(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】観察的心不全モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/029 20060101AFI20230919BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230919BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A61B5/029
A61B5/02 310A
A61B5/107 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021095098
(22)【出願日】2021-06-07
(62)【分割の表示】P 2018549136の分割
【原出願日】2016-12-06
【審査請求日】2021-06-09
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518197018
【氏名又は名称】メディシ テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,マーク,ライズ
(72)【発明者】
【氏名】アレン,エレナ エー.
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519940(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0187897(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0004904(US,A1)
【文献】CHAN Gregory S H et al.,Automatic detection of left ventricular ejection time from a finger photoplethysmographic pulse oximetry waveform: comparison with Doppler aortic measurement,Physiological Measurement,2007年03月20日,Vol. 28、No. 4,pp. 1-14
【文献】STAFFORD R. W. et al.,Left Ventricular Systolic Time Intervals as Indices of Postural Circulatory Stress in Man,Circulation,1970年03月,Vol. 41、No. 3,pp. 485-492
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/02-5/03、5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の血行動態的うっ血を評価する、装置により実行される、方法であって、
(a)非侵襲的装着型センサを用いて前記個人の第1脈波波形を第1観察期間中に測定することであって、前記第1脈波波形は、一次脈波及び切痕を有する、ことと、
(b)前記非侵襲的装着型センサを用いて第2脈波波形を第2観察期間中に測定することであって、前記第2脈波波形は、一次脈波及び切痕を有する、ことと、
(c)前記第1脈波波形の前記一次脈波及び前記切痕の検出に基づいて、前記第1脈波波形から第1の左室駆出時間を求めることと、
(d)前記第2脈波波形の前記一次脈波及び前記切痕の検出に基づいて、前記第2脈波波形から第2の左室駆出時間を求めることと、
(e)前記第1の左室駆出時間と前記第2の左室駆出時間との間の変動の程度を求めることであって、前記変動は、
体位にわたる平均左室駆出時間の測定値の変動を含む、ことと、
(f)前記変動の程度から前記個人の前記血行動態的うっ血を評価することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1観察期間における前記測定の後に、日常生活の活動中の前記個人の体位変化を検出することをさらに含み、前記第2観察期間中に第2脈波波形を測定することは、体位変化が検出された後に、前記非侵襲的装着型センサを用いて第2脈波波形を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1観察期間の時刻を決定することを更に含み、前記第1観察期間は、第1の日であり、前記第2観察期間は、第2の日の同様の時刻である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個人が睡眠していることを検出することを更に含み、前記第1観察期間中に第1脈波波形を測定することは、第1の日に前記個人が睡眠していることが検出されたときに、第1脈波波形を測定することを含み、前記第2観察期間中に第2脈波波形を測定することは、第2の日に前記個人が睡眠していることが検出されたときに、第2脈波波形を測定することを含み、前記変動は、
毎晩同じ睡眠段階の間に測定された平均又は最小の左室駆出時間の変動を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記個人の睡眠段階を検出することを更に含み、前記第1脈波波形および前記第2脈波波形が、前記個人が同じ睡眠段階にある間に測定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血行動態的うっ血を評価することが、前記変動の程度を前記個人に対して事前に求められた変動の程度と比較することを含む、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
個人の血行動態的うっ血を評価する装置であって、
(a)個人によって装着されるように、かつ脈波波形を測定するように構成された非侵襲的脈波検出システムと、
(b)前記非侵襲的脈波検出システムを用いて、第1脈波波形を
第1観察期間中に測定し、第2脈波波形を
第2観察期間中に測定するように構成された測定制御システムであって、各脈波波形は、一次脈波及び切痕を有する、測定制御システムと、
(c)前記第1脈波波形の前記一次脈波及び前記切痕の検出に基づいて、前記第1脈波波形から第1の左室駆出時間を求め、前記第2脈波波形の前記一次脈波及び前記切痕の検出に基づいて、前記第2脈波波形から第2の左室駆出時間を求め、前記第1の左室駆出時間と前記第2の左室駆出時間との間の変動の程度を求め、前記変動の程度から前記個人の前記血行動態的うっ血を評価するように構成された分析システムであって、前記変動は、
体位にわたる平均左室駆出時間の測定値の変動を含む、分析システムと、
を含む装置。
【請求項8】
個人の体位を判断するように構成された体位サブシステムをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記測定制御システムは、前記第1脈波波形の測定後に、心臓への全体的な静脈還流を変化させる前記個人の体の体位変化を示す、前記体位サブシステムからの信号の受信後に前記第2脈波波形を測定するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記個人の睡眠段階を決定するシステムを更に備える、請求項7乃至9のうち何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記測定制御システムは、前記個人が第1の日に睡眠体位にあることを体位サブシステムが示すときに、前記第1脈波波形を測定し、前記個人が第2の日に睡眠体位にあることを体位サブシステムが示すときに、前記第2脈波波形を測定するように構成され、前記変動は、
毎晩同じ睡眠段階の間に測定された平均又は最小の左室駆出時間の変動を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記非侵襲的脈波検出システムは、指の基部における指輪に含まれる、請求項7乃至11のうち何れか1項に記載の装置。
【請求項13】
心不全又は血液量減少のモニタリングシステムであって、
(a)個人の血行動態的うっ血を評価する装置と、
