IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 津野 浩一の特許一覧

特許7351053二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム
<>
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図1
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図2
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図3
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図4
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図5
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図6
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図7
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図8
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図9
  • 特許-二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230920BHJP
   G01R 31/36 20200101ALI20230920BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
G01R31/36
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023059730
(22)【出願日】2023-04-03
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523226273
【氏名又は名称】津野 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】津野 浩一
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-272010(JP,A)
【文献】特開平7-169509(JP,A)
【文献】特開平7-163060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G01R 31/36 -31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の二次電池の試験を行う二次電池試験装置であって、
前記各二次電池と直列に接続して、前記二次電池に対して予め設定された電圧値である設定電圧値に応じた電圧を生成する保護手段と、
前記保護手段と前記二次電池との接続を制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、前記二次電池の電圧が前記設定電圧値に到達したときに、前記保護手段に電流が流れるように、前記二次電池及び前記保護手段の接続を行うことを特徴とする二次電池試験装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記各二次電池の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段により測定される電圧が、前記設定電圧値に到達したか否かを判定する切替制御部と、
前記切替制御部による判定の結果に基づいて、前記二次電池及び前記保護手段の接続の状態を切り替える切替手段と、を具備する請求項1に記載の二次電池試験装置。
【請求項3】
前記設定電圧値が、前記二次電池を充電する場合に使用される充電用設定電圧値であり、
前記保護手段が、前記充電用設定電圧値に応じた電圧を生成する保護回路を具備する請求項1に記載の二次電池試験装置。
【請求項4】
前記二次電池の充電を開始してから前記二次電池の電圧が前記充電用設定電圧値に到達するまでの時間を計測する時間計測部を更に具備する請求項3に記載の二次電池試験装置。
【請求項5】
前記設定電圧値が、前記二次電池を放電する場合に使用される放電用設定電圧値であり、
前記保護手段が、前記放電用設定電圧値に応じた電圧を生成する保護回路を具備する請求項1に記載の二次電池試験装置。
【請求項6】
前記二次電池の放電を開始してから前記二次電池の電圧が前記放電用設定電圧値に到達するまでの時間を計測する時間計測部を更に具備する請求項5に記載の二次電池試験装置。
【請求項7】
前記保護回路が、ツェナーダイオード及び抵抗より構成される請求項3又は5に記載の二次電池試験装置。
【請求項8】
前記設定電圧値が、前記二次電池を充電する場合に使用される充電用設定電圧値及び前記二次電池を放電する場合に使用される放電用設定電圧値であり、
前記保護手段が、前記充電用設定電圧値に応じた電圧を生成する充電用保護回路と、前記放電用設定電圧値に応じた電圧を生成する放電用保護回路と、を具備する請求項1に記載の二次電池試験装置。
【請求項9】
前記二次電池の充電を開始してから前記二次電池の電圧が前記充電用設定電圧値に到達するまでの時間及び前記二次電池の放電を開始してから前記二次電池の電圧が前記放電用設定電圧値に到達するまでの時間の少なくとも1つを計測する時間計測部を更に具備する請求項8に記載の二次電池試験装置。
【請求項10】
前記充電用保護回路及び前記放電用保護回路が、それぞれツェナーダイオード及び抵抗より構成される請求項8に記載の二次電池試験装置。
【請求項11】
前記保護回路が、前記保護回路に流れる電流を調節する電流調節回路を更に具備する請求項3乃至6のいずれかに記載の二次電池試験装置。
【請求項12】
前記充電用保護回路が、前記充電用保護回路に流れる電流を調節する充電用電流調節回路を更に具備し、
前記放電用保護回路が、前記放電用保護回路に流れる電流を調節する放電用電流調節回路を更に具備する請求項8乃至10のいずれかに記載の二次電池試験装置。
【請求項13】
請求項1に記載の二次電池試験装置を備える二次電池試験システムであって、
前記二次電池試験装置の動作を管理する管理装置を更に備えることを特徴とする二次電池試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の二次電池の充電及び/又は放電の試験を行う二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システムに関し、特に、直列に接続された複数の二次電池の試験を行う二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやタブレット端末等のIT機器等の電源として、充電可能な二次電池が広く使用されている。近年では、脱炭素化社会実現に向けて、電気自動車へのシフトが世界レベルで加速しており、電気自動車の電源としての二次電池の重要性が増している。電気自動車に使用される二次電池としては、一般的にリチウムイオン電池が使用されている。リチウムイオン電池は、体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度が共に高く、急速な充放電が可能であり、充電された電力を使い切らない状態で充電を繰り返すことにより使用可能時間が短くなるメモリ効果がない等のメリットがあることから、電気自動車を始め、様々な装置や機器に使用されている。
【0003】
二次電池は、製造工程の最終段階において、品質や安全性等の面から、所定の性能や特性を満たしていることを確認するための充放電試験を実施してから出荷される。また、二次電池の内部抵抗値によって二次電池の特性は大きく変化するので、ACIR(Alternating Current Internal Resistance)検査やDCIR(Direct Current Internal Resistance)検査等により内部抵抗値を算出し、算出された内部抵抗値を基に、二次電池のランク分けを行うことがある。ACIR検査は、二次電池に微小な交流信号を印加して、二次電池の抵抗成分とリアクタンス成分とを分離して測定する検査方法で、DCIR検査は、二次電池を一定の電流で放電し、放電電流値と特定のタイミングでの電圧降下から内部抵抗値を算出する検査方法である。
