(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】人工ニューラル・ネットワークを用いた変調信号の復調方法、復調器、およびその変調システム
(51)【国際特許分類】
G06N 3/067 20060101AFI20230919BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20230919BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
G06N3/067
H04L25/03 Z
H04L27/00 Z
(21)【出願番号】P 2021521839
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 IB2019060294
(87)【国際公開番号】W WO2020128690
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-04-18
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】フォンペイリン、ジーン
(72)【発明者】
【氏名】アベル、シュテファン
【審査官】北川 純次
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0100213(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353266(US,A1)
【文献】国際公開第2018/167920(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/033921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/02-3/10
H04L 25/03
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの情報処理により変調信号を復調する方法であって、
変調信号を受信することであって、前記変調信号が、変調関数に従って変調された信号であり、前記変調関数が前記信号よりも速く変動し、前記変調関数が前記信号の関数である、前記受信することと、
受信した前記変調信号を、前記変調関数によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練された人工ニューラル・ネットワーク(ANN)システムを用いて、受信した前記変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調することと
を含み、さらに、
前記変調信号を受信する前に、前記変調関数に従って前記信号を変調して前記変調信号を獲得することと、
前記変調信号を受信し、続いて前記ANNシステムによって復調するために、獲得した前記変調信号を送信することと、
前記変調信号を復調した後に、復調された前記信号から獲得されたフィードバックに基づいて、前記変調関数を、次の変調信号の特性を適合させるように適合させることと、
適合させた前記変調関数に基づいて後続の信号を変調することと
を含む方法。
【請求項2】
前記信号がディジタル信号であり、
変調時に、前記変調信号を獲得するために、前記ディジタル信号によって記録されたそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期の間、前記信号がそれぞれ変調される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ディジタル信号を変調することが、
それぞれの前記離散値について、前記変調関数に従って、前記ディジタル信号の2つ以上の離散値に基づいて前記ディジタル信号を変調すること
を含み、前記離散値が、前記それぞれの離散値、および前記ディジタル信号の1つまたは複数の以前の離散値を含む、
請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記ディジタル信号を変調することが、ストリーミングされた前記ディジタル信号を変調器がオンザフライで変調するために、前記信号を前記変調器にストリーミングすることを含み、
送信することが、前記ANNシステムが受信した前記ストリーミングされた信号を前記ANNシステムがオンザフライで復調するために、前記変調信号を前記ANNシステムにストリーミングすることを含む、
請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
変換された信号を、前記ANNシステムが、前記変換された信号中の値のパターンからのビット値を識別することにより復調するために、受信した前記変調信号を離散信号に変換することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
送信時、前記変調信号が光学的に送信される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
受信される前記変調信号が光学信号であり、前記ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムの一部を形成しており、
前記方法が、結合された前記変調信号を、前記ANNが、結合された前記変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調するために、受信した前記変調信号を前記ANNに結合することをさらに含む、
請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
送信された前記信号が、前記フォトニック・コンピューティング・システムによって受信され、続いて復調されるように、光学的に送信される前に、前記信号が、電気-光学変調器を用いて変調される、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記信号を変調することが、前記信号を搬送している電磁場の振幅もしくは位相またはその両方を変調することを含む、
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
続いて1つまたは複数の変調信号が受信されるように、変調することが、前記変調関数に従って2つ以上の入力信号を変調して、1つまたは複数の変調信号を獲得するようにすることを含み、前記1つまたは複数の変調信号がそれぞれ前記入力信号よりも速く変動し、前記変調関数が前記入力信号の関数であり、
受信された前記1つまたは複数の変調信号が、前記ANNシステムを用いて、受信された前記1つまたは複数の変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記ANNシステムが、訓練可能なハードウェア・デバイスとして実装されており、
前記方法が、受信した前記変調信号を復調する前に、受信した前記変調信号によって記録された時間情報を、前記ANNシステムの入力層の1つまたは複数の入力ノード上にマップすることをさらに含み、前記ANNシステムが、1つまたは複数の出力ノードの出力層をさらに備え、前記入力層の前記入力ノードが、前記出力層の出力ノードに接続を介して接続されており、前記接続のうちの少なくとも一部が、調節可能な重み要素に関連づけられており、
前記ビット値を識別することが、前記出力ノードから信号を読み取ることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記変調信号が光学入力信号として受信され、
前記ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムの一部として実装されており、それによって、前記時間情報をマップすることが、前記光学入力信号を、前記リザバー・コンピューティング・システムの入力ノード上に結合することを含み、
前記入力ノードが、前記リザバー・コンピューティング・システムのリザバー層の光学リザバー・ノードを介して前記出力層の1つまたは複数の光学出力ノードに接続されており、
それぞれの前記光学出力ノードが、前記光学リザバー・ノードのうちの1つまたは複数の光学リザバー・ノードによって、対応するそれぞれの接続を介して接続されており、
前記対応するそれぞれの接続にはそれぞれ調節可能な重み要素が関連づけられている、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号を変調する前、前記信号がn値符号を符号化しており、nが2以上であり、前記信号を変調した後、前記変調信号がm値符号を符号化しており、mが厳密にnよりも大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変調関数によって生じた信号パターンからのビット値を前記ANNシステムが識別するために、前記ANNシステムを訓練することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
信号を復調するための復調器であって、
変調関数に従って変調された信号である変調信号を受信するように構成された入力ユニットであって、前記変調関数が前記信号よりも速く変動し、前記変調関数が前記信号の関数である、前記入力ユニットと、
人工ニューラル・ネットワーク(ANN)システムであって、受信した前記変調信号を前記入力ユニットが前記ANNシステムに結合するために、動作時に前記ANNシステムが前記入力ユニットに接続されており、前記ANNシステムが、前記変調関数によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練されており、受信した前記変調信号のパターンからのビット値を識別することにより、前記ANNシステムに結合された前記変調信号を復調するように構成されている、前記ANNシステムと
を備え、さらに、
前記変調信号を受信する前に、前記変調関数に従って前記信号を変調して前記変調信号を獲得する手段と、
前記変調信号を受信し、続いて前記ANNシステムによって復調するために、獲得した前記変調信号を送信する手段と、
前記変調信号を復調した後に、復調された前記信号から獲得されたフィードバックに基づいて、前記変調関数を、次の変調信号の特性を適合させるように適合させる手段と、
適合させた前記変調関数に基づいて後続の信号を変調する手段と
を備える復調器。
【請求項16】
前記ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムであり、前記リザバー・コンピューティング・システムが、動作時に、前記入力ユニットによって受信され、前記ANNシステムに結合された変調光学信号のパターンからのビット値を識別することにより、前記変調光学信号を復調するように適合されている、
請求項
15に記載の復調器。
【請求項17】
前記ANNシステムが、前記復調器内の訓練可能なハードウェア・デバイスとして実装されており、それによって、前記ANNシステムが、1つまたは複数の入力ノードの入力層と、1つまたは複数の出力ノードの出力層とを備え、前記入力ノードが、前記出力ノードに接続を介して接続されており、前記接続のうちの少なくとも一部が、調節可能な重み要素に関連づけられており、前記ANNシステムが、前記出力ノードから信号を読み取ることによりビット値を識別するように構成されている、
請求項
15に記載の復調器。
【請求項18】
前記ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムとして実装されており、前記リザバー・コンピューティング・システムが、前記リザバー・コンピューティング・システムのリザバー層の光学リザバー・ノードを介して前記出力層の1つまたは複数の光学出力ノードに接続された単一の入力ノードを備え、
それぞれの前記光学出力ノードが、前記光学リザバー・ノードのうちの1つまたは複数の光学リザバー・ノードによって、対応するそれぞれの接続を介して接続されており、
前記対応するそれぞれの接続にはそれぞれ調節可能な重み要素が関連づけられており、
