(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20230101AFI20230919BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230919BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20230919BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20230919BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230919BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230919BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20230919BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20230919BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230919BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20230919BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20230919BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20230919BHJP
【FI】
C02F3/08 A
C02F1/44 A
B01D61/04
B01D61/16
B01D61/58
B01D65/02
C02F1/04 D
C02F1/20 Z
C02F1/42 D
C02F1/56 E
C02F1/58 E
C02F9/00
(21)【出願番号】P 2021563752
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034453
(87)【国際公開番号】W WO2021117309
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019225051
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 厚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 建至
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153749(JP,A)
【文献】特開2003-112181(JP,A)
【文献】特開2015-054273(JP,A)
【文献】特開2003-300069(JP,A)
【文献】特開平11-197649(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037557(WO,A1)
【文献】特開2014-171926(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137300(WO,A1)
【文献】特開2002-263684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/04、20、42-44、52-64、
3/00-34、9/00-20
B01D19/00、61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を付着させるための接触体を表面に有する円板体の一部を被処理水に浸漬させ、
前記円板体を回転させながら被処理水を処理する回転円板型水処理部と、
前記微生物を優占化させるための栄養塩類を添加する栄養塩添加部と、
前記処理された被処理水をろ過する膜ろ過部と、
前記ろ過された被処理水を、逆浸透膜により濃縮水と透過水とに分離する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置へ導入される前の被処理水のpHを
前記栄養塩添加部によって添加された栄養塩類が前記逆浸透膜装置の逆浸透膜で析出することを抑えるためにアルカリ性又は酸性に調整するpH調整部と
を具備する水処理装置。
【請求項2】
前記回転円板型水処理部で処理された被処理水から硬度成分を除去する硬度除去部を具備し、
前記膜ろ過部は、前記硬度成分が除去された被処理水をろ過する請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記硬度除去部が処理する被処理水のpH値が9以上となるようにpH調整剤を添加する第2のpH調整部を具備し、
