IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェストヴェンノストユ “オベディネンナヤ カンパニア ルサール インゼネルノ−テクノロギケスキー チェントル”の特許一覧

特許7350805アルミニウム基合金から変形半製品の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】アルミニウム基合金から変形半製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/04 20060101AFI20230919BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20230919BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20230919BHJP
   B22D 27/04 20060101ALI20230919BHJP
   B21C 23/21 20060101ALI20230919BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C22F1/04 D
C22F1/04 E
C22F1/04 H
C22F1/04 G
C22C21/00 A
B21B3/00 J
B22D27/04 E
B21C23/21
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 650A
C22F1/00 660A
C22F1/00 661A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021087519
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2019517210の分割
【原出願日】2016-09-30
(65)【公開番号】P2021130878
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518108140
【氏名又は名称】オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェストヴェンノストユ “オベディネンナヤ カンパニア ルサール インゼネルノ-テクノロギケスキー チェントル”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOY OTVETSTVENNOST’YU ‘OBEDINENNAYA KOMPANIYA RUSAL INZHENERNO-TEKHNOLOGICHESKIY TSENTR’
【住所又は居所原語表記】ul.Pogranichnikov,37,str. 1,Krasnoyarsk,660111,Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マン ヴィクトール クリストヤノヴィク
(72)【発明者】
【氏名】クロヒン アレクサンドル ユルエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アラビン アレクサンドル ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】サルニコフ アレクサンドル ウラディミロヴィッチ
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-162101(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011513(WO,A1)
【文献】特開2010-163677(JP,A)
【文献】特開2010-067591(JP,A)
【文献】特表平09-507532(JP,A)
【文献】特表2016-509133(JP,A)
【文献】米国特許第05123973(US,A)
【文献】米国特許第03613767(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104694797(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/04
C22C 21/00ー21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基合金から変形半製品を製造する方法であって、
a)鉄と、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウムおよびストロンチウムの群からの少なくとも1種の元素と合金したアルミニウム合金の溶融物を準備する工程であって、
鉄 0.08~0.25重量%
ジルコニウム 0.26重量%まで
ケイ素 0.05~11.5重量%
マグネシウム 0.6重量%まで
ストロンチウム 0.02重量%まで
アルミニウムおよび不可避不純物 残部
である、工程と、
b)60μm以下の樹状細胞サイズを特徴とする鋳造組織を形成する冷却速度での前記溶融物の結晶化によって、断面積が1080~2820mm2である連続長さの鋳造ビレットを形成する工程と、
