(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】搬送システム検査装置(ドクター物流)
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20230920BHJP
B65G 45/22 20060101ALI20230920BHJP
G01N 29/14 20060101ALI20230920BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230920BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
B65G45/22 A
G01N29/14
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2018194503
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2017227058
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018152128
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】吉平 秀之
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃希
(72)【発明者】
【氏名】高木 基可
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269920(JP,A)
【文献】特開平09-021789(JP,A)
【文献】特開2017-095263(JP,A)
【文献】特開2006-221661(JP,A)
【文献】特開2011-149774(JP,A)
【文献】特開2002-350194(JP,A)
【文献】特開2013-050331(JP,A)
【文献】特開平08-320251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-45/26
G01N 29/14
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するための搬送路と、
前記搬送路で搬送可能な搬送体に取り付けられた、音響、振動、画像、光、超音波、圧力、環境のうちいずれか一つ以上に係る情報を取得するセンサーと、
前記センサーから採取されるセンサー情報を記録する情報記録装置と、
前記センサー及び前記情報記録装置を駆動させて前記搬送体を前記搬送路で搬送しながら前記搬送路上もしくは前記搬送路近辺についての前記センサー情報を継時的に前記情報記録装置に記録させ、前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断する情報解析・処理部と、
を具備し、
前記搬送体は、少なくとも、
前記センサーによって前記センサー情報の取得を行うことを目的とした情報収集装置として機能する第1体と、
前記第1体で取得されたセンサー情報を前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断し故障発生兆候情報を取得する情報解析・処理部として機能する第2体と、
前記第1体で取得された前記センサー情報及び/もしくは前記第2体で得られた前記故障発生兆候情報をもとに前記搬送路に設けられたセンサーを清掃或いは清掃もしくは整備するための修復部を備えた第3体と
が連接して構成される、搬送システム。
【請求項2】
前記搬送体は物品搬送に係る実作業を稼働中の前記搬送路にて搬送され、
前記情報解析・処理部は、前記センサーから採取された前記センサー情報を、前記情報記録装置に予め記録されていた第2のセンサー情報と比較し、前記搬送路の故障発生兆候を判断し、前記判断された故障発生兆候に係る情報を前記情報記録装置に記録することを特徴とする請求項1項記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送システムは外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、
前記情報解析・処理部は、前記判断された故障発生兆候に係る情報を外部に送信するように前記通信部を制御することを特徴とする請求項1もしくは2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送システムは外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、
前記情報解析・処理部は、前記センサーから採取される前記センサー情報を前記通信部を介して外部解析装置に送信し、
前記情報解析・処理部は、前記外部解析装置から故障発生兆候情報を受信するように前記通信部を制御する、請求項1記載の搬送システム。
【請求項5】
前記搬送体の前記搬送路上もしくは前記搬送路の近辺における位置を検出する位置検出装置をさらに備え、
前記情報解析・処理部は、前記センサー情報を前記位置検出装置が検出した位置情報と関連させて継時的に前記情報記録装置に記録させることを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項6】
前記位置検出装置は、
前記搬送路途上もしくは前記搬送路近辺の所定点に備えられたRF-IDタグと、前記搬送体に備えられたRF-IDリーダと
を備えて構成される、請求項5記載の搬送システム。
【請求項7】
前記位置検出装置は、
前記搬送路途上もしくは前記搬送路近辺の所定点に備えられた
光学マーカと、
前記搬送体に備えられ前記光学マーカを読み取る機能を持った画像解析装置と
を備えて構成される、請求項5記載の搬送システム。
【請求項8】
前記位置検出装置は、
前記情報記録装置中に記録された搬送路構成図と、
前記搬送路構成図に含まれる所定点に係る特有の音響、振動、衝撃の少なくともいずれかにより搬送路中の位置を検出する手段と
を備えて構成される、請求項5記載の搬送システム。
【請求項9】
前記通信部は、前記情報解析・処理部を制御するための外部からのコントロール情報を受信し、
前記情報解析・処理部は、前記通信部が受信した前記コントロール情報によって前記センサーが前記センサー情報を取得することを特徴とする請求項3記載の搬送システム。
【請求項10】
前記コントロール情報は、前記センサー情報を取得するに当たっての情報取得基準に係るセンサー情報取得基準情報を含むことを特徴とする請求項9記載の搬送システム。