前記入力ユニットが、前記変調信号を光学入力信号として受信し、前記光学入力信号を前記単一の入力ノードに結合するように構成されている、
請求項
17に記載の復調器。
【請求項19】
請求項1~
14の何れか1項に記載の方法をコンピュータ・ハードウェアによる手段として構成した、変調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、人工ニューラル・ネットワーク(artificial neural network)を使用した復調技法に関し、詳細には、光学リザバー・ネットワーク(optical reservoir network)として構成されたフォトニック・コンピューティング・システム(photonic computing system)に依存した技法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習は主に、人工ニューラル・ネットワーク(ANN)に依存しており、ANNは、人間または動物の脳の生体神経回路網に発想を得た計算モデルである。このようなシステムは、例を使用してタスクを累進的かつ自主的に学習する。このようなシステムは、例えば音声認識、テキスト処理およびコンピュータ・ビジョンに適用されて、成功を収めている。
【0003】
ANNは、接続された一組のユニットまたはノードを備え、それらは動物の脳の生体ニューロンに匹敵し、したがって人工ニューロンと呼ばれている。信号は、シナプスと同様の、人工ニューロン間の接続(エッジとも呼ばれる)に沿って伝送される。すなわち、信号を受信した人工ニューロンは、その信号を処理し、次いで接続されたニューロンに信号を送る。実施態様では、そのような接続に沿って伝達される信号がアナログの実数であり、人工ニューロンの入力の和の非線形関数によって、人工ニューロンの出力が計算される。フォトニック・ネットワークでは、信号を複素数として伝達することもできる。
【0004】
接続およびノードには通常、接続重み(シナプス重みとも呼ばれる)が関連づけられており、学習が進むにつれてそのような重みは調整される。それぞれのニューロンはいくつかの入力を有することができ、接続重みはそれぞれの入力の属性である(その特定の接続の重み)。そのような接続重みは、訓練段階中に訓練アルゴリズムによって学習され、それによって更新される。学習プロセスは反復的であり、ネットワークにはデータ・ケースが通常は1つずつ提示され、それらの入力値に関連づけられた重みが、時間ステップごとに調整される。
【0005】
フィードフォワード・ニューラル・ネットワークを始めとして、マルチレイヤ・パーセプトロン、ディープ・ニューラル・ネットワークおよび畳み込みニューラル・ネットワークなど、多くのタイプのニューラル・ネットワークが知られている。そのうえ、スパイキング・ニューラル・ネットワークなど、新たなタイプのニューラル・ネットワークも出現している。スパイキング・ニューラル・ネットワーク(SNN)は、例えば規則的な時間ステップで計算されるアナログ値とは異なり任意の時点で非同期で生じうる離散2値事象であることができるスパイクを使用して動作するため、通常のニューラル・ネットワークとはかなり異なる。すなわち、ニューロンおよびシナプス状態に加えて、SNNはさらに時間の概念を含む。すなわち、ニューロンは、例えばマルチレイヤ・パーセプトロン・ネットワークの場合のように伝搬サイクルごとに点火するのではなく、膜電位が特定の値に達したときにだけ点火する。SNNの文脈では、点火が、別のニューロンに到達する信号をニューロンが発生させることを意味し、この別のニューロンは、それらが他のニューロンから受信した信号に従ってその電位を増大または低減させる。
【0006】
密接に関係して、リザバー・コンピューティング・システムは、ある種のタスク、例えば分類目的または予測目的のタスク用の出力を訓練することにより、動力学的入力データ(dynamical input data)の解析を可能にする。通常は、固定されたランダムな動力学的システム(リザバー)に入力がフィードされ、リザバーの動力学が、より高い次元のシステムに入力をマップする。次いで、リザバーの状態を出力にマップするために、適当に訓練された読出し機構を使用してリザバーの状態を読み取る。それによって、リザバーが固定されている間は、読出し段階だけを訓練すればよい。主なタイプのリザバー・コンピューティングは、エコー・ステート・ネットワークおよびリキッド・ステート・マシンを含む(これらは、特定の種類のSNNとみなすことができる)。
【0007】
ニューラル・ネットワークは通常、ソフトウェア内に実装される。しかしながら、ニューラル・ネットワークを、例えば抵抗処理ユニットまたは光学ニューロモーフィック・システムとしてハードウェア内に実装することもできる。例えば、光学コンピューティング・システム(フォトニック・コンピューティング・システムとも呼ばれる)が知られており、これは、(例えばレーザまたはダイオードなどの光源によって生み出された)光子に依存して計算を実行する。例えば、光学コンピューティングに依存して、物体を検出もしくは追跡し、またはその両方を実行し、あるいはシリアル時間ドメイン光学データを分類する、光学相関器などの特定用途向けデバイスが提案されている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、変調された信号(以後、変調信号)を復調する方法として実施される。一態様では、この方法が、変調信号を受信することを含み、変調信号は、変調関数(modulation function)に従って(時間ドメインで)変調された信号であり、変調関数はこの信号よりも速く変動する。変調関数はこの信号の関数である。すなわち、この信号を、変調関数の変数(すなわち引数または入力)とみなすことができる。受信した変調信号は、変調関数によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練された人工ニューラル・ネットワーク・システムないしANNシステムを用いて、受信した変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調される。
【0009】
この手法は、受信した信号を(例えば受信したストリーム上で直接に)、信号によって記録されたビット・シーケンスのビット速度よりも速い速度で復号することを可能にする。使用される速度が攻撃者に知られていないため、この手法は、適正に訓練されたシステムなしでビット・シーケンスを再構成することを事実上不可能にする。これによって、符号化速度および初期ビット速度が攻撃者に知られていないこと以外に、符号化された信号の分解能を、攻撃者が使用する物理検出デバイスの時間分解能よりも小さくすることができ、このことは、そのデバイスが検出することを不可能にする。
【0010】
実施形態では、この方法が、変調信号を受信する前に、前記変調関数に従ってこの信号を変調して前記変調信号を獲得することと、変調信号を受信し、続いてANNシステムによって復調するために、獲得した変調信号を送信することとをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、変調される信号がディジタル信号であり、変調信号を獲得するために、ディジタル信号によって記録されたそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期の間、この信号がそれぞれ変調される。したがって、変調信号は初期信号のそれぞれの離散値に対応する時間間隔内の変動(または振動)を示すことができ、それのため、結果として生じる変調パターンは、基礎をなすビット・シーケンス(生ビット速度)よりも速く変動し、初期ディジタル信号のそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期に対してこのとおりである。
【0012】
いくつかの実施形態では、この変調が、それぞれの前記離散値について、前記変調関数に従って、ディジタル信号の2つ以上の離散値に基づいて前記ディジタル信号を変調することを含み、これらの離散値は、前記それぞれの離散値、およびディジタル信号の1つまたは複数の以前の離散値を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ディジタル信号を変調することが、ストリーミングされたディジタル信号を変調器がオンザフライ(on the fly)で変調するために、この信号を変調器にストリーミングすることを含み、送信することが、ANNシステムが受信したストリーミングされた信号をANNシステムがオンザフライで復調するために、変調信号をANNシステムにストリーミングすることを含む。変形実施形態では、復調が、ストリーミング・モードで実行され、変調が、バッファされた方式で実行される。
【0014】
実施形態では、この方法が、変換された信号を、ANNシステムが、変換された信号中の値のパターンからのビット値を識別することにより復調するために、受信した変調信号を離散信号に変換することをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、変調信号が光学的に送信される。
【0016】
いくつかの実施形態では、受信される変調信号が光学信号であり、ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムの一部を形成している。その場合、この方法は、結合された変調信号を、ANNが、結合された変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調するために、受信した変調信号をANNに結合することをさらに含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、送信された信号が、フォトニック・コンピューティング・システムによって受信され、続いて復調されるように、光学的に送信される前に、この信号が、電気-光学変調器を用いて変調される。
【0018】
実施形態では、この信号を変調することが、この信号を搬送している電磁場の振幅もしくは位相またはその両方を変調することを含む。
【0019】
実施形態では、続いて1つまたは複数の変調信号が受信されるように、変調することが、変調関数に従って2つ以上の入力信号を変調して、1つまたは複数の変調信号を獲得するようにすることを含み、この1つまたは複数の変調信号はそれぞれ入力信号よりも速く変動し、変調関数は入力信号の関数である。すなわち、変調信号は、変調後に(受信側で)受信されるが、このような信号は例えば、並列に変調することができ、したがって、多数の並列送信チャネルを使用したときには並列に受信することができる。しかしながら、変形実施形態では、変調信号を逐次的に送信することができる。全ての場合に、受信された1つまたは複数の変調信号は(例えば変調信号の受信と同時にまたは変調信号の受信の後に)、ANNシステムを用いて、受信された1つまたは複数の変調信号のパターンからのビット値を識別することにより復調される。
【0020】
いくつかの実施形態では、ANNシステムが、訓練可能なハードウェア・デバイスとして実装されており、この方法が、受信した変調信号を復調する前に、受信した変調信号によって記録された時間情報を、ANNシステムの入力層の1つまたは複数の入力ノード上にマップすることをさらに含む。ANNシステムは、1つまたは複数の出力ノードの出力層をさらに備える。入力層の入力ノードは、出力層の出力ノードに接続を介して接続されている。これらの接続のうちの少なくとも一部は、調節可能な重み要素に関連づけられている。変調信号を復調し、それによってビット値を識別するために、ANNシステムは、前記出力ノードから信号を読み取る。
【0021】