(b)体位検知システムと、
(c)通信システムと、を備え、
前記装置は、請求項7に記載の装置を含む、システム。
【請求項14】
サブシステム(a),(b),及び(c)は、単一のハウジングに含まれる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記単一のハウジングは、日常活動との干渉を避けるように構成されている時計又は指輪である、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
心不全は、不適切な心拍出量によって発生する。したがって、管理目標は、心機能が限られた患者に対する一回拍出量の最適化に重点が置かれる。一回拍出量は、拡張期の最後における左心室内の血液の容量、すなわち、拡張終期容積によって決定的に左右される。
図1は、心不全の患者のグラフによる表現である。心不全の患者における心臓の全体的な機能は、拡張終期充満圧が最適レベルを超える場合の低減した一回拍出量によって定義される。心臓の最適な機能は、限られた範囲の拡張終期圧にわたって発生し、図では「目標容量」と表示され、フランク・スターリング曲線を用いて表される。したがって、これらの患者における体液管理は重要であり、体液の不足により一回拍出量が低減することになり、体液過剰によってもまた一回拍出量が低減することになる。
【0002】
心不全は、毎年、推定で300億ドルの米国コストがかかるという重大な医療問題であり、その費用の80%が入院に起因する。外来管理の改善により入院を低減させることができることは、長年にわたる臨床目標であった。心不全関連の入院の主な原因は、体液過剰である。息切れ、腫れ、疲労、体重増加等、体液過剰に対するこれまでのモニタリング方法は、代償不全および後の入院のリスクを増大させる初期の病態生理学的変化を反映するのに十分、感度が高くない。Lewin J, Ledwidge M, O’Loughlin C, McNally C, McDonald K. Clinical deterioration in established heart failure: what is the value of BNP and weight gain in aiding diagnosis? Eur J Heart Fail. 2005;7(6):953-957。Stevenson L, Perloff JK. The limited reliability of physical signs for estimating hemodynamics in chronic heart failure. JAMA. 1989;261(6):884-888。
図2は、体液過剰が増大して入院に至る心不全患者の典型的な臨床経過を示す。図の考察により、全体的な一連の代償不全の後期に、臨床的に観察可能な徴候が発生することが分かる。したがって、心不全患者の管理のために臨床的症候を使用することには、問題がある。
【0003】
初期の血行動態的うっ血(hemodynamic congestion)を判断する難しさは、近年完成したBetter Effectiveness After Transition-Heart Failure(BEAT-HF)調査によって実証されている。既存の非侵襲的技術で広範にモニタリングされた1400人を超える患者を参加させる調査。この調査は、退院前心不全教育、定期的に予定された電話コーチングおよび遠隔モニタリングを含むプロトコルを使用して、心不全患者の積極的な管理を調査した。遠隔モニタリングは、検討するために集中コールセンタに情報を送信するテキスト装置に組み込まれた、Bluetooth対応体重計および血圧/心拍数モニタを含んでいた。所定閾値を超えた場合、患者を呼び出し、臨床スタッフによって決められるように薬物治療を変更した。また、重大な症候が報告された場合、患者の心不全医師に通知し、必要な場合は、患者を救急外来(emergency department)に送った。この広範な臨床調査からの結論は、再入院率にそれほど影響を与えなかった。
【0004】
入院率の低下は、侵襲的に植え込まれた肺動脈圧モニタリングシステムを使用することによって実証された。CardioMEMS HFシステムは、心不全患者の肺動脈(PA)圧および心拍数を測定しモニタリングする。このシステムは、植込み型PAセンサ、送達システムおよび患者エレクトロニクスシステム(Patient Electronics system)からなる。植込み型センサは、肺動脈、すなわち、血液を心臓から肺に運ぶ血管内に永久的に配置される。センサは、右心カテーテル処置中に植え込まれる。患者エレクトロニクスシステムは、電子回路ユニットおよびアンテナを含む。患者エレクトロニクスシステムは、センサからPA圧測定値を無線で読み取り、その後、その情報を医師に送信する。医師は、その情報を分析した後、患者の心不全の治療に役立つように薬物治療を変更することができる。550人の参加者に装置が植え込まれた臨床調査では、医師がPA圧センサにアクセスすることができた参加者に対して、心不全関連の入院が臨床的にかつ統計的に著しく低減した。このシステムは、植え込むために約2000ドルかかり、定価が18,000ドルである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、米国仮特許出願第62263839号、同第62375431号および同第62423701号に関し、それらの各々は参照により本明細書に援用される。本発明の実施形態は、体液過剰のための入院を回避するために心機能を判断する、非侵襲的、非植込み型かつ使用が容易なシステムを提供することにより、現行のモニタリングの限界に対処する。実施形態例は、日々の活動中に体位の変化によって発生する静脈還流の変化を利用する。これらの変化は、位置、動きまたはそれらの組合せを検知するセンサを介して、システムによって特定される。さらに、心血管機能の評価のために脈波波形(pulse contour)情報が使用される。心血管機能評価は、個別に行われ、したがって、身長、体重、年齢および健康レベル等、被験者間の差に影響を受けない。結果としての心血管評価は、その後、診断され、それにより、体液過剰およびあり得る入院を回避するために、予防的に心不全患者を管理することができる。実施形態例は、心血管機能の判断のために装着型(ウェアラブル)デバイスから得られる脈拍の光学的測定、たとえば光電容積脈波(photoplethysmogram)(PPG)を使用する。PPGは、体内の多くの位置から得ることができ、いくつかの実施形態例では、手首に位置する腕時計からまたは指の基部に位置する指輪から導出されるPPG信号を使用することが好都合である。結果としての脈波波形データは、心血管機能の判断のために体位情報とともに処理することができる。そして、時間の関数として、体位の関数として、またはそれらの組合せの関数として、心血管機能情報を評価して、血行動態的うっ血を示す障害を判断することができる。システムは、観察的に心血管評価のためのデータを取得し、典型的には、患者が具体的な試験プロトコルまたは指示された儀式的行為を行うことを必要としない。システムに、正確な評価を行うことに関連する重要なデータがない場合、患者に対して、センサの位置を調整することにより、または一連の動きを行うことにより、これらのデータ限界に対処するように要求することができる。システムは、非侵襲的センサによって実施することができ、そのため、植込み型センサに付随する危険およびコストの不都合が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、フランク・スターリング曲線の概略図である。
【
図2】
図2は、経時的な血行動態的うっ血の概略図である。
【
図3】
図3は、体位変化による血液の移動の概略図である。
【
図4】
図4は、体位変化に対する正常な反応の概略図である。
【
図5】
図5は、体位変化に対するCHF反応の実例である。
【
図6】
図6は、中心血管および末梢血管における切痕の図である。
【
図7】
図7は、測定された心臓パラメータの間の関係を示す。
【
図8】
図8は、体位変化中の本発明によって導出されたLVET変化のプロットである。
【
図9】
図9は、経時的な体位変化中の本発明によって導出されたLVET変化のプロットである。