【0004】
二次電池の充放電試験では、二次電池の充電及び放電を制御して、二次電池の性能や特性等の確認試験を行う。この二次電池の充電及び放電の制御方式として、特にリチウムイオン電池の充放電試験では、定電流・定電圧充電方式及び定電流・定電圧放電方式での制御(以下、「CCCV制御」とする)が、一般的に行われている。CCCV制御では、まず一定の電流(定電流、Constant Current)で充電(又は放電)して二次電池の電圧を上昇(又は下降)させ(以下、この制御を「CC制御」とする)、電圧が所定の電圧に到達したら、この所定の電圧(定電圧、Constant Voltage)を保持するように充電(又は放電)の電流を微調整し(以下、この制御を「CV制御」とする)、所定の条件(例えば所定の経過時間、所定の終了電流値等)が満たしたら、充電(又は放電)を終了する。CC制御からCV制御に切り替えることにより、二次電池が過充電及び過放電となるのを防止する。二次電池の過充電及び過放電の防止は重要な課題である。特にリチウムイオン電池の場合、過充電されると、電池内部の負極表面に針状の金属リチウム(デンドライト)が析出し、これが負極と正極を隔てているセパレータを突き破り、内部短絡(ショート)が発生し、電池が破裂、発火する危険性が生じる。また、リチウムイオン電池は、過放電の状態が長く継続すると、電池の負極に用いられている銅箔が溶けて劣化し、最終的には充電できない状態になってしまうおそれがあると共に、銅の溶出と並行して電解液の還元分解反応が進行することによって大量のガスが発生するおそれがある。リチウムイオン電池以外の二次電池においても、過充電及び過放電は、電池の損傷や性能劣化等を引き起こすおそれがある。よって、二次電池の充放電試験では、二次電池が過充電及び過放電とならないようにしなければならない。
【0005】
製造工程の最終段階での二次電池の充放電試験では、基本的に全数の試験が行われるので、効率的に試験を行うために、複数の二次電池が同時に試験されている。例えば、複数の二次電池を直列に接続して(以下、「直列接続方式」とする)、又は並列に接続して(以下、「並列接続方式」とする)、接続された全ての二次電池に対して同時に充電又は放電を行う。二次電池、特にリチウムイオン電池に対する従来の充放電試験では、並列接続方式が採用されている。並列接続方式での充放電試験は、二次電池の電圧を個別に計測するので、安全面から厳密な電圧計測が求められるリチウムイオン電池の充放電試験に適している。しかし、並列接続方式での充放電試験を実現するためには、高電流の出力及び制御が可能な高性能かつ高価で大型な充放電電源が必要となり、充放電試験を行う装置の大型化、高コスト化等を招くおそれがある。また、二次電池毎に充放電電源を使用する場合では、二次電池の正極及び負極に接続するケーブルも二次電池毎に必要となるので、このことも高コスト化の要因となり得る。高出力の充放電電源の使用やケーブルの増加は、二次電池を含めた試験装置全体から放出される熱の増加に繋がり、高温環境下で試験を行うおそれも生じる。
【0006】
直列接続方式での充放電試験の場合、上述の並列接続方式での充放電試験の課題を軽減することが可能である。しかし、直列接続方式での充放電試験では、直列に接続された二次電池の全体の電圧を計測する場合が多く、この場合、個々の二次電池の正確な電圧を把握するのが難しく、この点は、特にリチウムイオン電池の試験では問題となり得る。また、二次電池が直列に接続されているので、過充電及び過放電を防止するための制御が、並列接続方式の場合に比べて、複雑になる傾向がある。
【0007】
そこで、直列接続方式の利点を活かした上で、上記の課題の解決を図った装置やシステムが提案されている。
【0008】
例えば、特開2013-29485号公報(特許文献1)では、充放電試験の対象である二次電池と切替手段である4つのスイッチと切替制御部を1単位とするユニットを複数直列に接続し、スイッチのオン/オフの組み合わせにより二次電池を充電、放電、バイパスする回路を構成して、種々の充放電試験と過充電・過放電の防止を行う充放電試験装置が提案されている。ユニットには、二次電池に流れる電流を測定する電流計と二次電池の電圧を測定する電圧計も備えられている。切替制御部は、電流計からの電流及び電圧計からの電圧の情報により、CCCV制御等による充電及び放電の制御を行う。
【0009】
特開2019-102267号公報(特許文献2)では、直列接続した複数の二次電池を定電流放電する場合に、二次電池を直列接続状態から切り離すためのスイッチング素子(第1のスイッチング素子)を有する直列制御回路と、ダイオード及びスイッチング素子(第2のスイッチング素子)を有する並列制御回路により、放電電流の変動を抑えて、放電容量を精度よく計測できるようにする充放電試験システムが提案されている。充放電試験システムは、二次電池毎に充放電を制御する個別制御手段を有しており、個別制御手段は、放電中の二次電池の電圧を測定して規定電圧と比較する比較器と、測定された二次電池の電圧に従って、第1、第2のスイッチング素子のオンオフを切り替えるドライバーを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-29485号公報
【文献】特開2019-102267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の充放電試験装置や特許文献2の充放電試験システム等のように、直列に接続された二次電池に対する過充電及び/又は過放電の防止をスイッチ(スイッチング素子)のオン/オフの切り替えで行う装置では、例えば直列接続から二次電池を切り離すバイパス回路と二次電池に電流が流れる回路を構成し、両回路を切り替えるスイッチを設け、スイッチがオンのときにバイパス回路を有効にして、過充電及び/又は過放電の防止を図っている。このような手段を用いた二次電池の充放電試験において、所定の電圧を保持するCV制御では、通常、二次電池の電圧を監視し、電圧が所定の電圧に到達したらスイッチをオンにして二次電池に電流が流れないようにする動作と、電圧が所定の電圧から外れたらスイッチをオフにして二次電池に電流が流れるようにする動作を、繰り返し実行している。
【0012】
しかしながら、CV制御が行われているときに二次電池の電圧の計測において不具合が発生した場合、例えば電圧計の故障や電圧値の伝達経路の断線等が発生した場合、正確な電圧値が得られず、電圧が所定の電圧になったのでスイッチをオンに切り替えて二次電池に電流が流れないようにすべきところを、スイッチがオフのままで二次電池に電流が流れ続ける状況が起こり得る。この場合、過充電及び/又は過放電を防止することができなくなる。
【0013】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、二次電池の電圧の計測に不具合が発生した場合等でも、二次電池に対して過充電及び/又は過放電となる状況を抑制可能な二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、直列に接続された複数の二次電池の試験を行う二次電池試験装置に関し、本発明の上記目的は、前記各二次電池と直列に接続して、前記二次電池に対して予め設定された電圧値である設定電圧値に応じた電圧を生成する保護手段と、前記保護手段と前記二次電池との接続を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記二次電池の電圧が前記設定電圧値に到達したときに、前記保護手段に電流が流れるように、前記二次電池及び前記保護手段の接続を行うことにより達成される。
【0015】
