(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】ポリイミド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2021568068
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2019016607
(87)【国際公開番号】W WO2020230969
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0055736
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ヒョン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】イン・ファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0077694(KR,A)
【文献】特開2018-024726(JP,A)
【文献】特開2016-124956(JP,A)
【文献】特開平08-097525(JP,A)
【文献】特表2010-513591(JP,A)
【文献】特開2017-155167(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146637(WO,A1)
【文献】特開2018-110105(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン単量体及びジアンハイドライド単量体が重合された重合体を含み、380nm~780nm波長領域での平均光透過率が49~61%の範囲内であり、550nm波長での光透過率が40~64%の範囲内であることを特徴とする、
重合体は、第1鎖及び前記第1鎖より短い鎖である第2鎖を含み、前記第2鎖は、酸化された状態であることを特徴とする、ポリイミド。
【請求項2】
酸化された第2鎖は、全体重合体で5wt%以下の範囲で含まれることを特徴とする、請求項
1に記載のポリイミド。
【請求項3】
ジアミン単量体は、3,5-ジアミノ安息香酸、3,3-ジヒドロキシ-4,4-ジアミノ-ビフェニル、2,5-ジヒドロキシ-p-フェニレンジアミン、4,6-ジアミノレゾルシノール、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン又は4,4'-メチレンジアミン(MDA)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項4】
ジアンハイドライド単量体は、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)又は2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項5】
ジアミン単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のヒドロキシ基を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項6】
熱分解温度が560℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項7】
ガラス転移温度が360℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項8】
熱膨脹係数(CTE)が15ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項9】
ASTM D 3359によって、ポリイミドを幅が10mmとなるようにガラス基板に付着し、20mm/minの剥離速度及び180°の剥離角度で剥離しながら測定した接着力が0.08N/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は、2019年5月13日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0055736号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0003】
技術分野
【0004】
本出願は、ポリイミド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0005】
ポリイミド(polyimide、PI)は、剛直な芳香族主鎖を基本とする熱的安定性を有している高分子物質であって、イミド環の化学的安定性を基礎として優れた強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を有する。
【0006】
また、ポリイミドは、絶縁特性、低い誘電率のような優れた電気的特性によって電子、通信、光学など広範囲な産業分野に適用可能な高機能性高分子材料として脚光を浴びている。
【0007】
ただし、一般的にポリイミド樹脂は、高分子樹脂のうち接着力が高い方であるとは言えず、接着力をより改善するための多様な研究が行われている。
【0008】
例えば、ポリイミド樹脂の接着力を改善するために単量体の含量を限定する方法が一部で試みられているが、接着力が多少向上する一方、伸率と引張強度などの機械的物性の低下及び寸法安定性が犠牲となり得る。
【0009】
したがって、従来より一層優れた接着力を有すると共に、ガラス転移温度及び寸法安定性も適正なレベルに担保し得る新規のポリイミド樹脂が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、上記のような従来の問題を解決するためのものであって、本来のポリイミドの特性を維持すると共に優れた接着力を具現し得るポリイミド及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、ポリイミドに関する。本出願のポリイミドは、ディスプレイ、エナメル、半導体、バインダーなどワニスを活用して接着力が必要であるか寸法安定性が要求される分野で適用が可能である。
【0012】
例示的なポリイミドは、ジアミン単量体及びジアンハイドライド単量体が重合された重合体を含み、380nm~780nm波長領域での平均光透過率が49~61%の範囲内であり、550nm波長での光透過率が40~64%の範囲内であってもよい。本明細書で、前記光透過率は、UV-Vis Spectrometerを用いて測定したものであってもよい。一つの例示で、前記380nm~780nm波長領域での平均光透過率の下限は、49.5%、50%、51%、53%、54%、55%、56%又は56.5%であってもよく、その上限は、60.8%、60.5%、60.3%、60%、58%、55%、53%又は50%であってもよい。また、一具現例で、前記550nm波長での光透過率の下限は、45%、50%、53%、54.1%、54.5%、55%、56%又は58%であってもよく、その上限は、63.8%、63.5%、63.3%、63%、61%、58%、56%、55%、54%又は52%であってもよい。本出願は、ポリイミドの光透過率を上記のように調節することによって、ポリイミド分子構造内に接着力向上因子(Adhesion Promotor)を形成し、これを通じて、既存の接着力が低いポリイミドの接着力を目的とするレベルに具現し得る。前記光透過率を調節する方法は、特に限定されない。
