IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-非燃焼加熱型香味吸引器具 図1
  • 特許-非燃焼加熱型香味吸引器具 図2
  • 特許-非燃焼加熱型香味吸引器具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】非燃焼加熱型香味吸引器具
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20230919BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20230919BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20230919BHJP
【FI】
A24D1/20
A24F40/20
A24D3/17
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021551044
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040038
(87)【国際公開番号】W WO2021070330
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】湯本 拓也
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195585(JP,A)
【文献】特開昭59-196082(JP,A)
【文献】特表2015-523857(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021021(WO,A1)
【文献】特開2017-135984(JP,A)
【文献】特表2017-502656(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181843(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109892707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/20、3/17
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッド、冷却セグメント、およびマウスピースを備える非燃焼加熱型香味吸引器具であって、
前記マウスピースが、吸口端方向に向かってフィルタとセンターホールフィルターをこの順に備える、前記香味吸引器具。
【請求項2】
前記センターホールフィルターの穴径は、当該センターホールフィルターの直径の20~40%である、請求項1に記載の香味吸引器具。
【請求項3】
前記センターホールフィルターの下記方法で測定した硬さが90%以上である、請求項1または2に記載の香味吸引器具。
測定方法
1)センターホールフィルターを、その長手方向が水平となるようにして基板の上に載置し、その高さDsを測定する。
2)加圧治具を用いて前記センターホールフィルター側面を以下の条件で加圧して圧縮する。
加圧:300g、加圧時間:10秒、加圧治具ヘッド径:φ12mm
3)加圧後の前記センターホールフィルターの高さDdを測定する
4)硬さH(%)を下記式より算出する。
H(%)=Dd/Ds×100
【請求項4】
前記硬さが95%以上である、請求項3に記載の香味吸引器具。
【請求項5】
前記センターホールフィルターの肉厚が1~3mmである、請求項1~4のいずれかに記載の香味吸引器具。
【請求項6】
前記センターホールフィルターの穴の断面積が、0.7~20mmである、請求項1~5のいずれかに記載の香味吸引器具。
【請求項7】
前記センターホールフィルターの単繊度が5~12(デニール/フィラメント)である、請求項1~6のいずれかに記載の香味吸引器具。
【請求項8】
前記センターホールフィルターの単繊度が5~8(デニール/フィラメント)である、請求項7に記載の香味吸引器具。
【請求項9】
前記センターホールフィルターの総繊度が30,000~60,000(デニール/トータル)である、請求項1~8のいずれかに記載の香味吸引器具。
【請求項10】
前記センターホールフィルターの総繊度が35,000~45,000(デニール/トータル)である、請求項9に記載の香味吸引器具。
【請求項11】
直径が6~8mmである、請求項1~10のいずれかに記載の香味吸引器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたばこロッド、冷却セグメント、およびマウスピースを備える非燃焼加熱型香味吸引器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非燃焼加熱型香味吸引器具をデバイスに挿入して使用する製品が市販されている(例えば特許文献1)。これらの非燃焼加熱型香味吸引器具は、デバイスへの挿入のしやすさや、十分な香喫味の送達の観点から、ある一定以上の太さが望まれる。しかし、非燃焼加熱型香味吸引器具の直径が大きくなると当該器具に与えられる熱量が増え、かつ唇と接触する面積も大きくなる。この結果、吸口端近傍の温度が上昇し、ユーザーが、使用時に吸口端近傍の温度を不快に感じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/198837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用時に吸口端近傍がユーザーにとって不快でない温度となる非燃焼加熱型香味吸引器具を提供することを課題とする。