前記硬度除去部は、被処理水のpH値が9以上の状態でアルカリ凝集薬剤を用い、硬度成分を除去する請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記硬度除去部で除去された硬度成分の少なくとも一部は、前記回転円板型水処理部へ供給される請求項2記載の水処理装置。
【請求項5】
前記ろ過された被処理水を軟水化する軟水化部を具備し、
前記逆浸透膜装置は、前記軟水化された被処理水を、逆浸透膜により濃縮水と透過水とに分離する請求項2記載の水処理装置。
【請求項6】
前記軟水化された被処理水から炭酸成分を除去する脱炭酸部を具備し、
前記逆浸透膜装置は、前記炭酸成分が除去された被処理水を、逆浸透膜により濃縮水と透過水とに分離する請求項5記載の水処理装置。
【請求項7】
前記ろ過された被処理水から炭酸成分を除去する脱炭酸部を具備し、
前記軟水化部は、前記炭酸成分が除去された被処理水を軟水化する請求項5記載の水処理装置。
【請求項8】
前記逆浸透膜装置から排出される濃縮水を蒸発濃縮する蒸発濃縮部を具備し、
前記蒸発濃縮の廃熱を用いて、前記透過水を昇温し、前記昇温した透過水をろ過膜、又は逆浸透膜の洗浄に利用する請求項1記載の水処理装置。
【請求項9】
前記栄養塩添加部は、シリカ成分及びマグネシウム成分のうちの少なくとも一方を含む前記栄養塩類を添加する、請求項1記載の水処理装置。
【請求項10】
前記逆浸透膜装置は、少なくとも一部がpH6以下、又はpH8以上に設定されて運用される請求項1記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市下水等の有機物を含有する有機排水の処理には一般的に、生物処理が用いられる。生物処理の一手法として、例えば、回転円板法がある。回転円板法では、モータ等の動力を使って回転する円板体の表面に、微生物を付着しやすくするための接触体が配される。そして、この円板体を回転させながら、円板体に付着した微生物に空気と被処理水とを交互に接触させることで、円板体表面に付着した微生物の働きにより、被処理水中の有機物、及び窒素成分を浄化する。
【0003】
ところで、回転円板法で用いられる円板体に繊維状の接触体を配することで、有用微生物の一種であるバチルス属の菌(以降、「バチルス菌」と記載する。)を優占化できることが報告されている。バチルス菌を優占化することで、菌相が安定化し、例えば、水処理過程で発生する余剰汚泥量を削減できる等の効果がある。このため、例えば、活性汚泥法の生物反応槽の前段に、円板体が設けられた装置である回転円板装置を配した場合、後段の生物反応槽の負荷を低減でき、ブロワの消費電力を大幅に低減できる。
【0004】
また、近年、健全な水循環を実現するための法規制が強化されている。ZLD(Zero Liquid Discharge)は、水質汚染リスクの低減と、排水の再生及び再利用の視点から、工場内で水を再生して利用すると共に、さらに工場から外部に出される排水を極小又は0にまで低減することで水環境保全を図るコンセプトである。ZLDに向けた排水濃縮処理において、回転円板装置を導入しようとする場合、バチルス菌の安定維持のために添加する栄養塩類が、後段に設けられる逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜プロセスでのスケール析出の原因となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2007-301511号公報
【文献】日本国特開2000-189991号公報
【文献】日本国特開2011-140017号公報
【文献】日本国特開2003-275510号公報
【文献】日本国特開2006-159177号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】山村寛、“バチルス優占化によるMBRの膜ファイリング抑制効果”、平成29年8月、第54回下水道研究発表会、講演集、S-7-2-4
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、バチルス菌を優占化させた環境下において、有機成分含有処理水から水回収、及び排水濃縮することが可能な水処理装置を提供することである。
【0008】
実施形態の水処理装置は、回転円板型水処理部、栄養塩添加部、膜ろ過部、逆浸透膜装置、及びpH調整部を備える。回転円板型水処理部は、微生物を付着させるための接触体を表面に有する円板体の一部を被処理水に浸漬させ、円板体を回転させながら被処理水を処理する。栄養塩添加部は、微生物を優占化させるための栄養塩類を添加する。膜ろ過部は、処理された被処理水をろ過する。逆浸透膜装置は、ろ過された被処理水を、逆浸透膜により濃縮水と透過水とに分離する。