IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシーの特許一覧

特許7350827付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法
<>
  • 特許-付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法 図1
  • 特許-付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法 図2
  • 特許-付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法 図3
  • 特許-付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】付加方式で三次元プリントされた部品からの金属粒子漏出を軽減する方法及び、コリメータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20230919BHJP
   A61B 6/06 20060101ALI20230919BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230919BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20230919BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230919BHJP
【FI】
G01T7/00 B
A61B6/06 330
G01T1/161 C
B33Y50/00
B33Y10/00
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202122
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2022105985
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】17/141,773
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ヤンジュ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスワフ・クルザック
(72)【発明者】
【氏名】チャド・アラン・スミス
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/069950(WO,A1)
【文献】特表平11-513746(JP,A)
【文献】国際公開第2010/018617(WO,A1)
【文献】特表2007-504473(JP,A)
【文献】特開2018-188727(JP,A)
【文献】特開昭58-093292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-7/12
G21K 1/02
A61B 6/06
B22F 1/00-8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04-1/05
C22C 33/02
B33Y 50/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリント部品からの金属粒子漏出を軽減する方法であって、
1又は複数の材料から製造される付加製造部品を用意するステップであって、前記1又は複数の材料は金属を含んでおり、
前記付加製造部品から金属粒子が漏出しないように、前記付加製造部品の表面に被膜を施すステップと
を備え、
前記付加製造部品はイメージング・システムの構成要素を含んでおり、
前記付加製造部品はコリメータを含んでいる、方法。
【請求項2】
三次元プリントされたコリメータからの金属粒子漏出を軽減する方法であって、
1又は複数の材料から製造される付加製造部品である付加製造コリメータを用意するステップであって、前記1又は複数の材料は金属を含んでおり、前記付加製造コリメータは、イメージング・システムのX線源から放出されるビームにコリメーションを行なうように構成されており、
前記付加製造コリメータから金属粒子が漏出しないように、前記付加製造コリメータの表面に被膜を施すステップと
を備えた方法。
【請求項3】
前記イメージング・システムは計算機式断層写真法イメージング・システムを含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被膜は、二液型反応性ポリマー、一液型反応性ポリマー、又は非反応性ポリマーを含んでいる、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
三次元プリント部品からの金属粒子漏出を軽減する方法であって、
1又は複数の材料から製造される付加製造部品を用意するステップであって、前記1又は複数の材料は金属を含んでおり、
前記付加製造部品から金属粒子が漏出しないように、前記付加製造部品の表面に被膜を施すステップと
を備え、
前記被膜は、二液型反応性ポリマー、一液型反応性ポリマー、又は非反応性ポリマーを含んでおり、