【発明を解決するための手段】
【0005】
特許文献1に記載の香味吸引器具は、吸口端方向に向かってフィルタと紙管をこの順に備えるマウスピースを有する。しかし発明者らは、特許文献1に記載の香味吸引器具には改善の余地があると考え、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]たばこロッド、冷却セグメント、およびマウスピースを備える非燃焼加熱型香味吸引器具であって、
前記マウスピースが、吸口端方向に向かってフィルタとセンターホールフィルターをこの順に備える、前記香味吸引器具。
[2]前記センターホールフィルターの穴径は、当該センターホールフィルターの直径の20~40%である、[1]に記載の香味吸引器具。
[3]前記センターホールフィルターの下記方法で測定した硬さが90%以上である、[1]または[2]に記載の香味吸引器具。
測定方法
1)センターホールフィルターを、その長手方向が水平となるようにして基板の上に載置し、その高さDsを測定する。
2)加圧治具を用いて前記センターホールフィルター側面を加圧して圧縮する。
加圧:300g、加圧時間:10秒、加圧治具ヘッド径:φ12mm
3)加圧後の前記センターホールフィルターの高さDdを測定する
4)硬さH(%)を下記式より算出する。
H(%)=Dd/Ds×100
[4]前記硬さが95%以上である、[3]に記載の香味吸引器具。
[5]前記センターホールフィルターの肉厚が1~3mmである、[1]~[4]のいずれかに記載の香味吸引器具。
[6]前記センターホールフィルターの穴の断面積が、0.7~20mmである、[1]~[5]のいずれかに記載の香味吸引器具。
[7]前記センターホールフィルターの単繊度が5~12(デニール/フィラメント)である、[1]~[6]のいずれかに記載の香味吸引器具。
[8]前記センターホールフィルターの単繊度が5~8(デニール/フィラメント)である、[7]に記載の香味吸引器具。
[9]前記センターホールフィルターの総繊度が30,000~60,000(デニール/トータル)である、[1]~[8]のいずれかに記載の香味吸引器具。
[10]前記センターホールフィルターの総繊度が35,000~45,000(デニール/トータル)である、[9]に記載の香味吸引器具。
[11]直径が6~8mmである、[1]~[10]のいずれかに記載の香味吸引器具。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、使用時に吸口端近傍がユーザーにとって不快でない温度となる非燃焼加熱型香味吸引器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具を示す図
図2】本発明の非燃焼加熱型香味吸引システムを示す図
図3】喫煙試験用の装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.非燃焼加熱型香味吸引器具
本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、たばこロッド、冷却セグメント、およびマウスピースを備え、当該マウスピースが、吸口端方向に向かってフィルタとセンターホールフィルターをこの順に備える。図1は本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具の一態様を示す。図中、10は非燃焼加熱型香味吸引器具、1はたばこロッド、3は冷却セグメント、5はマウスピース、52はフィルタ、54はセンターホールフィルター、7はチップペーパ、Vはベンチレーションである。香味吸引器具の直径は好ましくは6~8mmである。当該直径は香味吸引器具を構成する部材の直径の平均値として定義される。
【0010】
(1)たばこロッド
たばこロッドとは、たばこ原料に含まれる香喫味成分を発生するための略円柱状の部材であり、たばこ充填材とその周囲を巻装するラッパーを備える。たばこ充填材としては限定されず、例えばたばこ刻、たばこシート等を使用できる。具体的には、乾燥したたばこ葉を幅0.8~1.2mmに裁刻したたばこ刻をラッパー内に充填してよい。また乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに裁刻したものをラッパー内に充填してもよい。当該シートを裁刻せずにギャザー加工、折り畳み、あるいは渦巻き状にして内に充填してもよい。当該シートを短冊状に裁断してこれらをラッパー内に、同心円状にあるいは短冊の長手方向がたばこロッドの長手方向と平行になるように充填してもよい。
