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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】灌流培養方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20230919BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230919BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20230919BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
C12P21/02 H
【請求項の数】 33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116795
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2016571259の分割
【原出願日】2015-06-05
(65)【公開番号】P2021168681
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/009,058
(32)【優先日】2014-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アガタ・ヴィリガー-オーバーベック
(72)【発明者】
【氏名】ジャングオ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・ロレンソ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525789(JP,A)
【文献】特表2005-509173(JP,A)
【文献】国際公開第2014/066519(WO,A1)
【文献】Biotechnology Reports,2014年,Vol.1-2,p.22-26,Available online 6 May 2014
【文献】Biotechnology Letters,2010年,Vol.32,p.73-78
【文献】Biotechnology and Bioengineering,2010年,Vol.105, No.2,p.260-275
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
C12M 1/00-3/00
C12P 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1もしくは第2の液体培養培地中の、または組換えタンパク質をコードする核酸を含有するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞源中の生物学的夾雑物の存在について試験するための方法であって、
(a)第1の液体培養培地に配置された、組換えタンパク質をコードする核酸を含有するCHO細胞を含む少なくとも1つのウェルを含むマルチウェルプレートを用意する工程であって、該第1の液体培養培地は該ウェルの体積の5%~70%を占める工程と;
(b)ある期間、31℃~40℃で、320回転毎分(RPM)~500RPMの回転撹拌をしながら、該マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;
(c)連続的にまたは定期的に、該期間中に、該第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を該第1の液体培養培地に添加する工程であって、該第1および第2の体積は等しく、第1の体積の第1の液体培養培地はCHO細胞を実質的に含まない工程と;
(d)該CHO細胞または該第1および/もしくは第2の液体培養培地中の該組換えタンパク質を検出する工程と;
(e)該CHO細胞または該第1および/もしくは第2の液体培養培地中に存在する組換えタンパク質の第1の量を、工程(a)~(d)で使用された第1もしくは第2の液体培養培地と異なる第1もしくは第2の液体培養培地、または工程(a)~(d)で使用されたCHO細胞源と異なるCHO細胞源のうちの1つまたはそれ以上を使用する異なる方法によって生成される組換えタンパク質の第2の量と比較する工程と;
(f)組換えタンパク質の第1の量が組換えタンパク質の第2の量未満の場合、工程(a)~(d)で使用された第1もしくは第2の液体培養培地、または工程(a)~(d)で使用されたCHO細胞源を生物学的夾雑物を含有すると断定する工程
を含み、
生物学的夾雑物は、マイコバクテリウム、真菌、ウイルスおよび望ましくない哺乳動物細胞からなる群より選択される、前記方法。
【請求項2】
マルチウェルプレートは、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、または96ウェルプレートである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
マルチウェルプレートは、深型ウェルプレートである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ウェルの底の直径は、6.0mm~35mmの間である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ウェルの高さは、12mm~50mmである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ウェルは、第1の液体培養培地の1mL~18mLの体積を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ウェルは、1mL~7mLの間の体積を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ウェルは、1mL~3.5mLの間の体積を有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)におけるCHO細胞は、第1の液体培養培地150μL~15mLに浮遊している、請求項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)におけるCHO細胞は、第1の液体培養培地150μL~10mLに浮遊している、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)におけるCHO細胞は、第1の液体培養培地150μL~1mLに浮遊している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)における第1の液体培養培地は、ウェルの体積の10%~60%を占める、請求項に記載の方法。
【請求項13】
回転撹拌は、320RPM~400RPMである、請求項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)~(d)における第1の液体培養培地および/または第2の液体培養培地は:既知組成液体培養培地、無血清液体培養培地、血清含有液体培養培地、動物由来成分不含液体培養培地、およびタンパク質不含液体培養培地からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
マルチウェルプレートは、ガス透過性ディスポーザブル膜で密封される、請求項に記載の方法。
【請求項16】
マルチウェルプレートは、ガス透過性シリコーン層で密封される、請求項に記載の方法。
【請求項17】
ウェルは平底を有する、請求項に記載の方法。
【請求項18】
ウェルは丸底を有する、請求項に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)において、期間の最初の24~48時間後、24時間ごとに、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、該第1の液体培養培地の体積の30%~150%である、請求項に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)において、撹拌は、第1の体積の第1の液体培養培地を除去する前に少なくとも30秒の期間、停止される、請求項に記載の方法。
【請求項21】
蒸発に起因する第1の液体培養培地の体積の減少を相殺するために、工程(c)においてさらなる体積の第2の液体培養培地を複数のウェルの各々に定期的に添加する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)における、第1の体積の第1の液体培養培地の除去と、第2の体積の第2の液体培養培地の該第1の液体培養培地への添加は、自動デバイスを使用して行われる、請求項に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)における第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の添加は同時に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項24】
工程(c)における第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の添加は連続的に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)における第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の添加は定期的に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項26】
工程(c)における第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は経時的に増加される、請求項に記載の方法。
【請求項27】
マルチウェルプレートは、7日より長い期間インキュベートされ、インキュベーション1~3日目に、24時間ごとに、工程(c)において除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、該第1の液体培養培地の体積の30%~50%の間であり;
インキュベーション4~6日目に、24時間ごとに、工程(c)において除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、該第1の液体培養培地の体積の40%~70%の間であり;
インキュベーション7日目以降に、24時間ごとに、工程(c)において除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、該第1の液体培養培地の体積の90%~150%である、
請求項に記載の方法。
【請求項28】
組換えタンパク質は、免疫グロブリンである、請求項に記載の方法。
【請求項29】
組換えタンパク質は、酵素である、請求項に記載の方法。
【請求項30】
酵素は、ガラクトシダーゼである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ガラクトシダーゼは、アルファ-ガラクトシダーゼである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
組換えタンパク質は、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質である、請求項に記載の方法。
【請求項33】
ウェル中、細胞15x106個/mL~細胞60x106個/mLの間の生細胞密度をもたらす、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月6日に出願した米国特許仮出願第62/009,058号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、分子生物学、細胞培養プロセス開発および組換えタンパク質の製造の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞は、治療的にまたは商業的に重要なタンパク質の生産に使用されることが多い。いくつかのハイスループット(HT)細胞培養システムが生物工学業界内で長年にわたってフェドバッチプロセスに使用されているが、マルチウェルプレートを使用する灌流ベースの細胞培養のHTモデルの存在は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、本明細書に記載の特異的様式でマルチウェルプレートで哺乳動物細胞を培養することにより、生細胞密度および組換えタンパク質生産が実質的に向上される結果となり、大規模灌流、生産バイオリアクターでの培養実施の正確なモデルが得られるという発見に少なくとも一部は基づく。この発見を考慮して、哺乳動物細胞を培養する方法、組換えタンパク質を生産する方法、および組換えタンパク質を作製する製造プロセスを試験するための方法が本明細書で提供される。例えば本明細書に記載の方法のいずれかを行うために使用することができる、マルチウェル細胞培養プレートシステムも提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
哺乳動物細胞を培養する方法であって:第1の液体培養培地に配置された哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含むマルチウェルプレートを用意する工程であって、第1の液体培養培地はウェルの体積の約5%~約70%を占める工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320回転毎分(RPM)~約500RPMの回転撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加する工程であって、第1および第2の体積はほぼ等しい工程とを含む方法が、本明細書で提供される。これらの方法の一部の実施形態では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。これらの方法の一部の実施形態では、CHO細胞は、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質)をコードする核酸を含有する。
【0006】
組換えタンパク質を生産する方法であって:第1の液体培養培地に配置された哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含むマルチウェルプレートを用意する工程であって、第1の液体培養培地はウェルの体積の約5%~約70%を占め、哺乳動物細胞は組換えタンパク質をコードする核酸を含有する工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320回転毎分(RPM)~約500RPMの回転撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加する工程であって、第1および第2の体積はほぼ等しい工程と;組換えタンパク質を哺乳動物細胞からまたは第1もしくは第2の培養培地から回収する工程とを含む方法も提供
される。これらの方法の一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質)は、哺乳動物細胞から回収される。これらの方法の一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、分泌免疫グロブリン、分泌酵素、分泌成長因子、分泌タンパク質断片、または工学操作された分泌タンパク質)は、第1または第2の液体培養培地から回収される。
【0007】
組換えタンパク質を作製する製造プロセスを試験するための方法であって:第1の液体培養培地に配置された哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含むマルチウェルプレートを用意する工程であって、第1の液体培養培地はウェルの体積の約5%~約70%を占め、哺乳動物細胞は組換えタンパク質をコードする核酸を含有する工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320回転毎分(RPM)~約500RPMの回転撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加する工程であって、第1および第2の体積はほぼ等しい工程と;哺乳動物細胞または第1もしくは第2の液体培養培地中の組換えタンパク質を検出する工程と;哺乳動物細胞または第1もしくは第2の液体培養培地中に存在する組換えタンパク質の量を組換えタンパク質の基準レベルと比較する工程とを含む方法も提供される。これらの方法の一部の実施形態では、組換えタンパク質の基準レベルは、異なる培養方法を使用して生産される組換えタンパク質のレベルである。これらの方法の一部の実施形態では、異なる培養方法は、異なる第1もしくは第2の液体培養培地、異なる哺乳動物細胞、異なる温度、異なる撹拌レベルまたは異なるマルチウェルプレートを利用する。これらの方法の一部の実施形態では、異なる培養方法は、異なる原料、異なる凝集防止剤、または既知組成液体培養培地を利用する。一部の実施形態では、これらの方法は、例えば、実験計画(DOE)またはクォリティー・バイ・デザイン(QBD)研究を行うためのハイスループット細胞培養実験を行うために使用することができる。これらの方法の一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、分泌免疫グロブリン、分泌酵素、分泌成長因子、分泌タンパク質断片、または工学操作された分泌タンパク質)は、第1または第2の液体培養培地で検出される。これらの方法の一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質)は、細胞で検出される。
【0008】
本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、第1の体積の第1の液体培養培地は哺乳動物細胞を実質的に含まない。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、第1の液体培養培地は、ウェルの体積の約10%~約60%を占める。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、回転撹拌は、約320RPM~約400RPMである。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の添加は同時に行われる。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の添加は連続的にまたは定期的に行われる。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は経時的に増加される。
【0009】
本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、7日より長い期間インキュベートされ、インキュベーション1~3日目に、24時間ごとに、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約30%~約50%の間であり;インキュベーション4~6日目に、24時間ごとに、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約40%
~約70%の間であり;ならびにインキュベーション7日目以降に、24時間ごとに、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約90%~約150%である。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、ウェルは約1mL~約18mLの間(例えば、約1mL~約7mLの間、または約1mL~約3.5mLの間)の体積を有する。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、または96ウェルプレートである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、深型ウェルプレートである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、ウェルの底の直径は、約6.0mm~約35mmの間(例えば、約12mm~約50mm)である。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、ウェルの高さは、約12mm~約50mmである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、第1の培養培地約150μL~約15mL(例えば、約150μL~約10mL、約150μL~約5mL、または約150μL~約150μL)に浮遊している。
【0010】
本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、第1の液体培養培地および/または第2の液体培養培地は:既知組成液体培養培地、無血清液体培養培地、血清含有液体培養培地、動物由来成分不含液体培養培地、およびタンパク質不含培地からなる群から選択される。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、期間の最初の約24~48時間後、24時間ごとに、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約30%~約150%である。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、撹拌は、第1の体積の第1の液体培養培地を除去する前に少なくとも30秒の期間、停止される。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、ガス透過性ディスポーザブル膜またはガス透過性シリコーン層で密封される。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、ウェルは、平底または丸底を有する。
【0011】
本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態は、蒸発に起因する第1の液体培養培地の体積の減少を相殺するためにさらなる体積の第2の液体培養培地を複数のウェルの各々に定期的に添加する工程をさらに含む。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態において、第1の体積の第1の液体培養培地の除去と第2の体積の第2の液体培養培地の第1の液体培養培地への添加は、自動デバイスを使用して行われる。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、本明細書に記載のマルチウェル細胞培養プレートシステムのいずれかである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、方法は、ウェル中、細胞15x10個/mL~細胞60x10個/mLの間の生細胞密度をもたらす。
【0012】
哺乳動物細胞を培養する方法であって:マルチウェルプレートのウェル内に配置された液体培養培地に浮遊している哺乳動物細胞を、培地において、約6.0mm~約35mmの間の直径および約40mm~約50mmの間の高さを有する角底ウェルの体積の約15%~25%を占める培地において、角底ウェルを約31℃~約40℃の温度でインキュベートし、約320回転毎分(RPM)~約360RPMの回数で回転撹拌したときに達成されるものと本質的に同じである流体せん断力および溶存酸素(O)濃度を生じさせる条件下、勾配灌流プロセスで培養する工程を含む方法も提供される。これらの方法の一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質)をコードする核酸を含有するCHO細胞)である。
【0013】
組換えタンパク質を生産する方法であって:マルチウェルプレートのウェル内に配置さ
