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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】卵アレルゲン活性低減用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230919BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230919BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C09K3/00 S
A61K9/08
A61K31/05
A61P37/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022085973
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 聡美
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0057431(KR,A)
【文献】国際公開第2017/187782(WO,A1)
【文献】特開2004-143266(JP,A)
【文献】義平 邦利,既存添加物 その11,食品工業 第40巻第14号 ,第40巻,鎌田 恒男 株式会社光琳
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 31/00-51/12
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニン酸及び芳香族ヒドロキシ化合物を含む、卵アレルゲン活性低減用組成物であって、
前記芳香族ヒドロキシ化合物が、ポリビニルフェノールであり、
前記卵アレルゲンが、環境中の卵アレルゲンである、組成物
【請求項2】
タンニン酸を0.005質量%以上含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
芳香族ヒドロキシ化合物を0.04~0.2質量%含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記卵アレルゲンが、卵白アレルゲンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記卵アレルゲンが、オボアルブミンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
以下の(A)、及び(C)~()の少なくとも1種の特徴を有する、請求項1に記載の組成物。
(A)タンニン酸を0.005質量%以上含有する
(C)芳香族ヒドロキシ化合物を0.04~0.2質量%含有する
(D)前記卵アレルゲンが、卵白アレルゲンである
(E)前記卵アレルゲンが、オボアルブミンであ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、卵アレルゲン活性低減用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など多くのアレルギー疾患が問題となってきている。アレルギー疾患は、例えばアレルゲンを含有する食物を摂取することで生じるもの(食物アレルギー)の他、環境中(例えば大気中や住居)に存在するアレルゲンによって引き起こされる場合もある。より具体的には、例えば、大気中に存在するアレルゲンを吸入したり、あるいは住居空間に存在する物体(ドアや壁など)に存在するアレルゲンに触れるなどして、生じる場合もある。このため、環境中のアレルゲンの除去や活性低減化も重要であると考えられている。これまでに、環境中のアレルゲン活性を低減するために、例えば、ダニアレルゲンや花粉アレルゲンに対してその活性を低減する作用を有する製剤が開発されてきた(特許文献1~5)。しかしながら、食物アレルゲンについては、そもそも環境中に存在するという認識が薄く、特に食物アレルゲンの1つである卵アレルゲンの活性を低減する作用を有する成分についてはほとんど報告がなかった。このため、卵アレルゲン(特に環境中に存在する卵アレルゲン)の活性を低減する方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6533853号公報
【文献】特許第5574409号公報
【文献】特許第4157692号公報
【文献】国際公開第2009/044648号
【文献】特許第6721040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、卵アレルゲン(特に環境中に存在する卵アレルゲン)の活性を低減する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、タンニン酸及び芳香族ヒドロキシ化合物を含む組成物が卵アレルゲンの活性を低減することを見出し、さらに改良を重ねた。
【0006】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
タンニン酸及び芳香族ヒドロキシ化合物を含む、卵アレルゲン活性低減用組成物。
項2.
タンニン酸を0.005質量%以上含有する、項1に記載の組成物。
項3.
前記芳香族ヒドロキシ化合物が、ポリビニルフェノールである、項1又は2に記載の組成物。
項4.
芳香族ヒドロキシ化合物を0.04~0.2質量%含有する、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
前記卵アレルゲンが、卵白アレルゲンである、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
前記卵アレルゲンが、オボアルブミンである、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項7.
前記卵アレルゲンが、環境中の卵アレルゲンである、項1~6のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
卵アレルゲンの活性を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含される組成物は、タンニン酸及び芳香族ヒドロキシ化合物を含む。本明細書において、当該組成物を「本開示の組成物」と表記することがある。
【0009】
タンニン酸は、植物の葉等に含まれる収れん性のポリフェノールである。タンニン酸としては、例えば、五倍子、没食子、スマック、タラ、チェスナット、ミロバラン、オーク、ディビディビ、アルガロビア、ゲンノショウコ等から得られる加水分解型タンニン;及びガンビア、ゲブラチョ、ミモザ、マングローブ、ヘムロック、スプルース、ビルマカッチ、カシワ樹皮、柿渋等から得られる縮合型タンニンが挙げられる。
【0010】
