(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】処理チャンバおよび基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
H01L21/02 D
(21)【出願番号】P 2022008809
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】中根 慎悟
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-038876(JP,A)
【文献】特表2003-504891(JP,A)
【文献】特開2007-250568(JP,A)
【文献】特開2021-174952(JP,A)
【文献】特開2013-061081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/67
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/027
F27D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に被処理基板を収容して所定の処理を施すための処理チャンバであって、
上部に開口を有し前記被処理基板を収容可能な内部空間が設けられたチャンバ本体と、
前記開口を上方から覆って閉塞する蓋体を有する蓋部と、
前記チャンバ本体に対し、前記蓋部を略水平な揺動軸回りに揺動自在に結合するヒンジ部と、
前記蓋部を前記揺動軸回りに揺動させて、前記蓋体が前記チャンバ本体の上部に当接して前記開口を覆う閉状態と、前記蓋体が前記開口から離隔して前記開口を開放する開状態とを切り替える開閉部と
を備え、
前記開閉部は、前記蓋部のうち前記揺動軸上にない当接部位に当接する可動部材と、前記可動部材を移動位置決めさせる駆動機構とを有し、
前記可動部材の当接がない状態では前記蓋体は前記閉状態であり、
前記可動部材は、前記蓋体が前記開状態から前記閉状態へ向かうときに前記当接部位が変位する経路上で、かつ当該変位方向において前記当接部位よりも前方の位置に、前記当接部位に対して離当接自在に設けられて、前記当接部位に当接することで前記変位方向への前記当接部位の変位を規制し、
前記駆動機構は、前記経路に沿って前記可動部材を移動させて、前記可動部材が前記当接部位に当接するときの前記可動部材の位置を変化させる、処理チャンバ。
【請求項2】
前記ヒンジ部は、前記揺動軸に垂直な方向における前記蓋体の一方端部を軸支する、請求項
1に記載の処理チャンバ。
【請求項3】
内部空間に被処理基板を収容して所定の処理を施すための処理チャンバであって、
上部に開口を有し前記被処理基板を収容可能な内部空間が設けられたチャンバ本体と、
前記開口を上方から覆って閉塞する蓋体を有する蓋部と、
前記チャンバ本体に対し、前記蓋部を略水平な揺動軸回りに揺動自在に結合するヒンジ部と、
前記蓋部を前記揺動軸回りに揺動させて、前記蓋体が前記チャンバ本体の上部に当接して前記開口を覆う閉状態と、前記蓋体が前記開口から離隔して前記開口を開放する開状態とを切り替える開閉部と
を備え、
前記ヒンジ部は、前記蓋体を片持ち状態に軸支し、
前記開閉部は、前記蓋部のうち前記揺動軸上にない当接部位に当接する可動部材と、前記可動部材を移動位置決めさせる駆動機構とを有し、
前記可動部材は、前記蓋体が前記開状態から前記閉状態へ向かうときに前記当接部位が変位する経路上で、かつ当該変位方向において前記当接部位よりも前方の位置に、前記当接部位に対して離当接自在に設けられて、前記当接部位に当接することで前記変位方向への前記当接部位の変位を規制し、
前記駆動機構は、前記経路に沿って前記可動部材を移動させて、前記可動部材が前記当接部位に当接するときの前記可動部材の位置を変化させる、処理チャンバ。
【請求項4】
前記可動部材は、前記蓋体が前記閉状態となる第1位置と、前記蓋体が前記開状態となる第2位置との間を往復移動する、請求項1ないし
3のいずれかに記載の処理チャンバ。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記可動部材が前記第2位置から前記第1位置へ向かう方向に移動するときの速度を制御する、請求項
4に記載の処理チャンバ。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記可動部材を前記第1位置と前記第2位置との間に静止させる機能を有する、請求項
4に記載の処理チャンバ。
【請求項7】
内部空間に被処理基板を収容して所定の処理を施すための処理チャンバであって、
上部に開口を有し前記被処理基板を収容可能な内部空間が設けられたチャンバ本体と、
前記開口を上方から覆って閉塞する蓋体を有する蓋部と、
前記チャンバ本体に対し、前記蓋部を略水平な揺動軸回りに揺動自在に結合するヒンジ部と、
前記蓋部を前記揺動軸回りに揺動させて、前記蓋体が前記チャンバ本体の上部に当接して前記開口を覆う閉状態と、前記蓋体が前記開口から離隔して前記開口を開放する開状態とを切り替える開閉部と
を備え、
前記開閉部は、前記蓋部のうち前記揺動軸上にない当接部位に当接する可動部材と、前記可動部材を移動位置決めさせる駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記可動部材を水平方向に移動させる直動機構を有し、