れた液体培養培地に浮遊している哺乳動物細胞を、培地において、約6.0mm~約35mmの間の直径および約40mm~約50mmの間の高さを有する角底ウェルの体積の約15%~25%を占める培地において角底ウェルを約31℃~約40℃の温度でインキュベートし、約320回転毎分(RPM)~約360RPMの回数で回転撹拌したときに達成されるものと本質的に同じである流体せん断力および溶存酸素(O)濃度を生じさせる条件下、勾配灌流プロセスで培養する工程と;組換えタンパク質を哺乳動物細胞または液体培養培地から回収する工程とを含む方法も提供される。これらの方法のいずれかの一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片、または工学操作されたタンパク質)は、哺乳動物細胞から回収される。これらの方法のいずれかの一部の実施形態では、組換えタンパク質(例えば、分泌免疫グロブリン、分泌酵素、分泌成長因子、分泌タンパク質断片、または工学操作された分泌タンパク質)は、液体培養培地から回収される。これらの方法の一部の実施形態では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0014】
本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、選択された6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、または96ウェルプレートである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、深型ウェルプレートである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、液体培養培地は:既知組成液体培養培地、無血清液体培養培地、血清含有液体培養培地、動物由来成分不含液体培養培地、およびタンパク質不含培地からなる群から選択される。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、ガス透過性ディスポーザブル膜またはガス透過性シリコーン層で密封される。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、平底または丸底を有するウェルを含む。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、本明細書に記載のマルチウェル細胞培養プレートシステムの1つである。本明細書に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、培養は、ウェル中、細胞15x10個/mL~細胞60x10個/mLの間の生細胞密度をもたらす。
【0015】
マルチウェル細胞培養プレートシステムであって:複数の開口部を含む第1の表面を含む一体型支持プレートと;支持プレート内に配置されており、体積約200μL~約18mLの間の体積を有する細胞培養物を収容するように構成されている、複数の培養ベッセルとを含み、各開口部は、各培養ベッセルへの開放部と対になっており、開放部を画成しており、各培養ベッセルは、培養ベッセルの中へのおよび/または培養ベッセルから外への流体の流れに順応するように構成されている少なくとも1つのポートをさらに含む、マルチウェル細胞培養プレートシステムも提供される。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態では、一体型支持プレートは、液体の収容およびポートへの供給のためのリザーバーを含むように構成されている。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態では、培養ベッセルは、少なくとも第1および第2のポートを含み、第1のポートは、培養ベッセルの中への流体の一方向の流れに順応するように構成されており、第2のポートは、培養ベッセルから外への流体の一方向の流れに順応するように構成されている。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態では、ポートは、細胞の培養ベッセルへの流入および培養ベッセルからの流出を選択的に防止するように構成されているフィルターを含む。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態では、第1および第2のポート各々は、細胞の培養ベッセルへの流入および培養ベッセルからの流出を選択的に防止するように構成されているフィルターを含む。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態は、一体型支持プレート内に配置されており、ポートと流体連通している、少なくとも1つの導水路をさらに含み、導水路は、流体を培養ベッセルにおよび/または培養ベッセルから流すように構成されている。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態は、少なくとも1つのポートと作動可能に接続された少
なくとも1つの流体流量調整器をさらに含む。本明細書に記載のシステムのいずれかの一部の実施形態は、少なくとも1つの導水路と作動可能に接続された少なくとも1つの流体流量計をさらに含む。
【0016】
本明細書で使用する場合、名詞の前の語「a」は、その特定の名詞の1つまたはそれ以上を表す。例えば、句「哺乳動物細胞(a mammalian cell)」は、「1つまたはそれ以上の哺乳動物細胞」を表す。
【0017】
用語「哺乳動物細胞」は、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、ハムスター、マウス、ミドリサル、ラット、ブタ、ウシ、もしくはウサギ)からのまたは由来の任意の細胞を意味する。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は不死化細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は分化細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は未分化細胞である。
【0018】
用語「0日目」は、哺乳動物細胞が第1の液体培養培地に播種される時点を意味する。
【0019】
用語「1日目」は、第1の液体培養培地への哺乳動物細胞の播種後、第0日~約24時間の間の期間を意味する。
【0020】
用語「2日目」は、第1の液体培養培地への哺乳動物細胞の播種後、約24時間~約48時間の期間を意味する。
【0021】
用語「3日目」は、第1の液体培養培地への哺乳動物細胞の播種後、約48時間~約72時間の期間を意味する。
【0022】
用語「4日目」は、第1の液体培養培地への哺乳動物細胞の播種後、約72時間~約96時間の間の期間を意味する。各々のさらなる日についての用語(「5日目」、「6日目」、「7日目」など)は、直前の日の終わりからさらなる約24時間にわたる期間を意図したものである。
【0023】
用語「実質的に含まない」は、特定の物質(例えば哺乳動物細胞)が少なくともまたは約90%ない(例えば、少なくとももしくは約95%、96%、97%、98%、または少なくとももしくは約99%ない、または約100%ない)組成物(例えば液体培養培地)を意味する。
【0024】
用語「0.5x体積」は、その体積の約50%を意味する。用語「0.6x体積」は、その体積の約60%を意味する。同様に、0.7x、0.8x、0.9xおよび1.0xは、その体積の70%、80%、90%または100%をそれぞれ意味する。
【0025】
用語「培養」または「細胞培養」は、一連の管理された物理的条件下での哺乳動物細胞の維持または増殖を意図したものである。
【0026】
用語「液体培養培地」は、哺乳動物細胞をインビトロで増殖させるのに十分な栄養素を含有する流体を意味する。例えば、液体培養培地は、以下の1つまたはそれ以上を含有することができる:アミノ酸(例えば20種のアミノ酸)、プリン(例えばヒポキサンチン)、ピリミジン(例えばチミジン)、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルベート、リポ酸、マグネシウム、グルコース、ナトリウム、カリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、および重炭酸ナトリウム。一部の実施形態では、液体培養培地は、哺乳動物からの血清を含有することができる。一部の実施形態では、液体培養培地は、哺乳動物からの血清も別の抽出物も含有しない(定義された液体培養培地)。一部の実施
形態では、液体培養培地は、微量金属、哺乳動物成長ホルモン、および/または哺乳動物成長因子を含有することができる。液体培養培地の非限定的な例を本明細書に記載する。液体培養培地のさらなる例は当技術分野において公知であり、市販されている。液体培養培地は、任意の密度の哺乳動物細胞を含有することができる。例えば、本明細書で使用するような、ウェルから除去される第1の体積の第1の培養培地は、哺乳動物細胞を実質的に含まないこともある。
【0027】
用語「第1の液体培養培地」は、哺乳動物細胞の培養に好適である液体培養培地の体積を意味する。
【0028】
用語「第2の液体培養培地」は、第1および第2の液体培養培地のいずれの混合前にも第1の液体培養培地の体積から独立している、哺乳動物細胞の培養に好適である液体培養培地の体積を意味する。
【0029】
用語「動物由来成分不含液体培養培地」は、哺乳動物に由来するいずれの成分も(例えば、タンパク質も血清も)含有しない液体培養培地を意味する。
【0030】
用語「無血清液体培養培地」は、哺乳動物の血清を含有しない液体培養培地を意味する。
【0031】
用語「血清含有液体培養培地」は、哺乳動物血清を含有する液体培養培地を意味する。
【0032】
用語「既知組成液体培養培地」は、化学成分のすべてが既知である液体培養培地を意味する。例えば、既知組成液体培養培地は、ウシ胎仔血清も、ウシ血清アルブミンも、ヒト血清アルブミンも含有しない。これらの調製物は、アルブミンと脂質の複雑な混合物を通常は含有するからである。
【0033】
用語「タンパク質不含液体培養培地」は、いずれのタンパク質も(例えば、いずれの検出可能なタンパク質も)含有しない液体培養培地を意味する。
【0034】
用語「撹拌」は、液体培養培地中の溶存O濃度を増加させるために、液体培養培地を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートを動かすことを意味する。回転撹拌などの撹拌は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、円または楕円運動でマルチウェルプレートを動かす機器、例えばロータリーシェーカーを使用して行うことができる。マルチウェルプレートを撹拌するために使用することができる例示的デバイスを本明細書に記載する。そのようなデバイスのさらなる例も当技術分野において公知であり、市販されている。
【0035】
用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリンタンパク質のアミノ酸少なくとも15個(例えば、アミノ酸少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90または100個)のアミノ酸配列(例えば、可変ドメイン配列、フレームワーク配列、または定常ドメイン配列)を含有するポリペプチドを意味する。免疫グロブリンは、例えば、軽鎖免疫グロブリンのアミノ酸少なくとも15個、例えば、重鎖免疫グロブリンのアミノ酸少なくとも15個を含むことがある。免疫グロブリンは、単離された抗体(例えば、IgG、IgE、IgD、IgAまたはIgM)であることがある。免疫グロブリンは、IgGのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)であることもある。免疫グロブリンは、抗体断片、例えば、Fab断片、F(ab’)断片、またはscFv断片であることがある。免疫グロブリンは、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、または二量体、三量体もしくは多量体抗体、またはダイアボディ、Affibody(登録商標)もしくはNanobody(登録商標)であることもある。免疫グロブリは、
少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含有する工学操作されたタンパク質(例えば融合タンパク質)であることもできる。免疫グロブリンの非限定的な例は本明細書に記載があり、免疫グロブリンのさらなる例は当技術分野において公知である。
【0036】
用語「タンパク質断片」または「ポリペプチド断片」は、少なくとももしくは約4アミノ酸、少なくとももしくは約5アミノ酸、少なくとももしくは約6アミノ酸、少なくとももしくは約7アミノ酸、少なくとももしくは約8アミノ酸、少なくとももしくは約9アミノ酸、少なくとももしくは約10アミノ酸、少なくとももしくは約11アミノ酸、少なくとももしくは約12アミノ酸、少なくとももしくは約13アミノ酸、少なくとももしくは約14アミノ酸、少なくとももしくは約15アミノ酸、少なくとももしくは約16アミノ酸、少なくとももしくは約17アミノ酸、少なくとももしくは約18アミノ酸、少なくとももしくは約19アミノ酸または少なくとももしくは約20アミノ酸長であるか20アミノ酸長より長い、ポリペプチド配列の一部分を意味する。組換えタンパク質断片は、本明細書に記載の任意の方法を使用して生産することができる。
【0037】
用語「工学操作されたタンパク質」は、生物(例えば哺乳動物)体内に存在する内因性核酸によって天然にコードされないポリペプチドを意味する。工学操作されたタンパク質の例は、酵素(例えば、工学操作された酵素の安定性および/または触媒活性を増大させる結果となる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入または付加を有するもの)、融合タンパク質、抗体(例えば、二価抗体、三価抗体またはダイアボディ)、および少なくとも1つの組換え足場配列を含有する抗原結合タンパク質を含む。
【0038】
用語「流体せん断力」は、表面(例えば、細胞の表面またはウェルの表面)に対してほぼ平行に流れる液体によって生ずる応力を意味する。流体せん断力は、一般に、印加された力ベクトルに対して平行な面を有する材料の断面積で割った、印加された力と定義される。流体せん断力の例示的計算方法は、本明細書に記載があり、当技術分野において公知である。
【0039】
用語「溶存O濃度」または「溶存酸素濃度」は、液体培養培地(例えば、本明細書に記載のまたは当技術分野において公知の液体培養培地のいずれか)に溶解している酸素ガスの量を意味する。液体培養培地中の溶存O濃度の非限定的な測定方法は本明細書に記載があり、他の方法は当技術分野において公知である。
【0040】
用語「回収」は、細胞培養培地中に存在する1つもしくはそれ以上の他の成分(例えば、哺乳動物細胞もしくは培養培地タンパク質)または哺乳動物細胞溶解物中に存在する1つもしくはそれ以上の他の成分(例えば、DNA、RNAもしくは他のタンパク質)からの組換えタンパク質の部分的精製または単離(例えば、少なくとももしくは約5重量%、例えば、少なくとももしくは約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または少なくとももしくは約95重量%の純度)を意味する。液体培養培地からのまたは哺乳動物細胞溶解物からのタンパク質の非限定的な回収方法は本明細書に記載があり、その他は当技術分野において公知である。
【0041】
用語「分泌タンパク質」または「分泌組換えタンパク質」は、哺乳動物細胞内で翻訳されるとき少なくとも1つの分泌シグナル配列を元々含有しており、少なくとも一つには、その哺乳動物細胞内の分泌シグナル配列の酵素的切断によって、細胞外空間(例えば液体培養培地)に放出される、タンパク質または組換えタンパク質を意味する。
【0042】
句「勾配灌流」は、培養期間中の増分期間(例えば、約24時間の期間、約1分~約2
4時間の間の期間、または24時間より長い期間)につれての除去および添加される培養培地の体積(例えば、1日単位での培養培地再供給割合)の漸進的変化(例えば増加または減少)を指す。例えば、勾配灌流プロセスの一実施形態は、次のような再供給プロトコールを伴うことができる:1~3日目 培養培地約0.5x反応器体積(RV)/日の再供給、4~6日目 約0.7xRV/日の再供給、および7日目以降 約1.0xRV/日の再供給。この特定の例は、ある特定の再供給割合を有する日数に関しておよび/または任意の特定の24時間にわたっての再供給割合に関して変ることがある。それぞれの日に除去および補充される培地の分率は、培養される特定の細胞、初期播種密度、および特定の時点での細胞密度に依存して変わることがある。「RV」または「反応器体積」は、培養プロセスの開始時に存在する培養培地の体積(例えば、播種後に存在する培養培地の総体積)を意味する。
【0043】
用語「フィードバッチ培養」は、初期細胞培養物への第2の液体培養培地の、その細胞培養物からの第1の液体培養培地の実質的なまたは有意な除去なしでの、増分または連続添加を意味する。フィードバッチ培養の一部の実施形態では、第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地と同じである。フィードバッチ培養の一部の実施形態では、第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地の濃縮形である。フィードバッチ培養の一部の実施形態では、第2の液体培養培地は、乾燥粉末として添加される。
【0044】
本明細書で使用する場合の「比生産速度」または「SPR」は、1日あたりの哺乳動物細胞1個あたりの生産される組換えタンパク質の質量または酵素活性を指す。組換え抗体のSPRは、通常、質量/細胞/日として測定される。組換え酵素のSPRは、通常、単位/細胞/日、または(単位/質量)/細胞/日として測定される。
【0045】
本明細書で使用する場合の「体積生産速度」または「VPR」は、1日あたりの培養物の体積あたりの(例えば、バイオリアクター、ベッセルまたはチューブ体積1Lあたりの)生産される組換えタンパク質の質量または酵素活性を指す。組換え抗体のVPRは、通常、質量/L/日として測定される。組換え酵素のVPRは、通常、単位/L/日、または質量/L/日として測定される。
【0046】
用語「マイクロキャリア」は、哺乳動物細胞(例えば、本明細書に記載のまたは当技術分野において公知の哺乳動物細胞のいずれか)を許容するまたは哺乳動物細胞の接着を促進する表面を含有する、20μm~約1000μmの間のサイズを有する粒子(たとえば有機ポリマー)を意味する。マイクロキャリアは、1つまたはそれ以上の細孔(例えば、約10μm~約100μmの平均径を有する細孔)を含有することができる。マイクロキャリアの非限定的な例を本明細書に記載する。マイクロキャリアのさらなる例は当技術分野において公知である。マイクロキャリアは、例えばポリマー(例えば、セルロース、ポリエチレングリコール、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸))を含有することができる。
【0047】
別段の定義がない限り、本明細書で用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明において使用するための方法および材料を本明細書に記載する;当技術分野において公知の他の好適な方法および材料も使用することができる。材料、方法および例は、説明に役立つものに過ぎず、限定することを意図したものではない。本明細書において言及するすべての公報、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、それら全体を参照によって本明細書に組み入れる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先するものとする。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求
の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】例示的なマルチウェルプレートシステムの上面から見た概略図である。
図2】例示的なマルチウェルプレートシステムの側面から見た概略図である。
図3】代替的なマルチウェルプレートシステムの側面から見た概略図である。
図4】代替的なマルチウェルプレートシステムの側面から見た概略図である。
図5】10mLの培養培地を含有する50mL振盪チューブ中で灌流培養され、かつ160RPMで撹拌されたか、または200μLもしくは300μLの培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で灌流培養され、かつ330RPMで撹拌されて、異なるバッチの再供給割合の間に培養された、細胞の2日間にわたる生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図6】200μLまたは300μLの培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で灌流培養され、かつ330RPMで撹拌され、異なるバッチ再供給割合で培養された(2×0.5リアクター体積/日または1リアクター体積/日)細胞の2日間培養の終点の生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図7】300μLの培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で灌流培養され、かつ360RPMで撹拌されるか、または10mLの培養培地を含有する振盪チューブ中で灌流培養され、かつ160RPMで撹拌された、細胞の11日間培養の細胞生存率のグラフである。エラーバーは、振盪チューブ培養についてn=2の、丸底96ウェル深型プレート培養についてn=8の標準偏差を表す。
図8】300μLの培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で灌流培養され、かつ360RPMで撹拌されるか、または10mLの培養培地を含有する振盪チューブ中で灌流培養され、かつ160RPMで撹拌された、細胞の11日間培養の生細胞密度の図である。エラーバーは、振盪チューブ培養についてn=2の、丸底96ウェル深型プレート培養についてn=8の標準偏差を表す。
図9】修正した再供給割合のプロトコールおよび対照の再供給割合のプロトコールにおいて、15日間培養のそれぞれの日に使用した再供給割合(リアクター体積(複数可)中の)のグラフである。
図10】200μL、300μLもしくは500μLのいずれかの培養培地を含有する角底もしくは丸底の96ウェル深型プレート中で培養され、かつ330RPMもしくは360RPMで撹拌され、かつApplikonシステムもしくはディスポーザブル膜を使用して密封されたか、または対照の振盪チューブ中で培養された、細胞の経時的な生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=3の標準偏差を表す。
図11】200μL、300μLもしくは500μLのいずれかの培養培地を含有する角底もしくは丸底の96ウェル深型プレート中で培養され、かつ330RPMもしくは360RPMで撹拌され、かつApplikonシステムもしくはディスポーザブル膜を使用して密封されたか、または対照の振盪チューブ中で培養された、細胞の経時的な生細胞率のグラフである。エラーバーは、n=3の標準偏差を表す。
図12】200μL、300μLもしくは500μLのいずれかの培養培地を含有する角底もしくは丸底の96ウェル深型プレート中で培養され、かつ330RPMもしくは360RPMで撹拌され、かつApplikonシステムもしくはディスポーザブル膜を使用して密封されたか、または対照の振盪チューブ中で培養された、細胞の経時的な生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=3の標準偏差を表す。