【請求項11】
前記搬送路の所定位置毎に前記センサーの種類ごとに設定されたスレッショルドレベルが規定され、
前記センサー情報取得基準情報は、前記スレッショルドレベルを規定した情報を含み、
前記情報解析・処理部は、前記センサー情報が前記スレッショルドレベルを超えた場合に前記センサー情報を前記情報記録装置に記録させるとともに前記外部へ送信することを特徴とする請求項10記載の搬送システム。
【請求項12】
前記搬送体は、少なくとも、
前記センサーによって前記センサー情報の取得を行うことを目的とした情報収集装置として機能する第1体と、
前記第1体で取得されたセンサー情報を前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断する情報解析・処理部として機能する第2体と
が別体として構成される、請求項1~11のうちいずれか1項記載の搬送システム。
【請求項13】
前記センサーは、少なくとも投光部及び受光部を備えた光電スイッチを含み、
前記修復部は、前記光電スイッチの投光部及び/もしくは受光部の汚れを圧搾空気を噴射して清掃する機能を備える、請求項1~12のうちいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項14】
前記情報解析・処理部は、パーソナルコンピュータ及び解析ソフトウエアを備える、請求項1~13のうちいずれか1項記載の搬送システム。
【請求項15】
前記情報解析・処理部は、搬送路の非正常時の各センサーからの情報と正常運転時の各センサーからの情報を比較する、請求項1~14のうちいずれか1項記載の搬送システム。
【請求項16】
前記情報解析・処理部に人工知能(AI)を利用するアプリケーションソフトウエア備える請求項1~15のうちいずれか1項記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばベルトコンベヤ或いはローラコンベヤ等の搬送路及びその付帯設備を自動点検する搬送システム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、流通業などの物流センターにおける物品搬送システムは、ひとたび故障を起こして搬送がストップすると、そのシステムを回復させるための時間を要することから、あらかじめ定められた店舗などへの入荷時間が間に合わず、大きな損失を生じてしまうことがある。このため物流センターでは定期的なメンテナンスが行なわれており、また故障内容により搬送路を止めて修理を行う必要がある。これらの点検・修理は迅速に行う必要があるが、故障の規模・内容によっては時間がかかって搬送路の停止時間が長くなったり、修理時間の見通しが立たなくなったりする場合などがある。こうしたケースでは、搬送システムを使用するユーザーに多大な不便を与えることになるため、こうした事態が発生しないよう、故障発生の兆候を事前に察知することが重要である。
【0003】
量販店などの一般的な物流センターの場合、搬送物はダンボール箱に入れて搬送したり、ダンボール箱を開口して個別包装された商品を取出して搬送する場合にはプラスチック製の通い箱(折り畳みコンテナで通称「オリコン」という。)に入れて搬送したりする。これらの搬送物は底面が平らに形成されている定形品が多く、大量の物量を一度に搬送する必要があり、また設備コストも抑える必要があることから、搬送システムとしては、フレームに搬送物の大きさに合わせて適度な間隔にローラを設けたローラコンベヤを用いる場合が多い。
【0004】
搬送システムをローラコンベヤとする場合、ローラなどの回転系部品の不具合や駆動ベルトの亀裂・磨耗などの不具合が生じることが多い。また、コンベヤフレームに取り付けられている搬送物を制御するためのセンサである「スキャナー」や「光電管」が振動などで取り付け位置がずれてしまい、正常に認識できなくなる場合が生じたり、さらに、制御機器に対しては、設備の設置環境(温度、湿度、ホコリ等)や常に他の周辺設備からの各種ノイズにさらされる影響から、誤動作を生じたりする場合もある。これらの症状が出ていないかを確認するため、定期的な点検・保守はかかせない。
【0005】
これらの長大な搬送システムのすべてに亘って定期的に点検作業を行い、事前に故障発生の兆候を捉えることは多くの労力及び時間を要する。現状では、ベテラン技術者が搬送システムを巡回し、目視やハンマによる打音検査などにより長年の勘及び経験を頼りに故障発生の可能性ある箇所の点検を行っているのが現状であるが、経験の少ない技術者では故障発生の兆候検出をすることは大変難しい。更に、搬送路が入り組んでいたり、搬送システムにおいて点検を要する箇所が建屋の壁の中でトンネル状になっていたり、高所に設置されていたり、といった、点検者が容易に立ち入れない場所の点検はさらに難しくなる。
【0006】
また、空港における搭乗客の手荷物搬送仕分けシステムでは、搭乗前にカウンターで乗客より手荷物運搬を委託された後、カウンターでバーコードなどを用いた手荷物識別子IDを付与され、ベルトコンベヤに載せられて指定航空機に載せるための作業場所(メイク)まで自動搬送される。その後、手荷物は、航空機内に載せられて目的地まで空輸され、到着した空港の手荷物受け取り場所にいる顧客まで迅速に運ばれる。
【0007】
これらの手荷物は、出発便では航空機便名・目的地等によって搬送システムによって仕分けられ搬送される。手荷物は、搬送機に設置された荷物識別子ID読み取り装置(例えばバーコードリーダー)によって判読され、搭乗機まで指定時間内に搬送される。到着便では、航空機輸送後は、到着空港の手荷物受け取り場所のコンベヤシステムまで迅速に搬送される。
【0008】
このような搭乗客の手荷物搬送システムでは、種々の大きさの手荷物を搬送する為、従来より幅広のコンベヤベルトを使ったものが使用されてきたが、幅広で長いゴム製などのベルトを用いた搬送路では、駆動するモータによる電力が大きいだけでなく、メンテナンス(点検・修理)にも大変手間がかかってしまう。
【0009】
さらに、近年では空港での手荷物搬送においては、「荷傷みの軽減」や「搬送物が異形であったりこわれものであったりする場合の対策」が一層強化され、また、乗客の個々の手荷物が行方不明にならないようトレーサビリティも重要視されるようになってきている。そこで、同じ乗客の形状の異なる様々な手荷物を幅広ベルトを用いた搬送路で個別に搬送する方式の代わりに、均一形状のトレイに載せて一度に搬送する方式に代わりつつある。この搬送方法は、トレイの底面両側のみに細幅のコンベヤベルトを接触させて搬送する方式(いわゆる「DCTシステム」といわれる方式)と呼ばれるものであって、この細幅ベルトの2列型システムは、欧州の空港で普及が始まり、同様のシステムが日本国内の空港にも導入されようとしてきている。