前記可動部材は、前記蓋体が前記開状態から前記閉状態へ向かうときに前記当接部位が変位する経路上で、かつ当該変位方向において前記当接部位よりも前方の位置に、前記当接部位に対して離当接自在に設けられて、前記当接部位に当接することで前記変位方向への前記当接部位の変位を規制し、
前記駆動機構は、前記経路に沿って前記可動部材を移動させて、前記可動部材が前記当接部位に当接するときの前記可動部材の位置を変化させる、処理チャンバ。
【請求項8】
前記直動機構が前記チャンバ本体の側面に設けられる、請求項
7に記載の処理チャンバ。
【請求項9】
前記可動部材と前記当接部位とが、前記チャンバ本体の開口面よりも下方で当接する、請求項1ないし
8のいずれかに記載の処理チャンバ。
【請求項10】
前記チャンバ本体の側面に、前記被処理基板を出し入れするための搬入口が開口している、請求項1ないし
9のいずれかに記載の処理チャンバ。
【請求項11】
請求項1ないし1
0のいずれかに記載の処理チャンバと、
前記内部空間に設けられ、前記被処理基板に対して前記所定の処理を実行する処理部と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部空間に被処理基板を収容する処理チャンバおよびこれを用いる基板処理装置に関するものであり、特にチャンバ本体の上部が開口しこれを開閉自在の蓋体で覆う構造の処理チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体基板、表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等、各種の基板の製造工程においては、被処理基板を処理チャンバ内に収容して行う処理が多用されている。処理の目的に応じて、種々のチャンバ構造が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術は基板に対し熱処理を行う装置に関するものであり、この熱処理装置は処理チャンバ内にホットプレートが設置された構造を有している。ここに記載された処理チャンバでは、通常の処理工程において被処理基板を出し入れするためのシャッタがチャンバ側面に設けられるほか、内部のメンテナンス作業を可能とするために、処理チャンバの天板が開閉可能な蓋体として構成されている。この蓋体を自動的に開閉するための機構については言及されておらず、手動によるものと考えられる。
【0003】
一方、特許文献2には、処理チャンバの蓋体を自動的に開閉する機構が記載されている。すなわち、この文献には、処理チャンバの天板を吊り上げて水平方向に移動させ退避させることで、処理チャンバ上部の開口を開放状態とする機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-061081号公報
【文献】特開2020-096061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の機構は、装置が大掛かりとなり、また天板を退避させるためのスペースが必要である。扱う基板が大サイズであるなど蓋体が人力では動かすことのできないほどの大きさあるいは重さを有する場合には、このような機構が必要となってくる。その一方で、蓋体が手動で動かせる程度の重量である場合には、特許文献1に記載の技術のようにヒンジを軸として蓋体が揺動する形式のものの方が、部品点数や設置スペースの点で有利である。この場合でも、例えば基板の大型化にも対応するために、手動による開閉作業を動力によりアシストする、または蓋体を自動的に開閉するための機構が装備されることがより好ましい点に変わりはない。
【0006】
上記のような処理チャンバの蓋体の開閉に適用される機構に対しては、以下のような考慮すべき事情がある。すなわち、開閉はチャンバ内のメンテナンスのために行われるものであるから、開状態で作業者が外部からチャンバ内にアクセスする必要があり、このために蓋体の最大開度はできるだけ大きいことが望ましい。さらには、任意の開度で停止させることのできる構造であることがより好ましい。
【0007】
また、開閉の高速性は特に必要とされない一方で、チャンバ内を汚染するおそれのある発塵等は避けなければならない。したがって、開閉速度は比較的低速であってよい。そして、特に蓋体を閉じる方向に開閉機構が作動するとき、作業者が誤って蓋体とチャンバ本体との間に挟まれてしまう事故を未然に防止するための措置が必要である。
【0008】
また、メンテナンスの必要性が生じる状況として、停電等、装置が正しく動作しなくなったケースが含まれる。そのような状態でも別の手段、例えば手動で蓋体を開くことができることが求められる。また、開閉動作の途中で開閉機構が停止してしまった場合でも、開いていた蓋体が急に閉じてしまうような事態は避けなければならない。
【0009】