変調信号は例えば、光学入力信号として受信することができる。そのような場合には、ANNシステムを、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムの一部として実装することができ、それによって、前記時間情報をマップすることは、前記光学入力信号を、リザバー・コンピューティング・システムの入力ノード上に結合することを含む。入力ノードは、リザバー・コンピューティング・システムのリザバー層の光学リザバー・ノードを介して出力層の1つまたは複数の光学出力ノードに接続されている。それぞれの前記光学出力ノードは、光学リザバー・ノードのうちの1つまたは複数の光学リザバー・ノードによって、対応するそれぞれの接続を介して接続されている。前記対応するそれぞれの接続にはそれぞれ調節可能な重み要素が関連づけられている。
【0022】
実施形態では、信号を変調する前、前記信号がn値符号を符号化しており、nが2以上であり、信号を変調した後、変調信号がm値符号を符号化しており、mが厳密にnよりも大きい。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法が、変調関数によって生じた信号パターンからのビット値をANNシステムが識別するために、ANNシステムを訓練することをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法が、変調信号を復調した後に、復調された信号から獲得されたフィードバックに基づいて、変調関数を、次の変調信号の特性を適合させるように適合させることと、適合させた変調関数に基づいて後続の信号を変調することとをさらに含む。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、信号を復調するための復調器として実施される。この復調器は特に、変調関数に従って変調された信号である変調信号を受信するように構成された入力ユニットであって、変調関数がこの信号よりも速く変動し、変調関数がこの信号の関数である、入力ユニットを備える。この復調器はさらに、ANNシステムであって、受信した変調信号を入力ユニットがANNシステムに結合するために、動作時にANNシステムが入力ユニットに接続されている、ANNシステムを備える。本発明の方法と一貫して、ANNシステムは、変調関数によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練されていると仮定され、ANNシステムは、動作時に、ANNシステムが受信した変調信号のパターンからのビット値を識別することにより、ANNシステムに結合された変調信号を復調するように構成されている。
【0026】
実施形態では、ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムであり、リザバー・コンピューティング・システムは、動作時に、入力ユニットによって受信され、ANNシステムに結合された変調された光学信号(以後、変調光学信号)のパターンからのビット値を識別することにより、変調光学信号を復調するように適合されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、ANNシステムが、復調器内の訓練可能なハードウェア・デバイスとして実装されている。ANNシステムは、1つまたは複数の入力ノードの入力層と、1つまたは複数の出力ノードの出力層とを備え、入力ノードは、出力ノードに接続を介して接続されており、これらの接続のうちの少なくとも一部は、調節可能な重み要素に関連づけられている。そうでなければ、ANNシステムは、前記出力ノードから信号を読み取ることによりビット値を識別するように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、ANNシステムが、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムとして実装されており、リザバー・コンピューティング・システムは、リザバー・コンピューティング・システムのリザバー層の光学リザバー・ノードを介して出力層の1つまたは複数の光学出力ノードに接続された単一の入力ノードを備える。それぞれの光学出力ノードは、光学リザバー・ノードのうちの1つまたは複数の光学リザバー・ノードによって、対応するそれぞれの接続を介して接続されている。対応するそれぞれの前記接続にはそれぞれ調節可能な重み要素が関連づけられている。最後に、入力ユニットは、前記変調信号を光学入力信号として受信し、光学入力信号を単一の入力ノードに結合するように構成されている。
【0029】
別の最後の態様によれば、本発明は、信号を変調および復調するための変調システムとして実施される。このシステムは、最初に、変調関数に従って信号を変調して変調信号を獲得するように構成された変調器を備える。この場合も、変調関数はこの信号の関数であり、この関数はこの初期信号よりも速く変動する。このシステムはさらに、変調器によって獲得された変調信号を送信するために変調器に動作可能に接続された送信ユニットと、上で説明したものなどの復調器とを備え、入力ユニットは、動作時に、送信ユニットによって送信された変調信号を受信するように構成されている。
【0030】
実施形態では、変調される信号がディジタル信号であると仮定され、変調器は、変調信号を獲得するために、ディジタル信号によって記録されたそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期の間、ディジタル信号をそれぞれ変調するように構成されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、変調器がさらに、それぞれの前記離散値について、前記変調関数に従って、ディジタル信号の2つ以上の離散値に基づいて前記ディジタル信号を変調するように構成されており、離散値が、前記それぞれの離散値、およびディジタル信号の1つまたは複数の以前の離散値を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、変調器が、ストリーミングされた信号をオンザフライで変調するように適合されており、さらに、ANNシステムが、ANNシステムが受信した変調信号をオンザフライで復調するように構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、変調器およびANNシステムがそれぞれフォトニック・コンピューティング・システムである。
【0034】
次に、本発明を実施する装置、コンピュータ化されたシステムおよび方法を、非限定的な例によって、添付図面を参照して説明する。
【0035】
添付図では、別々の図の全体を通じて、同じ参照符号が、同一のまたは機能的に同等の要素を指し、添付図は、以下の詳細な説明とともに、本明細書に組み込まれており、本明細書の一部を構成し、添付図は、本開示に従って、さまざまな実施形態をさらに図解し、さまざまな原理および利点を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態による、信号を変調および復調する方法の高次ステップを示す図である。
【
図2B】変調関数を用いて
図2Aの入力信号を変調した後に獲得される合成信号の一例を示す図である。
【
図2C】
図2Aの初期シーケンスをより高度な置換スキームに基づいて変調することにより獲得された変調離散信号の例を示す図である。
【
図2D】
図2Aの初期シーケンスをより高度な置換スキームに基づいて変調することにより獲得された変調離散信号の別例を示す図である。
【
図3B】アナログ信号パルスに対応するディジタル信号を示す図である。
【
図3D】アナログ信号パルスに対応するディジタル信号を示す図である。上記信号は時間ドメインで表されており、選択された例は意図的に単純化されている。例えば
図2Aは、変調のために入力で使用される値のシーケンス{1,0,1,0,0,1}を表す離散信号の一例を示している。
図2Bは、変調関数を用いて
図2Aの入力信号を変調した後に獲得される合成信号の一例を示しており、この変調関数は、離散入力信号の現在の(瞬時)値(0または1)に基づいて、
図3Aおよび3Cに示されているような信号パルスを生み出す。
図3Bおよび3Dは、
図3Aおよび3Cのアナログ信号パルスに対応する離散信号パルスである。
図2Bの獲得された信号はアナログ信号であるが、
図2Cおよび2Dは、
図2Aの初期シーケンスをより高度な置換スキームに基づいて変調することにより獲得された離散変調信号の例を示しており、この変調関数は、瞬時値に加えて、信号の以前の値を引数としてとる。
【
図4】実施形態に含まれる、光学リザバー・ネットワーク、およびこのようなネットワークを実施するように構成されたフォトニック・コンピューティング・システムの選択された構成要素を概略的に示す図である。
【
図5】やはり光学リザバーとして構成された、他の実施形態に含まれる、別のフォトニック・コンピューティング・システムの選択された構成要素を概略的に示す図である。
【
図6】実施形態による、信号を変調および復調する方法の高レベル・ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
これらの添付図面は、実施形態に含まれる装置およびシステムまたはそれらの一部分の簡略化された表現を示している。
図5に示された技術的特徴は一定の倍率では示されていない。そうではないと示されていない限り、図中の同様の要素または機能的に同等の要素には同じ参照符号が割り当てられている。
【0038】
ニューラル暗号法は、暗号化および暗号解析で使用するために確率アルゴリズム(例えばANNアルゴリズム)に依存している。ANNは、原理上、任意の関数を再現することができるため、実際に、暗号化されたデータをニューラル・ネットワークを使用して取り扱うことを企図することができる。すなわち、場合により、適当に訓練されたANNを使用して、暗号アルゴリズムの逆関数を見つけることができる。現在まで、実用的なアプリケーションは提案されず、ANNが急速に発展していることが原因で、暗号化されたデータが危険にさらされていることが理解される。
【0039】
この観察に基づいて、本発明の発明者は、暗号化されたデータのセキュリティを向上させる概念的に単純な解決策であって、ハードウェア・ベースの暗号化/暗号解読技術を有利に利用することができる解決策を考案した。これは、以下の説明で詳細に説明される。この説明の構成は以下のとおりである。最初に、一般的な実施形態および高次変形実施形態が説明される(セクション1)。次のセクションは、より具体的な実施形態および技術的実施態様の詳細を対象とする(セクション2)。
【0040】
1.一般的な実施形態および高次変形実施形態
図1および6を参照して、最初に、変調信号を復調する方法、すなわち受信側20で実施される方法に関する本発明の一態様を説明する。
【0041】
いくつかの実施形態では、この方法が、ステップS12で受信された変調信号54に依存し、変調信号54は、所与の信号51を変調する(11、ステップS11)ことにより獲得されたものであると仮定される。より詳細には、この信号54が、(時間ドメインにおいて)初期信号51よりも速く変動する変調関数52によって変調されたものである。変調関数52は信号51の関数であり、変調関数52は、変調信号53は生成するために、初期信号51、初期信号51の値または初期信号51に記録された値を引数としてとる。次いで、このような信号53を(信号54として)送信しS12、復調用の人工ニューラル・ネットワーク・システム22(以後、ANNシステム22)に信号55として結合するS21ことができる。
【0042】
すなわち、変調信号55は、ANNシステム22、例えば訓練可能なハードウェア・デバイスまたはコンピュータ・システムを使用して復調されるS22。より正確には、システム22は、動作時に、変調関数52によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練される。復調S22は、受信した変調信号54のパターンからのビット値を識別することにより実行される。
【0043】
本明細書の文脈において、実行される変調/復調動作は、初期信号の符号化(または暗号化)/復号(暗号解読)よりも速く、データまたは信号値を符号化(または暗号化)/復号(暗号解読)することに等しい。後に説明するように、この復調は例えば、信号自体(振幅、位相など)に対して直接に、または信号が表す離散値に対して演算することができる。