【0011】
たばこ葉としては様々なものを用いることができ、例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、およびこれらの混合物を使用できる。混合物としては、目的とする味となるように前記の各品種を適宜ブレンドしたものを用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。
【0012】
前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は、公知の方法で実施できる。例えば、以下の方法を選択できる。抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法。水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシートを作製する方法。水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0013】
たばこ充填物は水分を含んでいてよく、その含有量はたばこ充填物の全量に対して10~15重量%であってよく、11~13重量%であることが好ましい。当該量の水分を含む含有量たばこ充填物を用いると、染みの発生が抑制され、また、たばこロッドの製造時の巻上適性が良好となる。
【0014】
たばこロッド1は、加熱に伴って蒸気を発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにたばこ充填材にグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加することが好ましい。エアロゾル源の添加量は、たばこ充填剤の乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。たばこロッド1の長さは限定されないが15~25mmであることが好ましい。その直径も限定されないが6~8mmであることが好ましい。
【0015】
たばこロッド1は香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味を付与する観点から、以下のものを挙げることができる。アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)。中でもメンソールが好ましい。また、これらの香料は単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0016】
たばこ充填物の充填密度は特に限定されないが、非燃焼加熱型香味吸引器具の特性を担保し、良好な喫味を付与する観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上である。また、その上限は通常800mg/cm以下であり、好ましくは600mg/cm以下である。
【0017】
(2)冷却セグメント
冷却セグメントは、たばこロッド1で発生した香喫味成分や蒸気を冷却する等してエアロゾル化を促進するための部材である。冷却セグメント3は中空の紙管であってよい。紙管はラッパーやチップペーパよりも剛性の高いカードボードで構成されることが好ましい。当該紙管には、ベンチレーションV(開孔)を設けてもよい。ベンチレーションは紙管の円周に沿って複数設けられることが好ましい。冷却セグメントの吸口側端部から加熱端に向かって、ベンチレーションが設けられる位置の上限は、エアロゾル化の促進や冷却の観点から、冷却セグメントの吸口側端部から4mm以内の範囲が好ましく、2mm以内の範囲がさらに好ましい。また、ベンチレーションが設けられる位置の下限は、製品全体の耐久性の観点から、冷却セグメントの吸口側端部から0.5mm以上が好ましく1.0mm以上がさらに好ましい。すなわち、一態様において、ベンチレーションは冷却セグメントの吸口側端部から上流に向かって0.5~4mmの範囲に設けられ、別態様において1.0~2mmの範囲に設けられる。作業効率の観点から、ベンチレーションは、完成した非燃焼加熱型香味吸引器具にレーザー加工を施して設けることが好ましい。また冷却セグメント3内には、熱交換効率を高めるためにギャザー付けされたシートを充填してもよい。冷却セグメント3の寸法は限定されないが、長さは15~25mmであることが好ましく、直径は5.5~7.5mmであることが好ましい。
【0018】
前述のとおり、ベンチレーションは冷却セグメントの外周面の周方向に配置されることが好ましい。その周方向の配置の数は、限定されず2つ以上であればよい。孔径は100~1000μmであることが好ましく、300~800μmであることがより好ましい。開孔形状は略円形または略楕円形であることが好ましい。略楕円形の場合、長径が孔径に相当する。
【0019】