図13】200μL、300μLまたは500μLのいずれかの培養培地を含有する角底もしくは丸底の96ウェル深型プレート中で培養され、かつ330RPMもしくは360RPMで撹拌され、かつApplikonシステムもしくはディスポーザブル膜を使用して密封されたか、または対照の振盪チューブ中で培養された、細胞の経時的な生細胞率のグラフである。エラーバーは、n=3の標準偏差を表す。
図14】300μLまたは500μLのいずれかの培養培地を含有する角底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、330RPMもしくは340RPMで撹拌されたか、または対照の振盪チューブ中で培養された、細胞の経時的な生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=3の標準偏差を表す。
図15】100μL、200μLもしくは300μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、経時的な生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図16】200μL、400μLもしくは600μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する角底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、経時的な生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図17】100μL、200μLもしくは300μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、累積生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図18】200μL、400μLもしくは600μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する角底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、累積生細胞密度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図19】100μL、200μLもしくは300μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、体積当たり生産速度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図20】200μL、400μLもしくは600μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する角底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、体積当たり生産速度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図21】100μL、200μLもしくは300μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する丸底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)、細胞の比生産速度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図22】200μL、400μLもしくは600μLのいずれかのCD CHO培養培地を含有する角底96ウェル深型プレート中で培養され、かつ320RPM、340RPMもしくは360RPMで撹拌された細胞か、または振盪チューブ中で培養された(対照の再供給割合または修正した再供給割合を使用して培地の灌流を実施した)細胞の、比生産速度のグラフである。エラーバーは、n=2の標準偏差を表す。
図23】生細胞密度のモデル予測へのリアルタイムデータのフィットを示すグラフである。
図24】体積当たり生産速度のモデル予測へのリアルタイムデータのフィットを示すグラフである。
図25】標準偏差を考慮に入れた統計モデルへ実験データを入力することに基づき、最も良い稼働条件を示す、12本のグラフのセットである。
図26】角底96ウェル深型プレートに配された500μLの1つまたは様々に異なる培養培地中で組換えモノクローナル抗体を生産し、かつ330RPMの回数で撹拌される、哺乳動物細胞株の生細胞密度プロファイルを示すグラフである。対照データは、CD CHO培地を表す。
図27】角底96ウェル深型プレート中で組換え酵素を生産し、かつ330RPMの回数で撹拌される、哺乳動物細胞株の生細胞密度プロファイルを示すグラフである。対照データは、CD CHO培地を表す。
図28】角底96ウェル深型プレートに配された500μLの1つまたは様々に異なる培養培地中で組換えモノクローナル抗体を生産し、かつ330RPMの回数で撹拌される、哺乳動物細胞株の培養の力価(mg/mL)を示すグラフである。対照データは、CD CHO培地を表す。
図29】角底96ウェル深型プレートに配された500μLの1つまたは様々に異なる培養培地中で組換え酵素を生産し、かつ330RPMの回数で撹拌される、哺乳動物細胞株の培養の力価(mg/mL)を示すグラフである。対照データは、CD CHO培地を表す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
マルチウェルプレートでの哺乳動物細胞の改善された培養方法が本明細書で提供される。培養方法は、大規模生産灌流バイオリアクターによって達成される濃度、例えば、1mLあたり細胞10x10個より高い、細胞15x10個/mLより高い、細胞20x10個/mLより高い、細胞25x10個/mLより高い、細胞30x10個/mLより高い、細胞35x10個/mLより高い、細胞40x10個/mLより高い、細胞45x10個/mLより高い、細胞50x10個/mLより高い、細胞55x10個/mLより高い、または細胞60x10個/mLより高い哺乳動物生細胞密度と同様の、哺乳動物生細胞濃度(例えば、液体培養培地、例えば、第1の液体培養培地、または第1および第2の液体培養培地の組合せ中の濃度)を達成することができる。例えば、培養方法は、細胞10x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞10x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞10x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞10x10個/mL~細胞50x10個/mLの間、細胞10x10個/mL~細胞40x10個/mLの間、細胞10x10個/mL~細胞30x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞55x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞50x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞45x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞40x10個/mLの間、細胞15x10個/mL~細胞35x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞55x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞50x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞45x10個/mLの間、細胞20x10個/mL~細胞40x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞55x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞50x10個/mLの間、細胞25x10個/mL~細胞45x10個/mLの間、細胞30x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞30x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞30x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞30x10個/mL~細胞55x10個/mLの間、細胞30x10個/mL~細胞50x10個/mLの間、細胞35x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞35x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、3細胞5x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞35x10個/mL~
細胞55x10個/mLの間、細胞40x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、細胞40x10個/mL~細胞65x10個/mLの間、細胞40x10個/mL~細胞60x10個/mLの間、細胞40x10個/mL~細胞55x10個/mLの間、細胞45x10個/mL~細胞70x10個/mLの間、または細胞45x10個/mL~細胞65x10個/mLの間の哺乳動物生細胞濃度をもたらすことができる。様々な異なる方法を使用して、細胞密度または生細胞密度を判定することができる。例えば、細胞培養物の試料を生理学的緩衝液で希釈し、希釈された細胞浮遊液を血球計算盤に入れ、光学顕微鏡を使用して細胞を計数することができる。別の方法では、非生細胞によって選択的に取り込まれる色素を生理学的緩衝液中に含むこと以外同様の方法(例えば、トリパンブルー、例えば、Beckman CoulterからのVi-CELL法(Beckman Coulterウェブサイトを参照されたい))を使用して、生細胞密度を判定することができる。さらに別の例では、蛍光利用フローサイトメトリー(例えば、Merck MilliporeからのGUAVA(Milliporeウェブサイトを参照されたい))、および他の細胞計数方法を使用して、細胞密度または生細胞密度を判定することができる。
【0051】
一部の実施形態では、培養方法は、有意に向上した比生産速度をもたらす。例えば、本明細書で提供される方法によって達成される比生産速度は、ある体積の第1の培養培地の除去および第2の体積の第2の培養培地の添加がないが実質的に同じ培養条件下で達成される比生産速度より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍高い。本方法によって達成される生産性は、(第1および/または第2の液体培養培地中)少なくとも10,000単位/L、少なくとも15,000単位/L、少なくとも20,000単位/L、少なくとも25,000単位/L、少なくとも30,000単位/L、少なくとも35,000単位/L、または少なくとも40,000単位/Lである。一部の実施形態では、本方法によって達成される生産性は、少なくとも1g/L、少なくとも1.5g/L、少なくとも2.0g/L、少なくとも2.5g/L、少なくとも3.0g/L、少なくとも4.0g/L、少なくとも4.5g/L、または少なくとも5.0g/Lである。
【0052】
組換えタンパク質の生物活性は、当技術分野において公知の様々な方法を使用して評価することができ、その特定の組換えタンパク質の活性に依存するであろう。例えば、免疫グロブリン(例えば、抗体または抗体断片)である組換えタンパク質の生物活性は、抗体がその特異的エピトープと結合する親和性を(例えば、Biocoreまたは酵素結合免疫吸着測定法を使用して)測定することによって判定することができる。組換えタンパク質は、酵素(例えば、組換えガラクトシダーゼ、例えば組換えアルファ-ガラクトシダーゼ)であってもよく、その生物活性を、その酵素の活性を測定すること(例えば、検出可能な基質の濃度の減少または検出可能な生成物の濃度の増加を(例えば分光光度法または発光を使用して)測定することによってその酵素の触媒速度定数を決定すること)によって判定してもよい。例えば、組換えガラクトシダーゼの生物活性を、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)もしくはガラビオシルセラミドレベルの減少またはセラミドジヘキソシドもしくはガラクトースレベルの増加を測定することによって検出することができる。
【0053】
例えば本明細書に記載の方法のいずれかを行うために使用することができる、マルチウェル細胞培養プレートシステムも提供される。
【0054】
製造プロセスを試験する方法
組換えタンパク質(例えば、本明細書に記載のまたは当技術分野において公知の組換えタンパク質のいずれか)を作製するための製造プロセスを試験する方法が本明細書で提供
される。これらの方法は、本明細書に記載の組換えタンパク質を生産する方法を行う工程と、方法中および/またはその後に、少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14)の培養リードアウト(例えば、細胞中または第1および/もしくは第2の培養培地中の組換えタンパク質の量、グルコース消費量、生細胞濃度、ラクテート生産、容積生産速度、比生産速度、グルコースからのラクテート収量、グルタミン濃度、グルタメート濃度、培養培地のpH、溶存COの分圧または濃度、溶存Oの濃度または分圧、代謝物物質移動、ならびに代謝物物質収支)を検出または測定する工程と;および少なくとも1つの培養リードアウトを、少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13)の培養リードアウトの基準レベル(例えば、細胞中または第1および/もしくは第2の培養培地中に存在する(で検出される)組換えタンパク質の量、グルコース消費量、生細胞濃度、ラクテート生産、容積生産速度、比生産速度、グルコースからのラクテート収量、グルタミン濃度、グルタメート濃度、培養培地のpH、溶存COの濃度または分圧、溶存Oの濃度または分圧、代謝物物質移動ならびに代謝物物質収支の基準レベル)と比較する工程とを含む。
【0055】
本明細書に記載の様々な培養パラメータ(例えば、マルチウェルプレート、体積、培養物体積を交換する速度または回数、撹拌回数、温度、培地、CO濃度、および反応器角度)のいずれかを任意の組合せで使用してこれらの方法を行うことができることを、当業者は理解するであろう。さらに、本明細書に記載のまたは当技術分野において公知の任意の哺乳動物細胞をこれらの方法において使用することができる。
【0056】
少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、細胞中または第1および/もしくは第2の培養培地中の組換えタンパク質の量、グルコース消費量、生細胞濃度、ラクテート生産、容積生産速度、比生産速度、グルコースからのラクテート収量、グルタミン濃度、グルタメート濃度、培養培地のpH、溶存COの濃度または分圧、溶存Oの濃度または分圧、代謝物物質移動、ならびに代謝物物質収支)の基準レベルは、異なる培養方法、例えば、少なくとも1つの異なる培養パラメータ(例えば、異なる第1および/または第2の液体培養培地、異なる哺乳動物細胞、異なる撹拌回数および/またはタイプ、異なるマルチウェルプレート、異なるバッチ再供給または灌流割合(例えば、24時間の期間または他の増分期間にわたってのウェル体積または第1の液体培養培地体積の10%~200%)、および本明細書に記載の他の培養パラメータのいずれか)を利用する培養方法を使用して生じるレベルである。組換えタンパク質の基準量は、例えば、異なる溶存Oレベルおよび/または異なる液体せん断応力レベルをもたらす一連の培養パラメータを使用して生産される組換えタンパク質レベルである。
【0057】
本明細書に記載の方法は、製造プロセスの任意の成分または特徴の効果を試験するために使用することができる。例えば、本明細書に記載の方法は、異なる原料、撹拌レベル、マルチウェルプレート、凝集防止剤、培養培地(例えば既知組成培養培地)または栄養元素もしくは化合物の、少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか)に対する効果(例えば、組換えタンパク質生産および/または哺乳動物細胞増殖に対する効果)を試験するために使用することができる。例えば、組換えタンパク質の生産方法での使用に対する、第1もしくは第2の液体培養培地、第1もしくは第2の液体培養培地中に存在する原料成分もしくは栄養補助剤、または哺乳動物細胞源の有効性を試験する方法であって、ウェルの体積の約5%~約70%を占める第1の液体培養培地に配置された哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートを用意する工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320RPM~約500RPMの回転撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加する工程であって、第1
および第2の体積はほぼ等しい工程と;少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の培養培地中の組換えタンパク質の量)を検出または判定する工程と;少なくとも1つの培養リードアウトを、異なる第1もしくは第2の液体培養培地または異なる哺乳動物細胞源のうちの1つまたはそれ以上を使用する異なる培養方法によって生じる、少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の液体培養培地中の組み替えタンパク質の量)の基準レベルと比較する工程と;基準レベルと比較して少なくとも1つの培養リードアウトの有益な変化(例えば増加または減少)(例えば、組換えタンパク質量増加)に関連付けられる、第1もしくは第2の液体培養培地、第1もしくは第2の液体培養培地中に存在する原料もしくは栄養補助剤、または哺乳動物細胞源を、組換えタンパク質の生産方法での使用に有効であると特定する工程とを含む方法が、本明細書で提供される。例えば、基準レベルと比較して組換えタンパク質レベルの増加、生細胞濃度の増加、容積生産速度の増加、比生産速度の増加、およびグルコース消費量の増加は、第1もしくは第2の液体培養培地、第1もしくは第2の液体培養培地中に存在する原料成分もしくは栄養補助剤、または哺乳動物細胞源が、組換えタンパク質の生産方法での使用に有効であることを示す。
【0058】
本明細書に記載する方法は、本明細書に記載のまたは当技術分野において公知の様々な細胞培養パラメータ(例えば、ウェルの体積、高さ、直径もしくは底の形状、撹拌回数もしくはタイプ、せん断力、培養播種密度、第1もしくは第2の液体培養培地のpH、溶存O濃度もしくは分圧、ウェルの内面コーティング、液体培養培地(例えば、第1および/もしくは第2の液体培養培地)中の様々な内容物、哺乳動物細胞タイプもしくは哺乳動物細胞株、CO曝露もしくは溶存CO濃度もしくは分圧、温度、液体培養培地の体積(例えば、第1および/もしくは第2の液体培養培地の体積)、ならびに/または第1の体積の第1の培養培地を除去する、および第1の培養培地に第2の体積の第2の培養培地を添加する速度または回数)のいずれかを変化させることの効果を試験するために使用することもできる。方法は、液体培養培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)を調製するために使用される水の量、および/または少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか)に対する液体培養培地中の異なる微量金属の効果(例えば、組換えタンパク質生産および/または哺乳動物細胞増殖に対する効果)を試験するために使用することもできる。方法は、少なくも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか)に対する成長因子または成長ホルモンの効果(例えば、組換えタンパク質生産および/または哺乳動物細胞増殖に対する効果)を試験するために使用することもできる。方法は、第1および/または第2の液体培養培地を調製するために使用される濾過プロセスおよびフィルターを試験するために使用することもできる。方法は、液体培養培地安定性、および液体培養培地の生物学的機能(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれかの少なくとも1つ)に対する効果(例えば、組換えタンパク質生産および/または哺乳動物細胞増殖に対する効果)を試験するために使用することもできる。方法は、様々な組換え細胞株および細胞バンクを、所望の組換えタンパク質(例えば、所望の、分泌の治療用タンパク質)を生産するそれらの能力についてスクリーングするために使用することもできる。本明細書において述べるように、方法は、撹拌のタイプおよび回数、せん断力、灌流率および体積、培養播種密度などを含むがこれらに限定されない、任意の細胞培養プロセスパラメータをスクリーニングするために使用することもできる。
【0059】
本明細書に記載の方法は、第1もしくは第2の液体培養培地中の、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するために使用された原料中の、または哺乳動物細胞源中の夾雑物の存在について試験するために使用することもできる。例えば、第1もしくは第2の液体培養培地中の、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するために使用された原料中の、ま
たは哺乳動物細胞源中の夾雑物の存在について試験する方法であって、ウェルの体積の約5%~約70%を占める第1の液体培養培地に浮遊している哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートを用意する工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320回転毎分(RPM)~約500RPMの撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加する工程であって、第1および第2の体積はほぼ等しい工程と;少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の液体培養培地中の組換えタンパク質の量)を検出または判定する工程と;少なくとも1つの培養リードアウトを、異なる第1もしくは第2の液体培養培地、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するための異なる原料、または異なる哺乳動物細胞源のうちの1つまたはそれ以上を使用する異なる培養方法によって生じる、少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の培養培地中の組み替えタンパク質の量)の基準レベルと比較する工程と;基準レベルと比較して少なくとも1つの培養パラメータが有害に変化された(例えば増加されたまたは減少された)場合、第1もしくは第2の液体培養培地、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するために使用された原料、または哺乳動物細胞源を夾雑物を含有すると断定する工程とを含む方法が、本明細書で提供される。例えば、基準レベルと比較して組換えタンパク質生産の減少(例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の培養培地中の組換えタンパク質の減少)、容積生産速度の減少または生細胞濃度の減少は、第1もしくは第2の液体培養培地中の、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するために使用された原料中の、または哺乳動物細胞源中の夾雑物の存在を示す有害な変化である。一部の方法は、第1もしくは第2の液体培養培地中、第1もしくは第2の液体培養培地を生成するために使用された原料中、または哺乳動物細胞源中に存在する夾雑物の正体を判定するための1つまたはそれ以上のアッセイをさらに含む。夾雑物は、生物学的夾雑物(例えば、マイコバクテリウム、真菌、細菌、ウイルスまたは望ましくない哺乳動物細胞)であることがある。夾雑物は、物理的性質不明の物質であることもある。