【0010】
上記のような空港の手荷物搬送システムを例にとれば、当該手荷物搬送システムが何らかの原因で故障してストップした場合、航空機の発着に甚大な影響を及ぼし、ひいては空港管理に混乱と大きな障害を与えてしまう恐れがある。通常、空港管理に障害が発生すると、その影響による経済的損失は莫大なものとなってしまう。
【0011】
物品搬送システムの故障につながるような異常を事前に診断する方法及び装置としては、下記に挙げるような先行技術文献によって提案がなされている。
【0012】
特許文献1は、搬送路の所定箇所に超音波検出装置を配設し、搬送装置が所定箇所を通過するごとに、超音波検出を用いて搬送装置からの超音波を検出し、検出された超音波の特性値を計算するという技術思想を開示している。搬送装置が所定箇所を通過するごとに順次計算される特性値が所定のしきい値を超えることが連続して所定回数を超えると、当該搬送装置は異常であると判定している。
【0013】
しかし、この技術では、搬送路の特定箇所の異常を検出するだけで、搬送路全体の異常発生や故障発生の兆候をとらえているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、こうした従来技術上の問題点に鑑み、物品搬送用搬送路の故障発生の兆候を事前に察知することが可能な搬送システム検査装置を提供することを課題とする。
【0016】
より詳細には、平常時の搬送路の各種状態情報を記録しておくことにより、当該状態情報と検査時の情報とを比較することにより異常発生の兆候をとらえることの可能な搬送システム検査装置を提供することも課題とする。
【0017】
さらに、搬送システムの実際動作時に検査を行い、リアルタイムで検査結果情報を伝送して、故障発生可能性のある箇所を直ちに点検・修理を行うことができるようにすることの可能な搬送システム検査装置を提供することも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するべく、本発明の第1の態様に係る故障予知搬送システム検査装置は、物品を搬送するための搬送路で搬送可能な搬送体に取り付けられた、音響、振動、画像、光、超音波、圧力、環境のうちいずれか一つ以上に係る情報を取得するセンサーと、前記搬送体に取り付けられ前記センサーから採取されるセンサー情報を記録する情報記録装置と、前記センサー及び前記情報記録装置を駆動させて前記搬送体を前記搬送路で搬送しながら前記搬送路上もしくは前記搬送路近辺についての前記センサー情報を継時的に前記情報記録装置に記録させる情報解析・処理部とを具備して構成される。
【0019】
本発明の第2の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第1の態様において、前記情報解析・処理部は、前記センサーから採取される前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断する機能を備えるようにすることもできる。
【0020】
本発明の第3の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第2の態様において、前記搬送体は物品搬送に係る実作業を稼働中の前記搬送路にて搬送され、前記情報解析・処理部は、前記センサーから採取された前記センサー情報を、前記情報記録装置に予め記録されていた第2のセンサー情報と比較し、前記搬送路の故障発生兆候を判断し、前記判断された故障発生兆候に係る情報を前記情報記録装置に記録するようにすることもできる。
【0021】
本発明の第4の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第2もしくは第3の態様において、前記故障予知搬送システム検査装置は外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、前記制御部は、前記判断された故障発生兆候に係る情報を外部に送信するように前記通信部を制御するようにすることもできる。
【0022】
本発明の第5の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第1の態様において、前記故障予知搬送システム検査装置は外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、前記制御部は、前記センサーから採取される前記センサー情報を前記通信部を介して外部解析・処理装置に送信し、前記制御部は、前記外部解析・処理装置から故障発生兆候情報を受信するように前記通信部を制御するようにすることもできる。
【0023】
本発明の第6の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第1の態様において、前記搬送体の前記搬送路上もしくは前記搬送路の近辺における位置を検出する位置検出装置をさらに備え、前記情報解析・処理部は、前記センサー情報を前記位置検出装置が検出した位置情報と関連させて継時的に前記情報記録装置に記録させるようにすることもできる。
【0024】
本発明の第7の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第6の態様において、前記位置検出装置として、ジャイロコンパス及び加速度計が用いられるようにすることもできる。
【0025】
本発明の第8の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第6の態様において、前記位置検出装置としてRF-IDリーダが用いられるようにすることもできる。
【0026】
本発明の第9の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第6の態様において、前記位置検出装置として画像解析装置が用いられるようにすることもできる。
【0027】
本発明の第10の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第4の態様において、前記通信部は、前記情報解析・処理部を制御するための外部からのコントロール情報を受信し、前記情報解析・処理部は、前記通信部が受信した前記コントロール情報によって前記センサーが前記センサー情報を取得するようにすることもできる。
【0028】