冷却セグメント3はたばこロッド1に比べて剛性が低い場合が多い。このような異なる剛性を持つパーツをチップペーパで接続する場合、剛性が高いパーツの直径を剛性が低いパーツの直径よりも小さくすると不良が発生しにくい。したがって、たばこロッド1に比べて冷却セグメント3の剛性が高い場合は、その直径をたばこロッド1の直径より小さくすることが好ましい。例えば、たばこロッドの直径が7mmである場合、冷却セグメント、マウスピースの直径は好ましくは6.9mmである。
【0020】
(3)マウスピース
マウスピースは吸口端を構成する部材である。本発明においてマウスピース5は、吸口端方向に向かってフィルタ52とセンターホールフィルター54をこの順に備える。
【0021】
(3-1)フィルタ
フィルタ52としてはアセテートフィルターやペーパーフィルター等の公知の中実なフィルタ部材を使用できる。ペーパーフィルターとは、紙をクレープローラ等で加工して皺を付けこれをプラグ巻取紙で巻上げて調製される、紙が充填されたフィルタである。アセテートフィルターとはセルロースアセテート繊維が充填されたフィルタである。アセテートフィルターを構成する繊維の単繊度は、好ましくは5~12(デニール/フィラメント)であり、より好ましくは5~8(デニール/フィラメント)である。当該繊維の総繊度は、好ましくは12,000~35,000(デニール/トータル)であり、より好ましくは20,000~30,000(デニール/トータル)である。非燃焼加熱型香味吸引器具においては、エアロゾル生成量が通常の燃焼型香味吸引器具と比較して少ないため、フィルタによる濾過は少ないことが好ましい。単繊度が大きいと濾過率は低下するが、一方でアセテートフィルターの製造が困難となる。一方、総繊度が小さいと濾過率は下がるが、総繊度が小さすぎると繊維充填密度が過度に低下してアセテートフィルターの硬さが低下する。これらの観点から、前記単繊度と総繊度を前記数値範囲にすることで濾過率が低く、かつ使用に適したアセテートフィルターを得ることができる。前記繊維の断面形状は限定されないが、R形状またはY形状が好ましく、コストの観点からはY形状がより好ましい。また、フィルタ硬さを高めるために、可塑剤としてトリアセチンを用いることもできる。トリアセチンの添加量は、トウ重量に対して5~10重量%であることが好ましい。
【0022】
(3-2)センターホールフィルター
センターホールフィルター54としては、例えばフィルタの中央部に空間を設けたものを使用できる。この場合、穴径はフィルタ直径の20~70%であることが好ましく、20~40%であることがさらに好ましい。具体的に穴径は、好ましくは1.0~5.0mmである。その好ましい下限値は、1.2mm以上または1.5mm以上であり、その好ましい上限値は、4.5mm以下、3.0mm以下、または2.5mm以下である。フィルタの肉厚(壁部の厚み)は、好ましくは1~3mm、より好ましくは2~3mmである。穴径が下限値以下である穴の成形は困難であり、内壁に毛羽立ちが生じてしまいエアロゾルが補足され、デリバリー効率が低下することがある。また穴径が下限値以下である穴を形成するマンドレルの耐久性に問題が生じ、マンドレルが製造中に振動して穴がうねる等の穴の形状が不安定となる。また穴径が条件値を超えると、フィルタ硬さが担保できずに咥え心地が低下し、さらには肉厚が薄くなるので唾液等で濡れた場合に耐久性が低下するおそれもある。一態様において、センターホールフィルターとして、7mm直径のフィルタに径4.5mmの穴を設けたものが挙げられる。また、穴の断面積は、好ましくは0.7~20mmであり、より好ましくは1.6~16mmである。また、別態様として複数の穴孔を有するセンターホールフィルターを使用してもよい。この場合、複数の穴は例えば円周方向に沿って等間隔に配置されてもよい。複数の穴の合計の断面積は、好ましくは0.7~20mmであり、より好ましくは1.6~16mmである。
【0023】
フィルタ52とセンターホールフィルター54の長さはそれぞれ非燃焼加熱型香味吸引器具10の全長に対し、9~16%程度であることが好ましい。一態様においてフィルタ52とセンターホールフィルター54のそれぞれの長さは5~9mm程度である。
【0024】
フィルタ52とセンターホールフィルター54のそれぞれがフィルターラッパー(フィルターインナーラッパー)によって巻装され、それらがフィルタ成型紙(フィルターアウターラッパー)によって接続されていてもよい。マウスピース5の直径は限定されないが、冷却セグメント3と同じであることが好ましい。
【0025】
センターホールフィルター54はある一定の硬さを有することが好ましい。センターホールフィルター54が変形しにくく、ユーザーの唇との接触面積が小さくなるので、ユーザーが不快な温度を感じにくくなるからである。本発明における硬さは、特表2016-523565号公報明細書段落0010~0014に開示されているとおり、部材が変形するときの抵抗を意味する。たばこロッドの側面に負荷をかける前と後での直径の変化から硬さを求めることができる。具体的に、硬さは以下のようにして測定される。
1)センターホールフィルターを、その長手方向が水平となるようにして基板の上に載置し、その高さDsを測定する。