c)500℃以下のビレット初期温度で、45%までの変形度で前記鋳造ビレットを圧延し、圧延された鋳造ビレットから線材を形成する、変形半製品を形成する工程と、
を備えている、製造方法。
【請求項2】
前記圧延は室温で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金学の分野に関連し、工業用アルミニウムおよびその合金から、種々の断面の形材、ロッド、圧延製品を含む線材および他の半製品などの変形半製品を製造するために使用できる。変形半製品は、溶接ワイヤ、建設および他の用途のための配線製品の製造における電気工学において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
変形アルミニウム合金から製品を製造するためには、変形半製品を製造する様々な方法が使用され、他の条件はすべて同じとし、その方法は機械的性質の最終レベルを決める。しかし、蓄積的に各物理機械的特性の高レベルを常に達成することが困難であり、特に、高強度の特性が達成されると、可塑性が通常に低くなり、またはその逆となる。
【0003】
アルミニウム線材の製造においては、鋳造ビレットを連続鋳造し、そのビレットを線材に圧延し次にコイルに巻回するという方法が最も普及している。この方法は、特に工業用アルミニウム、Al‐Zr合金、1xxx、8xxxおよび6xxx群の合金から電気用線材を製造するのに広く使用されている。このタイプの設備の主なメーカーはVNIIMETMASH社(http://vniimetmash.com)とProperzi社(http://www.properzi.com)である。この設備の主な利点は、第一に線材の製造における高い生産性である。この方法は下記の欠点が含まれる。
【0004】
1)圧延による変形方式では、複雑な形状の製品(特に、非対称の断面を有するアングルなどの半製品)を製造することができない。
【0005】
2)圧延のみを使用する場合、相対伸びの高い値を達成することは通常不可能であり、そして相対伸びを増加させるためには追加の熱処理工程が必要になる。
【0006】
さらに、熱間圧延の1サイクルでは、大きな単一変形を行うことが通常困難であるため、変形中心を連続設置し、特に設備用の広い生産面積を必要とするマルチロールミルの使用を必要とする。
【0007】
アルコア社による米国特許出願公開第2013/0334091号に記載されるように、アルミニウム合金における別の製造方法およびその製造方法が知られている。ストリップ連続鋳造および熱処理の方法は、以下の基本工程を含む。ストリップ連続鋳造、完成または中間ストリップへの圧延、そして焼入れ。請求項に記載された方法では、特性の特定レベルを達成するために、場合によっては製造工程を複雑にする、変形半製品、特に圧延帯の絶対の熱処理を含む。
【0008】
請求項に記載された発明に最も近いのは、米国特許第3934446号に記載されるようなワイヤを製造する方法である。その方法は、下記の工程を組み合わされたワイヤ製造の連続過程を含む。ビレット圧延およびプレス加工その発明の欠点の中には、特定の物理的機械的特性のレベルを達成するには必要とされる技術的パラメータ(ビレットの温度、変形の程度など)の欠如が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、鉄と、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム、ニッケル、銅およびスカンジウムの群からの少なくとも1種の元素と合金した変形アルミニウム合金から、物理的機械的特性の蓄積的に高レベル、特に、高相対伸び(10%以上)、高引張強さ、および高導電性を持つ、変形半製品の新しい製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
技術的な結果は、コイルの製造、焼入れまたは焼なましなどの個別の工程が含まれる多段階生産を使用せずに、製造の1つの技術段階で物理機械的特性の累積的レベルを達成する課題の解決策である。
【0011】
課題の解決および技術的結果は、下記の工程が含まれるアルミニウム基合金から変形半製品を製造する方法により達成される。
a)鉄と、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム、ニッケル、銅およびスカンジウムの群から少なくとも1種の元素を含む溶鉱の製造。
b)70ミクロン以下の樹状細胞サイズを特徴とする鋳造組織を形成する冷却速度で、溶鉱の結晶化によって連続長さの鋳造ビレットの製造。
c)520℃以下のビレット初期温度で、60%まで(最適には50%まで)の変形度でビレットを熱間圧延し、さらに以下の作業の少なくとも1つを使用することによって最終または中間断面の変形半製品を製造すること。
・ビレットがダイを通ることにより、ビレットの300~500℃の温度範囲でのプレス加工。
・得られた変形半製品を450℃以上の温度で水中焼入れ。
変形半製品の組織は、その中に合金元素と横方向寸法3ミクロン以下の共晶粒子が分布するアルミニウムマトリックスになる。
【0012】
特定の場合、圧延は室温(約23‐27℃)で行うことができる。プレス製品の圧延は、多数の圧延機を通過させることによっても達成することができる。合金元素の濃度範囲は下記の重量%を使用することが適切である。