本発明の上記目的は、前記制御部が、前記各二次電池の電圧を測定する電圧測定手段と、前記電圧測定手段により測定される電圧が、前記設定電圧値に到達したか否かを判定する切替制御部と、前記切替制御部による判定の結果に基づいて、前記二次電池及び前記保護手段の接続の状態を切り替える切替手段と、を具備することにより、或いは、前記設定電圧値が、前記二次電池を充電する場合に使用される充電用設定電圧値であり、前記保護手段が、前記充電用設定電圧値に応じた電圧を生成する保護回路を具備することにより、或いは、前記二次電池の充電を開始してから前記二次電池の電圧が前記充電用設定電圧値に到達するまでの時間を計測する時間計測部を更に具備することにより、或いは、前記設定電圧値が、前記二次電池を放電する場合に使用される放電用設定電圧値であり、前記保護手段が、前記放電用設定電圧値に応じた電圧を生成する保護回路を具備することにより、或いは、前記二次電池の放電を開始してから前記二次電池の電圧が前記放電用設定電圧値に到達するまでの時間を計測する時間計測部を更に具備することにより、或いは、前記保護回路が、ツェナーダイオード及び抵抗より構成されることにより、或いは、前記設定電圧値が、前記二次電池を充電する場合に使用される充電用設定電圧値及び前記二次電池を放電する場合に使用される放電用設定電圧値であり、前記保護手段が、前記充電用設定電圧値に応じた電圧を生成する充電用保護回路と、前記放電用設定電圧値に応じた電圧を生成する放電用保護回路と、を具備することにより、或いは、前記二次電池の充電を開始してから前記二次電池の電圧が前記充電用設定電圧値に到達するまでの時間及び前記二次電池の放電を開始してから前記二次電池の電圧が前記放電用設定電圧値に到達するまでの時間の少なくとも1つを計測する時間計測部を更に具備することにより、或いは、前記充電用保護回路及び前記放電用保護回路が、それぞれツェナーダイオード及び抵抗より構成されることにより、或いは、前記保護回路が、前記保護回路に流れる電流を調節する電流調節回路を更に具備することにより、或いは、前記充電用保護回路が、前記充電用保護回路に流れる電流を調節する充電用電流調節回路を更に具備し、前記放電用保護回路が、前記放電用保護回路に流れる電流を調節する放電用電流調節回路を更に具備することにより、より効果的に達成される。
【0016】
また、本発明は、上記の二次電池試験装置を備える二次電池試験システムに関し、本発明の上記目的は、前記二次電池試験装置の動作を管理する管理装置を更に備えることにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次電池試験装置及び二次電池試験システムによれば、二次電池の電圧が設定電圧値に到達したときに、二次電池に直列に接続して、設定電圧値に応じた電圧を生成する保護手段に電流が流れる状態になるので、CV制御中に二次電池の電圧の計測にて不具合が発生しても、保護手段が機能して、二次電池に対する過充電及び/又は過放電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る二次電池試験装置を備える二次電池試験システムの構成例(第1実施形態)を示す図である。
図2】CCCV制御による充放電試験でのリチウムイオン電池の電流及び電圧の時間変化の例を示す模式図である。
図3】制御基板及び直列セル部の構成例(第1実施形態)を示す図である。
図4】保護手段の構成例(第1実施形態)を示す図である。
図5】制御基板及び直列セル部の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
図6】切替手段を保護手段の後段に配置した場合の構成例を示す図である。
図7】切替手段を統合した場合の構成例を示す図である。
図8】本発明に係る二次電池試験装置における切替手段、保護手段及びリチウムイオン電池の構成例(第2実施形態、第3実施形態)を示す図である。
図9】本発明に係る二次電池試験装置を備える二次電池試験システムの構成例(第4実施形態)を示す図である。
図10】時間計測部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る二次電池試験装置は、直列接続方式での充放電試験を行う。即ち、直列に接続された複数のリチウムイオン電池等の二次電池に対して、充電、放電又は充放電を行い、各二次電池が所定の要件を満たす性能や特性を有しているかの確認試験を行う。直列接続方式で試験を行うので、高出力で大型の充放電電源を使用せずに試験を行い、二次電池の正極及び負極に接続するケーブルの数を抑制することが可能で、それに伴い、装置全体から放出される熱を抑制することができる。
【0020】
直列接続方式での充放電試験において、二次電池に対する過充電及び/又は過放電を防止するために、本発明に係る二次電池試験装置は、試験対象である二次電池毎に、保護手段を備えている。保護手段は各二次電池と直列に接続しており、例えばCCCV制御にて二次電池の充電及び放電を行う場合、CC制御からCV制御への切り替えにおいて、つまり、二次電池の電圧が予め設定された所定の電圧(設定電圧値)に到達したとき、保護手段に電流が流れるように、二次電池及び保護手段の接続状態が切り替わる。保護手段は、設定電圧値に応じた電圧を生成するように構成されており、保護手段に電流が流れることにより、二次電池の電圧は設定電圧値にリセットされる。これにより、充電時は二次電池の電圧が過電圧とならないことにより過充電を防止し、放電時は二次電池の電圧が降下しないことにより過放電を防止することができる。このようにして二次電池への過充電及び過放電を防止するので、バイパス回路との切り替えにより二次電池への過充電及び過放電の防止を図る場合のようにCV制御における電圧測定の不具合等で二次電池に対して過充電及び過放電となってしまう状況を、回避することができる。
【0021】
また、本発明に係る二次電池試験装置では、二次電池の充電を開始してから二次電池の電圧が充電時の設定電圧値(充電用設定電圧値)に到達するまでの時間(以下、「充電時間」とする)、及び/又は、二次電池の放電を開始してから二次電池の電圧が放電時の設定電圧値(放電用設定電圧値)に到達するまでの時間(以下、「放電時間」とする)を計測することも可能である。これらの情報は、セルバランスの崩れの解消等のために使用することができる。セルバランスとは、直列に接続された二次電池(セル)において、各二次電池の電圧を均等にすること(機能)であり、二次電池毎の電圧にばらつきが生じている状態が、セルバランスの崩れである。電気自動車等では二次電池を直列に接続した電池パック(バッテリ)が使用されるので、効率的に電池パックを使用するためには、セルバランスの崩れの解消が必要である。本発明に係る二次電池試験装置により計測される充電時間及び/又は放電時間に基づいて各二次電池のランク分けを行い、そのランクを基に、直列接続として組み合わせる二次電池を決定することにより、セルバランスの崩れを最小限にして、効率的に電池パックを使用するように改善することができる。
【0022】
なお、本発明は、二次電池の充電のみの試験、放電のみの試験、又は充電及び放電の両方の試験を行う二次電池試験装置として実現することが可能である。また、本発明は、上述の二次電池試験装置として実現しても良いし、二次電池試験装置に加え、二次電池試験装置の動作を管理する管理装置を備える二次電池試験システムとして実現しても良い。
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における構成等は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。更に、以下では、本発明を実施するための主要な構成及び動作を中心にして説明しており、本発明を実施するために必要となる汎用的な構成や動作等については説明を簡略又は省略している。
【0024】
図1に、本発明に係る二次電池試験装置を備える二次電池試験システムの構成例(第1実施形態)を示す。
本実施形態の二次電池試験システム1は、リチウムイオン電池を試験対象として、CCCV制御による充放電試験を行う。CCCV制御は、リチウムイオン電池の充放電試験で一般的に用いられている制御方法である。図2は、CCCV制御による充放電試験でのリチウムイオン電池の電流及び電圧の時間変化の例を示す模式図であり、図2(A)は充電時の時間変化で、図2(B)は放電時の時間変化である。
【0025】
