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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】不焼成低カーボンマグクロれんが
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/047 20060101AFI20230919BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20230919BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230919BHJP
   C04B 35/66 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C04B35/047
B22D41/02 A
F27D1/00 N
C04B35/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021203849
(22)【出願日】2021-12-16
(65)【公開番号】P2023089385
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000138772
【氏名又は名称】株式会社ヨータイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】細川 智広
(72)【発明者】
【氏名】松岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 憲一
(72)【発明者】
【氏名】茂田 純一
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-205348(JP,A)
【文献】特開平11-322405(JP,A)
【文献】特開2007-182337(JP,A)
【文献】特開平01-305850(JP,A)
【文献】特開昭63-151660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/047
C04B 35/00
C04B 35/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素の含有量が2~10質量%であり、
酸化クロムの含有量が1.5~3.6質量%であり、
前記酸化クロムがマグネシアクロム化合物として添加されていること、
を特徴とする不焼成低カーボンマグクロれんが。
【請求項2】
前記炭素として、鱗状黒鉛を0.5質量%以上含有すること、
を特徴とする請求項1に記載の不焼成低カーボンマグクロれんが。
【請求項3】
酸化防止剤を含有すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の不焼成低カーボンマグクロれんが。
【請求項4】
前記酸化防止剤が金属Al、金属Si及びSiCのうちの少なくとも一つであること、
を特徴とする請求項3に記載の不焼成低カーボンマグクロれんが。
【請求項5】
硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを含有しないこと、
を特徴とする請求項1~4のうちのいずれかに記載の不焼成低カーボンマグクロれんが。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器の内張り用耐火物等として使用することができる不焼成マグクロれんがに関する。
【背景技術】
【0002】
マグクロれんがはマグネシア(MgO)と酸化クロム(Cr)を主原料とする耐火物であり、高温安定性や耐摩耗性に優れ、高い熱間強度を有することから、各種製鋼炉の内張り用耐火物として幅広く使用されている。
【0003】
また、溶融金属容器の内張り用耐火物としては、マグカーボンれんがも多用されている。マグカーボンれんがは炭素を含有していることからスラグに濡れ難く、優れた耐熱衝撃性に起因して剥離損傷が少なく、安定した耐用性を得ることができる。
【0004】
しかしながら、近年、これらの耐火物の使用環境は過酷化が進んでおり、耐用性向上のニーズから更なる高性能化が切望されている。
【0005】
これに対し、例えば、特許文献1(特開2019-073428号公報)においては、MgOを40~89.5質量%、Crを10~45質量%、及びAlを0.5~17質量%含有し、しかもFeの含有量が2質量%以下(0を含む。)であるマグクロれんが、が提案されている。
【0006】
上記特許文献1に記載のマグクロれんがにおいては、れんがの表面近傍では金属脱酸剤によってれんが成分中のFeがほぼ全量、さらにはCrも一部が還元されて金属化し、その結果として、れんが組織が崩壊して損耗が進行することから、Feの含有量を低減するとともにCrの含有量を抑制し、しかもAlを特定量含有することでマグクロれんがの耐還元性が大幅に改善される、とされている。
【0007】
また、特許文献2(特開2018-016515号公報)においては、CaOを0.3~3質量%及びSiOを0.4~3質量%を含有する電融マグネシアを65~97質量%、黒鉛を1~30質量%、並びに炭化珪素を1~6質量%含む耐火原料配合物を、有機バインダーとともに混練、成形した後、乾燥して得られるマグカーボンれんが、が提案されている。
【0008】
