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特許7351055合成スラブ構造及び合成スラブの施工方法
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  • 特許-合成スラブ構造及び合成スラブの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】合成スラブ構造及び合成スラブの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/16 20060101AFI20230920BHJP
   E04B 1/14 20060101ALI20230920BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E04B1/16 B
E04B1/16 E
E04B1/14
E04B5/32 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019103504
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020197054
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】望月 英二
(72)【発明者】
【氏名】岩間 和博
(72)【発明者】
【氏名】陶山 春菜
(72)【発明者】
【氏名】前原 航
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083104(JP,A)
【文献】特開2017-078307(JP,A)
【文献】特開平05-044251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 5/00-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と、
単板積層材の下面に複数の木質棒状部材が間隔をあけて並んで接合され、前記木質棒状部材の端部が前記梁の上端部に載せ掛けられて並べられた複数の木版ユニットと、
前記梁の上端部の側端部に設けられた木製の側壁板と、
前記木版ユニットの前記単板積層材の上面及び前記梁の上端部と一体的に設けられ、前記梁の上端部に支持され、前記単板積層材の上面よりも版厚が厚く側面を前記側壁板が覆う版厚部が形成された鉄筋コンクリート版と、
を備えた合成スラブ構造。
【請求項2】
前記木質棒状部材が間隔をあけて並ぶ方向は、前記単板積層材の繊維方向に沿っている、
請求項1に記載の合成スラブ構造。
【請求項3】
前記梁は、鉄骨梁とされ、前記鉄骨梁の上端部から前記版厚部に埋設されるスタッドが突出している、
請求項1又は請求項2に記載の合成スラブ構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の合成スラブの施工方法であって、
単板積層材の下面に複数の木質棒状部材を間隔をあけて並べて接合して木版ユニットを製造する工程と、
前記木版ユニットの前記木質棒状部材の端部を梁の上端部に載せ掛かけ、複数の前記木版ユニットを並べる工程と、
前記梁の上端部の側端部に木製の側壁板を設ける工程と、
前記木版ユニットの前記単板積層材の上面と、前記梁の上端部と前記側壁板との間と、にコンクリートを打設し、前記木版ユニットの前記単板積層材の上面及び前記梁の上端部と一体的に設けられた鉄筋コンクリート版を構築する工程と、
を備えた合成スラブの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スラブ構造及び合成スラブの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋コンクリート造のスラブと、このスラブの上に設けられた床構成部と、を備えた二重床構造に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、木質床版とトップコンクリート部とによって構成された合成床に関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、合成床構造及び耐火構造物並びに合成床構造の構築方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-109306号公報
【文献】特開2019-015053号公報
【文献】特開2013-083104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した直交集成材と、鉄筋コンクリート版と、で構成された合成スラブが知られている。しかし、直交集成材は、耐力を上げるためには版厚を厚くする必要があり高コストであると共にローリングシアで耐力が決定される。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、木質板材と鉄筋コンクリート版で構成された合成スラブの耐力を、コストを抑制しつつ向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、木質板材の下面に複数の木質棒状部材が間隔をあけて並んで接合された木版ユニットと、複数の前記木版ユニットが並べられ、前記木質棒状部材が架設された梁と、前記木版ユニットの前記木質板材の上面に一体的に設けられた鉄筋コンクリート版と、を備えた合成スラブ構造である。
【0009】
第一態様の合成スラブ構造は、木質板材の下面に複数の木質棒状部材が間隔をあけて並んで接合された木版ユニットを予め製造し、これを梁に設置することで、施工性が向上する。よって、施工コストが抑制される。また、木質板材の下面に間隔をあけて並んで接合された木質棒状部材の剛性によって、合成スラブの耐力が向上する。したがって、合成スラブの耐力をコストを抑制しつつ、向上させることができる。
【0010】