【0013】
一つの例示で、本出願のポリイミドは、ジアミン単量体及びジアンハイドライド単量体が重合されたポリアミド酸に由来し得る。一つの例示で、前記ポリアミド酸に由来するということは、前記ポリアミド酸がイミド化して本出願のポリイミドを形成することを意味し得る。
【0014】
ポリイミド前駆体組成物である前記ポリアミド酸は、イミド化するとき、長い重合体鎖を形成することができ、ただし、この過程において短い鎖が生成され得る。前記短い鎖は、組成物内で不純物のような役目をするので、接着力を低下させ得る。本出願は、前記短い鎖を酸化させることによって接着力を上昇させ得る。本出願は、ポリイミドフィルムの光透過率が低くなることによって一部の鎖が酸化し得る。これによって、本出願は、380nm~780nm波長領域及び550nm波長で光透過率を前記範囲に調節することによって、ポリイミド分子構造内の一部の鎖を酸化させ、これによって、接着力を向上させ得る。
【0015】
本出願の具体例で、本出願の重合体は、第1鎖及び前記第1鎖より短い鎖である第2鎖を含み、前記第2鎖は、酸化された状態であってもよい。前記第1鎖が上述した長い重合体鎖である場合、前記第2鎖は、前記短い鎖であってもよい。本明細書で長い鎖及び短い鎖は、相対的な概念であって、絶対的な数値を限定するものではない。前記第2鎖が酸化されたか否かは、反対に上述した380nm~780nm波長領域及び550nm波長で光透過率範囲を通じて分かる。一つの例示で、前記第2鎖は、全体重合体で5wt%以下の範囲で含まれ得る。前記第2鎖含量の上限は、4.8wt%、4.5wt%、4.3wt%、4.0wt%、3.8wt%、3.5wt%、3.3wt%、3.0wt%、2.8wt%、2.5wt%、2.3wt%、2.0wt%、1.5wt%、1.0wt%又は0.8wt%であってもよい。また、前記第2鎖含量の下限は、0wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.7wt%、1.0wt%又は1.3wt%であってもよい。本出願は、前記酸化された第2鎖を通じて、本来のポリイミド強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を維持すると共に優れた接着力を有するポリイミドを提供することができる。
【0016】
ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアンハイドライド単量体は、芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドであってもよく、前記芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドは、ピロメリット酸ジアンハイドライド(又はPMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBPDA)、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はa-BPDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(又はODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3'、4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、4,4'-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドなどを例示し得る。
【0017】
前記ジアンハイドライド単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、例えば、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)又は2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)を含むことができる。
【0018】
また、ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアミン単量体は、芳香族ジアミンであって、以下のように分類して例示し得る。
【0019】
1)1,4-ジアミノベンゼン(又はパラフェニレンジアミン、PDA)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(又はDABA)などのように、構造上ベンゼン核1個を有するジアミンであって、相対的に剛直な構造のジアミン;
【0020】
2)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(又はオキシジアニリン、ODA)、3,4'-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジカルボキシ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、3,3'-ジクロロベンジジン、3,3'-ジメチルベンジジン(又はo-トリジン)、2,2'-ジメチルベンジジン(又はm-トリジン)、3,3'-ジメトキシベンジジン、2,2'-ジメトキシベンジジン、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上ベンゼン核2個を有するジアミン;
【0021】
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3'-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼンなどのように、構造上ベンゼン核3個を有するジアミン;
【0022】
4)3,3'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3、-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上ベンゼン核4個を有するジアミン。
【0023】
前記ジアミン単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、例えば、3,5-ジアミノ安息香酸、3,3-ヒドロキシ-4,4-ジアミノ-ビフェニル、2,5-ジヒドロキシ-p-フェニレンジアミン、4,6-ジアミノレゾルシノール、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン又は4,4'-メチレンジアミン(MDA)を含むことができる。