【
図10】
図10は、患者間の体位変化によるLVET変化を比較するプロットである。
【
図11】
図11は、本発明によって導出されたLVET変化対下半身陰圧のプロットである。
【
図12】
図12は、本発明によって導出されたLVET変化対一回拍出量のプロットである。
【
図13】
図13は、下半身陰圧中の本発明によって導出された脈波波形変化のプロットである。
【
図14】
図14は、複数のPPG位置からの本発明によって導出されたLVET変化のプロットである。
【
図16】
図16は、複数日の血行動態的モニタリングの図である。
【
図17】
図17は、単一ユニット心不全モニタリングシステムの例である。
【
図18】
図18は、2ユニット心不全モニタリングシステムの例である。
【
図19】
図19は、3ユニット心不全モニタリングシステムの例である。
【
図20】
図20は、ウエストベルト動きセンサを備えた心不全モニタリングシステムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の説明
本発明の実施形態は、外来心不全患者において心血管機能を評価する方法および装置を提供する。実施形態は、体位変化があるときに心血管機能基準を判断するために、装着型PPGセンサによって得られる脈波波形データを使用する。体位変化は、位置、動きまたはそれらの組合せを検知するセンサによって推測される。実施形態例の動作時、測定プロセスは、本質的に完全に観察的であり、患者が、具体的な試験を行い、定義された行為を行い、またはいかなる侵襲的測定も受ける必要はない。
【0008】
心不全の病因により、心血管機能の変化は、通常、脈波波形に直接影響を与える体液状態全体の変化に関連する。脈波波形の所定の変化は、一般に体液過剰と呼ばれる、血行動態的うっ血の結果である。外来心不全患者における全体的な心機能を連続的にモニタリングすることができることにより、ケアの改善、医学的管理の最適化、入院の回避に対する機会が与えられる。結果としてのシステムは、初めて、心不全の履歴的な生理学的観察と組み合わされる、現行の無線のジェスチャ認識技術の適用を認める。
【0009】
定義
本明細書で用いる「容量評価」は、限定されないが、血管内容量、血管外容量、脱水、体内総水分、細胞外液量および血漿量を含む、人体内の容量の全体的な評価を含む。医学では、血管内容量状態は、患者の循環系における血液の量を指し、本質的に、本来は細胞内液および細胞外液両方を含む、身体の全体的な容量状態の血漿成分である。血管内成分は、通常、最も重要であり、容量状態は、時に、血管内容量状態と同義で使用される。
【0010】
血行動態的うっ血は、左心室充満の増大もしくは血管内圧の上昇、および一回拍出量の低下、またはそれらの組合せとして定義される。心臓のフランク・スターリングの法則(スターリングの法則またはフランク・スターリング機構またはMaestrini心臓の法則としても知られる)では、健康な心臓の一回拍出量は、他のすべての要素が一定のままであるとき、心臓に充満する血液の容量(拡張終期容積)の増大に応じて増加する、と述べられている。健康な心臓では、心室内に流れ込む血液の容量が増大するほど、心臓の壁が伸張し、心拡張中の拡張がより大きくなる。このため、心収縮中の収縮の力が増大し、したがって、大動脈内にポンピングされる血液の量が増加する。不全心では、フランク・スターリング機構は消耗され、すなわち、不全心は、フランク・スターリング曲線の最大値でまたはその近くで動作する。この場合、前負荷の増大により、一回拍出量の変化がなくなるか、または一回拍出量が減少することになる。
【0011】
拡張終期容積(EDV)は、充満(拡張期)の最後における右心室および/または左心室内の血液の容量、または心収縮の直前の心室内の血液の量である。拡張終期容積は、前負荷と同義で使用されることが多い。
【0012】
本明細書で用いる光電容積脈波(PPG)は、組織内の血液量の変化を検出するために使用することができる光学測定技法であり、または心周期に関連する信号を有する。
【0013】
体位変化または姿勢の変化は、心臓への全体的な静脈還流を変化させる任意のプロセスに適用される一般用語である。一般的な体位には、仰臥位、座位および立位がある。
【0014】
本明細書で用いる「信号」という用語は、PPG等、生物学センサまたは生理学センサによって収集されるかまたは送信される、限定なしにアナログ電気波形またはそのデジタル表現を含む、測定値等の情報を送信する任意の手段を含む。
【0015】
脈波波形は、脈波形の形状を記述する。末梢脈波形は、大動脈弁の閉鎖から発生する一次波および二次波と、血管樹におけるさまざまな反射との合計を反映する。容量状態、静脈還流、体位および一回拍出量の変化は、これらの一次波に対する二次波の細部およびタイミングに影響を与える。したがって、脈波波形分析は、心機能評価に使用することができる。周波数分析、ウェーブレット変換、分解方法および曲線あてはめを含む、さまざまな脈波形定量化方法がある。曲線あてはめ手法例は、一次脈波および二次脈波の相対的なタイミングおよび振幅を取り込む混合ガウスを使用する。
【0016】
体位評価システムは、体位変化の検出を可能にする1つまたは複数のセンサを含む。システムは、患者に取り付けることができ、もしくは取り付けられていない位置から患者を観察することができ、またはそれらの組合せとすることができる。
【0017】
脈波検出システムは、脈波形の測定を可能にする1つまたは複数のセンサを含む。例として、一般にパルスPPGと呼ばれる光学センサが挙げられ、そうした例は、1本または複数本の指、1つまたは複数の耳、1つまたは複数の手首、胸または額を含む、身体上のさまざまな位置で使用することができる。脈波検出システムは、光学撮像によって脈波形を求める画像ベースシステムを含むことができる。他の方法としては、組織内の血液量変化を検出するために使用することができるか、または心周期に関連する信号を有する、任意の技法が挙げられる。PPGベースの方法に加えて、レーザドップラプローブ、トノメータおよびパルス変換器を使用して、心周期に関する信号を取得することができる。典型的なパルス変換器は、圧電素子を使用して、変換器のアクティブ面に加えられる力を心周期に関連する電気アナログ信号に変換する。
【0018】
本明細書で用いる「前駆出期」(PEP)という要素は、心周期中の心室脱分極の開始から大動脈弁の開放までの時間である。
【0019】
本明細書で用いる「左室駆出時間」(LVET)という用語は、大動脈弁の開放で開始し大動脈弁の閉鎖で終了する、左心室からの血液の駆出の時間である。
【0020】
心機能評価は、PPG信号の脈波波形に対して受け取られた情報に基づく心機能の評価である。心機能評価は、一次脈波の検出および切痕の検出によって行われるLVET測定を含むことができる。心機能評価はまた、限定されないが、前駆出期、脈波振幅、心拍数変動、心拍数、呼吸数または脈波波形の他の分解を含む、単独でまたは組合せで使用される、追加の評価基準も含むことができる。
【0021】
本発明の詳細な説明
正常な心臓における体位変化の生理学
本発明の理解を容易にするために、本発明によって使用される心血管系の特徴について記載する。心血管系は、長期にわたって研究されてきたが、本明細書に記載する特徴および測定の組合せについては、これまで述べられていない。
【0022】
仰臥位から直立姿勢まで動くことにより、中心血管コンパートメントから、脚、臀部、骨盤および内臓循環における従属領域に、300cc~800ccの血液が移動する結果となる。
図3は、体位変化による血液移動の図である。この図は、患者が仰臥位から立位まで動く際の静脈血液量(陰影付き領域)を示す。胸部コンパートメントは、中心静脈、心臓および肺血液を含み、肺は、不均衡に小さく示されている。数字は、cmH2Oでの典型的な圧力である。Gauer, 0. H. and Thron, H. L. (1963) Handbook of Physiology, Circulation, Vol. 3 (eds. W. F. Hamilton and P. Dow, American Physiological Society, Bethesda, pp. 2409-2440から変更された図。移動した血液の容量は、脚の長さ、脚のサイズおよび筋肉質量を含むように患者特有の特徴によって決まる。正常な心血管機能を有する患者では、この起立性ストレスが、恒常性を維持するために、一連の代償性心血管反応を引き起こす。