CCCV制御による充放電試験では、充電時及び放電時共に、CC制御からCV制御に移行する制御が行われる。即ち、充電時は、図2(A)に示されるように、まずCC制御として、電流値I1の一定の電流Ibでリチウムイオン電池を充電してリチウムイオン電池の電圧Vbを上昇させ、電圧Vbが予め設定された電圧値V1(設定電圧値、充電用設定電圧値)(例えば4.25V)に到達したら、CV制御に移行し、電圧Vbが電圧値V1を保持するように、電流Ibを電流値I1から徐々に下降させてリチウムイオン電池を充電し、予め設定された時間t1(例えば3時間)を経過したら、充電を終了させる。充電終了で電流Ibがゼロになると、電圧Vbは緩慢に下降する。放電時は、図2(B)に示されるように、まずCC制御として、電流値I3の一定の電流Ibでリチウムイオン電池を放電してリチウムイオン電池の電圧Vbを下降させ、電圧Vbが予め設定された電圧値V2(設定電圧値、放電用設定電圧値)(例えば1V)に到達したら、CV制御に移行し、電圧Vbが電圧値V2を保持するように、電流Ibを電流値I3から徐々に下降させてリチウムイオン電池を放電し、予め設定された時間t2(例えば1時間)を経過したら、放電を終了させる。なお、充電及び/又は放電を、経過時間ではなく、電流Ibが予め設定された電流値(「終了電流値」と呼ばれることがある)に到達したら、終了させるようにしても良い。例えば、充電時は、図2(A)に示されるように、電流Ibが終了電流値(電流値I2)に到達したら、充電を終了し、放電時は、図2(B)に示されるように、電流Ibが終了電流値(電流値I4)に到達したら、放電を終了させる。図2(A)では、電流Ibは時間t1で終了電流値に到達しているが、時間t1での電流値を終了電流値としなくても良い。同様に、図2(B)では、電流Ibは時間t2で終了電流値に到達しているが、時間t2での電流値を終了電流値としなくても良い。
【0026】
二次電池試験システム1は、CCCV制御にてCC制御からCV制御に移行することにより、充放電試験におけるリチウムイオン電池の過充電及び過放電を防止している。特に、リチウムイオン電池の場合、電圧Vbが僅かに(例えば0.1V)超過した過充電でも破裂、発火する危険性があるので、CV制御では電圧Vbの厳密な監視が必要である。
【0027】
なお、二次電池試験システム1は、リチウムイオン電池の充放電試験をCCCV制御以外の制御方法、例えば定電力定電圧制御(CPCV制御)等で行っても良い。また、二次電池試験システム1は、リチウムイオン電池以外の二次電池、例えばニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等を試験対象としても良い。
【0028】
図1に示されるように、二次電池試験システム1は、複数のリチウムイオン電池の充放電試験を行う二次電池試験装置10及び二次電池試験装置10の動作を管理する管理装置20を備える。二次電池試験装置10と管理装置20は、イーサネット等の通信規格に準じた有線LAN(ローカルエリアネットワーク)で接続されている。なお、二次電池試験装置10と管理装置20は、他の規格のケーブルで接続されても良いし、有線ではなく無線LAN等で接続されても良い。
【0029】
管理装置20は、二次電池試験装置10が行う充放電試験の形態、即ち充電時の試験(以下、「充電試験」とする)か放電時の試験(以下、「放電試験」とする)かを示すモード情報Miを、二次電池試験装置10に送信する。「充電試験」を示す値(例えば0)及び「放電試験」を示す値(例えば1)を予め決めておき、充放電試験の形態に合わせて、それに対応する値をモード情報Miに設定する。
【0030】
また、管理装置20は、二次電池試験装置10がCCCV制御による充放電試験を行うために必要な情報(以下、「試験設定情報」とする)Tiを、二次電池試験装置10に送信する。具体的には、管理装置20は、モード情報Miが「充電試験」である充電試験では、充電時のCC制御での設定値である電流値I1、CV制御での設定値である電圧値V1、及び設定時間である時間t2を試験設定情報Tiとして送信し、モード情報Miが「放電試験」である放電試験では、放電時のCC制御での設定値である電流値I3、CV制御での設定値である電圧値V2、及び設定時間である時間t4を試験設定情報Tiとして送信する。なお、充放電試験開始時に、充電時及び放電時両方での設定値を試験設定情報Tiとして二次電池試験装置10に送信し、充電試験開始時及び放電試験開始時に、モード情報Miを二次電池試験装置10に送信するようにしても良い。
【0031】
管理装置20としてパソコン等の汎用の情報機器を使用して、管理装置20での処理を、専用のアプリケーション(アプリケーションプログラム)、または、専用のアプリケーションと汎用のアプリケーションの組み合わせ等により行っても良いし、管理装置20として専用機器を使用しても良い。なお、試験設定情報Tiの一部又は全部を、二次電池試験装置10が予め保持しても良い。二次電池試験装置10が、モード情報Mi等を直接受け付ける手段を備えるようにしても良い。二次電池試験装置10が全ての試験設定情報Tiを保持し、モード情報Miを受け付ける手段を備える場合、管理装置20はなくても良い。
【0032】
二次電池試験装置10は、電源コントローラ110、充放電電源120、制御基板130、直列セル部140及び電圧モニタコントローラ150を備え、直列セル部140に搭載されて直列に接続された複数のリチウムイオン電池に対して、CCCV制御による充放電試験を行う。
【0033】
電源コントローラ110は、管理装置20から送信されるモード情報Mi及び試験設定情報Ti並びに直列セル部140に搭載されている各リチウムイオン電池の電圧Vbの値を基に、充放電電源120からの電流Iaを制御する。各リチウムイオン電池の電圧Vbの値は、制御基板130により計測され、計測された電圧値は、電圧モニタコントローラ150及び管理装置20を経由して電源コントローラ110に入力される。電源コントローラ110は、CCCV制御による充放電試験を行うために、モード情報Miにより充放電試験の形態を判断し、充電試験では試験設定情報Tiに含まれる充電時でのCC制御及びCV制御の各設定値を、放電試験では試験設定情報Tiに含まれる放電時でのCC制御及びCV制御の各設定値を目標として、電流Iaを制御する。
【0034】
充放電電源120は、電源コントローラ110による制御に基づいて、直列セル部140に搭載されているリチウムイオン電池に電流Iaを流す。充放電電源120として、安定した直流電流を作り出す直流安定化電源を使用する。直流安定化電源には、リニア電源(シリーズ電源、ドロッパ電源)とスイッチング電源があり、充放電電源120として、二次電池の充放電試験で広く使用されているスイッチング電源を使用する。リニア電源は、入力される交流電流に対して、ACトランスを用いて電圧を下げた後、ダイオードを使って整流回路で整流し、コンデンサの平滑回路で安定した電圧にする。スイッチング電源は、先に整流を行い、整流された電流に対してスイッチング素子を用いてパルス波に変換することにより、整流された電流をパルス波による擬似的な交流として扱い、高周波トランスを用いて電圧を調整する。このような方式の違いにより、リニア電源とスイッチング電源とでは、ノイズやサイズ等に違いがあり、リニア電源は、ノイズは少ないが、筐体サイズが大きくなり、スイッチング電源は、ノイズは大きくなるが、筐体サイズは小さくなる。充放電電源120としてスイッチング電源を使用するので、必要に応じて、ノイズ対策を施す。
【0035】
制御基板130には、直列セル部140に搭載されているリチウムイオン電池に対する過充電及び過放電を防止するための保護手段及び保護手段への切り替えを行う切替手段が搭載されている。制御基板130に搭載の保護手段及び切替手段は直列セル部140に搭載のリチウムイオン電池毎に設けられ、保護手段及び切替手段並びにリチウムイオン電池は直列に接続されるようになっている。この接続状態により、直列接続方式での充放電試験が行われる。制御基板130には、直列セル部140に搭載の各リチウムイオン電池の電圧Vbを計測する電圧測定手段も搭載されている。制御基板130及び直列セル部140の詳細については後述する。
【0036】
電圧モニタコントローラ150は、制御基板130に搭載の電圧測定手段により計測される各リチウムイオン電池の電圧Vbの値を集約する。電圧モニタコントローラ150にて集約された電圧値は管理装置20に即時送信され、管理装置20を経由して電源コントローラ110に送信され、電源コントローラ110での制御処理等に使用される。集約される電圧値を表示する手段を電圧モニタコントローラ150に設け、適宜、各リチウムイオン電池の電圧値を表示することにより、充放電試験中の電圧値を監視できるようにすることも可能である。なお、電圧値を表示する手段を管理装置20に設けても良い。
【0037】