前記付加製造部品はイメージング・システムの回転サブシステムに配置される、方法。
【請求項6】
前記被膜を施すステップは、架橋剤のモノマー又はオリゴマーを有する前記被膜を前記付加製造部品にコーティングして、化学的架橋を行なうことを含んでいる、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記被膜を施すステップは、ポリマー溶液を有する前記被膜を前記付加製造部品にコーティングして、蒸発又は溶融ポリマーの冷却を介して前記ポリマー溶液を固化することを含んでいる、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記被膜は熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含んでいる、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記被膜は、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリル酸、シアノアクリレート、シリコーン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ゴム、ポリビニルクロリド、フェノールホルムアルデヒド、ナイロン、及びポリアクリロニトリルの1又は複数を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被膜は純ポリマー又はポリマー配合物を含んでいる、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記被膜は、無機充填材、セラミック前駆体、又は金属微粒子を有するポリマー複合材を含んでいる、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記被膜を有する前記付加製造部品をパッシブ・クリーニングするステップを含んでおり、該パッシブ・クリーニングは、前記被膜のない前記付加製造部品をクリーニングするよりも控え目なクリーニングを含んでいる、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記被膜は、該被膜のない前記付加製造部品と比較して前記付加製造部品の機械的強度を増大させるように構成されている、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記被膜を施すステップは、前記付加製造部品を被膜に浸漬させるステップ、前記付加製造部品に被膜を吹き付けるステップ、又は被膜を刷毛塗りするステップを含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記付加製造部品は30マイクロメートルと300マイクロメートルとの間の薄さの壁を備える、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記被膜は、放射線遮蔽を増強するように構成されている重金属粉末を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記重金属粉末はタングステンを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
イメージング・システム用のコリメータの製造方法であって、
1又は複数の材料から付加製造三次元(3D)コリメータを用意するステップであって、前記1又は複数の材料は金属を含んでおり、当該付加製造3Dコリメータは、前記イメージング・システムのX線源から放出されるビームにコリメーションを行なうように構成されている、前記ステップと、
該付加製造3Dコリメータの表面に被膜を配設するステップと、
を含み、前記被膜は、前記付加製造3Dコリメータから金属粒子が漏出しないように構成されている、方法。
【請求項19】
前記被膜は、放射線遮蔽を増強するように構成されている重金属粉末を含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被膜は放射線透過性である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に開示される主題は、イメージング・システムに関し、さらに具体的には、イメージング・システムの部品であって付加方式で三次元(3D)プリントされた部品からの金属粒子漏出の軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージング・システム(例えば、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム)の幾つかの構成要素が、1又は複数の材料からプリントされ又は付加製造される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の材料の幾つかは、金属(例えば、金属粉末)を含み得る。遊離した又は不十分に付着した粉末粒子(例えば、金属粉末粒子)が、付加製造工程の性質のため、3Dプリント部品から溶出する場合がある。溶出したこれらの金属粒子は、CTスキャナの回転する性質のため、画像の欠陥又は他のイメージング構成要素の誤動作を招き得る。