(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】変性光二量体化性ポリマーと、アルカリ剤及び/又はアミノアルコキシシラン誘導体とを含む組成物並びにその組成物を実用した処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230919BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230919BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230919BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20230919BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230919BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/41
A61K8/898
A61K8/49
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2021535925
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085605
(87)【国際公開番号】W WO2020127230
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ウッドランド
(72)【発明者】
【氏名】エリック・パリ
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン・ヴィック
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03046072(FR,A1)
【文献】特開2017-016116(JP,A)
【文献】特開昭61-153655(JP,A)
【文献】特開平05-027449(JP,A)
【文献】特表2017-530996(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190466(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
- 少なくとも1つの光二量体化性ペンダント基を含む少なくとも1つの光架橋性ポリマー;
- 1つ又は複数のアルカリ剤であって、前記組成物の総質量に対して0.01質量%~10質量%の範囲の含有量で前記組成物中に存在する1つ又は複数のアルカリ剤
を含み、前記組成物のpHは、8~10であり、
前記光二量体化性ペンダント基は、以下の化合物:
- 式:
【化1】
(式中、
- 同一であるか又は異なるR
1及びR
3は、ハロゲン原子若しくは(C
1~C
6)アルキル基を表すか;又は2つの隣接するR
1又はR
3基は、それを保持する炭素原子と共に一緒にベンゾ基を形成し;
- R
2は、水素原子、
または(C
1~C
6)アルキル基を表
し;
- q及びrは、両端値を含めて0~4の整数を表し;及び
- Q
-は
、クロリド、ブロミド、ヨージド、ペルクロレート、テトラフルオロボレート、メチルスルフェート、ホスフェート、スルフェート、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネートか
ら選択されるアニオン性対イオンを表し;
-
【化2】
は、分子の残りの部分に前記一価基の一部を連結する結合を表し、ペンダント基A
2は、R
2を介して前記分子の残りの部分に連結され得ることが理解さ
れる)
を有するスチリルピリジニウム(スチルバゾリウム)及びその幾何異性体の一価基であることを特徴とし、
前記光架橋性ポリマーは、ポリ(ビニル)ポリマ
ーから選択される天然又は合成骨格を有することを特徴とし、
前記光架橋性ポリマーは、
-
飽和又は不飽和(C
1~C
30)アルキル基、
- アルケニル基、
- アリール基
から選択さ
れる、少なくとも1つの疎水性ペンダント基を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの光二量体化性ペンダント基を含む前記ポリマーは、前記組成物の総質量に対して0.01~25
%に相当することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルカリ剤は、水溶性無機アルカリ剤、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸及び有機アミ
ンから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3-アミノエチルトリエトキシシラン(AETES)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラ
ン又はそのオリゴマー及び/若しくはその加水分解生成物から選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ剤は、前記組成物の総質量に対して0.01質量%~10質量
%の範囲の含有量で前記組成物中にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ケラチン物
質を処理する方法であって、以下の工程:
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程;
- 前記ケラチン物質上の前記組成物に照射して、前記ポリマーを架橋する工程
を含む方法。
【請求項7】
前記照射は、UVA又は可視領域の放射
線での照射であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの変性光架橋性ポリマーと、アルカリ剤及び/又はアミノアルコキシシラン誘導体とを特定の含有量で含む組成物、特に化粧用組成物、特に毛髪用組成物に関する。かかる組成物は、洗浄に対して耐性であるコーティングを生成することができ、その性能は、経時的に安定である。
【背景技術】
【0002】
ビニルモノマー、特に(メタ)アクリレートモノマーからの材料など、光架橋性材料を使用することは、当業者に公知である。
【0003】
それに応じて、(特許文献1)は、毛髪をウェーブさせる方法並びにこの方法を実施するための組成物、特にビニル官能基を有するシリコーン、フリーラジカル光開始剤及び溶媒を含むシリコーンベースの中和組成物を記載している。毛髪の永久変形プロセス後及び組成物の光架橋後、それが毛髪に塗布された場合、この組成物は、過酸化水素をベースとする中和溶液の代替品としての役割を果たす。この組成物は、コンディショニング及び柔らかな感触などの利点を毛髪に与える一方、ケラチンに対して架橋剤として同時に機能するという利点を有する。その組成物の光架橋は、光開始剤(一般にアセトフェノン誘導体)によって引き起こされ、UVA領域(350~385nm)の放射線に曝露した場合にラジカルを放出する。
【0004】
残念ながら、光開始剤の存在下での、ビニル官能基を有するシリコーンの光重合により、ビニル官能基での不可逆的シリコーン光架橋が生じる。すなわち、それが光架橋すると、毛髪から沈着物を容易に且ついかなる時点でも除去することができない。
【0005】
(特許文献2)は、ケラチン物質、特に毛髪上に沈着物を形成し得る光二量体化性組成物を記載している。この文献では、かかる沈着物は、長期的に持続する沈着を得ることを可能とし、それは、経時的に美容的耐久性を提供し、且つ容易に除去されることが教示されている。しかしながら、この文献に記載の架橋性コンパウンドから得られる沈着物の持続性は、限られている。さらに、これらのコンパウンドは、毛髪に均一に沈着せず、その沈着は、毛髪ダメージの量にかなり依存する。したがって、この結果は、毛髪の根元と先端との間で均一ではない。
【0006】
毛髪全体で均一な沈着を得るために、特に(特許文献3)に記載のように、光二量体化性ペンダント基及び疎水性ペンダント基を有するポリマーの使用が既に提案されている。しかしながら、記載の光二量体化性ポリマーは、経時的に安定性が乏しい。組成物の性能及び安全性は、経時的に必ずしも保証されない。
【0007】
得られる結果を安定性の点で改善する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,300,285号明細書
【文献】欧州特許第1572139号明細書
【文献】国際公開第2017/108767号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、従来技術の組成物の欠点を示さない、光架橋性ポリマーを含む組成物を提供することに関する。本発明の目的は、特に、経時的に安定な光二量体化性組成物であって、ケラチン物質、特に毛髪の効率的であり、均一であり、復元可能であり、長期的に持続するコーティングを可能にし、そのコーティングは、洗浄に耐える、組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の主題の1つは、組成物であって、