従来の並列接続方式での充放電試験を行う装置等には、電源コントローラ110が電圧モニタコントローラ150の機能を兼ね、リチウムイオン電池の電圧値が充放電電源を経由して電源コントローラに伝達されるものがある。この場合、充放電電源であるスイッチング電源のノイズが、伝達される電圧値に影響を与えるおそれがある。これに対して、二次電池試験装置10では、リチウムイオン電池の電圧値は電圧モニタコントローラ150に集約され、管理装置20を経由して電源コントローラ110に入力される。このように、電源コントローラ110と電圧モニタコントローラ150が直接接続せずに分離しており、リチウムイオン電池の電圧値は充放電電源120を経由しないので、スイッチング電源のノイズの影響を抑制し、より正確な電圧値を伝達することができる。なお、電源コントローラ110と電圧モニタコントローラ150間のノイズの影響がほとんどない又はノイズ対策が施されている場合等では、電圧モニタコントローラ150から電源コントローラ110に直接リチウムイオン電池の電圧値を伝達するようにしても良い。この場合でも、リチウムイオン電池の電圧値は充放電電源120を経由しないので、スイッチング電源のノイズの影響を抑制することができる。
【0038】
制御基板130及び直列セル部140の詳細について説明する。
図3に、制御基板130及び直列セル部140の構成例を示す。
直列セル部140には複数のリチウムイオン電池が搭載されており、本実施形態では12個のリチウムイオン電池141a~141lが搭載されている。直列セル部140は、リチウムイオン電池141a~141lが個別に搭載されているという構成でも良いし、直列セル部140に組電池であるリチウムイオンバッテリーが搭載され、リチウムイオン電池141a~141lはリチウムイオンバッテリーのセルであるという構成でも良い。なお、直列セル部140に搭載するリチウムイオン電池の数は任意に設定可能である。
【0039】
制御基板130には、リチウムイオン電池141a~141lに対応して、12個の切替手段131a~131l、12個の保護手段132a~132l及び12個の電圧測定手段133a~133l、並びに切替制御部134が搭載されている。切替手段131a、保護手段132a、電圧測定手段133a及びリチウムイオン電池141aが1つの組となっており、同様に、切替手段131b、保護手段132b、電圧測定手段133b及びリチウムイオン電池141bが1つの組となっており、このような組が12組構成されており、各組が直列に接続され、更にその接続の中に充放電電源120が組み込まれて、回路を構成している。切替制御部134は、切替手段131a~131l、保護手段132a~132l及び電圧測定手段133a~133lと接続すると共に、電圧モニタコントローラ150と接続している。なお、切替手段131a~131l、電圧測定手段133a~133l及び切替制御部134により制御部が構成される。また、以下では、切替手段131a~131l、保護手段132a~132l、電圧測定手段133a~133l及びリチウムイオン電池141a~141lそれぞれで区別する必要がない場合、a~lを除いて、代表的に、切替手段131、保護手段132、電圧測定手段133及びリチウムイオン電池141とすることがある。また、他の構成要素においても、a~lを除いた符号は、代表的に、その構成要素を表したものとすることがある。
【0040】
切替手段131は、3つの接点131-1、131-2及び131-3を有する単極双投型(1極双投型)のスイッチとなっており、接点131-1と131-2が接続し、接点131-1と131-3が接続するようになっている。接点131-2は直列セル部140のリチウムイオン電池141の正極に接続し、接点131-3は保護手段132に接続している。接点131-1については、切替手段131aの接点131a-1は充放電電源120に接続しており、切替手段131b~131lの接点131b-1~131l-1はそれぞれリチウムイオン電池141a~141kの負極に接続している。切替手段131として使用するスイッチは、接点131-1と接点131-2及び131-3との接続の切り替えが行えるのであれば、機械式でも電子式でも良い。
【0041】
切替手段131は、CCCV制御による充放電試験において、CC制御からCV制御へ移行の際に切り替えを行う。即ち、CC制御においては、接点131-1と接点131-2を接続し、CV制御においては、接点131-1と接点131-3を接続する。CC制御からCV制御へ移行のタイミングは、切替制御部134から出力される制御切替信号Scの入力により検知する。即ち、切替手段131は、制御切替信号Scを入力したら、接点131-1の接続先を接点131-2から接点131-3に切り替える。この切り替えにより、CC制御では充放電電源120及びリチウムイオン電池141a~141lは直接的に直列接続した状態となり、CV制御では保護手段132a~132lをそれぞれ介して直列接続した状態となる。
【0042】
保護手段132は、リチウムイオン電池141の過充電及び過放電を防止するために、CV制御において設定電圧値に応じた電圧を生成する。即ち、保護手段132は、充電試験でのCV制御では電圧値V1に応じた電圧を生成し、放電試験でのCV制御では電圧値V2に応じた電圧を生成する。
【0043】
保護手段132の構成例を図4に示す。
保護手段132は、充電用保護回路132-1、放電用保護回路132-2及び切替手段132-3を備えている。充電用保護回路132-1と放電用保護回路132-2は同じ構成となっており、CV制御において、充電用保護回路132-1は充電試験時の設定電圧値(充電用設定電圧値)である電圧値V1に応じた電圧を生成し、放電用保護回路132-2は放電試験時の設定電圧値(放電用設定電圧値)である電圧値V2に応じた電圧を生成する。切替手段132-3は、充放電試験の形態(充電試験、放電試験)に合わせて、充電用保護回路132-1と放電用保護回路132-2の切り替えを行う。
【0044】
切替手段132-3は、切替手段131と同様に、3つの接点132-31、132-32及び133-33を有する単極双投型(1極双投型)のスイッチとなっており、接点132-31と132-32が接続し、接点132-31と133-33が接続するようになっている。接点132-31は切替手段131の接点131-3に接続し、接点132-32は充電用保護回路132-1に接続し、接点132-33は放電用保護回路132-2に接続している。切替手段131と同様に、切替手段132-3として使用するスイッチは、接点132-31と接点132-32及び132-33との接続の切り替えが行えるのであれば、機械式でも電子式でも良い。
【0045】
切替手段132-3は、CCCV制御による充放電試験において、充電試験を行う場合は、接点132-31と接点132-32を接続し、放電試験を行う場合は、接点132-31と接点132-33を接続する。充放電試験の形態は、切替制御部134から出力される形態切替信号Smにより判断する。即ち、切替手段132-3は、形態切替信号Smが「充電試験」を示す値(例えば0)の場合、接点132-31と接点132-32を接続し、形態切替信号Smが「放電試験」を示す値(例えば1)の場合、接点132-31と接点132-33を接続する。なお、形態切替信号Smの値ではなく、切替制御部134が充放電試験の形態を変更する際に形態切替信号Smを出力し、切替手段132-3は、形態切替信号Smを入力したら、接点132-31の接続先を切り替えるようにしても良い。
【0046】
充電用保護回路132-1は、抵抗132-11、ツェナーダイオード132-12、トランジスタ132-13及びダイオード132-14で構成され、抵抗132-11とツェナーダイオード132-12の組み合わせにより電圧値V1に応じた電圧を生成し、トランジスタ132-13及びダイオード132-14により充電用保護回路132-1に流れる電流を調節する回路(電流調節回路、充電用電流調節回路)を構成する。
【0047】
ツェナーダイオード132-12は、一定の逆電圧をかけると絶縁が破壊され、電圧を一定に保ちながら電流が流れる特性を有する。よって、切替手段132-3の接点132-31と132-32が接続した状態である充電試験において、リチウムイオン電池141が電圧値V1に到達し、CC制御からCV制御へ移行して、切替手段131の接点131-1と131-3が接続すると、ツェナーダイオード132-12に逆電圧がかかり、充電用保護回路132-1に、リチウムイオン電池141とは逆向きの定電圧が発生する。この定電圧の大きさが電圧値V1と同等な大きさになるように、抵抗132-11で調節することにより、リチウムイオン電池141の電圧が設定電圧値にリセットされ、リチウムイオン電池141に対する過電圧を防止することができる。
【0048】