本発明の第11の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第10の態様において、前記コントロール情報は、前記センサー情報を取得するに当たっての情報取得基準に係るセンサー情報取得基準情報を含むようにすることもできる。
【0029】
本発明の第12の態様に係る故障予知搬送システム検査装置として、第11の態様において、前記センサー情報取得基準情報は、前記搬送路の所定位置毎に前記センサーの種類ごとに設定されたスレッショルドレベルを規定した情報を含み、前記制御部は、前記センサー情報が前記スレッショルドレベルを超えた場合に前記センサー情報を前記情報記録装置に記録させるとともに前記外部へ送信するようにすることもできる。
【0030】
また、上記課題を解決するべく、本発明の第13の態様に係る搬送システムは、物品を搬送するための搬送路と、前記搬送路で搬送可能な搬送体に取り付けられた、音響、振動、画像、光、超音波、圧力、環境のうちいずれか一つ以上に係る情報を取得するセンサーと、前記センサーから採取されるセンサー情報を記録する情報記録装置と、前記センサー及び前記情報記録装置を駆動させて前記搬送体を前記搬送路で搬送しながら前記搬送路上もしくは前記搬送路近辺についての前記センサー情報を継時的に前記情報記録装置に記録させる情報解析・処理部と、前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断する機能とを具備して構成される。
【0031】
本発明の第14の態様に係る搬送システムとして、第13の態様において、前記搬送体は物品搬送に係る実作業を稼働中の前記搬送路にて搬送され、前記制御部は、前記センサーから採取された前記センサー情報を、前記情報記録装置に予め記録されていた第2のセンサー情報と比較し、前記搬送路の故障発生兆候を判断し、前記判断された故障発生兆候に係る情報を前記情報記録装置に記録するようにすることもできる。
【0032】
本発明の第15の態様に係る搬送システムとして、第13もしくは第14の態様において、前記搬送システムは外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、前記制御部は、前記判断された故障発生兆候に係る情報を外部に送信するように前記通信部を制御するようにすることもできる。
【0033】
本発明の第16の態様に係る搬送システムとして、第13の態様において、前記搬送システムは外部との間で情報を送受信する通信部をさらに備え、前記情報解析・処理部は、前記センサーから採取される前記センサー情報を前記通信部を介して外部解析装置に送信し、前記情報解析・処理部は、前記外部解析装置から故障発生兆候情報を受信するように前記通信部を制御するようにすることもできる。
【0034】
本発明の第17の態様に係る搬送システムとして、第13の態様において、前記搬送体の前記搬送路上もしくは前記搬送路の近辺における位置を検出する位置検出機構をさらに備え、前記情報解析・処理部は、前記センサー情報を前記位置検出機構が検出した位置情報と関連させて継時的に前記情報記録装置に記録させるようにすることもできる。
【0035】
本発明の第18の態様に係る搬送システムとして、第17の態様において、前記位置検出装置は、前記搬送路途上もしくは前記搬送路近辺の所定点に備えられたRF-IDタグと、前記搬送体に備えられたRF-IDリーダとを備えて構成されるようにすることもできる。
【0036】
本発明の第19の態様に係る搬送システムとして、第17の態様において、前記位置検出装置は、前記搬送路途上もしくは前記搬送路近辺の所定点に備えられた工学マーカと、前記搬送体に備えられ前記光学マーカを読み取る機能を持った画像解析装置とを備えて構成されるようにすることもできる。
【0037】
本発明の第20の態様に係る搬送システムとして、第17の態様において、前記位置検出装置は、前記情報記録装置中に記録された搬送路構成図と、前記搬送路構成図に含まれる所定点に係る特有の音響、振動、衝撃の少なくともいずれかにより搬送路中の位置を検出する手段とを備えて構成されるようにすることもできる。
【0038】
本発明の第21の態様に係る搬送システムとして、第15の態様において、前記通信部は、前記情報解析・処理部を制御するための外部からのコントロール情報を受信し、前記情報解析・処理部は、前記通信部が受信した前記コントロール情報によって前記センサーが前記センサー情報を取得するようにすることもできる。
【0039】
本発明の第22の態様に係る搬送システムとして、第21の態様において、前記コントロール情報は、前記センサー情報を取得するに当たっての情報取得基準に係るセンサー情報取得基準情報を含むようにすることもできる。
【0040】
本発明の第23の態様に係る搬送システムとして、第22の態様において、前記搬送路の所定位置毎に前記センサーの種類ごとに設定されたスレッショルドレベルが規定され、前記センサー情報取得基準情報は、前記スレッショルドレベルを規定した情報を含み、前記情報解析・処理部は、前記センサー情報が前記スレッショルドレベルを超えた場合に前記センサー情報を前記情報記録装置に記録させるとともに前記外部へ送信するようにすることもできる。
【0041】
本発明の第24の態様に係る搬送システムとして、第13~第23の態様のうちのいずれかの態様において、前記搬送体は、少なくとも、前記センサーによって前記センサー情報の取得を行うことを目的とした情報収集装置として機能する第1体と、前記第1体で取得されたセンサー情報を前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断する情報解析・処理部として機能する第2体とが別体として構成されるようにすることもできる。
【0042】
本発明の第25の態様に係る搬送システムとして、第13~第23の態様のうちのいずれかの態様において、前記搬送体は、少なくとも、前記センサーによって前記センサー情報の取得を行うことを目的とした情報収集装置として機能する第1体と、前記第1体で取得されたセンサー情報を前記センサー情報をもとに前記搬送路の故障発生の兆候を判断し故障発生兆候情報を取得する情報解析・処理部として機能する第2体と、前記第1体で取得された前記センサー情報及び/もしくは前記第2体で得られた前記故障発生兆候情報をもとに前記搬送路に設けられたセンサーを清掃或いは清掃もしくは整備するための修復部を備えた第3体とが連接して構成されるようにすることもできる。
【0043】