上記特許文献2に記載のマグカーボンれんがにおいては、CaO及びSiOをそれぞれ特定量含有する電融マグネシアは、特定量の炭化珪素(SiC)と併用すると、れんが使用時の高温下においてSiC+2CO→SiO+3Cの分解反応により生成したSiOとの反応が促進されて、MgO-CaO-SiO系の低融点物質を生成するため、気相酸化を抑制する効果が格段に向上する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-073428号公報
【文献】特開2018-016515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載のマグクロれんがには良好な耐還元性が付与されているものの、十分な熱間強度及び耐熱スポーリング性を発現させることが困難である。また、上記特許文献2に記載のマグカーボンれんがにおいては気相酸化が抑制されているものの、溶融金属容器の内張り用耐火物として十分な耐酸化性が得られているとは言い難く、耐食性も向上させる必要がある。
【0011】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、熱間強度及び耐熱スポーリング性に優れ、高い耐食性と耐酸化性を有することで良好な耐用性を発現する不焼成低カーボンマグクロれんがを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、不焼成低カーボンマグクロれんがの組成等について鋭意研究を重ねた結果、適量の炭素と酸化クロムを含有させること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、
炭素の含有量が2~10質量%であり、
酸化クロムの含有量が0.5~5質量%であること、
を特徴とする不焼成低カーボンマグクロれんが、を提供する。
【0014】
2質量%以上の炭素を含有させることで、炭素の高い熱伝導率等により、不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性及び熱間強度を向上させることができる。加えて、2質量%以上の炭素を含有させることで、不焼成低カーボンマグクロれんがと溶融スラグとの濡れ及び反応を抑制することができる。一方で、炭素の含有量を10質量%以下とすることで、当該炭素に起因する耐酸化性の低下を抑制することができる。
【0015】
また、0.5質量%以上の酸化クロムを含有させることで、不焼成低カーボンマグクロれんがの表面にクロムの酸化皮膜が形成され、優れた耐食性を発現させることができる。また、酸化クロムの含有量を5質量%以下とすることで、酸化クロムの還元に伴う容積変化に起因するれんが組織の崩壊を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがにおいては、前記炭素として、鱗状黒鉛を0.5質量%以上含有すること、が好ましい。鱗状黒鉛は高い熱伝導率と優れた分散性を有することに加えて比較的安価であり、不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性及び熱間強度を効率的に向上させることができる。
【0017】
また、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがにおいては、前記酸化クロムがマグネシアクロム化合物として添加されていること、が好ましい。酸化クロムがCrとして添加されると、酸化クロムの還元に伴う容積変化に起因するれんが組織の崩壊が進行するが、マグネシアクロム化合物(電融マグクロ)として添加することで、当該現象を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがにおいては、酸化防止剤を含有すること、が好ましく、前記酸化防止剤が金属Al、金属Si及びSiCのうちの少なくとも一つであること、がより好ましい。
【0019】
不焼成低カーボンマグクロれんがに金属Al粉を含有させることで、低温度域からの耐酸化性を向上することができる。また、金属Si粉又はSiCを含有させることで、高温度域の耐酸化性を向上することができる。
【0020】
更に、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがにおいては、硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを含有しないこと、が好ましい。硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムは化学結合を用いたバインダーであり、当該バインダーを用いた不焼成低カーボンマグクロれんがでは十分な耐用性を得ることができない。本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがは硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを含有していないことから、過酷な使用環境下に保持される用途であっても好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱間強度及び耐熱スポーリング性に優れ、高い耐食性と耐酸化性を有することで良好な耐用性を発現する不焼成低カーボンマグクロれんがを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがの代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0023】
本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがは、主成分をマグネシア(MgO)粒子とし、適量の炭素と酸化クロムを含有するものである。以下、主成分と各添加成分について詳細に説明する。
【0024】
(1)主成分(マグネシア)