トランジスタ132-13はNPN型のトランジスタで、増幅器として機能する。トランジスタ132-13のベースが抵抗132-11とツェナーダイオード132-12に接続している。この構成により、充電用保護回路132-1に流れ込む電流が大きくなっても、抵抗132-11及びツェナーダイオード132-12に流れる電流の変動を抑制し、充電用保護回路132-1が生成する電圧を一定に保つことができる。リチウムイオン電池に対する充放電試験では、急速充電等、リチウムイオン電池に流れる電流の大きさを変えて、充電又は放電の時間を変えることがあるが、このような場合でも、充電用保護回路132-1は、電流の大きさの変更をトランジスタ132-13の調整により吸収することができる。ダイオード132-14は、還流ダイオード(フリーホイールダイオード)として機能する。なお、トランジスタ132-13としてMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を使用し、MOSFET内で構成されるボディーダイオード(寄生ダイオード)で還流ダイオードを代用できる場合、ダイオード132-14は不要である。また、充電用保護回路132-1に流れる電流を調節する必要がない場合、又は別の手段で調節する場合等では、トランジスタ132-13及びダイオード132-14は不要である。
【0049】
充電用保護回路132-1と同様に、放電用保護回路132-2は、抵抗132-21、ツェナーダイオード132-22、トランジスタ132-23及びダイオード132-24で構成され、抵抗132-21とツェナーダイオード132-22の組み合わせにより電圧値V2に応じた電圧を生成し、トランジスタ132-23及びダイオード132-24により放電用保護回路132-2に流れる電流を調節する回路(電流調節回路、放電用電流調節回路)を構成する。
【0050】
放電用保護回路132-2の機能及び動作は、充電用保護回路132-1と同様である。
【0051】
なお、充電用保護回路132-1及び放電用保護回路132-2は、CV制御において設定電圧値に応じた電圧を生成可能であれば、図4に示されるような構成でなくても良く、充電用保護回路132-1と放電用保護回路132-2は同じ構成でなくても良い。
【0052】
電圧測定手段133は、リチウムイオン電池141の電圧Vbを測定する。電圧測定手段133はリチウムイオン電池141と並列に接続され、所定の時間間隔でリチウムイオン電池141の電圧Vbを測定する。測定された電圧値は、切替制御部134に出力される。
【0053】
切替制御部134は、各リチウムイオン電池141の電圧Vbが設定電圧値に到達したか否かを判定する。
【0054】
切替制御部134は、管理装置20から二次電池試験装置10に送信されるモード情報Mi及び試験設定情報Tiの内、モード情報Mi及び電圧値V1(充電試験の場合)又は電圧値V2(放電試験の場合)を入力する。また、切替制御部134は、電圧測定手段133a~133lにて所定の時間間隔で測定されるリチウムイオン電池141a~141lの電圧値Vbv_a~Vbv_lを逐次入力する。なお、以下では、電圧値Vbv_a~Vbv_lを区別する必要がない場合、a~lを除いて、代表的に、電圧値Vbvとすることがある。
【0055】
切替制御部134は、モード情報Miより、充放電試験の形態を判断する。モード情報Miが「充電試験」の場合、切替制御部134は、電圧値V1を設定電圧値として、各リチウムイオン電池141の電圧Vbが電圧値V1に到達したか否かを判定する。そして、電圧値Vbvが電圧値V1以上となったリチウムイオン電池141が存在する場合、そのリチウムイオン電池141に対応する切替手段131に対して、制御切替信号Scを出力する。モード情報Miが「放電試験」の場合、切替制御部134は、電圧値V2を設定電圧値として、各リチウムイオン電池141の電圧Vbが電圧値V2に到達したか否かを判定する。そして、電圧値Vbvが電圧値V2以下となったリチウムイオン電池141が存在する場合、そのリチウムイオン電池141に対応する切替手段131に対して、制御切替信号Scを出力する。
【0056】
また、切替制御部134は、モード情報Miに基づいて、形態切替信号Smを保護手段132内の切替手段132-3に出力する。モード情報Miが「充電試験」の場合、形態切替信号Smを「充電試験」に設定し、モード情報Miが「放電試験」の場合、形態切替信号Smを「放電試験」に設定して、切替制御部134は形態切替信号Smを出力する。なお、モード情報Miをそのまま形態切替信号Smとして出力しても良い。
【0057】
切替制御部134は、入力した電圧値Vbv_a~Vbv_lを電圧モニタコントローラ150に出力する。
【0058】
なお、切替制御部134は、制御基板130に汎用のCPU、メモリ等を搭載して、CPU上で動作するプログラムとして実現しても良いし、ハードウェアで実現しても良い。
【0059】
このような制御基板130及び直列セル部140の構成において、その動作例を図5のフローチャートを参照して説明する。なお、エラーが発生した場合の動作等の汎用的な動作の説明は省略する。また、動作開始時、切替手段131では、接点131-1と接点131-2が接続しているものとする。
【0060】
切替制御部134は、管理装置20から出力されたモード情報Mi及び試験設定情報Ti中の電圧値V1又は電圧値V2を入力する(ステップS10)。
【0061】
切替制御部134は、モード情報Miが「充電試験」の場合、形態切替信号Smを「充電試験」に設定し、モード情報Miが「放電試験」の場合、形態切替信号Smを「放電試験」に設定して、形態切替信号Smを保護手段132内の切替手段132-3に出力する(ステップS20)。
【0062】
切替手段132-3は、形態切替信号Smが「充電試験」の場合、接点132-31と接点132-32を接続し、形態切替信号Smが「放電試験」の場合、接点132-31と接点132-33を接続する。(ステップS30)。
【0063】
電圧測定手段133は、リチウムイオン電池141の電圧Vbを測定し、測定した電圧値Vbvを切替制御部134に出力する(ステップS40)。
【0064】
切替制御部134は、モード情報Miが「充電試験」の場合(ステップS50)、電圧値Vbvと電圧値V1を比較し、電圧値Vbvが電圧値V1以上となったら(ステップS60)、その電圧値Vbvであるリチウムイオン電池141に対応する切替手段131に制御切替信号Scを出力する(ステップS70)。切替手段131は、制御切替信号Scを入力したら、接点131-1の接続先を接点131-2から接点131-3に切り替える(ステップS80)。
【0065】
切替制御部134は、モード情報Miが「放電試験」の場合(ステップS50)、電圧値Vbvと電圧値V2を比較し、電圧値Vbvが電圧値V2以下となったら(ステップS90)、その電圧値Vbvであるリチウムイオン電池141に対応する切替手段131に制御切替信号Scを出力する(ステップS100)。切替手段131は、制御切替信号Scを入力したら、接点131-1の接続先を接点131-2から接点131-3に切り替える(ステップS110)。
【0066】
ステップS40~S110の動作が、電圧Vbが測定されるタイミングで、試験(充電試験、放電試験)が終了するまで(ステップS120)、繰り返し行われる。
【0067】
なお、二次電池試験装置10は1つの制御基板130及び1つの直列セル部140を備えるが、複数の制御基板及び/又は複数の直列セル部を備えても良く、制御基板の数と直列セル部の数は同じでなくても良い。それに合わせて、電圧モニタコントローラ150を複数にしても良いし、1つのままでも良い。
【0068】
本実施形態に対して、例えば以下のような変形が可能である。
【0069】
二次電池試験装置10では、切替手段131は、保護手段132の前段に配置されているが、保護手段132の後段に配置されるような構成でも良い。図6は、そのように切替手段131を配置した構成例の一部を示している。図6に示されるように、切替手段131は保護手段132の後段に配置され、切替手段131の接点131-3が保護手段132に接続し、接点131-1がリチウムイオン電池141の正極に接続している。同様に、保護手段132の切替手段132-3も、充電用保護回路132-1及び放電用保護回路132-2の前段ではなく、後段に配置しても良い。
【0070】