本発明の第26の態様に係る搬送システムとして、第25の態様において、前記センサーは、少なくとも投光部及び受光部を備えた光電スイッチを含み、前記修復部は、前記光電スイッチの投光部及び/もしくは受光部の汚れを圧搾空気を噴射して清掃する機能を備えるようにすることもできる。
【0044】
本発明の第27の態様に係る搬送システムとして、第24~第26の態様のうちのいずれかの態様において、前記情報解析・処理部は、パーソナルコンピュータ及び解析ソフトウエアを備えるようにすることもできる。
【0045】
上記搬送システム検査装置が実際の搬送路にて搬送されることで、搬送中の各センサー装置の試験測定情報が記録される。当該試験測定情報は、正常運転時の上記センサー装置の情報と比較すると共に各種センサー装置の試験測定情報との相関関係を調査して故障発生の兆候を正しく捉え、故障発生兆候情報としてたとえば上記情報記録装置に記録する。当該故障発生兆候情報はそのまま本発明の一態様に係る搬送システム検査装置中に留め置き、搬送路搬送が完了した後に上記情報記録装置から読み出し判定を行っても良い。(オフライン)また、上記故障発生兆候情報を無線通信装置によって外部へ送信し、故障発生兆候箇所を直ちに点検することもできる。(オンライン)
【0046】
上記各センサー装置からの試験測定情報を外部に送信し、正常運転時の上記センサー装置の情報と比較したり、各種センサー装置の試験測定情報との相関関係を調査して故障発生の兆候を捉えることを外部の情報解析・処理部で行うこともできる。さらに、当該無線通信装置によって外部からの制御情報を受信し、当該制御情報によって上記各装置の情報取得方法及び情報取得基準等を制御してもよい。
【0047】
搬送システムの正常動作時の各装置からのデータを記録しておき、これらを基準値とし、通常検査時の測定データとの間で比較処理及び相関処理を行うことにより故障発生の兆候をとらえることができる。
【0048】
同様に、上記のようにして取得した試験情報を基に、搬送路の各位置毎のスレッショルドレベルを設定し、試験測定情報が上記レベルを超えた場合、該当する試験測定情報を記録するとともに外部へ送信し、リアルタイムで情報伝達を行うようにすることもできる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、実際の搬送路に本発明の一態様に係る搬送システム検査装置を搬送させることにより、搬送システムの状況把握(設備自体の制御装置からの稼働時間、搬送物量、異常履歴など)及び各種データを収集して分析することで異常発生の兆候を事前に察知することができ、搬送システムの運用を効率的に行うことができ、経済的損失を未然に防止することができる。
【0050】
また、搬送物(商品・荷物)の搬送状況も把握できるため、搬送システムの故障発生を抑えるために過度な精度規格の部品を用いたりする必要がなくなり、最適な搬送システムの選定及び価格の低減が可能となる。
【0051】
搬送路が入り組んでいたり、トンネル状になっていたり、高所に設置されていたり、といった、点検者が容易に立ち入れない場所の搬送路の点検も、本発明の検査装置を用いれば自動的に点検することが可能となる。
【0052】
さらに、搬送システム実際動作時に故障発生の兆候を捉えてリアルタイムで情報伝達ができる為、直ちに当該箇所の詳細の点検を行い必要なら修理を行い、搬送システム停止による損失を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の一実施形態を応用する搬送システムの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態を応用する搬送システムの他の例を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置のブロックダイヤグラムである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る音声解析装置のブロックダイヤグラムである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置の外観概略図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る搬送システム検査装置の外観概略図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る搬送システム検査装置の信号解析・処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して本発明を実施する為の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0055】
本発明の一実施形態を、上述した形状の異なる手荷物を略均一形状のトレイに載せて搬送することにより搬送路を簡易化することができる手荷物搬送システムに応用した場合を例にとって説明する。搬送物の形状のいかんにかかわらず、略均一形状のトレイに載せて搬送する為、手荷物搬送システムは本発明の一実施形態を応用する対象としては大変適しているといえる。
【0056】
図1は、形状の異なる手荷物1を略均一形状のトレイ2に載せて搬送する、本発明の一実施形態に係る手荷物搬送システムの概略図である。略直線状の搬送路(曲線状搬送路、分岐搬送路については説明を省略する。)の両側にモータを含んでもよい駆動源3で駆動される比較的幅の狭いベルト4と、搬送される荷物の荷重を支える為にベルト4の下に配置されたベルトガイド5と、トレイ2が左右にズレない様にするガイドレール6と、搬送ユニット全体の速度情報を基に駆動する駆動源3の回転数を最適に制御したり、搬送路上にトレイ2やトレイ2に載った手荷物1が無い場合は搬送路の駆動源3の駆動を停止するよう制御したりする制御部7と、RFIDやバーコードのような識別情報を利用して位置を特定するための搬送路位置情報部8を備える構成となっている。
【0057】
本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置は、上記搬送路で搬送可能な形状の後述する筐体2-0に後述の各種計測装置を積載して、実際の搬送路にて搬送しながら搬送路の状態を観測し、不具合発生の兆候をいち早く検出して対応し、故障発生を未然に防ぐものである。
【0058】
図2は、ローラコンベヤ9による搬送システムに本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置を適用した場合の概略的斜視図である。同搬送システムで搬送されることが可能な筐体(搬送体であってもよい。以下同じ。)6-0(図示しない)に