【0060】
方法は、細胞培養方法の実験計画(DOE)またはクォリティー・バイ・デザイン(QBD)最適化を行うためのハイスループット細胞培養実験を実行するために使用することができる。例えば、組換えタンパク質を生産する製造プロセスを最適化する方法であって、ウェルの体積の約5%~約70%を占める第1の液体培養培地に浮遊している哺乳動物細胞を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートを用意する工程と;ある期間、約31℃~約40℃で、約320RPM~約500RPMの回転撹拌をしながら、マルチウェルプレートをインキュベートする工程と;連続的にまたは定期的に、期間中に、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の培養培地に添加する工程であって、第1および第2の体積はほぼ等しい工程と;少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中のまたは第1および/もしくは第2の液体培養培地中の組換えタンパク質の量)を検出する工程と;少なくとも1つの培養リードアウトを、異なる培養法によって生じた少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、細胞中または第1および/もしくは第2の液体培養培地中に存在する組換えタンパク質の量)の基準レベルと比較する工程と;少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、生産された組換えタンパク質)の基準レベルと比較して少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、生産された組換えタンパク質の量)の有害な変化(例えば、増加または減少)と関連付けられる任意の培養成分もしくはパラメータを特定し、製造プロセスにおいて除去もしくは変更する工程、または少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれ
か、例えば、生産された組換えタンパク質)の基準レベルと比較して少なくとも1つの培養リードアウト(例えば、本明細書に記載の培養リードアウトのいずれか、例えば、生産された組換えタンパク質の量)の有益な変化(例えば、増加または減少)と関連付けられる任意の培養生物もしくはパラメータを特定し、製造プロセスに加える工程とを含む方法が、本明細書で提供される。例えば、生産された組換えタンパク質の量、容積生産速度、比生産速度、または生細胞濃度の増加は、培養リードアウトの有益な変化であり、生産された組換えタンパク質の量、容積生産速度、比生産速度、または生細胞濃度の減少は、培養リードアウトの有害な変化である。場合によっては、方法は、組換えタンパク質の大規模化(例えばバイオリアクター)生産に使用することができる最適化細胞培養条件をハイスループット方式で同定するために使用される。
【0061】
この節に記載の方法のいずれにおいても、少なくとも1つの培養リードアウトの基準レベルは、大規模培養(例えば、灌流バイオリアクター、例えば、2000L灌流バイオリアクター、40L灌流バイオリアクターまたは12L灌流バイオリアクター)からのものである。この節に記載の方法のいずれかの一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、大規模培養が行われる(並行して培養される)同じ期間にわたって、本明細書に記載の方法のいずれかを使用してマルチウェルプレートで培養される。例えば、本明細書に記載の方法のいずれかにおいてマルチウェルプレートに接種するために使用される接種材料は、ほぼ同時に大規模灌流バイオリアクターに接種するためにも使用される。
【0062】
一実施形態において、ウェルに播種するために使用される接種材料は、大規模培養(例えば、大規模灌流バイオリアクター)から得られる。例えば、大規模培養からの任意の時点(例えば、増殖期、移行期(例えば、培養が異なる一連の増殖条件、例えば、異なる液体培養培地および/もしくは温度に移行されている任意選択の期間)または回収期)での、およびウェルに接種するために使用される(例えば、サテライトマルチウェルプレート培養を開始させるために使用される)、アリコート。アリコートを大規模培養から増殖期中に除去し、使用して、液体培養培地を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートに接種または播種することができ、その後、大規模培養で利用される増殖期条件を再現するまたは大規模培養で利用される増殖期条件と同様である条件下でウェルをインキュベートする。あるいは、または加えて、アリコートを大規模培養から移行期中に除去し、使用して、液体培養培地を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートに接種または播種することができ、その後、大規模培養で利用される移行期条件を再現するまたは大規模培養で利用される移行期条件と同様である条件下でウェルをインキュベートする。あるいは、または加えて、アリコートを大規模培養から回収期中に除去し、使用して、液体培養培地を含有する少なくとも1つのウェルを含有するマルチウェルプレートに接種または播種することができ、その後、大規模培養で利用される回収期条件を再現するまたは大規模培養で利用される回収期条件と同様である条件下でウェルをインキュベートする。これらの方法のいずれにおいても、マルチウェルプレートで哺乳動物細胞を培養するために使用される方法における1つまたはそれ以上の培養パラメータを(大規模培養で哺乳動物細胞を培養するために使用される培養パラメータまたは成分と比較して)変更することができ、少なくとも1つの培養リードアウトを測定し、その少なくとも1つの培養リードアウトを、大規模培養について判定された少なくとも1つの培養リードアウトと比較する。当業者には理解できるように、これらの方法は、培養プロセスの1つまたはそれ以上の特定の期の間の少なくとも1つの培養リードアウトに対する特定の培養パラメータまたは成分の効果(例えば、増殖期、任意選択の移行期、および/または回収期中の少なくとも1つの培養リードアウトに対する1つまたはそれ以上の培養パラメータおよび/または培養成分の効果)を試験するために使用することができる。
【0063】
ある特定の実施形態では、(例えば、大規模バイオリアクター培養のアリコートを接種した、または大規模バイオリアクターへの接種に使用した同じ凍結細胞バンクを接種した
)マルチウェルプレートにおける少なくとも1つの培養リードアウトを判定または検出する工程、少なくとも1つの培養リードアウトを、少なくとも1つの培養リードアウトの基準レベル(例えば、夾雑が実質的にない培養物からの少なくとも1つの培養リードアウトのレベル)と比較する工程、およびウェルにおける少なくとも1つの培養リードアウトが、少なくとも1つの培養リードアウトの基準レベルと比較して、夾雑物がウェル内に存在することを示す場合、大規模バイオリアクターを、夾雑物を含有すると断定する工程によってこれらの方法を行って、夾雑物が大規模バイオリアクター内に存在するかどうかを判定することもできる。夾雑物は、例えば、生物学的夾雑物、例えばウイルス、真菌、望ましくない哺乳動物細胞、または細菌、例えばマイコバクテリウムであることがある。夾雑物は、例えば、ベシウイルスであることもある。
【0064】
マルチウェル細胞培養プレートシステム
本明細書は、(例えば、本明細書に記載の方法のいずれかを使用する)哺乳動物細胞の培養に有用な、例示的マルチウェル細胞培養プレートシステムを提供する。これらのシステムは、培養ベッセルの中へのおよび/または培養ベッセルから外への流体の流れに順応するように構成されている少なくとも1つのポートによって培養ベッセル内に存在する流体(例えば、第1の液体培養培地)の連続的または定期的除去、および培養ベッセルへの流体(例えば、第2の液体培養培地)の添加を可能にするように設計されている。
【0065】
例示的マルチウェル細胞培養プレートシステム
マルチウェル細胞培養プレートシステム1の非限定的な例の上面図を図1に提供する。マルチウェル細胞培養プレートシステム1は、複数の開口部4を有する表面3を含む一体型支持プレート2を含む。開口部を任意の形式で配列することができ、図1は縦列・横列の形式の開口部を示しているが、開口部の任意の構成を利用できることを当業者は理解するであろう。
【0066】
例示的マルチウェル培養プレートシステム11の側面図を図2に示す。マルチウェル培養プレートシステム11は、複数の開口部4を含む表面3を有する一体型支持プレート2を含む。一体型支持プレート2は、いずれの生物学的適合性材料(例えば、ポリスチレン、または当技術分野において公知のいずれの他の生物学的適合性材料)製であってもよい。一体型支持プレート2は、少なくとも2個の開口部4(例えば4、6、9、10、12、15、18、20、24、36、48、60、72もしくは96個の開口部4)を有することができ、または少なくとも3、4、5、6、12、18、24、36、48もしくは96個の開口部4を有することができる。図2に示すマルチウェル培養プレートシステム11は、複数の培養ベッセル5も有し、培養ベッセル5は、支持プレート2内に形成または配置されており、細胞培養物(例えば、本明細書に記載の例示的哺乳動物細胞および/または組織培養培地のいずれか)を収容するように構成されている。ベッセル5は、任意の体積の細胞培養物、例えば、約0.3mL~約25mLの間(例えば、約0.3mL~約24mLの間、約0.3mL~約22mLの間、約0.3mL~約20mLの間、約0.3mL~約18mLの間、約0.3mL~約16mLの間、約0.3mL~約14mLの間、約0.3mL~約12mLの間、約0.3mL~約10mLの間、約0.3mL~約8mLの間、約0.3mL~約6mLの間、約0.3mL~約5mLの間、約0.3mL~約4mLの間、約0.3mL~約3mLの間、約0.3mL~約2mLの間、約0.3mL~約約1mLの間、約0.5mL~約25mLの間、約0.5mL~約24mLの間、約0.5mL~約22mLの間、約0.5mL~約20mLの間、約0.5mL~約18mLの間、約0.5mL~約16mLの間、約0.5mL~約14mLの間、約0.5mL~約12mLの間、約0.5mL~約10mLの間、約0.5mL~約8mLの間、約0.5mL~約6mLの間、約0.5mL~5約mLの間、約0.5mL~約4mLの間、約0.5mL~約3mLの間、約0.5mL~約2mLの間、約0.5mL~約1mLの間、約1mL~約25mLの間、約1mL~約24mLの間、約1mL~約22
mLの間、約1mL~約20mLの間、約1mL~約18mLの間、約1mL~約16mLの間、約1mL~約14mLの間、約1mL~約12mLの間、約1mL~約10mLの間、約1mL~約8mLの間、約1mL~約7mLの間、約1mL~約6mLの間、約1mL~約5mLの間、約1mL~約4mLの間、約1mL~約3.5mLの間、約1mL~約3mLの間、約1mL~約2.5mLの間、約1mL~約2mLの間、約1mL~約1.5mLの間、約1.5mL~約25mLの間、約1.5mL~約24mLの間、約1.5mL~約22mLの間、約1.5mL~約20mLの間、約1.5mL~約18mLの間、約1.5mL~約16mLの間、約1.5mL~約14mLの間、約1.5mL~約12mLの間、約1.5mL~約10mLの間、約1.5mL~約8mLの間、約1.5mL~約6mLの間、約1.5mL~約5mLの間、約1.5mL~約4mLの間、約1.5mL~約3.5mLの間、約1.5mL~約3mLの間、約1.5mL~約2.5mLの間、約1.5mL~約2.0mLの間、約2mL~約25mLの間、約2mL~約24mLの間、約2mL~約22mLの間、約2mL~約20mLの間、約2mL~約18mLの間、約2mL~約16mLの間、約2mL~約14mLの間、約2mL~約12mLの間、約2mL~約10mLの間、約2mL~約8mLの間、約2mL~約6mLの間、または約2mL~約5mLの間)の体積を有するものを収容するように構成することができ、ここで、各開口部3は、各培養ベッセル4と対になっており、各培養ベッセル4への開放部を画成している。
【0067】
培養ベッセル5は、様々な形状を有することができる。培養ベッセルの形状の非限定的な例は、開口部4の端部に相対する端部が例えば、平面形、半球形、ピラミッド形または円錐形になっている、略円柱形または円柱形である。開口部4の直径は、例えば、約4.0mm~約50mmの間(例えば、約4.0mm~約45mmの間、約4.0mm~約40mmの間、約4.0mm~約35mmの間、約4.0mm~約30mmの間、約4.0mm~約25mmの間、約4.0mm~約20mmの間、約4.0mm~約15mmの間、約4.0mm~約10mmの間、約6.0mm~約50mmの間、約6.0mm~約45mmの間、約6.0mm~約40mmの間、約6.0mm~約35mmの間、約6.0mm~約30mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約20mmの間、約6.0mm~約15mmの間、約6.0mm~約10mmの間、約8mm~約50mmの間、約8mm~約45mmの間、約8mm~約40mmの間、約8mm~約35mmの間、約8mm~約30mmの間、約8mm~約25mmの間、約8mm~約20mmの間、約8mm~約15mmの間、約10mm~約50mmの間、約10mm~約45mmの間、約10mm~約40mmの間、約10mm~約35mmの間、約10mm~約30mmの間、約10mm~約25mmの間、約10mm~約20mmの間、約15mm~約50mmの間、約15mm~約45mmの間、約15mm~約40mmの間、約15mm~約35mmの間、約15mm~約30mmの間、約15mm~約25mmの間、または約15mm~約20mmの間)である。培養ベッセル5は、1cm~約12cmの間(例えば、約1cm~約11cmの間、約1cm~約10cmの間、約1cm~約9cmの間、約1cm~約8cmの間、約1cm~約7cmの間、約1cm~約6cmの間、約1cm~約5cmの間、約1cm~約4cmの間、約1cm~約3cmの間、約1.2cm~約12cmの間、約1.2cm~約11cmの間、約1.2cm~約10cmの間、約1.2cm~約9cmの間、約1.2cm~約8cmの間、約1.2cm~約7cmの間、約1.2cm~約6cmの間、約1.2cm~約5cmの間、約1.2cm~約4cmの間、約1.2cm~約3cmの間、約1.5cm~約11cmの間、約1.5cm~約10cmの間、約1.5cm~約9cmの間、約1.5cm~約8cmの間、約1.5cm~約7cmの間、約1.5cm~約6cmの間、約1.5cm~約5cmの間、約1.5cm~約4cmの間、約1.5cm~約3cmの間、約2cm~約12cmの間、約2cm~約11cmの間、約2cm~約10cmの間、約2cm~約9cmの間、約2cm~約8cmの間、約2cm~約7cmの間、約2cm~約6cmの間、約2cm~約5cmの間、約2cm~約4cmの間、約2cm~約3cmの
間、約2.5cm~約12cmの間、約2.5cm~約11cmの間、約2.5cm~約10cmの間、約2.5cm~約9cmの間、約2.5cm~約8cmの間、約2.5cm~約7cmの間、約2.5cm~約6cmの間、約2.5cm~約5cmの間、約2.5cm~約4cmの間、約3cm~約12cmの間、約3cm~約11cmの間、約3cm~約10cmの間、約3cm~約9cmの間、約3cm~約8cmの間、約3cm~約7cmの間、約3cm~約6cmの間、約3cm~約5cmの間、約4cm~約12cmの間、約4cm~約11cmの間、約4cm~約10cmの間、約4cm~約9cmの間、約4cm~約8cmの間、約4cm~約7cmの間、約4cm~約6cmの間、約5cm~約12cmの間、約5cm~約11cmの間、約5cm~約10cmの間、約5cm~約9cmの間、約5cm~約8cmの間、または約5cm~約7cmの間)の高さを有することができる。
【0068】
図2に示すマルチウェル細胞培養プレートシステム11は、培養ベッセル5の中へのおよび培養ベッセル5から外への流体の流れに順応するように構成されているポート6、例えば、一または二方向弁も含む。ポート6を培養ベッセル5と任意の位置で流体連通させることができる。本明細書に記載のマルチウェル培養プレートシステムは、各培養ベッセル5と流体連通された少なくとも1つ、例えば、2つ、3つまたは少なくとも4つのポート6を有することができる。ポート6と培養ベッセル5の例示的連通位置を図2および3に示す。ポート6を、一方向に(例えば、培養ベッセル5の中へ、もしくは培養ベッセル5から外へ)または両方向に(培養ベッセル5の中へおよび培養ベッセル5から外へ)流体を流すように構成することができる。一部の実施形態では、第1のポート6を、培養ベッセル5の中への一方向の流れに順応するように構成することができ、第2のポート6を、培養ベッセル5から外への一方向の流れに順応するように構成する。
【0069】
図3は、細胞の培養ベッセル5への流入および培養ベッセル5からの流出を選択的に防止するように構成されているフィルター8を含むマルチウェル細胞培養プレートシステム12を示す。フィルター8は、哺乳動物細胞を濾過するために使用される当技術分野において公知の任意のマイクロまたはナノフィルターである。2つまたはそれ以上のポート6を有するマルチウェル細胞培養プレートシステムは、細胞の培養ベッセル5への流入および培養ベッセル5からの流出を選択的に防止するように構成されているフィルター8を各ポート6の上または中に有する。
【0070】
図2および図3にそれぞれ示すマルチウェル細胞培養プレートシステム12および13は、少なくとも1つの導水路7も含み、導水路7は、一体型支持プレート2の中に配置されており、ポート6と流体連通しており、流体を培養ベッセル5におよび培養ベッセル5から流すように構成されている。一部の例では、マルチウェル細胞培養プレートシステムは、(例えば、流体を各培養ベッセル5におよび/または各培養ベッセル5から流すように構成されている)各ポート6と流体連通している導水路7を有することができる。
【0071】
本明細書で提供されるマルチウェル細胞培養プレートシステムは、ポート6に作動可能に連結された少なくとも1つの流体流量調整器をさらに含むことができる。本明細書で提供されるマルチウェル細胞培養プレートシステムは、導水路7に作動可能に接続された少なくとも1つの流体流量調整器をさらに含むことができる。流体流量調整器の非限定的な例は、培養ベッセル5内の流体体積および/または流体圧力の変化を検出することによって流体の流量および/または流れ方向を制御することができる。一部の例では、特定の速度で、特定の期間にわたって、特定の流れ方向に(例えば、培養ベッセル5の中へおよび/または培養ベッセル5から外へ)流体を流すように、流体流量調整器をプログラムすることができる。
【0072】
一部の実施形態では、一体型支持プレート2は、液体の収容およびポート6または導水
路7への供給のためのリザーバーを含むように構成される。一部の例では、マルチウェル細胞培養プレートシステムは、液体の収容およびポート6または導水路7への供給のためのリザーバーであって、一体型支持プレート2の外部にあり、ポート6または導水路7とそれぞれ流体連通されるように構成されている(この場合、ポート6または導水路7は、培養ベッセル5の中へ流体を流す機能を果たす)リザーバーを含む。一部の実施形態では、一体型支持プレート2は、培養ベッセル5から除去された液体を収容および保管するためのリザーバーを含むように構成されており、除去された液体を収容および保管するためのリザーバーは、一体型支持プレート2の外部にあり、ポート6または導水路7と流体連通されている(この場合、ポート6または導水路7は、培養ベッセル5から外に流体を流す機能を果たす)。
【0073】
液体の収容およびポート6への供給のための内部リザーバー9を含むように構成されている例示的一体型支持プレート2を図4に示す。図4の一体型支持プレート2は、液体の除去または内部リザーバー9への添加のための交換ポート10をさらに含む。内部リザーバー9を含む一体型支持プレートは、一および/または二方向交換ポート10(例えば、一または二方向弁)を含むことができる。例えば、内部リザーバー9を含む一体型支持プレート2は、内部リザーバーの中への液体の流れを可能にする第1の交換ポート10と、内部リザーバーから外への液体の流れを可能にする第2の交換ポートを有することができる。別の例では、内部リザーバー9を含む一体型支持プレート2は、内部リザーバー10の中へのおよび内部リザーバー10から外への液体の流れを可能にする単一の二方向交換ポート10を有することができる。内部リザーバー10内に存在する流体を、1つまたはそれ以上のポート6および/または導水路7の使用によって、ベッセル5の中へおよび/またはベッセル5から外へ流すことができる。
【0074】
一部の例では、マルチウェル細胞培養プレートは、カバープレートをさらに含み、カバープレートは、一体型支持プレート2および開口部4(例えば、一体型支持プレート2内のすべての開口部4)を覆うように、培養ベッセル5の夾雑(例えば、細菌(例えばマイコバクテリア)、ウイルスまたは真菌汚染)を防止するように、および培養ベッセル5と外部環境間のガス交換を可能にするように構成されている。一部の実施形態では、マルチウェル培養プレートは、培養ベッセル5と外部環境間のガス交換を可能にする上に培養ベッセル5の夾雑を防止するために、カバープレートと一体型支持プレート2の間に配置されたガス透過性ディスポーザブル膜またはガス透過性シリコーン層をさらに含む。
【0075】
当技術分野において公知の様々な方法、例えば流体圧力、空気圧、重力および機械的圧力、の1つまたはそれ以上を使用して、本明細書に記載のシステムのいずれかを通して(例えば、システムの中へおよび/もしくはシステムから外へ、例えば、ポート6の中へおよび/もしくはポート6から外へ、導水路7の中へおよび/もしくは導水路7から外へ、または交換ポート10の中へおよび/もしくは交換ポート10から外へ)流体を流すことができる。例えば、ポンプ、重力、遠心力または機械的圧力を使用して、本明細書に記載のシステムのいずれかを通して流体を除去することができる。本明細書に記載のシステムのいずれかを通して流体を流すためのさらなる方法は、当技術分野において周知である。
【0076】
哺乳動物細胞培養方法
本明細書で記載される例示的な方法において、まずマルチウェルプレートが提供される。第1の液体培養培地が、培地がウェル体積の約5%~約80%の間(例えば、約5%~約75%の間、約5%~約70%の間、約5%~約65%の間、約5%~約60%の間、約5%~約55%の間、約5%~約50%の間、約5%~約45%の間、約5%~約40%の間、約5%~約35%の間、約5%~約30%の間、約10%~約80%の間、約10%~約75%の間、約10%~約70%の間、約10%~約65%の間、約10%~約60%の間、約10%~約55%の間、約10%~約50%の間、約10%~約45%の