適用対象を限定しなければ、扉や蓋体等の可動部を自動的に開閉するための機構については種々のものが考案され実用化されている。しかしながら、上記のような要求に応えることができ、処理チャンバの蓋体の開閉機構として好適に適用可能な構造が確立されているとは言えない状況である。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理チャンバの蓋体を自動的に開閉する機構として求められる種々の要求に応えることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様は、内部空間に被処理基板を収容して所定の処理を施すための処理チャンバであって、上部に開口を有し前記被処理基板を収容可能な内部空間が設けられたチャンバ本体と、前記開口を上方から覆って閉塞する蓋体を有する蓋部と、前記チャンバ本体に対し、前記蓋部を略水平な揺動軸回りに揺動自在に結合するヒンジ部と、前記蓋部を前記揺動軸回りに揺動させて、前記蓋体が前記チャンバ本体の上部に当接して前記開口を覆う閉状態と前記蓋体が前記開口から離隔して前記開口を開放する開状態とを切り替える開閉部とを備えている。ここで、前記開閉部は、前記蓋部のうち前記揺動軸上にない当接部位に当接する可動部材と、前記可動部材を移動位置決めさせる駆動機構とを有し、前記可動部材は、前記蓋体が前記開状態から前記閉状態へ向かうときに前記当接部位が変位する経路上で、かつ当該変位方向において前記当接部位よりも前方の位置に、前記当接部位に対して離当接自在に設けられて、前記当接部位に当接することで前記変位方向への前記当接部位の変位を規制し、前記駆動機構は、前記経路に沿って前記可動部材を移動させて、前記可動部材が前記当接部位に当接するときの前記可動部材の位置を変化させる。発明のより具体的な第1の態様では、前記可動部材の当接がない状態では前記蓋体は前記閉状態である。また、第2の態様では、前記ヒンジ部は、前記蓋体を片持ち状態に軸支する。さらに、第3の態様では、前記駆動機構は、前記可動部材を水平方向に移動させる直動機構を有する。
【0012】
ここにいう「蓋部」は、チャンバ本体の開口を覆う蓋体を少なくとも含み、さらに蓋体と一体的に揺動する部材がある場合にはその部材までを含めた概念を指す語である。また、「離当接自在」とは、可動部材と当接部位とが当接した状態から、これらのうち一方が他方から離間する方向に移動しようとするとき、他方が負荷となってこの動きを制限することが実質的にない状態を指す。これには、両者が係合せず単に表面が当接するだけの非係合状態、および、互いに係合または連結されていても軽微な外力で離間し該係合等が解除されるような状態の双方が含まれ得る。
【0013】
このように構成された発明では、開閉部は、開状態から閉状態へ移行しようとする蓋部の動きを規制する機能を有する。すなわち、蓋部が開状態から自重によって揺動軸回りに揺動し閉状態へ遷移しようとするとき蓋部の変位に伴って変位する当接部位の前方に、開閉部の可動部材が配置されている。これにより、当接部位が可動部材に当接した時点で当接部位の変位が規制される。つまり、閉じる方向への蓋部の変位が規制される。一方で、可動部材は当接部位に対し離当接自在となっている。そのため、例えば外力によって蓋部が開く方向へ変位したとき、可動部材は当接部位から離間し、当接部材の位置を規制する機能はない。
【0014】
言い換えれば、可動部材は、当接部位に当接することによりチャンバ本体に対する蓋部の開きの最小値(以下、「最小開度」と称する)を規定するものであり、蓋部の開きを小さくしようとする外力(例えば重力)には抗する一方で、開きを大きくしようとする外力には影響を及ぼさない。つまり可動部材は、通常の動作においては自重により閉じようとする蓋部を単に支えているだけである。
【0015】
そして開閉部では、駆動機構が可動部材を移動させることにより、上記した最小開度を変更可能である。具体的には、最小開度が増加するように可動部材を移動させることで、これに伴って蓋部の開きは大きくなる。逆に、最小開度が減少するように可動部材を移動させると、蓋部の開きは小さくなる。このように、開閉部の可動部材が移動することにより、蓋部の開きの大きさを変化させることができ、これにより、蓋体がチャンバ本体の開口を覆う閉状態と、開口が開放された開状態との間での遷移が実現される。すなわち、チャンバ本体の開口に対する蓋体の開閉を、人的作業によらず自動的に行うことが可能である。
【0016】
このような動作のいずれの時点においても、最小開度を超えて蓋部を開こうとする外的要因に対して、開閉部は影響を及ぼさない。したがって、例えば作業者が手動で蓋部を開く操作に対して開閉部は抵抗しない。このため、例えば装置への電力供給が遮断された状態でも手動で蓋部を開くことが可能である。
【0017】
また例えば、開閉部により蓋部を閉じる際にチャンバ本体と蓋部との間に何らかの物体が挟まってしまったとしても、それ以上に蓋部を強制的に閉じようとする力は働かない。例えば作業者が蓋部を開きチャンバ本体内にアクセスしているときに開閉部が動作したとしても、作業者の体が接触した時点で蓋部の動きは停止し、それ以上に閉じる方向の駆動力は作用しない。このことは、メンテナンス作業における安全性向上につながる。
【0018】
このように、本発明における開閉部は、蓋体に対し、閉状態から開状態へ遷移させるための駆動力を与える一方で、自重により開状態から閉状態へ向かおうとする蓋体に対してはこれを規制する制動力を与えることになる。これにより、チャンバ本体の開口に対する蓋体の自動開閉が実現される。
【0019】
言うなれば、開閉部はてこの原理を利用して蓋体の開閉を行う。そのため、可動部材の可動範囲が小さくても蓋体を大きく開くことが可能である。つまり、蓋体の最大開度を大きく取ることが可能である。そして、可動部材が停止した状態では自重により閉状態へ向かおうとする蓋体の変位も規制されるため、駆動機構による駆動を停止することで、蓋体を任意の開度に維持することが可能である。
【0020】
このような機構は蓋体を高速で開閉させる用途には必ずしも適さないが、上記した要求に鑑みればむしろ好都合である。そして、開閉部は蓋体を閉じる方向への駆動力を及ぼさないので、仮に人体や物品が蓋体とチャンバ本体との間に挟まり得る状態でも、蓋体に対し重力以上の力が作用することはない。また、可動部材の当接部位への当接により蓋体の変位を規制する効果も得られる。