図1と同じ各種計測装置を積載し、搬送システム検査装置とする。
図1の搬送路位置情報部8と同様の機能を有する搬送路位置情報部10はガイドレール6上に備えられている。なお、幅広のベルトコンベヤ搬送路へ上述した搬送システム検査装置を応用する場合も略同形状の検査装置を用いることが可能である。
【0059】
図3は、本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置Yの機能構成を表すブロックダイヤグラムである。同図に示されるように、本発明一実施形態に係る搬送システム検査装置Yは、搬送路で搬送可能な筐体5-0(図示しない)に、搬送システム検査用センサー装置として音響解析装置3-1と、振動解析装置3-2と、画像解析装置3-3と、光計測装置3-4と、超音波解析装置3-5と、圧力解析装置3-6と、環境解析装置3-7とのうちいずれか一つ以上を備えている。上記センサー装置の各々はI/F装置3-8を介して情報解析・処理部3-13に接続され、情報解析・処理部3-13は、同じくI/F装置3-8を介して加振装置3-10、位置検出装置3-11と、またI/F装置3-8を介して無線通信装置3-14、さらに情報記録装置3-12と接続されている。
【0060】
本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置Yは、実際の搬送システムで搬送された後、蓄えられたデータを解析して故障発生の兆候を検出(オフライン)してもよく、搬送中にデータを外部に無線伝送し、外部解析装置3-30(外形は図示しない)において故障発生の兆候を検出(オンライン)してもよい。外部解析・処理装置3-30としては、無線通信装置3-15とパーソナルコンピュータ装置或いは、より高度な信号解析能力を有する信号解析装置3-16と情報記録装置3-17とを備えて構成されるようにすることができる。
【0061】
図4は、本発明の一実施形態に係る音響解析装置の機能構成を表すブロックダイヤグラムであり、筺体2-0(図示しない)に単数あるいは複数のマイクロフォン(以下、「マイク」と省略する。)M0,M1~Mnを備え、音源方向や検出外来音や筐体振動音をキャッチする。マイクM0,M1~Mnは、必要とされる周波数帯域のものでもよく、広帯域型マイクからの出力を周波数フィルタFILによって必要とされる周波数帯域に制御したものでもよい。更に、衝突音など音量が大きい場合に備えて音量制御回路AGCを備えるのも好ましい。この音響解析装置により特定の周波数の音のみを捉えたりブロックしたりすることができ、複数のマイクによる音源収集と解析により音響発生方向を検出することができる。
【0062】
また、搬送路が設置されている箇所は周囲の雑音が大きい場合が予想されるので、周囲音検出用マイクM0を備え、検出した周囲雑音をマイクM1~Mn情報から差し引く、あるいはマイクM0によって周囲雑音ノイズフロアを検出してスレッショルドレベルとし、レベルを超える情報のみを扱ってもよいし、ノイズキャンセリング機能を持たせてもよい。
【0063】
振動解析装置3-2は、振動センサーで構成され、筐体5-0に伝わる搬送路からの衝撃、振動の振幅、方向、変位、周波数、加速度のうち1以上の情報を検出する。例えば、コンベヤベルトのゆるみは間欠的な振動となって現れたり、駆動モータの軸変位や摩耗は特異な振動周波数となって現れたりするため、故障に至る兆候をとらえることができる。
【0064】
画像解析装置3-3は、画像・動画カメラで構成され筐体5-0の必要部位に装備される。搬送路中の異物検出はもちろんのこと、正常時の搬送路の構造物の画像と比較することにより、構造物のゆがみや傷を検出することができる。また、搬送路のガイドレールや構造体にバーコードのような画像IDタグを張り付けておき、その画像を検出することにより搬送路の現在位置を検出することができる。
【0065】
光計測装置3-4は、レーザ発光部とレーザ受光部からなり、本発明の一実施形態に係る検査装置が搭載される筐体5-0から、例えばガイドレールのような対象物までの正確な測距をすることができる。さらに発射レーザ光を走査して受光することにより対象物の表面粗さや表面錆びの状態を観測することができる。
【0066】
超音波解析装置3-5は、超音波送信器と超音波受信器とを備えて構成されており、搬送路中の機構部品で金属破断が生じたときの超音波発生を検出することができる。また、超音波送信器と受信器とを筐体5-0の特定位置に備えておき、搬送路構成金属部品の探傷を行うことができる。
【0067】
圧力検出装置3-6は、筐体5-0の底面あるいは側面に設置された圧力センサーで、たとえば半導体ピエゾ抵抗型のような小型で電気出力が得られるセンサーが望ましい。圧力検出装置3-6によって、搬送路を移動中の筐体5-0にかかる圧力が分かり、筺体5-0が一方に設計値以上に押し付けられたり、搬送路中の不測の突出物に当たったりするという異常を検出することができる。
【0068】
環境計測装置3-7は、温度、湿度、気圧、風、ちり等の環境計測装置を備え、搬送システム環境の計測を行う。例えば冷凍食品のような搬送物を搬送する場合は搬送路環境の温度コントロールは重要で、温度の変化を事前に捉えることにより食品事故を防ぐことが可能となる。また、搬送路の駆動装置の発熱やコンベヤベルトの摩擦による発熱等の観測も事故事前防止のために重要である。
【0069】
加振装置3-10は、電動バイブレータ、あるいは/およびタッピング機構で構成されている。タッピング機構とは電動ソレノイドあるいはモータ駆動によって小型ハンマを駆動し、対象物に軽い衝撃を与えるものである。このような加振装置によって搬送路の必要箇所に振動或いは衝撃を与え、その反応音を音響解析装置3-1によって収集、分析、診断を行う。また、上記の振動解析装置によって共振周波数の収集、分析、診断を行う。通常、ネジ止めのゆるみや構造体のひずみやねじれが生ずると、通常時とは異なった周波数の反応音が出たり、特異な衝撃音が出たりするため、故障に至る兆候を捉えることができる。
【0070】