2)加圧治具を用いて前記センターホールフィルター側面を加圧して圧縮する。
加圧:300g、加圧時間:10秒、加圧治具ヘッド径:φ12mm
3)加圧後の前記センターホールフィルターの高さDdを測定する
4)硬さH(%)を下記式より算出する。
H(%)=Dd/Ds×100
【0026】
センターホールフィルター54の硬さは、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。その上限は限定されないが、99%以下または98%以下程度である。
【0027】
センターホールフィルターを構成する繊維の単繊度は、好ましくは5~12(デニール/フィラメント)であり、より好ましくは5~8(デニール/フィラメント)である。また、当該繊維の総繊度は、好ましくは30,000~60,000(デニール/トータル)であり、より好ましくは35,000~45,000(デニール/トータル)である。繊維の断面形状は好ましくはR形状またはY形状であり、コスト面からはY形状がより好ましい。非燃焼加熱型香味吸引器具においては、エアロゾル生成量が通常の燃焼型香味吸引器具と比較して少ないため、センターホールフィルターにおけるエアロゾルのロスは少ないことが好ましい。センターホールフィルターの壁部(ニク部)の繊維の充填密度が低すぎると、当該部分でエアロゾルが濾過されてしまう。したがって、センターホールフィルターは高速製造が可能である範囲で壁部のトウ充填密度がある程度高いことが好ましい。前記単繊度と総繊度を前記数値範囲にすることで濾過率が低く、かつ使用に適したセンターホールフィルターを得ることができる。また、フィルタ硬さを高めるために、可塑剤としてトリアセチンを用いることもできる。トリアセチンの添加量は、トウ重量に対して10~20重量%であることが好ましい。
【0028】
(4)チップペーパ
チップペーパ7は、たばこロッド1、冷却セグメント3、マウスピース5のうち2つ以上を接続するために用いる紙をいう。一方、ラッパーは、たばこロッド1、冷却セグメント3、またはマウスピース5を構成する個々の部材を巻装するための紙をいう。
【0029】
チップペーパおよびラッパーに用いられる原紙は、限定されず、セルロース繊維を用いたものを挙げることができる。そのようなセルロース繊維としては、植物由来のもの、化学合成されたもののいずれを用いてもよく、これらの混合物であってもよい。植物由来の繊維としては、亜麻繊維や木材繊維、種子繊維等のパルプが挙げられ、漂白していない有色の未晒パルプとしてもよいが、白く清潔感のある外観とするために、酸化剤、還元剤等の漂白剤を用いて漂白した晒パルプの使用が好ましい。
【0030】
通常のシガレット用の巻紙の場合、巻紙の自然燃焼速度に影響を及ぼし得る通常の燃焼調節剤(助燃剤等)としてクエン酸アルカリ金属塩等が使用される。本発明では加熱型香味吸引器具品とするため、ラッパーは燃焼調節剤を含まなくてもよい。また、通常のシガレットと異なり、前述のとおり本発明のたばこ充填材にはエアロゾル発生源が含まれうる。この場合、チップペーパとして耐油性、耐水性巻紙を用いることが好ましい。
【0031】
ラッパーの坪量の下限は、好ましくは30g/m以上であり、より好ましくは35g/m以上であり、さらに好ましくは40g/m以上である。上限は、好ましくは65g/m以下、より好ましくは50g/m以下である。また、チップペーパの坪量の下限は、好ましくは20g/m以上であり、より好ましくは25g/m以上であり、さらに好ましくは30g/m以上である。上限は、好ましくは50g/m以下、より好ましくは45g/m以下、さらに好ましくは40g/m以下である。坪量は、JIS P8124に規定される方法で測定することができる。
【0032】
本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の部材を備えていてもよい。このような部材としては、支持部材等が挙げられる。これらの部材は任意の位置に配置されてよいが、吸口端部には配置されないことが好ましい。また、本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具はたばこロッドの上流側、すなわち香味吸引器具の先端部に、炭素熱源を備えていてもよい。この態様においては、たばこロッドは炭素熱源によって加熱される。しかしながら、本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、炭素熱源加熱方式に比べて加熱温度がより高温になる電気加熱方式のシステムに特に有用である。
【0033】
本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、ユーザーが使用時(吸引時)に吸口端近傍の温度を不快に感じない。この理由は限定されないが次のように推察される。本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、マウスピースとして吸口端方向にフィルタ52とセンターホールフィルター54をこの順に備える。エアロゾルはまずフィルタ52に導入される。フィルタ52からセンターホール54に導入される際、通気抵抗が低下し、かつ流路が急に狭くなる。この際、エアロゾルは流速が上昇しセンターホールフィルター54に滞留する時間が短くなる。このため、ユーザーは不快な高い温度を感じにくくなると考えられる。