【0021】
また、開閉部は、蓋体を開こうとする外力に対してはこれを阻害するまたは減殺させるように作用しない。したがって、例えば作業者が手動操作により蓋体を開こうとするとき、単に重力に抗して蓋体を持ち上げればよく、この点は自動開閉機構を有していない処理チャンバと何ら変わらない。
【0022】
また、本発明の他の一の態様は、上記構成を有する処理チャンバと、前記内部空間に設けられ、前記被処理基板に対して前記所定の処理を実行する処理部とを備える、基板処理装置である。このように構成された発明では、処理チャンバ内に設けられる処理部に対するメンテナンス性に優れた基板処理装置を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明によれば、例えばメンテナンス性向上のために上部に蓋体が設けられる処理チャンバに対し、蓋体を自動的に開閉するのに好適な機構を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態である基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図6】揺動軸、当接部位および可動部材の位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態である基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置1は、半導体基板やフラットパネル用ガラス基板等、各種の被処理基板を受け入れて所定の処理を施すための装置である。例えば、フォトレジスト液などの塗布液が表面に塗布された被処理基板を受け入れて常圧下で加熱することにより、塗布液中の溶媒成分を揮発させる目的に用いることができる。例えば基板表面にフォトレジスト膜を形成する目的に、この基板処理装置1を用いることができる。なお、基板および処理の種類についてはこれに限定されるものではない。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(-Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
【0026】
基板処理装置1は、主たる構成として、被処理基板を収容する処理チャンバ10と、処理チャンバ10内に設けられて被処理基板に所定の処理を施す処理ユニット20と、これらの動作を制御する制御ユニット40とを備えている。処理ユニット20は、例えば基板に熱処理を施すホットプレートユニットである。
【0027】
処理チャンバ10は、上部が開口する箱型のチャンバ本体11と、チャンバ本体11の開口111を覆ってチャンバ本体11の内部空間を閉塞する蓋部12とを有している。チャンバ本体11は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属製の箱体である。また、蓋部12としては、金属製の板材の他、軽量化を図るため、例えば金属材料によるフラッシュ構造、または、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;CFRP)製とすることができる。代表的なサイズとしては、チャンバ本体11の水平な1辺の長さが1~2m程度であり、その場合の蓋部12の質量は30kg程度である。この程度の重さであれば手動でも開閉は可能と言える。
【0028】
蓋部12は平板状の蓋体121のX方向側側面のうち(+Y)方向側端部に近い位置にサイドプレート122が取り付けられた構造となっている。サイドプレート122はヒンジ部13を介してチャンバ本体11に係合されている。ヒンジ部13はサイドプレート122の(+Y)側端部を片持ち状態で揺動自在に軸支するものであり、その構造としては種々の公知のものを適用可能である。このような構成により、蓋部12は、一点鎖線で示される略水平な揺動軸AX回りに揺動自在となっている。
【0029】
外力が作用しない状態では、蓋部12はその自重によりチャンバ本体11の開口111を覆い、したがってチャンバ11は閉じられた状態となる。図示を省略しているが、閉状態の蓋部12をチャンバ本体11に固定するための適宜のロック機構が設けられる。これにより、処理チャンバ10の内部空間の気密が実現される。
【0030】
蓋部12は、作業者が手動でまたは適宜の動力を用いて開くことができる。また、チャンバ本体11の(+X)側側面には、制御ユニット40からの制御指令に応じて蓋部12を自動的に開閉する開閉装置30が設けられている。
【0031】
チャンバ本体11の(-X)方向側側面には、水平方向を長手方向とするスリット状の開口112が設けられており、該開口112には開閉自在のシャッタ113が取り付けられている。通常の処理シーケンスでは、制御ユニット40からの制御指令に応じてシャッタ113が開閉し、側面の開口112を介して被処理基板の出し入れが行われる。つまり、側面の開口112は基板の搬入口、搬出口としての機能を有している。これに対し、上部の開口111および蓋部12は、チャンバ内のメンテナンス作業、具体的には処理ユニット20の点検、清掃、調整等のために設けられている。
【0032】
図2は処理チャンバの側面図である。また、
図3は開閉装置の要部を示す拡大図である。より具体的には、