第二態様は、前記木質板材は、単板積層材で構成され、前記木質棒状部材が間隔をあけて並ぶ方向は、前記木質板材の繊維方向に沿っている合成スラブ構造である。
【0011】
第二態様の合成スラブ構造では、木質板材は単板積層材で構成されているので、直交集成材のようにローリングシアが発生しない。よって、ローリングシアによって木版ユニットの耐力が決定されない。また、木質棒状部材が間隔をあけて並ぶ方向は、木質板材の繊維方向に沿っているので、木質棒状部材の並べる間隔を広くすることができる。
【0012】
第三態様は、木質板材の下面に複数の木質棒状部材を間隔をあけて並べて接合して木版ユニットを製造する工程と、前記木版ユニットの木質棒状部材を梁に架設して、複数の前記木版ユニットを並べる工程と、前記木版ユニットの前記木質板材の上面に一体的に鉄筋コンクリート版を設ける工程と、を備えた合成スラブの施工方法である。
【0013】
第三態様の合成スラブの施工方法では、木質板材の下面に複数の木質棒状部材が間隔をあけて並んで接合された木版ユニットを予め製造し、これを梁に設置することで、施工性が向上する。よって、施工コストが抑制される。また、木質板材の下面に間隔をあけて並んで接合された木質棒状部材の剛性によって、合成スラブの耐力が向上する。したがって、合成スラブの耐力をコストを抑制しつつ、向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、木質板材と鉄筋コンクリート版で構成された合成スラブの耐力を、コストを抑制しつつ向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は木版ユニットの分解斜視図であり、(B)は木版ユニットの斜視図である。
図2】大梁及び小梁の平面図である。
図3図2の大梁及び小梁の一部に木版ユニットを設置した状態の平面図である。
図4図2の大梁及び小梁の全域に木版ユニットを設置した状態の平面図である。
図5図4の木質板材を除いた状態の拡大平面図である。
図6】合成スラブ構造を示す図5の6-6線に沿った断面図である。
図7】合成スラブ構造を示す図5の7-7線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態の合成スラブ構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0017】
[構造]
先ず、本実施形態の合成スラブ構造が適用された建物の要部構造について説明する。
【0018】
図6に示すように、合成スラブ構造10が適用された建物11は、木版ユニット100(図1(B)も参照)、大梁50(図2も参照)、小梁70(図2も参照)及び鉄筋コンクリート版150を有している。また、複数の木版ユニット100と鉄筋コンクリート版150とが一体化され、合成スラブ90を構成している。
【0019】
図1(B)に示すように、木版ユニット100は、木質板材110(図1(A)も参照)と、この木質板材110の下面112に間隔をあけて並んで接合された複数の木質棒状部材120(図1(A)も参照)と、を有している(図6も参照)。なお、木版ユニット100の上下方向の記載は、大梁50及び小梁70(図2を参照)に架設された状態での方向である。
【0020】
本実施形態では、木質板材110は単板積層材で構成され、木質棒状部材120は製材で構成されているが、これに限定されるものでは無い。例えば、木質板材110は構造用合板で構成されていてもよいし、木質棒状部材120は集成材で構成されていてもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、木質棒状部材120は、単板積層材で構成された木質板材110の繊維方向であるS方向に対して、長手方向が直交するように配置されている。また、木質棒状部材120は、木質板材110の繊維方向であるS方向に間隔をあけて互いに平行になるように並んでいる。
【0022】
図6に示すように、本実施形態では、木質棒状部材120は木質板材110に、棒状の固定部材の一例としての頭部132を有するラグスクリュー130で接合されている。ラグスクリュー130の頭部132側の約半分を構成する頭部側部133は、木質板材110から露出している。なお、図1(B)では、図が煩雑になって見づらくなるのを避けるため、ラグスクリュー130は一部のみ図示している。また、図6及び後述する図7では、判り易くするために、木質棒状部材120及び鉄筋コンクリート版150に埋設している部材(ラグスクリュー130や後述するスタッド60、62等)を実線で図示している。
【0023】
図2に示すように、大梁50はX方向及びY方向に沿って格子状に配置され、端部が柱30に接合されている。小梁70は、X方向に沿って配置され、Y方向に沿った大梁50間に掛け渡され、端部が大梁50に接合されている。なお、本実施形態では、柱30は、鋼管で構成されている。また、柱30における大梁50との接合部位には、ダイヤフラム32が接合されている。
【0024】
図6及び図7に示すように、大梁50は上下のフランジ52、54とウエブ56とを有するH形鋼で構成されている。同様に小梁70は上下のフランジ72、74とウエブ76とを有するH形鋼で構成されている。大梁50における小梁70との接合部位には、リブプレート58が接合されている。
【0025】
図5及び図7に示すように、大梁50の上側のフランジ54には、スタッド60が設けられている。同様に図5図6及び図7に示すように、小梁70の上側のフランジ74には、スタッド62が設けられている。なお、図2及び後述する図3では、スタッド60、62の図示を省略している。
【0026】
図3及び図4に示すように、大梁50の上側のフランジ54及び小梁70の上側のフランジ74の上に複数の木版ユニット100が並べられている。木質棒状部材120はY方向に沿って配置され、X方向に沿った大梁50と小梁70との間又は小梁70同士の間に架設されている(図5及び図6も参照)。なお、図5では、木質板材110の図示を省略して、木質棒状部材120を実線で図示している。