不焼成低カーボンマグクロれんがにおいて、マグネシア粒子の含有量は70~90質量%とすることが好ましい。また、マグネシア粒子は粒度の異なるマグネシア原料を混合することが好ましい。異なる粒度のマグネシア原料を混合して使用することで、不焼成低カーボンマグクロれんがの耐食性と耐熱スポーリング性を損なうことなく、耐構造スポーリング性を高めることができる。
【0025】
マグネシア原料の種類は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、例えば、電融マグネシア、海水マグネシア及び天然マグネシア等を使用することができる。また、マグネシア原料の純度に関して、不純物による耐食性の低下や過焼結の影響を避けるために、95重量%以上の高純度のものを使用することが好ましい。
【0026】
(2)必須の添加成分
(2-1)炭素:2~10質量%
炭素は不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性及び熱間強度を向上させると共に、溶融スラグとの反応を抑制するために添加されている。
【0027】
2質量%以上の炭素を含有させることで、炭素の高い熱伝導率により、不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性及び熱間強度を向上させることができる。加えて、2質量%以上の炭素を含有させることで、不焼成低カーボンマグクロれんがと溶融スラグとの濡れ及び反応を抑制することができる。一方で、炭素の含有量を10質量%以下とすることで、当該炭素に起因する耐酸化性の低下を抑制することができる。
【0028】
添加する炭素の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の炭素材料を用いることができるが、鱗状黒鉛を用いることが好ましい。鱗状黒鉛は高い熱伝導率と優れた分散性を有することに加えて比較的安価であり、不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性及び熱間強度を効率的に向上させることができる。
【0029】
不焼成低カーボンマグクロれんがにおける鱗状黒鉛の含有量は、0.5質量%以上とすることが好ましい。鱗状黒鉛の含有量を0.5質量%以上とすることで、不焼成低カーボンマグクロれんがの種々の特性に及ぼす鱗状黒鉛の作用効果を十分に活用することができる。ここで、意図的に添加される炭素材料としては、その全てを鱗状黒鉛とすることがより好ましい。
【0030】
不焼成低カーボンマグクロれんがには結合剤としてレジンを添加するが、当該レジンには炭素が含まれており、製造工程を経ても不焼成低カーボンマグクロれんがには1.5~2.0質量%程度の炭素が残留する。当該残留炭素は、本発明の不焼成低カーボンマグクロれんがにおいて規定されている量(2~10質量%)の炭素に含まれる。
【0031】
(2-2)酸化クロム:0.5~5質量%
酸化クロムは、不焼成低カーボンマグクロれんがに優れた耐食性を付与するために添加される。
【0032】
0.5質量%以上の酸化クロムを含有させることで、使用時に不焼成低カーボンマグクロれんがの表面にクロムの酸化皮膜が形成され、優れた耐食性を発現させることができる。また、酸化クロムの含有量を5質量%以下とすることで、酸化クロムの還元に伴う容積変化に起因するれんが組織の崩壊を抑制することができる。
【0033】
酸化クロムの含有量は1.0~4.5質量%とすることが好ましく、1.5~4.0質量%とすることがより好ましい。酸化クロムの含有量のこれらの範囲とすることで、より確実に、耐食性の向上と組織破壊の抑制を達成することができる。
【0034】
酸化クロムはマグネシアクロム化合物として添加されていることが好ましい。酸化クロムがCrとして添加されると、酸化クロムの還元に伴う容積変化に起因するれんが組織の崩壊が進行するが、マグネシアクロム化合物(電融マグクロ)として添加することで、当該現象を抑制することができる。ここで、マグネシアクロム化合物として酸化クロムが添加されている場合、当該マグネシアクロム化合物の組成から酸化クロムの含有量を算出すればよい。
【0035】
(3)任意の添加成分
酸化防止剤
不焼成低カーボンマグクロれんがの酸化を防止するために、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤の添加量は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、所望の酸化特性に応じて適宜調整すればよいが、0重量%超7質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
酸化防止剤の種類も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の酸化防止剤を用いることができるが、金属Al、金属Si及びSiCのうちの少なくとも一つとすることが好ましい。これらの酸化防止剤は一種のみを用いてもよく、複数を同時に添加してもよい。
【0037】
不焼成低カーボンマグクロれんがに金属Al粉を含有させることで、低温度域からの耐酸化性を向上することができる。また、金属Si粉又はSiCを含有させることで、高温度域の耐酸化性を向上することができる。
【0038】
その他、フェノール樹脂等のバインダーを使用することができる。バインダーの種類や量は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、れんが用として公知の種々のバインダーを使用することができ、室温で液体であればレゾール型やノボラック型を使用することができる。バインダーの添加量は1~3重量%とすることが好ましい。バインダーの添加量を1重量%以上とすることで、良好な成形性が得られ、不焼成低カーボンマグクロれんがの強度を担保することができる。また、バインダーの添加量を3重量%以下とすることで、気孔率の増大を抑制し、耐食性の低下を防止することができる。