【0044】
(変調するS11前に)最初に考慮する信号51は例えば、(例えばディジタル回路によって出力された)ディジタル信号または(例えばセンサもしくはアナログ回路によって出力された)アナログ信号とすることができる。ディジタル信号は、例えば、パルス列(パルス振幅変調信号)またはサンプリングおよび量子化された物理信号とすることができる。したがって、ディジタル信号は、離散信号(または離散時間信号)を、値の時系列として伝達することができる。ディジタル信号においては、全ての場合に、時間変動する量が、離散値(有限個の値)のシーケンスの表現である。したがって、ディジタル信号はしばしば離散信号と呼ばれる。反対に、アナログ信号は、時間的に連続した信号、例えば、ある振幅変調または位相変調を有するシヌソイド形の信号であり、時間変動する量は、時間変動する別の量の表現である。初期信号51は、アナログ信号であろうがまたはディジタル信号であろうが、伝送される情報を記録している。このような情報は例えば、2つ以上のビット値として記録されていることがある。
【0045】
この初期信号51は、変調関数f(.)に従ってS11で変調されたものであると仮定される。この関数は、(
図3A、3Cの場合のように)出力において(
図3B、3Dに例示された)離散信号または連続信号を生成するディジタル変調関数であることができる。全ての場合に、変調ステップS11によって生じる信号53はディジタル信号またはアナログ信号であることができ、例えば電気的にまたは光学的に伝達するS12(すなわち送信する)ことができる。それでも、中間送信ステップS12は、例えば音波など、任意の波送信技術を使用することができる。変調S11の結果生じる搬送信号のこの変化は例えば、後に論じる実施形態の場合のように、変調アルファベット(modulation alphabet)を構成する有限個の(しかし通常は多数の)代替記号(alternative symbol)を形成することができる。
【0046】
一貫して、ステップS12で受信される変調信号54は、ディジタル信号またはアナログ信号の形態で受信することができる。変調信号54は例えば、最初に、アナログ信号の形態で受信するS12ことができ、次いで、場合により、後続の復調S22のために、ディジタル信号、例えば連続した一組の離散値としてサンプリングおよび解釈されたディジタル信号に変換するS21ことができる。この場合、ANNシステム22は、変換された信号の中の値のパターンからのビット値を識別するS22ことにより、変換された信号を復調するS22。すなわち、識別S22は、信号の特性ではなく離散値に基づいて演算する。そのうえ、復調ステップS22は、必ず離散値に対して実行されるというわけではなく、その代わりに、上述のとおり、変調信号自体に対して実行することもできる。すなわち、信号の特性に基づいて、例えば光学信号に基づいて、識別ステップS22を実行することができる。例えば、変調信号は、光学的に十分に送信することができ、次いで、後に論じる実施形態の場合にように光学リザバーとして構成されたANNシステム22に光学的に結合することができる。
【0047】
光ファイバ・データ伝送は典型的には、方形波を使用し、基礎をなす信号は典型的には、ディジタル信号と考えられることに留意されたい。しかしながらこの場合には、伝達される信号が、使用される初期信号51および変調関数52に依存し、そのため、光ファイバ信号がもはや方形波ではない可能性がある。
【0048】
ANN22のソフトウェア実施態様を使用するとき、復調ステップS22は、初期信号51によって記録された数字に対応する一組の数字、例えば{1,0,1,0,0,1}を直接に与える。ANN22のハードウェア実施態様に依存する変形実施形態では(すなわち、ANNが、ANNを実装するように構成されたコンピュータではなく、特殊目的ハードウェア・デバイスである場合)、復調ステップS21は通常、中間信号(図示せず)を与え、この中間信号から、
図1で仮定されているように最終的なシーケンスが取り出される。例えばハードウェア光学ネットワーク22を使用したとき、ANN22の出力の中の獲得された信号は通常、光学パワーのストリーム(強度が変化する光)であることができ、その変動が、初期信号51と同じ値を記録している。したがって、ステップS22の出力の中の獲得された信号は、再び、離散信号またはアナログ信号であることができ、そのうえ、初期信号51の値に対応する値を記録している。
図1で使用されている描写にもかかわらず、実施形態では、2値信号の代わりに、マルチレベル信号を使用することができることに留意されたい。
【0049】
復調ステップS22を、受信S12された信号54および次いでANN22に結合S21された信号55によって形成されたパターンの分類とみなすことができ、この分類は、ANNシステム22によって実行される。ANNシステム22は、動作時に、変調関数52によって生じたパターン、すなわちこの関数52によって生み出された値のパターンまたは対応する信号パターンからのビット値を識別するように訓練されると仮定される。したがって、推論時に、システム22は、変調信号55のパターンからビット値が識別されるS22ことを可能にし、これは、(ANNのソフトウェア実施態様の場合のように)直接に識別されるか、または(特殊目的ANNハードウェアを使用した実施態様の場合のように)直接には識別されない。
【0050】
ディジタル値、すなわち信号54によってともかくも表されたまたは記録された値で形成されたパターンをシステム22が適当に分類するために、必要ならば、ステップS12で受信された信号54を、最初に、ディジタル値に変換するS21ことができる。しかしながら、一態様では、ANNシステムは、受信された信号54に対して直接的に動作してS22として出力する。このような場合、ANN22に結合される信号55は、(信号54の特性に影響を与える可能性がある結合ステップS21に従属する)S21において受信される信号54と「同一」であり、そのため、その場合にはアナログ-ディジタル変換が必要なく、復調S22がより効率的になる。信号をハードウェアANNに結合することは例えば、信号に影響を与えること、例えば光学的損失を生じさせ、したがってその結果、振幅をより小さくすることであることに留意されたい。したがって、その場合、結合される信号は通常、信号54と完全に同一のものではない。
【0051】
この手法は、後に説明するように変調関数からの出力が初期信号よりも速く変動することによって、受信した信号を(例えば受信されたストリーム上で直接に)、信号51によって記録されたビット・シーケンスのビット速度よりも速い速度で復号することを可能にする。使用される結果として生じる変調速度が攻撃者に知られていないため、この手法は、適正に訓練されたシステムなしでビット・シーケンスを再構成することを事実上不可能にする。これによって、符号化速度および初期ビット速度が攻撃者に知られていないこと以外に、符号化された信号54の時間分解能を、攻撃者が使用する物理検出デバイスの分解能よりも小さくすることができ、このことは、そのデバイスが検出することを不可能にする。例えば、ハードウェアで実装されたANNを使用することは、典型的な物理検出デバイスよりもはるかに高い周波数で動作することを可能にする。例えば、このようなANNは、「高速」暗号化信号を、「低速」暗号解読信号に変換する。
【0052】
変調関数が初期信号よりも速く変動することは、基本的に、変調信号の導関数が、同じ時間周期に、平均して、初期信号の導関数(または初期信号によて記録された量)よりも頻繁に正負符号を変化させることを意味する。このような結論は、連続して微分可能な信号に適用し、クラスCnの信号に対してより高次(n次)の導関数を保持することができる。離散信号/サンプリングされた信号に関して、変調関数がより速く変動することは、変調信号の変調信号値の連続する差が、同じ時間周期に、平均して、初期信号の連続する差(または初期信号によって記録された量)よりも頻繁に正負符号を変化させることを意味する。このような差は、使用可能な最も小さな時間分解能に対応する間隔の間に計算される。同様の結論は、第nの差(n>1)に対しても当てはまる。すなわち、変調関数からの出力は、時間ドメインでより速く振動する。通常、このことの結果として、変調信号は、平均して、初期信号51の時間周波数(または特性周波数)よりも高い時間周波数(すなわち1つまたは複数の特性周波数)を有する。すなわち、対応するフーリエ・スペクトルは、変調後により大きな周波数にシフトし、自己相関関数は、変調関数の最小の変調時間周期に対応する時間間隔の間に、遅れ0におけるその最大値からより急速に低下する。
【0053】
離散信号に関して、変調関数は、初期信号よりも小さな時間分解能を有していると言うことができる。例えば、
図2Cに示された信号は8つのパルスを示しており、
図2Aの信号は、同じ時間間隔の間に3つのパルスを有する。変調信号のより高い時間周波数は、例えばフーリエ解析を介して、信号のパワー・スペクトルを使用してなど信号解析および処理の通常の技法によって特徴づけることができる。上記の考慮事項は、初期信号および変調信号の有用な部分、必要ならば雑音が除去された後の初期信号および変調信号の有用な部分に関することに留意されたい。そのうえ、可能な雑音にもかかわらず、その必須の(そして有用な)部分に関して、変調信号が、その必須の(そして有用な)部分に関して初期信号よりも速く変動することは変わらない。
【0054】
上で言及したとおり、ANNシステム22は認知システムであり、認知システムは、場合により、ソフトウェア内またはハードウェア内に(特殊目的ANNハードウェアとして)実装することができる。認知システムは、例えば、適当な任意の機械学習モデルとして実装することができ、すなわち、古典コンピュータ・プラットフォーム上でランするソフトウェア内に実装することができる。認知システムは特に、例えばスパイキング・ニューラル・ネットワークまたはオートエンコーダとして実装することができる。そのうえ、それにもかかわらず、このようなコンピュータ・プラットフォームは、専用アクセラレータおよびANNに対する他のハードウェア最適化を組み込むことができる。同様に、共最適化されたソフトウェアおよびハードウェア・プラットフォームに依存することもできる。それでも、ANNシステムは、復調時の速度および暗号用途のセキュリティのために、特殊目的ANNハードウェア内に実装すること、すなわち、光学リザバーまたは抵抗処理ユニットとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システムなどの訓練可能なハードウェア・デバイスとして実装することができる。特に、ANNシステムは、後に詳細に論じるように、高い生ビット速度と両立する高速復号および暗号用途を光学信号に基づいて可能にするために、光学リザバー・ハードウェア・システムとして有利に実装することができる。
【0055】
本明細書では、認知アルゴリズム、認知モデル、機械学習モデルなどの用語が、相互に交換可能に使用されていることに留意されたい。用語を明確にする努力において、以下の定義を仮に採用することができる。機械学習モデルは、認知アルゴリズムによって生成され、認知アルゴリズムは、訓練されたモデルに到達するように、入力データ点からそのパラメータを学習する。したがって、訓練されている認知アルゴリズムと、基礎をなすアルゴリズムの訓練完了後に最終的に得られる、訓練されたモデルと呼ばれるモデルとを区別することができる。同様に、訓練可能な特殊目的ANNハードウェアと訓練されたハードウェア・デバイスとを区別することができる。復調目的S22のいくつかの実施形態で使用される特殊目的ハードウェア・デバイス22は、信号51を変調するS11ために最初に使用される変調関数52に関して既に適当に訓練されていると仮定される。
【0056】
次に、この全てを、本発明の特定の実施形態に関して詳細に説明する。
【0057】