鉄 0.08~0.25
ジルコニウム 0.26まで
ケイ素 0.05~11.5
マグネシウム 0.6まで
ストロンチウム 0.02まで
【発明を実施するための形態】
【0013】
この合金から変形半製品を製造する方法の請求項に記載された技術的パラメータの理論的根拠は下記の通りである。
【0014】
最終的な特性レベルに対する要求に応じて、溶鉱は鉄と、Zr、Si、Mg、Ni、Scの群からの少なくとも1種の元素を含み、特にa)耐熱用途(温度300℃以下)の変形半製品には鉄と、ジルコニウムおよびスカンジウムの群からの少なくとも1種の元素、b)高強度特性(300MPa以上)の変形半製品には鉄、ケイ素およびマグネシウム、c)溶接ワイヤには鉄と、ケイ素、ジルコニウム、マンガン、ストロンチウム及びスカンジウムの群からの少なくとも1種の元素、d)細いワイヤには鉄と、ニッケル、銅、およびケイ素の群からの少なくとも1種の元素を含む。
【0015】
知られているように、鋳造ビレットの組織成分のサイズ、特に樹状細胞のサイズ、共晶成分などは、結晶化範囲内の冷却速度に直接依存する。従って、60μm以下の樹状細胞の形成が共晶起源の粗大相の形成をもたらし得る結晶化速度の低下は、その後の変形加工中の加工性を悪化させ、細い変形半製品(特に細線および細い形材)における機械的特性の全体的レベルの低下をもたらす。さらに、冷却速度を必要以上遅くしても、ビレットの結晶化中の過飽和固溶体、特にジルコニウム含有量を形成させることはできず、変形半製品の物理機械的特性の最終レベルに悪影響を及ぼす。
【0016】
元のビレットの圧延温度が550℃を超えると、変形用合金中で動的再結晶化プロセスが生じる可能性があり、さらなる用途のために製造される半製品の強度特性の全体的レベルに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
ジルコニウムを含む変形用合金の場合、元のビレットの温度は450℃を超えてはならず、そうでなければ、Al3Zr(Ll2)相の粗い二次析出物またはAl3Zr(D023)相の二次析出物が組織中に形成され得る。
【0018】
圧延ビレットのプレス温度が520℃を超えると、変形用合金中で動的再結晶化プロセスが発生する可能性があり、これは強度特性の全体的なレベルに悪影響を及ぼす可能性がある。圧延ビレットのプレス加工温度が400℃未満であると、プレス時の加工性が低下する可能性がある。
【0019】
焼入れの温度が450℃以下に低下すると、アルミニウム固溶体の早すぎる分解を招き、強度特性の最終レベルに悪影響を及ぼす。
【0020】
請求項に記載される方法の具体的な実施例は下記の通りである。
【0021】
鋳造ビレットの製造方法は、Al‐Zr系の合金の組織パラメータに影響を与え、他の系の場合は与える影響が低くなる。特に、Al‐Zr合金の場合、すべてのジルコニウムはアルミニウム固溶体に入る必要があるため、下記の方法により達成される。
1)Al‐Zr系の液相温度より温度上昇
2)結晶化中の冷却速度調整
工業用設備の冷却速度を直接測定することは事実上困難であるが、冷却速度は樹状細胞と直接相関するため、このパラメータは基準として導入されたものである。
【実施例
【0022】
実施例1
0.26%のZr、0.24%のFe0.06%のSi(質量%)、および残部のアルミニウムおよび不可避不純物から本質的になるAl‐Zr系合金から、実験室条件下で様々な結晶化条件下の鋳造ビレット(横断面積1520mm2)を得た。金型を加熱することによって結晶化条件を変え、全ての種類の鋳造温度は760℃であった。
【0023】
金属組織学的分析(走査型電子顕微鏡)を使用して、直径9.5mmの鋳造ビレットおよび変形ロッドの組織の評価を行った。圧延前の鋳造ビレットの初期温度は500℃であった。測定結果は表1に示される。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果から、5℃/s以下の冷却速度でビレットを鋳造すると、Al3Zr(D023)相の初晶がAl‐Zr合金の組織中に形成され、除去不可能な組織欠陥になることが分かる。
【0026】
表1から、結晶化範囲内の7℃/s以上の冷却速度でのみ、ビレットの組織は、3.8μm以下のFe含有共晶相の細静脈が分布するアルミニウム固溶体(Al)であることが分かる。
【0027】
変形時加工性の評価のために、ビレット第3~6号(表1)から直径9.5mmの線材を製造し、それから直径0.5mmの細いワイヤが製造された。伸線加工性および焼きなまし後のワイヤの機械的特性の測定結果は表2に記載される。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、Fe含有共晶粒子が形成される11℃/s以上の冷却速度でのみ、直径0.5mmの細線を伸線加工する際に加工性が高いことが分かる。高い加工性は、最大サイズが3.1μmを超えないFe含有相の粒子を結成することによって達成される。
【0030】
実施例2
11.5%のSi、0.02%のSr0.08%のFe(重量%)、および残部のアルミニウムおよび不可避不純物から本質的になるAl合金から、連続圧延およびプレス加工を用いて、直径12mmの棒状の変形半製品を製造した。