pH調整部は、逆浸透膜装置へ導入される前の被処理水のpHを栄養塩添加部によって添加された栄養塩類が逆浸透膜装置の逆浸透膜で析出することを抑えるためにアルカリ性又は酸性に調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の水処理装置の機能構成を表すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される回転円板型水処理部の概略構成を表す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される水処理装置のその他の機能構成を表すブロック図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態の水処理装置の機能構成を表すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態の水処理装置の機能構成のその他の例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。なお、これら実施形態はあくまで一例であって、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の水処理装置1の機能構成の例を表すブロック図である。
図1に示される水処理装置1は、回転円板型水処理部10、膜ろ過部20、昇圧ポンプ30、RO膜濃縮装置40、及びpH調整部50を備える。
【0012】
回転円板型水処理部10は、回転円板に付着される微生物により、工場排水、又は下水等の排水に含まれる有機成分を処理する。なお、有機成分を処理するとは、例えば、浄化のことである。
図2は、
図1に示される回転円板型水処理部10の概略構成を表す図である。
図2に示される回転円板型水処理部10は、例えば、複数枚の回転円板11、接触体12、円板駆動部13、空気導入部14、及び栄養塩添加部15を有する。
【0013】
複数枚の回転円板11は、軸心方向にそれぞれが所定の幅を隔てて連なって固定されている。回転円板11は、例えば、軸心方向が、供給される排水等の被処理水の水面と略平行となるように設置されている。これにより、回転円板11は、円形形状のうち、およそ半分が被処理水に浸漬されることになる。回転円板11は、中心軸が円板駆動部13からのトルクを受けることで回転運動し、浸漬される領域が移動する。
【0014】
接触体12は、微生物を担持するための繊維状の素材であり、回転円板11の表面に配される。接触体12が回転円板11の表面に配されることで、回転円板11の表面に微生物が付着可能となる。
【0015】
空気導入部14は、回転円板11が設けられる処理槽内部に酸素を供給する。
【0016】
栄養塩添加部15は、バチルス属の菌(以降、バチルス菌と記載する。)を優占化させるための栄養塩類を処理槽内部に添加する。栄養塩類は、例えば、シリカ成分、及び/又はマグネシウム成分を含む。栄養塩類を添加することで、接触体12でバチルス菌が優占して担持されることになる。
【0017】
回転円板11は、半浸漬状態で円板駆動部13により回転させられ、被処理水の接触と、酸素の接触とが繰り返される。回転円板11の表面で繁殖するバチルス菌は、回転円板11の回転に伴い、酸素を吸収し、被処理水中の有機成分を処理する。処理された被処理水は、膜ろ過部20へ送出される。また、保持過剰となった菌は、回転円板11の回転によるせん断力により汚泥等と一緒に回転円板11から脱落し、被処理水と共に膜ろ過部20へ送出される。
【0018】
膜ろ過部20は、供給される被処理水をろ過する。膜ろ過部20は、例えば、精密ろ過(MF:Microfiltration)膜、限外ろ過(UF:Ultrafiltration)膜、及びMBR(Membrane Bioreactor)法等の膜分離技術を用いて実現される。膜ろ過部20でろ過された被処理水は昇圧ポンプ30へ排出される。
【0019】
pH調整部50は、昇圧ポンプ30へ供給される被処理水のpHを調整する。pH調整部50は、pHをアルカリ性に調整する場合には、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物を被処理水へ添加する。また、pH調整部50は、pHを酸性に調整する場合には、例えば、硫酸又は塩酸を被処理水へ添加する。pH調整部50によりpHがアルカリ性域又は酸性域に調整されることで、被処理水に含まれる硬度成分や、シリカ成分の析出が抑えられる。なお、アルカリ性域に調整することで、RO膜濃縮装置40におけるバイオフィルムの生成も抑えられる。pH調整部50によりpHが調整された被処理水は、昇圧ポンプ30で予め設定された圧力へ昇圧され、RO膜濃縮装置40へ供給される。なお、予め設定した圧力とは、例えば、少なくとも浸透圧よりも高い圧力である。なお、pH調整部50は、RO膜濃縮装置40の系統内に任意に設置されてもよい。
【0020】
RO膜濃縮装置40は、高圧に昇圧されて供給された被処理水を、溶存塩類が除去された透過水と、溶存塩類が濃縮された濃縮水とに分離する、逆浸透膜装置の一例である。RO膜濃縮装置40は、例えば、少なくとも一部がpH6以下、又はpH8以上に設定されて運用される。RO膜濃縮装置40は、例えば、圧力容器41、及び圧力容器41内に設置される逆浸透膜エレメント42を備える。逆浸透膜エレメント42は、逆浸透膜421を備えている。逆浸透膜421としては、例えば、ポリアミド系スパイラル膜、酢酸セルロース系中空糸膜等、既存の逆浸透膜メディアが用いられる。RO膜濃縮装置40は、逆浸透膜421により分離された高圧の濃縮水を後段へ送出し、逆浸透膜421により分離された透過水を排出する。