図3(a)は開閉装置の可動部材とサイドプレートとの位置関係を示す二面図である。また、
図3(b)は可動部材の外観斜視図である。また、
図3(c)は可動部材とサイドプレートとの位置関係を示す上面図である。なお、
図1では開閉装置30がカバー31で覆われた状態で示されているが、
図2以降の各図では開閉装置30の構造を示すため、カバーが外された状態が示されている。カバー31は、防塵および人が誤って可動部に触れてしまうことを防止するとの目的で設けられるものである。
【0033】
開閉装置30は、処理チャンバ10の(+X)側側面、より具体的にはチャンバ本体11の側面であって、開閉装置30の各構成部品がチャンバ本体11の開口111よりも下方に位置するように設けられている。開閉装置30は、直線運動を実現する直動機構としてのボールねじ機構32と、ボールねじ機構32を駆動するモータ33とを備えている。制御ユニット40からの制御指令に応じてモータ33が作動することで、ボールねじ機構32に設けられたロッド321がX方向に伸縮する。ボールねじ機構32は、モータ33のY方向の回転軸回りの回転運動をY方向の直線運動に変換する。モータ33としては、例えばサーボモータまたはステッピングモータを用いることができる。
【0034】
ロッド321の(+Y)方向側先端部には、後述する可動部材34が取り付けられており、可動部材34はロッド321の伸縮に伴ってY方向に移動する。
図2および
図3(a)に示すように、蓋部12のサイドプレート122は、蓋体121の(+Y)側端部で下向き、すなわち(-Z)方向に大きく延びる金属製プレートである。その下端部の(-Y)側側面にはカムフォロア123が取り付けられている。
図3(b)および
図3(c)に示すように、金属製の可動部材34の(+Y)側端部は、(+X)方向に延びた延伸部341となっている。例えば金属ブロックからの削り出しにより、可動部材34を形成することができる。
【0035】
そして、延伸部341の(-Y)側端面にカムフォロア123が当接する。なお、可動部材34とカムフォロア123とは係合されておらず単に当接するだけであり、両者の間は離当接自在となっている。つまり、これらのうち一方を他方から引き離す方向の力に対して他方側は抵抗しない。このような構成を有する開閉装置30による蓋部12の開閉動作について、次に説明する。
【0036】
図4は蓋部の開閉動作を示す図である。
図4(a)に示すように、開閉装置30のロッド321が十分に延び、可動部材34がカムフォロア123から離間している、または軽く接触しているだけの状態では、蓋部12は重力の作用により、略水平姿勢でチャンバ本体11の開口111を覆った状態となっている。すなわちこの状態が「閉状態」である。ここから、開閉装置30のモータ33が作動しボールねじ機構32のロッド321の短縮が開始されると、
図4(a)に矢印D1で示すように、可動部材34が(-Y)方向に移動し、延伸部341がカムフォロア123に当接してこれを(-Y)方向に押し込むことになる。
【0037】
そうすると、
図4(b)に矢印D2で示すように、蓋部12を揺動軸AX回り(図において時計回り方向)に回転させる回転トルクが生じる。より詳しくは、可動部材34の移動方向は、蓋部12の揺動軸AXとはねじれの位置関係にある。したがって、可動部材34のカムフォロア123への当接による押圧力は、蓋部12に対し、その揺動軸AXとはねじれの方向に作用する。これにより、揺動軸AX回りの回転トルクが生じる。
【0038】
蓋部12が揺動軸AX回りに揺動することで、蓋部12がチャンバ本体11の開口111から上方へ離間する。このように、可動部材34がY方向へ移動しカムフォロア123を(-Y)方向に押し込むことで、直線運動が、蓋部12を揺動軸AX回りに揺動させる揺動運動に変換され、これにより蓋部12が「開状態」へ遷移する。
【0039】
蓋体121の(-Y)側先端部から揺動軸AXまでの距離は、カムフォロア123と可動部材34とが当接する位置から揺動軸AXまでの距離より十分に大きい。このため、
図4(c)に示すように、可動部材34のY方向への比較的小さい動きにより、蓋部12を大きく開かせることができる。蓋部12の開度θについては、例えば最大で60度程度を実現することが可能である。
【0040】
蓋部12の揺動に伴って、カムフォロア123が可動部材34に当接する位置は変化してゆく。カムフォロア123が転動することにより、可動部材34との間で摺擦は生じない。このことは発塵の発生を回避することに資する。
【0041】
モータ33の駆動を停止したとき、可動部材34も現在の位置で停止する。このとき重力の作用により蓋部12は閉まろうとし、カムフォロア123は可動部材34を(+Y)方向へ押し返す。可動部材34がこの力に抗して現在の位置に留まることができれば、つまり開閉装置30が可動部材34を適宜の位置に位置決めした状態を維持する機能を有していれば、このように蓋部12が開いた状態を維持することができる。
【0042】
直動機構としてセルフロック機能を有するものを使用すれば、蓋部12が任意の開度で開いた状態を、動力を使わずに維持することが可能である。これができれば、例えばメンテナンス作業のため蓋部12を開いた状態で電源を遮断した場合でも、蓋部12の開度をそのまま維持しておくことが可能となる。減速比の大きい動力伝達機構、例えばボールねじ機構は、この目的に好適なものである。このような直動機構としては、他に例えばウォームギヤ機構を適用可能である。
【0043】