【0023】
仰臥位から立位への体位変化に対する正常な反応は、Levick, J. Rodney. An introduction to cardiovascular physiology. Butterworth-Heinemann, 2013, page 71から複写された
図4に示すように、フランク・スターリング曲線で表される。この図は、以下のようにいくつかの重要な生理学的問題点を実証する。すなわち、(1)体位変化により、心臓への静脈還流が変化し、左室拡張終期圧(x軸)の変化がもたらされ、(2)拡張終期圧の変化は、心拍出量または一回拍出量(y軸)に著しい影響を与える。このプロットは、立位から臥位への体位の変化による一回拍出量によって測定される、心機能の著しい変化を示す。プロットはまた、400mlのデキストランを注入することによる容量過剰の影響も示す。体液の増量または体液過剰により、正常な心臓では、一回拍出量によって定義されるような心機能は、最大値に達し始める。
【0024】
心不全での体位変化の生理学
図1に示すように、拡張終期圧の変化に対する罹患心臓の反応は、正常な心臓とは異なる。Murataらは、正常な患者と心臓病患者とにおいて立位ティルト試験(upright tilt test)を使用することにより、体位変化に対する心機能反応を検査した。正常な患者では、立位ティルトにより、心拍数および拡張期圧が上昇し、収縮期圧がわずかに低下し、心拍出量および一回拍出量が著しく減少する。ティルトに対する反応は、正常な患者と比較して、心臓病患者の場合はそれほど明白ではなかった。特に、心拍出量の減少は、著しく低減した。実際には、それらの心臓病患者において、ティルト中の心拍出量の異常な増加が、最低心拍出量で観察された。Murataらの研究は、それらの心不全の患者における体位変化に対する反応の変化を実証している。Murataらによって使用された測定は、PPGを使用して行われていないが、第2肋間腔内に配置されたマイクロフォンに対する心音図、EKGを、右頸動脈造影図を介して評価された心拍出量とともに使用して、行われた。動脈造影図は、X線および特別な色素を用いて動脈内部を見る撮像試験である。心臓、脳、腎臓および身体の他の部分における動脈を見るために使用することができる。Murata, Kazuhiko, et al. “Alterations of circulatory responses to upright tilt in cardiac patients.” Japanese heart journal 22.4 (1981): 551-560。
【0025】
Abelmannらは、1969年に同様の試験を行い、心疾患のある患者は、立位ティルトに対する反応が低減したことを実証した。試験では、患者をティルト台に配置し、患者は水平位置で30分間横になった。その後、70°ヘッドアップ位置まで3秒間以内で患者を手作業で上方に傾けた。この著者は、脈圧、拡張期圧および心拍数の変化がないことによって特徴付けられる心不全反応について記載している。著者は、体位に対する反応の低下が、静脈圧の上昇および血液量の増加によると述べている。著者は、健康な患者に対して血液量の急な増加または減少の後に体位変化を行うことにより、この仮定メカニズムを確認した。Abelmann, Walter H., and Khaja Fareeduddin. “Increased tolerance of orthostatic stress in patients with heart disease.” The American journal of cardiology 23.3 (1969): 354-363。
【0026】
Staffordらは、1970年、心不全患者において体位反応がないことを、利尿(患者の体内からの体液除去)によって逆転させることができることを実証した。その著者は、正常な患者と対照的に、うっ血心不全の患者が、ヘッドアップティルト中に心機能の変化をほとんど実証しなかったことを示す。しかしながら、利尿に続き、心不全患者の反応は通常に戻った。Staffordによる刊行物は、前駆出期および左室駆出時間を含む心収縮時間間隔を用いることによって、心機能を評価する。それらの結果は、ここでは
図5として複写されており、正常な患者および心不全の患者の両方に対するティルトの関数としての左室駆出時間の変化を示す。Stafford, R. W., W. S. Harris, and A. M. Weissler. “Left ventricular systolic time intervals as indices of postural circulatory stress in man.” Circulation 41.3 (1970): 485-492。
【0027】
上記刊行物は、体液増加状態と体位変化に対する心機能反応の欠如との間の重大な関連を実証している。本発明者らは、体位変化が、心不全の患者における心血管機能の全体的な評価に有用であり得ることを認めた。さらに、Staffordの論文は、体液状態の正常化により心血管変動性が戻ることになることを実証している(
図5B)。本発明は、これらの生理学的観察を企図し、日常生活の活動とそれらの関連する静脈還流変化とを使用する心不全評価方法を提供する。これらの活動中、脈波波形を測定する非侵襲性の装着型システムによって、心機能を評価することができる。
【0028】
切痕の測定
本発明は、心不全のモニタリングのために患者によって使用することができるシステムを提供する。PPG測定は、非侵襲的、低コストかつ装着可能な測定手法を提供する。心拍数モニタリングまたはパルスオキシメトリ等のPPG測定の以前の応用では、システムのサンプリングレートが、心機能分析に使用することができる脈波波形を生成するためには低すぎる。本発明は、脈波波形の高分解能評価を可能にするサンプリング周波数でPPG信号を取得する。
【0029】
本システムは、PPG信号における切痕点を検出する。切痕は、大動脈値閉鎖によってもたらされる、圧力または容量トレースにおける切欠き部である。大動脈値の閉鎖により、大動脈値に流れの瞬間的な中断およびわずかな逆流がもたらされる。この流量の変化により、中心圧力変化がもたらされ、切痕がもたらされる。切痕は、動脈系における減衰のために末梢に伝播するにしたがって変形するが、大動脈閉鎖に対する有効なタイムマーカであり続ける。波形の変形は、中心鎖骨下動脈および末梢上腕動脈における圧力脈波形を示す、Levick, Cardiovascular Physiology, 5th ed., 2010から複写された
図6を考察することにより、理解することができる。血管の形態および剛性が人によって生理学的に異なることにより、切痕は異なるように変換されるが、PPGによって検出され、大動脈閉鎖に対するマーカとしての役割を果たすことができる。
【0030】
心機能パラメータ
左室駆出時間(LVET)は、一次波および切痕の検査によりPPG信号から求めることができる心臓パラメータの例である。LVETは、心室駆出の持続時間、すなわち、大動脈弁開放(AVO)から大動脈弁閉鎖(AVC)までの時間を定義する。LVETは、指、手首または耳等の末梢部位において記録されたPPG脈波形から求めることができる。Quarry-Pigottらにより、かつ後にChanらにより示されたように、微分PPG波形の注意深い分析により、大動脈弁の開放および閉鎖に対応する遷移点またはピークを特定することができる。Quarry-Pigott, Veronica, Raul Chirife, and David H. Spodick. “Ejection Time by Ear Densitogram and Its Derivative.” Circulation 48.2 (1973): 239-246。Chan, Gregory SH, et al. “Automatic detection of left ventricular ejection time from a finger photoplethysmographicpulse oximetry waveform: comparison with Doppler aortic measurement.” Physiological measurement 28.4 (2007): 439。