タンニン酸は特に限定されるものではないが、日本薬局方に記載されるタンニン酸(五倍子又は没食子から得たタンニン)、及びCAS登録番号1401-55-4のタンニン酸であることが好ましい。タンニン酸は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。2種以上のタンニン酸を使用する場合、少なくとも1種のタンニン酸は、日本薬局方に記載されるタンニン酸、又はCAS登録番号1401-55-4のタンニン酸であることが好ましい。例えば、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のGタンニン酸、国産薬品工業株式会社製のタンニン酸、富士化学工業株式会社製のタンニン酸等が挙げられる。
【0011】
タンニン酸の含有量は、例えば、0.005質量%以上であることが好ましく、0.005~0.02質量%であることがより好ましく、0.005%~0.015質量%であることがさらに好ましい。
【0012】
芳香族ヒドロキシ化合物は、生活用品表面への着色の心配が少ないという点から、線状高分子の側鎖に下記一般式1~6で表される少なくとも1つの官能基を有する化合物であることが好ましい。芳香族ヒドロキシ化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
【化1】
[一般式1~6中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は水酸基を示し、複数あるRのうち、少なくとも1つは水酸基を示す。nは0~5の整数を示す。]
【0014】
一般式1~6で表される官能基において、Rは、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であることが好ましい。また、一般式1~6で表される官能基において、複数あるRのうち、少なくとも1つは水酸基であることが好ましく、水酸基は1つであることが好ましい。また、一般式1~6で表される官能基において、水酸基の位置は、特に限定されないが、芳香族ヒドロキシ化合物の作用効果を効率よく発揮させる観点から、立体障害が最も少ない箇所に結合していることが好ましく、例えば一般式1においては、パラ位にあるのが好ましい。
【0015】
一般式1~6で表される官能基の中でも、一般式1で表される官能基が好ましい。
【0016】
前記一般式1~6で表される官能基を線状高分子の側鎖に有する化合物において、nは0~5であることが好ましい。
【0017】
線状高分子としては、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。中でも、ビニル重合体が好ましい。また、一般式1~6で表される官能基と線状高分子との化学結合の種類としては、例えば、炭素-炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合等が挙げられる。中でも、炭素-炭素結合が好ましい。
【0018】
一般式1~6で表される官能基を線状高分子の側鎖に有する化合物としては、例えば、ポリビニルフェノール、ポリ3,4,5-ヒドロキシ安息香酸ビニル、ポリチロシン、ポリ(1-ビニル-5-ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1-ビニル-6-ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1-ビニル-5-ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。中でも、ポリビニルフェノールが好ましい。
【0019】
ポリビニルフェノールの重量平均分子量は、例えば、300~40000程度とすることができる。例えば、重量平均分子量は、300~10000程度であってもよく、300~5000程度であってもよい。
【0020】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、SSPA-B(ポリビニルフェノール、積水化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0021】
芳香族ヒドロキシ化合物の含有量は、例えば、0.04~0.2質量%であることが好ましく、0.06~0.15質量%であることがより好ましい。
【0022】
タンニン酸の含有量に対する芳香族ヒドロキシ化合物の含有量の比率(芳香族ヒドロキシ化合物/タンニン酸)は、4以上であることが好ましく、6以上であることがさらに好ましく、8以上であることが特に好ましい。また、上記比率は、40以下であることが好ましく、30以下であることがさらに好ましく、20以下であることが特に好ましい。すなわち、芳香族ヒドロキシ化合物の含有量は、タンニン酸の含有量よりも多いことが特に好ましい。
【0023】
本開示の組成物は、アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含んでいてもよい。アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩において、アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。中でも、直鎖状であることが好ましい。
【0024】
アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のエチレンオキサイドの平均付加モル数は、1.5以上であることが好ましく、1.5~4であることがより好ましく、1.5~3.4であることがさらに好ましく、1.5~2.4が特に好ましい。アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のアニオン基の対イオンは特に限定されるものではない。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0026】
アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸エーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有量は、例えば、0.003~0.5質量%であることが好ましく、0.005~0.3質量%であることがさらに好ましく、0.01~0.1質量%であることが特に好ましい。また、本開示の組成物を噴霧して用いる場合、例えば、トリガー式ポンプ容器等の手動式噴霧容器用の液剤(スプレー剤)として適用する場合、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有量は、0.03質量%以下であることが好ましい。この場合には、噴霧時の泡立ちを抑制できる。
【0028】
タンニン酸の含有量に対するアルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有量の比率(アルキル基の炭素数が12~14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩/タンニン酸)は、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、1以上であることが特に好ましい。また、上記比率は、50以下であることが好ましく、30以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。すなわち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有量は、タンニン酸の含有量よりも多いことが特に好ましい。