【0024】
本出願の具体例で、前記ジアミン単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のヒドロキシ基を含むことができる。本出願は、上述したように、ポリイミドの分子構造内の置換基を調節することができ、一つの例示で、前記ジアミン単量体がヒドロキシ基を一つ以上含むことによって、ポリイミドの既存の物性を維持すると共に優れた接着力を具現することができる。また、前記ジアンハイドライド単量体が分子構造内に少なくとも一つ以上のヒドロキシ基を含むことができる。
【0025】
一つの例示で、ポリイミドは、熱分解温度が560℃以上又は562℃以上であってもよい。その上限値は、特に限定されないが、1000℃以下又は800℃以下であってもよい。本出願のポリイミドは、前記熱分解温度を調節することによって、未反応単量体を最小化することができ、これを通じて、目的とする物性のポリイミドを提供することができる。
【0026】
一具現例で、本出願のポリイミドは、重量平均分子量が500~100,000、1,000~80,000、10,000~70,000、20,000~60,000、25,000~55,000又は30,000~50,000の範囲内であってもよい。本出願で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。本出願のポリイミドの重量平均分子量を調節することによって、目的とする物性を有するポリイミドを提供することができる。
【0027】
また、一つの例示で、ポリイミドは、ガラス転移温度が360℃以上、370℃以上、375℃以上、380℃以上又は400℃以上であってもよい。その上限は、特に制限されないが、600℃又は550℃であってもよい。また、前記ポリイミドは、熱膨脹係数(CTE)が15ppm/℃以下、13ppm/℃以下、10ppm/℃以下又は5ppm/℃以下であってもよい。その下限は、特に限定されないが、0ppm/℃又は2ppm/℃であってもよい。前記CTEは、例えば、100℃から350℃まで昇温又は降温するとき測定したものであってもよい。本出願は、前記ポリイミドの物性を調節することによって、既存のポリイミドの優れた強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を維持すると共に優れた接着力を具現することができる。
【0028】
一つの例示で、本出願のポリイミドは、窒素及び酸素雰囲気下でイミド化されたポリイミドであってもよい。一つの例示で、前記ポリイミドは、ポリアミド酸が酸素及び窒素雰囲気下でイミド化されたポリイミドであってもよい。本出願は、上記のように酸素及び窒素雰囲気下でポリアミド酸をイミド化することによって、酸素によるオキシデーション反応を誘導することができ、相対的に低分子量の鎖を通じてポリイミド全体の接着力を向上させ得る。
【0029】
本出願で、ポリイミド前駆体組成物は、ポリアミド酸と同一の意味で用いられ得る。前記ポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒を含むことができる。前記有機溶媒は、ポリアミド酸が溶解され得る有機溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。
【0030】
前記非プロトン性極性溶媒は、例えば、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)及びジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0031】
本出願は、場合によって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いてポリアミド酸の溶解度を調節してもよい。
【0032】
一つの例示で、前記有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0033】
一方、本出願のポリイミド前駆体組成物は、摺動性、熱伝導性、導電性、コロナ耐性、ルーフ硬度などのフィルムの多様な特性の改善を目的として充填材が含まれ得る。添加される充填材は、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0034】
前記充填材の粒径は、特に限定されるものではなく、改質するフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定できる。前記平均粒径は、0.05~20μm、0.1~10μm、0.1~5μm又は0.1~3μmであってもよい。本明細書で平均粒径は、特に異に規定しない限り、D50粒度分析によって測定した平均粒径であってもよい。
【0035】
本出願は、前記粒径範囲を調節することによって、改質効果を十分に維持すると共に表面性を損傷させず、機械的特性を低下させないことができる。
【0036】
また、本出願は、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質するフィルム特性や充填材の粒径などによって決定できる。本出願で、前記充填材の添加量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.01~10重量部、0.01~5重量部又は0.02~1重量部であってもよい。本出願は、前記含量を調節することによって、充填材の改質効果を十分に維持すると共にフィルムの機械的特性を損傷させないことができる。
【0037】
前記充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、同種業界の公知の方法を用いることができる。
【0038】
一つの具体的な例で、前記ポリイミド前駆体組成物は、全体重量を基準として固形分を5~30重量%、8~25重量%又は10~20重量%含むことができる。
【0039】
本出願は、前記ポリイミド前駆体組成物の固形分含量を調節することによって、粘度上昇を制御すると共に硬化過程で多量の溶媒を除去しなければならない製造コストと工程時間の増加を防止することができる。
【0040】
前記ポリイミド前駆体組成物は、23℃の温度及び0.5rpmの回転速度条件で、RV-7番スピンドルでブルックフィールド粘度計で測定した粘度が10,000cP以下、9,000cP以下であってもよい。その下限は、特に限定されないが、500cP以上又は1000cP以上であってもよい。
【0041】
一方、ポリアミド酸溶液の製造は、例えば、ジアミン単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアンハイドライド単量体をジアミン単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法、又はジアンハイドライド単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン単量体をジアンハイドライド単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法などを用いる。