図7に示す一手法では、LVETは、PPG波形の一次導関数における第1ピークと第3ピークとの間の間隔として定義される。別の手法では、LVETは、PPG波形の三次導関数における第1ピークと第3ピークとの間の間隔として定義される。
【0031】
LVETにより、心機能の評価が可能になる。LVETは、一回拍出量に直接関連し、一回拍出量が多いほどLVETが長くなる。LVETと一回拍出量との関係は、Weisslerらによって実証された。1963年、Weisslerらは、LVETの容量感受性(および、その心拍数関連係数LVETI)を調査し、ヘッドアップティルト中の、静脈還流および一回拍出量を低減させるLVETIの著しい低下を示した。Weissler, Arnold M., Leonard C. Harris, and George D. White. “Left ventricular ejection time index in man.” Journal of applied physiology 18.5 (1963): 919-923。その著者は、「一回拍出量(したがって、心拍出量)の減少は、左室駆出時間の低減、したがって、駆出時間係数の減少に反映される」と述べた。LVETはまた、心拍数(HR)によっても影響を受け、心拍数が高くなるほどLVETが低減する。Weisslerらは、左室駆出時間係数(LVETI)の使用を示唆し、それは、LVETI=1.6×HR+LVETとして計算され、式中、HRは拍/分での心拍数である。LVETに基づく任意の血行動態的評価もまた、心拍数補正係数、LVETIに基づくことができる。
【0032】
心血管生理学では、一回拍出量(SV)は、1回の脈拍毎に左心室からポンピングされる血液の容量である。一回拍出量は、心エコー図からの心室容積の測定値を使用し、脈拍の直前の血液の容量(拡張終期容積と呼ばれる)から脈拍の終了時の心室内の血液の容量(収縮終期容積と呼ばれる)を減じて、計算される。一回拍出量という用語は、心臓の2つの心室の各々に適用することができるが、通常は、左心室を指す。臨床診察において、一回拍出量は、侵襲的カテーテルシステムにより、または心エコー法により測定される。StaffordおよびWeisslerによる研究において上で伝えたように、LVET期間は、一回拍出量に対する優れた代用物である。Harleyらによる研究は、駆出の期間と一回拍出量との密な直接の線形関係を示した。Harley, Alexander, C. Frank Starmer, and Joseph C. Greenfield Jr. “Pressure-flow studies in man. An evaluation of the duration of the phases of systole.” Journal of Clinical Investigation 48.5 (1969): 895。
【0033】
PPGおよび体位による心機能評価
本発明は、血行動態状態を評価するために、脈波波形から導出される心機能パラメータの判断と体位の変化による静脈還流の変更とを組み合わせる。本発明の実施形態は、
図8および
図9に実証するように、これらの概念を使用可能なシステムに結合する。この例では、検査された患者は、心疾患のない23歳の男性であり、指の先端部でPPG測定を行った。患者に対して、連続して4つの異なる体位、すなわち、1)足を上げて台の上で臥位、2)仰臥位、3)座位および4)立位をとり、各体位を1分間維持するように要求した。この一連の動きにより、静脈還流、したがって一回拍出量が徐々に減少する。
図8は、バイオリン図を使用して各体位において測定されたLVET測定値の分布および中央値を示す。バイオリン図の考察により、各体位の間、特に、仰臥位から座位および座位から立位への遷移中のLVETの低下が分かる。
図9は、約2週間にわたって複数回繰り返された同じ測定プロトコルの結果を示す。図の考察により、体位によるLVET変化がロバストであり安定していることが分かる。
【0034】
患者の身体的特徴、活動レベルおよび全体的な健康が、体位変化によるベースライン一回拍出量および静脈還流の変化に影響を与える。立位への遷移により、中心血管内コンパートメントから脚部、臀部、骨盤および内臓循環における従属領域に300cc~800ccで変化する血液が移動する結果となる。本発明の実施形態は、個人向け評価システムを使用することにより、この変動問題を軽減することができる。実施形態例は、各患者に対して取得された以前の情報に基づいて心不全評価を行い、個人向け評価をもたらす。
図10は、7人の個人の体位の変化に対する反応を示す。指の先端部で、PPG測定を行った。検査される個人は、(被験者1)既知の医学的問題のない、身長5フィート8インチの52歳の男性、(被験者2)既知の医学的問題のない、身長6フィート3インチの38歳の男性、(被験者3)既知の医学的問題のない、5フィート6インチの23歳の男性、(被験者4)代償性心不全の身長5フィート9インチの77歳の男性、(被験者5)既知の医学的問題のない、身長5フィート0インチの47歳の女性、(被験者6)2型糖尿病の身長5フィート6インチの55歳の女性、(被験者7)既知の医学的問題のない、身長5フィート0インチの19歳の女性であった。すべての被験者が、65msを超えるLVETの変化を示すが、何人かは、80ms程度に大きい変化を示し、被験者間の仰臥位LVETの範囲は、50msを超え、1人の個人において観察された範囲(
図9)の2倍を超える。被験者間のこの変動の増大は、本発明者による心機能の個人向け評価により感度が向上する結果となることを実証している。
【0035】
PPGによる心機能評価
本発明によって企図されるように、PPG信号を使用することにより心機能測定を実証する目的で、29人の被験者で、下半身陰圧(LBNP)を使用することにより静脈還流を変更する臨床検査を行った。LBNP試験は、患者の下肢を気密チャンバ内に配置する。真空を接続し、陰圧を生成する。陰圧により、血液が下半身に移動し、循環量、したがって一回拍出量が実質的に減少する。LBNPの適用は、人が起立する際に発生する血液の移動に本質的に類似するが、移動した血液の大きさははるかに大きい可能性がある。LBNP試験プロトコルでは、被験者が失神前症状になるかまたは低血圧症を経験するまで、陰圧を増大させ、上記時点で、陰圧を解除し、被験者の生理機能を正常化した。29人の被験者は、21歳~65歳の範囲(中央値、40歳)であり、13人の女性を含んでいた。指の先端部でPPG測定を行った。
図11は、行われた30のLBNPプロトコルに対する結果を示す。図の考察により、LBNPレベルが増大する(記号によって示す)に従い、経時的にLVETが体系的に変化することが分かる。システムはまた、試験の回復段階中の高速な反応(0R mmHgとして示す)も示す。
図12は、Finometer(一回拍出量を求めるための臨床的に検証されFDAに認可された参照システム)によって求められる、一回拍出量に対してプロットされた同じ試験からの同じLVET値を示す。これらの図は、合わせて、PPG導出LVET測定値が、静脈還流の変化に対して非常に感度が高く、LVET測定値が、一回拍出量の変化を忠実に反映することを示す。
【0036】
重要なことには、LVETは、脈波波形から求めることができる唯一の心機能パラメータではない。
図13は、前述した下半身陰圧(LBNP)プロトコルからのデータに関する脈波波形分解分析の例を示す。およそ1分間のデータブロックを使用して、平均PPG波形が形成され、導関数が計算され、0~1にわたるように正規化される。そして、誤差の二乗和の最小化に基づいて、形式
【数1】
の混合ガウスモデルが、微分波形にあてはめられる。自由パラメータは、ガウス分布の振幅(A
i)、中心(μ
i)および幅(σ
i)とともに、混合で使用されるガウス分布の数(n)およびオフセット(c)である。この例では、ガウス分布の数は3に設定される。