典型的なクリーニング手法(例えば、エアブロー、溶剤洗浄又は水洗浄、及び超音波クリーニング等)では、クリーニングが大掛かりであってもこれらの遊離粒子を完全に除去するのに実効的とは言えない(又は場合によってはこの漏出をさらに助長することもある)。例えば、イメージング・システムは、1又は複数のコリメータ・モジュール(例えば、付加製造コリメータ・モジュール)を含み得る。コリメータ・モジュールは広範囲の負荷(例えば、高速スピンもあれば低速回転もある)の下で用いられたり、振動(例えば、スキャナからの振動)を受けたりし得るので、遊離粒子が動き回って臨床画像に影響を及ぼしたり(例えば、粒子の密度のため)、他のイメージング構成要素に損傷を招いたりする(例えば、精密セラミック軸受に入り込むことにより)場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当初から請求される主題の範囲に沿った幾つかの実施形態を以下にまとめる。これらの実施形態は請求される主題の範囲を限定するためのものではなく、可能な実施形態の簡単な概要を掲げることのみを意図する。実際に、本発明は、以下に述べる実施形態と同様である場合も異なる場合もある多様な形態を包含し得る。
【0005】
一具現化形態では、三次元プリント部品からの金属粒子漏出を軽減する方法が提供される。この方法は、1又は複数の材料から製造される付加製造部品を用意するステップを含んでおり、この1又は複数の材料は金属を含んでいる。この方法はまた、付加製造部品から金属粒子が漏出しないように、付加製造部品の表面に被膜を施すステップを含んでいる。
【0006】
さらにもう一つの具現化形態では、三次元プリントされたコリメータからの金属粒子漏出を軽減する方法が提供される。この方法は、1又は複数の材料から製造される付加製造コリメータを用意するステップを含み、この1又は複数の材料は金属を含んでおり、付加製造コリメータは、イメージング・システムのX線源から放出されるビームにコリメーションを行なうように構成されている。この方法はまた、付加製造コリメータから金属粒子が漏出しないように、付加製造コリメータの表面に被膜を施すステップを含んでいる。
【0007】
さらにもう一つの具現化形態では、イメージング・システムが提供される。このイメージング・システムは、1又は複数の材料から製造される付加製造三次元(3D)コリメータを含み、この1又は複数の材料は金属を含んでおり、付加製造(3D)コリメータは、イメージング・システムのX線源から放出されるビームにコリメーションを行なうように構成されている。イメージング・システムはまた、付加製造3Dコリメータの表面に配設された被膜を含んでおり、この被膜は、付加製造3Dコリメータから金属粒子が漏出しないように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の各実施形態のこれら及びその他の特徴及び観点は、図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めばさらに十分に理解されよう。全図面を通して、類似の参照符号は類似の部品を表わす。
【0009】
図1】本開示の各観点によるCTシステムのブロック図である。
図2】本開示の各観点による被膜付き3Dプリント部品を製造する方法の実施形態の流れ図である。
図3】本開示の各観点による被膜付き3Dプリント部品(例えば、被膜付きコリメータ)の部分の実施形態の概略断面図である。
図4】本開示の各観点による図3の被膜付き3Dプリント部品を線4-4に沿って見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1又は複数の特定の実施形態について記載する。これらの実施形態を簡潔に記載する試みにおいて、実際の具現化形態の全ての特徴が明細書に盛り込まれているとは限らない。このようなあらゆる実際の具現化形態の開発時には、どの工学的プロジェクト又は設計プロジェクトとも同じく、開発者特有の目標を達成するために、具現化形態毎に異なり得るシステム関連の制約事項及び業務関連の制約事項を遵守する等のように、具現化形態特有の多くの決定を下さなければならないことを認められたい。また、かかる開発努力は複雑で時間が掛かるかもしれないが、それでも本開示の利益を得る当業者にとっては設計、製造、及び製品化の定型業務であることを認められたい。
【0011】
本発明の様々な実施形態の要素について述べるに当たり、単数不定冠詞、定冠詞、「該」、及び「前記」等の用語は、当該要素の1又は複数が存在することを意味するものとする。また「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」及び「有している(having)」の各用語は内包的であるものとし、また所載の要素以外に付加的な要素が存在し得ることを意味する。さらに、以下の議論でのあらゆる数値例は非限定的であるものとし、従って、付加的な数値、範囲、及び百分率は、開示される実施形態の範囲内にある。
【0012】