【0021】
なお、
図1では、圧力容器41内に1つの逆浸透膜エレメント42が設置されているように表されているが、これに限定されない。例えば、圧力容器41内に設置される逆浸透膜エレメント42の数は複数であっても構わない。また、RO膜濃縮装置40は、複数の圧力容器41を備えていても構わない。このとき、例えば、RO膜濃縮装置40は、逆浸透膜エレメント42を有する複数の圧力容器41を、多段構成、多系統構成、又はツリー構成等の配置で備える。また、RO膜濃縮装置40に含まれる圧力容器41は、内循環型であっても構わない。また、複数の圧力容器41内に設置される逆浸透膜エレメント42の逆浸透膜421は、それぞれ異なる種類の膜であっても構わない。
【0022】
また、RO膜濃縮装置40には、運転圧、及び装置規模に応じ、動力回収装置が設けられていても構わない。動力回収装置は、RO膜濃縮装置40から送出される、高圧の濃縮水から圧力エネルギーを回収する装置である。
【0023】
また、RO膜濃縮装置40には、被処理水質に応じ、スケール防止剤、酸化還元機能を有するスライム防止剤、洗浄剤、及び/又は洗浄水等の導入経路が設けられていても構わない。このとき、例えば、RO膜濃縮装置40の入口に水質計を配置する。そして、この水質計器により測定される水質に基づいて導入経路を操作することで、スケール防止剤、及びスライム防止剤の添加操作、及びRO膜濃縮装置40の洗浄操作を実施する。
【0024】
以上のように、第1の実施形態の水処理装置1では、回転円板型水処理部10は、バチルス菌が優占化されている環境下で被処理水中の有機成分等を処理する。膜ろ過部20は、有機成分等が処理された被処理水をろ過する。pH調整部50は、ろ過された被処理水のpHがアルカリ性、又は酸性となるようにpHを調整する。そして、RO膜濃縮装置40は、pHが調整された被処理水を、逆浸透膜により濃縮水と透過水とに分離する。これにより、バチルス菌を優占化させるために添加した栄養塩成分が逆浸透膜で析出することを抑えながら、安定して水回収濃縮することが可能となる。
【0025】
なお、第1の実施形態では、pH調整部50により、膜ろ過部20から昇圧ポンプ30へ送出される被処理水のpHが調整される場合を例に説明した。しかしながら、被処理水のpHが調整される位置はこれに限定されない。
【0026】
図3は、
図1に示される水処理装置1のその他の機能構成の例を表すブロック図である。
図3に示される水処理装置1では、pH調整部60により、回転円板型水処理部10から膜ろ過部20へ送出される被処理水のpHが調整される。例えば、
図3において、pH調整部60は、回転円板型水処理部10から排出された被処理水のpHが高アルカリ性となるようにpHを調整する。シリカ濃度、及びマグネシウム濃度が高い環境下において、pHを高めるとシリカとマグネシウムとが共沈する。
【0027】
これにより、バチルス菌を優占化させるために添加した栄養塩成分が逆浸透膜で析出することを抑えることが可能となる。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、膜ろ過部20の他に複数の固液分離手段が設けられる場合を例に説明する。
図4は、第2の実施形態の水処理装置1aの機能構成の例を表すブロック図である。
図4に示される水処理装置1aは、回転円板型水処理部10、生物反応部70、沈殿槽80、凝集反応部90、凝集沈殿槽100、砂ろ過部110、膜ろ過部20、軟水化部120、脱炭酸部130、昇圧ポンプ30、RO膜濃縮装置40、pH調整部50、及び蒸発濃縮部140を有する。
【0029】
生物反応部70は、再生廃液に由来する水溶性有機物等を、除去するための槽である。生物反応部70は、活性汚泥法、硝化脱窒法、又は担体併用型活性汚泥法等、好気性微生物を用いた生物反応プロセスを有する。生物反応部70は、例えば、好気槽、及び/又は嫌気槽を有する。生物反応部70では、供給される酸素により、好気性微生物が、溶存有機物、溶存窒素、及びりん分等を処理する。生物反応部70での処理を経た被処理水は、沈殿槽80へ送出される。
【0030】
沈殿槽80は、生物反応部70で増殖した微生物に由来する汚泥を沈殿させて除去する。除去された汚泥は、返送汚泥として回転円板型水処理部10へ返送される。なお、分離された汚泥は、生物反応部70の生物処理形式によっては、生物反応部70へ返送されてもよい。汚泥が除去された被処理水は、凝集反応部90へ送出される。
【0031】