間、約10%~約40%の間、約10%~約35%の間、約15%~約80%の間、約15%~約75%の間、約15%~約70%の間、約15%~約65%の間、約15%~約60%の間、約15%~約55%の間、約15%~約50%の間、約15%~約45%の間、約15%~約40%の間、約20%~約80%の間、約20%~約75%の間、約20%~約70%の間、約20%~約65%の間、約20%~約60%の間、約20%~約55%の間、約20%~約50%の間、約20%~約45%の間、約25%~約80%の間、約25%~約75%の間、約25%~約70%の間、約25%~約65%の間、約25%~約60%の間、約25%~約55%の間または約25%~約50%の間)を占めるように、ウェルに添加される。少なくとも1つの哺乳動物細胞が第1の液体培養培地に、すなわち、培地がウェルに添加される前か後に添加される。マルチウェルプレートは約31℃~約40℃で一定時間インキュベートされ、例えば、回転振盪デバイスにおいて約300RPM~約600RPM(例えば、本明細書で記載される撹拌の例示的な範囲のいずれか)で撹拌される。例えば、投てき(軌道)(throw(orbit))直径約3mm~約50mmの振盪インキュベーターなどのインキュベーターで、細胞をインキュベートしてよい。インキュベーションの間、期間中連続的にまたは定期的に、第1の体積の第1の液体培養培地(例えば、任意の哺乳動物細胞濃度を含む、例えば、哺乳動物細胞を含まないか、実質的に含まなくした第1の体積の第1の液体培養培地)が除去され、第2の体積の第2の液体培養培地が第1の液体培養培地に添加される。典型的には、第1および第2の体積を比較すると、第1および第2の体積はほぼ等しいが、少量分、例えば、約1%~約10%(例えば、約1%~約8%、約1%~約5%または約1%~約3%)変動してもよい。一部の実施形態において、添加される第2の体積の第2の液体培養培地は、除去される第1の体積の第1の液体培養培地よりも(例えば、最大で約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%未満)少ない。当技術分野で既知の通り、インキュベート期間は、哺乳動物細胞および液体培養培地を含むマルチウェルプレートが、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を添加するためにインキュベーターから取り出される短い時間(例えば、最大1分間、最大2分間、最大3分間、最大4分間、最大5分間、最大10分間、最大20分間、最大30分間、最大40分間、最大50分間または最大1時間)を含んでいてよい。一部の例において、インキュベート期間は、(例えば、本明細書で記載されるマルチウェル培養プレートシステムの使用により)哺乳動物細胞および液体培養培地を含むマルチウェルプレートが、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を添加するためにインキュベーターから取り出される短い時間を含まない。
【0077】
これらの培養方法の各態様についての様々な非限定的な例が下に記載される。本明細書で提供される方法の例示的な態様を、限定されることなく任意の組合せで使用することができる。
【0078】
哺乳動物細胞
本明細書で提供される方法は、様々な異なる哺乳動物細胞を培養するために使用することができる。哺乳動物細胞は、例えば、浮遊液中で増殖する細胞であっても、接着細胞であってもよい。本明細書で記載される方法のうちいずれかを使用して培養可能な哺乳動物細胞の非限定的な例には:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Sp2.0、骨髄腫細胞(例えば、NS/0)、B細胞、ハイブリドーマ細胞、T細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(例えば、HEK293EおよびHEK293F)、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(Vero)細胞、およびメイディンダービーイヌ(コッカスパニエル)腎臓上皮細胞(MDCK)細胞が含まれる。本明細書で記載される方法を使用して培養可能なさらなる哺乳動物細胞が、当技術分野で既知である。
【0079】
哺乳動物細胞は、組換えタンパク質をコードする組換え核酸(例えば、哺乳動物細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸)を含んでいてよい。例示的な組換えタンパク質をコード
する組換え核酸の非限定的な例が、本明細書で記載される方法を使用して生産可能な組換えタンパク質と同様に下に記載される。一部の例において、培養のためマルチウェルプレートに配置される哺乳動物細胞は、より大きな培養物由来である。例えば、マルチウェルプレートにおける哺乳動物細胞は、大規模バイオリアクター培養物由来であってよい、すなわち、これらの方法を使用してサテライト培養物を調製してよい。
【0080】
培養培地
液体培養培地が当技術分野で既知である。第1および/または第2の組織培養培地には、哺乳動物血清(例えば、ウシ胎児血清およびウシ血清)、および/または成長ホルモンもしくは成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンおよび上皮成長因子)を添加してよい。あるいはまたはさらに、第1および/または第2の液体培養培地は、既知組成液体培養培地、動物由来成分不含液体培養培地、無血清液体培養培地、血清含有液体培養培地またはタンパク質不含液体培養培地であってよい。既知組成液体培養培地、動物由来成分不含液体培養培地、無血清液体培養培地および血清含有液体培養培地の非限定的な例は、市販されている。
【0081】
液体培養培地は、典型的にはエネルギー供給源(例えば、グルコースなどの糖質)、必須アミノ酸(例えば、アミノ酸20個およびシステインの基本的なセット)、低濃度で必要であるビタミンおよび/またはその他の有機化合物、遊離脂肪酸、および/または微量元素を含む。第1および/または第2の液体培養培地には、必要に応じて、例えば、哺乳動物ホルモンまたは成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子)、塩および緩衝液(例えば、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、ヌクレオシドおよび塩基(例えば、アデノシン、チミジンおよびヒポキサンチン)、タンパク質および組織加水分解物、および/またはこれらの添加物の任意の組合せを添加してよい。
【0082】
ここで記載される方法において特に有用な液体培養培地の非限定的な例には、例えば、CDCHO、OptiCHO、およびFortiCHO(全てLife Technologies;Grand Island、NYから入手可能)、HycellCHO培地(Thermo Fisher Scientific、Inc.;Waltham、MA)、Ex-cellCDCHO融合培地(Sigma-Aldrich Co.;St.Louis、MO)およびPowerCHO培地(Lonza Group、Ltd.;Basel、Switzerland)が含まれる。本方法において有用となりうる培地成分には、既知組成(CD)加水分解物、例えば、CDペプトン、CDポリペプチド(2つ以上のアミノ酸)およびCD成長因子が含まれるが、これに限定されない。液体組織培養培地および培地成分のさらなる例が、当技術分野で既知である。
【0083】
本明細書で記載される方法のうちいずれかについての一部の例においては、哺乳動物細胞が、第1の培養培地約100μL~約25mL(例えば、約100μL~約20mL、約100μL~約15mL、約100μL~約10mL、約100μL~約8mL、約100μL~約6mL、約100μL~約4mL、約100μL~約3mL、約100μL~約2.5mL、約100μL~約2.0mL、約100μL~約1.5mL、約100μL~約1.0mL、約100μL~約800μL、約100μL~約600μL、約100μL~約500μL、約100μL~約400μL、約100μL~約300μL、約100μL~約250μL、約100μL~約200μL、約150μL~約25mL、約150μL~約20mL、約150μL~約15mL、約150μL~約10mL、約150μL~約8mL、約150μL~約6mL、約150μL~約4mL、約150μL~約3mL、約150μL~約2.5mL、約150μL~約2.0mL、約150μL~約1.5mL、約150μL~約1.0mL、約150μL~約800μL、約150μL~約600μL、約150μL~約500μL、約150μL~約400μL、約150μL~約300μL、約150μL~約200μL、約250μL~約25mL
、約250μL~約20mL、約250μL~約15mL、約250μL~約10mL、約250μL~約8mL、約250μL~約6mL、約250μL~約5mL、約250μL~約4mL、約250μL~約3mL、約250μL~約2.5mL、約250μL~約2mL、約250μL~約1mL、約500μL~約25mL、約500μL~約20mL、約500μL~約15mL、約500μL~約10mL、約500μL~約8mL、約500μL~約6mL、約500μL~約5mL、約500μL~約4mL、約500μL~約3mL、約500μL~約2.5mL、約500μL~約2mL、約500μL~約1mL、約1mL~約25mL、約1mL~約20mL、約1mL~約15mL、約1mL~約10mL、約1mL~約8mL、約1mL~約6mL、約1mL~約5mL、約1mL~約4mL、約1mL~約3mL、約1mL~約2.5mLまたは約1mL~約2mL)中に浮遊している。
【0084】
本明細書で記載される第1の液体培養培地および第2の液体培養培地が、同じ種類の培地であっても異なる培地であってもよいことを、当業者は理解するであろう。
【0085】
マイクロキャリア
哺乳動物細胞が接着細胞である一部の例において、第1および/または第2の液体培養培地は、複数のマイクロキャリアを含む。例えば、ウェルは、最終濃度が、例えば約1.0g/L~約15.0g/L、(例えば、振盪フラスコ中の最終濃度が約1.0g/L~約2.5g/L、約1.0g/L~約2.0g/L、約1.0g/L~約1.75g/L、約1.0g/L~約1.5g/L、約1.0g/L~約1.25g/L、約2.5g/L~5.0g/L、約5.0g/L~約7.5g/L、約7.5g/L~約10.0g/L、約10.0g/L~約12.5g/L、約12.5g/L~約15.0g/L、約1.0g/L~約5.0g/L、約5.0g/L~約10.0g/L、約10.0g/L~約15.0g/L、約2.5g/L~約3.5g/L、約3.0g/L~約4.0g/L、約4.0g/L~約5.0g/L、約5.0g/L~約6.0g/L、約6.0g/L~約7.0g/L、約7.0g/L~約8.0g/L、約8.0g/L~約9.0g/L、約9.0g/L~約10.0g/L、約10.0g/L~約11.0g/L、約11.0g/L~約12.0g/L、約12.0g/L~約13.0g/L、約13.0g/L~約14.0g/Lまたは約14.0g/L~約15.0g/L)のマイクロキャリアを含んでいてよい。
【0086】
一部の実施形態において、複数のマイクロキャリアは平均直径約20μm~約1mmの間(例えば、約20μm~約250μmの間、約100μm~約250μmの間、約150μm~約250μmの間、約250μm~約500μmの間、約200μm~約300μmの間、約750μm~1mmの間、約200μm~約800μmの間、約200μm~約500μmの間または約500μm~約800μmの間)を有していてよく、マイクロキャリアは、許容状態であるか、哺乳動物細胞(例えば、本明細書で記載されるか当技術分野で既知の哺乳動物細胞のいずれか)の付着を促進する表面を有する。一部の例において、マイクロキャリアは、1つまたはそれ以上の孔(例えば、平均直径約10μm~約100μm(例えば、約10μm~約20μm、約20μm~約30μm、約30μm~約40μm、約50μm~約60μm、約60μm~約70μm、約70μm~約80μm、約80μm~約90μm、約90μm~約100μm、約10μm~約45μm、約45μm~約80μm、約25μm~約35μmまたは約30μm)の1つまたはそれ以上の孔)を含んでいてよい。一部の実施形態において、複数のマイクロキャリアにおける、複数のマイクロキャリア表面および/または1つもしくはそれ以上の孔表面は、哺乳動物細胞のマイクロキャリアへの付着(例えば、マイクロキャリア外表面および/またはマイクロキャリアの孔表面への付着)を促進する薬剤でコーティングされている。哺乳動物細胞の付着を促進するために使用可能なこのような薬剤の例には、ゼラチン、コラーゲン、ポリ-L-オルニチン、ポリスチレンおよびラミニンが含まれるが、これに限定されな
い。
【0087】
一部の例において、マイクロキャリアは、平均有効細胞結合表面積約0.5m/g dry~約2.0m/g dryの間(例えば、約0.75m/g dry~1.25m/dryの間、約1.0m/g dry~約1.5m/dryの間、約1.25m/dry~約1.5m/dryの間、約1.5m/dry~約2.0m/dryの間、または約1.1m/dry)を有する。一部の例において、マイクロキャリアは、平均体積約10mL/g dry~約70mL/g dry(例えば、約10mL/g dry~約20mL/g dry、約20mL/g dry~約30mL/g dry、約30mL/g dry~約40mL/g dry、約40mL/g dry~約50mL/g dry、約50mL/g dry~約60mL/g dry、約60mL/g dry~約70mL/g dry、約10mL/g dry~約40mL/g dry、約30mL/g dry~約40mL/g dry、約40mL/g dry~約70mL/g dry、または約40mL/g dry)を有する。一部の実施形態において、マイクロキャリアの平均相対密度は0.8g/mL~約1.2g/mLの間(例えば、約0.8g/mL~約0.9g/mL、約0.9g/mL~約1.0g/mL、約1.0g/mL~約1.1g/mL、約1.0g/mL、約1.1g/mL~約1.2g/mL、約0.95g/mL~約1.05g/mL、または約1.03g/mL)である。
【0088】
一部の実施形態において、マイクロキャリアは、ほぼ球状または楕円状である。その他の例においては、マイクロキャリアは、マイクロキャリアの総外表面積を増加させる小さな隆起を有する、擦過したまたは粗い表面を有する。一部の実施形態において、マイクロキャリアはネットワーク構造を有する。一部の例において、マイクロキャリアは吸湿性である。一部の例において、マイクロキャリアはセルロースを含む。
【0089】
一部の実施形態において、マイクロキャリアは正に荷電した(例えば、N,N,-ジエチルアミノエチル基の存在により正に荷電した)外表面を有し、および/またはマイクロキャリア孔は正に荷電した(例えば、N,N,-ジエチルアミノエチル基の存在により正に荷電した)表面を有する。一部の例において、マイクロキャリアはネットワークまたは網状またはクモの巣状構造を有する。マイクロキャリアは、平均電荷密度約0.5me/g~約2.5me/g(例えば、約0.5me/g~約1.5meq/g、約0.75meq/g~約1.25meq/g、約1.1meq/g、約1.5meq/g~約2.5meq/g、約1.5meq/g~約2.0meq/g、約1.8meq/g、約0.5meq/g~約1.0meq/g、または約1.0meq/g~約1.5meq/g)を有していてよい。
【0090】
一部の例において、マイクロキャリアは天然ポリマーおよび/または合成ポリマーを含んでいてよい。合成ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリリン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリグリセリン、ポリアスパルトアミド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロクサマー)、カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸)、ポリオキシエチレン、ポリエチレンオキシド、不飽和エチレンモノジカルボン酸、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(イプシロン-カプロラクトン)、ポリ(エチルエチレン)、ポリブタジエン、ポリ
グリコリド、ポリメチルアクリレート、ポリビニルブチルエーテル、ポリスチレン、ポリシクロペンタジエニルメチルノルボルネン、ポリエチレンプロピレン、ポリエチルエチレン、ポリイソブチレン、ポリシロキサン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチル(2-ethyl acrylate)、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、およびメタクリル酸イソブチル)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニル(例えば、酢酸ビニル、ビニルバーサテート(vinylversatate)、プロピオン酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピリジン、およびビニルイミダゾ-ル)、アミノアルキル(例えば、アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート、およびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド)、スチレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、および乳酸が含まれる。天然ポリマーの非限定的な例には、セルロース、レシチンおよびヒアルロン酸が含まれる。マイクロキャリアは、同じまたは異なる比で、異なるポリマーの混合物(例えば、本明細書で記載されるか当技術分野で既知の、1つまたはそれ以上のポリマーの任意の組合せ)を含んでいてよい。本明細書で記載されるマイクロキャリアのうちいずれも、1つまたはそれ以上のポリマー(例えば、本明細書で記載されるか当技術分野で既知のポリマーのうちいずれか)を含むコア、および1つまたはそれ以上の異なるポリマー(例えば、本明細書で記載されるか当技術分野で既知のポリマーのうちいずれか)を含む外層を含んでいてよい。
【0091】
本明細書で記載される方法のうちいずれかにおいて使用可能な、非限定的で例示的なマイクロキャリアには、CytoPore(商標)1およびCytoPore(商標)2(GE Healthcare、Life Sciences、Piscataway、New Jerseyから入手可能)が含まれる。本明細書で記載される方法のうちいずれ
かにおいて使用可能なマイクロキャリアのさらなる例が、公的に入手可能であり当技術分野で既知である。
【0092】
マルチウェルプレート
様々なマルチプレートが当技術分野で既知であり、本明細書で記載される方法のうちいずれかにおいて使用可能である。例えば、マルチウェルプレートは、2ウェルプレート、4ウェルプレート、6ウェルプレート、8ウェルプレート、9ウェルプレート、10ウェルプレート、12ウェルプレート、15ウェルプレート、18ウェルプレート、20ウェルプレート、24ウェルプレート、36ウェルプレート、48ウェルプレート、60ウェルプレート、72ウェルプレートまたは96ウェルプレートであってよい。一部の例において、ウェルは、体積(内部体積)約0.3mL~約25mLの間(例えば、約0.3mL~約24mLの間、約0.3mL~約22mLの間、約0.3mL~約20mLの間、約0.3mL~約18mLの間、約0.3mL~約16mLの間、約0.3mL~約14mLの間、約0.3mL~約12mLの間、約0.3mL~約10mLの間、約0.3mL~約8mLの間、約0.3mL~約6mLの間、約0.3mL~約5mLの間、約0.3mL~約4mLの間、約0.3mL~約3mLの間、約0.3mL~約2mLの間、約0.3mL~約1mLの間、約0.5mL~約25mLの間、約0.5mL~約24mLの間、約0.5mL~約22mLの間、約0.5mL~約20mLの間、約0.5mL~約18mLの間、約0.5mL~約16mLの間、約0.5mL~約14mLの間、約0.5mL~約12mLの間、約0.5mL~約10mLの間、約0.5mL~約8mLの間、約0.5mL~約6mLの間、約0.5mL~約5mLの間、約0.5mL~約4mLの間、約0.5mL~約3mLの間、約0.5mL~約2mLの間、約0.5mL~約1mLの間、約1mL~約25mLの間、約1mL~約24mLの間、約1mL~約22mLの間、約1mL~約20mLの間、約1mL~約18mLの間、約1mL~約16mLの間、約1mL~約14mLの間、約1mL~約12mLの間、約1mL~約10mLの間、約1mL~約8mLの間、約1mL~約7mLの間、約1mL~約6mLの間、約
1mL~約5mLの間、約1mL~約4mLの間、約1mL~約3.5mLの間、約1mL~約3mLの間、約1mL~約2.5mLの間、約1mL~約2mLの間、約1mL~約1.5mLの間、約1.5mL~約25mLの間、約1.5mL~約24mLの間、約1.5mL~約22mLの間、約1.5mL~約20mLの間、約1.5mL~約18mLの間、約1.5mL~約16mLの間、約1.5mL~約14mLの間、約1.5mL~約12mLの間、約1.5mL~約10mLの間、約1.5mL~約8mLの間、約1.5mL~約6mLの間、約1.5mL~約5mLの間、約1.5mL~約4mLの間、約1.5mL~約3.5mLの間、約1.5mL~約3mLの間、約1.5mL~約2.5mLの間、約1.5mL~約2.0mLの間、約2mL~約25mLの間、約2mL~約24mLの間、約2mL~約22mLの間、約2mL~約20mLの間、約2mL~約18mLの間、約2mL~約16mLの間、約2mL~約14mLの間、約2mL~約12mLの間、約2mL~約10mLの間、約2mL~約8mLの間、約2mL~約6mLの間、または約2mL~約5mLの間)を有する。
【0093】
一部の例において、マルチウェルプレートは深型ウェルプレートである。例えば、深型ウェルプレートのウェル内部の高さは、1cm~約12cmの間(例えば、約1cm~約11cmの間、約1cm~約10cmの間、約1cm~約9cmの間、約1cm~約8cmの間、約1cm~約7cmの間、約1cm~約6cmの間、約1cm~約5cmの間、約1cm~約4cmの間、約1cm~約3cmの間、約1.2cm~約12cmの間、約1.2cm~約11cmの間、約1.2cm~約10cmの間、約1.2cm~約9cmの間、約1.2cm~約8cmの間、約1.2cm~約7cmの間、約1.2cm~約6cmの間、約1.2cm~約5cmの間、約1.2cm~約4cmの間、約1.2cm~約3cmの間、約1.5cm~約11cmの間、約1.5cm~約10cmの間、約1.5cm~約9cmの間、約1.5cm~約8cmの間、約1.5cm~約7cmの間、約1.5cm~約6cmの間、約1.5cm~約5cmの間、約1.5cm~約4cmの間、約1.5cm~約3cmの間、約2cm~約12cmの間、約2cm~約11cmの間、約2cm~約10cmの間、約2cm~約9cmの間、約2cm~約8cmの間、約2cm~約7cmの間、約2cm~約6cmの間、約2cm~約5cmの間、約2cm~約4cmの間、約2cm~約3cmの間、約2.5cm~約12cmの間、約2.5cm~約11cmの間、約2.5cm~約10cmの間、約2.5cm~約9cmの間、約2.5cm~約8cmの間、約2.5cm~約7cmの間、約2.5cm~約6cmの間、約2.5cm~約5cmの間、約2.5cm~約4cmの間、約3cm~約12cmの間、約3cm~約11cmの間、約3cm~約10cmの間、約3cm~約9cmの間、約3cm~約8cmの間、約3cm~約7cmの間、約3cm~約6cmの間、約3cm~約5cmの間、約4cm~約12cmの間、約4cm~約11cmの間、約4cm~約10cmの間、約4cm~約9cmの間、約4cm~約8cmの間、約4cm~約7cmの間、約4cm~約6cmの間、約5cm~約12cmの間、約5cm~約11cmの間、約5cm~約10cmの間、約5cm~約9cmの間、約5cm~約8cmの間、または約5cm~約7cmの間)であってよい。
【0094】
一部の例において、(例えば、深型ウェルマルチウェルプレートの)ウェルは、平底(角底とも呼ばれる)、丸底(半球底とも呼ばれる)、円錐底またはピラミッド状底を有していてよい。一部の実施形態において、本明細書で記載されるウェルのうちいずれかの直径は、約4.0mm~約50mmの間(例えば、約4.0mm~約45mmの間、約4.0mm~約40mmの間、約4.0mm~約35mmの間、約4.0mm~約30mmの間、約4.0mm~約25mmの間、約4.0mm~約20mmの間、約4.0mm~約15mmの間、約4.0mm~約10mmの間、約6.0mm~約50mmの間、約6.0mm~約45mmの間、約6.0mm~約40mmの間、約6.0mm~約35mmの間、約6.0mm~約30mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約20mmの間、約6.0mm~約15mmの間、約6.
