧縮した状態に拘束する。さらに、複数の電池1の端子部材30,40を用いて、電池1同士を直列に接続する。
【0066】
その後、「合計電池電圧測定工程」S32では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とし、直列接続した複数の電池1の開路状態の合計第1電池電圧SVB1を測定する。なお、直列接続した複数の電池1からなる電池群1Gにおいて、開路状態の合計第1電池電圧SVB1は、各電池1の電池成分1B(図1参照)の第1成分電圧VBB1を足し合わせた合計第1成分電圧SVBB1に等しい(SVB1=SVBB1)。
【0067】
「荷重変化工程」S33では、拘束治具PKJの押圧ナットKJMNを回動させ、複数の電池1に掛かる荷重BLを、第1荷重BL1から減少或いは増加させて変化後荷重BLdとする。これにより、各々の電池1の成分電圧VBB(=開路状態の電池電圧VB)を変化させて、各電池1の電池成分1Bの成分電圧VBBを合計した合計成分電圧SVBBを合計第1成分電圧SVBB1から変化させ、基準合計成分電圧SVBBrに等しい変化後合計成分電圧SVBBdになるように調整する(SVBBd=SVBBr)。これにより、開路状態の合計電池電圧SVBを、合計第1電池電圧SVB1から変化させて、基準合計電池電圧SVBrに等しい変化後合計電池電圧SVBdになるように調整する(SVBd=SVBr)。
【0068】
本実施形態3の手法でも、荷重変化工程S33を採用することにより、電池1に対する充放電によらないで、電池1の成分電圧VBBを変化させて、直列接続した複数の電池1の変化後合計成分電圧SVBBdを調整することができる。このため、開路状態の合計電池電圧SVBdが、基準合計電池電圧SVBrに等しい変化後合計電池電圧SVBdに調整された直列電池群を容易に得ることができる。
【0069】
以上において、本発明を実施形態1,2,3及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1及び変形形態1では、電池1の製造過程において、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S12で示す、電池1の自己放電検査の検査工程を行った。これに対し、既に市場に置かれて使用された使用済の電池1について、自己放電検査において、これらの検査工程を適用することもできる。
【0070】
また、変形形態1では、荷重変化工程における電池1に掛かる荷重BLを変化させて、電池1の成分電圧VBBを変化させ、電池1に流れる電源電流IPを基準電源電流IPrに揃えた。このほか、電池1をCCCV充電やCV充電を行う場合において、充電の終期に荷重変化工程を行い、電池1に掛かる荷重BLを増加させ、電池1の成分電圧VBBを僅かに上昇させ、充電電流の収束を早めて、より早期に充電打ち切りを行い得るようにするなど、電池(蓄電デバイス)を製造したり特性測定したりする、他の場面にも適用し得る。
【符号の説明】
【0071】
1 (充電済みの)電池(蓄電デバイス)
1r 基準電池(基準蓄電デバイス)
1c 被調整電池(被調整蓄電デバイス)
1G 電池群
S2 荷重付与工程
KJ,PKJ 拘束治具
S7 初期電池電圧測定工程(検査工程,成分電圧検知工程)
S8 荷重変化工程(検査工程,荷重変化による電圧変化工程,荷重変化による基準電圧化工程)
BL (電池に掛けた)荷重
BL1 第1荷重
BLa,BLb,BLc,BLd 変化後荷重
S9,S18 電圧継続印加工程(検査工程)
S10 電流検知工程(検査工程)
S11 継続判断工程(検査工程)
t 電圧印加時間
S12 判定工程(検査工程)
S19 荷重変化工程(検査工程,荷重変化による電圧変化工程)
S21 荷重付与工程
S22 電池電圧測定工程(複数成分電圧検知工程)
S23 基準・被調整電池選択工程
S24 荷重変化工程(荷重変化による電圧変化工程,荷重変化による電圧均一化工程)
S25 調整検知工程
S26 並列接続工程
S27 直列接続工程
S31 積層・荷重付与・直列接続工程
S32 合計電池電圧測定工程
S33 荷重変化工程(荷重変化による電圧変化工程,荷重変化による基準合計電圧化工程)
TB 電池温度(デバイス温度)
TB1 第1電池温度(第1デバイス温度)
VB 電池電圧(デバイス電圧)
SVB 合計電池電圧
VB1 第1電池電圧
VBr 基準電池電圧
VBa,VBc (荷重変化後の)変化後電池電圧
SVBd (荷重変化後の)合計変化後電池電圧
EP 外部電源
VP (外部電源の)電源電圧
VPc 継続電源電圧
IP 電源電流
IP(n) (取得された)電源電流値
IPr 基準電源電流
1B 電池成分(デバイス成分)
VBB (電池成分に生じる)成分電圧
VBB1 第1成分電圧
VBBr 基準成分電圧
SVBB 合計成分電圧
SVBBr 基準合計成分電圧
ΔVBB 成分電圧変化量
VBBa,VBBb,VBBc (荷重変化後の)変化後成分電圧
SVBBd (荷重変化後の)変化後合計成分電圧
Rs (電池の)直流抵抗(蓄電デバイスの直流抵抗)
Rp (電池の)短絡抵抗(蓄電デバイスの短絡抵抗)
ID 自己放電電流
Pc (電池成分と短絡抵抗とがなす)並列回路
Ec (電池の)等価回路(蓄電デバイスの等価回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8