- 少なくとも1つの光二量体化性ペンダント基を含む少なくとも1つの光架橋性ポリマー、
- 1つ又は複数のアルカリ剤及び/又はアミノアルコキシシラン誘導体であって、組成物の総質量に対して0.01質量%~10質量%の範囲の含有量で組成物中に存在する1つ又は複数のアルカリ剤及び/又はアミノアルコキシシラン誘導体
を含み、組成物のpHは、7以上である、組成物である。
【0011】
本発明の他の主題は、ケラチン物質を処理する方法であって、前記組成物を塗布する工程と、ケラチン物質上の組成物に照射して、組成物を架橋する工程とを含む方法である。
【0012】
洗浄に対して持続性である、毛髪の均一なコーティングを得ることを可能にする、経時的に安定である組成物がこのようにして得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的のために且つ別段の指定がない限り、
・「アルキレン鎖」は、その鎖が、i)ヒドロキシル、ii)(C
1~C
2)アルコキシ、iii)(ポリ)ヒドロキシ(C
2~C
4)アルコキシ(ジ)(C
1~C
2)(アルキル)アミノ、iv)R
a-Z
a-C(Z
b)-Z
c-、及びv)R
a-Z
a-S(O)
t--Z
c-(ここで、同一であるか又は異なり得るZ
a及びZ
bは、酸素若しくは硫黄原子又はNR
a’基を表し、Z
cは、結合、酸素若しくは硫黄原子又はNR
a基を表し;R
aは、アルカリ金属、水素原子、アルキル基を表すか、又は代わりにカチオン分子の他の部分及びRa’が水素原子又はアルキル基を表す場合、R
aが存在しない)から選択される、同一であるか又は異なり得る1つ又は複数の基で任意選択的に置換されている直鎖である場合、非環式C
1~C
20二価炭化水素鎖、特にC
1~C
6鎖、より詳細にはC
1~C
2鎖を表し;より詳細には、iv)基は、カルボキシレート-C(O)O-又は-C(O)O金属(金属=アルカリ金属)、カルボキシル-C(O)-OH、グアニジノH
2H-C(NH
2)-NH-、アミジノH
2H-C(NH
2)-、(チオ)尿素H
2N-C(O)-NH-及びH
2N-C(S)-NH-、アミノカルボニル-C(O)-NRa’
2又はアミノチオカルボニル-C(S)-NRa’
2;カルバモイルRa’-C(O)-NRa’-又はチオカルバモイルRa’-C(S)-NRa’-(ここで、同一であるか又は異なり得るRa’は、水素原子又は(C
1~C
4)アルキル基を表す)から選択され;
・「アリール」若しくは「ヘテロアリール」基又は基のアリール若しくはヘテロアリール部分は、
- ヒドロキシル、C
1~C
2アルコキシ、C
2~C
4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、アシルアミノ、同一であるか又は異なり得る2つのC
1~C
4アルキル基で置換されているアミノから選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換されており、任意選択的に少なくとも1つのヒドロキシル基を保持するか、又はその2つの基が、それらが結合する窒素原子と共に、他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む、飽和又は不飽和の、任意選択的に置換されている5~7員、好ましくは5員若しくは6員複素環を場合により形成する、C
1~C
16、好ましくはC
1~C
8アルキル基;
- ハロゲン原子;
- ヒドロキシル基;
- C
1~C
2アルコキシ基;
- C
2~C
4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基;
- アミノ基;
- 5員又は6員ヘテロシクロアルキル基;
- (C
1~C
4)アルキル基、好ましくはメチルで任意選択的に置換されている、任意選択的にカチオン性の5員又は6員ヘテロアリール基、好ましくはイミダゾリウム;
- 1つ又は2つの同一であるか又は異なるC
1~C
6アルキル基で置換されているアミノ基であって、任意選択的に、少なくとも、
i)1つのヒドロキシル基、
ii)1つ又は2つの任意選択的に置換されているC
1~C
3アルキル基で任意選択的に置換されているアミノ基であって、前記アルキル基は、それらが結合する窒素原子と共に、少なくとも1つの他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む、飽和又は不飽和の、任意選択的に置換されている5~7員複素環を場合により形成する、1つのアミノ基、
iii)1つの第4級アンモニウム基-N
+R’R’’R’’’,M
-(ここで、同一であるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素原子又はC
1~C
4アルキル基を表し;M
-は、有機酸若しくは無機酸又は対応するハロゲン化物の対イオンを表す);又は
iv)(C
1~C
4)アルキル基、優先的にはメチルで任意選択的に置換されている、1つの任意選択的にカチオン性の5員又は6員ヘテロアリール基、優先的にはイミダゾリウム
を保持する、アミノ基;
- アシルアミノ基(-NR-C(O)-R’)(ここで、R基は、水素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するC
1~C
4アルキル基であり、R’基は、C
1~C
2アルキル基である);
- カルバモイル基((R)
2N-C(O)-)(ここで、同一であるか又は異なり得るR基は、水素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するC
1~C
4アルキル基を表す);
- アルキルスルホニルアミノ基(R’-S(O)
2-N(R)-)(ここで、R基は、水素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するC
1~C
4アルキル基を表し、基R’は、C
1~C
4アルキル基又はフェニル基を表す);アミノスルホニル基((R)
2N-S(O)
2-)(ここで、同一であるか又は異なり得る基Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するC
1~C
4アルキル基を表す);
- 酸又は塩形態のカルボキシル基(好ましくは、アルカリ金属又は置換若しくは未置換アンモニウムで塩化されている);
- シアノ基;
- ニトロ又はニトロソ基;
- ポリハロアルキル基、優先的にはトリフルオロメチル基
から選択される、炭素原子によって保持される少なくとも1つの置換基で置換され得、
非芳香族基の環式、シクロアルキル又は複素環式部分は、以下の基:
- ヒドロキシル;
- C
1~C
4アルコキシ又はC
2~C
4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ;
- C
1~C
4アルキル;
- アルキルカルボニルアミノ(R-C(O)-N(R’)-)(ここで、基R’は、水素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するC
1~C
4アルキル基であり、基Rは、C
1~C
2アルキル基又は同一であるか若しくは異なり得る1つ又は2つのC
1~C
4アルキル基で任意選択的に置換されており、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するアミノ基であり、前記アルキル基が、それらが結合する窒素原子と共に、少なくとも1つの他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む、任意選択的に置換されている飽和又は不飽和5~7員複素環を場合により形成する);
- アルキルカルボニルオキシ(R-C(O)-O-)(ここで、基Rは、C
1~C
4アルキル基又は同一であるか若しくは異なる1つ又は2つのC
1~C
4アルキル基で任意選択的に置換されており、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に保持するアミノ基であり、前記アルキル基が、それらが結合する窒素原子と共に、少なくとも1つの他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む、任意選択的に置換されている飽和又は不飽和5~7員複素環を形成し得る);
- アルコキシカルボニル(R-G-C(O)-)(ここで、基Rは、C
1~C
4アルコキシ置換基であり、Gは、酸素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を任意選択的に含むC