0mm~約10mmの間、約8mm~約50mmの間、約8mm~約45mmの間、約8mm~約40mmの間、約8mm~約35mmの間、約8mm~約30mmの間、約8mm~約25mmの間、約8mm~約20mmの間、約8mm~約15mmの間、約10mm~約50mmの間、約10mm~約45mmの間、約10mm~約40mmの間、約10mm~約35mmの間、約10mm~約30mmの間、約10mm~約25mmの間、約10mm~約20mmの間、約15mm~約50mmの間、約15mm~約45mmの間、約15mm~約40mmの間、約15mm~約35mmの間、約15mm~約30mmの間、約15mm~約25mmの間、または約15mm~約20mmの間)であってよい。
【0095】
一部の例において、マルチウェルプレートは密封される(例えば、ガス透過性ディスポーザブル膜、またはガス透過性シリコーン層で密封される)。マルチウェルプレートを密封するために使用される材料の非限定的な例が、実施例に記載されている。マルチウェルプレートを密封するために使用されるさらなる材料が、当技術分野で周知である。
【0096】
ウェルの内部表面は、少なくとも1つのコーティング(例えば、ゼラチン、コラーゲン、ポリ-L-オルニチン、ポリスチレンおよびラミニンのうち少なくとも1つのコーティング)を有していてよい。マルチウェルプレート(例えば、様々な形状および寸法のウェル)およびウェルの内部表面コーティングのさらなる例が、当技術分野で既知であり本方法において使用可能である。
【0097】
撹拌
本明細書で記載される方法には、哺乳動物細胞ならびに第1および/または第2の液体培養培地を含む培養物の回転撹拌が必要である。回転撹拌は、(例えば、投てき(軌道)直径約3mm~約50mmの振盪インキュベーターなどのインキュベーター内で)約300RPM~約600RPM(例えば、約300RPM~約580RPM、約300RPM~約560RPM、約300RPM~約540RPM、約300RPM~約520RPM、約300RPM~約500RPM、約300RPM~約480RPM、約300RPM~約460RPM、約300RPM~約440RPM、約300RPM~約420RPM、約300RPM~約400RPM、約300RPM~約380RPM、約300RPM~約360RPM、約320RPM~約600RPM、約320RPM~約580RPM、約320RPM~約560RPM、約320RPM~約540RPM、約320RPM~約520RPM、約320RPM~約500RPM、約320RPM~約480RPM、約320RPM~約460RPM、約320RPM~約440RPM、約320RPM~約420RPM、約320RPM~約400RPM、約320RPM~約380RPM、約330RPM~約600RPM、約330RPM~約580RPM、約330RPM~約560RPM、約330RPM~約540RPM、約330RPM~約520RPM、約330RPM~約500RPM、約330RPM~約480RPM、約330RPM~約460RPM、約330RPM~約440RPM、約330RPM~約420RPM、約330RPM~約400RPM、約330RPM~約380RPM、約340RPM~約600RPM、約340RPM~約580RPM、約340RPM~約560RPM、約340RPM~約540RPM、約340RPM~約520RPM、約340RPM~約500RPM、約340RPM~約480RPM、約340RPM~約460RPM、約340RPM~約440RPM、約340RPM~約420RPM、約340RPM~約400RPM、約360RPM~約600RPM、約360RPM~約580RPM、約360RPM~約560RPM、約360RPM~約540RPM、約360RPM~約520RPM、約360RPM~約500RPM、約360RPM~約480RPM、約360RPM~約460RPM、約360RPM~約440RPM、約360RPM~約420RPM、約380RPM~約600RPM、約380RPM~約580RPM、約380RPM~約560RPM、約380RPM~約540RPM、約380RPM
~約520RPM、約380RPM~約500RPM、約380RPM~約480RPM、約380RPM~約460RPM、約380RPM~約440RPM、約400RPM~約600RPM、約400RPM~約580RPM、約400RPM~約560RPM、約400RPM~約540RPM、約400RPM~約520RPM、約400RPM~約500RPM、約400RPM~約480RPM、または約400RPM~約460RPM)の回数で行ってよい。
【0098】
当技術分野において理解される通り、撹拌のレベル(例えば、RPM速度)は、ウェルのサイズおよび形状(例えば、ウェルの直径、形状および高さのうち1つまたはそれ以上)、ならびにインキュベートを実施するために使用されるインキュベーターの投てき(軌道)直径次第で変動させてよい。例えば、同等のレベルの流体せん断力および溶存O濃度を達成するためには、より小さい投てき(軌道)直径にはより高レベルの撹拌(例えば、より大きいRPM速度)が必要となり、より大きい投てき(軌道)直径にはより低レベルの撹拌(例えば、より小さいRPM速度)が必要となりうる。別の例においては、同等のレベルの流体せん断力および溶存O濃度を達成するためには、より大きい直径を有するウェルにはより小さいRPM速度が必要となり、より小さい直径を有するウェルにはより大きいRPM速度が必要となりうる。
【0099】
一部の実施形態において、投てき(軌道)直径が約3mm~約50mmの間(例えば、約3mm~約25mmの間または約25mm~約50mmの間)、および撹拌が約320RPM~約500RPMの間(例えば、約320RPM~約480RPMの間、約320RPM~約460RPMの間、約320RPM~約400RPMの間、約320RPM~約380RPMの間、約320RPM~約360RPMの間、約320RPM~約350RPMの間、約320RPM~約340RPMの間、約330RPM~約500RPMの間、約330RPM~約480RPMの間、約330RPM~約460RPMの間、約330RPM~約440RPMの間、約330RPM~約420RPMの間、約330RPM~約400RPMの間、約330RPM~約380RPMの間、約330RPM~約370RPMの間、約330RPM~約360RPMの間、約330RPM~約350RPMの間、約340RPM~約500RPMの間、約340RPM~約480RPMの間、約340RPM~約460RPMの間、約340RPM~約440RPMの間、約340RPM~約420RPMの間、約340RPM~約400RPMの間、約340RPM~約380RPMの間、約340RPM~約370RPMの間、約340RPM~約360RPMの間、約350RPM~約500RPMの間、約350RPM~約480RPMの間、約350RPM~約460RPMの間、約350RPM~約440RPMの間、約350RPM~約420RPMの間、約350RPM~約400RPMの間、約350RPM~約390RPMの間、約350RPM~約380RPMの間、約350RPM~約370RPMの間、約360RPM~約500RPMの間、約360RPM~約480RPMの間、約360RPM~約460RPMの間、約360RPM~約440RPMの間、約360RPM~約420RPMの間、約360RPM~約400RPMの間、約360RPM~約380RPMの間、または約400RPM~約500RPMの間)の振盪チューブインキュベーターを使用して、インキュベートが実施される。回転撹拌は、例えば、回転円形振盪または回転楕円形振盪を使用して実施することができる。撹拌は連続的または定期的に実施することができる。
【0100】
マルチウェルプレートの回転撹拌により、温度約31℃~約40℃でインキュベートされ、約320RPM~約450RPM(例えば、約320RPM~約440RPM、約320RPM~約430RPM、約320RPM~約420RPM、約320RPM~約410RPM、約320RPM~約400RPM、約320RPM~約390RPM、約320RPM~約380RPM、約320RPM~約370RPM、約320RPM~約360RPM、約320RPM~約350RPM、約320RPM~約340RPM、約3
20RPM~約330RPM、約330RPM~約450RPM、約330RPM~約440RPM、約330RPM~約430RPM、約330RPM~約420RPM、約330RPM~約410RPM、約330RPM~約400RPM、約330RPM~約390RPM、約330RPM~約380RPM、約330RPM~約370RPM、約330RPM~約360RPM、約330RPM~約350RPM、約330RPM~約340RPM、約340RPM~約450RPM、約340RPM~約440RPM、約340RPM~約430RPM、約340RPM~約420RPM、約340RPM~約410RPM、約340RPM~約400RPM、約340RPM~約390RPM、約340RPM~約380RPM、約340RPM~約370RPM、約340RPM~約360RPM、約340RPM~約350RPM、約350RPM~約450RPM、約350RPM~約440RPM、約350RPM~約430RPM、約350RPM~約420RPM、約350RPM~約410RPM、約350RPM~約400RPM、約350RPM~約390RPM、約350RPM~約380RPM、約350RPM~約370RPM、約350RPM~約360RPM、約360RPM~約450RPM、約360RPM~約440RPM、約360RPM~約430RPM、約360RPM~約420RPM、約360RPM~約410RPM、約360RPM~約400RPM、約360RPM~約390RPM、約360RPM~約380RPM、約360RPM~約370RPM、約370RPM~約450RPM、約370RPM~約430RPM、約370RPM~約410RPM、約370RPM~約390RPM、約390RPM~約450RPM、約390RPM~約430RPM、約390RPM~約410RPM、約410RPM~約450RPM、約410RPM~約430RPM、または約430RPM~約450RPM)の回数で撹拌される、ウェル体積の約10%~約40%(例えば、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約40%の間、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約40%、約25%~約35%、約25%~約30%、約30%~約40%、約30%~約35%、または約35%~約40%の間)を占める液体培養培地を含む、直径約6.0mm~約35mmの間(例えば、約6.0mm~約30mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約20mmの間、約6.0mm~約15mmの間、約10mm~約35mmの間、約10mm~約30mmの間、約10mm~約25mmの間、約10mm~約20mmの間、約15mm~約35mmの間、約15mm~約30mmの間、約15mm~約25mmの間、約20mm~約35mmの間、約20mm~約30mmの間、または約25mm~約35mmの間)、および高さ約40mm~約50mmの間(例えば、約40mm~約45mmの間または約45mm~約50mmの間)を有する角底ウェルにおいて達成されるものと本質的に同じ流体せん断力および溶存酸素(O)濃度が生じうる。
【0101】
哺乳動物細胞および液体培養培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)を含む1つまたはそれ以上のマルチウェルプレートを撹拌する機械式デバイスを備えた、加湿雰囲気制御インキュベーターを使用して(例えば、湿度20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%超、または湿度100%で)回転撹拌を実施することができる。
【0102】
温度
本明細書で記載される培養方法は、温度約31℃~約40℃で実施することができる。例えば、時間または日ベースで、培養方法における特定の時点で温度を変化させてよいことを、当業者は理解するであろう。例えば、哺乳動物細胞によるウェルへの最初の播種後約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、14日、15日、16日、17日、18日、19日または約20日以上で、温度を変化または移行(例えば、上昇または下降)させてよい。例えば、温度を上方へ(例えば、最大
もしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または最大もしくは約20℃の変化)移行させてよい。例えば、温度を下方へ(例えば、最大もしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または最大もしくは約20℃の変化)移行させてよい。
【0103】
培養培地除去および交換
本明細書で記載される方法は、第1の体積の第1の液体培養培地(例えば、任意の濃度の哺乳動物細胞を含む、例えば、細胞を実質的に含まない第1の体積の第1の液体培養培地)をウェルから除去すること、および第1の液体培養培地に第2の体積の第2の液体培養培地を添加することを含む。除去および添加は同時にまたは連続的に、または2つを組み合わせて実施してよい。さらに、除去および添加を連続的に(例えば、任意の所与の期間(例えば、24時間期間、約1時間~約24時間の増分期間、または24時間超の増分期間)、ウェル体積または第1の液体培養培地体積の0.1%~700%の間(例えば、1%~600%の間、1%~500%の間、1%~400%の間、1%~350%の間、1%~300%の間、1%~250%の間、1%~100%の間、100%~200%の間、5%~150%の間、10%~50%の間、15%~40%の間、8%~80%の間、または4%~30%の間)の体積を除去および交換する比率で)、または定期的に(例えば、3日に1度、1日おきに1度、1日に1度、1日に2度、1日に3度、1日に4度または1日に5度)、またはそれらを任意で組み合わせて実施してよい。定期的に実施される場合、(例えば、約24時間期間内、約1時間~約24時間の増分期間内、または24時間超の増分期間内で)除去または交換される体積は、例えば、ウェル体積または第1の液体培養培地体積の0.1%~700%の間(例えば、1%~700%の間、1%~600%の間、1%~500%の間、1%~400%の間、1%~300%の間、1%~200%の間、1%~100%の間、100%~200%の間、5%~150%の間、10%~50%の間、15%~40%の間、8%~80%の間、または4%~30%の間)であってよい。除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、一部の例において、培養期間の全体または一部の間、各24時間期間(あるいは、約1時間~約24時間の増分期間、または24時間超の増分期間)中ほぼ同じに維持してよい。当技術分野で既知である通り、第1の体積の第1の液体培養培地が除去される比率(体積/単位時間)、および第2の体積の第2の液体培養培地が添加される比率(体積/単位時間)は変動させてよい。第1の体積の第1の液体培養培地が除去される比率(体積/単位時間)、および第2の体積の第2の液体培養培地が添加される比率(体積/単位時間)は、ほぼ同じでもよく異なっていてもよい。
【0104】
あるいは、除去および添加される体積を、培養期間の間、各24時間期間(あるいは、1時間~約24時間の間の増分期間、または24時間超の増分期間)中に変化(例えば、漸増)させてよい。体積の漸増を含む方法の非限定的な例が本明細書で記載される。例えば、培養期間の間、各24時間期間(あるいは、約1時間~24時間超の間の増分期間、または24時間超の増分期間)内で除去される第1の液体培養培地の体積および添加される第2の液体培養培地の体積は、培養期間の間、ウェル体積または第1の液体培養培地体積の0.5%~約30%の間の体積から、ウェル体積または第1の液体培養培地体積の約30%~約200%へ(例えば徐々にまたは時差的増加により)増加させてよい。
【0105】
本明細書で記載される方法のうちいずれかについての一部の実施形態において、マルチウェルプレートは7日超の期間インキュベートされ、各24時間期間中のインキュベーシ
ョン1~3日目には、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約30%~約50%の間であり;インキュベーション4~6日目には、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約30%~約50%の間であり;各24時間期間中のインキュベーション7日目以降には、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約90%~約150%である。
【0106】
その他の例においては、各24時間期間における、期間の最初の約24~48時間後、除去される第1の液体培養培地の第1の体積および添加される第2の液体培養培地の第2の体積は、第1の液体培養培地の体積の約30%~約300%(例えば、約30%~約280%、約30%~約260%、約30%~約240%、約30%~約220%、約30%~約200%、約30%~約180%、約30%~約160%、約30%~約150%、約30%~約140%、約30%~約120%、約30%~約100%、約30%~約80%、約30%~約60%、約30%~約50%、約40%~約300%、約40%~約280%、約40%~約260%、約40%~約240%、約40%~約220%、約40%~約200%、約40%~約180%、約40%~約160%、約40%~約140%、約40%~約120%、約40%~約100%、約40%~約80%、約40%~約60%、約50%~約300%、約50%~約280%、約50%~約260%、約50%~約240%、約50%~約220%、約50%~約200%、約50%~約180%、約50%~約160%、約50%~約140%、約50%~約120%、約50%~約100%、または約50%~約80%)である。
【0107】
第1の液体培養培地および第2の液体培養培地が同じ種類の培地であってよいことを、当業者は理解するであろう。その他の例においては、第1の液体培養培地および第2の液体培養培地は異なっていてよい。
【0108】
第1の体積の第1の液体培養培地を、例えば、マルチウェルプレートを遠心処理(例えば、低速スイングバケット遠心処理)し、細胞を実質的に含まない第1の体積の第1の液体培養培地を上清から除去することで除去してもよい。あるいはまたはさらに、第1の体積の第1の液体培養培地を、哺乳動物細胞を除外する分子量カットオフの滅菌膜を通して、第1の体積の第1の液体培養培地の浸出または重力流により除去してもよい。あるいはまたはさらに、第1の液体培養培地を、第1の体積の第1の液体培養培地を除去する前に、少なくとも30秒(例えば、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分または少なくとも5分)の期間、撹拌を停止して除去してもよい。第1の体積の第1の液体培養培地は、手作業で(例えば、ウェルから第1の体積の第1の液体培養培地を吸引またはピペットで)、または自動式に(例えば、自動デバイス、または本明細書で記載されるマルチウェル細胞培養プレートシステムのうちいずれかを使用して)除去することができる。
【0109】
第2の体積の第2の液体培養培地は、例えば、灌流ポンプで第1の液体培養培地に添加することができる。第2の液体培養培地は、手作業で(例えば、第2の体積の第2の液体培養培地を直接第1の液体培養培地にピペッティングすることで)または自動式に(例えば、自動デバイス、または本明細書で記載されるマルチウェル細胞培養プレートシステムのうちいずれかを使用して)第1の液体培養培地に添加することができる。
【0110】
一部の例において、本明細書で提供されるマルチウェル細胞培養プレートシステムのうちいずれかを使用して、第1の体積の第1の液体培養培地を除去し、第2の体積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加することができる。
【0111】
一部の例において、第1の体積の第1の液体培養培地(例えば、哺乳動物細胞を実質的に含まない第1の体積の第1の液体培養培地)を除去すること、および第1の液体培養培地に第2の体積の第2の液体培養培地を添加することは、哺乳動物細胞によるウェルへの播種から少なくとも1時間以内(例えば、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内、12時間以内、14時間以内、16時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、96時間以内または96時間後)には行われない。
【0112】
一部の実施形態は、蒸発に起因する第1の液体培養培地の体積の減少を相殺するためにさらなる体積の第2の液体培養培地を複数のウェルの各々に定期的に添加することをさらに含む。例えば、このようなさらなる体積の第2の液体培養培地を、例えば、少なくとも24時間に1回、少なくとも48時間に1回、少なくとも72時間に1回または少なくとも96時間に1回、各ウェルに添加することができる。このさらなる体積の第2の液体培養培地は、手作業でまたは自動式に(例えば、自動デバイスを使用するか、または本明細書で記載されるマルチウェル細胞培養プレートシステムのうちいずれかを使用して)添加することができる。