図13Aに、波形およびモデルあてはめの例を示す。図の考察により、LBNPのレベルが増大し、血管内容量が減少すると、脈波波形は、あてはめられたガウス分布によって捕らえられるいくつかの変化を受ける(G1、G2およびG3が付されている)ことが分かる。第2波の大きさは、パラメータA
2によって捕らえられ、LBNPにより著しく低減する。
図13Bに示すように、第2波および第1波の振幅の比A
2/A
1は、LBNPが解除されると(0R mmHg)、血液量の喪失に対してかつ正常な血行動態状態の回復に対して高い感度を示す。したがって、全体的な脈波波形分析を使用して、非常に個人に特化した方法で心機能を評価することができる。
【0037】
心機能パラメータは、指先で取得されたPPG信号に基づいて求めることができる。しかしながら、静脈還流の関数としての脈波波形の変化は、身体上の異なる位置から取得されるPPG信号においてもまた容易に見られる。
図14は、指の基部(指輪位置)、指の先端および手首の裏(腕時計位置)における同じ人から取得されたPPG信号に対する、体位の関数としてのLVET分布の変化を示す。体位、したがって静脈還流の変化によるLVETの実質的な変化は、3つの部位すべてに対して観察される。
【0038】
心不全モニタリングシステム
本発明は、心不全、特に血行動態的うっ血の発生の非侵襲的かつ観察的評価の方法およびシステムを提供する。本発明の実施形態は、2016年11月17日に別個にまたは組み合わせて使用することができる、2つの動作モードを企図する。第1動作モードは、日常生活の活動中に患者を観察することと、体位の関数としてのLVET(または他の心臓パラメータ)の検査により心機能にアクセスすることとを含む。第2動作モードは、患者が同じ体位にあるときに経時的に心機能パラメータを追跡することを含む。これらの心機能、特に血行動態的うっ血の発生にアクセスする方法は、本発明のさまざまな実施形態において、独立して、または組み合わせて使用することができる。
【0039】
血行動態的うっ血の評価のための変動モニタリング
参照した刊行物に示されているように、体液量の増加または血行動態的うっ血の増大により、体位変化に対する正常な心臓反応が低減するかまたは鈍くなる。
図15Aは、心不全の患者における正常な体液量から体液過剰までの進行を示す。最上部のグラフ(第1観察期間)では、患者の全体的な反応は、正常血液量状態にある正常な患者の反応に似る。このグラフは、3つの主な体位、すなわち、仰臥位、座位および立位における一回拍出量を示す。この例では、y軸に対して一回拍出量が使用されているが、他の心機能パラメータもまた使用することができることに留意されたい。プロットの右側のバーは、これらの3つの体位において観察される一回拍出量の範囲または変動を示す。
【0040】
同じ患者が体液を保持し始めると、3つの体位に対する拡張終期圧における右のシフトに示すように、拡張期圧が上昇する。説明の目的で、第2観察期間における患者は、緩やかに体液過剰になるものとみなす。同じ3つの体位が示され、拡張終期圧の同じ相対変化をもたらすが、体位の変化に対する心臓反応は、患者のフランク・スターリング曲線の位置により異なる。一回拍出量の変動の考察により、右側の短い方のバーによって証明されるように、著しい低下が分かる。第3観察期間は、同じ3つの体位を示すが、追加の血行動態的うっ血を含む。追加の体液により、拡張終期圧が上昇し、体位による変動がさらに低減する結果となる。
【0041】
図15Bは、3つの観察期間中に測定された一回拍出量変動の変化を要約している。試験は、あり得るうっ血性心不全の評価に使用することができる個人向けの反応表面を生成するために、患者内試験の基本的な反復可能性を活用する。このように患者内比較試験を経時的にかつ1日に複数の測定回数で行うことができることにより、心不全代償不全の評価に対して強力な診断試験がもたらされる。
【0042】
図15の評価はまた、心機能と体位との間の相対的な関係が、血行動態的うっ血によって変化することも示す。観察期間第1では、仰臥位から立位への進行により、一回拍出量が系統的に低下し、それは、
図8および
図9に示す測定されたパラメータと一貫する。観察期間第2では、仰臥位-座位と立位との間の遷移により、同じ反応はもたらされない。特に、仰臥位と座位との間の心機能変化の量は、実質的に低減した。第3観察期間では、一回拍出量の変化は、第1観察期間と反対であり、すなわち、患者がより静脈還流の少ない体位に遷移する際に、心機能の向上がある。
図15Cは、3つの観察期間中の仰臥位と立位との間の一回拍出量の差を要約している。重要なことには、第3観察期間の間の一回拍出量の差は、負になり、すなわち、血行動態的うっ血を強く示した。したがって、本発明は、心臓パラメータと種々の体位との間の関係を利用して、正常血液量状態から血行動態的うっ血への進行を高度に診断する貴重な情報を提供することができる。
【0043】
変動モニタリングの説明
本発明は、心機能変動の評価を複数の方法で行うことができる。以下の例は例示であり、他の多くの手法が存在し、本発明において企図される。第1例では、体位評価システムは、仰臥位、座位および立位の体位を判断し、動きが限られたまたは動きのない期間を特定することができる。これらの期間中に、所定時間、または動きが検出されるまで、脈波信号を取得することができる。測定されたPPGは、心機能を判断するために処理することができる。1つの実施形態例では、指PPG信号が、30秒間測定され、切痕のタイミングに基づいて、各脈波に対してLVETが求められる。結果としての測定値は合わせて平均され、体位に対する平均LVETが定義される。体位にわたる平均LVET測定値の変動が計算され、履歴的値または所定閾値と比較される。低い変動は、あり得る体液過剰を示す。
【0044】
第2例では、変動評価は、体位データが取得される時刻に、あり得る差に対して補償される。生理機能に影響を与える概日リズム変化のために、体位データが得られたときを認識して、データが処理される。たとえば、午後からの立位データが、現変動評価に使用される場合、システムは、午後からの事前に取得された立位データを使用する。本明細書で用いる、同様の時刻は、たとえば、午前、午後および夜として定義することができる、一般的な基準である。この時刻比較プロセスにより、診断精度を向上させることができ、それは、大部分の患者が、夕方近くより低い体液量状態で目覚めるためである。あり得る程度まで、システムは、同様の時刻からのデータを同様の時刻からの履歴データと比較し、それにより、変動評価は、同様の時点で取得された体位データに基づく。
【0045】
第3例では、システムは、体位間の遷移に焦点を合わせ、心機能評価パラメータの変化の方向および大きさを求める。たとえば、患者が目覚めてその後、立位に進む際の仰臥位から座位への遷移により、日常的に反復可能な遷移評価に対する機会がもたらされる。
【0046】
第4例では、システムは、患者が座位から歩行に遷移する際の心臓反応を観察する。たとえば、システムは、座位から歩行への遷移として、所与の速度での5歩を含むように観察を定義することができる。座位から歩行への遷移には、心臓が、生理的要求の増大とともに静脈還流の低下を補償する必要がある。これらの二重要求に対する反応は、心臓機能全体に対して診断に用いることができる。各患者の反応は異なるが、個人向けの反応を生成して将来の評価のための比較として使用することができる。
【0047】
第5例では、体位評価システムからの連続情報が、心臓評価尺度と組み合わされる。システムは、1日の全期間からデータを取得して処理し、動き中に取得されたデータを含むことができる。結果としてのデータを使用して、患者の心機能および動きプロファイルの個人向け特徴付けをもたらすことができる。こうしたデータを使用して、患者に対する正常なまたは典型的な反応パターンを定義し、異常な挙動に対して新規なデータを評価することができる。心不全管理の目的での異常な挙動としては、鈍くなったかまたは低下した動きの変化に関連するわずかな変化、心拍数変動の低減、呼吸数の変化、および典型的な動きに対する心機能反応を挙げることができる。心不全管理には使用されないが、この例では、行動パターン認識(Behavior Pattern Recognition)(BPR)ツールが非常に適用可能であり得る。BPRは、怪しいテロリストおよび犯罪者の行動を攻撃前に検出する戦術的ツールである。それは、予防的方法として設計され、きわめて非合法的な行動に関係する人々の一意の行動特徴を使用する。本発明では、同様の手法を使用して、何日もにわたり情報を集計し、連続的に方法を更新して、血行動態的うっ血の最も早期の発現に関連する心機能のわずかな変化にアクセスする強力なツールをもたらす。