【0034】
2.製造方法
本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具の製造方法は限定されないが、たばこロッド1、マウスピース5をそれぞれ準備して、たばこロッド1とマウスピース5の間に冷却セグメント3を形成するようにして、これらをチップペーパ7で巻装して製造できる。あるいは、本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具は、たばこロッド1と、冷却セグメント3としての紙管と、マウスピース5をそれぞれ準備して、これら3つの部材をチップペーパ7で巻装して製造できる。
【0035】
3.非燃焼加熱型香味吸引システム
本発明の非燃焼加熱型香味吸引システムは、非燃焼加熱型香味吸引器具10とヒーター30を備える。ヒーターは、好ましくは電気的にたばこロッド1を加熱する。ヒーターは電源等を備える加熱ユニットを備えることが好ましい。図2に本発明の非燃焼加熱型システムの一態様を示す。図中、100は非燃焼加熱型香味吸引システム、10は非燃焼加熱型香味吸引器具、30はヒーターを備える加熱ユニットである。
【0036】
ヒーターの形状は限定されず、たばこロッド1の外周に配置されてもよく、たばこロッド1の内部に挿入されてもよい。ヒーターは、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーター、ニードル状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20~225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーターであり、例えば、外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。筒状ヒーターやニードル状ヒーターは、たばこロッド1の内部に挿入され内部から加熱する方式に好適である。
【実施例
【0037】
[実施例1]
以下の部材を準備した。
直径7.1mm、長さ20mmのたばこロッド(日本たばこ産業株式会社製)
直径6.9mm、穴径4.5mm、長さ8mmのセンターホールフィルター(8Y-40000)
直径6.9mm、長さ7mmのアセテートフィルター(5Y-30000)
これらの部材を図1に示すように配置し、24mm×40mmのチップペーパで巻装して非燃焼加熱型香味吸引器具を製造した。
【0038】
当該非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱するための加熱デバイスとして、長さ22.5mm、直径7.2の円筒状ヒーターと、当該ヒーターを加熱するためのバッテリと、ヒーターおよびバッテリを制御するための制御回路と、各部材を主要するためのハウジングを備えた加熱ユニットを準備した。当該ヒーター内に前記非燃焼加熱型香味吸引器具を挿入して、非燃焼型加熱型香味吸引システムを得た。
【0039】
ヒーターを17秒間以内で230℃まで昇温し、当該温度を23秒間維持した。その後、自動喫煙装置(Bolgwaldt社製RM26)を用い喫煙試験を行った。具体的には図3に示すような装置を用いて試験を行った。図3中、10は非燃焼加熱型香味吸引器具、30は加熱ユニット、200はアダプター、300は自動喫煙装置である。アダプター200は非燃焼加熱型香味吸引器具10を収容し、自動喫煙装置300に接続されている。Kは、非燃焼加熱型香味吸引器具10の表面であって吸口端から5mmの位置にポリイミドテープを用いて固定された皮膜熱電対である。Kは、アダプター200に固定された素線熱電対である。Kによってマウスピースの表面温度を、Kによって煙温度を測定した。吸引容量は35mL/2secとした。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
アセテートフィルターとセンターホールフィルターを入れ替えた以外は実施例1と同様にして非燃焼型加熱型香味吸引システムを調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具システムは、比較用のシステムに比べてマウスピース部の表面温度が低いことが明らかとなった。ユーザーは、本発明の非燃焼加熱型香味吸引器具システムを快適に使用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 たばこロッド
3 冷却セグメント
5 マウスピース
52 フィルタ
54 センターホールフィルター
7 チップペーパ
V ベンチレーション

10 非燃焼加熱型香味吸引器具
30 ヒーターを備える加熱ユニット
100 非燃焼加熱型香味吸引システム

200 アダプター
300 自動喫煙装置
皮膜熱電対
素線熱電対
図1
図2
図3