また、エアシリンダ、ソレノイド、リニアモータ、ラックピニオン機構、ベルトドライブ機構など、各種の直動機構を開閉装置に適用可能である。ただし、セルフロック機能を有していないものについては、可動部材を任意の位置に留まらせるために動力を必要とする場合がある。
【0044】
上記とは逆に、
図4(c)に破線矢印D3で示すように、ロッド321が延伸する方向にボールねじ機構32が駆動され、可動部材34が(+Y)方向へ移動する場合を考える。このとき、可動部材34とカムフォロア123とは係合されていないため、可動部材34にはカムフォロア123を(+Y)方向に引っ張る機械的作用はない。しかしながら、可動部材34は、カムフォロア123に当接して(+Y)方向への移動を規制することで、自重により反時計方向に揺動つまり閉じようとする蓋部12の変位を規制する機能を有している。このため、可動部材34が(+Y)方向に移動すると、これに伴ってカムフォロア123も(+Y)方向に移動し、蓋部12の開度は小さくなってゆく。このときのカムフォロア123は可動部材34に追随して動くことになるが、単に重力の作用によるものであり、可動部材34が能動的にカムフォロア123を移動させるものではない。
【0045】
このように、可動部材34は、蓋部12が開状態と閉状態との間を相互に遷移する際にカムフォロア123が変位する経路上で、しかも開状態(
図4(c))から閉状態(
図4(a))へ向かうときのカムフォロア123に対しその変位方向(
図4(c)の矢印方向D3)の前方側((+Y)側)に配置されている。蓋部12が閉じようとするとき、カムフォロア123が可動部材34に突き当てられることでその変位が規制され、結果として蓋部12がそれ以上に閉まることが防止される。
【0046】
一方、カムフォロア123が可動部材34から離間しようとする動き、つまり蓋部12が開く方向の動きに対して、カムフォロア123に対し非係合状態の可動部材34は何ら影響を与えない。つまり、可動部材34は、チャンバ本体11に対する蓋部12の開き角の最小値(最小開度)を規定する作用を有しており、蓋部12がこれより閉まろうとする動きを規制する一方で、開こうとする動きには影響を与えない。
【0047】
図4(c)に示される開度θは、蓋部12の開閉を開閉装置30により行う場合については上記した最小開度と同じ概念を表すこととなる。例えば作業者の手作業等の外的要因により開度θを最小開度より大きくしようとする操作に対しては、開閉装置30がこれを制約することはない。つまりこの場合、開度θは開閉装置30が規定する最小開度よりも大きくなることがあり得る。開度θを最小開度より小さくしようとする操作に対しては、開閉装置30はこれに抵抗する。したがって装置が有効に作動している限り、開度θが最小開度より小さくなることはない。
【0048】
すなわち、この開閉装置30は、可動部材34の(-Y)方向および(+Y)方向への往復移動によって、蓋部12の開閉を自動的に行うことができるものである。そして、往復移動のストロークよりも大きく蓋部12を開閉させることが可能である。蓋部12が閉状態から最大開度に開くまで、あるいは逆に最大開度から閉じるまでの所要時間としては、例えば30秒程度とすることができる。モータ33の回転速度により可動部材34の移動速度を制御することで、蓋部12が開く際および閉じる際の速度を調整することが可能である。
【0049】
このように、高速での開閉を行わないことで、例えば開閉時の乱気流による粉塵の巻き込みを防止することができる。また、このように比較的ゆっくりとした動きであるため、減速比の大きな、したがってセルフロックが機能しやすい動力機構を採用することが可能である。
【0050】
蓋部12を閉じる方向の力は重力の作用によるものであり、開閉装置30が蓋部12を当該方向へ能動的に駆動するものではない。このため、例えば蓋部12を閉じる際に何らかの物体、例えば作業者の体や工具等がチャンバ本体11と蓋部12との間に挟まれたとしても、当該物体に蓋部12の自重を超える荷重がかかることはない。
【0051】
蓋部12の自動開閉については、例えば作業者のボタン操作に応じて実行することができる。すなわち、制御ユニット40に操作ボタン41を設け、作業者が操作ボタン41を操作している間だけ、モータ33が作動するようにすることができる。例えば作業者により「開」ボタンが押されるとその間モータ33がロッド321を短縮させる方向に回転し、「閉」ボタンが押されるとその間モータ33が上記とは逆に回転する、という制御を採用することができる。こうすることで、作業者がボタン操作を行っている間だけ蓋部12の開閉が進行し、操作をやめればそのときの位置で蓋部12が停止する、という動作を実現することができる。これにより、作業者が意図しないタイミングで蓋部12が自動的に開閉してしまうことが避けられる。
【0052】
また、仮にチャンバ本体11と蓋部12との間に何らかの物体が存在する状態で「閉」ボタンが押し続けられたとしても、蓋部12は物体と接触した時点で停止し、蓋部12を閉じようとする開閉装置30からの駆動力の伝達は遮断される。このように、本実施形態の処理チャンバ10は、メンテナンス作業における安全性の面でも優れた作用を有するものである。
【0053】
図5は開閉装置の他の機能を説明する図である。上記したように、蓋部12と係合していない可動部材34は、閉じようとする蓋部12の変位を規制する。その一方、可動部材34には、開こうとする蓋部12の変位を規制する作用はない。したがって、蓋部12を開かせようとする外力に対しては抗力を及ぼさない。
【0054】