【0031】
鋳造ビレットの元の断面は、1080、1600、および2820mm2である。鋳造ビレットの圧延と、圧延ビレットのプレス加工は異なる温度で行われた。圧延およびプレスのパラメータを表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
参考例3
Al‐0.6%、Mg‐0.5%、Si‐0.25%、Feを含有する合金から、様々な変形方式、すなわち圧延、プレス加工、および圧延とプレス加工の組合せ方式を使用してロッドが製造された。表4は引張強さの機械的特性の比較分析を示す。元のビレットの断面は960mm2であった。圧延およびプレス加工の温度は450℃であった。変形後のロッドの最終直径は10mmであった。試験はサンプルを48時間寝かした後に行われた。引張試験での計算長さは200mmであった。
【0034】
【表4】
【0035】
示された結果から、プレス加工またはプレス加工と圧延を組み合わせた方法を使用するときに相対伸び(δ)の最良の値が達成されることが分かる。この場合の相対伸び値の差は、圧延およびプレス加工時の微細組織の形成により達成され、特にプレス加工後に、主に細胞組織で代表される圧延と異なり、150nm以下のサブグレイン平均粒度の多角化組織が実施される。
【0036】
参考例4
表5に記載されるAl‐0.45%、Mg‐0.4%、Si‐0.25%、Fe(種1)およびAl‐0.6%、Mg‐0.6%、Si‐0.25%、Fe(種2)を含有する合金から、異なる条件の圧延およびプレス加工の組み合わせ方式を用いてロッドが製造された。圧延およびプレス加工の温度は表5に示す。元のビレットの断面は960mm2であった。圧延中の変形度は50%であった。プレス加工中の変形度は80%であった。製造されたロッドはプレス機を出た後に水で激しく冷却し、合金元素を含む過飽和固溶体を得た。元のビレットの断面は960mm2であった。圧延およびプレス加工の温度は520~420℃の範囲で変化することにより、プレス加工のビレットの異なる温度を得ることができた。圧延プレス加工中の温度損失は20~40℃の範囲であった。変形後のロッドの最終直径は10mmであった。試験はサンプルを48時間寝かした後に行われた。引張試験での計算長さは200mmであった。
【0037】
表5は、相対伸びおよび電気抵抗率の比較分析を示す。電気比抵抗率の値に基づいてアルミニウム固溶体の分解を判断した。(記載の合金1および合金2の過飽和状態は、それぞれ32.5±0.3および33.1±0.3μΩ×mmの値に対応する)
【0038】
【表5】
【0039】
表5に記載された結果から、プレス加工および水による冷却後に過飽和溶体を達成するためには、焼入れを使用する場合にプレス加工ビレットでは過飽和アルミニウム溶体を達成できるように、元のビレットの温度は約520℃でなければいけない、そして加圧後にビレットの温度は490℃以上でなければいけないことが分かる。
【0040】
参考例5
0.24%のFeおよび0.06%のSi(重量%)を含有する工業用アルミニウムから、圧延およびプレス加工の組み合わせ過程を使用して、直径9.5mmの線材を製造した。線材を製造する技術的過程は、以下の工程を含む。
【0041】
平均サイズ約30μmの樹状細胞が形成される冷却速度でビレット連続鋳造した。鋳造ビレットの組織は、1.5μm以下のFe含有共晶相の細静脈が分布するアルミニウム固溶体(Al)であった。
鋳造ビレットの初期温度約400℃、変形度50%の熱間圧延。
続いてビレットの78%の変形度で15mmのロッドまでのプレス加工。
続いてロッドの9.5mm線材までの圧延。
【0042】
表6は、VNIIMETMASH社の鋳造圧延機上での線材の連続製造方式を用いて組合せ工程で得られた、線材の引張強さの機械的特性の比較分析を示す。
【0043】
【表6】
【0044】
組み合わせ方法によって製造されたビレットの相対伸びの値が高く、一般的な線材製造方法と比較して25%高い相対伸びの値が得られる。
【0045】
参考例6
圧延とプレス加工の組み合わせ過程を用いて得られた直径12mmのロッドから、直径3.2mmのワイヤを製造した。ビレットの元の断面は1520mm2であった。圧延中の変形度は45%であり、プレス加工中の変形度は86%であった。得られた直径12mmのロッドを375℃の温度で150時間熱処理し、その後ワイヤを製造した。
【0046】
特性損失の評価は、ワイヤを400℃の温度での1時間焼なましの後に行われ、以下の比率から計算された。
Δσ=(σinitial-σanneal)/σinitial・100%
ここで、σinitialは、ワイヤの一時的な抵抗の初期レベル。σannealは、400℃での1時間焼なましの後のワイヤの一時的な抵抗のレベル。
【0047】
【表7】
【0048】
表7に示す結果から、鋳造ビレットは、高温で特性の損失が12%を超えることが分かる。これは変形処理中にAl3Zr相の部分的形成を伴うアルミニウム固溶体の制御できない不均一な(扇形)分解に関連する。温度が下がる時、不均一な分解は観察されなかった。温度が300℃以下に低下すると、ワイヤはより高い値の引張強度を特徴とし、それは焼なまし中の強度特性のより大きな低下をもたらした。