凝集反応部90は、例えば、アルカリ型凝集沈殿法により、溶存する硬度成分を析出させて凝集させる。凝集反応部90で添加するアルカリ凝集薬剤としては、水酸化ナトリウム分、消石灰、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系凝集剤、及び/又は高分子凝集剤等が用いられる。凝集剤の添加と共に、pH調整部60からpH調整剤を添加し、pHを例えば9以上としてもよい。また、凝集剤の添加と共に、凝集助剤を添加してもよい。
【0032】
pHを例えば9以上で運用することで、溶存する硬度成分であるマグネシウム分、及びカルシウム分が凝集してフロックを形成すると共に、残留りん分がカルシウム分と反応し、りん酸カルシウム塩結晶が形成される。また、シリカ分の一部は、マグネシウム塩形成時の共沈作用により、フロックへ一部取り込まれる。形成されたフロックは沈降する。凝集反応部90では、凝集沈殿させる成分に応じ、凝集剤は任意に選定され得る。また、凝集沈殿させる成分に応じ、凝集反応プロセスを多段に設けてもよい。また、凝集反応部90には、フロックを効率的に形成されるための撹拌機構が設けられていてもよい。
【0033】
なお、凝集反応部90には、炭酸ガス、及び/又は炭酸イオン成分等が添加されても構わない。これにより、凝集反応部90において、液中の硬度成分の沈殿物除去を促進することが可能となり、液中の硬度成分低減を図ることが可能となる。
【0034】
凝集沈殿槽100は、凝集反応部90で形成されたフロックを沈殿させて除去する。除去された凝集沈殿物の一部は、例えば、回転円板型水処理部10へ供給される被処理水へ返送される。凝集沈殿物が除去された被処理水は、砂ろ過部110へ送出される。なお、凝集沈殿物が除去された被処理水は、後段処理プロセスの特性に応じ、任意にpH調整してもよい。例えば、pH8以下とすることが望ましい(図示なし)。
【0035】
砂ろ過部110は、供給される被処理水をろ過する。砂ろ過部110は、例えば、砂等の鉱物、アンスラサイト等の粒状充填物で構成したものが用いられる。砂ろ過部110は、固形物の計画負荷量、処理水量、及び/又は逆洗浄頻度に応じ、任意に複数配置させることが可能である。砂ろ過部110でろ過された被処理水は膜ろ過部20へ排出される。
【0036】
膜ろ過部20は、供給される被処理水をろ過する。膜ろ過部20は、固形物の計画負荷量、処理水量、逆洗浄頻度、及び/又は薬液洗浄頻度に応じ、任意に複数配置させることが可能である。膜ろ過部20でろ過された被処理水は軟水化部120へ排出される。
【0037】
軟水化部120は、膜ろ過部20でろ過された被処理水を軟水化する。つまり、軟水化部120は、膜ろ過部20でろ過された被処理水に含まれる硬度成分を陽イオンに置換して軟水を製造する。軟水化部120は、例えば、弱酸性カチオン交換樹脂塔、又は強酸性カチオン交換樹脂塔等により実現される。このとき、軟水化部120は、例えば、弱酸性カチオン交換樹脂塔、又は強酸性カチオン交換樹脂塔を単塔で利用しても構わないし、直列多塔等で利用しても構わない。また、これら樹脂塔を組み合わせた直列多塔構成も利用可能である。また、カチオン交換樹脂塔の薬液再生頻度に応じ、メリーゴーランド形式での運用等、同一塔を複数構成しても構わない。軟水化部120で用いられるイオン交換樹脂の種類と構成とは、被処理水中のイオン成分濃度に応じて選定される。軟水化部120で軟水化処理された処理水は、被処理水として脱炭酸部130へ排出される。
【0038】
脱炭酸部130は、供給される被処理水中の溶解炭酸成分を除去する。脱炭酸部130は、例えば、酸処理及び気液接触塔の併用、又はガス分離膜等が用いられて実現される。脱炭酸部130で溶存炭酸成分が除去された処理水は、被処理水として昇圧ポンプ30へ排出される。
【0039】
pH調整部50は、昇圧ポンプ30へ供給される被処理水のpHを調整する。pH調整部50は、pHをアルカリ性に調整する場合には、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物を被処理水へ添加する。また、pH調整部50は、pHを酸性に調整する場合には、例えば、硫酸又は塩酸を被処理水へ添加する。pH調整部50によりpHが調整された被処理水は、昇圧ポンプ30で予め設定された圧力へ昇圧され、RO膜濃縮装置40へ供給される。
【0040】
RO膜濃縮装置40は、高圧に昇圧されて供給された被処理水を、溶存塩類が除去された透過水と、溶存塩類が濃縮された濃縮水とに分離する、逆浸透膜装置の一例である。RO膜濃縮装置40は、例えば、pH6以下、又はpH8以上に設定されて運用される。RO膜濃縮装置40は、逆浸透膜421により分離された高圧の濃縮水を蒸発濃縮部140へ送出し、逆浸透膜421により分離された透過水を排出する。
【0041】
蒸発濃縮部140は、水溶性有機物を含む濃縮液に対する熱処理プロセスを実施する熱処理装置の一例であり、例えば、蒸発濃縮を実施する装置である。蒸発濃縮部140は、RO膜濃縮装置40から供給される濃縮水に由来する水分を蒸発させ、蒸発残渣と蒸発水とを発生させる。蒸発濃縮部140は、例えば、蒸発缶を利用した構成、加熱用蒸気を利用した構成、及びスプレードライヤ等の既往のシステムを利用した構成等により実現される。なお、形式に制限はなく、結晶析出用機器と組み合わせてもよいし、乾燥機と組み合わせてもよい。また、蒸発残渣の生成に応じ、遠心分離機、及び固液分離器の追加構成を取ってもよい。また、蒸発濃縮促進のため、消泡剤、及びスケール防止剤等の薬液添加機構を設けても構わない。