以下の議論の各観点は医療撮像の文脈で記載される場合があるが、本発明の手法はかかる医療的文脈に限定されないことを認められたい。実際に、かかる医療的文脈での実例及び説明の記載は、実世界での具現化形態及び応用の例を挙げることにより説明をわかりやすくするためだけのものである。しかしながら、本発明のアプローチはまた、(例えば、産業用では)製造部品又は製造物品の非破壊検査での撮像(すなわち品質管理応用又は品質審査応用)、並びに/又は小荷物、箱、及び手荷物等の非侵襲検査での撮像(すなわちセキュリティ応用又はスクリーニング応用)のような他の文脈でも用いられ得る。さらに、本発明のアプローチは、付加製造部品からの金属粒子の漏出を回避すると有益であり得るようなあらゆる応用に用いられ得る。一般的には、本発明のアプローチは、付加製造が用いられるあらゆる文脈において有用であろう。
【0013】
本開示は、三次元(3D)プリントされた又は付加製造された部品(例えば、イメージング・システムの部品)からの金属粒子漏出を軽減するシステム及び方法を提供する。具体的には、金属粒子の漏出を回避するために、プリント部品に被膜が施される。医療撮像の文脈では、プリント部品からの金属粒子の漏出の回避によって、画像の欠陥及び/又は他のイメージング構成要素の誤動作を回避し得る。幾つかの実施形態では、被膜は、プリント部品の特性又は作用(例えば、機械的強度、熱伝導性、及び表面仕上げ等)を改善し又は変化させるように微調整されてもよい(例えば、1又は複数の材料を含める)。被膜は、大掛かりなクリーニングの必要性を軽減し、このようにして、粒子残滓の発生及びプリント部品への損傷の両方を回避しつつプリント部品の製造完了までの時間を短縮することができる。
【0014】
以上の議論を念頭に置いた上で、図1は、画像データを取得して処理するイメージング・システム10であって、本開示の各観点に従って3D付加製造された又はプリントされた部品を利用し得るイメージング・システム10の実施形態を示す。以下の各実施形態は計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムに関して議論されるが、各実施形態を他のイメージング・システム(例えば、X線、PET、CT/PET、SPECT、及び核CT等)と共に用いることもできる。図示の実施形態では、システム10はX線投影データを取得し、投影データを断層画像として再構成して、この画像データを表示及び解析向けに処理するように設計された計算機式断層写真法(CT)システムである。CTイメージング・システム10は、1回の撮像の間に1若しくは複数の位置での且つ/又は1若しくは複数のエネルギ・スペクトルでのX線発生を可能にする1又は複数のX線管又は個体放出構造のような1又は複数のX線源12を含んでいる。
【0015】
幾つかの具現化形態では、線源12は、被検体24(例えば、患者)又は関心対象が配置された領域を透過する1又は複数のX線ビーム20の寸法及び形状を画定するのに用いられるコリメータ22に近接して配置され得る。被検体24は、X線の少なくとも一部を減弱させる。結果として生ずる減弱後のX線26は、複数の検出器素子によって形成された検出器アレイ28に入射する。各々の検出器素子は、X線ビームが検出器28に衝突したときに当該検出器素子の位置に入射したX線ビームの強度を表わす電気信号を発生する。電気信号は取得されて、1又は複数の走査データセットを生成するように処理される。
【0016】
システム制御器30が、検査プロトコル及び/又は較正プロトコルを実行して取得データを処理するようにイメージング・システム10の動作を命令する。X線源12に関して述べると、システム制御器30は、X線検査系列のために電力信号、焦点スポット位置信号、及び制御信号等を供給する。また、検出器28がシステム制御器30に結合されており、システム制御器30は検出器28によって発生される信号の取得を命令する。加えて、システム制御器30はモータ制御器36を介して、イメージング・システム10の構成要素及び/又は被検体24を移動させるのに用いられる線形配置サブシステム32及び/又は回転サブシステム34の動作を制御することもできる。システム制御器30は、信号処理回路及び関連するメモリ回路を含み得る。これらのような実施形態では、メモリ回路は、本書で議論されるステップ及び工程に従ってX線源12を含めたイメージング・システム10を動作させると共に検出器28によって取得されるデータを処理するためにシステム制御器30によって実行されるプログラム、ルーチン、及び/又は符号化されたアルゴリズムを記憶し得る。一実施形態では、システム制御器30は、汎用又は特定応用向けコンピュータ・システムのようなプロセッサ型システムの全体又は部分として具現化され得る。
【0017】
線源12は、システム制御器30に内蔵されたX線制御器38によって制御され得る。X線制御器38は、線源12に電力信号及びタイミング信号を供給するように構成され得る。加えて、幾つかの実施形態では、X線制御器38は、システム10内部で相異なる位置にある管又は放出器が互いに同期して又は互いに独立に動作し得るように、線源12を選択的に動作させるように構成されていてもよい。
【0018】