【0113】
CO
本明細書で記載される方法は、最大または約15%CO(例えば、最大もしくは約14%CO、12%CO、10%CO、8%CO、6%CO、5%CO、4%CO、3%CO、2%CO、または最大もしくは約1%CO)を含む雰囲気下でマルチウェルプレートをインキュベートすることをさらに含んでいてよい。さらに、本明細書で記載される方法のうちいずれかは、加湿雰囲気(例えば、湿度少なくとももしくは約20%、30%、40%、50%、60%、70%、85%、80%、85%、90%、または湿度少なくとももしくは約95%、または湿度約100%)下でマルチウェルプレートをインキュベートすることを含んでいてよい。
【0114】
例示的なデバイス
本明細書で記載される培養方法を実施するために使用可能なデバイスの非限定的な例には:Appropriate Technical Resources (Maryl
and、USA)が販売するINFORS Multiron振盪インキュベーター(INFORS;Basel、Switzerland)およびKuhner振盪インキュベーター(Kuhner AG;Basel、Switzerland)が含まれる。培養方法を実施するために使用可能なデバイスの非限定的な例には、投てき(軌道)直径約3mm~約50mmの間(例えば、約1mm~約25mmの間または約25mm~約50mmの間)の回転式インキュベーターが含まれる。振盪インキュベーターおよび回転式培養インキュベーターのさらなる例が、当技術分野で既知である。
【0115】
溶存Oおよび流体せん断力
温度約31℃~約40℃でインキュベートされ、約320RPM~約450RPM(例えば、約320RPM~約440RPM、約320RPM~約430RPM、約320RPM~約420RPM、約320RPM~約410RPM、約320RPM~約400RPM、約320RPM~約390RPM、約320RPM~約380RPM、約320RPM~約370RPM、約320RPM~約360RPM、約320RPM~約350RPM、約320RPM~約340RPM、約320RPM~約330RPM、約330RPM~約450RPM、約330RPM~約440RPM、約330RPM~約430RPM、約330RPM~約420RPM、約330RPM~約410RPM、約330RPM~約400RPM、約330RPM~約390RPM、約330RPM~約380RPM、約330RPM~約370RPM、約330RPM~約360RPM、約330RPM~約350RPM、約330RPM~約340RPM、約340RPM~約450R
PM、約340RPM~約440RPM、約340RPM~約430RPM、約340RPM~約420RPM、約340RPM~約410RPM、約340RPM~約400RPM、約340RPM~約390RPM、約340RPM~約380RPM、約340RPM~約370RPM、約340RPM~約360RPM、約340RPM~約350RPM、約350RPM~約450RPM、約350RPM~約440RPM、約350RPM~約430RPM、約350RPM~約420RPM、約350RPM~約410RPM、約350RPM~約400RPM、約350RPM~約390RPM、約350RPM~約380RPM、約350RPM~約370RPM、約350RPM~約360RPM、約360RPM~約450RPM、約360RPM~約440RPM、約360RPM~約430RPM、約360RPM~約420RPM、約360RPM~約410RPM、約360RPM~約400RPM、約360RPM~約390RPM、約360RPM~約380RPM、約360RPM~約370RPM、約370RPM~約450RPM、約370RPM~約430RPM、約370RPM~約410RPM、約370RPM~約390RPM、約390RPM~約450RPM、約390RPM~約430RPM、約390RPM~約410RPM、約410RPM~約450RPM、約410RPM~約430RPM、または約430RPM~約450RPM)の回数で撹拌される、直径約6.0mm~約35mmの間(例えば、約6.0mm~約30mmの間、約6.0mm~約25mmの間、約6.0mm~約20mmの間、約6.0mm~約15mmの間、約10mm~約35mmの間、約10mm~約30mmの間、約10mm~約25mmの間、約10mm~約20mmの間、約15mm~約35mmの間、約15mm~約30mmの間、約15mm~約25mmの間、約20mm~約35mmの間、約20mm~約30mmの間、または約25mm~約35mmの間)および高さ約40mm~約50mmの間(例えば、約40mm~約45mmの間または約45mm~約50mmの間)を有する角底ウェルの体積の約10%~約40%(例えば、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約40%の間、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約40%、約25%~約35%、約25%~約30%、約30%~約40%、約30%~約35%、または約35%~約40%の間)を占める培地において達成されるものと同じ(または本質的に同じ)流体せん断力および溶存酸素(O)濃度を培地中に発生させる条件下で、マルチウェルプレートのウェル内に配置された液体培養培地中に浮遊している哺乳動物細胞を、勾配灌流プロセスで培養することを含む培養方法も提供される。
【0116】
当技術分野で既知である通り、一定の溶存O濃度および一定の流体せん断力を達成するように、様々な細胞培養パラメータを調節することができる。調節可能なこのようなパラメータの非限定的な例には:ウェル体積、液体培養培地の体積、ウェルの形状(例えば、直径、高さ、およびウェル底部の形状のうち1つまたはそれ以上)、撹拌の種類(例えば、回転円形撹拌および/または回転楕円形撹拌)、撹拌の回数、液体培養培地の種類、ウェルの内部コーティングおよび液体培養培地の温度が含まれる。このような培養パラメータのさらなる例が、当技術分野で既知である。温度約31℃~約40℃でインキュベートされ、約320RPM~約450RPM(例えば、約320RPM~約360RPM)の回数で撹拌される、直径約6.0mm~約35mmの間、および高さ約40mm~約50mmの間を有する角底ウェルの体積の約10%~約40%(例えば、約15%~約25%)を占める培地において達成されるものと同じ(または本質的に同じ)流体せん断力および溶存酸素(O)濃度を培養培地中で達成するように、本明細書で記載されるか当技術分野で既知の培養パラメータの任意の組合せを、任意の様式で組み合わせることができる。
【0117】
液体培養培地中の溶存Oレベルを、様々な異なる方法を使用して検出することができ
る。例えば、溶存O電極またはプローブ(例えば、Eutech Instruments WD-35201-80 Dissolved Oxygen Probe、Rosemount Analytical 499 Series Dissolved Oxygen/Ozone Sensor、およびExtech DO705 Dissolved Oxygen Electrodeから入手可能なOプローブおよび電極)を使用して溶存Oを測定することができる。Oプローブおよび電極の較正および使用方法は、製造業者の説明書を使用して実施することができる。
【0118】
液体培養培地の流体せん断力は、当技術分野で既知の方法を使用して算出することができる。液体培養培地の流体せん断力算出について記載している適切な教科書の非限定的な例が、Fluid Mechanics、Robert A.Granger、1995、Dover Publications、Inc.、Mineola、NY、およびFundamentals of Fluid Mechanics、Bruce R.Munsonら、John Wiley & Sons、Inc.、2009に記載されている。
【0119】
組換えタンパク質を生産する方法
本明細書で記載される方法を使用して、組換えタンパク質を生産することができる細胞を培養することを含む、組換えタンパク質を生産する方法も本明細書で提供される。この方法の実施に従って、組換えタンパク質を哺乳動物細胞および/または第1もしくは第2の培養培地から回収することができる。一部の実施形態において、組換えタンパク質は、培養方法の間の任意の所与の時点で第1および/または第2の液体培養培地から回収される(例えば、培養0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100日目、または培養100日超後のうち1日またはそれ以上に、第1および/または第2の液体培養培地から回収される)。これらの方法についての一部の実施形態は、第3の培養培地の体積または第4の液体培養培地の体積を添加することをさらに含むが、各例において、ウェル中の液体培養培地の総体積は、第1の液体培養培地体積とほぼ等しいかそれ未満となるべきである。
【0120】
様々な培養パラメータ(例えば、本明細書で記載される、マルチウェルプレート、ウェル、体積、培養物体積を交換する速度または回数、撹拌回数、温度、培地およびCO濃度)のいずれかを任意の組合せで使用してこれらの方法を行うことができることを、当業者は理解するであろう。さらに、組換えタンパク質を生産するために、本明細書で記載されるか当技術分野で既知の哺乳動物細胞のうちいずれかを使用することができる。
【0121】
組換えタンパク質をコードする核酸を、分子生物学および分子遺伝学において既知の多様な方法を使用して、哺乳動物細胞に導入することができる。非限定的な例には、トランスフェクション(例えば、リポフェクション)、形質導入(例えば、レンチウイルス、アデノウイルスまたはレトロウイルス感染)、およびエレクトロポレーションが含まれる。ある例においては、組換えタンパク質をコードする核酸は、哺乳動物細胞の染色体に安定に組み込まれず(一過性トランスフェクション);その他の例においては、核酸が組み込まれる。あるいはまたはさらに、組換えタンパク質をコードする核酸は、プラスミドおよび/または哺乳動物人工染色体(例えば、ヒト人工染色体)に存在していてよい。あるいはまたはさらに、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、レトロウイルスまたはア
デノウイルスベクター)を使用して、核酸を細胞に導入することができる。核酸は、プロモーター配列(例えば、β-アクチンプロモーターおよびCMVプロモーターなどの強力なプロモーター、または誘導性プロモーター)に作動可能に連結させることができる。核酸を含むベクターは、必要に応じて、選択可能なマーカー(例えば、哺乳動物細胞にハイグロマイシン、ピューロマイシンまたはネオマイシン抵抗性を付与する遺伝子)も含む。
【0122】
ある例において、組換えタンパク質は分泌タンパク質であり、哺乳動物細胞により細胞外の培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)へ放出される。例えば、可溶性の組換えタンパク質をコードする核酸配列は、組換えタンパク質のN-またはC-末端に分泌シグナルペプチドをコードする配列を含んでいてよく、このタンパク質が、哺乳動物細胞中に存在する酵素により切断され、次いで、細胞外の培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)へ放出される。例えば、このような分泌組換えタンパク質は、分泌免疫グロブリン、分泌酵素、分泌成長因子、分泌タンパク質断片または工学操作された分泌タンパク質であってよい。その他の例においては、組換えタンパク質は、分泌されない可溶性タンパク質であり、組換えタンパク質は哺乳動物細胞内から回収される。例えば、分泌されない組換えタンパク質は、免疫グロブリン、酵素、成長因子、タンパク質断片または工学操作されたタンパク質であってよい。
【0123】
本明細書で提供される方法により生産することができる組換えタンパク質の非限定的な例には、免疫グロブリン(軽鎖および重鎖免疫グロブリンを含む)、抗体または抗体断片(例えば、本明細書で記載される抗体断片のうちいずれか)、酵素(例えば、ガラクトシダーゼ(例えば、アルファ-ガラクトシダーゼ)、マイオザイムまたはセレザイム)、タンパク質(例えば、成長因子、ヒトエリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)またはインターフェロンアルファまたはベータ)、工学操作されたタンパク質、または免疫原性もしくは抗原性タンパク質もしくはタンパク質断片(例えば、ワクチンに使用するタンパク質)が含まれる。一部の実施形態において、組換えタンパク質は、少なくとも1つの多機能組換えタンパク質スキャホールドを含む工学操作された抗原結合ポリペプチド(例えば、Gebauerら、Current Opin.Chem.Biol.13:245~255頁、2009;および米国特許出願公開第2012/0164066号(その全体を参照によって本明細書に組み入れる)に記載される抗原結合組換えタンパク質を参照のこと)である。抗体である組換えタンパク質の非限定的な例には:パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ(actoxumab)、アダリムマブ、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ(alacizumab)、アラシズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ(altumomab)、アマツキシマブ、アナツモマブ(anatumomab)、アポリズマブ、アチヌマブ(atinumab)、トシリズマブ、バシリジマブ(basilizimab)、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、セツキシマブ、ダクリズマブ、デンスマブ(densumab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(efungumab)、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシリズマブ、およびトラスツズマブが含まれる。本明細書で記載される方法により生産することができる治療抗体のさらなる例が、当技術分野で既知である。本方法により生産することができる組換えタンパク質のさらなる非限定的な例には:アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、アバタセプト、ガルスルファーゼ、ルトロピンアルファ、抗血友病因子、アガルシダーゼベータ、インターフェロンベータ-1a、ダルベポエチンアルファ、テネクテプラーゼ、エタネルセプト、凝固因子IX、卵胞刺激ホルモン、インターフェロンベータ-1a、イミグルセラーゼ、ドルナーゼアルファ、エポエチンアルファ、およびアルテプラーゼが含まれる。
【0124】
分泌された可溶性組換えタンパク質は、哺乳動物細胞から液体培養培地を除去すること、またはそうでなければ物理的に分離することで、液体培養培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)から回収することができる。例えば、遠心処理、濾過、ピペッティングおよび/または吸引を含む、哺乳動物細胞から液体培養培地を除去する様々な異なる方法が、当技術分野で既知である。次いで、分泌された組換えタンパク質を、各種クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたは陰イオン交換クロマトグラフィー)および/または濾過(例えば、分子量カットオフ濾過)を含む様々な生化学技術を使用して、液体培養培地から回収し、さらに精製することができる。
【0125】
細胞内組換えタンパク質を回収するために、哺乳動物細胞を溶解させることができる。例えば、ソニケーションならびに/または界面活性剤、酵素的および/もしくは化学的溶解を含む、哺乳動物細胞を溶解する多様な方法が当技術分野で既知である。典型的には細胞破片を除去するための遠心処理工程、次いで1つまたはそれ以上のさらなる工程(例えば、1つまたはそれ以上の種類のクロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたは陰イオン交換クロマトグラフィー)および/または濾過(例えば、分子量カットオフ濾過))で開始される、当技術分野で既知の様々な生化学方法を使用して、組換えタンパク質を哺乳動物細胞ライセートから精製することができる。
【0126】
一部の実施形態において、回収される組換えタンパク質は、純度少なくとももしくは約50重量%、例えば、純度少なくとももしくは約55重量%、純度少なくとも60重量%、純度少なくとも65重量%、純度少なくとも70重量%、純度少なくとも75重量%、純度少なくとも80重量%、純度少なくとも85重量%、純度少なくとも90重量%、純度少なくとも95重量%、純度少なくとも96重量%、純度少なくとも97重量%、純度少なくとも98重量%、または純度少なくとももしくは約99重量%、または純度99重量%超である。
【実施例
【0127】
本発明は、以下の実施例にさらに記載されるが、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0128】
例示的な培養方法の有益な特性
小スケールかつハイスループットの灌流培養のモデルを生成し、そのような培養が生産用灌流培養のものと同様の細胞密度を達成することができるか否かを決定するための実験を実施した。
【0129】
材料および方法
組換えガラクトシダーゼ浮遊細胞培養
組換えガラクトシダーゼを生産する同一のクローン細胞株を、各細胞培養プロセスランで使用した。各細胞培養プロセスランで使用した培養培地を表1に挙げる。
【0130】
【表1】
【0131】
装置および試薬
以下の装置および試薬を、この実施例に記載の細胞培養プロセスランで使用した:Multitronシェーカーインキュベーター(Appropriate Technical Resources,Inc.)(型式番号AJ125)、Cellometer(登録商標)Auto1000(Nexcelom Bioscience LLC)、Beckman Coulter Allegra遠心機(型式番号 Allegra X-14R)、TubeSpin(登録商標)Bioreactors 50(Techno Plastic Products AG、トラザーディンゲン、スイス)、96ウェルMASTERBLOCK(登録商標)マイクロプレート2mL(Griener Bio One、フリッケンハウゼン、ドイツ)、96ウェルMASTERBLOCK(登録商標)マイクロプレート1mL(Griener Bio One、フリッケンハウゼン、ドイツ)、Olympus白色光卓上顕微鏡(型式番号BH-s)、Olympus白色光卓上顕微鏡(型式番号BX40)、Olympus白色光卓上顕微鏡(型式番号BX41)、0.4%トリパンブルー溶液(Sigma)、0.2%トリパンブルー溶液(Sigma)、Reichert Bright-Line(登録商標)血球計算盤、Thermo Scientific顕微鏡用カバーガラス、Fisher Scientific Laboratory Counter、SAS(登録商標)JMP Software(バージョンX)、Applikon MicroFlask微量測定プレートクランピングデバイス(Applikon Biotechnology Inc.)、AeraSeal、微穴性ディスポーザブル膜シール(Phenix Research Products)、Beckman Coulter Biomek(登録商標)3000 Laboratory Automation Workstation、RAININ Pipetting 360° Pipet-Lite(商標)XLS(商標)Pipettor(Mettler Toledo)、Ergenomic High-Performance Pipettor[VWR(登録商標)]およびReagent Reservoir(VistaLab Technologies)。
【0132】
方法
撹拌(RPM)、ウェル形状、および実施体積の条件を変化させる範囲を試験するために、研究を実施した。320RPMから360RPMの間の撹拌、丸底(1mLの呼び体積)または角底(2mLの呼び体積)のウェル、および100μLから600μLの間の実施体積の範囲を包含するよう、研究を設計した。細胞培養プロセスランIを実施して、丸底深型ウェルプレート(1mLの呼び体積)の稼働条件のベースを決定した。細胞培養プロセスランIIを実施して、丸底深型ウェルプレートの高密度細胞培養支持能を決定し
た。細胞培養プロセスランIIIを実施して、設計の最適化に用いるパラメータ範囲を確定すると共に、Applikon MicroFlask微量測定プレートクランピングデバイス(Applikon Biotechnology,Inc.、フォスターシティ、カリフォルニア州)を、滅菌済みの微孔性膜シール(AeraSeal、Phenix Research Products、キャンドラー、ノースカロライナ州)と比較した。モデルの最適化を目的として、細胞培養プロセスランIVおよびVを設計した。