例えば
図5(a)に示すように、開閉装置30によりある開度θ1まで蓋部12が開いた、あるいは開きつつある状態にあるとする。言い換えれば、開度θ1は、この時点で開閉装置30が規定する最小開度である。ここで、例えば
図5(b)に点線矢印D4で示すように、作業者が手作業により蓋部12をさらに大きく開こうとした場合、開閉装置30がこれを妨げることはない。すなわち、カムフォロア123が可動部材34から離間し、蓋部12は最小開度θ1を超えて大きく開く。また、その状態で例えば作業者が手を離したとしても、破線矢印D5で示すように、蓋部12は可動部材34により規制される元の位置まで閉じるだけであり、チャンバ本体11に衝突することは避けられる。
【0055】
例えば基板処理シーケンスの途中で装置や電源に不具合が起き、メンテナンス作業が必要となるケースがあり得る。この場合、蓋部12を開くのに動力を要する場合、直ちにメンテナンス作業を行うことができない場合が生じることになる。この実施形態では、電源が失われた場合でも手動で蓋部12を開くことが可能であり、この場合単に蓋部12の重さを持ち上げることができればよい。このような状態でも蓋部12を機械的に開状態で固定するために、適宜の係止部材がさらに設けられてもよい。
【0056】
また、開閉装置30が蓋部12を閉じるための動作を実行する際に、蓋部12とチャンバ本体11との間に例えば人体や工具など何らかの物体があったとする。この場合、物体と蓋部12とが接触した時点で、可動部材34は引き続き移動しても、蓋部12はそれ以上変位しない。この状態では、物体に対しては蓋部12の自重に起因する加重が生じるものの、それ以上強制的に蓋部12を閉じようとする駆動力が加わることはない。特に蓋部12を閉じる際の動作が低速であれば、物体と接触する際の衝撃も小さくて済む。そのため物体に対して大きなダメージを与えることが回避される。
【0057】
このように、この実施形態の開閉装置30は、言わば蓋部12を持ち上げる(あるいは押し上げる)機能を有するものであるが、蓋部12を下げる方向の力は重力によっている。このことから、開閉装置30は、重力に抗して蓋部12を持ち上げる「リフタ」として機能していると言うことができる。
【0058】
なお、蓋部を自動的に開閉する、あるいは作業者による開閉作業を動力によりアシストする他の方法としては、例えばガススプリングを利用することが考えられる。ただし、ガススプリングによる開閉では開度をあまり大きくすることができない。また、蓋部が閉じた状態でもガススプリングによる反力が作用していると、蓋体の変形等により処理チャンバの気密を保つことが難しくなる。このために強固なロック機構を設けたり、蓋部の剛性を高めたりすることは、装置の複雑化、高コスト化につながる。
【0059】
以上説明したように、この実施形態においては、開閉装置30が本発明の「開閉部」として機能しており、ボールねじ機構32およびモータ33が一体として保温発明の「駆動部」として機能している。また、上記実施形態ではカムフォロア123が本発明の「当接部位」に相当している。また、
図4(a)における可動部材34の位置、および、
図4(c)における可動部材34の位置が、本発明の「第1位置」および「第2位置」にそれぞれ相当している。また、処理ユニット20が本発明の「処理部」に相当している。
【0060】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、揺動軸AXの下方で、本発明の「当接部位」に相当するカムフォロア123と可動部材34とが当接している。しかしながら、次に説明するように、揺動軸、当接部位および可動部材の位置関係はこれに限定されず、種々のものが考えられる。
【0061】
図6は揺動軸、当接部位および可動部材の位置関係を模式的に示す図である。図において、円は揺動軸を、四角形は当接部位を、三角形は可動部材を模式的に表すものとする。また実線矢印は可動部材の移動方向を、点線矢印はそれに伴う蓋部12の変位方向をそれぞれ表すものとする。
【0062】
上記実施形態は、
図6(a)に示すように、揺動軸の下方に当接部位が設けられ、可動部材が当接部位を(-Y)方向に押し込むケースに該当する。これ以外にも、例えば
図6(b)~
図6(d)に示すケースも考えられる。
図6(b)に示す例では、蓋部12の先端と揺動軸との間に当接部位があり、可動部材は当接部位を上向き、つまり(+Z)方向に押し込む。また、
図6(c)に示す例では、揺動軸から見て蓋部12の先端とは反対側に当接部位があり、可動部材は当接部位を下向き、つまり(-Z)方向に押し込む。また、
図6(d)に示す例では、揺動軸の上方に当接部位があり、可動部材は当接部位を(+Y)方向に押し込む。いずれの例でも、蓋部12が閉じる方向に動く際に当接部位が変位する経路の前方に、可動部材が位置することになる。
【0063】
これらのいずれによっても、可動部材の往復移動により蓋部12の開閉を実現することが可能である。すなわち、可動部材は蓋部12を開くために当接部位を押し込む位置に配置されており、蓋部12が閉じる方向の動きに対しては、当接部位の変位経路の前方に位置することで該動きを規制する。これにより、可動部材の位置を変化させることで蓋部12の開き角が変化し、蓋部12の開閉が実現される。ただし、装置のY方向サイズを抑えることができるという点では、
図6(a)、
図6(d)に示す構成が有利である。このうち
図6(a)に該当する本実施形態の構成は、開閉装置30をチャンバ本体11の開口111よりも下方に配置することができるため、チャンバ内の汚染防止という観点から特に有利である。