位置検出装置3-11は、ジャイロコンパス、加速度計を備え、さらにたとえばICタグを利用したRFIDやBluetooth(登録商標)などの無線装置(以後「無線装置」という)を備えて構成され、加速度計及びジャイロコンパスにより本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置の現在自己位置推定を行う。この自己位置推定は搬送路スタート位置を基準として、加速度計及びジャイロコンパスにより移動距離と方位とを算出し、現在地点を推定する。誤差が重畳する恐れがある場合は既知の要所に設置された基準点に例えばICタグを設置し、このICタグをRFIDリーダで読み取ることにより誤差を修正することができる。基準点による誤差修正は、ICタグに変えてバーコードやARマーカのような視認マーカを設置し、それを上記の画像解析装置によって視認して誤差修正を行っても良い。これらのICタグ、RFIDリーダ、バーコードやARマーカのような視認マーカ、画像解析装置を用いるのは、上述した誤差修正に限られることなく位置検出装置として用いることもできる。また、搬送路中の分岐点のような特徴箇所を画像解析装置によって検出し位置補正及び/もしくは位置検出をすることもできる。更に、搬送物通過を検出するための光電センサーの光を検出して位置補正及び/もしくは位置検出をしても良い。
【0071】
I/F装置3-9は、各センサー装置3-1~3-8からの情報及び各センサの制御線を情報解析・処理部に接続するためのインタフェース装置である。また、外部機器との接続用端子3-20(図示せず)も備える。
【0072】
情報記録装置(「メモリ装置」ともいう。)3-11は、コントロール装置3-12のコントロールのもとに各センサー装置3-1~3-8からの情報を蓄え(メモリ)たり、搬送路が正常状態時の各センサ装置からの情報を基準データとして蓄えておいたりすることができる。その他、パーソナルコンピュータのメモリ装置と同様な一時記憶やバッファメモリとしての機能も担う。
【0073】
また、上記の情報記録装置に搬送路構成図を記録しておけば、上記位置検出装置からの位置情報と搬送路構成図とを照合することにより本発明の一実施形態に係る搬送路試験装置の自己位置が搬送路のどこに位置しているかをより明確に把握することができる。上記搬送路構成図から分かる搬送経路の特徴点、例えば搬送切換位置で発生する特有の振動、衝撃等により、本発明の一実施形態に係る搬送路システム検査装置が搬送切換位置に到達したことが検出され、上記位置検出装置の誤差修正として用いることができる。
【0074】
情報解析・処理部3-13は、パーソナルコンピュータと同様なCPUで構成されており、各センサー装置からのデータを演算したり、正常時のデータとの比較、複数のセンサーからの情報の相関にもとづく故障の兆候の判断、判断データを含む各センサ-からのデータの情報記録装置への記憶、後述の無線通信装置を通しての外部へのデータ伝送、外部からの制御情報によるコントロール等を行う。また、後述するように、特異な振動周波数の検出による搬送路構成図中の位置推定や、画像及び振動周波数によって側板のゆるみやはがれの検出を行うことも可能である。
【0075】
本発明の搬送システム検査装置においては、前述のごとく正常時の各センサーからの情報によって故障発生の予兆を判断するには、正常時の情報と故障時の情報を比較して判断する方法もある。しかし、故障は滅多に発生するものではなく、故障発生時の情報を得ることは難しい。このため、ある故障を想定して、人為的に故障状態を発生させ、その時のデータを基として故障予知を行う方法もある。
【0076】
一方、実際の故障は想定外の状態で発生することが多く、その故障状態を論理的に記述できない場合があり、そのような場合には情報解析・処理部に人工知能(AI)による人工ニューラルネットワーク(ANN)を含む学習手段に依って故障発生予兆の判断を行う方法がある。
【0077】
上記の(ここで言う)AI手法としては、情報解析・処理装置3-13に用いるアプリケーションソフトとして、ナイーブベイズ法、サポートベクターマシン法、異常検知法、ニューラルネットワーク法、特徴量空間の手法(K平均法等)などで例示される処理手段により各センサーからの情報を機械学習させて、正常時の各センサーからのデータとの比較、複数センサーからのデータの相関等に基づく故障発生予兆の判断、該判断情報を含む各センサーからのデータ情報を情報記録装置3-12への記憶、後述の無線通信装置3-15を介しての外部への情報伝送、外部からの制御情報による情報解析・処理装置3-13のコントロールを行うこともできる。上記情報解析・処理によって、的確に各センサーからの特異なデータ情報を検出して、故障発生予兆判断はもちろんのこと、搬送路構成図中の位置推定や、故障部位や故障状況の検出を行うことも可能である。
【0078】
上記AI手法による情報解析・処理の一例として特徴量空間の手法を例にとると、センサーからの正規化された計測データを用いて相関行列を構成し、また、Yak-9多変量解析を用いて搬送設備の正常動作時の状態(以下常態と略す)での単位空間を生成する。この単位空間データとセンサーによって収集されたデータを比較して異常度を判定する。上記の関係を
図7のブロック図に示す。
【0079】
無線通信装置3-14は、無線通信方式Wi-FiあるいはBluetooth(登録商標)あるいはZigBee(登録商標)あるいは特定小電力無線の送受信器を備えて構成され、信号解析装置3-12のコントロールのもと、故障兆候判断結果や各センサー装置からの情報を外部に送信したり、外部からの信号を受信する。どの無線通信方式を用いるかは、必要とされるデータ転送レートによって選択する。また、無線通信装置の用いるアンテナは必要とされる通信範囲によって選択する。また、各センサー装置からのデータをそのまま外部に送信し、外部の高度な解析機能を有する解析装置によって分析を行う、いわゆるクラウド処理を行うこともできる。
【0080】
電源装置としては、充電可能な電池を用いる。電池容量は各種センサー装置を何種類搭載するかによって決定することができる。
【0081】
図5(a)は、
図1に示すトレイ2と略同一形態(形状、重量)の筺体5-0の上面概略図であり、
図5(b)は筐体5-0の下面概略図である。
図5(a)および(b)では四角形の箱型の筺体5-0を例にとっており、箱型の筐体5-0の側方には各種センサー装置のセンサー部を収容するセンサベイSB1があり、同じく筺体5-0の前方、後方にはセンサーベイSB2が配置されている。センサーベイSB1及びSB2には(各々図示しない)音響解析装置3-1、加振装置3-10、振動解析装置3-2、画像解析装置3-3、光計測装置3-4、圧力検出装置3-6の各センサー装置を収容することが望ましい。
【0082】
図5(b)に示すように、筺体5-0の底面にはセンサーベイSB4が設けられ、音響解析装置3-1、振動解析装置3-2、超音波解析装置3-5、位置検出装置3-11等のセンサー装置を収容することが望ましい。また、筐体2-0の上部SB5には無線通信装置3-14を収容することが望ましい。
【0083】
本発明の別の応用例として、筺体5-0の周囲を俯瞰できるよう