【0027】
図6に示すように、木版ユニット100の木質板材110の上面114には、鉄筋コンクリート版150が設けられている。鉄筋コンクリート版150内には主筋152と配力筋154とが埋設されている。また、鉄筋コンクリート版150には、ラグスクリュー130の頭部側部133及びスタッド60、62が埋設されることで、木版ユニット100、大梁50及び小梁70と、鉄筋コンクリート版150とが一体化され、合成スラブ90となっている。
【0028】
なお、本実施形態における木質棒状部材120が間隔をあけて並ぶ方向及び木質板材110の繊維方向であるS方向は、X方向である。
【0029】
図7に示すように、大梁50の上側のフランジ54及び小梁70の上側のフランジ74は、鉄筋コンクリート版150を支持しており、その部位の版厚は、木版ユニット100の木質板材110の上面114上の版厚(図6参照)よりも厚い。
【0030】
図5及び図6に示すように、大梁50の上側のフランジ54の側端部には、鉄筋コンクリート版150の前述の版厚が厚い部位の側面を覆う木製の側壁板80が設けられている。
【0031】
また、図5に示すように、X方向に沿った小梁70の上側のフランジ74の側端部における木質棒状部材120間には、鉄筋コンクリート版150の前述の版厚が厚い部位の側面を覆う木製の側壁板82が設けられている。なお、図示されていないがX方向に沿った大梁50の上側のフランジ54の側端部における木質棒状部材120間にも、鉄筋コンクリート版150の版厚が厚い部位の側面を覆う木製の側壁板82が設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、合成スラブ90の下面、すなわち木版ユニット100の木質板材110及び木質棒状部材120の露出面には、耐火被覆が施されている。また、本実施形態では、木質棒状部材120は、断面が略正方形の木質の角材であり(図1も参照)、その上下方向の長さは、木質板材110の板厚よりも長く、鉄筋コンクリート版150の版厚よりも短い。なお、この場合の版厚は、図6に示す木版ユニット100の木質板材110の上面114上の版厚(図6参照)である。
【0033】
[施工方法]
次に、本実施形態の合成スラブ構造10が適用された建物11の要部の施工方法の一例について説明する。
【0034】
図1(A)及び図1(B)に示すように、木質板材110の下面112に複数の木質棒状部材120を間隔をあけて並べ、ラグスクリュー130(図1(B)参照)で接合し、木版ユニット100を製造する。なお、図6に示すように、ラグスクリュー130の頭部側部133は、木質板材110から露出させる。
【0035】
図2及び図3に示すように、大梁50及び小梁70の上に複数の木版ユニット100を並べ、木質棒状部材120をX方向の大梁50と小梁70との間又は小梁70同士の間に架設する(図5及び図6も参照)。なお、この後、木版ユニット100を大梁50及び小梁70に仮固定してもよい。
【0036】
図5及び図6に示すように、側壁板80、82を設置する。そして、図6に示すように、木版ユニット100の木質板材110の上面114に、主筋152及び配力筋154を配筋し、コンクリートを打設して鉄筋コンクリート版150を構築する。なお、側壁板80、82は、コンクリートを打設する際の形枠として機能する。
【0037】
[作用及び効果]
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
本実施形態では、木質板材110の下面112に複数の木質棒状部材120が間隔をあけて並んで接合された木版ユニット100を予め製造し、これを大梁50及び小梁70に設置することで、施工性が向上する。よって、施工コストが抑制される。
【0039】
また、木版ユニット100の木質板材110の下面112に間隔をあけて並んで接合され、大梁50及び小梁70に架設された木質棒状部材120の剛性によって、合成スラブ90の耐力が向上する。
【0040】
したがって、合成スラブ90の耐力を、コストを抑制しつつ向上させることができる。
【0041】
また、木質板材110は単板積層材で構成されているので、直交集成材のようにローリングシアが発生しない。よって、ローリングシアによって木版ユニット100の耐力が決定されない。
【0042】
また、木質棒状部材120が間隔をあけて並ぶ方向(本実施形態ではX方向)は、木質板材110の繊維方向であるS方向に沿っているので、木質棒状部材120の間隔を広くすることができる。
【0043】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、木質棒状部材120は、木質板材110にラグスクリュー130で接合されているが、これに限定されない。例えば、ラグスクリュー130以外の棒状の固定部材で両者を接合してもよい。或いは、接着剤で両者を接合してもよい。
【0045】
また、例えば、上記実施形態では、ラグスクリュー130の頭部側部133及びスタッド60、62が鉄筋コンクリート版150に埋設されることで、木版ユニット100、大梁50及び小梁70と、鉄筋コンクリート版150とが一体化されていたが、これに限定されない。例えば、鉄筋コンクリート版150をプレキャストコンクリート製とし、接着剤で木版ユニット100、大梁50及び小梁70と接合してもよい。
【0046】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。また、複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 合成スラブ構造
11 建物
50 大梁(梁の一例)
70 小梁(梁の一例)
90 合成スラブ
100 木版ユニット
110 木質板材
112 下面
114 上面
120 木質棒状部材
150 鉄筋コンクリート版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7