【0133】
JMPソフトウェアのカスタム設計ツールを使用して、細胞培養プロセスランVを設計した。3次の相互作用を考慮し、Iの最適形として、2つの連続的な変量(振盪スピードおよび実施体積)ならびに1つの絶対的な応答(ウェル形状)を伴うモデルを設計した。表2に従って(総ベッセル体積のうちの割合として挙げられた実施体積を用いて)、下限および上限を設定した。変量間の任意の非線形関係を説明するために2のべき乗となるよう、設計をカスタマイズした。最後に、実験当たり計15通りの条件(丸形ウェルを6つおよび角底ウェルを9つ)のランで2連となるように、研究を設計した。
【0134】
【表2】
【0135】
細胞バンクのバイアルを解凍した後、細胞培養プロセスラン1~5に対し振盪フラスコ中でそれぞれ9、10、7、0および7継代に拡大した種培養から得た細胞を使用して、全てのベッセルに生細胞5×10個/mLで接種した。5%CO、37℃、および80%相対湿度の制御された環境下、振盪インキュベーター中で細胞培養を維持した。対照の振盪チューブの条件を、各実験についてチューブ当たり10mLの一定の実施体積、45°の振盪角、および160RPMの撹拌として、ランした。全ての実験について(特段に述べない限り)、蒸発は、表3の通りに相当するものとした。
【0136】
【表3】
【0137】
細胞培養プロセスランIに用いるために、丸底深型ウェルプレートに生細胞5×10個/mLおよび生細胞1×10個/mLで接種した。接種後1日目の開始で、培養を毎日サンプリングし(10μL)、2日間、手作業の計数(トリパンブルー排除)によって生細胞密度(VCD)を決定した。
【0138】
細胞培養プロセスランIIに用いるために、播種後1日目の開始で、培養を毎日サンプリングし(10μL)、11日間、手作業の計数によってVCDを決定した。細胞の計数後、プレートを~233×gで5分間遠心分離し、使用済みの培地を除去した。表4に記載の比率で、培養培地を交換した。
【0139】
丸底(1mL)深型ウェルプレートおよび角底(2mL)深型ウェルプレートを、細胞培養プロセスランIIIおよびIVに使用した。接種後1日目に始めて、培養を毎週月曜日、水曜日および金曜日にサンプリングし(2-2-3スケジュール)(10μL)、Cellometer(登録商標)Auto1000によってVCDを決定した。細胞を計数した後、プレートを~233×gで5分間遠心分離して、使用済みの培地を取り出した。表4に記載の比率で培養培地を交換した。
【0140】
細胞培養プロセスランVに用いるために、Biomek3000液体操作機を使用した。接種後1日目に始めて、培養を毎週月曜日、水曜日および金曜日にサンプリングし(0.10×実施体積)、Cellometer(登録商標)Auto1000によってVCDを決定した。細胞の計数後、プレートを~233×gで5分間遠心分離して、取り出した使用済みの培地を直ちに使用するか、または、生産力価を決定するため組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(rhα-Gal)活性のアッセイを実施するまで、-80℃で保存した。表5に記載の比率で培養培地を交換し、下記の数式1および2を使用して、rhα-Galの体積当たりおよび比生産速度を算出した。さらに、下記の数式3を使用して、累積生細胞密度(IVCD)を算出した。
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
VPR=力価PR 数式1
【0144】
【数1】
【0145】
【数2】
【0146】
PR:灌流速度
VPR:体積当たり生産速度(U/L/d)
力価:rhα-Gal活性(U/L)
SPR:比生産速度(U/E9細胞/d)
Xv:生細胞計測数(E6細胞/mL)
IVCD:累積生細胞密度(細胞-d/mL)
T:時間(日)
【0147】
手作業の細胞計数
血球計算盤およびカバースリップを、イソプロピルアルコール(IPA)で清掃した。カバースリップの隅をIPAで湿らせ、血球計算器に貼り付けた。細胞試料を、0.4%トリパンブルーと1:1で均一に混合した。10μLのアリコートを血球計算盤に移した。大きい方の外側の4つの正方形で細胞を計数した:外側の大きな正方形のそれぞれは、16個のさらに小さな正方形の格子を含んでいた。大きい方の正方形の境界上にある細胞を、4辺のうち2辺についてのみ計数した。着色していない細胞を生きたものとして計数すると共に、青で染色されたものを死んだものとみなした。下記の数式4および5を使用して、生存率および生細胞密度を算出した。
【0148】
【数3】
【0149】
【数4】
【0150】
総細胞:生細胞と死細胞との和
【0151】
Nexcelom Cellometerによる細胞の計数
細胞試料を0.2%トリパンブルーと1:1で均一に混合した。20μLの混合液のアリコートを、装置専用のスライドに移した。装置に組み入れられたデジタルカメラによって取り込まれた4つのイメージで、細胞を計数した。着色していない細胞を生きたものとして計数すると共に、青で染色されたものを死んだものとみなした。
【0152】
統計解析
JMPソフトウェアを使用して、統計解析を実施した。使用した応答は、最大化された望ましさを伴うピーク生細胞密度(VCDまたはX)および体積当たり生産速度(VPR)であった。効果スクリーニングレポートを用いて、「Fit Model」機能によって統計モデルを評価した。「Sorted Parameter Estimates
」によって、t検定により統計的に決定された応答変量を有意にもたらす要素が報告された。最後に、「Prediction Profiler」によって、応答変量に関するパラメータの効果の独立傾向がプロットされ、そのモデルを使用し、望ましさ関数を最大化することによって、最良の条件が予測された。
【0153】
結果
細胞培養プロセスランI
この実験では、バイアルの解凍後27日目に、rhα-Gal CHO細胞株(CD CHO培地中)を使用して、3つの異なる条件下で(表6)ベッセルに接種した。細胞培養増殖のプロファイルを11日間にわたって追跡した。
【0154】
【表6】
【0155】
CD CHO培地で11日間維持した培養の生細胞密度のプロファイルを図5に示す。全ての実験培養で成長が観察された。細胞5×10個/mLで播種した細胞について、両方の実施体積(200μLおよび300μL)で最小限の成長があり、VCDは細胞1×10個/mLに達した。このことは、細胞が、丸底深型ウェルプレートにて、低い播種密度で成長することが可能であることを示唆する。細胞1×10個/mLで播種された培養はまた、2日目までに成長を示し、この培養には、成長がさらに良好な0.5RVで、1日に2回再供給された(図6)。1日に2回再供給された培養は、2日目に細胞2×10個/mL超のVCDに達した:200μLで細胞2.7×10個/mL、300μLで細胞2.3×10個/mLであった。およそ1.0RV/日で再供給された培養は、2日目にVCDがさらに非常に低かったが、これは、使用済みの培地を取り出す間の意図しない細胞の損失に起因する可能性もあった。これらのデータは、2×0.5RV/日の灌流速度が、灌流速度1.0RV/日よりも良好な細胞成長を可能にするということを示す。これらのデータは、丸底1mL96ウェル深型プレートが、細胞成長を支持することが可能であることを示唆する。実験を通じて、培養物を振盪インキュベーターから直ちに取り出す際に、小さな細胞ペレットを含むことが観察されたが、これは恐らくは不十分な撹拌のためである。この観察は、さらに高い撹拌スピードを丸底1mL深型ウェルプレートに使用するべきであるということを示唆する。
【0156】
細胞培養プロセスランII
丸底(1mL)96ウェル深型プレートで細胞を培養するのに使用する灌流速度を最適化するために、一連の実験を実施した。これらの実験では、CD CHO培地中のrhα-Gal細胞(バイアルの解凍後30日目)を使用して、丸底96ウェル深型プレートのウェルおよび振盪チューブに接種した(表7に記載の通り)。細胞培養の実績を、11日間バッチ再供給プロセスにて評価した。
【0157】
【表7】
【0158】
全ての培養は、85%超の細胞の生存率を維持した(図7)。CD CHO培地で維持された細胞の11日間培養の生細胞密度のプロファイルを図8に示す。実験対照(振盪チューブ培養)の細胞の成長が、細胞25×10個/mLのピーク密度でプラトーとなった9日目までに、全ての培養で成長が観察された。丸底96ウェル深型プレートでの培養は、実験対照よりも遅い成長速度を示し、細胞8×10個/mLでピークVCDに達した。8日目に、蒸発による損失を考慮して、培地のボーラス(50μL)を丸底96ウェル深型プレート培養に添加した。
【0159】
丸底96ウェル深型プレートについてのこれらのデータは、再供給スケジュールを調整するべきであることを示唆する。修正した再供給スケジュールを図9および表3に示す。
【0160】
細胞培養プロセスランIII
丸底96ウェル深型プレートで細胞を培養するのに使用する再供給割合を最適化するために、一連の実験を実施した。これらの実験を、1mL丸底および2mL角底の両方の96ウェル深型プレート、ならびに図9に示す修正した再供給割合プロトコールを使用して実施した。バイアルの解凍後8日目に、CD CHO培養培地中のrhα-Gal細胞を使用して、深型ウェルプレートと振盪チューブの両方のタイプに接種した(表8を参照されたい)。角底96ウェル深型培養は、300μLまたは500μLの培養体積を含有し、一方、丸底96ウェル深型培養は、200μLまたは300μLの培養体積を含有した(1mL呼び体積)。Applikonシステムを使用するか、またはAeraSeal膜を使用するかのどちらかで、ウェルを密封した。96ウェル深型プレート培養の全てを、330RPMまたは360RPのどちらかで撹拌した。細胞培養の成長を9日間にわたって測定した。96ウェル深型プレート培養についての全ての生細胞の計数を、3連のウェルで計数し、平均した。
【0161】
15日間細胞培養の生細胞密度プロファイルを図10に示す。Applikonシステムを使用して覆うか、またはディスポーザブル膜シールを使用して覆った角底96ウェル深型プレート培養では、同様の成長プロファイルが示された(互いの1標準偏差(1SD)以内に存在した)。96ウェルプレート方式での最高生細胞密度は、細胞35×10個/mLの生細胞密度であり、その密度は、角底96ウェル深型プレートで15日目に達成された。対照の振盪チューブ培養で達成された最高生細胞密度は、10日目の細胞21×10個/mLであった。角底96ウェル深型プレート培養はまた、13日目まで、対照の振盪チューブ培養の成長プロファイルによく似ていた。しかし、角底96ウェル深型プレート培養は、15日間プロセス全体の間、従来の振盪チューブ対照(n=11)に類似した。従来の振盪チューブ対照の培養に最もよく似た2つの角底96ウェル深型プレート培養では、ディスポーザブル膜カバーを使用し、330RPMで撹拌し、300μLまたは500μLの培養体積を有した。
【0162】
この実験における丸底96ウェル深型プレート培養は、対照振盪チューブ培養に匹敵する成長を示さなかった。丸底96ウェル深型プレート培養で観察された最高生細胞密度は、15日目の細胞14×10個/mLであった。全ての培養が、減衰期に入るまで85%超の細胞生存率を維持した(図11)。振盪チューブ対照とは異なり、両方のウェル形
状の培養が、14日を超えて増殖を続け、20日目に細胞50×10個/mL(角底)および細胞17×10個/mL(丸底)の生細胞密度に到達した(図12および13)。これらのデータは、丸底96ウェル深型プレートが、高い細胞密度を支持することが可能であるということを示す。
【0163】
【表8】
【0164】
細胞培養プロセスランIV
角底96ウェル深型プレート(2mL呼び体積)での細胞成長を最適化するために、追加の一連の実験を実施した。これらの実験では、バイアルの解凍後1日目に、CD CHO培養培地中の細胞を使用して、角底96ウェル深型プレートおよび振盪チューブに接種した(n=3)(表9を参照されたい)。これらの実験に使用した培養体積は、300μLまたは500μLであり、培養物を、320RPM、330RPM、または340RPMで撹拌した。培養における細胞成長を14日間にわたって評価した。培養についての生細胞の計数の全ては、3連のウェルから計数し平均した。
【0165】
【表9】
【0166】
14日間にわたる角底96ウェル深型プレート培養の生細胞密度のプロファイルを図1
4に示す。全ての試験条件について、7日目まで同様の成長プロファイルが示された。500μLの培養体積を有し、かつ320RPMまたは330RPMで撹拌された角底96ウェル深型プレート培養は、7日後に、さらに良好な細胞成長を示した。試験された全ての培養条件で、13日目を過ぎても増殖が続き、細胞30×10個/mLから細胞35×10個/mLの生細胞密度に到達したが、さらに良好な成長の実績があった2つの培養条件では、細胞40×10個/mL超の生細胞密度に到達した。500μLの培養体積および320RPMまたは330RPMの撹拌速度を有する角底96ウェル深型プレート培養で達成された生細胞密度は、12日目後に、同じ細胞株の振盪チューブでの培養で従来観察された生細胞密度を凌いだ(1標準偏差以内にある)。培養12日目まで、500μLの培養体積および320RPMまたは330RPMの撹拌速度を有する角底96ウェル深型プレート培養と、振盪チューブ培養とに、同様の成長パターンが観察された。
【0167】
細胞培養プロセスランV
細胞培養の稼働条件を最適化するために、さらに一連の実験を実施した(上記の実験方法の設計の記載を参照されたい)。これらの実験では、バイアルの解凍後21日目に、CD CHO中の細胞を使用して、角底もしくは丸底のどちらかの96ウェル深型プレート、または振盪チューブに接種した。各試験培養の稼働条件を表10に示す。試験した96ウェル深型プレートのそれぞれを、AeraSealディスポーザブル膜で覆った。振盪チューブ培養を対照(n=4)として用立てた:2本の振盪チューブ培養のセットは、対照の再供給スケジュールに従い、別の2本の振盪チューブ培養のセットは、96ウェル深型プレートで使用される修正した再供給割合に従った(図9に図示した)。全ての条件を2連で試験した。9日間バッチ再供給プロセスにて細胞成長を評価した。
【0168】
【表10】
【0169】
表10に挙げられたCD CHO培地中で維持された細胞の15日間培養の生細胞密度のプロファイルを、図15および16に示す。丸底96ウェル深型プレート培養は、本願の試験条件下の角底培養と同じような性能を示さなかった(それぞれ図15および図16)。丸底96ウェル深型プレートで到達した最高生細胞密度は、360RPMで撹拌され
た100μL培養では細胞20×10個/mLであった。角底96ウェル深型プレート培養は、細胞40×10個/mLに近いピーク生細胞密度を有する対照の振盪チューブ培養と比べて、それに匹敵する生細胞密度を有した(1標準偏差以内)(上記に記載の修正した再供給割合を使用した場合)。最も良好な角底96ウェル深型細胞培養の実績は、400μLの培養体積と320RPMまたは340RPMの撹拌を使用して達成され、15日目におよそ細胞50×10個/mLのピーク生細胞密度に達した。さらに、600μLの培養体積および340RPMの撹拌を有する角底96ウェル深型によって、13日目に細胞27×10個/mLもの細胞成長がもたらされ、また、細胞31×10個/mLのピーク生細胞密度に到達するという振盪チューブ対照培養(対照の再供給割合)に匹敵する結果が生じた。全ての試験培養で、85%超の生細胞率が維持された。振盪チューブの対照培養と96ウェル深型培養との累積生細胞密度の比較を図17および18に示す。
【0170】
CD CHO中で培養した細胞の15日間培養の体積当たり生産速度のプロファイルを、図19および20に示す。生細胞の成長に基づき予想した通り、丸底96ウェル深型プレートで成長させた培養は、生産性がより少なかった(図19)。丸底96ウェル深型プレートにて100μL培養培地中で、かつ320RPMの撹拌で成長させた培養は、15日目に、最高の体積当たり生産速度の22,000ユニット/L/日が観察された(図19)。しかし、それ以前の日では、同じ培養体積および撹拌を伴う丸底96ウェル深型プレート培養は、体積当たり生産速度(<5000ユニット/L/日)が低かった。近似の成長プロファイルを辿った角底96ウェル深型培養では、体積当たり生産速度の向上が観察された(図20)。匹敵する活性(15日までに40000ユニット/L/日)は、成長パターンが振盪チューブ培養によく似た培養(600μL体積を有しかつ340RPMで撹拌された角底培養)について観察された。成長に初発の遅れがあったものの結局は対照の振盪チューブ培養と同様のピーク生細胞密度を有した複数の培養(400μLの体積および340RPMの撹拌、または400μLもしくは600μLの体積および360RPMの撹拌を有する角底96ウェル深型培養)で、同様の体積当たり生産速度を13日目まで示した(およそ40,000ユニット/L/日の体積当たり生産速度に達した)。13日後、体積当たり生産速度は低下したが、400μLの体積で成長しかつ360RPMで撹拌された培養は例外であり、15日目までに体積当たり生産速度が60,000ユニット/L/日に達した。最も高い生産性は、400μLの体積を有しかつ320RPMで撹拌された角底96ウェル深型培養で観察され、15日目で67,000ユニット/L/日の体積当たり生産速度に到達した。
【0171】
100μLの体積で成長しかつ320RPMで撹拌されたか、または300μLの体積で成長しかつ360RPMの撹拌された培養を除いて、丸底96ウェル深型プレート培養の多くの条件が、対照の振盪チューブ培養と比べて、それに匹敵またはそれよりも低い比生産速度(SPR)を示した(図21)。これらの培養によって、15日目に、比生産速度が増加した。体積当たり生産速度が匹敵またはより高かった5通りの角底96ウェル深型プレート培養もまた、対照の振盪チューブ培養(1600ユニット/細胞1×10個/日)と比べて、それに匹敵またはそれよりも高い比生産速度を示した(図22)。
【0172】
収集したデータをJMPの実験設計に供して、統計解析に基づき、最も良い稼働条件を予測した。3つの応答:ピーク生細胞密度、ピーク体積当たり生産速度およびピーク比生産速度を使用して、最良の稼働条件を予測した。全ての応答制限を、結果を最大にするように設定した。まず、図23および24に示すように、データをモデルにフィットさせた。生細胞密度(図23)および体積当たり生産速度(図24)について収集したデータは、モデルによくフィットしている。統計解析(t検定)では、ウェル形状および実施体積が、生細胞密度および生産性の両方に有意に影響を及ぼし、その一方で、振盪スピードが、生産性のみに有意に影響を及ぼすことが明らかになった。
【0173】
JMPプロファイラーを使用して、最も良い稼働条件を予測した(図25)。解析に基づき、440μLの実施体積を用いかつ360RPMで撹拌された角底96ウェル深型プレートを使用した際に、最も良い細胞の実績が得られるべきである。標準偏差を考慮し、かつ同じ望ましさを維持すると、角底96ウェル深型プレートについての最良の稼働範囲は、約350μLから約550μLの間の実施体積であり、約320RPMから約360RPMの間の振盪スピードであった。
【0174】
まとめると、本データは、本願で提供する方法を、より大スケールの灌流バイオリアクター細胞培養のモデルとして使用することができることを示す(例えば、同様の時間枠にわたって同様の細胞密度を達成したことによって)。本願で提供する方法は、組織培養培地(および組織培養培地内の構成成分)のハイスループットスクリーニングに使用することができる。
【実施例2】
【0175】
培養培地をスクリーニングするための深型96ウェル培養方法の使用
本明細書に記載の深型96ウェル培養方法を使用して、様々に異なる組織培養を試験するために、さらに別の一連の実験を実施した。これらの実験では、モノクローナル抗体を生産する組換え哺乳動物細胞株(mAb生産細胞)または酵素を生産する組換え哺乳動物細胞株(酵素生産細胞)を使用して、角底96ウェル深型プレートに接種し、500μLの1つまたは少なくとも102通りの異なる組織培養培地中で、330RPMで撹拌しながら、細胞を1週間培養した。これらの実験の対照は、同じ96ウェル深型プレート、同じ培養培地、試料細胞株、およびCD CHO培地を使用して達成される生細胞密度であった。7日間にわたって、培養の生細胞密度と力価との両方を測定した。
【0176】
図26~29のデータは、本明細書に記載の深型96ウェル培養方法によって、異なる組織培養培地が生細胞密度および培養細胞の生産性に及ぼす効果をスクリーニングすることが可能であることを示す。
【0177】
他の実施形態
本発明が、その詳細な記載と併せて記載されている一方で、前述の記載は、説明を意図するものであって、添付の特許請求の範囲によって規定される、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。別の態様、利点および修正は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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