または、切替手段131と保護手段132の切替手段132-3と統合して、単極3投型(1極3投型)の1つのスイッチを使用するようにしても良い。図7は、切替手段131及び切替手段132-3の代わりに、単極3投型のスイッチである切替手段135を使用した構成例の一部を示している。切替手段135は4つの接点135-1、135-2、135-3及び135-4を有し、接点135-1が接点135-2、135-3及び135-4それぞれに接続するようになっている。接点135-2はリチウムイオン電池141の正極に接続し、接点135-3は保護手段136内の充電用保護回路132-1に接続し、接点135-4は保護手段136内の放電用保護回路132-2に接続している。そして、切替手段135は、CC制御においては、接点135-1と接点135-2を接続し、充電試験でのCV制御においては、接点135-1と接点135-3を接続し、放電試験でのCV制御においては、接点135-1と接点135-4を接続する。
【0071】
二次電池試験装置10では、充放電試験での充電試験及び放電試験の両方で保護手段132が機能するようになっているが、どちらの一方の試験のときのみに保護手段が機能するようにしても良い。保護手段を機能させない試験でのCV制御では、例えばバイパス回路を設けて、リチウムイオン電池141に電流が流れないようにする。
【0072】
このような場合の二次電池試験装置の構成例の一部を図8に示す。図8には、二次電池試験装置における切替手段、保護手段及びリチウムイオン電池の構成例を示しており、図8(A)は、充電試験でのみ保護手段が機能する構成例(第2実施形態)であり、図8(B)は、放電試験でのみ保護手段が機能する構成例(第3実施形態)である。
【0073】
第2実施形態では、切替手段131及びリチウムイオン電池141は、第1実施形態と同じで、保護手段137内の充電用保護回路132-1も第1実施形態と同じであるが、保護手段137内の切替手段137-3が第1実施形態とは異なる。即ち、切替手段137-3の3つの接点137-31、137-32及び137-33の内、接点137-31及び137-32は、第1実施形態での切替手段132-3と同様に、それぞれ切替手段131の接点131-3及び充電用保護回路132-1に接続しているが、接点137-33はリチウムイオン電池141の負極側に接続している。よって、CCCV制御による充放電試験において、放電試験を行う場合は接点137-31と接点137-33が接続されるので、CV制御にて切替手段131の接点131-1と131-3が接続されると、電流はリチウムイオン電池141には流れないようになる。これにより、リチウムイオン電池141に対する過充電を防止する。
【0074】
第3実施形態では、切替手段131及びリチウムイオン電池141は、第1実施形態と同じで、保護手段138内の放電用保護回路132-2も第1実施形態と同じであるが、保護手段138内の切替手段138-3が第1実施形態とは異なる。即ち、切替手段138-3の3つの接点138-31、138-32及び138-33の内、接点138-31及び138-33は、第1実施形態での切替手段132-3と同様に、それぞれ切替手段131の接点131-3及び放電用保護回路132-2に接続しているが、接点138-32はリチウムイオン電池141の負極側に接続している。よって、CCCV制御による充放電試験において、充電試験を行う場合は接点138-31と接点138-32が接続されるので、CV制御にて切替手段131の接点131-1と131-3が接続されると、電流はリチウムイオン電池141には流れないようになる。これにより、リチウムイオン電池141に対する過放電を防止する。
【0075】
本発明の他の実施の形態について説明する。
電気自動車等で使用されている複数の二次電池(セル)を直列に接続した電池パック(バッテリ)において、セルバランスは重要な機能である。このような電池パックでは、個々の二次電池の特性のばらつき等により、直列接続された二次電池間で電圧のアンバランス(セルバランスの崩れ)が生じることがある。このようなアンバランスがある電池パックを充電する場合、電圧が高い二次電池が先に充電上限電圧(安全な充電を行うための上限の電圧)に到達し、電圧が充電上限電圧に到達していない二次電池が存在するにも関わらず充電を停止する。一方、アンバランスがある電池パックを放電する場合、電圧が低い二次電池が先に放電終止電圧(安全な範囲で放電を行うための最低の電圧)に到達し、まだ使用可能な二次電池が存在しても電池パックとしては再充電しないと使えない状態になってしまう。このように二次電池間で電圧のアンバランスがあると、電池パックの性能を十分に活用できない上に、過充電や過放電となるおそれもある。
【0076】
電池パック内での二次電池間での電圧のアンバランスを縮小するためのセルバランスには、アクティブ方式とパッシブ方式があるが、アクティブ方式ではコストアップ等の課題があり、パッシブ方式ではエネルギー効率の低下等の課題がある。このような二次的な処理ではなく、電池パックを構成する二次電池として、特性のばらつきが少ない二次電池を組み合わせるようにすれば、二次電池間での電圧のアンバランスを縮小することができる。
【0077】
特性のばらつきが少ない二次電池を組み合わせるためには、セルバランスに関係する二次電池の特性に基づいて、各二次電池のランク分けを行い、そのランクを基に組み合わせる二次電池を決定する。ランク分けの基となる特性として、ACIR検査やDCIR検査で求められる二次電池の内部抵抗値等を使用することが可能であるが、内部抵抗のような直接的な特性ではなく、直接的な特性から派生する副次的な特性、例えば充電開始から充電用設定電圧値に到達するまでの時間である充電時間や、放電開始から放電用設定電圧値に到達するまでの時間である放電時間等を使用することも可能である。
【0078】
このような二次電池間での電圧のアンバランスを解消するための二次電池のランク分け等に使用する充電時間及び放電時間を計測する二次電池試験システムの構成例(第4実施形態)を図9に示す。第4実施形態での二次電池試験システム2は、図1に示される第1実施形態での二次電池試験システム1と比較すると、管理装置20が管理装置40に替わり、二次電池試験装置に関しては、二次電池試験装置30は時間計測部160を備え、制御基板130が制御基板230に替わり、制御基板230では、切替制御部134が切替制御部234に替わっている。その他の構成要素は、第1実施形態と同じである。時間計測部160は制御基板230に接続している。
【0079】
管理装置40は、モード情報Mi及び試験設定情報Tiの他に、充放電試験での充電試験開始を示す信号(以下、「充電試験開始信号」とする)Scs及び放電試験開始を示す信号(以下、「放電試験開始信号」とする)Sdsを、二次電池試験装置30に送信する。充電試験開始信号Scs及び放電試験開始信号Sdsを受信した二次電池試験装置30は、これらを時間計測部160に入力する。なお、充電試験開始信号Scs及び放電試験開始信号Sdsについては、二次電池試験装置30がこれらを受信したら充電試験及び放電試験を開始するようにしても良いし、二次電池試験装置30が充電試験及び放電試験を開始したら、そのことを管理装置40が検知するようにして(例えば二次電池試験装置30から開始の信号を管理装置40に送信する等)、検知後に送信するようにしても良い。後者の場合、管理装置40を介せずに、二次電池試験装置30内で充電試験開始信号Scs及び放電試験開始信号Sdsの入出力を行うようにしても良い。また、二次電池試験装置30がモード情報Miを受信したら充電試験及び放電試験を開始するようにして、モード情報Miを、充電試験開始信号Scs及び放電試験開始信号Sdsとして使用しても良い。
【0080】
制御基板230の切替制御部234は、切替制御部134と同様に、各リチウムイオン電池141の電圧Vbが設定電圧値に到達したか否かを判定する。充放電試験の対象である直列セル部140に搭載された各リチウムイオン電池141に対して予め識別子を割り当て、切替制御部234は、電圧Vbが設定電圧値に到達したと判定した場合、そのように判定したリチウムイオン電池141に対応する識別子を設定した情報(以下、「到達電池情報」とする)Abを時間計測部160に出力する。
【0081】
時間計測部160は、各リチウムイオン電池141に対する充電時間及び放電時間を計測する。
【0082】