1~C
4アルキル基で任意選択的に置換されているアミノ基であり、前記アルキル置換基が、それらが結合する窒素原子と共に、少なくとも1つの他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む、任意選択的に置換されている飽和又は不飽和5~7員複素環を形成し得る)
から選択される少なくとも1つの基によって置換され得、
・環式、シクロアルキル若しくは複素環式基又はアリール若しくはヘテロアリール基の非芳香族部分は、1つ又は複数のオキソ基で任意選択的に置換され得;
・シクロアルキル基は、シクロペンチル又はシクロヘキシルなど、3~10個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子を含む単環式又は二環式の炭化水素ベースの基であり;
・炭化水素ベース鎖は、1つ若しくは複数の二重結合及び/又は1つ若しくは複数の三重結合を含む場合に不飽和鎖であり;
・「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式又は縮合若しくは非縮合多環式炭素ベース基を表し、その少なくとも1つの環は、芳香族であり;好ましくは、そのアリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル又はテトラヒドロナフチルであり;
・「ヘテロアリール基」は、窒素、酸素、硫黄及びセレンから選択される1~6個のヘテロ原子を含む、任意選択的にカチオン性の5~22員単環式又は縮合若しくは非縮合多環式基を表し、その少なくとも1つの環は、芳香族であり;好ましくは、ヘテロアリール置換基は、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾビストリアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾピリダジニル、ベンゾキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリジニル、テトラゾリル、ジヒドロチアゾリル、イミダゾピリジル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、ナフトイミダゾリル、ナフトキサゾリル、ナフトピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾロピリジル、フェナジニル、フェノキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリリル、ピラゾイルトリアジル、ピリジル、ピリジノイミダゾリル、ピロリル、キノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾイルイミダゾリル、チオピリリル、トリアゾリル、キサンチル及びそのアンモニウム塩から選択され;
・「複素環式基」は、1つ又は2つの不飽和を含有し得る、5~22員単環式又は縮合若しくは非縮合多環式基であるが、窒素、酸素、硫黄及びセレン原子から選択される1~6個のヘテロ原子を含む非芳香族であり;
・「ヘテロシクロアルキル基」は、少なくとも1つの飽和環を含む複素環式基であり;
・「カチオン性ヘテロアリール基」は、環内又は環外4級化カチオン基を含む、上記で定義されるヘテロアリール基であり、
○カチオン電荷が環内にある場合、それは、共鳴効果による電子非局在化に含まれ;例えば、ピリジニウム、イミダゾリウム又はインドリニウム基:
【化1】
(式中、R及びR’は、上記で定義されるヘテロアリール置換基、特にメチルなどの(ヒドロキシ)(C
1~C
8)アルキル基である)
であり;
○カチオン電荷が環外にある場合、それは、例えば、アンモニウム又はホスホニウムR
+置換基、例えばトリメチルアンモニウムであり、そのピリジル、インドリル、イミダゾリル又はナフタルイミジル
【化2】
(式中、Rは、上記で定義されるヘテロアリール置換基であり、R
+は、アンモニウムR
aR
bR
cN
+-、ホスホニウムR
aR
bR
cP
+-又はアンモニウムR
aR
bR
cN
+-(C
1~C
6)アルキルアミノ基であり、ここで、同一であるか又は異なり得るR
a、R
b及びR
cは、水素原子又はメチルなどの(C
1~C
8)アルキル基を表す)
などのヘテロアリールの外にあり;
・「環外電荷を保持するカチオンアリール」は、その4級化カチオン基が前記環の外にあるアリール環を意味し;それは、特にアンモニウム又はホスホニウムR
+置換基、例えばフェニル又はナフチルなどのアリールの外にあるトリメチルアンモニウム:
【化3】
であり;
・「アルキル基」は、直鎖状又は分岐状C
1~C
20、好ましくはC
1~C
8炭化水素ベースの基であり;
・「アルケニレン基」は、1~4個の共役又は非共役二重結合-C=C-を含有し得る、上記で定義される不飽和炭化水素ベースの二価基であり;そのアルケニレン基は、特に1個又は2個の不飽和を含有し;
・アルキル基に適用される「任意選択的に置換されている」という用語は、前記アルキル基が、以下の基:i)ヒドロキシル、ii)C
1~C
4アルコキシ、iii)アシルアミノ、iv)1つ又は2つの同一であるか又は異なるC
1~C
4アルキル置基で任意選択的に置換されているアミノであって、前記アルキル基は、それを保持する窒素原子と共に、他の窒素若しくは非窒素ヘテロ原子を任意選択的に含む5~7員複素環を形成し得る、アミノ;又はv)第4級アンモニウム基-N
+R’R’’R’’’,M
-(ここで、同一であるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’に対するM
-は、水素原子又はC
1~C
4アルキル基を表すか、又は代わりに-N
+R’R’’R’’’は、C
1~C
4アルキル基で任意選択的に置換されているイミダゾリウムなどのヘテロアリールを形成し、M
-は、対応する有機酸、無機酸又はハロゲン化物の対イオンを表す)から選択される、1つ又は複数の基で置換され得ることを意味し;
・「アルコキシ基」は、アルキルオキシ基であり、そのアルキル置換基は、直鎖状又は分岐状C
1~C
16、好ましくはC
1~C
8炭化水素ベースの置換基であり;アルコキシ基が任意選択的に置換されている場合、これは、アルキル基が上記で定義されるように任意選択的に置換されていることを意味し;
・「有機又は無機酸塩」は、さらに詳細には、i)塩化水素酸HCl、ii)臭化水素酸HBr、iii)硫酸H
2SO
4、iv)アルキルスルホン酸:Alk-S(O)
2OH、例えばメタンスルホン酸及びエタンスルホン酸;v)アリールスルホン酸:Ar-S(O)
2OH、例えばベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸;vi)クエン酸;vii)コハク酸;viii)酒石酸;ix)乳酸;x)アルコキシスルフィン酸:Alk-O-S(O)OH、例えばメトキシスルフィン酸及びエトキシスルフィン酸;xi)アリールオキシスルフィン酸、例えばトルエンオキシスルフィン酸及びフェノキシスルフィン酸;xii)リン酸H
3PO
4;xiii)酢酸CH
3C(O)OH;xiv)トリフル酸CF
3SO
3H;及びxv)テトラフルオロホウ酸HBF
4から誘導される塩から選択される塩を意味し;
・「アニオン性対イオン」は、着色剤のカチオン電荷と釣り合う、有機又は無機酸塩から誘導されるアニオン又はアニオン基を意味することが意図され;さらに詳細には、アニオン性対イオンは、i)クロリド又はブロミドなどのハロゲン化物;ii)ニトレート;iii)C
1~C
6アルキルスルホネートを含むスルホネート:メタンスルホネート又はメシレート及びエタンスルホネートなどのAlk-S(O)
2O
-;iv)アリールスルホネート:ベンゼンスルホネート及びトルエンスルホネート若しくはトシレートなどのAr-S(O)
2O
-;v)シトレート;vi)スクシネート;vii)タルトレート;viii)ラクテート;ix)アルキルスルフェート:メチルスルフェート及びエチルスルフェートなどのAlk-O-S(O)O
-;x)アリールスルフェート:ベンゼンスルフェート及びトルエンスルフェートなどのAr-O-S(O)O
-;xi)アルコキシスルフェート:メトキシスルフェート及びエトキシスルフェートなどのAlk-O-S(O)
2O
-;xii)アリールオキシスルフェート:Ar-O-S(O)
2O
-;xiii)ホスフェートO=P(OH)
2-O
-、O=P(O
-)
2-OH、O=P(O
-)
3、HO-[P(O)(O
-)]
w-P(O)(O
-)
2(wは、整数である);xiv)アセテート;xv)トリフラート;及びxvi)テトラフルオロボレートなどのボレート;xvii)ジスルフェート(O=)
2S(O
-)
2又はSO
4
2-及びモノスルフェートHSO
4
-から選択され;