【0064】
また、上記実施形態では可動部材34の(-Y)側にボールねじ機構32を設け、ロッド321が短縮する際に蓋部12が開くように構成されている。これとは逆に、可動部材34の(+Y)側にボールねじ機構32を設け、ロッド321が延伸する際に蓋部12が開く構成としても、技術的には等価である。ただし、本実施形態の構成には、ボールねじ機構32およびモータ33をチャンバ本体11に沿うように設けることで装置の小型化を図ることができるという利点がある。
【0065】
また、上記実施形態では、可動部材34が蓋部12のカムフォロア123に当接する構成となっている。しかしながら、蓋部の「当接部位」はこれに限定されるものではなく、可動部材による押圧の方向が揺動軸に対しねじれの関係にあり、可動部材による当接部位の押し込みが蓋部12に対し揺動トルクを生じさせるという条件が満たされる限りにおいて、蓋体、または蓋体と一体的に揺動する部材の任意の一部を「当接部位」として機能させることが可能である。
【0066】
また、上記実施形態の処理ユニット20は被処理基板を熱処理するホットプレートユニットであるが、処理チャンバ内に設置される「処理部」はこれに限定されるものではなく任意である。また、ホットプレートユニットを収容する本実施形態の処理チャンバ10は上下方向に薄い箱型であるが、内部に設置される処理部の形状に応じて、処理チャンバも上記以外の様々な形状を採り得る。
【0067】
また、上記実施形態の開閉装置30は「駆動機構」として直動機構、具体的にはボールねじ機構32を有するものである。しかしながら、本発明の「駆動機構」は直動機構に限定されるものではなく、例えばギヤ、カム等が回転運動することにより当接部位を押し込むように構成されてもよい。また、開閉装置30は、処理チャンバ10のX方向両側面にそれぞれ1組ずつ設けられてもよい。
【0068】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、この発明に係る処理チャンバにおいて、可動部材の当接がない状態では蓋体は閉状態となるようにすることができる。このような構成では、開閉部は蓋体を開かせる方向にのみ作用すればよく、蓋体を開かせる力を取り除くことが蓋体を閉じる動作を実現することになる。
【0069】
また例えば、ヒンジ部は、揺動軸に垂直な方向における蓋体の一方端部を軸支する構成であってもよい。見方を変えれば、ヒンジ部は蓋体を片持ち状態に軸支する構成であってもよい。このような構成によれば、重力の作用により、蓋体を閉じる方向に変位させることができる。
【0070】
また例えば、可動部材は、蓋体が閉状態となる第1位置と、蓋体が開状態となる第2位置との間を往復移動する構成であってもよい。このような構成によれば、可動部材の往復動作を蓋体の開閉動作に変換することができる。
【0071】
この場合、例えば、駆動機構は、可動部材が第2位置から第1位置へ向かう方向に移動するときの速度を制御することができる。特段の制御をしなければ、蓋体は重力により急激に閉じてしまい、チャンバ本体に激しく衝突するおそれがある。上記方向への可動部材の速度制御は、蓋体の閉じる速度を緩やかにする効果がある。
【0072】
また例えば、駆動機構は、可動部材を第1位置と第2位置との間に静止させる機能を有することが好ましい。このような構成によれば、蓋体が任意の開度で開いた状態を維持することが可能であり、例えばメンテナンス時における作業性の向上に寄与することができる。
【0073】
また例えば、駆動機構としては、可動部材を水平方向に移動させる直動機構を有するものを用いることができる。本発明では直線運動から揺動トルクを生じさせることが可能であるため、実用化されている種々の直動機構を本発明の駆動機構として利用することができる。この場合、例えば直動機構がチャンバ本体の側面に設けられると、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0074】
また例えば、可動部材と当接部位とが、チャンバ本体の開口面よりも下方で当接する構成であってもよい。このような構成によれば、機械的な接触が開口面よりも下方で発生するため、部品の摺擦による発塵がチャンバ内に影響を及ぼすのを未然に回避することができる。
【0075】
また例えば、チャンバ本体の側面に、被処理基板を出し入れするための搬入口が開口していてもよい。このように基板の出し入れのための開口を別途設けることで、本発明に係る蓋体の開閉は単にメンテナンスの都合に合わせた仕様とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明は、内部で基板処理が行われる各種処理チャンバおよびこれを用いた基板処理装置全般に適用することが可能である。例えば半導体基板、ガラス基板等の基板表面にフォトレジスト膜、保護膜等の機能層を形成する目的で、基板表面に形成された塗布膜の成分を加熱により揮発させる基板処理装置に対し好適に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0077】
10 処理チャンバ
11 チャンバ本体
12 蓋部
13 ヒンジ部
20 処理ユニット(処理部)
30 開閉装置(開閉部)
32 ボールねじ機構(駆動機構)
33 モータ(駆動機構)
34 可動部材
111 開口
112 搬入口
121 蓋体
123 カムフォロア(当接部位)
AX 揺動軸