時間計測部160は、管理装置40から送信される充電試験開始信号Scsを入力したら、充電時間の計測を開始する。そして、切替制御部234からの到達電池情報Abを入力したら、到達電池情報Abに設定された識別子に対応するリチウムイオン電池141の電圧Vbが設定電圧値(充電用設定電圧値)に到達したとして、計測開始時点からその時点までの経過時間を、そのリチウムイオン電池141に対する充電時間として算出する。算出された充電時間は、到達電池情報Abと共に、充電時間Tcとして出力される。
【0083】
同様に、時間計測部160は、管理装置40から送信される放電試験開始信号Sdsを入力したら、放電時間の計測を開始する。そして、切替制御部234からの到達電池情報Abを入力したら、到達電池情報Abに設定された識別子に対応するリチウムイオン電池141の電圧Vbが設定電圧値(放電用設定電圧値)に到達したとして、計測開始時点からその時点までの経過時間を、そのリチウムイオン電池141に対する放電時間として算出する。算出された放電時間は、到達電池情報Abと共に、放電時間Tdとして出力される。
【0084】
計測された充電時間及び放電時間を集約するために、二次電池試験装置30は、例えば管理装置40に、時間計測部160から出力される到達電池情報Ab、充電時間Tc及び放電時間Tdを送信する。
【0085】
なお、時間計測部160は、充電試験開始信号Scsと放電試験開始信号Sdsの違いにより、充電試験と放電試験を判別して、充電時間と放電時間を計測しているが、モード情報Miを時間計測部160も入力するようにして、時間計測部160は、モード情報Miにより充電試験か放電試験かを判別し、充電試験開始を示す信号と放電試験開始を示す信号として同じ信号を使用するようにしても良い。
【0086】
時間計測部160は、二次電池試験装置30に汎用のCPU、メモリ等を搭載して、CPU上で動作するプログラムとして実現しても良いし、ハードウェアで実現しても良い。
【0087】
このような二次電池試験システム2の構成において、時間計測部160の動作例を図10のフローチャートを参照して説明する。図10(A)は、充電時間の計測の動作例を示すフローチャートで、図10(B)は、放電時間の計測の動作例を示すフローチャートである。なお、図5に示されるフローチャートと同様に、エラーが発生した場合の動作等の汎用的な動作の説明は省略する。
【0088】
時間計測部160は、管理装置40からの充電試験開始信号Scsを入力したら(ステップS210)、充電時間の計測を開始する(ステップS220)。
【0089】
時間計測部160は、切替制御部234からの到達電池情報Abを入力したら(ステップS230)、充電時間を算出し(ステップS240)、到達電池情報Abと共に、充電時間Tcとして出力する(ステップS250)。
【0090】
時間計測部160は、全てのリチウムイオン電池141の充電時間の算出を終了したら(ステップS260)、充電時間の計測を終了する。全ての充電時間の算出を終了していない場合(ステップS260)、ステップS230に戻る。
【0091】
また、時間計測部160は、管理装置40からの放電試験開始信号Sdsを入力したら(ステップS270)、放電時間の計測を開始する(ステップS280)。
【0092】
時間計測部160は、切替制御部234からの到達電池情報Abを入力したら(ステップS290)、放電時間を算出し(ステップS300)、到達電池情報Abと共に、放電時間Tdとして出力する(ステップS310)。
【0093】
時間計測部160は、全てのリチウムイオン電池141の放電時間の算出を終了したら(ステップS320)、放電時間の計測を終了する。全ての放電時間の算出を終了していない場合(ステップS320)、ステップS290に戻る。
【0094】
なお、本実施形態では、二次電池試験装置30が時間計測部160を備えているが、他の構成要素が時間計測部160を備えても良い。例えば、管理装置40が時間計測部160を備えても良いし、制御基板230の切替制御部234が時間計測部160の機能を兼ねても良い。また、時間計測部160は充電時間及び放電時間を計測しているが、どちらか一方のみを計測するようにしても良い。二次電池試験装置30が充電試験及び放電試験のいずれかのみ行う装置の場合、時間計測部160は、対応する時間のみを計測することになる。
【0095】
計測された充電時間及び放電時間を使用したリチウムイオン電池141のランク分けの方法の例について説明する。
【0096】
単純なランク分け方法としては、充電時間又は放電時間のいずれかのみを使用し、一定又は可変の時間間隔で区分けして、ランクを分ける方法等がある。単純な方法ではあるが、充電時間又は放電時間が近似したリチウムイオン電池が同じランクに属するようになるので、セルバランスの崩れの抑制が期待できる。
【0097】
充電時間及び放電時間の両方を使用したランク分け方法としては、まず充電時間又は放電時間でランク分けを行い、各ランクにおいて、使用していない他方の時間でランク分けを行うという2段階でランクを分ける方法等がある。各段階でのランク分けは、上述の一定又は可変の時間間隔で区分けする方法で行う。2段階でランクを分けることにより、1段階でのランク分けより、より正確なランク分けが期待できる。
【0098】
2段階でランクを分ける方法として、クーロン効率(充放電効率)の概念を応用した方法が挙げられる。クーロン効率とは、充電時に充電された充電電気量に対する放電時の放電容量の比を百分率で表した値で、クーロン効率が同等なリチウムイオン電池は同等な性能を有していると見做すことができる。そして、充放電試験での充電試験と放電試験では、同じ割合(電流)で充電及び放電を行うと前提した場合、充電時間に対する放電時間の比率(以下、「充放電時間効率」とする)はクーロン効率と略同じ値となる。よって、まず充電時間又は放電時間でランク分けを行い、各ランクにおいて、充放電時間効率に基づいたランク分けを行う。例えば、放電時間を一定又は可変の時間間隔で区分けしたランク分けを行い、各ランクにおいて、充放電時間効率を一定又は可変の間隔で区分けしたランク分けを行う。このようなランク分けを行うことにより、よりリチウムイオン電池の性能に合わせたランク分けが期待できる。
【0099】
なお、リチウムイオン電池141のランク分けの方法としては、充電時間及び/又は放電時間を使用するのであれば、上述の方法に限られない。
【0100】
上述の充電時間及び放電時間を使用したリチウムイオン電池141のランク分けは、二次電池試験装置30又は管理装置40で行うことも、他の装置等で行うことも可能である。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【0102】
また、本発明は、二次電池に対して充放電を行う装置やシステムに対しても適用可能である。例えば、電気自動車に対して充電を行うための施設である充電ステーション(充電スタンド、充電スポット)等での電源として使用される蓄電システムに対して、本発明を適用することが可能である。このような蓄電システムは、充電により予め電気を蓄えておき、蓄えた電気を電気自動車等に供給するので、この充放電において本発明を適用することにより、二次電池に対する過充電及び/又は過放電を抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
1、2 二次電池試験システム
10、30 二次電池試験装置
20、40 管理装置
110 電源コントローラ
120 充放電電源
130、230 制御基板
131、132-3、135、137-3、138-3 切替手段
132、136、137、138 保護手段
132-1 充電用保護回路
132-2 放電用保護回路
133 電圧測定手段
134、234 切替制御部
140 直列セル部
141 リチウムイオン電池
150 電圧モニタコントローラ
160 時間計測部
【要約】
【課題】二次電池の電圧の計測に不具合が発生した場合等でも、二次電池に対して過充電及び/又は過放電となる状況を抑制可能な二次電池試験装置及びそれを備える二次電池試験システムを提供する。
【解決手段】直列に接続された複数の二次電池の試験を行う二次電池試験装置であって、各二次電池と直列に接続して、二次電池に対して予め設定された電圧値である設定電圧値に応じた電圧を生成する保護手段と、保護手段と二次電池との接続を制御する制御部と、を備え、制御部が、二次電池の電圧が設定電圧値に到達したときに、保護手段に電流が流れるように、二次電池及び保護手段の接続を行う。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10