有機又は無機酸塩から誘導されるアニオン性対イオンは、分子の電気的中性を保証し;したがって、アニオンがいくつかのアニオン電荷を含む場合、同じアニオンは、同じ分子におけるいくつかのカチオン基の電気的中性に役立つか、又はいくつかの分子の電気的中性で役立つと理解され;例えば、2つのカチオン種を含むポリマーは、2つの「一荷電」アニオン性対イオン又は1つの「二荷電」アニオン性対イオン、例えば(O=)
2S(O
-)
2若しくはO=P(O
-)
2-OHのいずれかを含み得;
・さらに、本発明に関連して使用され得る付加塩は、特に、以下で定義されるアルカリ剤、例えば水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アミン又はアルカノールアミンなどの化粧品として許容可能な塩基との付加塩から選択され;
・「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」に等しく;及び
・濃度範囲についての「両端値を含めて」という表現は、その範囲の限界値が、定義される範囲に含まれることを意味する。
【0014】
本発明の目的では、「光二量体化性基」という用語は、照射下で光二量体化反応を引き起こす化学基を意味する。本発明の目的では、光二量体化は、2つの二重結合(2+2型)間又は2対の二重結合(4+4型)間での化学反応であり、より詳細には2つの二重結合(2+2型)間での化学反応である。
【0015】
2つの二重結合間での反応の場合、概略的に以下のように表される。
【化4】
【0016】
これらの光二量体化反応は、書籍Advanced Organic Chemistry,J.Marck,4th edition,Wiley Interscience,NY 1992,page 855で定義されている。
【0017】
したがって、光刺激された場合、一般に特定の紫外線に曝露された場合、二重結合は、環化によってもう1つの二重結合と反応し得ることが証明されている。
【0018】
本発明に従って、その二重結合は、活性化されていると述べられ、すなわち光開始剤又は化学開始剤の存在を必要とすることなく自発的に光二量体化可能である。
【0019】
’’
この二重結合は、一般に、この光二量体化性二重結合のα位での電子求引性置換基の存在によって活性化される。電子求引性置換基として、1つ又は複数のハロゲン原子によって任意選択的に置換されているフェニル基などの芳香族環又はNO2、CN、R’-Y-C(Y’)-、R’-C(Y’)-Y-、R’-Y-C(Y’)-Y-、R’-Y-S(O)2-、-S(O)2-Y-R’(ここで、R’は、水素原子又は1つ若しくは複数のハロゲン原子によって任意選択的に置換されている(C1~C4)アルキル基を表し、同一であるか又は異なり得るY及びY’は、酸素若しくは硫黄原子又はNR’’(R’’は、水素原子又は(C1~C6)アルキル基を表す)を表す)などの電子求引性基が挙げられる。
【0020】
本発明による方法は、少なくとも1つの光二量体化性ペンダント基を含むポリマーを含む組成物を適用する工程a)を含む。
【0021】
好ましくは、本発明に従って使用され得る光二量体化性ペンダント基は、以下の式(I)及び(II):
【化5】
を有する一価基及びその幾何異性体から選択され、
式(I)及び(II)中、
- Y及びZは、独立して、窒素原子又は基C(R)(ここで、Rは、水素原子又はメチルなどの(C
1~C
4)アルキル基を表す)を示し;
- Aは、1つの結合又は(C
1~C
8)アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、(チオ)カルボニル、(C
2~C
8)アルケニレン基及びその組み合わせから選択される二価基を表し;
- Bは、(C
1~C
8)アルキル基、アリール、任意選択的にカチオン性のヘテロアリール、シクロアルキル、任意選択的にカチオン性のヘテロシクロアルキル、(チオ)カルボニル、(C
2~C
8)アルケニル基及びその組み合わせから選択される一価基を表し;
- Xは、(C
2~C
8)アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、(チオ)カルボニル、(C
2~C
8)アルケニレン基及びその組み合わせから選択される二価基を表し;
- pは、両端値を含めて1~5の整数、より詳細には1~3の整数を表し、好ましくは、pは、1であり;
-
【化6】
は、分子の残り部分に一価置基の一部を連結する結合を表し;
記載される基のそれぞれは、1つ若しくは複数のハロゲン原子又は(C
1~C
6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、(ジ)(C
1~C
6)アルキルアミノ、フェニル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(チオ)カルボニル、水素(チオ)-カルボニル、スルホナトR-O-S(O)
2-若しくはR-S(O)
2-O-、アミドRR’N-C(O)-、若しくはR-C(O)-N(R’)-、若しくはアシルR-C(O)-、アンモニウムRR’R’’N
+-基(ここで、同一であるか又は異なり得るR、R’及びR’’は、水素原子又は(C
1~C
4)アルキル基を表す)から選択される基で任意選択的に置換され得る。
【0022】
本発明による二量体化性ペンダント基は、特に米国特許第2,811,510号明細書、欧州特許第0313220号明細書、欧州特許第0313221号明細書、欧州特許第092901号明細書、英国特許第2030575号明細書及び英国特許第2076826号明細書並びに論文“Chemical Review Vol 83,5 1983,p507、Polym,Paint Colour Journal 1988,178,p209”及び“Current Trends in Polymer Photochemistry,Ellis Morwood edition,NY,1995”に記載の基である。
【0023】
例として、以下の化合物:
- スチルベン、
- 式:
【化7】
(式中、
・同一であるか又は異なり得るR
1及びR
3は、ハロゲン原子若しくは(C
1~C
6)アルキル基を表すか;又は2つの隣接するR
1又はR
3基は、それを保持する炭素原子と共に一緒にベンゾ基を形成し;
・R
2は、水素原子、塩素などの1つ若しくは複数のハロゲン原子又はヒドロキシで任意選択的に置換されている(C
1~C
6)アルキル基を表し、好ましくは、R
2は、メチル、エチル、プロピルなどの(C
1~C
6)アルキル基を表し;
・q及びrは、両端値を含めて0~4の整数を表し;及び
・Q
-は、ハロゲン化物イオン、例えばクロリド、ブロミド、ヨージド、ペルクロレート、テトラフルオロボレート、メチルスルフェート、ホスフェート、スルフェート、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネートから好ましくは選択されるアニオン性対イオンを表し;
・
【化8】
は、分子の残りの部分に一価置基の一部を連結する結合を表し、ペンダント基A
2は、R
2を介して分子の残りの部分に連結され得ることが理解され;
好ましくは、
【化9】
結合は、A
1上のスチリル基に対してパラ位のフェニル上で見出されるか、又はA
2上のR
2を介して分子の残りの部分に連結され;優先的には、A
1及びA
2のスチリル基は、ピリジニウム基に対してパラ位で見出される)
を有するスチリルピリジニウム(スチルバゾリウム)及びその幾何異性体;
- 式:
【化10】
(式中、
・Aは、硫黄原子、酸素原子又はNR
2若しくはC(R
2)
2基を表し;及び
・
【化11】
、Q
-、r、q、R
1、R
2及びR
3は、上記で定義される通りであり、
好ましくは、
【化12】
結合は、スチリル基に対してパラ位のフェニル上で見出される)
を有するスチリルアゾリウム及びその幾何異性体、
- スチリルピラジン、
- カルコン、
- (チオ)シンナメート及び(チオ)シンナムアミド、
- マレイミド、
- (チオ)クマリン、
- チミン、
- ウラシル、
- ブタジエン
- アントラセン、
- ピリドン、
- ピロリジノン、
- アクリジジニウム塩、
- フラノン、
- フェニルベンゾオキサゾール、及び
- その誘導体、
からの一価基から選択される光二量体化性ペンダント基がより詳細に挙げられる。
【0024】
特定の実施形態に従って、本発明の光二量体化性ペンダント基は、
a)式(Ia)又は(Ib):
【化13】
(式中、
- Rは、水素原子又はC
1~C
4アルキル若しくはC
1~C
4ヒドロキシアルキル基を表し、
- R’は、水素原子又はC
1~C
4アルキル基を表し、
- X
-は、ハロゲン化物イオン、例えばクロリド、ブロミド、ヨージド、ペルクロレート、テトラフルオロボレート、メチルスルフェート、ホスフェート、スルフェート、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネートから選択されるアニオン性対イオンを示し;好ましくは、スチリル基は、ピリジニウム基に対してパラ位及び/又は