システム制御器30は、データ取得システム(DAS)40を含み得る。DAS40は、検出器28からのサンプリングされたアナログ信号のような検出器28の読み出し電子回路によって収集されたデータを受け取る。次いで、DAS40は、コンピュータ42のようなプロセッサ型システムによる後続の処理のためにデータをディジタル信号へ変換することができる。他の実施形態では、データ取得システム40への送信前に、検出器28が、サンプリングされたアナログ信号をディジタル信号へ変換してもよい。コンピュータは、処理回路44(例えば、画像処理回路)を含み得る。コンピュータ42は、当該コンピュータ42によって処理されたデータ、コンピュータ42によって処理されるべきデータ、又はコンピュータ42のプロセッサ(例えば、処理回路44)によって実行される命令を記憶し得る1又は複数の非一過性メモリ・デバイス46を含み、又はかかるデバイスと連絡し得る。例えば、コンピュータ42の処理回路44は、コンピュータ42のメモリ、プロセッサのメモリ、又はファームウェア等であってよいメモリ46に記憶された1又は複数の命令セットを実行し得る。
【0019】
コンピュータ42はまた、システム制御器30によって可能となる特徴(すなわち走査の動作及びデータ取得)を、操作者によって操作者ワークステーション48を介して与えられる命令及び走査パラメータに応答する等で制御するように構成されていてもよい。システム10はまた、操作者ワークステーション48に結合された表示器50であって、関連するシステム・データ、撮像パラメータ、生の(raw)撮像データ、及び再構成されたデータ等を操作者が観察することを可能にする表示器50を含んでいてもよい。加えて、システム10は、操作者ワークステーション48に結合されており任意の望まれる測定結果をプリントするように構成されているプリンタ52を含み得る。表示器50及びプリンタ52はまた、コンピュータ42に直接又は操作者ワークステーション48を介して接続され得る。さらに、操作者ワークステーション48は、画像保管通信システム(PACS)54を含み又はPACS54に結合され得る。PACS54は、異なる位置の第三者が画像データにアクセスし得るように、遠隔システム56、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、又は内部網若しくは外部網に結合され得る。
【0020】
図2は、被膜付き3Dプリント部品を製造する方法58の実施形態についての流れ図である。方法58は、3Dプリント部品を付加製造する又は付加製造3Dプリント部品を用意するステップを含んでいる(ブロック60)。プリント部品は、1又は複数の材料で作製され得る。これらの材料は、部品に応じて1又は複数の異なる金属(例えば、金属粉末)を含み得る。幾つかの実施形態では、部品はイメージング・システム(例えば、イメージング・システム10)の構成要素であってよい。例えば、部品は、フレーム、回路、コリメータ、又は他の任意の付加製造され得る構成要素であってよい。プリント部品は任意の付加製造手法(例えば、レーザ粉末床溶融結合、光重合、材料噴射、結合剤噴射、材料押出し、シート積層、及び指向性エネルギー堆積等)を介して付加製造され得る。
【0021】
方法58はまた、プリント部品をクリーニングするステップを含んでいる(ブロック62)。典型的には、被膜が存在しない場合にはプリント部品に大掛かりなクリーニングを繰り返し行なうが、時間が掛かり、且つ粒子残滓が残る(何日もかけてクリーニングしても)。加えて、大掛かりなクリーニングはプリント部品に物理的損傷を与える場合がある。大掛かりなクリーニングは、圧縮空気クリーニング及びブローイング、溶剤式若しくは水式クリーニング、超音波クリーニング、又は濾過ユニットの付加を含み得る。被膜が存在する場合には、プリント部品のクリーニングは、無被膜のプリント部品に比較して控え目でよい。例えば、被膜の施工前にパッシブ・クリーニングを用いることができる。パッシブ・クリーニングは、機械的振動又は粉末除去(デパウダー)を含み得る。
【0022】
方法58はまた、被膜を準備するステップを含んでいる(ブロック64)。被膜を準備するステップは、被膜の組成に応じて塗工可能な状態にする(例えば、必要に応じて混合する)といった単純なものであってよい。例えば、被膜は材料の混合物を含み得る。被膜は有機ポリマー又はポリマー複合材で作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、非反応性ポリマー、一液型反応性ポリマー、又は二液型反応性ポリマーで作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーで作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリル酸、シアノアクリレート、シリコーン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ゴム、ポリビニルクロリド、フェノールホルムアルデヒド、ナイロン、及びポリアクリロニトリルの1又は複数で作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、純ポリマー又はポリマー配合物で作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、無機充填材、セラミック前駆体、又は金属微粒子を含み得るポリマー複合材で作製され得る。幾つかの実施形態では、被膜は、応用に応じてプリント部品の特性又は作用(例えば、機械的強度、熱伝導性、及び表面仕上げ等)を改善し又は変化させるように微調整されてもよい(例えば、1又は複数の材料を含める)。例えば、被膜は、放射線遮蔽を増強するように構成されている重金属粉末(例えば、タングステン)を含み得る。