これまでに説明した方法および変形実施形態は主に、受信側20で実行される復号/復調ステップS22を中心にしたものである。しかしながら、本発明は、送信側10と受信側20の両方で実施される方法に拡張される。したがって、実施形態では、本発明の方法がさらに、変調信号53を獲得するために初期信号51を変調関数52に従って変調するS11ことを含む。獲得された変調信号53は次いで、変調信号53が受信されS12、続いてANNシステム22によって復調されるS22ために送信されるS12。
【0058】
初期変調S11は、例えばディジタル信号処理(DSP)によって達成することができ、このDSPではディジタル変調が追求される。次いで、獲得されたS11変調信号53を、以前に言及したとおり、電気的にまたは光学的に送信するS12ことができる。変形実施形態では、光ビームを変調するS11ために、電気-光学変調器(electro-optic modulator)(EOM)を使用することができ、次いで、変調された光ビームを光学的に送信することができる。例えば、最初にディジタル信号51をディジタル処理し、次いで光学的に符号化することができる。そのために、ニオブ酸リチウムまたはシリコン・ベースのEOMなどの高速EOMに依存することができる。これらのデバイスはそれ自体が知られている。他の変形実施形態では、初期(ディジタルまたはアナログ)信号51をアナログ信号処理S11にかけることができる。
【0059】
例えば、初期信号51が、
図1の場合のようにディジタル信号であると仮定する(
図2Aも参照されたい)。本発明の目的上、変調関数52は入力信号よりも速く変動する必要があるため、例えば、ディジタル信号51によって記録されたそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期の間、初期信号51をそれぞれ変調してS11、変調信号53を獲得することができる。
図2B~2Dは、その結果獲得される信号53の可能な例を示している。例えば、変調S11は、離散信号51の瞬時値に基づくことができ、その場合、初期ビット・シーケンス51が変調器11を通してストリーミングされる。振幅変調の場合と同様に、瞬時値は、
図1にf(.)によって示されている変調器11の関数52が現在考慮している値を指す。すなわち、変調関数52は、離散信号の現在の値に基づくことができ、連続して処理するそれぞれの現在の値について、(
図2Bの場合のように)信号パルスを生成することができ、または(
図2C、2Dの場合のように)異なるいくつかの値のセットを表すディジタル信号を生成することができる。
図2B~2Dに示されているとおり、変調信号は、入力信号よりも「速く」変動する。すなわち、それぞれの場合において、変調信号は、
図2Aの初期信号のそれぞれの離散値に対応する時間間隔内にいくつかの変動(振動)を示す。通常、このような全ての時間間隔は一定であり、そのため、結果として生じる変調パターンは、基礎をなすビット・シーケンス(生ビット速度)およびこれよりも速く変動し、初期信号51のそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期に対してこのとおりである。
図2Aでは、初期信号が変動する時間周期が1(a.u.)であり、
図2Cおよび2Dの信号が変調される基本時間周期は1/4(a.u.)であることに留意されたい。
【0060】
図3Aおよび3Cは、「1」および「0」を変換するための所与の変調関数によって生成された2つの異なる連続(アナログ)信号を示している。この関数を
図2Aの初期シーケンスに適用すると、初期シーケンスが変調され、
図2Bに示された信号が得られる。
図2Bに示された信号は、
図3Aおよび3Cによるパターンを交互に繰り返している。
図3Aおよび3Cは、アナログのような変換を含むため、
図2Bで獲得される信号をアナログ信号とみなすことができる。
【0061】
反対に、離散変調関数を
図2Aの初期シーケンスに適用すると、離散信号が得られるであろう。例えば、
図3Bおよび3Dの信号は、
図3Aおよび3Cのアナログ信号に対応する離散信号であり、これらを使用して、
図2Aの入力信号を変調することができる。このような変調の結果は示されていない。
【0062】
そのうえ、初期信号51は、場合により、離散またはアナログ変調関数によって変調された離散信号であること、またはアナログ信号、例えば変調のために離散変調関数によってサンプリングされたアナログ信号であることができることが理解される。変形実施形態では、アナログ変調を使用して、初期アナログ信号を、例えば(周波数変調の場合のように)読み取られたアナログ入力信号の瞬時値に基づいて変調することができる。本発明の目的上、重要なのは、変調関数が初期信号(または初期信号によって表される量)よりも速く変動することである。
【0063】
その代わりに、
図2Cおよび2Dは、より高度な置換スキームに従って
図2Aの初期シーケンスを変調することによって獲得された変調信号を示しており、このスキームでは、初期信号の瞬時値に加えて初期信号の以前の値を考慮する。すなわち、
図2Cは、
図2Aの初期シーケンスを置換{k,l}→{p,q,r,s}に従って変調することによって獲得されたものであり、
図2Dは、同じ初期シーケンスを、異なる時間ステップ細区分を与える置換{k,l}→{p,q,r}に従って変調することによって獲得されたものである。
図2Cで実行された変調は2値形式のままであるが、
図2Dの変調は3値符号(マルチレベル信号)を与える。このような置換規則については後に詳細に説明する。
【0064】
最初に、変調ステップS11は、初期信号51のいくつかの離散値によって構成されたオペランド(operand)に関して有利に機能することができることに留意されたい。すなわち、入力において信号51の2つ以上の離散値をとる変調関数52に従って、信号51のそれぞれの離散値を変調することができる。例えば、初期信号51のそれぞれの現在の値について、関数fは、
図2Cおよび2Dに仮定されているような変調を生み出すために、入力として、その現在の値および初期信号の1つまたは複数の以前の離散値をとることができる。すなわち、パラメトリック変調に従って初期ビット・シーケンス{1,0,1,0,0,1}が変調される。
【0065】
図2Cの例では、変調関数が、下記の置換を実行すると仮定される。{k,l}はここでも入力値対を示し、lは、現在の(瞬時)値、kは、初期ビット・シーケンスのその現在の値lの直前の値であり、セット{p,q,r,s}は、出力において生成される変調されたセットを示す。
{0,0}→{0,0,1,1}
{0,1}→{0,1,1,0}
{1,0}→{1,0,0,1}
{1,1}→{1,1,1,0}
【0066】
すなわち、この例では、基本時間周期が2つに分割される(
図2Cと2Aを比較されたい)。このような置換では通常、初期シーケンスの最初のビットまたは最後のビットに対する置換を可能にするために、初期シーケンスを適正に初期設定することが必要となることに留意されたい。例えば、実際の初期シーケンスの前にダミー・ビット(例えば0)を付加することができる。例えば、最初に、
図2Aに示された初期シーケンス{1,0,1,0,0,1}を、変更されたシーケンス{{0},1,0,1,0,0,1}と解釈することができる。ここでは、{1,0,1,0,0,1}の前に{0}が付加されている。次いで、
図2Aのシーケンス{1,0,1,0,0,1}の実際の最初の値1が、変更されたシーケンスと一貫する入力対値{0,1}を与える。これによって、初期時間ステップの1/2の時間ステップで演算された変調{0,1,1,0}が与えられる。
図2Aの初期シーケンスの実際の第2の値は0であり、直前の値は1であるため、これは入力対{1,0}を与える。この入力対は、上記の置換リストに従って、変調されたセット{1,0,0,1}を与える。以下同様である。最終的に、これは、
図2Cに示された変調されたパターンを与える。再構成された後(ステップS22の後)、最終的に、初期シーケンスの前に付加されたダミー・ビットを離散信号56から除去する必要がある。変形実施形態では、初期シーケンスの前に付加する代わりに、初期シーケンスの後にダミー・ビットを付加することもできる。
【0067】
離散信号が使用される場合には、初期信号51もまたは変調信号53も、(0または1の値を表す)2値信号である必要は必ずしもないことに留意されたい。例えば、変調関数52は、
図2Dで仮定されているように、3値符号を使用して情報を符号化することができる。それでも、攻撃者がシーケンスを復号することをより難しくするために、変調された符号のアリティ(arity)は、入力符号のそれを上回ることができる。したがって、初期信号51はn値符号(n≧2)を符号化することができ、変調信号53は、変調S11の後に、m値符号を符号化することができ、m>nである。これが
図2Dに例示されており、入力では2値符号化(
図2A)が使用されるのに対して、変調S11の後には3値符号が獲得される。
【0068】
より詳細には、符号化S11の後に
図2Dの信号を獲得するために以下の置換が実行されると仮定される。この場合も、実際の初期シーケンスの前にダミー・ビット(0)が付加されていると仮定する。以下のリストでは、{k,l}が入力値対を示し、lは、入力信号の現在の値、kは、所与のビット・シーケンスの以前の値であり、{p,q,r}は、変調関数52の出力において生成される変調されたセットを示す。
{0,0}→{0,2,1}
{0,1}→{0,1,2}
{1,0}→{1,2,0}
{1,1}→{2,1,0}
このような置換は、
図2Dに示された3値シーケンスを与える。
【0069】
(変調信号が変調後にm値符号を符号化し、m>nである)
図2Dの変形実施形態では、
図2Cに関して以前に例示された異なる時間ベースに基づいて、n値符号を別のn値符号に単純に変換することができる(すなわちm=n)。他の変形実施形態では、失われた次元を補償するために信号の周波数がさらに変調される場合、変調信号のアリティをnよりも小さくすることができる(すなわちm<n)。後者は、入力することがより簡単であるが、それにもかかわらず、送信においてよりロバストとなることがある。
【0070】
図2B~2Dに示された変調の例は教育的例であり、実際には、ステップS22で実行される変調は通常、はるかに長い初期シーケンス{k,l,...}に対して演算し、より長い出力シーケンスを生み出すことに留意されたい。さらに、この置換は、静的なものである必要はなく、その代わりに時間とともに発展することができる。さらに、より高度な動的符号化を実行することができる。したがって、場合によっては、
図6の流れ図で仮定されているように、時間の経過に伴って1次ANNシステム22を再訓練するS30必要があることがある。
【0071】
しかしながら、より単純な変形実施形態では、それぞれの変調ステップが、
図2Aで仮定されているように、ディジタル信号の単一の値、すなわちディジタル信号の瞬時値に基づき、その場合、異なるビット値は、異なる信号パルス(
図3A、3C参照)または離散シーケンス(
図3B、3D)を与える。これに対応して、変調S22は、場合により、(
図2Bの場合のような)連続的に変動する信号または離散信号(
図2C、2D)に帰着することがある。全ての場合に、出力信号(またはシーケンス)のより高い周波数(またはより高いビット速度)の追加された複雑さが、適当に訓練されたANN、ならびに初期信号51の時間ステップ(ビット速度)および変調関数52についての事前の知識なしで信号54、55を解釈することを非常に難しくすることは変わらない。
【0072】
実施形態では、ディジタル信号51を変調器11がオンザフライで変調するS11ために、最初にディジタル信号51が変調器11にストリーミングされるS10。この場合も、上で例示したとおり、以前の信号値を瞬時信号値とともに使用して、変調S11を実行することができる。一貫して、ANNシステム22が受信したストリーミングされた信号をANNシステム22がオンザフライで復調するS22ために、変調信号54をANNシステム22にストリーミングすることができる。
【0073】
変形実施形態では、場合により、再配列された信号を変調するS11前に、信号の値を、ビットのシーケンスのブロックまたはビットのシーケンスのブロックのアレイとして再配列することができる。次いで、このようなシーケンスを逐次的にまたは並列に変調しS11、次いで同様に復調し、その後に、値のシーケンスを再組立てすることができる。この点に関して、変調されたシーケンスのいくつかの並列セットを横切って、変調パターンを学習するS30ことができる。