【0039】
(4)その他
硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムは含有しないことが好ましい。硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムは化学結合を用いたバインダーであり、当該バインダーを用いた不焼成低カーボンマグクロれんがでは十分な耐用性を得ることができない。硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを積極的に排除することで、過酷な使用環境下に保持される用途であっても好適に使用することができる不焼成低カーボンマグクロれんがを得ることができる。
【0040】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0041】
≪実施例≫
表1に実施例1~実施例9として示す割合で原料を調整し、高速ミキサーで混練し、230×230×85mmの形状において、真空プレスにより成形した。乾燥にはバッチ式ドライヤーを用い、最高温度200±10℃で8時間保持して本発明の実施例である不焼成低カーボンマグクロれんがを得た。表1の値は質量%を示し、「酸化クロム含有量(計算値)」は電融マグクロとして添加された酸化クロムの正味の含有量を示している。なお、酸化クロム単体として添加された場合は、当該添加量がそのまま「酸化クロム含有量(計算値)」となる。
【0042】
【表1】
【0043】
[評価]
得られた各不焼成低カーボンマグクロれんがについて、耐熱スポーリング性、耐食性、耐酸化性及び熱間強度を評価した。
【0044】
(1)耐熱スポーリング性
耐熱スポーリング性の評価はJIS R2657に基づく空冷法によって行った。温度条件は1200℃とし、最大10回の加熱冷却を行った。途中で剥落した場合は当該剥落時の操作回数を記録し、最後まで剥落しなかった場合は亀裂の深さを測定した。亀裂の深さは実施例1の値を100とする指数で表示した。得られた結果を表2に示す。なお、最後まで剥落しなかった場合について、評価を○とした。
【0045】
(2)耐食性
耐食性は回転ドラム侵食試験によって評価した。試験方法は次のとおりである。試験片をドラム内部に内張りし、酸素-プロパンバーナーを使用して1650 ℃で行った。侵食剤は、RHスラグ(スラグの塩基度はCaO/SiO=2)を投入した。1時間毎にスラグを交換しながら8時間保持し、これを3日間繰り返した。試験後、試料を稼働面に垂直な方向に切断し、損耗量を8点測定して平均損耗量を出した。平均損耗量は実施例1の侵食量を100とする指数で表示した。得られた結果を表2に示す。指数が小さいほど耐食性に優れることを示しており、当該指数が110以上となった場合の評価を×とした。
【0046】
(3)耐酸化性
40mm×40mm×114mmの試片を用いて、大気雰囲気下1500℃×3hで焼成後の酸化部分の面積を測定し、実施例1における面積を100とする指数で表示した。得られた結果を表2に示す。指数が小さいほど耐酸化性に優れることを示しており、当該指数が130以上となった場合の評価を×とした。
【0047】
(4)熱間強度
30mm×30mm×120mmの試片を、熱間曲げ試験装置を用いて熱間強度を測定した。1400℃の大気雰囲気下で三点曲げ(支点間距離80mm)を行った結果を数値(MPa)で表示している。得られた結果を表2に示す。数値が大きいほど熱間強度が高いことを示しており、4以下となった場合の評価を×、5の場合を△、6以上の場合を〇とした。
【0048】
【表2】
【0049】
≪比較例≫
表1に比較例1~比較例5として示す割合で原料を調整したこと以外は実施例と同様にして、不焼成低カーボンマグクロれんがを得た。ここで、比較例1についてのみ、トンネルキルン式焼成窯を用い、最高温度1750±10℃で焼成した。また、実施例と同様にして、各不焼成低カーボンマグクロれんがの耐熱スポーリング性、耐食性、耐酸化性及び熱間強度を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0050】
本発明の実施例については、実施例9を除く全ての不焼成低カーボンマグクロれんがで耐熱スポーリング性、耐食性、耐酸化性及び熱間強度の評価が〇となっている。実施例9においては熱間強度が△となっているが、これは酸化クロムをマグネシアクロム化合物(電融マグクロ)としてではなく、Crとして添加したため、当該Crの還元に伴うれんが組織の崩壊が僅かに進行したことが原因である。
【0051】
また、炭素(鱗状黒鉛)を添加していない比較例1及び比較例2では耐熱スポーリング性が極めて悪く、炭素の含有量が多過ぎる比較例3では耐酸化性が大幅に低下していることが分かる。
【0052】
また、酸化クロムが添加されていない比較例4では十分な耐食性が発現していない。ここで、酸化クロムを大量に含有する比較例5に関して、耐熱スポーリング性、耐食性、耐酸化性及び熱間強度については基準を満たしているが、大量に添加した酸化クロムの還元による組織の破壊が顕著に認められたため、総合評価が×となっている。
【0053】
以上の結果より、不焼成低カーボンマグクロれんがに良好な耐熱スポーリング性、耐食性、耐酸化性及び熱間強度を付与すると共に、酸化クロムの還元による組織の破壊を抑制するためには、適量の炭素及び酸化クロムの添加が極めて重要であることが分かる。