【0023】
方法58はさらに、プリント部品に被膜を施すステップを含んでいる(ブロック66)。例えば、被膜を施すステップは、プリント部品を被膜に浸漬させる手法、プリント部品に被膜を吹き付ける手法、被膜を刷毛塗りする手法、又は他の手法を含み得る。幾つかの実施形態では、架橋剤のモノマー又はオリゴマーを有する被膜をプリント部品の表面にコーティングした後に、化学的架橋を行なうことができる。幾つかの実施形態では、プリント部品の表面にポリマー溶液をコーティングした後に、蒸発又は溶融ポリマーの冷却を介してポリマー溶液を固化させることができる。典型的には、被膜は、プリント部品の表面から、金属粒子が漏出する可能性があるあらゆる位置にまで浸透する液体であってよく、硬化又は固化の後には粒子が移動しないようにすることができる。被膜は、個々のプリント部品に別個に施されてもよいし、多数のプリント部品に同時に施されてもよい。
【0024】
図3は、被膜付き3Dプリント部品の部分の概略断面図である。図示のように、図3は、3Dプリント部品68と、3Dプリント部品68の表面に配設された被膜70とを含んでいる。上で述べたように、3Dプリント部品68は、金属粒子を含む任意の形式のプリント部品であってよい。例えば、プリント部品68は、イメージング・システム(例えば、イメージング・システム10)の任意の構成要素であってよい。例えば、プリント部品68は、フレーム、電子回路、コリメータ、又はイメージング・システムの他の構成要素であってよい。図3に示すように、プリント部品68は二次元(2D)コリメータである。コリメータ用の被膜70の場合には、被膜70は殆ど放射線透過性である(すなわち、被膜がコリメーションに関するコリメータの作用に影響を及ぼさない)。被膜70の厚み(例えば、数マイクロメートル)は、プリント部品68の幾何学的形状に影響がなく、またプリント部品68が公差を超過しないようなものとする。
【0025】
上で触れたように、被膜70は、応用に応じてプリント部品68の特性又は作用(例えば、機械的強度、熱伝導性、及び表面仕上げ等)を改善し又は変化させるように微調整されてもよい(例えば、1又は複数の材料を含める)。図4は、図3の被膜付き3Dプリント部品68を線4-4に沿って見た断面図である。図示のように、被膜70は、無機充填材、セラミック前駆体、又は金属微粒子72を含んでいる。幾つかの実施形態では、被膜70は、プリント部品68が図3及び図4のようなコリメータである場合には、放射線遮蔽を増強する重金属粉末(例えば、タングステン)を含んでいる。
【0026】
コリメータのような幾つかのプリント部品は、殆どの壁が極めて薄い(例えば、近似的に30マイクロメートルと300マイクロメートルとの間)ので極めて脆い。コリメータの場合には、(被膜が存在しないと)コリメータから遊離金属粒子が漏出してしまうような広範囲の負荷に晒される(例えば、高速スピンから低速回転に到るまで)。コリメータに被膜70を付加すると、コリメータの機械的強度及び靭性が増大する。例えば、プリントされたタングステン引張試験片(例えば、寸法が近似的に250ミリメートル(mm)長、23.7mm幅、及び1.82mm厚)は、引張強さ試験において最大負荷(N)が2753であり得る。しかしながら、第一のエポキシ系被膜及び第二のエポキシ系被膜でコーティングした同じ試験片は、それぞれ3613及び2954の最大負荷を有する。このように、被膜は、(コリメータのような)プリント部品の機械的強度を増大させる。
【0027】
本書で議論されているように、開示される主題の技術的効果は、付加製造された又はプリントされた3D部品(例えば、コリメータのようなイメージング・システムの構成要素)に被膜を設けることを含んでいる。プリント部品に施された被膜によって、プリント部品からの金属粒子の漏出が最小になり又は回避される。医療撮像の文脈では、プリント部品からの金属粒子の漏出を回避することにより、画像の欠陥及び/又は他のイメージング構成要素の誤動作を回避することができる。幾つかの実施形態では、被膜は、プリント部品の特性又は作用(例えば、機械的強度、熱伝導性、及び表面仕上げ等)を改善し又は変化させるように微調整されてもよい(例えば、1又は複数の材料を含める)。被膜は大掛かりなクリーニングの必要性を軽減し、このようにして、プリント部品の製造完了までの時間を短縮すると共に、粒子残滓の発生及びクリーニング時のプリント部品への損傷の両方を回避することができる。
【0028】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0029】
10 イメージング・システム
12 X線源
20 X線ビーム
22 コリメータ
24 被検体
26 減弱後のX線
28 検出器アレイ
30 システム制御器
32 線形配置サブシステム
34 回転サブシステム
36 モータ制御器
38 X線制御器
40 データ取得システム(DAS)
42 コンピュータ
44 処理回路
46 メモリ
48 操作者ワークステーション
50 表示器
52 プリンタ
54 画像保管通信システム(PACS)
56 遠隔システム
58 被膜付き3Dプリント部品を製造する方法
68 3Dプリント部品
70 被膜
72 無機充填材、セラミック前駆体、又は金属微粒子
図1
図2
図3
図4