図2~3に仮定された単純な例にもかかわらず、この場合も、複雑な記号を形成するために、複雑な変調スキームを企図することができる。
【0074】
一態様は、(考慮された全ての入力信号上で演算する変調関数52によって)2つ以上の入力信号を並列に変調してS11、1つまたは複数の変調信号53を獲得することである。この場合も、結果として生じる変調信号は入力信号よりも速く変動する。次いで、続いてステップS12で受信された1つまたは複数の変調信号54が、ANNシステム22を用いてパターン認識により、すなわちステップS12で受信された1つまたは複数の変調信号54のパターンからのビット値を識別することにより復調されるS22。ANNのソフトウェア実施態様では、初期信号51を、例えば入力ストリーム(すなわちデータ要素のシーケンス)とすることができる。変形実施形態では、初期信号51を、一組のアナログ信号とすることができる。したがって、変調ステップS11の結果、単一のストリームもしくは変調された単一のアナログ信号、またはいくつかのストリームもしくは信号を獲得することができ、これらは、入力信号に含まれる情報を復元するように、復調のためANNにフィードされるS21。
【0075】
有利には、ANNをリザバー・ネットワークとすることができる。ここでは、効率とセキュリティの両方の理由から、ANNシステム22を、ソフトウェア内に実装するのではなく、訓練可能なハードウェア・デバイス(すなわち特殊目的ANNハードウェア)として実装することができる。さらに、以前に言及したとおり、変調信号54を特に光学的に送信するS12ことができ、それによって、ステップS12で受信される信号54が光学信号54となる。その場合、フォトニック・コンピューティング・システム20を有利に使用して、復調S22を実行することができる。より正確には、ANNシステム22は、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システム20の一部を形成することができる。受信された光学信号54をANN22に結合するS21ことによって、ANN22は、結合された信号55を、結合された信号55の信号パターンからのビット値を識別することにより復調するS22。
【0076】
上述のとおり、送信された信号54がフォトニック・コンピューティング・システム20によって受信されS12、続いて復調されるS22ために、例えば信号51を、光学的に送信されるS12前にEOM11を用いて変調するS11ことができる。それでも、EOMを有利に使用して信号を変調することができるが、これを達成するために、他の解決策を企図することもできる。そのような1つの解決策は、コヒーレント光で機能する遅延線を有する線形光学ネットワークに依存することである。例えばhttps://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1501/1501.03024.pdfを参照されたい。
【0077】
例えば、(相互接続された遅延線を有する)線形光学ネットワークに依存して、信号を搬送している電磁場の振幅と位相の両方で、情報を符号化することができる。変形実施形態では、変調S11が、単独の光の強度(場の振幅だけが変調される)または単独の位相に基づくことができる。符号化された信号51をディジタル信号とすることができるが、他の変形実施形態では、以前に述べたとおり、符号化された信号51を、(例えば電気的な)単なるアナログ信号とすることもできる。
【0078】
しかしながら、訓練可能なハードウェア・デバイス(すなわち特殊目的ANNハードウェア)として実装されるのか、またはソフトウェア内に実装されるのかにかかわらず、ANNの基本的な機能原理は、
図4に関して次に論じるとおり、同じである。最初に、変調信号54によって記録された時間情報を、ANNの入力層の1つまたは複数の入力ノード251上にマップするS21必要がある。入力層の入力ノード251は、ANNの出力層の1つまたは複数の出力ノード254に、接続を介して接続されている。これらの接続のうちの少なくとも一部は、調節可能な重み要素に関連づけられており、すなわち、訓練プロセス中にそれらの接続を調整することができ、このことは、システム22を訓練可能なシステムにする。ステップS22で実行されるビット値の識別は、出力ノードからの信号の読取りを必要とする。
【0079】
図4は、いくつかの入力ノードおよび出力ノードを仮定していることに留意されたい。しかしながら、変形実施形態では、入力および出力層がそれぞれ単一のノードを含むことができる。全ての場合に、最初に、ステップS12で受信された信号54に含まれる時間情報(および場合により追加の情報)を入力ノード251に適切にマップするS21ことができる。場合により、出力ノード254を、異なるビット値またはアナログ値にマップすることができる。訓練された重み要素253によって、実際のビット値56が、出力において読み取られた値を適当に組み合わせ、重み付けすることにより推論される。
【0080】
同様のアーキテクチャを、ソフトウェア内に、例えばスパイキング・ニューラル・ネットワークないしSNNによって実装することができ、例えば、出力ノードは、全対全側方抑制的接続(all-to-all lateral inhibitory connection)を介して互いに接続され、入力ノードは、接続重みが関連づけられた全対全興奮性接続(all-to-all excitatory connection)を介して出力ノードに接続されることに留意されたい。例えばFFNなど他のタイプのANNを企図することもできる。
【0081】
以前に論じたとおり、ステップS12で受信される変調信号54を光学信号とすることができ、その場合には、ANNシステム22を、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システム20の一部として有利に実装することができる。その場合には、リザバー・コンピューティング・システム22の入力ノード251上に光学信号54を結合することにより、リザバー・コンピューティング・システム22上に時間情報をマップするS21ことができる。
図4にさらに示されているとおり、システム22のリザバー層の光学リザバー・ノード252を介して、入力ノード251を1つまたは複数の光学出力ノード254に接続することができる。それぞれの光学出力ノード254は通常、1つまたは複数の光学リザバー・ノード252によって、対応するそれぞれの接続を介して接続され、対応するそれぞれの接続にはそれぞれ調整可能な重み要素253が関連づけられている。
図4に示されたリザバーの特定の実施態様の描写にもかかわらず、通常、ノード252は実際に接続されていることに留意されたい。
【0082】
リザバー・コンピューティング・システムは、出力を訓練することにより、動力学的入力データの効率的な解析を可能にする。ANNシステムは特に、リキッド・ステート・マシンまたはエコー・ステート・ネットワークとして実施することができる。実施形態では、
図5で仮定されているように、リザバー層を、所与の光学パワー分布を有する光学干渉パターンの形態で達成することができる。このようにすると、光学入力信号の時間情報を光学干渉パターンにマップすることができる。さらに、出力接続および関連重み要素は、光学ドメインで動作することができる。
図5に示された光学リザバー・システムはセクション2.1でさらに説明される。
【0083】
図6に示されているように、本発明の方法は、変調関数52によって生じた信号パターンからのビット値をANNシステムが識別するようにANNシステムを訓練するS30ことをさらに含むことができる。これは特に、訓練データセットを送信し、次いで受信されたデータセットに基づいてANN22を訓練するS30ことによって達成することができる。特に、必要に応じて、例えば変調条件を変更したときまたは信号接続経路を変更したときに、ANN22を再訓練するS30ことができる。セキュリティに敏感な用途では、システム22の訓練を慎重に取り扱わなければならない。例えば、推論目的S22に使用されるチャネル以外の別のチャネルを使用して、訓練データセットを送信することができる。光学ネットワーク22を使用するときには、特に信号の位相が変調S11もしくは解釈S22され、またはその両方が実行されるときに、物理接続経路の変更がシステム22の再訓練を要求することがあることに留意されたい。
【0084】
セキュリティ上の理由から、または動力学的に進展している文脈に適合させるために、ステップS11で使用される変調関数52を適合させるS50必要があることがあり、ある時点で使用される異なるタイプのデータが、異なるタイプの変調を必要とすることがある。さらに、場合により、続いて変調される信号51(次のサイクル中に変調される信号)の特性を適合させるために、復調された信号S12の特性を解析したS40後に、ANNシステム22から受信したS40フィードバックに基づいて、変調関数52を更新するS50ことができる。これは特に、ある種の境界条件を満たしまたは最適化する(例えば変調信号の一定の平均値を維持する)ように、または、信号伝送を向上させること(例えば、復号後の異なる入力状態間の物理的コントラストまたは符号化効率を向上させるために、最適な関数52を選択することにより伝送エラーを低減させる)ことを考慮して、実行することができる。ステップS40で解析される特性は、受信側で受信される信号55に関係することに留意されたい。したがって、ステップS40で実行される解析は、次のサイクルS11~S22に影響を与える。例えば、ステップS40のために受信されたフィードバックを使用して、後続のサイクルの全体を通じて変調信号の一定の平均値を維持することを保証することができる。変調関数52の更新は、それぞれのサイクルS11~S22の直後に、または訓練データの多数のサイクルおよび多数のバッチの後に実行される可能性があることに留意されたい。
【0085】
例えば、変調関数52に影響を与えるように、第2の訓練可能なANN(図示せず)を使用して、変調器11の上流で信号を生成することができる。この第2のANNを、受信側20の制御回路とともに使用して、符号化関数52を、例えば前記境界条件を満たしまたは最適化するように調整することができる。
【0086】
次に、他の態様によれば、本発明は、復調器20または変調システム1の全体などのコンピューティング・システムとして実施することができる。このようなシステムの諸態様は既に、本発明の方法に関して暗黙のうちに対象とされており、以下では、
図1、4および5を参照して簡潔に説明するだけに留める。
【0087】
最初に、本発明は、以前に説明した方法に従って信号を復調するための単独の復調器20として実施することができる。このような復調器20は、入力ユニット21およびANNシステム22を備えることができる。入力ユニット21は、変調信号54を受信するように、すなわち、以前に論じたように変調関数52に従って初期信号51よりも速く変動するように変調された信号を受信するように構成されている。受信した信号54を入力ユニット21がANNシステム22に結合するため、動作時、ANNシステムは、入力ユニット21に接続されている。以前に説明したとおり、ANNシステム22は、変調関数52によって生じた信号パターンからのビット値を識別するように訓練されていると仮定される。そうでなければ、システム22は、復調器20内において、システム22に結合された変調信号55を、受信された変調信号54のパターンからのビット値を識別することにより復調するように構成されている。
【0088】
図4および5を参照すると、ANNシステム22は特に、リザバー・コンピューティング・システムとすることができ、例えば、リザバー・コンピューティング・システムとして構成されたフォトニック・コンピューティング・システム20の一部を形成することができる。このようなリザバー・コンピューティング・システムは、動作時に、入力ユニット21によって受信され、次いでANNシステム22に結合された変調光学信号53のパターンからのビット値を識別することにより、光学信号53、54を復調するように適合されている。