【0048】
血行動態的うっ血の評価のための傾向モニタリング
心不全代償不全を判断する第2モードは、患者が同じ体位にあるときに経時的に心機能を評価する。たとえば、システムは、毎晩同じ睡眠段階の間であっても、睡眠中の患者の心機能を評価することができる。この種の睡眠段階評価は、毎日評価することができる反復可能な心臓評価をもたらす。例として、システムは、夜間に少なくとも1回、同じ睡眠段階中にデータを取得し得られたデータを処理することができる。そして、任意の一時的な傾向の判断のために、平均または最小LVETを以前のLVET測定値と比較することができる。
図16は、こうしたモニタリングプロセスの例である。
図16に示すように、患者は、1日目~20日目にわたって体系的変化は体験していないが、21日目の一回拍出量の減少によって示すように、心機能の低下を体験し始める。この心機能の低下の傾向は、7日間続き、体液過剰および血行動態的うっ血を明確に示す。システムは、代償不全の初期の指標を提供することができ、それにより、外来環境において介入を施すことができ、入院を回避することができる。
【0049】
取付型体位評価システム
取付型センサを使用することによる体位評価は、ビデオゲーム娯楽における関心領域である。他の用途としては、高齢者における行動追跡とともに、スポーツにおける動き追跡が挙げられる。たとえば、Najafiらは、胸部に取り付けられた1つの運動センサのみを使用して高齢者の複数の体位(座位、立位および仰臥)および歩行の期間を識別する身体的行動モニタリングの新たな方法を実証した。Najafi, B., Aminian, K., Paraschiv-Ionescu, A., Loew, F., C. J., & Robert, P. (2003). Ambulatory system for human motion analysis using a kinematic sensor: Monitoring of daily physical activity in the elderly. IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 50(6), 711-723. http://doi.org/10.1109/TBME.2003.812189。Najafiらは、ジャイロスコープのみのシステムに関しても発表した。Najafi, B., Aminian, K., Loew, F., Blanc, Y., Robert, P. a, & Member, S. (2002). Measurement of Stand - Sit and Sit - Stand Transitions Using a Miniature Gyroscope and Its Application in Fall Risk Evaluation in the Elderly. IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 49(8), 843-851. http://doi.org/10.1109/TBME.2002.800763。体位モニタリングの他の例は、外来患者のためのEKGモニタリングで使用されてきた。Jasonらは、めまい、動悸および失神等の一般的な症状の評価のためにホルター(Holter)モニタリング中に患者の体位(臥位、座位、立位、または1つの体位から別の体位への変化)を判断することができることを実証した。Akhtar, S., Matei, V., London, M. J., & Barash, P. G. (2011). Electrocardiographic Monitoring. Kaplan’s Cardiac Anesthesia: The Echo Era, 60208, 452-465。上に参照したシステムは、患者の手、手首または指ではなく胸部に取り付けられたセンサを使用する。便宜上および通常の日常生活との一貫性を保つために、本発明は、体位の判断のために手首または指輪ベースのセンサを使用して同様の性能を達成することができる。
【0050】
本システムは、指輪または腕時計の動きセンサを使用して、身体的活動の全体的な測定値を求め、活動タイプを分類することができる。本システムは、活動分類を使用して、体位の判断を容易にすることができる。たとえば、椅子から立ち上がる行動が検出された場合、体位は立位として判断することができる。活動認識および周囲の一連の活動は、特に状態-空間モデルを使用して、体位を高度に検出することができる。動きパターンは各個人に幾分か特有であるため、本システムは、初期訓練期間中に訓練することができ、その期間中、患者は、仰臥位、座位または立位まで動いたときを示す。
【0051】
体位に関する追加の情報は、3軸加速度計で容易に測定されるセンサの傾斜および回転の角度を使用することによって取得することができる。回転情報は、手が立位、座位または臥位と一貫した位置にあるか否かを示すことができる。たとえば、就寝に一貫した活動と、それに続く、長期間の最小限の活動または活動なしと、手がベッドの上に載っていることに一貫するセンサの向きとを特定することによって、睡眠にアクセスすることができる。
【0052】
体位システムを使用して、さまざまな体位が達成されたことが確実にされる。1日の間に体位の変動が達成されなかった場合、心機能変動は低減し、偽陽性結果の可能性が増大する。患者が指定された期間にわたって体位を変えなかった状況では、本システムは、患者に対して、体位を変えるように促すことができる。本システムは、診断精度を確実にするのに役立つように、観察的試験に関連するこの種の品質制御を提供することができる。
【0053】
非取付型体位評価システム
ベッドに入るかもしくはベッドから出る、またはテーブルまで往復するという活動により、撮像システムによって取り込み定量化することができる観察的機会がもたらされる。患者の行為は、撮像システムを使用して判断することができる。撮像システムは、ナイトテーブルまたは台所に位置し、映像情報を取り込むために使用することができる。システムは、視覚ベースの活動認識および後続する体位判断を使用して結果としてのデータを処理することができる。視覚ベースの活動認識は、人の動きを含む映像情報に行為または活動ラベルを用いてラベル付けするプロセスである。
【0054】
こうしたシステムは、ビデオおよびカメラの両方を含む種々の視覚取込み技術を使用して実施することができる。例として、人を検出する動きベースのビデオカメラを使用して、患者の動きを取り込むことができる。システムは、顔認識技術を使用して、または患者の上のもしくは患者に付けられたセンサに信号を送らせることにより、患者を特定することができる。信号は、電磁信号、RFIDタグまたは光信号を含む多くの形態をとることができる。明滅する赤外LEDは、多くの動き検出ビデオカメラに共通する赤外線ビデオ記録を利用することができる。ビデオシステムは、被験者を追跡し、または魚眼(超広角)レンズを使用してシーンを完全に取り込むことができる。
【0055】
本システムはまた、Microsoft Kinect、Orbbec Astra、Intel Realsense又ははStereolabs Zebステレオカメラ等、構造化光(structured light)または3Dカメラシステムを使用して、3次元画像を作成することができる。複数のシステムが、個人の動きを取り込む骨格棒線図(skeleton stick figure)の作成のために骨格追跡を行うことができる。Hanらは、最近、3D骨格データに基づいて人々の既存の空間-時間表現の幅広い概観を提示し、情報モダリティ、表現符号化、構造および遷移ならびに特徴量設計(feature engineering)の観点からこれらの方法の情報を与える分類および分析を提供する、調査論文を書いた。Han, Fei, et al. “.” arXiv preprint arXiv:1601.01006 (2016)。