【0042】
本出願の具体例で、前記ポリイミドは、ASTM D 3359によって測定した接着力が0.08N/cm以上であってもよい。前記接着力は、例えば、0.12N/cm以上、0.15N/cm以上、0.18N/cm以上、0.22N/cm以上、0.25N/cm以上、0.3N/cm以上、0.33N/cm以上、0.38N/cm以上又は0.45N/cm以上であってもよく、その上限は、特に制限されないが、5N/cm、4N/cm、3N/cm、2N/cm、1N/cm、0.8N/cm又は0.6N/cmであってもよい。前記接着力は、製造したポリイミドフィルムをガラス基板に幅が10mmとなるように付着し、20mm/minの剥離角度及び180°の剥離角度で剥離しながら測定した接着力であってもよい。
【0043】
また、本出願は、ポリイミドの製造方法に関する。前記製造方法は、上述したポリイミドの製造方法であってもよい。
【0044】
前記製造方法は、ポリイミド前駆体組成物を窒素及び酸素雰囲気下でイミド化する段階を含むことができる。本出願は、イミド化段階で窒素だけでなく一定量の酸素も一緒に投入することができる。本出願は、酸素によるオキシデーション反応を誘導することができ、相対的に低分子量の鎖を通じてポリイミド全体の接着力を向上させ得る。
【0045】
本出願は、前記段階で、窒素及び酸素がそれぞれ95~5及び5~95の体積比を有することができる。前記体積比は、例えば、窒素の体積比が94~8、93~20、92~40、91~60又は90~82であってもよい。また、酸素の体積比は、例えば、6~80、7~60、8~40又は9~18の範囲内に調節され得る。本出願は、前記窒素と酸素の体積比を調節することによって、ポリイミド内の低分子量の短い鎖を酸化させ、ポリイミド内でAdhesion Promotorを調節することができ、これを通じて、優れた接着力を具現することができる。また、本出願は、前記体積比範囲内で既存のポリイミド物性も共に維持させ得る。
【0046】
一つの例示で、前記製造方法は、50~500℃、100~480℃又は130~470℃の工程温度を有することができる。また、前記ポリイミド前駆体組成物は、支持体又は基材上に塗布されてフィルム形態を有するポリイミドとして製造され得るが、前記ポリイミドは、5~50μm又は10~20μm厚さのフィルム形態を有することができる。
【0047】
一つの例示で、本出願は、ポリイミドの製造方法で前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に製膜して乾燥してゲルフィルムを製造する段階;及び前記ゲルフィルムを硬化する段階を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
【0048】
具体的に、上記したポリイミド前駆体組成物をイミド化してポリイミドフィルムを製造する方法に対しては、従来の公知となった方法を用いることができる。
【0049】
このようなイミド化の具体的な方法としては、熱イミド化法、化学イミド化法又は前記熱イミド化法と化学イミド化法を併用する複合イミド化法が例示できる。
【発明の効果】
【0050】
本出願は、本来のポリイミドの特性を維持すると共に優れた接着力を具現し得るポリイミド及びその製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の提示された実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
撹拌機及び窒素注入排出管を具備した500mL反応器に窒素を注入しながらN-メチル-ピロリドン(NMP)を投入して反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン単量体として1,4-ジアミノベンゼン(PPD)及びジアンハイドライド単量体としてビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(BPDA)及びピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)を投入して完全に溶解されたことを確認する。窒素雰囲気下で40℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続けた後、23℃での粘度が7,000cPを示すポリアミド酸溶液を製造した。
【0053】
その後、窒素雰囲気下で80℃に温度を上げて加熱しながら2時間の間追加的に撹拌を続けた後、23℃まで冷却して粘度が5,100cPを示すポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0054】
前記ポリイミド前駆体組成物をWIZUS Glass(Asahi Glass社)支持体に薄膜の形態で塗布した後、下記表1の酸素及び窒素雰囲気下で、約110℃で始めて460℃まで温度を上げて熱処理し、その後、支持体から剥離して平均厚さがそれぞれ約15~17μmであるフィルム形態のポリイミドを製造した。
【0055】
<実施例2~5及び比較例1、2>
【0056】
実施例1で、工程条件をそれぞれ下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同一の方法でポリイミドを製造した。
【0057】
【0058】
<実験例1-CTE>
【0059】
TA社の熱機械分析機(Thermomechanical Analyzer)Q400モデルを用い、ポリイミドフィルムを幅2mm、長さ10mmに切った後、窒素雰囲気下で0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から500℃まで昇温した後、再び10℃/minの速度で冷却しながら100℃から350℃区間の勾配を測定した。100℃から350℃までの昇温区間で先にCTEを測定し、その後、350℃から100℃までの降温区間でCTEを測定した。
【0060】
<実験例2-ガラス転移温度>
【0061】
ガラス転移温度は、TMAを用いて各ポリイミド樹脂の損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、それらのタンジェントグラフで変曲点をガラス転移温度で測定した。
【0062】
<実験例3-接着力>
【0063】
ASTM D 3359に提示された方法を用いて接着力を測定した。具体的に、実施例及び比較例で製造したポリイミドフィルムをガラス基板に幅が10mmとなるように付着し、20mm/minの剥離速度及び180°の剥離角度で剥離しながら接着力を測定した。接着力の単位は、N/cmである。
【0064】
<実験例4-光透過率>
【0065】
上記で製造したポリイミドフィルムに対して、UV-Vis Spectrometerを用いて380nm~780nm波長領域で光透過率を測定してその平均値を計算し、また、550nmでの光透過率を測定した。
【0066】