【0089】
図4に示されているとおり、ANNシステムは特に、1つまたは複数の入力ノード251の入力層および1つまたは複数の出力ノード254の出力層を備えることができる。入力ノード251は、接続(矢印)を介して出力ノードに接続されており、これらの接続のうちの少なくとも一部は、調整可能な重み要素253に関連づけられている。ANNシステム22は、動作時に、前記出力ノード254から信号を読み取ることにより、ビット値を識別することができる。しかしながら、より一般的には、ANNシステム22を、復調器20内の訓練可能な特殊目的ハードウェア・デバイスとして実装することができる。
【0090】
変調信号54の中に記録された時間情報(もしくは特定情報、他の次元情報、またはこれらの組合せ、例えば波長、分極、マルチコア・ファイバのコア)をシステム22の入力ノードにマップするように、入力ユニット21をさらに構成することができる。変形実施形態では、入力ユニット21が、信号54を単純に単一の入力ノードに(例えば光学的に)結合することができる。
【0091】
図4に示されたシステム22では、システム22のリザバー層の光学リザバー・ノード252を介して、入力ノード251が光学出力ノード254に接続されている。それぞれの光学出力ノード254は、1つまたは複数の光学リザバー・ノード252によって、対応するそれぞれの接続を介して接続されており、対応するそれぞれの接続にはそれぞれ調整可能な重み要素253が関連づけられている。セクション2.1に詳細に説明されているとおり、入力ユニット21は、変調信号54を光学入力信号ISiとして受信し、光学入力信号ISiを入力ノード251に結合するように構成されている。
【0092】
フォトニック・コンピューティング・システムの別の例22aが
図5に示されており、これについてはセクション2.1で詳細に説明される。
【0093】
光学リザバー・ネットワークに依存する実施態様では、受信側20が、光学検出器をさらに備えることができることに留意されたい。しかしながら、この光学検出器はANN22の下流に配置されるであろう。言い換えると、信号54は最初に光学ANN22にフィードされS21、次いで光学検出器を用いて検出され、その場合、入力ユニット21は基本的にカプラであり、受信した信号をANNに結合することが意図されている。
【0094】
光学リザバーの代わりにRPUなどの非光学システムが使用される変形実施形態では、ANNのさまざまな入力ノードがネットワークの上位層に信号を中継するために、入力ユニット21が、同様に、入力信号の中に記録された時間情報(および場合により振幅、位相など他の情報)をANNのさまざまな入力ノード上にマップするように構成されている(例えばプログラムされている)べきである。
【0095】
図1を再び参照する。別の態様によれば、本発明は、信号の変調と復調の両方を実行するための変調/復調システム1として実施することができる。すなわち、このようなシステム1は、(以前に説明したものなどの)復調器20および変調器11を備える。変調器11は、変調関数52に従って信号51を変調して変調信号を獲得するように構成されている。以前に説明したとおり、変調関数52は信号51の関数であり(すなわち変調関数52は入力として信号51をとり)、変調関数52の出力は信号51よりも速く変動する。さらに、変調器11によって獲得された変調信号を送信するため、システム1は、変調器11に動作可能に接続された送信ユニットを含む。
【0096】
この場合も、場合により、ディジタル信号51を、例えばディジタル信号51によって記録されたそれぞれの離散値に対応するそれぞれの時間周期の間それぞれ変調して、変調信号53を獲得するように、変調器11を構成することができる。さらに、適当な変調関数52によって、ディジタル信号51を、ディジタル信号51の2つ以上の離散値(例えば瞬時値および1つまたは複数の以前の値)に基づいて変調するように、変調器11をさらに構成することができる。例えば、ストリーミングされた信号をオンザフライで変調するように、変調器11を適合させることができる。同様に、場合により、特に特殊目的光学システムを使用しているときに、オンザフライで復調を実行するように、ANNシステム22を設計することができる。
【0097】
以上の実施形態は、添付図面を参照して簡潔に説明されており、以上の実施形態は、いくつかの変形実施形態を提供することができる。上記の特徴のいくつかの組合せを企図することができる。次のセクションでは例が提供される。
【0098】
2.特定の実施形態 - 技術的実施態様の詳細
2.1 光学リザバー・コンピューティング・システム
図4は、実施形態による、光学リザバー・コンピューティング・システムとして実施されたフォトニック・コンピューティング・システム22を概略的に示している。フォトニック・コンピューティング・システム22は、入力層、リザバー層および出力層を備える。入力層は、複数の入力ノード251を備え、入力ノード251は、光学入力信号ISi(例えば光学入力ストリーム)を受信し、そのような信号ISiをリザバー層に転送するように構成されている。リザバー層は、閉じ込められたリザバー領域、例えば、複数の光学リザバー・ノード252を含む連続した光学リザバー領域410を備える。ここでは、リザバー層が、
図5を参照して後に説明されるように、光学パワー分布を有する光学干渉パターンとして形成されている。
【0099】
フォトニック・コンピューティング・システム22はさらに、リザバー・ノード252と出力ノード254との間の複数の光学出力接続を含む。これらの光学出力接続のうちの少なくとも一部は、重み付け要素(wi)253に関連づけられており、重み付け要素253は、訓練プロセスS30中に調整することができる。すなわち、セクション1で論じたとおり、特定の計算タスクを実行するように光学リザバー・システム22を訓練することができる。
【0100】
図4に示されているものなどの光学リザバー・システムでは、光学入力導波路として入力ノード251を実施すること、例えば、(リザバー層を形成している)光学干渉領域との交点に配置された結合エリアとして入力ノード251を実施することができ、リザバー・ノード252は、読出しユニットとして実施することができる。
【0101】
光学リザバー・コンピューティング・システム22の訓練プロセスは、重みwi253を変化させる。しかしながら、リザバー層自体は固定されたままである(他の接続は、固定された重みに関連づけられたままであり、訓練/学習プロセスの間、この重みは変化しない)。
【0102】
動作時、出力ノード254が光学出力信号を送達し、この光学出力信号を、それ自体が知られている適当な変換器によって電気ドメインに変換することができる。次いで、変換された出力信号を、適当なハードウェアまたはソフトウェア処理手段によって、電気ドメインにおいてさらに処理することができる。重み253の調整は一般に、ソフトウェア内またはハードウェア内で実行することができる。例えば、追加の制御ソフトウェアがその上でランしているハードウェア制御回路が、訓練プロセス中に出力ノード254の出力信号を受信することができ、光学重み付け要素253に電気制御信号を適用することにより、光学重み付け要素253の重みを調整することができる。光学重み付け要素253は例えば、光学減衰器または光学増幅器として実施することができる。訓練プロセス中に、リザバー・システムのある状態を評価することができる。具体的には、いくつかの学習アルゴリズムを使用して、重み付け要素253の後の出力接続254の状態が呼び出されることになろう。したがって、訓練プロセス中に、光学信号の一部が分割されて専用検出器に送られ、対応するそれぞれの学習アルゴリズムにフィードされるであろう。
【0103】
このリザバー・コンピューティング・パラダイムに従って、
図4に示されているものなどの光学リザバー・コンピューティング・システム22を有利に動作させることができる。
【0104】
実施形態では、光学出力ノード254で光-電気変換が実行される。しかしながら、変形実施形態では、この変換を、ノード254の上流で、例えばリザバー・ノード252で実行することもできる。その点では、出力接続、重み付け要素253および出力ノード254を電気構成要素として実施することができる。しかしながら、光学リザバー自体およびリザバー・ノード252は単独で光学ドメインに留まることに留意されたい。変形実施形態では、重み付け要素253および出力ノード254をソフトウェア内に実施することができる。
【0105】
全ての場合に、推論段階中に、出力ノード254によって形成された訓練された(または制御された)層を形成し、続いて結果を推論するように、出力重み253を訓練することができる。
【0106】
図5は、実施形態による、別のフォトニック・コンピューティング・システムの略図を示している。
【0107】
コンピューティング・システム22aは、2つのフィードバック遅延導波路を備え、それらのフィードバック遅延導波路は、光学入力信号54に含まれる時間情報を光学干渉パターン510にマップするために使用される。この光学干渉パターンは、この光学干渉パターンの対応するそれぞれの位置における光学パワーを表す光学パワー分布を有する。
【0108】
コンピューティング・システム22aは複数の読出しユニット252を備え、読出しユニット252は、
図4に関して論じたようなリザバー・ノードを実施する。読出しユニット252は、光学干渉領域510のエッジ241(
図5の灰色の陰影部)と対照をなす光学干渉領域510の内側エリアに配置されている。この内側エリアは、例えば、外側エッジ241を除く光学干渉領域510のエリアとして画定することができる。場合により、エッジ241は、ミラー構造体、例えばブラッグ反射器、または干渉領域510上の金属コーティングによって形成することができる。変形実施形態では、エッジ241が、干渉領域510と周囲のエリア(図示せず)との間の遷移部に対応することができ、これは例えば、干渉領域510(例えばSi)とは異なる屈折率を有する層(例えばSiO
2)によって形成される。
【0109】
読出しユニット252は、光学干渉領域510の内側エリアの読出し位置RPiにおける光学パワー分布の光学読出し信号RSiを検出するように構成されている。例えば、光学強度、光学パワー、光学エネルギー、もしくは光学位相に関する情報、またはこれらの組合せを検出するように、読出しユニット252を構成することができる。
【0110】
フォトニック・コンピューティング・システム22aは、2つの入力遅延導波路221および222を備える。入力遅延導波路221は、入力信号ISの一部を、例えばスプリッタまたはカプラを通して受信することが意図されている。入力信号ISは次いで、入力遅延導波路221によって遅延され、第1の時間遅延d1を有する遅延入力信号ISd1として干渉領域510に転送される。遅延入力信号ISd1はさらに、入力遅延導波路222に、例えばスプリッタまたはカプラを介して転送される。遅延入力信号ISd1は次いで、入力遅延導波路222によってさらに遅延され、第2の時間遅延d2を有するさらに遅延した入力信号ISd2として干渉領域510に転送される。所望の時間マッピングを達成するために、フィードバック遅延線と入力遅延線のさらなる組合せを企図することができる。
【0111】
さらに、光学入力信号の時間情報を光学干渉パターンにマップするために、システム22aは、例えば熱-光学要素、電気-光学要素、電気フィードバック・ループもしくは光共振器またはこれらの組合せとして実装された非線形構成要素を備えることができる。そのような非線形構成要素は、光学入力信号に対する光学干渉パターンの非線形依存性を提供する。
【0112】
例えば、光学コンピューティング・システム22aは、場合により、非線形信号変換を実行するための1つまたは複数の非線形構成要素230、242を備えることができる。非線形構成要素242は例えば、(