【0056】
視覚ベースの活動認識の使用に加えて、本システムは、患者の全体的な体位を判断するために顔検出を使用することができる。顔検出は、デジタル画像で人の顔を識別する種々のアプリケーションで使用されているコンピュータ技術である。2001年、Paul ViolaおよびMichael Jonesが、任意の物体を検出する新しいフレームワークを発明し、それを顔検出に対して改良した。このアルゴリズムは、今では、Viola-Jonesフレームワークとして知られている。Viola-Jones法は、非常に高い精度を有し、著しい処理能力は必要としない。本発明で使用される際、顔検出を使用して、画像における顔の位置を特定し、体位を仰臥位、座位または立位として推測することができる。
【0057】
睡眠周期評価
人の生理機能は、患者の睡眠段階に基づいて変化する。既知の生理学的変化としては、血圧、心拍数、呼吸数、心拍数変動、体温、動きおよび呼吸変動の変化が挙げられる。睡眠段階の判断は、生理学的研究の盛んな分野であった。睡眠ポリグラフィ検査は、睡眠を正確に評価するための究極の判断基準とみなされるが、特に長期の睡眠検査において、費用がかかり、時間がかかりかつ不快である可能性がある。アクティグラフィは、装置が取り付けられる身体の部分の動きの正確な測定値を提供する。この技術は、睡眠/覚醒パターンを評価することができ、安価であるとともに使用が容易であるが、用途に応じて詳細(レム-ノンレム識別等)が不足している。本システムは、PPG信号を追加することにより、この限界に対処することができる。ノンレム睡眠中、心拍数および呼吸数は低減し、レム睡眠中、呼吸数および心拍数はより不規則になる。したがって、本システムは、動きセンサを含む腕時計または他のシステムとともにPPG信号を提供することができ、睡眠段階の判断を可能にすることができる。
【0058】
通信システム
リモートモニタリングは、遠隔評価場所、医師または病院への患者に関する心機能情報の通信を可能にする機構である。本システムは、直接の面と向かっての対話することなく、評価システムと医院との間の通信を可能にする。
【0059】
システム要素および実施形態
心不全システムについて、3つの全体的な要素に関して記載することができる。すなわち、(1)脈波検出システム、(2)体位検知システムおよび(3)通信システムである。実施形態は、3つすべてのシステムを含む単一のシステム、または互いに相互作用する3つの独立したシステムを含む、多くの形態をとることができる。
【0060】
第1実施形態
単一のシステム実施形態例は、単一のハウジングに3つのすべてのシステムから構成される。
図17は、PPG測定システム、動きセンサ(マルチアクセス加速度計およびジャイロスコープセンサ)およびWi-fiまたはインターネット・オン・ア・チップ(internet-on-a-chip)サブシステムを含む腕時計の例である。実際には、患者は、腕時計を装着し、腕時計は、連続的にまたは断続的に患者をモニタリングする。電力消費問題のために、システムは、動きおよび活動認識に基づいてスマートサンプリングを行うことができる。たとえば、腕時計は、動きがないかまたは限られている睡眠期間を特定することによって日々の評価を開始し、その後、患者が定義された睡眠段階にあるという評価を行うことができる。そして、システムは、ある期間のPPGデータを取得し、そのデータに対して適切な品質制御を行って、有効な仰臥位体位位置データを確保することができる。そして、システムは、座位または立位への動きを検出するまで低エネルギー状態に移動することができ、その後、追加のPPGデータを取得することができる。システムは、1日の間に上記体位認識プロセスを繰り返し、データを取得することができる。システムは、システムがWi-fi接続に接続されている間、1日を通して後続する医学的評価のためにデータを送信することができる。さらに、夜間にデータをアップロードすることができる。センサシステムは、患者に対して触覚、聴覚および/または視覚フィードバックを提供して、データの取得およびデータ品質が不適切であると判断されたか否かを通信することができる。不適切なデータのあり得る原因としては、腕時計の不十分な配置、緩い腕時計バンド、過剰な動き、患者による限られた動き、または他の変わった動きが挙げられる。システムは、問題の解決のために推奨を提供することができる。
【0061】
第2実施形態
心不全モニタリングシステムの実施形態例は、2つの構成要素、すなわち指輪ベースPPGおよび通信システムを含むことができる。指輪は、PPG測定システム、慣性測定ユニットおよびBluetooth無線通信システムを含むことができる。指輪システムは、別個のデータ送信局と通信する。データ送信局は、インターネットを介して、携帯電話通信を介して、またはモデムによって通信することができる。
図18は、こうしたシステムの図である。
【0062】
第3実施形態
心不全モニタリングシステムの実施形態例は、3つのユニット、すなわち、指輪、腕時計および通信システムを含むことができる。一例では、指輪および腕時計はともに作用して、あり得る最適なPPG信号を取得する。手首PPG信号が適切でない場合、指輪が起動してPPG信号を獲得する。こうしたシステムの利点は、手首において相対的に大きいバッテリを配置するととともに、手首ベースのシステムに追加のセンサを配置することができるということである。
図19は、指輪センサ、腕時計電子回路および動きセンサならびに通信システムを備えたこうしたシステムの図である。
【0063】
第4実施形態
心不全モニタリングシステムの実施形態例は、3つのユニット、すなわち、指輪ベースPPG、体位を判断するために使用される1つまたは複数の運動センサおよび通信システムを含むことができる。運動センサは、胴部、脚または腰等の身体の複数の位置に配置して、身体活動に加えて体位を判断することができる。たとえば、胴部センサが垂直に向けられる場合、被験者が座っているかまたは立っている可能性が非常に高い。センサは、ネックレス、靴またはベルト等の装着品に組み込むことができ、それにより、日常生活を妨げない。運動センサおよびPPGセンサは、Bluetooth等のプロトコルを使用してデータ送信システムと通信することができる。
図20は、指輪センサ、ウエスト取付型動きセンサおよび通信システムを備えたこうしたシステムの図である。
【0064】
第5実施形態
心不全モニタリングシステムの実施形態例は、被験者に取り付けられた脈波センサと、結合された通信/体位測定システムとを含むことができる。結合された通信および体位測定システムは、たとえば台所に、患者の画像を取り込むビデオカメラを含むことができる。カメラは体位の判断を可能にする。脈波センサは、通信システムと通信し、画像およびデータは、望ましい場合は、遠隔処理のためにアップロードすることができる。使用時、脈波センサシステムは、夜間に仰臥位でデータを取得し、他のデータは、台所にいる間に取り込まれる。通信システムはまた、医師とのビデオ通信を行うことができるように、スピーカおよび追加のハードウェアも含むことができる。
図21は、カメラシステムおよび使用中のシステムの図である。
【0065】
本明細書では、心不全患者の血行動態モニタリングに関して、例示および実施形態について記載した。本システムはまた、血液量減少のモニタリングにも適用可能である。本システムは、出血または不適切な体液消費の評価に対して術後患者のモニタリングを可能にすることができる。高齢者における容量状態の評価は、これらの患者が混乱したように現れることが多いため、困難である可能性がある。診断精密検査は、卒中等の重篤な状態、または血液量減少等のより簡単に治療される状態を含むことができる。本発明の実施形態を使用して、血液量減少の発生に対して高齢者をモニタリングすることができる。
【0066】
本発明について、さまざまな実施形態例に関連して説明した。上記説明は、単に本発明の原理の適用を例示するものであり、本発明の範囲は、明細書に鑑みて考察される特許請求の範囲によって判断されるべきであることが理解されよう。当業者であれば、本発明の他の変形および変更が明らかとなろう。