【化14】
結合に対してパラ位で見出される);
【化15】
(式中、
- R’’は、2~8個の炭素原子を有する二価アルキレン基を示し、
- R’は、水素原子又はC
1~C
4アルキル基を表し、及び
- X
-は、上記の式(Ia)について記載の意味と同じ意味を有し、ここで、
【化16】
は、上記と同じ意味を有し;
好ましくは、スチリル基は、ピリジニウム基に対してパラ位で見出される)
を有するスチルバゾリウム官能基を保持する1つ又は複数の光二量体化性基及びその幾何異性体;又は
b)式(IIa):
【化17】
(式中、
- R
1は、水素原子又はC
1~C
4アルキル又はC
1~C
4ヒドロキシアルキル基を示し;
- Aは、硫黄原子、酸素原子又はNR’若しくはC(R’)
2基、R’を示し;ここで、R’は、水素原子又はC
1~C
4アルキル基を表し、R’は、好ましくは、水素原子を表し;及び
- X
-は、上記の式(Ia)について記載の意味と同じ意味を有し;
- ここで、
【化18】
は、上記と同じ意味を有し;
好ましくは、スチリル基は、フェニル基
【化19】
のパラで見出される)
を有するスチリルアゾリウム官能基を保持する光二量体化性基
から選択される。
【0025】
かかる化学基は、活性化二重結合を保持し、これらの二重結合の光二量体化自体は、光開始剤を必要とすることなくUVA領域において自発的に開始する。
【0026】
光開始剤は、本発明の意味において、光二量体化反応を開始し、特にUV領域で照射された場合にラジカルを放出する化合物として理解される。
【0027】
特定の一実施形態に従って、本発明の組成物は、光開始剤を含有しない。
【0028】
本発明の特定の実施形態に従って、ポリマーは、1つ又は複数のペンダント疎水性基を含み得る。
【0029】
ペンダント疎水性基として、
- 1つ又は複数のヘテロ原子によって任意選択的に置換され、且つ/又はそれが介在する飽和又は不飽和(C1~C30)アルキル基、
- アルケニル基、
- アリール基、例えばフェニル、ピリジル、フリル、インドリル、ベンゾフリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル;
- フッ素化基、例えば-CF3、-CHF2、-OCF3、-SCF3、CF3C(O)-などのフルオロカーボン基、
- シリコーン基、例えば-Si(CH3)3などの-SiRaRbRc、ポリジメチルシロキサン-PDMS、-Si(OR)3、α,ω-ジアミノプロピルPDMS、α,ω-ジヒドロキシアルキルPDMS、α,ω-ジカルボキシアルキルPDMS(ここで、同一であるか又は異なるRa、Rb及びRcは、O又はSなどの1つ又は複数の非隣接ヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又はそれを末端とする(C1~C8)アルキル基を表し;及びRは、(C1~C6)アルキル基を表す)
が挙げられる。
【0030】
好ましくは、そのペンダント疎水性基は、(C2~C22)アルキル基、より好ましくは(C3~C16)アルキル基、特にプロピルから選択される。
【0031】
そのポリマー骨格は、様々な性質を有し得る。このポリマー骨格は、天然又は合成骨格であり得る。天然のポリマー骨格として多糖が挙げられる。
【0032】
多糖として、キサンタン、カラゲナン、キトサン、セルロース及びその誘導体、アルギナート、デンプン、デキストラン、プルラン、ガラクトマンナン並びに生物学的に許容可能なその塩及びその誘導体が挙げられる。合成骨格として、ポリ(ビニル)ポリマー及びポリジオルガノシロキサンが挙げられる。
【0033】
ポリ(ビニル)ポリマーとして、部分的に又は完全に加水分解されたポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。
【0034】
スチルバゾリウム官能基を保持する光二量体化性基を含有するポリマーに関して、それらは、式(Ia)又は(Ib)を含む化学種を考慮して、ポリマーを反応させることによって得られる。
【0035】
好ましくは、基(Ia)を含む化学種は、アルデヒド又はアセタール型の反応性基Wを保持する。
【0036】
スチリルピリジニウム基をグラフトするために使用することができる化学種として、2-(4-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、4-(4-ホルミル-スチリル)-ピリジニウム、2-(3-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-メチル-2-(4-ホルミルスチリル)ピリジニウム、N-メチル-3-(4-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-メチル-2-(3-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-メチル-2-(2-ホルミルスチリル)ピリジニウム、N-エチル-2-(4-ホルミル-スチリル)-ピリジニウム、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-(4-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-メチル-4-(4-ホルミルスチリル)-ピリジニウム、N-メチル-4-(3-ホルミルスチリル)-ピリジニウムの第4級塩が挙げられる。
【0037】
ピリジニウム第4級塩は、特に、クロリド、ブロミド、ヨージド、ペルクロレート、テトラフルオロボレート、メトスルフェート、ホスフェート、スルフェート、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート塩であり得る。かかる化学種は、英国特許出願公開第A-2030575号明細書に記載されている。
【0038】
挙げられる種の例には、4-(4-ホルミルフェニルエテニル)-1-メチルピリジニウムメトスルフェート、1-(3-エトキシカルボニルメチル)-4-[2-(4-ホルミルフェニル)エテニル]ピリジニウムブロミド及び1-(メトキシカルボニルプロピル)-4-[2-(4-ホルミルフェニル)エテニル]ピリジニウムブロミドが含まれる。かかる種は、米国特許出願公開第2007/0112094号明細書に記載されている。
【0039】
特に和光(Wako)社によって市販されているn-メチル-4-(4-ホルミルスチリル)ピリジニウムメチルスルフェート(RN=74401-04-0)が好ましくは利用される。
【0040】
スチリル基及び疎水性基を含むポリマーなど、光二量体化性基によって官能基化されたこれらのポリマーは、以下に記載のように、T.Uhlichらのプロトコル(Reactive&Functional Polymers,28,55-40(1995))に基づいて合成することができる。
【0041】
【化20】
式(III)~(VIII’)を有する化合物であり、式中、
同一であるか又は異なり得るRは、水素原子又は任意選択的に1つ若しくは複数のヘテロ原子によって置換され、且つ/又はそれが介在する(C
1~C
10)アルキル基を表し、好ましくは、Rは、水素原子又はメチル、エチル若しくはプロピルなどの(C
1~C
4)アルキル基を表し、より優先的には、Rは、水素原子を表し;
R
1は、水素原子又は任意選択的に1つ若しくは複数のヘテロ原子によって置換され、且つ/又はそれが介在する(C
1~C
10)アルキル基を表し、好ましくは、R
1は、水素原子又は(C
1~C
4)アルキル基を表し;
R
2は、任意選択的に1つ又は複数のヘテロ原子によって置換され、且つ/又はそれが介在する飽和又は不飽和(C
1~C
30)アルキル基、アルケニル基、アリール基、例えばフェニル、ピリジル、フリル、インドリル、ベンゾフリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル;フッ素化基、例えば-CF
3、-CHF
2、-OCF
3、-SCF
3、CF
3C(O)-などのフルオロカーボン基、シリコーン基、例えば-Si(CH
3)
3などの-SiR
aR
bR
c、ポリジメチルシロキサン-PDMS、-Si(OR)
3、α,ω-ジアミノプロピルPDMS、α,ω-ジヒドロキシアルキルPDMS、α,ω-ジカルボキシアルキルPDMS(ここで、同一であるか又は異なり得るR
a、R
b及びR
cは、O又はSなどの1つ又は複数の非隣接ヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又はそれを末端とする(C
1~C
8)アルキル基を表し;Rは、(C
1~C
6)アルキル基を表し;好ましくは、R
2は、(C
2~C