【0042】
以上のように、第2の実施形態の水処理装置1aでは、被処理水中に含まれる有機物、りん、及び窒素分が、回転円板型水処理部10及び生物反応部70で浄化される。そして、凝集反応部90では、例えば、アルカリ凝集法により、残留りん分が除去される。これにより、膜ろ過部20でのりん酸塩スケール形成を軽減でき、かつ、RO膜濃縮装置40でのりん酸塩スケール形成リスクを軽減できる。また、軟水化部120で除去する必要のある硬度分は、凝集反応部90での処理で残留した硬度分となるため、凝集沈殿槽100で除去される分だけ少なくなる。そのため、軟水化部120のカチオン交換樹脂塔の樹脂再生頻度が抑制されることになり、薬液消費量及び廃棄物量が縮減される。
【0043】
また、凝集沈殿槽100で凝集沈殿物が除去された被処理水は、砂ろ過部110で残留固形分が除去された後、膜ろ過部20にて微細粒子が除去される。これにより、膜ろ過部20での固形物負荷を減少させ、膜ろ過部20の稼働率を高めることが可能となる。また、事前に硬度成分を除去しているため、膜面へのスケール分析出を抑制することが可能となる。
【0044】
また、膜ろ過部20でろ過された被処理水は、軟水化部120で軟水化される。軟水化部120でより低濃度まで残留硬度成分が除去されるため、RO膜濃縮装置40を運用する際、硬度成分由来のスケール形成をさらに抑制することが可能となる。
【0045】
また、軟水化部120で軟水化された被処理水は、脱炭酸部130で脱炭酸される。これにより、RO膜濃縮装置40内で、アルカリ運転時に水が高濃縮された際の炭酸スケール成分の析出を抑制することが可能となる。また、RO膜濃縮装置40がアルカリ運転されることにより、シリカスケール形成を抑制することが可能となる。また、RO膜濃縮装置40が酸運転されることにより、シリカスケール形成と、硬度成分に由来するスケール形成を抑制することも可能となる。
【0046】
また、スケール形成リスクが軽減されるため、RO膜濃縮装置40での水回収及び水濃縮が促進され、蒸発濃縮部140で消費する熱エネルギーが縮減される。
【0047】
また、回転円板型水処理部10へ、栄養塩添加部15から栄養塩が添加される他、栄養塩由来成分を含有する、凝集沈殿槽100の凝集沈殿物が供給される。これにより、回転円板型水処理部10においてバチルス菌優占化が促進し、微生物処理が安定化し、水浄化が安定化する。また、回転円板型水処理部10を安定的に運用するために必要な栄養塩を内部リサイクルすることが可能となる。
【0048】
なお、第2の実施形態では、膜ろ過部20でろ過された被処理水が、軟水化部120で軟水化され、その後、脱炭酸部130で脱炭酸される場合を例に説明した。しかしながら、軟水化部120及び脱炭酸部130の順序はこれに限定されない。脱炭酸部による脱炭酸の後に、軟水化部による軟水化しても構わない。ただし、このとき、脱炭酸後の被処理水にアルカリを添加してpHを中性付近に調整し、軟水化後の被処理水に酸又はアルカリを添加してpHを調整する必要がある。
【0049】
また、第2の実施形態の水処理装置1aは、その他の構成を有していても構わない。
図5は、水処理装置1bの機能構成の例を表すブロック図である。
図5に示される水処理装置1bは、回転円板型水処理部10、生物反応部70、沈殿槽80、凝集反応部90、凝集沈殿槽100、砂ろ過部110、膜ろ過部20、軟水化部120、脱炭酸部130、昇圧ポンプ30、RO膜濃縮装置40、pH調整部50、蒸発濃縮部140、及び熱交換器150を有する。
【0050】
熱交換器150は、蒸発濃縮部140で発生した蒸発水のエネルギーを利用し、RO膜濃縮装置40で分離された透過水を温める。熱交換器150で昇温された透過水は、水処理が停止されている際において、膜ろ過部20へ供給される。
【0051】
このように、RO膜濃縮装置40で生成される透過水と、蒸発濃縮部140で発生する廃熱を利用して、膜ろ過部20を温水洗浄することが可能となる。これにより、エネルギーを効率的に利用して膜洗浄効果を高め、ろ過運用を安定化させ、水回収濃縮を適正に運用することが可能となる。
【0052】
なお、熱交換器150で昇温した透過水を、砂ろ過部110、及び/又はRO膜濃縮装置40を洗浄するために利用しても構わない。
【0053】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、水処理装置1,1a,1bは、バチルス菌を優占化させた環境下において、有機成分含有処理水から水回収、及び排水濃縮することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。