図5(a)の筐体5-0の物品収容部に相当する位置に点線で示した突出型のセンサーベイSB3を設けてもよい。センサーベイSB3には、(各々図示しない)音響解析装置3-1、画像解析装置3-3、光計測装置3-4、無線通信装置3-14のセンサー装置を収容してもよい。
【0084】
図6(a)および
図6(b)は、
図2に示したローラコンベヤや幅広ベルトコンベヤで構成される搬送路に適用された場合の本発明の別の実施形態に係る検査装置の概略図である。本発明の別の実施形態に係る搬送システム検査装置は搬送路で搬送される代表的な搬送物と略同形の筐体6-0に収容されている。筺体6-0に収容される各種計測装置と、それらのセンサー部を収容するセンサーベイSB1~5は、
図5に示した筐体5-0と略同様なので、詳細説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、空港の手荷物搬送システムや大型物流センターのような大規模の搬送システムのシステム全体を実働状態で検査することができ、故障発生が予想される部位をいち早く発見し対処することにより、空港システムの大混乱を招くような事故を事前に防ぐことができる。
【0086】
図1の説明では搬送物を専用トレイに載せて搬送する搬送装置に本発明の一実施形態を応用した場合を例にとって説明したが、ローラコンベヤ搬送システムや幅広ベルトを使用するコンベヤベルト搬送システムにも同様に応用ができるものである。
【0087】
搬送物を搬送する前の搬送システム始動時に本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置を搬送して搬送システムの検査を行った後、実際の搬送物の搬送を行ってもよいし、実際の搬送物の搬送を行っている合間に本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置Yを同時に搬送させ、実際搬送時のシステム検査を行うことができるため、物品搬送システムのオンライン検査もオフライン検査も行うことができる。
【0088】
また、本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置Yには、上述のように3-1から3-7に至るセンサー装置を搭載することが可能であるが、例えば音響検査のみに限るような単純な検査から各種センサーを搭載する複雑な検査にまで対応することができる。すなわち、通常時は搬送物と一緒に単純検査をし、ある時間間隔で複雑な定期検査をするというようなフレキシブルな運用ができるため、搬送システムの信頼性をより高める助けとなる。
【0089】
さらに、トレイの搬送物を搭載して搬送するシステムにおいては、新幹線のドクターイエローのように先頭の1台目のトレイの装置には画像、音響、光、超音波などのセンサー類を設けて情報の採取を目的とした情報収集装置として構成し、2台目のトレイの装置には1台目の装置で収集した情報をパーソナルコンピュータと専用の解析ソフトウエアにより解析する情報解析・処理部として構成し、3台目のトレイの装置には前方の装置で得られた情報をもとに搬送ラインに適宜設けられた光電スイッチの投光部や受光部の汚れを圧搾空気を噴射して清掃するなどの修繕機能を設けた装置として構成するなど、検査機能以外の修繕機能を設けてもよい。
【0090】
またさらに、トレイの搬送物を搭載して搬送するシステムにおいては、搬送システム検査のため本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置を内蔵したトレイのみを搬送してもよいし、同時に当該検査装置を内蔵したトレイに実際の搬送物を搭載して検査を行うこともできる。すなわち、物品搬送システムを実際に稼働しながら同じ搬送路中に搬送物品と同じく本発明の一実施形態に係る搬送システム検査装置を搬送させながら搬送システムの動作診断をすることができ、まさに新幹線のドクターイエローと同じような働きを自動で行うことができる画期的な技術である。
【0091】
なお、本搬送システム検査装置は、出願人の構築した物流センターでの検査の場合は、事前に当該センターの制御システムが把握できていることから、光電スイッチの位置関係などの詳細情報も検査前に正確に把握できているので、これらのシステムから得られる情報を利用して装置の正確な位置関係の把握が可能であるが、出願人以外が構築したセンターでは、制御システムの詳細を事前に入手することは難しいため、搬送ラインの事前の状況把握は困難である。しかし、本装置の場合は、本装置自ら画像、音響、光などのセンサー類を有し、また、レーザなどの光計測装置やジャイロなどの自律的な測位技術も有していることから、これらの装置から得られる情報を活用することで、本装置の正確な位置関係が把握可能となる。このため、ローラコンベヤやベルトコンベヤ、DCTのようなトレイ式搬送システムなど、いろいろな搬送形態での使用が可能であり、場所を選ばずに多くの物流センターや空港設備で活躍できることになる。
【0092】
上記のように、本発明は、空港の手荷物搬送システムばかりでなく、物流センターの搬送システム、倉庫管理システムや生産ライン等の搬送システムを用いている箇所に広く利用することができ、将来の物流管理システムに多大な貢献をすることが期待できる。
【0093】
また、上記の説明では、コンベア搬送装置への応用を主体としたが、港湾施設のおける無人搬送車(AGV)の搬送路状況検査や東京都豊洲市場のような大型市場の無人搬送車の搬送路検査といった異なる産業分野にも広く応用することができる。オープンスペースの応用では位置検出装置としては、上記位置検出装置に加えてGPS装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…手荷物、2…トレイ、3…駆動源、4…コンベヤベルト、5…ベルトガイド、6…ガイドレール、7…制御部、8…搬送路位置情報部、9…ローラコンベヤ、10…搬送路位置情報部、21…搬送物、2-0…筐体、3-0…筐体、3-1…音響解析装置、3-2…振動解析装置、3-3…画像解析装置、3-4…画像解析装置、3-5…超音波解析装置、3-6…圧力検出装置、3-7…環境解析装置、3-8…インタフェース装置、3-9…外部機器接続、3-10…加振装置、3-11…位置検出装置、3-12…情報記録装置、3-13…情報解析・処理部、3-14…無線通信装置、3-15…無線通信装置、3-16…信号解析装置、3-17…情報記録装置、3-20…電源装置、M0~Mn…マイク、AGC…自動制御回路、FIL…周波数フィルタ、C1,C2…制御ライン、SB1~SB5…センサベイ、Y…搬送システム検査装置