22)アルキル基、より優先的には(C
3~C
16)アルキルを表し;
Aは、上記で定義される(I)、(II)、(A
1)、(A
2)、(Ia)、(Ib)又は(IIa)などの光二量体化性化合物、好ましくはスチリルピリジニウムからの基、より詳細には上記で定義される(A
1)又は(Ia)から選択される基を表し;
Xは、酸素又は硫黄、好ましくは酸素原子を表し;
X’及びX’’は、酸素若しくは硫黄原子又はN(R
3)基(ここで、R
3は、水素原子又は(C
1~C
4)アルキル基を示す)を表し;好ましくは、X’及びX’’は、酸素原子を表し;
主に、得られる生成物は、式(VI)を有する。
【0042】
有利には、これらの化学種は、先に記載の文献に記述されるようにポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール型ポリマーと、さらに上記のスキームに記載のポリマー(III)(ここで、X、X’及びX’’は、酸素原子を表し、R及びR1は、上述の通りである)などとも反応する。
【0043】
例えば、以下の構造単位:
【化21】
(式中、Aは、基(I)、(A
1)又は(Ia)を表す)
を含むグラフト化ポリビニルアルコールポリマーが生じる。
【0044】
スチリルピリジニウム基でグラフト化されたポリビニルアルコールポリマーは、特にIchimura K.et al.,Preparation and characteristics of photo-crosslinkable poly(vinyl alcohol),Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,Vol.20,1419-1432(1982)に記述されている。
【0045】
そのポリマーは、英国特許出願公開第A-2030575号明細書、国際公開第96/29312号パンフレット、米国特許第5061603号明細書、英国特許出願公開第A-2076826号明細書及び欧州特許出願公開第A-092901号明細書に記載のように、ホルミル又はアセタール基を保持するスチリルピリジニウム塩と、ポリビニルアルコール又は部分加水分解ポリ酢酸ビニルとを反応させることによって得られる。
【0046】
スチリルピリジニウム基でグラフト化されたセルロースポリマーは、特に米国特許出願公開第2007/0112094号明細書に記述されている。
【0047】
好ましくは、基(A1)又は(Ia)を含む化学種は、塩素などのハロゲン原子である1つの反応性基を保持する。
【0048】
この変形形態において、化学種は、例えば、式:
【化22】
に対応する。
【0049】
有利には、基(Ib)を含む光架橋性ポリマーは、例えば、上記で定義されるものから選択される多糖と上記の化学種とを反応させることによって得られる。
【0050】
スチリルアゾリウム官能基を保持する光二量体化性基を含有するポリマーに関して、それらは、式(IIa)を有する基を含む化学種とポリマーとを反応させることによって得られる。
【0051】
好ましくは、基(IIa)を含む化学種は、アルデヒド又はアセタール型の反応性基Wを保持する。
【0052】
スチリルアゾリウム型の基をグラフトするために使用され得る化学種として、欧州特許出願公開第A-313220号明細書に記載の化学種が挙げられる。
【0053】
有利には、これらの化学種は、上記の文献に記載のポリビニルアルコール又はポリ酢酸ビニル型のポリマーと反応する。
【0054】
以下の構造単位:
【化23】
を含むグラフト化ポリビニルアルコールポリマーが生じ、式中、Bは、以下の基
【化24】
に対応するか、又は上記で定義される(IIa)に対応する。
【0055】
スチリルアゾリウム基でグラフト化されたポリビニルアルコールポリマーは、特に欧州特許出願公開第A-313220号明細書に記述されている。前記文献において、これらのポリマーは、アルデヒド又はアセタール基を保持するスチリルアゾリウム塩と、ポリビニルアルコール又は部分加水分解ポリ酢酸ビニルとを反応させることによって得られる。
【0056】
一実施形態に従って、1つ又は複数の光二量体化性基を保持するポリマーは、粒子状、特に分散粒子の形態である。したがって、この後者の場合、ポリマー粒子は、非常に優先的には、ポリビニルアルコール粒子である。
【0057】
好ましい実施形態に従って、本発明の光二量体化性基保持するポリマーは、化粧用媒体に可溶性である。
【0058】
したがって、一実施形態の変形形態に従って、そのポリマーは、1つ又は複数のヒドロキシ官能基及び式(IX):
【化25】
を有する1つ又は複数の官能基で部分的に官能基化されたポリビニルアルコール(PVA)ポリマーである。
【0059】
そのPVAの重合度は、100~5000であり、上記で定義される式(I)を有する官能基に対する置換レベル(%)は、0.1~25であり得る。
【0060】
以下のスキームは、そのポリマーが、上記で定義される式(A1)を有する化学種などのスチルバゾリウム種でグラフト化された官能基を保持する、上記で定義されるポリマー(III)であって、以下に例証されるように光の作用下で架橋することができるポリマーである(III)、一変形形態を表す。
【化26】
【0061】
これらの物質は、UV光及び可視光成分の両方、特に低線量のUVを含み得る照射に対して反応する。
【0062】
優先的には、以下のスキームは、PVA-SbQ(加水分解された数個の官能基と、スチルバゾリウム種でグラフト化された数個の官能基とを保持するポリ酢酸ビニル型のポリマー)であるポリマーであって、以下に例証されるように、光の作用下で架橋することができるポリマーを表す。
【化27】
【0063】
光開始剤を必要とせず、且つ紫外線及び可視光の両方、特に低線量のUVを含み得る照射で反応することから、これらの材料は、特に評価される。
【0064】
紫外線及び可視光の両方に反応性であるペンダント基が好ましい。
【0065】
他の実施形態の変形形態に従って、光架橋性ポリマーは、光二量体化性基で官能基化された天然ポリマーによって特徴付けられる。
【0066】
それは、特にコンドロイチン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、キサンタン、カラゲナン、ヒアルロン酸、キトサン、セルロース及びその誘導体、アルジネート、デンプン、デキストラン、プルラン、ガラクトマンナン並びに生物学的に許容可能なその塩から選択され得る多糖であり得る。
【0067】
官能基化度は、当然のことながら、活性化中に必要とされる架橋度を提供することができるように調節される。
【0068】
本発明に従って、光二量体化性単位での官能基化度は、少なくとも0.1%、又はさらに少なくとも0.5%、又はさらに少なくとも2%である。
【0069】
好ましくは、本発明による組成物において、光二量体化性基は、ポリ酢酸ビニル又は多糖ポリマーによって保持される。
【0070】
その架橋性ポリマーは、水性媒体中に保持され得る。
【0071】
その組成物は、異なる性質であっても又はなくてもよい、光二量体化性ペンダント基を保持する単一ポリマーを含有し得る。
【0072】
異なる官能基を有するポリマーの混合物も利用され得る。
【0073】
結果として、その反応は、同じ化学的性質であっても又はなくてもよい2つの光二量体化性基間で起こり得る。
【0074】
活性化二重結合は、同じ化学的性質の他の二重結合と反応し得るか、又は異なる化学的性質の他の二重結合と反応し得る。
【0075】
本発明において有用なポリマーの例として、PVA-SbQ-プロピオナールと呼ばれる以下のペンダント基を含むポリマーPVAが挙げられ、SbQ単位の量は、両端値を含めて0.5~5モル%、好ましくは2~4モル%、例えば約2モル%であり、プロピオナール基の量は、両端値を含めて2~20モル%、好ましくは5~15モル%、例えば約10モル%であり、ヒドロキシル基の量は、両端値を含めて50~97.5モル%、好ましくは60~97.5モル%、例えば約86モル%である。
【化28】
式中、Q
-は、上記で定義される通りであり、好ましくはメシレートCH
3OSO
3
-である。
【0076】
特定の一実施形態に従って、PVAの分子量Mwは、10000~100000g/モル、好ましくは25000~80000g/モルである。
【0077】
特定の一実施形態に従って、その分子量Mwは、約27000g/モルである。
【0078】
少なくとも1つの光二量体化性基を含むポリマーは、組成物の総質量に対して0.01~25%、さらにより良好には0.1~20%、なおもさらにより良好には1~15%に相当する。
【0079】
本発明による組成物は、有効量の少なくとも1つの光増感剤も含み得る。
【0080】
本発明の意味では、光増感剤は、照射波長を修正し、それにより光二量体化反応が誘発される成分を意味すると理解される。
【0081】