図5で仮定されているように)干渉領域510内に配置することができる。例えば、このような非線形構成要素242は、例えばフォトリフラクティブ要素(photorefractive element)、光学増幅器または減衰器として提供することができる。
【0113】
変形実施形態では、上流入力導波路(図示せず)、入力遅延導波路221、222もしくはフィードバック遅延導波路またはこれらの組合せの中に非線形構成要素を配置することができる。例えば、
図5に概略的に示されているように、フィードバック遅延導波路210内または入力遅延導波路221、222内に、光共振器230を配置することができる。場合により、このような共振器は、有限の光学的寿命を有するように構成することができる。
【0114】
他の変形実施形態では、場合により、光学コンピューティング・システム22aの干渉領域510が、光学波を散乱させ、光学干渉パターンの複雑さを増大させるための(例えば要素242と同様の)1つまたは複数の散乱要素を備えることができる。
【0115】
他の変形実施形態では、受信側20が、光学システム22a自体の一部を形成しない非線形要素を備えることができる。
【0116】
2.2 ANNのソフトウェア実施態様
セクション1および2.1で述べたとおり、ANNは、その全体または一部をソフトウェアで実装することができる。したがって、本発明は、インテグレーションのあらゆる可能な技術的詳細レベルにおいて、システム、方法もしくはコンピュータ・プログラム製品、またはこれらの組合せとして実施することができる。コンピュータ・プログラム製品は、本発明の諸態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができる。
【0117】
コンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行デバイスが使用するための命令を保持および記憶することができる有形のデバイスとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は例えば、限定はされないが、電子ストレージ・デバイス、磁気ストレージ・デバイス、光学ストレージ・デバイス、電磁気ストレージ・デバイス、半導体ストレージ・デバイスまたはこれらの適当な組合せとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体のより具体的な例の非網羅的なリストは、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リードオンリー・メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル・リードオンリー・メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ポータブル・コンパクト・ディスク・リードオンリー・メモリ(CD-ROM)、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー・ディスク、機械的に符号化されたデバイス、例えばパンチカードまたはその上に命令が記録された溝の中の一段高くなった構造体、およびこれらの適当な組合せを含む。本明細書で使用されるコンピュータ可読ストレージ媒体は、それ自体が一過性の信号、例えば電波もしくは他の自由に伝搬する電磁波、導波路もしくは他の伝送媒体内を伝搬する電磁波(例えば光ファイバ・ケーブル内を通る光パルス)、または導線を通して伝送される電気信号であると解釈されるべきではない。
【0118】
本明細書に記載されたコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体から対応するそれぞれのコンピューティング/処理デバイスにダウンロードすることができ、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワークもしくは無線ネットワークまたはそれらの組合せを介して外部コンピュータもしくは外部ストレージ・デバイスにダウンロードすることができる。このネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータもしくはエッジ・サーバ、またはこれらの組合せを含むことができる。それぞれのコンピューティング/処理デバイス内のネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インタフェースは、コンピュータ可読プログラム命令をネットワークから受信し、それらのコンピュータ可読プログラム命令を、対応するそれぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶するために転送する。
【0119】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セット・アーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データもしくは集積回路用の構成データとすることができ、またはSmalltalk(R)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語および「C」プログラミング言語もしくは同種のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つもしくは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれた、ソース・コードもしくはオブジェクト・コードとすることもできる。このコンピュータ可読プログラム命令は、その全体をユーザのコンピュータ上で実行することができ、一部をユーザのコンピュータ上で実行することができ、独立型ソフトウェア・パッケージとして実行することができ、一部をユーザのコンピュータ上で、一部をリモート・コンピュータ上で実行することができ、または全体をリモート・コンピュータもしくはリモート・サーバ上で実行することができる。上記の最後のシナリオでは、リモート・コンピュータを、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)もしくはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続することができ、またはこの接続を、外部コンピュータに対して(例えばインターネット・サービス・プロバイダを使用してインターネットを介して)実施することができる。いくつかの実施形態では、本発明の諸態様を実施するために、例えばプログラム可能ロジック回路、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)またはプログラム可能ロジックアレイ(PLA)を含む電子回路が、このコンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用してその電子回路をパーソナライズすることにより、このコンピュータ可読プログラム命令を実行することができる。
【0120】
本明細書では、本発明の諸態様が、本発明の実施形態による方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム製品の流れ図もしくはブロック図またはその両方の図を参照して説明される。それらの流れ図もしくはブロック図またはその両方の図のそれぞれのブロック、およびそれらの流れ図もしくはブロック図またはその両方の図のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム命令によって実施することができることが理解される。
【0121】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、マシンを形成する汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供することができ、その結果、それらのコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行されるこれらの命令は、流れ図もしくはブロック図またはその両方の図のブロックに指定された機能/動作を実施する手段を生成する。これらのコンピュータ可読プログラム命令はさらに、特定の方式で機能するようにコンピュータ、プログラム可能データ処理装置もしくは他のデバイスまたはこれらの組合せに指示することができるコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶することができ、その結果、その中に命令が記憶されたコンピュータ可読ストレージ媒体は、流れ図もしくはブロック図またはその両方の図のブロックに指定された機能/動作の態様を実施する命令を含む製品を含む。
【0122】
コンピュータ可読プログラム命令はさらに、コンピュータ、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータによって実施されるプロセスを生み出すために、このコンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置または他のデバイス上にロードすることができ、その結果、このコンピュータ、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で実施されるこれらの命令は、流れ図もしくはブロック図またはその両方の図のブロックに指定された機能/動作を実施する。
【0123】
添付図中の流れ図およびブロック図は、本発明のさまざまな実施形態によるシステム、方法およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実施態様のアーキテクチャ、機能および動作を示している。この点に関して、それらの流れ図またはブロック図のそれぞれのブロックは、指定された論理機能を実施するための1つまたは複数の実行可能命令を含む、命令のモジュール、セグメントまたは部分を表すことがある。いくつかの代替実施態様では、これらのブロックに示された機能を、図に示された順序とは異なる順序で実施することができる。例えば、連続して示された2つのブロックを、実際には、実質的に同時に実行することができ、または、含まれる機能によってはそれらのブロックを逆の順序で実行することもできる。それらのブロック図もしくは流れ図またはその両方の図のそれぞれのブロック、ならびにそれらのブロック図もしくは流れ図またはその両方の図のブロックの組合せを、指定された機能もしくは動作を実行しまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組合せを実施するハードウェア・ベースの専用システムによって実施することができることにも留意すべきである。
【0124】
限られた数の実施形態、変形実施形態および添付図面を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えること、および等価物で代用することができることを当業者は理解するであろう。特に、所与の実施形態もしくは変形実施形態に記載された(デバイスのようなまたは方法のような)特徴または図面に示された(デバイスのようなまたは方法のような)特徴を、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実施形態、変形実施形態または図面の別の特徴と組み合わせること、別の特徴の代わりに使用することができる。したがって、上記の実施形態または変形実施形態に関して説明した特徴のさまざまな組合せであって、添付の特許請求の範囲に留まるさまざまな組合せを企図することができる。さらに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の教示の範囲から逸脱することなく多くの軽微な変更を加えることができる。したがって、本発明が、開示された特定の実施形態に限定されないこと、および本発明が、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むことが意図されている。さらに、上で明示的に触れたもの以外の多くの変形実施形態を企図することができる。