【0029】
本開示の組成物のpHは、5.5以下であることが好ましい。また、本開示の組成物のpHは、3~5.5であることが好ましく、4~5.5であることがさらに好ましく、4~5であることが特に好ましい。
【0030】
本開示の組成物は、後述する実施例に示すとおり、卵アレルゲンの活性を低減することができる。卵アレルゲンとしては、例えば、卵白アレルゲン、卵黄アレルゲン等が挙げられる。中でも、卵白アレルゲンが好ましい。卵白アレルゲンとしては、例えば、オボアルブミン、オボムコイド、リゾチーム、オボトランスフェリン等が挙げられる。中でも、オボアルブミンが好ましい。対象とする卵アレルゲンは、1種単独であってもよく、2種以上を組み合わせであってもよい。
また、近年、卵アレルゲンは、環境中に存在していることが報告されている。このため、本開示の組成物は、環境中の卵アレルゲンの活性低減用として好適に用いることができる。
【0031】
本開示の組成物は、上述した成分を含み、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、例えば、溶剤、担体、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤、防腐剤、除菌剤、コーティング剤、着色料、香料、pH調整剤、その他の抗アレルゲン成分等が例示される。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、n-ヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール200、ポリオキシエチレングリコール400、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のグリコールエーテル類等が挙げられる。中でも、水、又はアルコール類が好ましい。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本開示の組成物は、上述した成分と、必要に応じて他の成分とを組み合わせて常法により調製することができる。
【0034】
本発明の組成物の形状は、特に限定されない。例えば、液体状(例えば、溶液状、懸濁液状等)、ペースト状、ゲル状、クリーム状又は固体状(例えば、粉末状、顆粒状等)等であってもよい。中でも、液体状であることが好ましい。
【0035】
近年、卵アレルゲンは、環境中に存在していることが報告されている。そのため、本発明の組成物は、例えば、卵アレルゲンが存在し得る対象物に、噴霧、塗布、浸漬等により付着させて使用することができる。
卵アレルゲンが存在し得る対象物としては、特に限定されないが、例えば、衣料品、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット、天井材及び床材等の自動車部品類、ぬいぐるみ、掃除用ウェットワイパー、マスク、フィルター材料、電気掃除機の集塵袋等の繊維や繊維製品等が挙げられる。
また、本開示の組成物は、洗濯時に使用する洗剤や柔軟仕上げ剤等に添加することもできる。
【0036】
なお、本開示の組成物による卵アレルゲン(より具体的には、環境中の卵アレルゲン)の活性低減効果は、後述する実施例に記載の評価方法(より具体的には、卵アレルゲンと、アレルギー患者血液より回収された卵アレルゲンに反応する血清中の抗卵アレルゲンIgE抗体とを反応させる方法)により、初めて確認されたものである。
【0037】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0038】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0039】
本開示の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。また、各表に記載される各成分の配合量値も特に断らない限り「質量%」を示す。
【0040】
競合ELISA法により、卵アレルゲン不活化(活性低減)率を測定した。卵アレルゲン(OVA)を1μg/mLになるように調製し、ELISAプレートに添加し、一晩4℃で静置し固相化した(OVA固相プレート)。OVAと薬剤を9:1でアレルゲン濃度10μg/mLに調製し、一晩4℃で反応した(アレルゲン反応液)。薬剤の代わりに精製水を用いたものをコントロールとした。得られたアレルゲン反応液と、アレルギー患者血液より回収されたOVAに反応する血清中の抗OVA IgE抗体とをOVA固相プレートに添加し、競合反応を行った。プレート上に固相化されたOVAと結合した血清中の抗OVA IgE抗体と、酵素標識抗IgE抗体とを結合させ、基質の発光を検出した。
血清中の抗OVA IgE抗体は、不活化されたOVAとは結合しないことから、プレート上に固相化されたOVAと結合する血清中の抗体が多い(発光強度が強い)ほど、不活化効果が高いと判断した。
【0041】
なお、薬剤としては、表1に示す組成物A、表2に示す組成物P、55%エタノール溶液(55%EtOH)、及びタンニン酸0.01%水溶液を用いた。なお、表1及び2中、フェノール系高分子としては、芳香族ヒドロキシ化合物を含むSSPA-B(ポリビニルフェノール50質量%含有、積水化学工業株式会社製)を用いた。また、POE(ポリオキシエチレン)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムは、エキレンオキサイドの平均付加モル数が2のものを用いた。
【0042】
コントロールの50%蛍光強度を示すOVAの濃度を50% inhibition濃度(IC50)とし、薬剤のIC50からIgE結合相対力価とアレルゲン不活化率を以下の式を用いて算出した。
Inhibition(%)=(コントロール蛍光強度-薬剤蛍光強度)/(コントロール蛍光強度-ブランク蛍光強度)×100
IgE結合相対力価=コントロールIC50/薬剤IC50
不活化率(%)=(1-IgE結合相対力価)×100
アレルゲン不活化率が70%以上のものを有効と評価した。結果を表3に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示すように、タンニン酸と芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物AはOVAに対し高い活性低減効果を有することが確認された。また、ダニやスギ花粉等に対するアレルゲン活性低減作用が知られているタンニン酸単独では、OVAに対して活性低減効果をほとんど示さないことが確認された。また、組成物PはOVAに対し十分な活性低減効果を有しないと判断された。なお、卵白はアルコールにより変性(凝集)することが知られているが、55%EtOHでは変性による活性低減効果は確認されなかった。
【要約】
【課題】卵アレルゲンの活性を低減する組成物の提供。
【解決手段】タンニン酸及び芳香族ヒドロキシ化合物を含む、卵アレルゲン活性低減用組成物。
【選択図】なし