例えば、ジメチルマレイミド基の光二量体化は、波長範囲270~300nmを中心とする照射によって誘発される。チオキサントンなどの光増感剤の存在下において、光二量体化は、360~430nmの範囲の波長領域を中心とする照射で有効となる。
【0082】
本発明に従って使用することができる光増感剤の中では、特にチオキサントン、ローズベンガル、フロキシン、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、アクリフラビン、チオニン、リボフラビン、プロフラビン、クロロフィル、ヘマトポルフィリン、メチレンブルー及びその混合物が挙げられる。
【0083】
実際に、本発明に従って使用することができる光増感剤は、組成物の総質量の0.00001~5%に相当する。
【0084】
本発明による組成物は、1つ若しくは複数のアルカリ剤及び/又は1つ若しくは複数のアミノアルコキシシラン誘導体も含む。
【0085】
1つ又は複数のアルカリ剤は、
- 水溶性無機アルカリ剤、例えば、
グリシンなどの1つ又は複数のアミノ酸で緩衝されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、好ましくはリチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、
カーボネート、バイカーボネート又は水素カーボネート、pH<12.0を得るためにバイカーボネートで緩衝されたカーボネート、
リチウム、カルシウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホスフェート、
- アンモニア水、
- アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン、モノ-、ジ-及びトリ-(ヒドロキシメチル)アミノメタン並びにその誘導体、
- 塩基性アミノ酸、
- アルカリ性ポリアミノ酸又はアルカリ性アミノポリ酸、例えばポリリジン及びポリアルギニン、
- ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミンなどのポリアミン及び以下の式(A):
【化29】
の化合物
から選択され得、式(A)中、Wは、ヒドロキシル若しくはアミノ基又はC
1~C
4アルキル基で任意選択的に置換されているプロピレンなどの(C
1~C
6)アルキレン基であり;同一であるか又は異なり得るR
x、R
y、R
z及びR
tは、水素原子又はC
1~C
4アルキル若しくはC
1~C
4ヒドロキシアルキル基を表す。
【0086】
言及され得る式(A)のアミンの例としては、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン及びスペルミジンが挙げられる。
【0087】
「アルカノールアミン」という用語は、第1級、第2級又は第3級アミン官能基及び1つ又は複数のヒドロキシル基を保持する、1つ又は複数の直鎖状又は分岐状C1~C8アルキル基を含む有機アミンを意味する。
【0088】
同一であるか又は異なる1~3個のC1~C4ヒドロキシアルキル基を含む、モノ、ジ又はトリ-アルカノールアミンなど、アルカノールアミンから選択される有機アミンは、本発明の実施に特に適している。
【0089】
このタイプの化合物の中でも、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノプロパノール、1-アミノプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン、アミノブタノール、アミノペンタノール及びアミノヘキサノール、好ましくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0090】
より詳細には、使用され得るアミノ酸は、そのL体、D体又はラセミ体の天然又は合成由来のアミノ酸であり、且つより詳細にはカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸又はリン酸官能基から選択される少なくとも1つの酸官能基を含む。
【0091】
本発明で使用され得るアミノ酸としては、特に環又は官能基に任意選択的に含まれるさらなるアミン官能基を含む塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0092】
かかる塩基性アミノ酸は、好ましくは、以下の式(B)
R-CH2-CH(NH2)-C(O)-OH(B)
に対応するアミノ酸及びその塩からも選択され、
式(B)中、Rは、イミダゾリル、好ましくは5-イミダゾリル;-(CH2)3-NH2;-(CH2)2-NH2;-(CH2)2N(H)-C(O)-NH2;及び-(CH2)2-N(H)-C(NH)-NH2から選択される基を表す。
【0093】
式(B)による化合物は、ヒスチジン、リジン、アルギニン、オルニチン及びシトルリンである。
【0094】
その有機アミンは、複素環式タイプの有機アミンからも選択され得る。アミノ酸の中で既に挙げられているヒスチジン以外には、特にピリジン、ピペリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール及びベンズイミダゾールが挙げられる。
【0095】
「ポリ」アミン又は「ポリ」アミノ酸とは、同じ分子に結合された少なくとも2つのアミノ基又はアミノ酸基を含むアルカリ剤を意味し;それらは、特に、その骨格が1つ若しくは複数のアミノ基若しくはアミノ酸基を含むか、又は1つ若しくは複数のアミノ基若しくはアミノ酸基で置換されている、ポリマーである。
【0096】
その有機アミンは、アミノ酸ジペプチドからも選択され得る。本発明で使用され得るアミノ酸ジペプチドとしては、特にカルノシン、アンセリン及びクジラ(whale)が挙げられる。
【0097】
その有機アミンは、グアニジン官能基を含む化合物からも選択され得る。本発明で使用され得るこのタイプのアミンとしては、アミノ酸として既に挙げられているアルギニン以外に、クレアチン、クレアチニン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、グリコシアミン、メトホルミン、アグマチン、N-アミジノアラニン、3-グアニジノプロピオン酸、4-グアニジノ酪酸及び2-([アミノ(イミノ)メチル]アミノ)エタン-1-スルホン酸が挙げられる。
【0098】
ハイブリッド化合物としては、既に挙げられたアミンと、炭酸又は塩化水素酸などの酸との塩が挙げられる。
【0099】
特に炭酸グアニジン又はモノエタノールアミン塩酸塩が利用され得る。
【0100】
好ましくは、その1つ又は複数のアルカリ剤は、水溶性無機アルカリ剤、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸及び有機アミン、好ましくは有機アミンから選択される。
【0101】
好ましくは、その1つ又は複数のアルカリ剤は、グリシンなどの1つ又は複数のアミノ酸で緩衝されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、好ましくはリチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、カーボネート、バイカーボネート又は水素カーボネート、pH<12.0を得るためにバイカーボネートで緩衝されたカーボネート、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホスフェート、モノエタノールアミン(MEA)、アミノプロパノール、1-アミノプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アルギニン及びグアニジンから選択される。
【0102】
1つ又は複数のアミノアルコキシシラン誘導体は、以下の式(C):
R1Si(OR2)z(R3)x(OH)y (C)
(式(II)中、
・R1は、以下の基:
- アミンNH2又はNHR(R=C1~C20、特にケイ素原子、C3~C40シクロアルキル又はC6~C30芳香族を含む基で任意選択的に置換されているC1~C6アルキル)、
- 少なくとも1つのアミノ基又は少なくとも1つのC1~C4アミノアルキル基で置換されており、且つ/又はそれが介在するアリール又はアリールオキシ基
から選択される基で置換されている直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和、環状又は非環式C1~C6炭化水素ベース鎖であり;
R1は、場合により、ヘテロ原子(O、S若しくはNH)又はカルボニル基(CO)が介在しており、
・同一であるか又は異なり得るR2及びR3は、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、
・yは、0~3の範囲の整数を示し、及び
・zは、0~3の範囲の整数を示し、及び
・xは、0~2の範囲の整数を示し、
ここで、z+x+y=3である)
に対応する化合物並びに/又はそのオリゴマー及び/若しくはその加水分解生成物から選択され得る。
【0103】
「オリゴマー」という用語は、2~10個のケイ素原子を含む、式(C)の化合物の重合生成物を意味する。
【0104】
好ましくは、R2は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基、さらにより良好には1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基、好ましくはエチル基を表す。
【0105】
好ましくは、R3は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基、さらにより良好には1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基、好ましくはメチル又はエチル基を表す。
【0106】
好ましくは、R1は、非環式鎖である。
【0107】
好ましくは、式(C)の化合物は、その構造にケイ素原子を1つのみ含む。
【0108】
好ましくは、R1は、アルキル基、より優先的には1~6個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基又はC1~C6アミノアルキル基を表す。
【0109】
好ましくは、zは、1~3の範囲である、より優先的には、zは、3に等しい。
【0110】
好ましくは、R1は、アミン基NH2又はNHR(R=C1~C20、特にC1~C6アルキル、C3~C40シクロアルキル又はC6~C30芳香族)で置換されている直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和C1~C6炭化水素ベース鎖である。
【0111】
好ましくは、第1の組成物は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3-アミノエチルトリエトキシシラン(AETES)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシランから、さらにより良好には3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3-アミノエチルトリエトキシシラン(AETES)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランから選択される、式(C)の少なくとも1つの化合物並びにそのオリゴマー及び/若しくはその加水分解生成物を含む。
【0112】
特に好ましい実施形態に従って、その組成物は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)又はそのオリゴマー及び/若しくはその加水分解生成物を含む。
【0113】
本発明に従って、使用される1つ若しくは複数のアルカリ剤及び/又は1つ若しくは複数のアミノアルコキシシラン誘導体は、組成物の総質量に対して0.01~10質量%、優先的には0.02~5質量%の範囲の含有量で組成物中にある。
【0114】
本発明による組成物のpHは、7以上である。
【0115】
好ましくは、本発明の組成物は、7.0~12.0、優先的には7.5~11、さらにより良好には8~10、より優先的には8~9の範囲のpHを有する。
【0116】
好ましくは、組成物のpHは、安定であり、すなわち塩基性のままであり、すなわち長期間にわたって7以上である。好ましくは、組成物のpHは、少なくとも4週間又は8週間の貯蔵期間中、塩基性のままである。
【0117】
その組成物は、化粧品として許容可能な媒体を含み得る。本発明の組成物において使用され得る化粧品として許容可能な媒体は、水、有機溶媒及びその混合物から選択される溶媒を含み得る。
【0118】
有機溶媒は、アルコール、ポリオール、ポリオールエーテル及びその混合物から選択され得、そのアルコールは、優先的には、低級C1~C6アルカノールから選択され、好ましくはエタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選択され、ポリオールは、優先的には、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン及びペンタンジオールから選択される。
【0119】
好ましくは、1つ又は複数の溶媒は、組成物の総質量に対して0.1~99%に相当する。
【0120】
その組成物は、好ましくは、水性である。
【0121】
この変形形態に従って、水の量は、組成物の総質量に対して5~98質量%、より良好には15質量%~95質量%、さらにより良好には25~90質量%、より優先的には30~90質量%の範囲であり得る。
【0122】
本発明による組成物は、化粧品に通常使用される添加剤、例えばアニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン界面活性剤、増粘剤、脂肪質物質、定着ポリマー又はコンディショニングポリマー、防腐剤、芳香、着色剤、顔料、酸化剤、フケ防止剤、脱毛予防剤、ジスルフィド結合を切断する薬剤及び通常の化粧用薬剤の大部分も含有し得る。
【0123】
これらの添加剤は、本発明による組成物中において、組成物の総質量に対して0~20質量%の範囲の量で存在し得る。
【0124】
当業者であれば、それらが本発明の組成物の特性を損なわないように、これらの任意の添加剤及びその量を選択するのに注意を払うであろう。
【0125】
本発明の方法は、組成物を塗布する工程a)後、ケラチン物質上の組成物に照射して、ポリマーを架橋する工程b)を含む。
【0126】
この照射は、ケラチン物質に塗布された組成物の、周囲光又は人工光の光源を用いた照射からなり得る。
【0127】
周囲光又は人工光は、可視及び/又は紫外領域の放射線を発し得る。好ましくは、それは、紫外領域の放射線の少なくとも一部、例えば周囲光の総照射エネルギーの少なくとも2%のUV部分を放出する。
【0128】
特定の実施形態に従って、その曝露は、前記コートの表面の周囲光での特に少なくとも1分間の照射を含むか又はさらにそれからなる。
【0129】
周囲光に対する曝露時間は、さらに詳細には10秒~30分及び特に2~15分の範囲であり得る。
【0130】
他の特定の実施形態に従って、その曝露は、前記コートの表面の人工光源での照射を含むか又はさらにそれからなる。
【0131】
前記人工光に対する曝露時間は、1秒~20分、特に1秒~1分の範囲であり得る。
【0132】
その架橋は、例えば、ランプ、フラッシュ、レーザー又はLEDでの照明を用いて、例えばLEDアレイの形態において自然光又は人工光で行われ得る。
【0133】
人工光源は、可視領域の放射線及び/又は紫外領域の放射線を発し得る。
【0134】
放出された光は、単色であっても又はなくてもよい。放出された光の波長は、好ましくは365nmを中心とし、特に100~500nm、さらにより良好には200~420nmである。
【0135】
有利には、光開始剤を必要とすることなく、簡単な照射によって架橋が開始される。
【0136】
好ましくは、それは、0.5~5W/cm2のエネルギーを放出する人工光源であり、そのため、曝露時間は、適応される。
【0137】
その架橋は、低い光強度で起こり得、光源装置は、例えば、500mJ/cm2~10J/cm2のこの光強度を生成し得る。
【0138】
アグレッシブな開始剤又は強い光、特に紫外線波長の光に対する長時間の曝露の有害な影響を抑えることが可能となることから、光開始剤が存在しないことと、比較的低い光強度であることとの2つの特徴は、特に有利である。
【0139】
当業者であれば、特に曝露時間及び照射波長の点から、使用される1つ又は複数光架橋性ポリマー(A)の性質に関して、照射の特性に適応させることができるであろう。
【0140】
好ましい実施形態に従って、その組成物は、毛髪などのケラチン繊維に塗布される。
【0141】
この実施形態に従って、組成物は、湿った又は乾いた、清潔な又は清潔ではないケラチン繊維に塗布され得る。好ましくは、ケラチン繊維は、組成物に適用した後且つ照射前に乾燥される。
【0142】
その方法において、照射工程b)前又は後に室温若しくは高温又は赤色光下での休止も方法に含まれ得る。
【0143】
以下の実施例によって本発明を例示するが、その範囲は、限定されない。その量は、別段の指定がない限り、質量パーセンテージで示される。
【実施例】
【0144】
以下の組成物は、その含有量が以下の表に示される成分から製造された(活性材料gにおける%)。
【0145】
【0146】
経時的に安定なpHを有する組成物であって、ポリマーに安定性を与える組成物が得られる。
【0147】
毛髪上の均一及び持続性のコーティングが得られた。
【0148】
同じタイプの結果は、フェニル基を保持するPVA-SbQに関して得られた。